【解決手段】本発明の一態様による配線用遮断器のアーク消弧装置は、ベースアセンブリケース11の一部に固定設置される固定接触子15、16と、固定接触子15、16に接離する可動接触子32、33と、可動接触子32、33が固定接触子15、16から分離される際に発生するアークを消弧するアーク消弧部40とを含み、アーク消弧部40は、ベースアセンブリケース11に設置される一対の側板41と、一対の側板41間に所定の間隔で設置される複数のグリッド45、50とを含み、グリッド45、50は、アークが発生する第1側面に第1切欠部48が形成される第1グリッド45と、アークが発生する第2側面に第1切欠部48の深さとは異なる深さを有する第2切欠部53が形成される第2グリッド50とを含む。
前記側板には、嵌合孔が複数形成され、前記グリッドには、前記嵌合孔にそれぞれ結合される嵌合突起が複数形成されることを特徴とする請求項1に記載の配線用遮断器のアーク消弧装置。
前記第1切欠部の深さ(高さ)は、前記第1側面から最も遠い位置に配置された前記嵌合突起の位置より浅く(低く)形成され、前記第2切欠部の深さ(高さ)は、前記第2側面から最も遠い位置に配置された前記嵌合突起の位置より浅く(低く)形成されることを特徴とする請求項2に記載の配線用遮断器のアーク消弧装置。
前記第1切欠部の深さと前記第2切欠部の深さの差は、前記第1切欠部と前記第2切欠部のうち深さの浅い切欠部の深さより小さく形成されることを特徴とする請求項1に記載の配線用遮断器のアーク消弧装置。
前記第1切欠部の第1中央部及び前記第2切欠部の第2中央部は、それぞれ前記第1グリッド及び前記第2グリッドの左右中心線上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の配線用遮断器のアーク消弧装置。
前記複数のグリッドは、上方に配置されたグリッドの背板より下方に配置されたグリッドの背板の方が長く形成されることを特徴とする請求項8に記載の配線用遮断器のアーク消弧装置。
前記複数のグリッドは、上方に配置されたグリッドの背板の傾斜角より下方に配置されたグリッドの背板の傾斜角の方が大きく形成されることを特徴とする請求項8に記載の配線用遮断器のアーク消弧装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、配線用遮断器(MCCB: Molded Case Circuit Breaker)は、電気的に過負荷状態や短絡事故時に自動で回路を遮断して回路及び負荷を保護する電気機器である。
【0003】
配線用遮断器は、電源又は負荷に接続される端子部、固定接触子及びそれに接離して回路を接離する可動接触子を含む接点部、可動接触子を動作させて回路の開閉に必要な動力を供給する開閉機構、回路に流れる過電流又は短絡電流を検知して開閉機構のトリップ動作を誘導するトリップ部、異常電流遮断時に発生するアークを消弧するための消弧部などから構成される。
【0004】
図14は従来技術による配線用遮断器の内部構造図である。従来技術による配線用遮断器は、絶縁物で形成されるケース9の内部に電源側から負荷側への回路を接続又は遮断するために設けられる接点部を構成する固定接触子1及び可動接触子2、可動接触子2を回動させる動力を供給するために設けられる開閉機構4、事故電流遮断時に発生するアークを消弧するために設けられる消弧部3、異常電流を検出して開閉機構4をトリップさせるために設けられるトリップ部5などを含む。同図において、符号8はベースアセンブリのケースである。
【0005】
回路に事故電流が流れると、トリップ動作が行われ、固定接触子1から可動接触子2が分離されて電流が遮断される際に接点部にアークが発生する。このとき、アークの大きさ(強さ)は電流の大きさに比例する。アークとは大気中の気体が電圧により瞬間的にプラズマ状態となることをいい、アークの中心部では温度が8,000〜12,000℃に達して爆発的な膨張圧力を有する。つまり、接点部を溶融、消耗させて周辺部品を劣化、破壊させる特徴を有するので、アークが持続するか否かは遮断器の性能及び耐久性に大きな影響を及ぼす。よって、アークは消弧部3内で迅速に遮断され、消弧されて排出されなければならない。
【0006】
このように、配線用遮断器において、事故電流発生時にアークを処理する作業は、事故電流を遮断して製品と負荷及び線路を保護する上で主要な目標となり、遮断器の性能に直接的な影響を及ぼす。
【0007】
図15及び
図16は
図14のベースアセンブリの内部構造図であり、それぞれ通電状態、遮断状態を示す。配線用遮断器のベースアセンブリは、絶縁物で射出成形されるベースアセンブリケース8と、ベースアセンブリケース8に設けられる接点部(1、2)及び消弧部3とを含む。
【0008】
可動接触子2は、開閉機構4の力を受けて回動するシャフト6に結合されて回動する。固定接触子1の固定接点と可動接触子2の可動接点が当接する接点部は、消弧部3の側板の内部に配置される。
