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特開2020-138345動力伝達軸に用いられる管体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-138345(P2020-138345A)
(43)【公開日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】動力伝達軸に用いられる管体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/44 20060101AFI20200807BHJP
   B60K 17/22 20060101ALI20200807BHJP
   F16C 3/02 20060101ALI20200807BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20200807BHJP
【FI】
   B29C70/44
   B60K17/22 Z
   F16C3/02
   B29L23:00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-33777(P2019-33777)
(22)【出願日】2019年2月27日
(11)【特許番号】特許第6563147号(P6563147)
(45)【特許公報発行日】2019年8月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 一希
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴博
【テーマコード(参考)】
3D042
3J033
4F205
【Fターム(参考)】
3D042AA06
3D042AB01
3D042AB17
3D042DA05
3D042DA09
3J033AA01
3J033AB01
3J033AB02
3J033AC01
3J033BA02
3J033BA07
3J033BA20
3J033BC03
4F205AA36
4F205AB11
4F205AB18
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG08
4F205AJ05
4F205AJ11
4F205AK01
4F205HA09
4F205HA22
4F205HA33
4F205HA35
4F205HA42
4F205HB01
4F205HC04
4F205HC17
4F205HG01
4F205HK03
4F205HK05
4F205HM13
4F205HT02
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】芯材を用いることなく管体を製造できる動力伝達軸に用いられる管体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、繊維強化プラスチック製であって動力伝達軸に用いられる管体の製造方法であって、金型1のキャビティ面4上に未硬化の繊維強化樹脂を配置し、筒状の樹脂体15を生成する生成工程と、樹脂体15の内部に高温の流体を供給し、樹脂体15の樹脂を硬化させる硬化工程と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック製であって動力伝達軸に用いられる管体の製造方法であって、
金型のキャビティ面上に未硬化の繊維強化樹脂を配置し、筒状の樹脂体を生成する生成工程と、
前記樹脂体の内部に流体を供給し、前記樹脂体の樹脂を硬化させる硬化工程と、
を備えることを特徴とする動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項2】
前記生成工程において、前記樹脂体の内部に膨張体を配置し、
前記硬化工程において、前記膨張体内に前記樹脂体が硬化する温度の前記流体を供給し、前記膨張体が膨張して前記樹脂体に当接することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項3】
繊維強化プラスチック製であって動力伝達軸に用いられる管体の製造方法であって、
繊維が巻回された筒状の膨張体を金型内に配置する準備工程と、
前記膨張体に流体を供給し、前記膨張体を膨張させる膨張工程と、
前記金型内に未硬化の樹脂を供給する供給工程と、
前記未硬化の樹脂を硬化させる硬化工程と、を備えることを特徴とする動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項4】
