(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-138639(P2020-138639A)
(43)【公開日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】無人飛行体を用いた構造物検査装置
(51)【国際特許分類】
B64F 3/02 20060101AFI20200807BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20200807BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20200807BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20200807BHJP
B64F 1/36 20170101ALI20200807BHJP
B60P 3/11 20060101ALI20200807BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20200807BHJP
B64F 1/12 20060101ALI20200807BHJP
【FI】
B64F3/02
B64C39/02
B64D27/24
B64D47/08
B64F1/36
B60P3/11
B60P3/00 U
B64F1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-35367(P2019-35367)
(22)【出願日】2019年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】519042124
【氏名又は名称】株式会社旭テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100130007
【弁理士】
【氏名又は名称】垣木 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】難波 貞二
(57)【要約】
【課題】無人飛行体10の飛行中、給電ケーブル2の振れを小さくして、給電ケーブル2の劣化を抑制することが可能な無人飛行体を用いた構造物検査装置を提供する
【解決手段】地上支援車20は、その上面に無人飛行体10が離着陸するための開閉式のポート21を有し、ポート21は少なくとも1枚の可動板23を備え、可動板23が移動する前の状態で、給電ケーブル2を外部に引き出すための第1開口22が形成され、可動板23が移動した後の状態で、第1開口22よりも大きな第2開口25が形成される。それによって、給電ケーブル2の絶縁被覆が擦れて劣化することを防止することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置を備え、遠隔操縦される無人飛行体と、前記無人飛行体に給電ケーブルを介して電力を供給する地上支援車とを備えた無人飛行体を用いた構造物検査装置であって、
前記地上支援車は、その上面に設けられ、前記無人飛行体が離着陸するための開閉式のポートと、前記ポートの下方に設けられ、前記給電ケーブルの引き出し及び巻き取りを行なう自動巻き取り装置と、前記給電ケーブルを介して前記無人飛行体に電力を供給するための電源装置とを備え、
前記ポートは少なくとも1枚の可動板を備え、前記可動板が移動する前の状態で、前記ポートに前記給電ケーブルを前記地上支援車の内部から外部に引き出すための第1開口が形成され、前記可動板が移動した後の状態で、前記ポートに前記給電ケーブルを前記地上支援車の内部から外部に引き出すための前記第1開口よりも大きな第2開口が形成されることを特徴とする無人飛行体を用いた構造物検査装置。
【請求項2】
前記第2開口は、前記可動板の移動方向における寸法、及び前記可動板の移動方向に直交する方向における寸法の両方を、前記第1開口のそれらよりも大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の無人飛行体を用いた構造物検査装置。
【請求項3】
前記ポートは、互いに水平方向に逆向きにスライドする2枚の可動板で構成され、前記2枚の可動板には、それぞれ前記第1開口を形成するための切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無人飛行体を用いた構造物検査装置。