【0009】
事故電流遮断時のベースアセンブリの動作は次の通りである。
【0010】
事故電流が発生すると、トリップ部5の作用により開閉機構4が動作し、それによりシャフトアセンブリ6が時計方向に回動する。このとき、接点部ではアークが発生し、アークは消弧部3内のグリッド7に移動しながら分割冷却されて消弧される。アークはグリッド7に沿って移動するにつれてアーク電圧が高くなり、ついには消滅する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、グリッド7の数が多いほどアークの消弧に有利である。
【0012】
しかし、製品の大きさの制限によりグリッド7を多く設置することはできない。よって、他の対策が必要である。
【0013】
また、上部のグリッド7以外は、グリッド7の傾斜角が排気口8aに直接対向しないようになっているので、グリッド7間を通過したアークガスのほとんどは、
図16に示すようにベースアセンブリケース8の側壁にぶつかって戻ってくるため、排気口8aから円滑に排出されない。ベースアセンブリケース8がコンパクトに形成された場合、このような排出不良現象がより顕著になり、ベースアセンブリケース8の内部に粉塵が残ったり圧力が増大する。
【0014】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、アーク消弧性能が向上した配線用遮断器のアーク消弧装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、アーク放出性能が向上した配線用遮断器のアーク消弧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様による配線用遮断器のアーク消弧装置は、ベースアセンブリケースの一部に固定設置される固定接触子と、前記固定接触子に接離する可動接触子と、前記可動接触子が前記固定接触子から分離される際に発生するアークを消弧するアーク消弧部とを含み、前記アーク消弧部は、前記ベースアセンブリケースに設置される一対の側板と、前記一対の側板間に所定の間隔で設置される複数のグリッドとを含み、前記グリッドは、アークが発生する第1側面に第1切欠部が形成される第1グリッドと、アークが発生する第2側面に前記第1切欠部の深さとは異なる深さを有する第2切欠部が形成される第2グリッドとを含む。
【0017】
ここで、前記側板には、嵌合孔が複数形成され、前記グリッドには、前記嵌合孔にそれぞれ結合される嵌合突起が複数形成されるようにしてもよい。
【0018】
また、前記側板には、前記第1グリッドと前記第2グリッドとが交互に設置されるようにしてもよい。
【0019】
さらに、前記第1切欠部の深さ(高さ)は、前記第1側面から最も遠い位置に配置された前記嵌合突起の位置より浅く(低く)形成され、前記第2切欠部の深さ(高さ)は、前記第2側面から最も遠い位置に配置された前記嵌合突起の位置より浅く(低く)形成されるようにしてもよい。
【0020】
さらに、前記第1切欠部の深さと前記第2切欠部の深さの差は、前記第1切欠部と前記第2切欠部のうち深さの浅い切欠部の深さより小さく形成されるようにしてもよい。
【0021】
さらに、前記第1グリッド及び前記第2グリッドは、左右対称に形成されるようにしてもよい。
【0022】
さらに、前記第1切欠部の第1中央部及び前記第2切欠部の第2中央部は、それぞれ前記第1グリッド及び前記第2グリッドの左右中心線上に配置されるようにしてもよい。
【0023】
本発明の他の態様による配線用遮断器のアーク消弧装置は、ベースアセンブリケースの一部に固定設置される固定接触子と、前記固定接触子に接離する可動接触子と、前記可動接触子が前記固定接触子から分離される際に発生するアークを消弧するアーク消弧部とを含み、前記アーク消弧部は、前記ベースアセンブリケースに設置される一対の側板と、前記一対の側板間に所定の間隔で設置される複数のグリッドとを含み、前記グリッドは、前記ベースアセンブリケースの底面に対して所定の第1傾斜角を有するように設置される平板と、前記平板の背面から所定の第2傾斜角を有するように延びる背板とを含み、前記第2傾斜角の方が前記第1傾斜角より大きい。
【0024】
ここで、前記平板の前端部両側には、長手方向に脚部が突設されるようにしてもよい。
【0025】
また、前記アーク消弧部は、前記脚部が挿入される側面キャップをさらに含むようにしてもよい。
【0026】
さらに、前記背板の両側には、切欠面が形成されるようにしてもよい。
【0027】
さらに、前記複数のグリッドは、上方に配置されたグリッドの背板より下方に配置されたグリッドの背板の方が長く形成されるようにしてもよい。
【0028】
さらに、前記複数のグリッドは、上方に配置されたグリッドの背板の傾斜角より下方に配置されたグリッドの背板の傾斜角の方が大きく形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様による配線用遮断器のアーク消弧装置によれば、切欠部の深さが異なる第1グリッドと第2グリッドとが交互に設置されるので、アーク伸長能力が向上する。よって、アーク消弧性能が向上する。
