【解決手段】本発明の皮膚又は毛髪の洗浄剤は、油剤、自発的にベシクルを形成する両親媒性物質のベシクル及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子、並びに皮膚又は毛髪洗浄物質を含み、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が、油剤の少なくとも一部を囲んでなるエマルション粒子を形成していることを特徴とするものである。ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が、油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子を形成していることが好ましい。また、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子が水に分散されていることが好ましい。
ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子が水中に分散されている乳化物を、皮膚又は毛髪洗浄物質を含む素地に添加する、
皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態について何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
≪皮膚又は毛髪の洗浄剤≫
本発明の皮膚又は毛髪の洗浄剤は、油剤、自発的にベシクルを形成する両親媒性物質のベシクル及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子、並びに皮膚又は毛髪の洗浄物質を含み、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が、油剤の少なくとも一部を囲んでなるエマルション粒子を形成していることを特徴とするものである。
【0019】
ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子は、表面が親水性の粒子であり、ファンデルワールス力によって水相と油相との界面に介在することで、乳化状態を維持することができる。この乳化機構は、ベシクル又は重縮合ポリマーによる三相乳化機構として公知であり、界面活性剤による乳化機構、すなわち親水性部分及び疎水性部分をそれぞれ水相及び油相に向け、油水界面張力を下げることで乳化状態を維持する乳化機構とは全く異なる(例えば特許3855203号公報参照)。なお、水相及び油相のいずれが内相になるか、又は外相になるかは、各相の添加順序によるものである。このような三相乳化エマルションにおいては、内相の外周を複数のベシクル又は重縮合ポリマー粒子が取り囲んでエマルション粒子(内相)が形成される。
【0020】
さて、上述したとおり、この皮膚又は毛髪の洗浄剤におけるベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の存在状態は、その少なくとも一部が、油剤(油相)の少なくとも一部の外周を囲んでなる粒子(以下、便宜のため、「エマルション粒子」というものとする。)を形成している。そして、このようなエマルション粒子は、周囲に外相たる水が存在しなくても、油剤をベシクル又は重縮合ポリマー粒子が囲んでなる粒子からなる構造を維持できる。したがって、例えば、特許3855203号公報にしたがい、一旦O/W型エマルション構造を形成した後、外相たる水を除去すれば、エマルション粒子を単離でき、この単離したエマルション粒子を皮膚又は毛髪の洗浄物質と混合すればよい。このような場合、皮膚又は毛髪の洗浄に用いる際に、エマルション粒子は供給された水に再分散する。
【0021】
このように、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子が、皮膚又は毛髪の洗浄剤において、油剤とともにエマルション粒子を形成することにより、油剤をエマルション粒子内部に保持し、油剤が洗浄に際し用いる水により流されにくく、油剤の乾燥抑制効果を高めることができる。
【0022】
また、このエマルション粒子は、水に希釈することにより破壊されない。したがって、このエマルション粒子が水に分散した液状、ペースト状の皮膚又は毛髪の洗浄剤としてもよい。
【0023】
そして、このようなベシクル又は重縮合ポリマー粒子によって形成されるエマルション粒子は、皮膚又は毛髪の洗浄物質に由来する泡立ち及び洗浄力をさらに高める。
【0024】
また、エマルション粒子は、皮膚又は毛髪の洗浄物質を用いて泡立てると、空気と水との界面及び泡同士の間(プラトーボーダー)に配置される。このうち、空気と水との界面に存在するエマルション粒子は、気泡を保持して破泡を抑制する効果がある。また、プラトーボーダー中に存在するエマルション粒子は、プラトーボーダーにおいて水が重力による水の流下を防止するとともに、そのエマルション粒子を構成するベシクルや重縮合ポリマーも多くの水分を含んでいるため、泡が有する水膜の薄化を防止し、長時間にわたって泡立ちを維持することができる。
【0025】
さらに、エマルション粒子はそれ自身がエマルション洗浄能を有するため、界面活性剤の洗浄剤による洗浄以外に、エマルション洗浄が加わるため、本発明の皮膚又は毛髪の洗浄剤は、従来の皮膚又は毛髪の洗浄剤と比較して、洗浄性が高い。
【0026】