【請求項4】
前記ポートは、固定板と、水平方向に逆向きにスライドする1枚の可動板で構成され、前記可動板には、前記第1開口を形成するための切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無人飛行体を用いた構造物検査装置。
【請求項5】
前記ポートは、それぞれ蝶番によって、前記ポートに対して垂直な面内で回転する2枚の可動板で構成され、前記2枚の可動板には、それぞれ前記第1開口を形成するための切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の無人飛行体を用いた構造物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行体、いわゆるドローンを用いた構造物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電用の風車や橋梁などの構造物は、定期的に、目視などによって検査することが義務づけられている。例えば、風力発電用の風車の場合、2年に一度検査が法定されており、作業員が命綱をつけて風車に登り、目視により羽根や回転軸部分にひび割れなどの劣化が生じていないかを確認し、劣化が生じている場合は劣化部分を写真撮影している。このような検査作業は非常に危険であり、且つ、二十基あたり2人で1.5か月程度かかるため、風力発電事業において検査コストが常々問題となっている。
【0003】
一方、ドローンとして市販されている無人飛行体には撮像装置が標準的に装備されている。そのため、このような無人飛行体を用いて構造物の細部を写真撮影し、劣化の有無を確認する検査方法が考えられる。ところが、市販の無人飛行体は、内蔵二次電池から供給される電力によってプロペラを駆動したり、撮像装置を駆動しているため、一回の充電での飛行可能時間はせいぜい20〜30分程度である。一つの構造物を検査するためには、繰り返し何回も無人飛行体を飛行させなければならないが、飛行を中断した箇所に無人飛行体を正確に戻すことが非常に困難であり、検査漏れが生じる虞があり、現実的ではない。
【0004】
一方で、特許文献1には、人が容易に近づけないような災害現場などでの情報収集のために、自律移動車と無人飛行体を組み合わせて、自律移動車側からケーブルを介して無人飛行体側に電力を供給し、無人飛行体の長時間の飛行を可能とすると共に、自律移動車上に無人飛行体を着陸させることが提案されている。また、特許文献2には、自律移動車と無人飛行体をケーブルで接続し、無人飛行体の高度を一定に維持しつつ、放射能汚染の程度や分布を判断する指標として、地表から一定の高さにおける放射線量を測定することが提案されている。しかしながら、何れの場合も、自律移動車が走行するルートや無人飛行体が飛行するルートには、がれきが散乱していたり、倒木や倒壊した構造物などの障害物が立ちはだかっているため、自律移動車の安定走行や、無人飛行体の障害物への衝突防止、ケーブルの引っかかり防止など、実用化に向けて解決しなければならない課題は少なくない。
【0005】
それに対して、風車や橋梁などの構造物の検査の場合、検査対象範囲が比較的限定されており、且つ、その周囲の地面又は床面は比較的フラットである。そのため、地上に設けられた電源(必ずしも自律移動させる必要はない)から給電ケーブルを介して無人飛行体に電力を供給し、無人飛行体を長時間連続飛行させ、検査対象物の表面などを漏れなく連続的に撮影する検査方法の実用化が検討されている。
【0006】
図10は、本出願人が当初検討した無人飛行体を用いた構造物検査システム100の構成(参考例)を示す。この構造物検査システムは、無人飛行体101と、無人飛行体101に電力を供給するための給電ケーブル102と、給電ケーブル102が巻き付けられた電動式のリール(自動巻き取り装置)103と、リール103の正転・逆転を制御し、給電ケーブル102の繰り出し量を調整する巻き取り制御装置104と、給電ケーブル102を介して無人飛行体101に直流電力を供給する電源装置105と、発電機106と、無人飛行体101の飛行を制御する飛行制御装置107と、無人飛行体101から送信される画像データを受信する受信装置108と、受信した画像データの画像解析を行なう解析装置109などで構成されている。
【0007】