【0030】
本発明の他の態様による配線用遮断器のアーク消弧装置によれば、グリッドに背板が傾斜して形成されて排気口を向いているので、アーク放出性能が向上する。よって、アーク消弧性能が向上する。
【0031】
ここで、上方に配置されたグリッドの背板より下方に配置されたグリッドの背板の方が長く形成されるので、グリッドを通過したアークガスの運動方向の上方への転換が容易になる。
【0032】
また、上方に配置されたグリッドの背板の傾斜角より下方に配置されたグリッドの背板の傾斜角の方が大きく形成されるので、アークガスは排気口に向かって集中する。
【0033】
よって、各グリッドの間隔を狭く設定して同一空間内にグリッドをより多く設置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態による配線用遮断器のアーク消弧装置について説明するが、これは本発明を詳細に説明するためのものであり、本発明の技術的思想や範囲を限定するものではない。
【0036】
まず、
図1〜
図7を参照して、本発明の一態様による配線用遮断器のアーク消弧装置について説明する。
【0037】
図1は本発明の一態様による配線用遮断器の内部構造図であり、
図2及び
図3は
図1のベースアセンブリの内部構造図であり、それぞれ通電状態(閉路状態)、遮断状態(開放状態)を示す。
【0038】
本発明の一態様による配線用遮断器のアーク消弧装置は、ベースアセンブリケース(単に、ベースともいう)11の一部に固定設置される固定接触子15、16と、固定接触子15、16に接離する可動接触子32、33と、可動接触子32、33が固定接触子15、16から分離される際に発生するアークを消弧するアーク消弧部(アーク消弧装置、アークチャンバ、アークシュート)40とを含み、アーク消弧部40は、ベースアセンブリケース11に設置される一対の側板41と、一対の側板41間に所定の間隔で設置される複数のグリッド45、50とを含み、グリッド45、50は、アークが発生する側面に第1切欠部48が形成される第1グリッド45と、アークが発生する側面に第1切欠部48の深さとは異なる深さを有する第2切欠部53が形成される第2グリッド50とを含む。
【0039】
ケース10は、配線用遮断器の構成要素を収容して支持する。ケース10は、略箱状に形成される。ケース10の上面からはハンドル13が露出する。ハンドル13は、ユーザの手動の操作力により開閉機構12を動作させる。
【0040】
ケース10の前面には電源に接続される端子部18が設けられ、ケース10の背面には負荷に接続される端子部19が設けられる。端子部18、19は、各相毎に(又は各極毎に)設けられる。例えば、3相4極配線用遮断器の場合は、電源側及び負荷側に各4つの端子部が設けられる。
【0041】
固定接触子15、16は、ケース10の内部に固定設置される。固定接触子15は端子部18に接続され、固定接触子16は端子部19に接続される。双接点タイプの配線用遮断器(double circuit breaker)の場合、固定接触子15は電源側に設けられ、固定接触子16は負荷側に設けられる。すなわち、電源側固定接触子15と負荷側固定接触子16とが備えられる。ここで、電源側固定接触子15は、電源側端子部18に直接連結されてもよく、一体に形成されてもよい。負荷側固定接触子16は、トリップ機構20(とりわけ、ヒータ21)を介して負荷側端子部19に連結されてもよい。
【0042】
接点部(固定接触子及び可動接触子)の近くには、遮断時に発生するアークを消弧するためにアーク消弧部40が設けられる。双接点タイプの配線用遮断器の場合、アーク消弧部40は電源側及び負荷側にそれぞれ設けられる。アーク消弧部40は、一対の側板41と、側板41に所定の間隔で結合される複数のグリッド45、50とを含む。
【0043】
ケース10の一部には、回路に流れる異常電流を検出して開閉機構12をトリップさせるためのトリップ部20が設けられる。トリップ部20は、通常負荷側に設けられる。トリップ部20は、負荷側端子部19に連結されるヒータ21と、ヒータ21に結合され、熱を検知して熱量に応じて湾曲するバイメタル22と、ヒータ21の周辺に設置されるマグネット23及びアーマチュア24と、バイメタル22又はアーマチュア24の接触により回動するように設置されるクロスバー25と、クロスバー25の回動により拘束又は解除されて開閉機構12のネイル(図示せず)を拘束又は解除するシュータ26とを含んでもよい。通常、小電流の遅延遮断時には、ヒータ21に発生する熱によりバイメタル22が湾曲してクロスバー25を回動させることにより開閉機構12が動作し、大電流の瞬時遮断時には、マグネット23に励磁される磁力によりアーマチュア24が吸引されてクロスバー25を回動させることにより開閉機構12が動作する。