また、このような皮膚又は毛髪の洗浄剤においては油分が含まれているが、皮膚又は毛髪の洗浄に際し、この油分は内相としてその周囲をベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子が囲んでいるため、皮膚又は毛髪の洗浄物質による乳化が起こらずに、皮膚又は毛髪の洗浄物質が本来有する泡立ちを阻害せずに泡立ちが良い。
【0027】
また、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子は、油相を囲むようにしてエマルション粒子を形成し、皮膚又は毛髪を洗浄した後でも、エマルション粒子の一定量は水によって洗い流されず、皮膚(毛髪洗浄剤として使用した場合、毛髪及び頭皮)に付着する。皮膚に付着したエマルション粒子のうち、皮膚(頭皮を含む)又は毛髪側に接しているベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子は水を保持しており、皮膚(頭皮を含む)又は毛髪に対して水分を供給する。一方、エマルション粒子の内相として存在する油分やエマルション粒子が破壊されて内相から供給された油分は、皮膚(頭皮を含む)又は毛髪からの水分の蒸発を防止することによって、乾燥を抑制し、エモリエント効果が得られる。
【0028】
さて、ここで、「エモリエント効果」とは、油性成分による保湿作用であり、具体的には皮膚からの水分蒸散を抑えてその潤いを保ち、皮膚を柔らかくする効果をいう。
【0029】
<ベシクル、重縮合ポリマー粒子>
ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子は、油相及び水相の界面、並びに機能性成分相及び水相の界面に介在し、ファンデルワールス力を介して乳化状態を構成することから、水相、油相及び機能性物質の化学組成や表面状態等にかかわらず、良好な乳化物を構成することができる。
【0030】
水酸基を有する重縮合ポリマーは、天然高分子、合成高分子又は半合成高分子のいずれであってもよく、乳化剤の用途に応じて適宜選択されてよい。ただし、安全性に優れ、一般的に安価である点で、天然高分子が好ましく、乳化機能に優れる点で以下に述べる糖ポリマーがより好ましい。なお、粒子とは、重縮合ポリマーが単粒子化したもの、又はその単粒子同士が連なったもののいずれも包含する一方、単粒子化される前の凝集体(網目構造を有する)は包含しない。
【0031】
ベシクルを形成する両親媒性物質としては、特に限定されないが、下記の一般式1で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体が挙げられる。
【0033】
式中、エチレンオキシドの平均付加モル数であるEは、3〜100である。
【0034】
両親媒性物質としては、リン脂質やリン脂質誘導体等、特に疎水基と親水基とがエステル結合したものを採用してもよい。
【0035】
リン脂質としては、下記の一般式2で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPC(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長14のDMPC(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長16のDPPC(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)に例示される、グリセリンやスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸が結合し、構造中にリン酸部位とコリン部位を持つ脂質を採用可能である。
【0037】
また、下記の一般式3で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPG(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH
4塩、炭素鎖長14のDMPG(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH
4塩、炭素鎖長16のDPPG(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH
4塩を採用してもよい。
【0039】
更に、リン脂質として卵黄レシチン又は大豆レシチン等のレシチンを採用してもよい。
【0040】
両親媒性物質としては、脂肪酸エステルを用いてもよい。脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0041】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンと炭素−炭素結合が飽和不飽和結合を問わず、直鎖脂肪酸又は分岐脂肪酸のエステルであり、具体的には、モノミリスチン酸ポリグリセリル、ジミリスチン酸ポリグリセリル、トリミリスチン酸ポリグリセリル、モノパルミチン酸ポリグリセリル、ジパルミチン酸ポリグリセリル、トリパルミチン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ジモノオレイン酸ポリグリセリル、トリモノオレイン酸ポリグリセリル等が挙げられる。
【0042】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等が挙げられる。
【0043】
