【解決手段】動力伝達軸1であって、軸線O1を中心とする筒状の本体部10と、本体部10に連続している第一接続部20と、第一接続部20に接合されたスタブヨーク3(連結部材)と、を備えている。本体部10及び第一接続部20は、繊維強化プラスチック製の管体2であり、第一接続部20にスタブヨーク3が嵌め込まれている。スタブヨーク3の外周面51bには、複数の凹部53が形成されるとともに、第一接続部20の内周面20aには、各凹部53にそれぞれ挿入された複数の凸部21が形成されている。第一接続部20の熱膨張率は、スタブヨーク3の熱膨張率よりも高くなっている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
続いて、各実施形態の動力伝達軸について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態では、本発明の動力伝達軸を、FF(Front−engine Front−drive)ベースの四輪駆動車に搭載されるプロペラシャフトに適用した例を挙げる。また、各実施形態で共通する技術的要素には、共通の符号を付し、説明を省略する。
【0010】
[第一実施形態]
図1に示すように、第一実施形態の動力伝達軸1は、車両の前後方向に延在する略円筒状の管体2(パイプ)と、管体2の前側に配置された第一自在継手5(特許請求の範囲における「連結部材」)と、管体2の後側に配置された第二自在継手6と、を備えている。
【0011】
第一実施形態の第一自在継手5は、カルダンジョイントであり、車体の前部に搭載された変速機と動力伝達軸1とを連結するための金属製の連結部材である。
第一実施形態の第二自在継手6は、等速ジョイントであり、車体の後部に搭載された終減速装置と動力伝達軸1とを連結するための金属製の連結部材である。
そして、変速機から動力伝達軸1に動力(トルク)が伝達すると、動力伝達軸1が軸線O1回りに回転して、終減速装置に動力が伝達される。
【0012】
管体2は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製に形成されている。なお、本発明において繊維強化プラスチックに使用される強化繊維は、炭素繊維に限られず、ガラス繊維やアラミド繊維であってもよい。
【0013】
管体2の製造方法は、図示しないマンドレルに連続炭素繊維を巻き付けて成形体を形成し、その後、成形体の外周にプリプレグ(炭素繊維に樹脂を含浸させたシート)を巻き付けている。よって、管体2は、フィラメントワインディング法とシートワインディング法との二つの工法を取り入れられて製造されている。
ここで、フィラメントワインディング法によって製造される成形体は、繊維(炭素繊維)の連続性が保たれるため機械的強度(特にねじり強度)が高い。
また、シートワインディング法によれば、炭素繊維をマンドレルの軸線方向に延在するように配置することができ、軸線O1方向に高弾性化した成形体を製造できる。
つまり、上記した製造方法によれば、管体102の内部で、軸O1回りに巻回された繊維からなる繊維層と、軸線O1方向に延在する繊維からなる繊維層と、が積層しており、機械的強度が高く、かつ、軸線O1方向に高弾性化した管体2を製造できる。
なお、周方向に配向する繊維としてPAN系(Polyacrylonitrile)繊維が好ましく、軸線O1方向に配向する繊維としてピッチ繊維が好ましい。
【0014】
なお、本発明の管体2は、上記した製造方法に限定されない。管体2の製造方法としては、マンドレルにプリプレグを巻き付けて成形体を形成し、その成形体の外周に連続炭素繊維を巻き付けてもよい。又は、管体2の製造方法としては、単一の製造方法(フィラメントワインディング法又はシートワインディング法)を用いてもよい。
【0015】
管体2は、本体部10と、本体部10の前側に配置された第一接続部20と、本体部10の後側に配置された第二接続部30と、を備えている。
【0016】
軸線O1を法線とする平面で本体部10を切った場合には、本体部10の外周面の断面形状は円形状となっている。
また、本体部10の外径は、中央部から両端部に向うに連れて縮径しており、中央部の外径は、両端部の外径よりも大きい。