前記硬化工程において、さらに前記金型を加熱することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項5】
前記金型のキャビティ面は、前記管体の本体部を成形する本体部用成形面を有し、
前記本体部用成形面は、中央部から端部に向うに連れて次第に縮径していることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項6】
前記金型のキャビティ面は、前記管体の本体部を成形する本体部用成形面を有し、
前記本体部用成形面は、中央部から一端部に向うに連れて次第に縮径する一方で、前記中央部から他端部までの径が一定となっていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項7】
前記金型のキャビティ面は、前記管体の本体部を成形する本体部用成形面を有し、
前記本体部用成形面は、一端部から他端部までの径が一定となっていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項8】
前記金型のキャビティ面は、前記管体の接続部を成形する接続部用成形面を有し、
前記接続部用成形面は、断面形状が多角形状となっていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達軸に用いられる管体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される動力伝達軸(プロペラシャフト)は、車両の前後方向に延在する管体を備え、この管体により原動機で発生し変速機で減速された動力を終減速装置に伝達している。
このような動力伝達軸に用いられる管体として、繊維強化プラスチックで形成されたものがある。繊維強化プラスチック製であって動力伝達軸に用いられる管体の製造方法としては、例えば、熱硬化性樹脂を含浸した連続繊維をマンドレルに何重にも巻き付けて筒状の成形体を形成する。その後、成形体を加熱し樹脂を硬化させ、筒状の管体が形成される。その後、硬化した管体の端部の開口からマンドレルを引き抜き、製造工程が終了する(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−265738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、管体の形状に関し、近年、両端部よりも中央部の方が径方向外側に膨らんだいわゆる樽形状(バレル形状)とすることが研究されている。
しかしながら、樽形状のマンドレルを用いて上記形状の管体を形成しようとすると、マンドレルの中央部が外側に膨らみ、管体の開口を通過できず、管体からマンドレルを引き抜くことができない。よって、芯材(マンドレル)を用いることなく、管体を製造できる新規な製造方法が望まれている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、芯材を用いることなく管体を製造できる動力伝達軸に用いられる管体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第一発明は、繊維強化プラスチック製であって動力伝達軸に用いられる管体の製造方法であって、金型のキャビティ面上に未硬化の繊維強化樹脂を配置し、筒状の樹脂体を生成する生成工程と、前記樹脂体の内部に流体を供給し、前記樹脂体の樹脂を硬化させる硬化工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記課題を解決するため、第二発明は、繊維強化プラスチック製であって動力伝達軸に用いられる管体の製造方法であって、繊維が巻回された筒状の膨張体を金型内に配置する準備工程と、前記膨張体に流体を供給し、前記膨張体を膨張させる膨張工程と、前記金型内に未硬化の樹脂を供給する供給工程と、前記未硬化の樹脂を硬化させる硬化工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金型に倣った形状の管体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】動力伝達軸を側面視した側面図である。
図2】動力伝達軸に用いられる管体の本体部を軸線方向に切った断面図である。
図3】第一実施形態に係る管体の製造工程を示すフローチャートである。
図4】第一実施形態に係る管体の製造工程の準備工程を示す図である。
図5】第一実施形態に係る管体の製造工程の生成工程を示す図である。
図6】第一実施形態に係る管体の製造工程の硬化工程を示す図である。
図7】第一実施形態に係る管体の製造工程の取り出し工程を示す図である。