【0044】
ユーザの操作力はハンドル13により開閉機構12に伝達される。開閉機構12の動力を各相に伝達するために、開閉機構12には一対の回動ピン14が設置される。回動ピン14は、全ての相にわたる長さに形成され、シャフトアセンブリ(又は可動子アセンブリ)30に設置される。
【0045】
ベースアセンブリケース11は、射出成形物からなるようにしてもよい。ベースアセンブリケース11は、略箱状に形成される。ベースアセンブリケース11には、接点部(15、16、32、33)とアーク消弧部40が設けられる。ベースアセンブリケース11の上部に開閉機構12が設けられてもよい。
【0046】
シャフトアセンブリ30は、シャフト本体31と可動接触子32、33とを含む。
【0047】
シャフト本体31は円柱状に形成される。シャフト本体31の平坦な両側面(円板面)から軸35が突設される。シャフト本体31には、軸35の方向と平行に貫通して回動ピン14を挿入できる一対のピン孔36が形成される。
【0048】
回動ピン14は、シャフトアセンブリ30に貫挿される。シャフトアセンブリ30は、回動ピン14により開閉機構12の開閉動力を受けて回動する。シャフト本体31が回動することにより、可動接触子32、33が回動して固定接触子15、16に接離する。
【0049】
可動接触子32、33は、シャフト本体31に回動可能に設置される。可動接触子32、33は、シャフト本体31と共に又は独立して反時計方向又は時計方向に回動して固定接触子15、16に接離することにより、線路を通電又は遮断する。
【0050】
可動接触子32、33の両端部には、固定接触子15の固定接点15aに接触する可動接点32a、及び固定接触子16の固定接点16aに接触する可動接点33aがそれぞれ備えられる。可動接点32a、33aは、クロム−銅(Cr−Cu)合金など、導電性及び耐久性に優れた材質で製作される。
【0051】
可動接触子32、33は、一般的な小電流又は大電流遮断時にはシャフト本体31と共に回動するが、限流遮断時には急激な電磁反発力により独立して回動する。この場合、可動接触子32、33は、シャフト本体31のシャフトピン34に接して回動が止まる。
【0052】
アーク消弧部40は、固定接触子15、16の固定接点15a、16aと可動接触子32、33の可動接点32a、33aの周辺に設けられる。
【0053】
アーク消弧部40は、対称に対向する一対の側板41と、鉄板で形成されて側板41に所定の間隔で並んで挿入される複数のグリッド45、50とを含む。アーク消弧部40は、側板41とグリッド45、50に囲まれてアークを消弧する内部空間を形成する。
【0054】
回路が正常状態にある場合、固定接触子15、16の固定接点15a、16aと可動接触子32、33の可動接点32a、33aとが接続されて電流が流れる。回路に事故電流が発生すると、開閉機構12により可動接触子32、33が回動して可動接点32a、33aが固定接点15a、16aから分離されて電流が遮断される。このとき、可動接点32a、33aと固定接点15a、16a間でアークが発生する。このアークは各グリッド45、50間に入って短いアークに分割され、アーク電圧が上昇する。そして、アーク電圧はアーク消弧部40内に存在するSF6などのアーク消弧用ガスによりさらに上昇する。よって、アークは自由電子の放出が抑制されて消滅する。
【0055】
側板41は、対称となる一対で備えられる。側板41は、絶縁材質からなることが好ましい。すなわち、遮断時に発生するアークは側板41で反射してグリッド45、50間に集まる。
【0056】
側板41には、グリッド45、50が結合される第1嵌合孔42及び第2嵌合孔43が複数形成される。第1嵌合孔42及び第2嵌合孔43は、異なる大きさを有するように形成されてもよい。
【0057】
側板41の背面にはマグネット55が備えられてもよい。マグネット55は、接点部(15、16、32、33)が位置する部分に備えられ、接点時に発生するアークをグリッド45、50のある方向へ誘導する磁力を発生する。
【0058】
グリッド45、50は、アークを吸引して消弧するためのものである。ここで、グリッド45、50は、複数設けられ、一対の側板41に設置される。
【0059】
グリッド45、50は、第1グリッド45と第2グリッド50とから構成される。
【0060】
第1グリッド45は平板からなる。第1グリッド45は、アークの吸引を有利にするために、鉄材で形成される。第1グリッド45の両側面には、側板41への設置のための第1嵌合突起46、47が突設される。第1グリッド45の第1嵌合突起46、47が側板41の第1及び第2嵌合孔42、43に嵌合される。このとき、安定した結合のためにコーキング作業を行ってもよい。
【0061】