つまり、軸線O1に沿って本体部10を切った場合には、本体部10の外周面の断面形状は、緩やかな曲線を描き、外側に向けて突出する円弧状となっている。よって、本体部10の外形は、中央部が径方向外側に膨らんだ樽形状(バレル形状)となっている。
【0017】
なお、第一実施形態の動力伝達軸1では、軸線O1に沿って本体部10を切った場合に、本体部10の外周面の断面形状は円弧状となっているが、本発明においては、本体部10の外周面の断面形状を階段状に形成してもよい。
また、軸線O1に沿って本体部10を切った場合に、本体部10の外周面の断面形状が中央部から両端部に向かうに連れて中心側に向かうように直線状に傾斜させてもよい。つまり、本体部10を側面視で菱形となるように形成してもよい。
【0018】
第二接続部30内には、第二自在継手6のスタブシャフト4のシャフト部4aが嵌め込まれている。第二接続部30の内周面は、スタブシャフト4のシャフト部4aの多角形状の外周面に倣った多角形状を呈している。このように、第二接続部30とスタブシャフト4とが互いに相対回転しないように構成されている。
【0019】
本体部10と第二接続部30との間には、円筒状の傾斜部40が形成されている。第二接続部30は、傾斜部40を介して本体部10の後端に連続している。傾斜部40の外径は、本体部10から第二接続部30に向かうに連れて次第に縮径し、円錐台形状となっている。
傾斜部40の板厚は、第二接続部30側(後側)の端部(後端部、一端部)から本体部10側(前側)の端部(前端部、他端部)に向かうに連れて漸次薄くなっている。このため、傾斜部40のうち前端部の板厚が最も薄くなっており、傾斜部40の前端部が脆弱部を構成している。脆弱部は、傾斜部40のせん断強度が最も低下している部位である。
なお、管体2では、傾斜部40全体の板厚が変化しているが、本発明においては、傾斜部40の一部区間において板厚を変化させてもよい。
また、傾斜部40の板厚を、本体部10側(前側)の端部(前端部、他端部)から第二接続部30側(後側)の端部(後端部、一端部)に向かうに連れて漸次薄くして、傾斜部40の後端部に脆弱部を設けてもよい。
【0020】
第一接続部20は、本体部10の前端に連続して形成されている筒状の部位である。
第一接続部20内には、第一自在継手5のスタブヨーク3のシャフト部51が嵌め合わされている。
図2に示すように、軸線O1を法線とする平面で第一接続部20を切った場合には、第一接続部20の内周形状及び外周形状が円形となっている。
【0021】
スタブヨーク3は、
図1に示すように、筒状のシャフト部51と、シャフト部51の前面から前方に突出した一対のアーム52と、を備えている金属部材である。アーム52には、ジョイントピンが差し込まれる軸孔が貫通している。
【0022】
図2に示すように、軸線O1を法線とする平面でシャフト部51を切った場合には、シャフト部51の内周形状及び外周形状が円形となっている。
シャフト部51の軸心及び第一接続部20の軸心は軸線O1に配置されている。この状態において、シャフト部51の外周面51bと、第一接続部20の内周面20aとは、僅かに隙間を空けて配置されている。
【0023】
シャフト部51の外周面51bには、複数の凹部53が形成されている。凹部53は、外周面51bに形成された窪みである。第一実施形態では、三つの凹部53が外周面51bの周方向に等間隔に形成されている。
【0024】
また、第一接続部20の内周面20aには、複数の凸部21が形成されている。凸部21は、内周面20aから内側に向けて突出した突起である。第一実施形態では、軸線O1を法線とする平面で凸部21を切った場合に、凸部21が三角形に形成されている。第一実施形態では、三つの凸部21が内周面20aの周方向に等間隔に形成されている。
【0025】
第一接続部20の各凸部21と、シャフト部51の各凹部53とは、動力伝達軸1の径方向にそれぞれ対峙している。そして、各凸部21は各凹部53にそれぞれ入り込んでいる。
第一実施形態では、凸部21の先端部が凹部53の底面に接触し、凸部21の基端部が凹部53の開口縁部に接触しているが、本発明においては、凸部21が凹部53の内面から僅かに離れていてもよい。
【0026】