リール103、巻き取り制御装置104、電源装置105、発電機106、受信装置108、解析装置109などは地上に設置されるが、特に、リール103は、検査対象である風車の羽根の直下付近に設置される。それに対して、
図11に示すように、無人飛行体101は、リール3から少し離れた場所の地表に対して離着陸するように制御される。風車の羽根を検査する場合、一般的には、検査対象である羽根をほぼ垂直状態で静止させ、無人飛行体101は、もっぱら垂直方向に上昇と下降を繰り返すように制御される。また、風車の羽根が垂直でない場合は、無人飛行体101を水平方向へも移動させる。
【0008】
前述のように、風車二十基について、2人による目視検査に1.5か月程度かかっているところ、無人飛行体を用いた検査によれば、2人で10日程度にて検査可能であるが、その間、無人飛行体101は複数回離着陸を繰り返すことになる。多数の風車を検査すると、給電ケーブル102の絶縁被覆がリール103のフランジP1などに接触して徐々に劣化したり、給電ケーブル102の芯線が破断したりする虞がある。また、無人飛行体101の水平方向への移動距離が長い場合、給電ケーブル102の振れが大きくなり、給電ケーブル102が予期しない箇所、例えば筐体の角P2などと接触する可能性があり、給電ケーブル102の劣化が加速される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016−199144号公報
【特許文献2】特開2017−191026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、無人飛行体の飛行中、無人飛行体に電力を供給するための給電ケーブルの振れを小さくして、給電ケーブルの劣化を抑制することが可能な無人飛行体を用いた構造物検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る無人飛行体を用いた構造物検査装置は、
撮像装置を備え、遠隔操縦される無人飛行体と、前記無人飛行体に給電ケーブルを介して電力を供給する地上支援車とを備え、
前記地上支援車は、その上面に設けられ、前記無人飛行体が離着陸するための開閉式のポートと、前記ポートの下方に設けられ、前記給電ケーブルの引き出し及び巻き取りを行なう自動巻き取り装置と、前記給電ケーブルを介して前記無人飛行体に電力を供給するための電源装置とを備え、
前記ポートは少なくとも1枚の可動板を備え、前記可動板が移動する前の状態で、前記ポートに前記給電ケーブルを前記地上支援車の内部から外部に引き出すための第1開口が形成され、前記可動板が移動した後の状態で、前記ポートに前記給電ケーブルを前記地上支援車の内部から外部に引き出すための前記第1開口よりも大きな第2開口が形成されることを特徴とする。
【0012】
前記第2開口は、前記可動板の移動方向における寸法、及び前記可動板の移動方向に直交する方向における寸法の両方を、前記第1開口のそれよりも大きくしてもよい。
【0013】
前記ポートは、互いに水平方向に逆向きにスライドする2枚の可動板で構成され、前記2枚の可動板には、それぞれ前記第1開口を形成するための切り欠きが形成されていてもよい。
【0014】
または、前記ポートは、固定板と、水平方向に逆向きにスライドする1枚の可動板で構成され、前記可動板には、前記第1開口を形成するための切り欠きが形成されていてもよい。
【0015】
または、前記ポートは、それぞれ蝶番によって、前記ポートに対して垂直な面内で回転する2枚の可動板で構成され、前記2枚の可動板には、それぞれ前記第1開口を形成するための切り欠きが形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、地上支援車の上面にポートが設けられているので、地上支援車を検査対象物の直下近傍に移動させ、無人飛行体をもっぱら垂直方向に上昇又は降下させることにより、検査対象物を検査することができる。その際、無人飛行体の上昇又は降下に応じて、自動巻き取り装置により給電ケーブルの引き出し及び巻き取りが行なわれるので、給電ケーブルが不必要に垂れ下がる可能性が低減される。また、無人飛行体の水平方向への移動量が少なくなるため、給電ケーブルの振れが小さくなる。さらに、無人飛行体を離陸させた後、ポートを構成する可動板を移動させることにより、ポートには、給電ケーブルを地上支援車の内部から外部に引き出すための第1開口よりも大きな第2開口が形成される。あるいは、ポートを構成する可動板を移動させることにより、第1開口がより大きな第2開口に拡大される。そのため、給電ケーブルの絶縁被覆がリールのフランジや可動板のエッジなどに接触する可能性が低減され、給電ケーブルの絶縁被覆が劣化したり、芯線が破断される可能性が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無人飛行体を用いた構造物検査装置及びその構造物検査装置に適した構造物検査システムの構成を示す図。