第1グリッド45は、前部(アークが発生する側面、接点部に隣接する側面、第1側面)の中央部が切り欠かれて第1切欠部48が形成される。第1切欠部48は、接点部が動作し、アークが吸引されて分割される空間を提供するために設けられる。第1切欠部48は、V字状凹部、U字状凹部などからなるようにしてもよい。第1切欠部48が設けられることにより、アークの吸引及び分割による消弧性能が向上する。第1切欠部48の最も深い部分を第1中央部49という。第1グリッド45が左右対称に形成された場合、第1中央部49は左右の中心線上に位置する。
【0062】
第1切欠部48は、前記第1側面から遠い位置に配置された第1嵌合突起46の位置より深く形成されることはない。すなわち、
図7に示すように、第1側面を下にした平面図上で第1中央部49の高さは第1嵌合突起46の上端部の高さより低い。第1切欠部48の深さが深すぎる場合、第1グリッド45の強度が弱くなり、よって、第1中央部49部分が破れたり曲がりやすくなる。
【0063】
第2グリッド50は、平板からなる。第2グリッド50は、アークの吸引を有利にするために、鉄材で形成される。第2グリッド50の両側面には、側板41への設置のための第2嵌合突起51、52が突設される。第2グリッド50の第2嵌合突起51、52が側板41の第1及び第2嵌合孔42、43に嵌合される。このとき、安定した結合のためにコーキング作業を行ってもよい。
【0064】
第2グリッド50は、前部(アークが発生する側面、接点部に隣接する側面、第2側面)の中央部が切り欠かれて第2切欠部53が形成される。第2切欠部53は、接点部が動作し、アークが吸引されて分割される空間を提供するために設けられる。第2切欠部53は、V字状凹部、U字状凹部などからなるようにしてもよい。第2切欠部53が設けられることにより、アークの吸引及び分割による消弧性能が向上する。第2切欠部53の最も深い部分を第2中央部54という。第2グリッド50が左右対称に形成された場合、第2中央部54は左右の中心線上に位置する。
【0065】
第2切欠部53は、前記第2側面から遠い位置に配置された第2嵌合突起51の位置より深く形成されることはない。すなわち、
図7に示すように、第2側面を下にした平面図上で第2中央部54の高さは第2嵌合突起51の上端部の高さより低い。第2切欠部53の深さが深すぎる場合、第2グリッド50の強度が弱くなり、よって、第2中央部54部分が破れたり曲がりやすくなる。
【0066】
第2切欠部53の深さは第1切欠部48の深さより浅い。ここで、第1中央部49の深さ(高さ)をD1、第2中央部54の深さ(高さ)をD2とすると、D1>D2である。また、第1中央部49の深さD1が第2中央部54の深さD2の2倍より大きくなることはない。すなわち、第1中央部49の深さD1と第2中央部54の深さD2の差D3は、第1中央部49の深さD1の1/2より小さい値に設定される。これは、第2中央部54の深さD2が浅すぎないようにするためである。第2中央部54の深さD2が浅すぎる場合、第2グリッド50のアーク消弧能力が減少する。
【0067】
第1グリッド45及び第2グリッド50は、それぞれ複数備えられ、側板41に所定の間隔をおいて多層に設置されてもよい。ここで、第1グリッド45と第2グリッド50とは、交互に設置されることが好ましい。すなわち、最上端から第1グリッド45、第2グリッド50、第1グリッド45、第2グリッド50…の順に設置されることが好ましい。こうすることにより、アークは第2中央部54から第1中央部49の方にさらに伸長する。よって、アーク伸長及び消弧性能が向上する。
【0068】
第1グリッド45と第2グリッド50間にはアークが通過できる通路が設けられる。第1グリッド45及び第2グリッド50が積層設置される間隔は、アークの分割及び吸引力を考慮して適宜設定される。本態様においては、アーク消弧部40のアーク伸長能力が向上するので、グリッド45、50の間隔を従来技術より相対的に狭くすることができる。よって、グリッド45、50をより多く設置することができる。
【0069】
グリッド45、50の後方には排気板60が設けられる。排気板60は、アークガスの放出と外部異物の侵入防止のために設けられる。排気板60には複数の通気孔が形成される。
【0070】
本発明の一態様による配線用遮断器のアーク消弧装置によれば、切欠部の深さが異なる第1グリッドと第2グリッドとが交互に設置されるので、アーク伸長能力が向上する。よって、アーク消弧性能が向上する。
【0071】
次に、
図8〜
図13を参照して、本発明の他の態様による配線用遮断器のアーク消弧装置について説明する。
【0072】
図8は本発明の他の態様による配線用遮断器の内部構造図であり、
図9は
図8のベースアセンブリの正面図であり、
図10は
図9のアーク消弧部の分解斜視図であり、
図11は
図9のアーク消弧部の部分詳細図である。
【0073】