一方、糖ポリマーは、セルロース、デンプン等のグルコシド構造を有するポリマーである。例えば、リボース、キシロース、ラムノース、フコース、グルコース、マンノース、グルクロン酸、グルコン酸等の単糖類の中からいくつかの糖を構成要素として微生物が産生するもの、キサンタンガム、アラビアゴム、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインシードガム、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、シロキクラゲ多糖体等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子が挙げられる。
【0044】
ベシクル及び重縮合ポリマー粒子の総量としては、特に限定されないが、皮膚又は毛髪の洗浄剤の総量に対し、0.001質量%以上であることが好ましく、0.002質量%以上であることがより好ましく、0.005質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましい。一方で、重縮合ポリマー粒子及びベシクルの総量としては、皮膚又は毛髪の洗浄剤の総量に対し、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であってよい。
【0045】
ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の平均粒子径は、エマルション形成前では8nm〜800nm程度であるが、O/W型エマルション構造においては8nm〜500nm程度である。なお、重縮合ポリマー粒子及びベシクルは、一方のみが含まれても、双方が含まれてもよい。双方が含まれる場合には、例えば、別々に乳化したエマルションを混合してよい。なお、本発明において「平均粒子径」とは、粒度分布測定装置FPAR(大塚電子(株)社製)を用いて動的光散乱法により測定し、Contin解析により求めた値である。
【0046】
<油相>
油相としては、特に限定されず、極性又は非極性、無極性のものいずれを用いることもできる。また、油相の性状も特に限定されず、常温(15〜25℃)において、液体、ペースト状、又は固体のいずれであってもよい。
【0047】
油相としては、特に限定されないが、例えば炭化水素油、直鎖エステル油、油脂類、ロウ類、高級アルコール類、シリコーン油、フッ素油、エーテル類等が挙げられる。ただし、皮膚に対して柔軟性、抱水性、閉塞性といった乾燥が抑制され保湿性(エモリエント性)を有する原料、毛髪に対して保護、弾力、柔軟等の性質を有する原料を用いることが好ましい。
【0048】
より具体的に、炭化水素油としては、特に限定されないが、例えば流動パラフィン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、イソパラフィン類、動物性及び植物性スクワラン、スクワレン、α−オレフィンオリゴマー、ポリブテン、等が挙げられる。特に閉塞効果やバリア機能性向上に優れる点で、ワセリン、スクワランが好ましい。また、炭化水素は、エモリエント性に優れる点で好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
直鎖エステル油としては、特に限定されないが、例えば、直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と分岐高級アルコールとのエステル、直鎖脂肪酸と多価アルコールとのエステル、分岐脂肪酸と低級アルコールとのエステル、分岐脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル、分岐脂肪酸と分岐高級アルコールとのエステル、分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステル、水酸基を持つ脂肪酸とアルコールとのエステル、二塩基酸とアルコールのエステル、脂肪酸とステロール類とのエステル等が挙げられる。具体的には、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸メチルヘプチル、中鎖脂肪酸トリグリセライド、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸メチルヘプチル、ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、12−ステアロイルヒドロキシステアリン酸ステアリル等が挙げられる。これらのうち、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸オクチルドデシルは肌を柔軟にする点で好ましい。また、エステル油は、エモリエント性に優れる点で好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
油脂類としては特に限定されないが、例えばオリーブ油、マカデミアナッツ油、シア脂、アボカド油、マンゴー種子脂、パーム核油、ヒマワリ種子油等が挙げられる。これらのうち、特に皮脂に近いマカデミアナッツ油が好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ロウ類としては、特に限定されないが、例えば、ホホバ油、ミツロウ、カルナウバロウ、オレンジラフィー油等が挙げられる。これらのうち特に感触の良いホホバ油が好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してよい。
【0052】
高級アルコール類としては、特に限定されないが、例えば、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