【
図2】無人飛行体を飛行させる前のポートが閉じた状態における上記構造物検査装置の一構成例を示す平面図。
【
図3】無人飛行体を飛行させる前のポートが閉じた状態における上記構造物検査装置の一構成例を示す断面図。
【
図4】無人飛行体を離陸させた後のポートが開いた状態における上記構造物検査装置の一構成例を示す平面図。
【
図5】無人飛行体を離陸させた後のポートが開いた状態における上記構造物検査装置の一構成例を示す断面図。
【
図6】上記構造物検査装置の他の構成例を示す平面図。
【
図7】上記構造物検査装置のさらに他の構成例を示す断面図。
【
図8】上記構造物検査装置のさらに他の構成例を示す断面図。
【
図9】上記構造物検査装置における無人飛行体に給電ケーブルを接続するためのケーブル接続構造を示す図。
【
図10】無人飛行体を用いた構造物検査システムの構成(参考例)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る無人飛行体を用いた構造物検査装置及びその構造物検査装置に適した構造物検査システムについて説明する。
図1に示す構造物検査システムは、撮像装置11を備えた無人飛行体(ドローン)10と、無人飛行体10に給電ケーブル2を介して電力を供給する地上支援車20を備えた構造物検査装置1と、発電機6と、無人飛行体10の飛行を制御する飛行制御装置7、無人飛行体10から送信される画像データを受信する受信装置8と、受信した画像データの画像解析を行なう解析装置9などで構成されている。地上支援車20の内部には、例えば手動操作される台車上に、給電ケーブル2が巻き付けられた電動式のリール(自動巻き取り装置)3と、リール3の正転・逆転を制御し、給電ケーブル2の繰り出し量を調整する巻き取り制御装置4と、給電ケーブル2を介して無人飛行体10に直流電力を供給する電源装置5等が搭載されている。
【0019】
無人飛行体10は、市販されているものを改造して使用することができ、例えば、無人飛行体10に搭載されている二次電池12に給電ケーブル2を着脱可能なように接続して構成される(
図9参照)。なお、給電ケーブル2を介して無人飛行体10に電力が供給されるため、無人飛行体10に二次電池を搭載しておく必要はないが、万が一給電ケーブル2が外れた場合でも無人飛行体1の墜落を防止するために、無人飛行体10に二次電池を搭載しておくことが好ましい。風力発電用の風車の場合、小型のものでも羽根の長さが26m程度、洋上に設置される大型のものでは、羽根1枚が支柱の高さが50〜60m、全体の高さが130mに達する。そのため、風力発電用の風車を検査する場合、無人飛行体10は、対地表高度で100m程度まで上昇しなければならない。そのため、給電ケーブル2としては、例えば直径3mm程度の細くて軽いものを用いる必要がある。それでも、給電ケーブル2を100m引き延ばしたとすると、ケーブルの重量だけでも1.3kg程度になる。したがって、無人飛行体10としては、例えば1.3kg以上の負荷をつり上げるだけの推進力が必要となる。また、電源装置5としては、例えば直流360Vで1000W程度の電力を無人飛行体1に供給する能力を有するものを使用する。
【0020】
地上支援車20としては、自律移動式のもの、無線操縦によるもの、及び手動式のものの何れであってもよい。風力発電用の風車を検査する場合、無人飛行体10は、もっぱら垂直方向に移動し、水平方向の移動量は少ないため、地上支援車20としては、手動式のものを例示している。また、
図1では、発電機6を例示しているが、電源装置5を商用電源に直接接続してもよいし、電気自動車のバッテリーなどに接続してもよい。
【0021】