なお、本発明においては、凸部21及び凹部53の形状は限定されるものではない。例えば、凸部21を円錐形状や半球形状に形成してもよい。また、凸部21を軸線O1方向に延ばしてもよい。
また、凹部53は、シャフト部51の外周面51bにおいてアーム52とは逆側の端部まで軸線O1方向に延ばしてもよい。
凹部53を軸線O1方向の一部分に設けた場合には、第一接続部20の凸部21がシャフト部51の外周面51bに接触しながら嵌め込まれる。この場合には、シャフト部51の外周面51bの外径を、第一接続部20の内周面20aの内径よりも小さく設定する。これにより、第一接続部20の凸部21とシャフト部51の外周面51bとの接触圧を低減できる。
【0027】
第一実施形態では、第一接続部20は熱硬化性樹脂を用いており、製造工程において加熱することで形状が定まる。
第一接続部20の熱膨張率は、金属製のスタブヨーク3の熱膨張率よりも高くなっている。したがって、製造工程において第一接続部20及びスタブヨーク3を加熱したときに、第一接続部20の径方向の膨張量が、スタブヨーク3の径方向の膨張量よりも大きくなっている。
【0028】
次に、第一実施形態の動力伝達軸1の製造方法において、第一接続部20にスタブヨーク3を接合するための各工程について説明する。なお、以下の説明においては
図5のフローチャートを適宜に参照する。
【0029】
まず、準備工程においては、
図1に示すスタブヨーク3及び未硬化の管体2を用意する(ステップS1)。そして、挿入工程においては、
図3に示すように、第一接続部20にスタブヨーク3のシャフト部51を挿入する(ステップS2)。これにより、第一接続部20の凸部21とシャフト部51の凹部53とが径方向に間隔を空けて対峙する。
【0030】
続いて、加熱工程においては、
図4に示すように、管体2及びスタブヨーク3を加熱すると、熱膨張率が高い第一接続部20の凸部21が、シャフト部51の凹部53に大きく入り込む(ステップS3)。
図2に示すように、第一接続部20の三つの凸部21が、シャフト部51の三つの凹部53にそれぞれ入り込むことで、シャフト部51の外周面51bが第一接続部20の三つの凸部21によって三方向から支持される。これにより、第一接続部20の軸心とシャフト部51の軸心とが一致するように、第一接続部20に対してシャフト部51が位置決めされる。
【0031】
接着工程においては、第一接続部20とシャフト部51とが調心された状態で、第一接続部20の内周面20aとシャフト部51の外周面51bとを接着剤により接着することで、第一接続部20にスタブヨーク3が接合される(ステップS4)。
【0032】
以上、第一実施形態の動力伝達軸1では、
図3に示すように、第一接続部20にスタブヨーク3を挿入したときには、第一接続部20の凸部21とシャフト部51の凹部53とが間隔を空けて対峙するため、第一接続部20にシャフト部51をスムーズに挿入できる。
その後、
図4に示すように、管体2を加熱すると、熱膨張率が高い第一接続部20の凸部21が、シャフト部51の凹部53に大きく入り込み、この状態で第一接続部20が硬化する。これにより、第一接続部20の内周面20aに形成された各凸部21によって、シャフト部51が支持されることで、第一接続部20とシャフト部51とが調心される。
このように、第一実施形態の動力伝達軸1では、製造時に第一接続部20とスタブヨーク3とを容易に調心することができ、回転バランスを良くできる。
【0033】
なお、第一実施形態では、三つの凸部21が第一接続部20の周方向に等間隔に配置されるとともに、三つの凹部53がシャフト部51の周方向に等間隔に配置されているが、凸部21及び凹部53の数や配置は限定されるものではない。第一接続部20の各凸部21とシャフト部51の各凹部53によって、第一接続部20とシャフト部51とが調心されるように、凸部21及び凹部53の数や配置は設定される。
【0034】
また、各凸部21が各凹部53にそれぞれ入り込むことで、第一接続部120とシャフト部151とが周方向に係合されている。
【0035】
また、動力伝達軸1の管体2では、
図1に示すように、曲げ応力が集中し易い本体部10の中央部の外径が大径に形成されているため、所定の曲げ強度を有している。