シリコーン油及びフッ素油としては、特に限定されないが、例えば、トリシロキサン、ジメチコン、ジフェニルジメチコン、デカメチルシクロペンタシロキサン、アモジメチコン、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。これらのうち、特に感触改良の点でジメチコンが好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
エーテル類としては特に限定されないが、例えば、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。これらのうち、特に保湿性に富んだ保護被膜を形成する点でセラキルアルコールが望ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
油相の含有量としては、特に限定されず、皮膚又は毛髪の洗浄剤に対し、例えば0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、油相の含有量としては、例えば90.0質量%以下であることが好ましく、80.0質量%以下であることがより好ましく、70.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0056】
油相は以上の成分以外に、例えば、皮膚又は毛髪の洗浄剤が通常含有する親油性の界面活性剤、無機顔料・有機顔料等の粉体、色材、スクラブ剤、又は紫外線防御剤等の成分を含むことができる。
【0057】
<水相>
上述したとおり、本発明の皮膚又は毛髪の洗浄剤は、ベシクルや重縮合ポリマー粒子、エマルション粒子を水と独立して、すなわち、粉末状や固形状として配合することができるため、外相となり得る水相は必須の成分ではない。なお、当該皮膚又は毛髪の洗浄剤を用いて皮膚や毛髪を洗浄する場合には、水を用い得るので、皮膚又は毛髪の洗浄剤が水を含んでいなくとも、エマルション粒子は、洗浄に際し水に分散し、洗浄時において(少なくとも洗浄後の水において)O/W型エマルションを形成する。
【0058】
水相としては、精製水、温泉水、深層水、又は植物等の水蒸気蒸留水等の水を用いることができる。また、水相には、例えばグリセリン、1,3−ブチレングリコールやDPG等の多価アルコール等水と親和性のある溶媒等を用いることができる。
【0059】
また、水相は、増粘剤として、水溶性高分子を含むことができる。水溶性高分子成分としては、特に限定されないが、例えば(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー、カルボキシビニルポリマー等が用いられる。
【0060】
水相の含有量としては、特に限定されず、皮膚又は毛髪の洗浄剤に対し、例えば0.01質量%以上であることが好ましく、1.00質量%以上であることがより好ましく、5.00質量%以上であることがさらに好ましい。また、水相の含有量としては、例えば99.99質量%以下であることが好ましく、99.00質量%以下であることがより好ましく、95.00質量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
水相は以上の成分以外に、皮膚又は毛髪の洗浄剤が通常含有する親水性の界面活性剤、無機顔料・有機顔料等の粉体、色材、スクラブ剤等の成分を含むことができる。
【0062】
<皮膚又は毛髪の洗浄物質>
皮膚又は毛髪の洗浄物質は、皮膚や毛髪上の汚れを除去する成分をいい、界面活性能を有する物質、酸アルカリ物質、物理的作用による洗浄としてのスクラブ剤等が挙げられる。特に界面活性能を有する物質としては、例えば、陰イオン性、陽イオン性、両性、非イオン性の界面活性剤等が挙げられ、皮膚又は毛髪の洗浄に求められる機能や性状等に応じて適宜選択することができる。
【0063】
皮膚又は毛髪の洗浄物質の一例としては、上述したとおり、界面活性剤の一種である石鹸物質が挙げられる。ここで、「石鹸物質」とは、炭素原子を少なくとも8個含む脂肪酸又は脂肪酸混合物のアルカリ塩(無機又は有機)を言い、脂肪酸の炭素−炭素結合は、飽和、不飽和を問わない。具体的に、石鹸物質としては、例えばカプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩等が挙げられる。
【0064】
皮膚又は毛髪の洗浄物質の一例としては、合成界面活性剤が挙げられる。ここで、「合成界面活性剤」とは、親水基部分と疎水基部分が共有結合している分子構造を持ち、界面活性を示す両親媒性物質で、人工的に合成された物質である。油溶性の物と親水性の物がある。主に石油由来を原料とし、多機能化のために官能基等が導入された界面活性剤のことである。例えば、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩、スルホベタイン型両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0065】
皮膚又は毛髪の洗浄物質の含有量としては、特に限定されず、皮膚又は毛髪の洗浄剤に対し、例えば0.01質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、1.00質量%以上であることがさらに好ましい。また、皮膚又は毛髪の洗浄物質の含有量としては、例えば99.99質量%以下であることが好ましく、99.00質量%以下であることがより好ましく、95.00質量%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