飛行制御装置7及び受信装置8は、無人飛行体10とセットで販売されているものをそのまま使用することができる。解析装置9は、市販のパーソナルコンピュータを使用することができ、受信装置8を介して、無人飛行体10から送信された画像データを画像処理し、モニタ画面上に表示させる。巻き取り制御装置4は、無人飛行体10の高度に応じて、リール3からの給電ケーブル2の引き出し量を調節するものであり、例えばリール3の近傍に取り付けられたテンションセンサなどを用いて給電ケーブル2にかかる張力を測定し、張力が低下すれば給電ケーブル2を巻き取る方向にリール3を回転させ、また張力が上昇すれば給電ケーブル2を繰り出す方向にリール3を回転させ、それによって給電ケーブル2が不必要に垂れ下がることを防止する。あるいは、無人飛行体10の位置情報に基づいて、解析装置9から巻き取り制御装置4に対してリールの回転方向及び回転量を指示するようにしてもよい。
【0022】
図2は、無人飛行体10を離陸させる前のポート21が閉じた状態における構造物検査装置1の構成を示す平面図であり、
図3は、その断面図である。
図2において、地上支援車20の上面の構成を示すために、無人飛行体10は細線で描いている。また、後述する可動板23の移動後の状態及び第2開口25も一点鎖線で描いている。
図2及び
図3から理解されるように、地上支援車20は、その上面に、無人飛行体10を離着陸させるための水平なポート21を有しており、無人飛行体10は、このポート21に対してほぼ垂直に離着陸される。また、リール3は、地上支援車20の内部であって、その水平面におけるほぼ中央部に設置されており、給電ケーブル2は、ポート21に形成された第1開口22から地上支援車20の外部に引き出され、無人飛行体10に接続されている。第1開口22は、例えば略矩形の開口であって、ポート21のほぼ中央部に形成されている。ポート21の中央部には、無人飛行体10を着陸させる際の一応の目標となるHマークなどが描かれているが、給電ケーブル2がリール3から第1開口22を通って無人飛行体10に接続されていることから、無人飛行体10の操縦に不慣れな者でもリール3により給電ケーブル2を巻き取ることによってポート21に無人飛行体10を容易に着陸させることができる。
【0023】
この構成例では、ポート21は、水平方向にスライドする2枚の可動板23と、可動板23の水平移動を支持する2枚の固定板24を有している。
図4及び
図5は、無人飛行体10を離陸させ、2枚の可動板23を水平方向に、互いに逆方向にスライドさせた状態(ポート21が開いた状態)を示す。2枚の可動板23を移動させると、これら2枚の可動板23の互いに対向する辺の間には、上記第1開口22よりも大きな、略矩形の第2開口25が形成される。可動板23の移動方向における第2開口25の幅Wは、給電ケーブル2がリール3のフランジ3aや可動板23のエッジ23aなどに接触しないように設定されており、無人飛行体10の飛行範囲、飛行高さ、リール3の2つのフランジ3a間の幅、フランジ3aの高さ、フランジ3aから可動板23までの高さなどの位置関係によって、適宜設定される。風力発電用の風車を検査する場合、無人飛行体10及び地上支援車20を検査対象である羽根の直下付近に移動させるため、水平方向の移動距離を比較的小さくすることができる。一例として、第2開口25の寸法は、給電ケーブル2が垂直軸を中心として20度程度傾いたとしても、給電ケーブル2がリール3のフランジ3aや可動板23のエッジ23aなどに接触しないような寸法に設定される。また、
図4から分かるように、第2開口25は、可動板23の移動方向における寸法W及び可動板23の移動方向に直交する方向における寸法Dのいずれもが、第1開口22のそれらよりも大きくなるように設定されている。それによって、無人飛行体10の水平方向における移動可能範囲が大幅に拡大される。換言すれば、第1開口22の各方向の寸法を可能な限り小さくすることによって、ポート21に対して無人飛行体10をより容易に離着陸させることができる。
【0024】
2枚の可動板23は、電動式で移動させてもよいし、手動で移動させてもよい。離陸直後、無人飛行体10はもっぱら垂直方向に上昇するので、無人飛行体10の離陸開始から可動板23が移動するまである程度の時間差があっても、給電ケーブル2がポート21に形成された第1開口22のエッジなどに接触して擦られる可能性は低い。そのため、可動板23及び24を手動で移動させても、特に問題はない。なお、地上支援車20を自律移動させる場合又は遠隔操縦する場合は、可動板23を電動式で移動させる。
【0025】