本発明の他の態様による配線用遮断器のアーク消弧装置は、ベースアセンブリケース(単に、ベースともいう)111の一部に固定設置される固定接触子115、116と、固定接触子115、116に接離する可動接触子132、133と、可動接触子132、133が固定接触子115、116から分離される際に発生するアークを消弧するアーク消弧部140とを含み、アーク消弧部140は、ベースアセンブリケース111に設置される一対の側板141と、一対の側板141間に所定の間隔で設置される複数のグリッド150とを含み、グリッド150は、ベースアセンブリケース111の底面に対して所定の第1傾斜角を有するように設置される平板150aと、平板150aの背面から所定の第2傾斜角を有するように延びる背板150bとを含み、前記第2傾斜角の方が前記第1傾斜角より大きい。
【0074】
ケース110は、配線用遮断器の構成要素を収容して支持する。ケース110は、略箱状に形成される。ケース110の上面からはハンドル113が露出する。ハンドル113は、ユーザの手動の操作力により開閉機構112を動作させる。
【0075】
ケース110の前面には電源に接続される端子部118が設けられ、ケース110の背面には負荷に接続される端子部119が設けられる。端子部118、119は、各相毎に(又は各極毎に)設けられる。例えば、3相4極配線用遮断器の場合は、電源側及び負荷側に各4つの端子部が設けられる。
【0076】
固定接触子115、116は、ケース110の内部に固定設置される。固定接触子115は端子部118に接続され、固定接触子116は端子部119に接続される。双接点タイプの配線用遮断器の場合、固定接触子115は電源側に設けられ、固定接触子116は負荷側に設けられる。すなわち、電源側固定接触子115と負荷側固定接触子116とが備えられる。ここで、電源側固定接触子115は、電源側端子部118に直接連結されてもよく、一体に形成されてもよい。負荷側固定接触子116は、トリップ機構120(とりわけ、ヒータ121)を介して負荷側端子部119に連結されてもよい。
【0077】
接点部(固定接触子及び可動接触子)の近くには、遮断時に発生するアークを消弧するためにアーク消弧部140が設けられる。双接点タイプの配線用遮断器の場合、アーク消弧部140は電源側及び負荷側にそれぞれ設けられる。アーク消弧部140は、一対の側板141と、側板141に所定の間隔で結合される複数のグリッド150とを含む。
【0078】
ケース110の一部には、回路に流れる異常電流を検出して開閉機構112をトリップさせるためのトリップ部120が設けられる。トリップ部120は、通常負荷側に設けられる。トリップ部120は、負荷側端子部119に連結されるヒータ121と、ヒータ121に結合され、熱を検知して熱量に応じて湾曲するバイメタル122と、ヒータ121の周辺に設置されるマグネット123及びアーマチュア124と、バイメタル122又はアーマチュア124の接触により回動するように設置されるクロスバー125と、クロスバー125の回動により拘束又は解除されて開閉機構112のネイル(図示せず)を拘束又は解除するシュータ126とを含んでもよい。通常、小電流の遅延遮断時には、ヒータ121に発生する熱によりバイメタル122が湾曲してクロスバー125を回動させることにより開閉機構112が動作し、大電流の瞬時遮断時には、マグネット123に励磁される磁力によりアーマチュア124が吸引されてクロスバー125を回動させることにより開閉機構112が動作する。
【0079】
ユーザの操作力はハンドル113により開閉機構112に伝達される。開閉機構112の動力を各相に伝達するために、開閉機構112には一対の回動ピン114が設置される。回動ピン114は、全ての相にわたる長さに形成され、シャフトアセンブリ(又は可動子アセンブリ)130に設置される。
【0080】
ベースアセンブリケース111は、射出成形物からなるようにしてもよい。ベースアセンブリケース111は、略箱状に形成される。ベースアセンブリケース111には、接点部(115、116、132、133)とアーク消弧部140が設けられる。ベースアセンブリケース111の上部に開閉機構112が設けられてもよい。
【0081】
ベースアセンブリケース111においてアーク消弧部140の後方部には排気口160が形成される。排気口160は、電源側壁の上端部と負荷側壁の下端部にそれぞれ設けられてもよい。
【0082】
シャフトアセンブリ130は、シャフト本体131と可動接触子132、133とを含む。
【0083】
シャフト本体131は円柱状に形成される。シャフト本体131の平坦な両側面(円板面)から軸135が突設される。シャフト本体131には、軸135の方向と平行に貫通して回動ピン114を挿入できる一対のピン孔136が形成される。
【0084】
回動ピン114は、シャフトアセンブリ130に貫挿される。シャフトアセンブリ130は、回動ピン114により開閉機構112の開閉動力を受けて回動する。シャフト本体131が回動することにより、可動接触子132、133が回動して固定接触子115、116に接離する。
【0085】