図8】第二実施形態に係る管体の製造工程の硬化工程を示す図である。
図9】第三実施形態に係る管体の製造工程の生成工程を示す図である。
図10】第四実施形態に係る管体の製造工程を示すフローチャートである。
図11】第四実施形態に係る管体の製造工程の準備工程を示す図である。
図12】第四実施形態に係る管体の製造工程の供給工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、各実施形態における動力伝達軸に用いられる管体の製造方法について、図面を参照しながら説明する。各実施形態で共通する技術的要素には、共通の符号を付し、説明を省略する。最初に各製造方法で製造される動力伝達軸について説明する。
【0011】
[動力伝達軸]
図1に示すように、動力伝達軸101は、FF(Front−engine Front−drive)ベースの四輪駆動車に搭載されるプロペラシャフトである。車両の前後方向に延在する略円筒状の管体102と、管体102の前端に接合する十字軸ジョイントのスタブヨーク103と、管体102の後端に接合する等速ジョイントのスタブシャフト104と、を備えている。
スタブヨーク103は、車体の前部に搭載された変速機と管体102とを連結する連結部材である。スタブシャフト104は、車体の後部に搭載された終減速装置と管体102とを連結する連結部材である。
動力伝達軸101は、変速機から動力(トルク)が伝達されると軸線O1回りに回転し、その動力を終減速装置に伝達する。
【0012】
管体102は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により形成されている。
管体102の内部において、軸線O1を中心に周方向に延在する繊維からなる繊維層と、軸線O1方向に延在する繊維からなる繊維層と、が積層している。このため、管体102は、機械的強度が高く、かつ、軸線O1方向に高弾性化している。
また、周方向に配向する繊維としてPAN系(Polyacrylonitrile)繊維が好ましく、軸線O1方向に配向する繊維としてピッチ繊維が好ましい。
なお、本発明において繊維強化プラスチックに使用される繊維は、炭素繊維に限られず、ガラス繊維やアラミド繊維であってもよい。
管体102は、管体102の大部分を占める本体部110と、本体部110の前側に配置された第一接続部120と、本体部110の後側に配置された第二接続部130と、本体部110と第二接続部130との間に位置する傾斜部140と、を備えている。
【0013】
なお、図2以降の図面においては、管体102の形状を分かり易くするため、管体102の形状を誇張して描写している。
図2に示すように、本体部110の前端部111には、第一接続部120が連続し、本体部110の後端部112には、傾斜部140が連続している。
【0014】
軸線O1を法線とする平面で本体部110を切った場合、本体部110の外周面114の断面形状及び内周面115の断面形状は、円形状となっている。本体部110の外径は、中央部113から両端部(前端部(他端部)111及び後端部(一端部)112)に向うに連れて縮径しており、中央部113の外径R1は、両端部(前端部111及び後端部112)の外径R2よりも大きい。
なお、本体部110の内径も、本体部110の中央部113から両端部(前端部111及び後端部112)に向うに連れて縮径している。
【0015】
軸線O1に沿って本体部110を切った場合、本体部110の外周面114の断面形状及び内周面115の断面形状は、緩やかな曲線を描き、中央部113が外側に向けて突出する円弧状となっている。よって、本体部110の外形は、中央部113が径方向外側に膨らむ樽形状(バレル形状)となっている。また、その断面形状において、本体部110の板厚は、両端部(前端部111及び後端部112)から中央部113に向うに連れて薄くなっており、中央部113の板厚T1は、両端部(前端部111及び後端部112)の板厚T2よりも薄い。
【0016】
図1に示すように、第一接続部120内には、スタブヨーク103のシャフト部103aが嵌め込まれている。シャフト部103aの外周面は、多角形状に形成されている。第一接続部120の内周面は、シャフト部103aの外周面に倣った多角形状に形成されている。このため、スタブヨーク103と管体102が互いに相対回転しないように構成されている。
第二接続部130内には、スタブシャフト104のシャフト部104aが嵌め込まれている。第二接続部130の内周面は、シャフト部104aの外周面に倣った多角形状に形成されている。このため、スタブシャフト104と管体102が互いに相対回転しないように構成されている。
【0017】