図6は、1枚の可動板23のみがスライドするように構成された変形例を示す。
図6においても、無人飛行体10、可動板23の移動後の状態及び第2開口25も一点鎖線で描いている。この変形例では、ポート21は固定板24と1枚の可動板23で構成され、可動板23には、第1開口22を形成するための切り欠きが形成されている。可動板23の移動方向における第1開口22の幅を第2開口25の幅Wとほぼ同じにしてもよい。
【0026】
図7及び
図8は、2枚の可動板23が、それぞれ蝶番によって、ポート21に対して垂直な面内で回転するように構成された変形例を示す。2枚の可動板23には、それぞれ第1開口22を形成するための切り欠きが形成されてる。可動板23の回転方向は、
図7に示すように上方に跳ね上がる方向であってもよいし、
図8に示すように下方(地上支援車20の内側)に引き込まれる方向であってもよい。
【0027】
図9は、無人飛行体10に給電ケーブル2を接続するためのケーブル接続構造を示す。風力発電用の風車を検査する場合、無人飛行体10は地上支援車20のポートに対して垂直に離着陸されるため、給電ケーブル2を無人飛行体10の下側から接続する。その際、無人飛行体10に設けられた二次電池12に直接コネクタ32を接続してもよいが、給電ケーブル2の自重がコネクタ32に掛かるため、コネクタ32が二次電池12から外れやすい。
図9に示す接続構造では、無人飛行体10の本体の底面にワイヤー13及び吊り環33を介して中空リング31を吊り下げ、給電ケーブル2をこの中空リング31の内部を略一周させている。それによって、給電ケーブル2の自重は中空リング31の内周面によって受け止められ、コネクタ32には給電ケーブル2の自重は掛からない。結果的に、コネクタ32は二次電池12から外れにくくなる。また、無人飛行体10との接続部における給電ケーブル2の劣化も防止することができる。
【0028】
このように、本発明に係る無人飛行体を用いた構造物検査装置1は、撮像装置11を備え、遠隔操縦される無人飛行体10と、無人飛行体10に給電ケーブル2を介して電力を供給する地上支援車20とを備えているので、容易に構造物検査装置1を検査対象物の直下近傍に移動させることができる。また、地上支援車20は、その上面に無人飛行体10が離着陸するための開閉式のポート21を有しているので、無人飛行体10を地上支援車20のポート21に対して垂直に離着陸させることによって、給電ケーブル2の振れ角を小さくすることができる。さらに、ポート21は、少なくとも1枚の可動板23を備え、可動板23が移動する前の状態、例えば、無人飛行体10がポート21上に着陸している状態で、ポート21に給電ケーブル2を地上支援車20の内部から外部に引き出すための第1開口22が形成されているので、無人飛行体10に電力を供給して無人飛行体10を離陸させることができる。離陸直後は、無人飛行体10の水平方向への移動量は少ないので、給電ケーブル2の絶縁被覆が第1開口22のエッジなどに擦れる可能性は低い。
【0029】
次に、無人飛行体10を離陸させた後、ポート21の可動板23を移動させると、ポート21に、給電ケーブル2を地上支援車20の内部から外部に引き出すための第1開口22よりも大きな第2開口25が形成される。換言すれば、第1開口22が第2開口25に拡大される。第2開口25は、可動板23の移動方向における寸法W、及び前記可動板の移動方向に直交する方向における寸法Dのいずれもが第1開口22のそれよりも大きいので、水平方向における無人飛行体10の移動可能範囲が大幅に拡大される。給電ケーブル2の垂直軸に対する振れ角が一定であると仮定すると、無人飛行体10の対地表高度が高くなるにつれて給電ケーブル2の引き出し量が長くなり、無人飛行体10はより広範囲を飛行することができる。また、これらの結果、給電ケーブル2が予期しない箇所に接触する可能性が低減され、給電ケーブル2の劣化を防止することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 構造物検査装置
2 給電ケーブル
3 リール(自動巻き取り装置)
4 自動巻き取り装置
5 電源装置
6 発電機
7 飛行制御装置
8 受信装置
9 解析装置
10 無人飛行体
11 撮像装置
12 二次電池
13 ワイヤー
20 地上支援車
21 ポート
22 第1開口
23 可動板
24 固定板
25 第2開口
31 中空リング
32 コネクタ
33 吊り環