可動接触子132、133は、シャフト本体131に回動可能に設置される。可動接触子132、133は、シャフト本体131と共に又は独立して反時計方向又は時計方向に回動して固定接触子115、116に接離することにより、線路を通電又は遮断する。
【0086】
可動接触子132、133の両端部には、固定接触子115の固定接点115aに接触する可動接点132a、及び固定接触子116の固定接点116aに接触する可動接点133aがそれぞれ備えられる。可動接点132a、133aは、クロム−銅(Cr−Cu)合金など、導電性及び耐久性に優れた材質で製作される。
【0087】
可動接触子132、133は、一般的な小電流又は大電流遮断時にはシャフト本体131と共に回動するが、限流遮断時には急激な電磁反発力により独立して回動する。この場合、可動接触子132、133は、シャフト本体131のシャフトピン134に接して回動が止まる。
【0088】
アーク消弧部140は、固定接触子115、116の固定接点115a、116aと可動接触子132、133の可動接点132a、133aの周辺に設けられる。
【0089】
アーク消弧部140は、対称に対向する一対の側板141と、鉄板で形成されて側板141に所定の間隔で並んで挿入される複数のグリッド150とを含む。本態様において、アーク消弧部140は、グリッド150の脚部が挿入される側面キャップ145をさらに含んでもよい。アーク消弧部140は、側板141、グリッド150及び側面キャップ145に囲まれてアークを消弧する内部空間を形成する。
【0090】
回路が正常状態にある場合、
図12に示すように、固定接触子115、116の固定接点115a、116aと可動接触子132、133の可動接点132a、133aとが接続されて電流が流れる。回路に事故電流が発生すると、開閉機構112によるシャフト本体131の回動により又は独立して可動接触子132、133が回動して可動接点132a、133aが固定接点115a、116aから分離されて電流が遮断される(
図13を参照)。このとき、可動接点132a、133aと固定接点115a、116a間でアークが発生する。このアークは各グリッド150間に入って短いアークに分割され、アーク電圧が上昇する。そして、アーク電圧はアーク消弧部140内に存在するSF6などのアーク消弧用ガスによりさらに上昇する。よって、アークは自由電子の放出が抑制されて消滅する。
【0091】
側板141は、対称となる一対で備えられる。側板141は、絶縁材質からなることが好ましい。すなわち、遮断時に発生するアークは側板141で反射してグリッド150間に集まる。
【0092】
側板141には、グリッド150が結合される嵌合溝142及び嵌合孔143が複数形成される。嵌合溝142及び嵌合孔143は、それぞれ、上下方向に所定の間隔をおいて並んで形成されてもよい。
【0093】
側板141の内面には、各グリッド150間に挟まれる突出板144が備えられてもよい。突出板144は、それぞれの嵌合溝142及び嵌合孔143と嵌合溝142及び嵌合孔143間に形成されることが好ましい。
【0094】
グリッド150は、アークを吸引して消弧するためのものである。ここで、グリッド150は、複数設けられ、一対の側板141間に設置される。グリッド150は平板からなる。グリッド150は、アークの吸引を有利にするために、鉄材で形成される。
【0095】
グリッド150は、平板150aと、平板150aの背面から平板150aに対して所定の角度を有するように延設される背板150bとから構成される。ここで、平板150aは、ベースアセンブリケース111の底面に対して所定の第1傾斜角(α)を有するように設置される。一方、背板150bは、ベースアセンブリケース111の底面に対して所定の第2傾斜角(β)を有するように形成される。
【0096】
ここで、第1傾斜角(α)は小さい鋭角(例えば15度未満)である。よって、限られたベースアセンブリケース111の内部空間にグリッド150を相対的に多く配置することができる。
【0097】
一方、第2傾斜角(β)は第1傾斜角(α)より大きい鋭角(例えば15〜60度の範囲)である。よって、グリッド150間に吸引されたアークガスはグリッド150の背板150bで排気口160の方向に運動方向が転換される。
【0098】
各グリッド150を区分するために、複数のグリッド150のうち最上端に設置されたグリッド150から第1グリッド151、第2グリッド152、第3グリッド153…という。
【0099】
グリッド150についてより詳細に説明するために、最上端の第1グリッド151を例に説明する。最上端の第1グリッド151は、第1平板151aと第1背板151bとから構成される(
図10を参照)。
【0100】
第1平板151aの両側面には、側板141への設置のための嵌合突起151c、151dが離隔して突設される。第1グリッド151の嵌合突起151cが側板141の嵌合溝142に嵌合され、第1グリッド151の嵌合突起151dが側板141の嵌合孔143に嵌合される。このとき、安定した結合のためにコーキング作業を行ってもよい。