傾斜部140の外径は、本体部110から第一接続部120に向かうに連れて次第に縮径し、円錐台形状となっている。傾斜部140の板厚は、第二接続部130側(後側)の端部から本体部110側(前側)の端部に向かうに連れて漸次薄くなっている。このため、傾斜部140のうち前端部の板厚が最も薄く、脆弱部を構成している。
以上から、車両が前方から衝突されて動力伝達軸101に衝突荷重が入力すると、軸線O1に対して傾斜する傾斜部140にせん断力が作用する。そして、傾斜部140に作用するせん断力が所定値を超えると、傾斜部140の前端部(脆弱部)が破損する。このため、車両衝突時、車体の前部に搭載されたエンジンや変速機は速やかに後退し、衝突エネルギーは車体の前部により吸収される。
【0018】
上記した管体102について、曲げ応力が集中し易い本体部110の中央部113は、外径R1が大径に形成され、所定の曲げ強度を有している。一方で、曲げ応力が集中し難い本体部110の両端部(前端部111及び後端部112)は、外径R2が小径に形成され、軽量化している。また、本体部110の中央部113は、板厚T1が薄く軽量化している。よって、管体102は、中央部113の所定の曲げ剛性を確保しつつ本体部110が軽量化しており、管体102の曲げ一次共振点が向上している。
【0019】
[第一実施形態]
図3に示すように、第一実施形態における製造方法は、金型1内に未硬化の繊維強化樹脂を配置する準備工程(ステップS1)と、金型1を閉じて筒状の樹脂体15を生成する生成工程(ステップS2)と、加熱して樹脂を硬化させる硬化工程(ステップS3)と、金型1から動力伝達軸101に用いられる管体102を取り出す取り出し工程(ステップS4)と、を含んでいる。
【0020】
(準備工程)
図4に示すように、第一実施形態の準備工程(ステップS1)は、キャビティ面4上に複数枚のプリプレグを載置することで、金型1内に繊維強化樹脂を配置している。
【0021】
金型1は、上型(図4において不図示。図5以降参照)2と下型3を備えている。上型2の下面と下型3の上面3aには、管体102の外形を形成するためのキャビティ面4が形成されている。
第一実施形態に係るキャビティ面4は、一方向に長く形成されている。また、キャビティ面4には、長手方向の一端から他端に向って順に、第一接続部用成形面5、本体部用成形面6、傾斜部用成形面7、並びに第二接続部用成形面8が形成されている。
第一接続部用成形面5は、管体102の第一接続部120の外形を成形する面である。本体部用成形面6は、本体部110の外形を成形する面である。傾斜部用成形面7は、傾斜部140の外形を成形する面である。第二接続部用成形面8は、第二接続部130の外形を成形する面である。
【0022】
上型2の下面及び下型3の上面3aには、型締した際に金型1内と外部とを連通する連通孔9が2つ形成されている。
連通孔9のうち1つは、第一接続部用成形面5の一端側に配置され、もう1つは第二接続部用成形面8の他端側に配置されている。
【0023】
プリプレグの樹脂として、熱硬化性樹脂が使用されている。
また、熱硬化性樹脂は、未硬化状態のものが使用されている。
尚、未硬化状態のものと記載をしているが、半硬化状態のものでもよい。つまり、ある程度硬化している樹脂であっても、金型1のキャビティ面4に沿った形状に変形できるため、半硬化した状態のものも使用することができる。
プリプレグは、単体でキャビティ面4の全てを覆うことができる大きさのものでなくてもよい。つまり、キャビティ面4の一部のみを覆うことができる大きさのものを複数繋ぎ合わせてキャビティ面4の全面を覆うようにしてもよい。
プリプレグに関し、硬化後に所定の厚みとなるように積層する枚数を調整する。例えば、本体部用成形面6に載置されるプリプレグは、長手方向の両端部から中央部に向って積層数が低減するように載置し、中央部が両端部よりも肉薄となるようにする。
また、準備工程においては、キャビティ面4上に載置するプリプレグを載置する前に離型剤を塗る。
そして、当該工程によれば、図4に示すように、上型2及び下型3のそれぞれのキャビティ面4に、半円筒形の樹脂部10が形成される。
【0024】
(生成工程)
図5に示すように、第一実施形態の生成工程(ステップS2)は、下型3の各連通孔9内に後述する加熱装置の供給管11を配置する。次に、加熱装置の供給管11の先端に加熱装置の膨張体12を係止させ、下型3内の樹脂部10の上方に膨張体12を位置させる。次に、下型3に上型2を重ね合わせて金型1を閉じ、上型2と下型3とが開かないように締め付ける。
当該工程によれば、下型3のキャビティ面4に載置する樹脂部10と上型2のキャビティ面4に載置する樹脂部10の周方向の端部同士が接触し、筒状の樹脂体15が生成される。また、樹脂体15内の中央部に膨張体12が配置される。