また、動力伝達軸1の管体2は、繊維強化プラスチックにより形成されているため、設計の自由が高く、更なる低コスト化を図れる。
【0036】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る動力伝達軸101について説明する。
第二実施形態の動力伝達軸101は、
図6に示すように、管体102と、管体102の前側に配置された第一自在継手5と、管体102の後側に配置された第二自在継手6と、を備えている。
管体102は、本体部110と、本体部110の前側に配置された第一接続部120と、本体部110の後側に配置された第二接続部30と、を備えている。
【0037】
第二実施形態の本体部110を軸線O1を法線とする平面で切った場合には、本体部110の外周面の形状は円形状となっている。
第二実施形態の本体部110の外径は、前端部から後端部まで均一である。つまり、第二実施形態の本体部110の外形は、ストレートな円筒体となっている。
【0038】
図7に示すように、第二実施形態の第一接続部120を、軸線O1を法線とする平面で切った場合には、第一接続部120の内周形状が多角形となっている。
また、第二実施形態のスタブヨーク103のシャフト部151を、軸線O1を法線とする平面で切った場合には、シャフト部151の外周形状が多角形となっている。
そして、第一接続部120の内周面120aと、シャフト部151の外周面151bとが嵌め合わされている。
なお、第二実施形態では、第一接続部120の内周形状及びシャフト部151の外周形状が八角形に形成されているが、本発明において、その形状は限定されるものではない。
【0039】
第二実施形態では、第一接続部120の内周面120aに四つの凸部121が等間隔に形成されている。また、シャフト部151の外周面151bに四つの凹部153が等間隔に形成されている。そして、各凸部121が各凹部153にそれぞれ入り込むことで、第一接続部120とシャフト部151とが容易に調心される。
【0040】
以上、第二実施形態の動力伝達軸101では、第一実施形態の動力伝達軸1(
図2参照)と同様に、製造時に第一接続部120とスタブヨーク103とを容易に調心することができ、回転バランスを良くできる。
【0041】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る動力伝達軸201について説明する。
第三実施形態の動力伝達軸201は、
図8に示すように、管体202と、管体202の前側に配置された第一自在継手5と、管体202の後側に配置された第二自在継手6と、を備えている。
管体202は、本体部210と、本体部210の前側に配置された第一接続部20と、本体部210の後側に配置された第二接続部30と、を備えている。
【0042】
第三実施形態の本体部210を軸線O1を法線とする平面で切った場合には、本体部210の外周面の形状は円形状となっている。
本体部210の外径は、前端部から中央部までが同一に形成され、中央部から後端部に向うに連れて縮径している。よって、本体部210の前端部及び中央部の外径は、後端部の外径よりも大きい。
【0043】
軸線O1に沿って本体部210を切った場合に、本体部210の外周面の断面形状は、前端部から中央部までは直線状となり、本体部210の中央部から後端部にかけては緩やかな曲線を描いた円弧状となっている。
【0044】
第三実施形態の動力伝達軸201は、第一実施形態の動力伝達軸1と同様に、
図2に示すように、第一接続部20の内周面20aに複数の凸部21が形成されるとともに、シャフト部51の外周面51bに複数の凹部53が形成されている。そして、各凸部21が各凹部53にそれぞれ入り込んでいる。
【0045】
以上、第三実施形態の動力伝達軸201では、第一実施形態の動力伝達軸1と同様に、製造時に第一接続部20とスタブヨーク3とを容易に調心することができ、回転バランスを良くできる。
【0046】
以上、各実施形態について説明したが、本発明は各実施形態で説明した例に限定されない。
例えば、各実施形態では、第一接続部とスタブヨーク(連結部材)との接合構造に本発明の構成を適用しているが、第二接続部とスタブシャフト(連結部材)との接合構造に本発明の構成を適用してもよい。