【0101】
第1グリッド151は、前部(アークが発生する側面、接点部に隣接する側面、第1側面)の中央部が切り欠かれて第1切欠部151eが形成される。第1切欠部151eは、接点部(115、116、132、133)が動作し、アークが吸引されて分割される空間を提供するために設けられる。第1切欠部151eは、V字状凹部、U字状凹部などからなるようにしてもよい。第1切欠部151eが設けられることにより、アークの吸引及び分割による消弧性能が向上する。第1切欠部151eの最も深い部分を第1中央部151fという。第1グリッド150が左右対称に形成された場合、第1中央部151fは左右の中心線上に位置する。
【0102】
第1切欠部151eの第1中央部151fは、長手方向において嵌合突起151cと嵌合突起151d間に位置することが好ましい。第1グリッド151において第1切欠部151eの深さが深すぎる場合、第1グリッド151の強度が弱くなり、よって、第1中央部151f部分が破れたり曲がりやすくなる。
【0103】
第1平板151aの前端部両側には脚部151gが長手方向に突設される。脚部151gは側面キャップ145に挿入される。脚部151gが側面キャップ145に固定されるので、第1グリッド151は側板141に結合された状態を安定して維持する。
【0104】
第1背板151bは、第1平板151aの背面から所定角度の傾斜を有するように延設される。第1背板151bが第1平板151aから折り曲げられて形成されるので、第1平板151aに沿って流動したアークガスは第1背板151bで方向転換されて第1背板151bに沿って流動する。
【0105】
第1背板151bには両側に切欠面151hが形成される。切欠面151hにより、第1背板151bを第1平板151aから折り曲げる工程が容易になる。また、切欠面151hにより、嵌合溝142に嵌合突起151cを嵌める作業も容易になる。
【0106】
ここで、第1グリッド151について説明した内容は他のグリッド152、153、154…にも全て適用される。すなわち、全てのグリッドが類似した形態で形成される。
【0107】
ここで、各グリッドの背板は相対的に下方に配置されたグリッドであるほど長くなるように形成されてもよい。すなわち、第1グリッド151の背板151bの長さ<第2グリッド152の背板152bの長さ<第3グリッド153の背板153bの長さ<…のように形成される。このように上方に配置されたグリッドの背板より下方に配置されたグリッドの背板の方が長く形成されるので、アーク消弧部140の背面(排気部)においてアーク放出性能が向上する。
【0108】
また、各グリッドの背板は相対的に下方に配置されたグリッドであるほど大きい傾斜角を有するように形成されてもよい。すなわち、第1グリッド151の背板151bの傾斜角<第2グリッド152の背板152bの傾斜角<第3グリッド153の背板153bの傾斜角<…のように形成される。このように上方に配置されたグリッドの背板より下方に配置されたグリッドの背板の方が大きい傾斜角を有するように形成されるので、各背板から放出されるアークガスが排気口160に向かって集中する形態となり、アーク放出性能が向上する。
【0109】
本発明の他の態様による配線用遮断器のアーク消弧装置によれば、グリッドに背板が傾斜して形成されて排気口を向いているので、アーク放出性能が向上する。よって、アーク消弧性能が向上する。
【0110】
ここで、上方に配置されたグリッドの背板より下方に配置されたグリッドの背板の方が長く形成されるので、グリッドを通過したアークガスの運動方向の上方への転換が容易になる。
【0111】
また、上方に配置されたグリッドの背板の傾斜角より下方に配置されたグリッドの背板の傾斜角の方が大きく形成されるので、アークガスは排気口に向かって集中する。
【0112】
よって、各グリッドの間隔を狭く設定して同一空間内にグリッドをより多く設置することができる。
【0113】
本発明の一態様による配線用遮断器のアーク消弧装置によれば、切欠部の深さが異なる第1グリッドと第2グリッドとが交互に設置されるので、アーク伸長能力が向上する。よって、アーク消弧性能が向上する。
【0114】
前述した実施形態は例示的なものであり、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の基本的な特性を逸脱しない範囲で様々な修正や変形が可能であろう。つまり、前述した実施形態は本発明の技術思想を説明するためのものにすぎず、前述した実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の権利範囲は添付の特許請求の範囲により定められるべきであり、同等の範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。