【0025】
(硬化工程)
図6に示すように、第一実施形態の硬化工程(ステップS3)は、供給管11を介して加熱装置から膨張体12内に高温の流体を供給し、樹脂体15の樹脂を硬化させる工程である。
膨張体12は、筒状の弾性部材であり、内部に流入する流体の量に応じて膨張する。弾性部材は、シリコーンゴムや、フッ素ゴム、アクリルゴムなど、高温の流体に耐熱性を有する材料が使用されている。なお、膨張体12は、両端が封止されており、供給管11から供給された流体が漏出しない。
加熱装置は、高温の流体を生成し供給する装置である。また、第一実施形態において供給される流体は液体である。液体の温度は樹脂体15を硬化できる温度(例えば130°〜180°)に設定されている。また、液体は、膨張体12が膨張し、膨張体12の外周面が樹脂体15の内周面に当接する程度に供給する。
当該工程によれば、図6に示すように、膨張した膨張体12が樹脂体15に当接し、液体の温度が膨張体12を介して樹脂体15に伝わる。結果、樹脂体15の樹脂が硬化し、動力伝達軸101となる。
【0026】
(取り出し工程)
第一実施形態の取り出し工程(ステップS4)は、上型2を移動させて金型1を開く。また、加熱装置を駆動させて膨張体12内に供給した液体を回収する。これにより、膨張体12は、内圧が低下し、元の形状に復帰し筒状となる。次に、膨張体12から供給管11を引き抜くとともに、図7に示すように、筒状となった膨張体12を管体102内から引き抜く。この結果、動力伝達軸101に係止するものがなく、下型3から管体102を取り出すことができる。
【0027】
以上から、第一実施形態によれば、芯材を用いることなく、いわゆる樽形状(バレル形状)の管体102を製造することができる。
【0028】
[第二実施形態]
図8に示すように、第二実施形態における動力伝達軸201に用いられる管体202の製造方法は、金型21内に繊維強化樹脂を配置する準備工程(ステップS1)と、金型21を閉じて筒状の樹脂体35を生成する生成工程(ステップS2)と、加熱して樹脂を硬化させる硬化工程(ステップS3)と、金型21から動力伝達軸201を取り出す取り出し工程(ステップS4)と、を含んでいる(図3参照)。
以下、第一実施形態との相違点に絞って説明する。
【0029】
第二実施形態の準備工程(ステップS1)において、ハンドレイアップ方法により上型22及び下型23のキャビティ面24上に半円筒状の樹脂部30を形成している。つまり、金型21のキャビティ面24上に、繊維を載置するとともにキャビティ面24に未硬化の樹脂(熱硬化樹脂)を塗布することで、繊維強化樹脂(樹脂部30)をキャビティ面24に形成している。このハンドレイアップ法によれば、キャビティ面24上に形成される樹脂部30の厚みの微調整を行うことが可能となる。
【0030】
金型21のキャビティ面24には、第一接続部用成形面5、本体部用成形面26、傾斜部用成形面7、並びに第二接続部用成形面8が形成されている。
ここで、本体部用成形面26は、中央部から第一接続部用成形面5に向って径が一定に形成された第一面26aと、中央部から傾斜部用成形面7に向って次第に縮径する第二面26bと、を備えている。
この金型21によれば、管体202の本体部210の形状は、中央部213から前端部211までの径が一定となる一方で、中央部213から後端部212に向うに連れて縮径した形状となる。
【0031】
第二実施形態の硬化工程(ステップS3)において、加熱装置は、供給管11を介して高温の気体を供給している。当該工程によれば、高温の気体が樹脂体35内に供給され、樹脂体35の樹脂が硬化する。
さらに、硬化工程(ステップS3)においては、図示しないヒータなどにより金型21を加熱している。これによれば、金型21のキャビティ面24側から樹脂体35に熱を加えることができ、樹脂体35の加熱時間が短縮する。
【0032】
第二実施形態によれば、芯材を用いることなく、繊維強化プラスチック製の管体202を製造することができる。
【0033】
[第三実施形態]
図9に示すように、第三実施形態における製造方法は、金型41内に繊維強化樹脂を配置する準備工程(ステップS1)と、金型41を閉じて樹脂体55を生成する生成工程(ステップS2)と、加熱して樹脂を硬化させる硬化工程(ステップS3)と、金型41から管体302を取り出す取り出し工程(ステップS4)と、を含んでいる(図3参照)。
以下、第一実施形態との変更点に絞って説明する。
【0034】
第三実施形態の準備工程(ステップS1)において、金型41のキャビティ面44には、第一接続部用成形面5、本体部用成形面46、傾斜部用成形面7、並びに第二接続部用成形面8を備えている。本体部用成形面46は、一端側(第一接続部用成形面5)から他端側(傾斜部用成形面7)にかけて径が一定に形成されている。この金型41によれば、径が一定に形成された円筒状の本体部310を備える管体302を製造できる。
【0035】
第三実施形態の膨張体52の外周側であって長手方向の端部には、環状部材53が巻き付けられている。環状部材53は、例えば、シリコーンゴムや、フッ素ゴム、アクリルゴムなど弾性部材で形成されている。
これによれば、膨張体52の膨張時、膨張体52の端部は中央部よりも膨張量が小さくなる。このため、樹脂体55のうち第一接続部用成形面5及び第二接続部用成形面8に配置された部分の樹脂を膨張体52が必要以上に押圧して他の部分に樹脂が流れる、ということを防止できる。
【0036】
[第四実施形態]
図10に示すように、第四実施形態における製造方法は、繊維71が巻回された膨張体72を金型61内に配置する準備工程(ステップS11)と、膨張体72に流体を供給し膨張体72を膨張させる膨張工程(ステップS12)と、金型61内に未硬化の樹脂を供給する供給工程(ステップS13)と、未硬化の樹脂を硬化させる硬化工程(ステップS14)と、金型61から管体102を取り出す取り出し工程(ステップS15)と、を含んでいる。
【0037】
(準備工程)
準備工程(ステップS11)は金型61を準備する。図11に示すように、金型61は、上型62と下型63を備えている。上型62と下型63のキャビティ面64には、第一実施形態で説明した金型1と同様に、長手方向の一端から他端に向って順に、第一接続部用成形面65、本体部用成形面66、傾斜部用成形面67、並びに第二接続部用成形面68が形成されている。
また、金型61には、供給管11を貫通させるための連通孔9と、金型61内に樹脂を供給するためのスプール69が形成されている。
【0038】
膨張体72は、第一実施形態で説明した膨張体12と同一構造のものである。繊維71は、管体102の強度を強化するためのものであり、炭素繊維、ガラス繊維やアラミド繊維が挙げられる。なお、繊維71の巻き付け方法や繊維71の配向等については特に限定されない。
膨張体72の配置は、連通孔9を貫通する供給管11の先端に係止させる。これによれば、膨張体72は、キャビティ面64から離間した状態で金型61内に固定される。
【0039】
(膨張工程)
膨張工程(ステップS12)において、供給管11を介して加熱装置から膨張体72内に流体を供給する。流体は、膨張体72が膨張し、膨張体72の外周面がキャビティ面64に当接する程度に供給する(図12参照)。なお、膨張体72に巻回された繊維71間には隙間が形成されているところ、当該膨張工程によりこの隙間が大きくなる。よって、この隙間が次工程の供給工程で樹脂が流れる流路となる。また、流体の温度は、供給工程で樹脂が硬化しない温度に設定されている。
【0040】
(供給工程)
供給工程(ステップS13)において、スプール69を介して未硬化の樹脂を金型61内に供給する。これによれば、繊維71間の隙間を流れ、図12に示すように、膨張体72の外周面とキャビティ面64との間に筒状の樹脂体75が形成される。
【0041】
(硬化工程)
硬化工程(ステップS14)において、2つの供給管11のうち一方で膨張体72内の流体を排出しつつ、他方の供給管11で高温の流体を膨張体72内に供給する。ここで、供給する流体の温度は樹脂を硬化できる温度(例えば130°〜180°)に設定されている。当該工程によれば、樹脂体75が硬化して繊維強化樹脂製の管体102が形成される。
【0042】
(取り出し工程)
取り出し工程(ステップS15)は、膨張体72内の液体を回収する。これにより、膨張体72は、内圧が低下し、元の形状に復帰し筒状となる。次いで、金型61を開いて管体102から膨張体72を引き抜き管体102が完成する。
【0043】
以上から、第四実施形態によれば、芯材を用いることなく、いわゆる樽形状(バレル形状)の管体102を製造することができる。
【0044】
以上、各実施形態について説明したが、本発明は上記した例に限定されない。
例えば、金型のキャビティ面において、スタブヨーク103又はスタブシャフト104と接続する接続部(第一接続部120,第二接続部130)を形成する接続部用成形面(第一接続部用成形面5、第二接続部用成形面8)の断面形状を多角形状にしてもよい。これによれば、第一接続部120及び第二接続部130の断面形状が多角形状に形成される。よって、別途に第一接続部120及び第二接続部130を多角形状に成形する手間を省くことができる。
【0045】
また、膨張体の膨張量を制限する例として、環状部材53を用いているが、そのほかに、膨張体自体の厚みを変えることで膨張量を制限するようにしてもよい。
【0046】
また、本発明の管体に関し、軸線O1方向に沿って切った本体部110の断面形状は円弧状のものに限定されない。例えば、軸線O1に沿って切った本体部110の断面形状が階段状となっていてもよい。つまり、金型のキャビティ面において、本体部用成形面6を長手方向に切った断面形状を階段状に形成してもよい。
【0047】
また、本発明の製造方法で製造される管体は、上記したものに限定されない。例えば、傾斜部148に関し、板厚が本体部145側(前側)の端部から第二接続部147側(後側)の端部に向かうに連れて漸次薄くなっていてもよい。これによれば、傾斜部148のうち後端部の板厚が最も薄くなり、傾斜部148の後端部が脆弱部を構成する。若しくは、傾斜部148の外周面又は内周面に凹部を設けて一部区間の板厚を変化させて脆弱部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,21,41,61 金型
4,24,44,64 キャビティ面
6,26,46,66 本体部用成形面
10,30 樹脂部
11 供給管
12,52,72 膨張体
15,35、55,75 樹脂体
101,201,301 動力伝達軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2019年5月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック製であって動力伝達軸に用いられる管体の製造方法であって、
金型のキャビティ面上に未硬化の繊維強化樹脂を配置し、筒状の樹脂体を生成する生成工程と、
前記樹脂体の内部に流体を供給し、前記樹脂体の樹脂を硬化させる硬化工程と、
を備え
前記金型のキャビティ面は、前記管体の本体部を成形する本体部用成形面を有し、
前記本体部用成形面は、中央部から端部に向うに連れて次第に縮径しており、
前記生成工程において、前記動力伝達軸の長手方向の両端部から中央部に向かって前記繊維強化樹脂の積層数が低減するように前記繊維強化樹脂を載置する
ことを特徴とする動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項2】
前記生成工程において、前記樹脂体の内部に膨張体を配置し、
前記硬化工程において、前記膨張体内に前記樹脂体が硬化する温度の前記流体を供給し、前記膨張体が膨張して前記樹脂体に当接することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項3】
繊維強化プラスチック製であって動力伝達軸に用いられる管体の製造方法であって、
繊維が巻回された筒状の膨張体を金型内に配置する準備工程と、
前記膨張体に流体を供給し、前記繊維が巻回された状態で前記膨張体を膨張させる膨張工程と、
前記金型内に未硬化の樹脂を供給する供給工程と、
前記未硬化の樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記流体を排出して前記膨張体を元の形状に復帰し、前記筒状とした上で、前記膨張体を前記管体から引き抜く引き抜き工程と、
を備えることを特徴とする動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項4】
前記硬化工程において、さらに前記金型を加熱することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項5】
前記金型のキャビティ面は、前記管体の本体部を成形する本体部用成形面を有し、
前記本体部用成形面は、中央部から端部に向うに連れて次第に縮径していることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項6】
前記金型のキャビティ面は、前記管体の本体部を成形する本体部用成形面を有し、
前記本体部用成形面は、中央部から一端部に向うに連れて次第に縮径する一方で、前記中央部から他端部までの径が一定となっていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項7】
前記金型のキャビティ面は、前記管体の本体部を成形する本体部用成形面を有し、
前記本体部用成形面は、一端部から他端部までの径が一定となっていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。
【請求項8】
前記金型のキャビティ面は、前記管体の接続部を成形する接続部用成形面を有し、
前記接続部用成形面は、断面形状が多角形状となっていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の動力伝達軸に用いられる管体の製造方法。