上述した皮膚又は毛髪の洗浄剤は、主として皮膚上における皮脂類や油汚れ等を除去することを目的として使用されるものであり、さらに乾燥防止効果、ベシクル又は重縮合ポリマーによる油剤の保持能に基づくエモリエント効果を有するものである。このうち皮膚又は毛髪の洗浄剤としては、具体的に、洗顔用洗浄剤、ボディ用洗浄剤、ハンド用洗浄剤、ペット又は家畜用皮膚洗浄剤等が挙げられる。また、毛髪洗浄剤としては、例えばヒトに対する毛髪洗浄剤(毛髪、眉毛、すね毛等)やペット又は家畜用毛髪洗浄剤が挙げられる。
【0067】
本発明の皮膚又は毛髪の洗浄剤は、ヒトの皮膚に使用することが望ましいが、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ等、ヒト以外の動物の体毛や皮膚にも使用することができる。
【0068】
上述した皮膚又は毛髪の洗浄剤の性状は特に限定されず、液状、ペースト状、固体状、粉体状等として用いることができる。
【0069】
このような皮膚又は毛髪の洗浄剤は、従来公知の皮膚又は毛髪の洗浄剤と同様の方法で使用することができる。
【0070】
≪第1の態様の皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造方法≫
第1の態様の皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造方法は、油剤、自発的にベシクルを形成する両親媒性物質のベシクル及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子、並びに皮膚又は毛髪の洗浄物質を混合することを特徴とするものである。
【0071】
すなわち、従来の皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造に際し、油剤並びに自発的にベシクルを形成する両親媒性物質のベシクル及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子を添加することにより、油剤、自発的にベシクルを形成する両親媒性物質のベシクル及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子、並びに皮膚又は毛髪の洗浄物質を含む皮膚又は毛髪の洗浄剤を製造することができる。
【0072】
なお、ベシクルを形成する両親媒性物質により形成されたベシクル及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子が分散した水の製造方法は、例えば特許3855203号において従来公知であるため省略する。各成分の配合量や任意成分については上述したとおりである。
【0073】
≪第2の態様の皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造方法≫
第2の態様の皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造方法は、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子を、皮膚又は毛髪の洗浄物質を含む素地に添加することを特徴とするものである。
【0074】
すなわち、あらかじめベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子が水に分散されているO/W型エマルションを、例えば特許3855203号に示される方法で製造し、その後、遠心分離や乾燥により水を除去して、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子を粉末として得る。
【0075】
そして、このような粉末を、従来の皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造に際し、皮膚又は毛髪の洗浄物質を含む素地に添加することにより、油剤、自発的にベシクルを形成する両親媒性物質のベシクル及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子、並びに皮膚又は毛髪の洗浄物質を含み、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が、油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子を形成している皮膚又は毛髪の洗浄剤を製造することができる。
【0076】
(素地)
素地は少なくとも皮膚又は毛髪の洗浄物質を含み、多価アルコール又は精製水のいずれかを含んでも良い。
【0077】
≪第3の態様の皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造方法≫
第3の態様の皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造方法は、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子が水中に分散されている乳化物を、皮膚又は毛髪の洗浄物質を含む素地に添加することを特徴とするものである。
【0078】
すなわち、あらかじめベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子が水に分散されているO/W型エマルション(乳化物)を、例えば特許3855203号に示される方法で製造して得る。
【0079】
そして、このような乳化物を、従来の皮膚又は毛髪の洗浄剤の製造に際し、皮膚又は毛髪の洗浄物質を含む素地に添加することにより、油剤、自発的にベシクルを形成する両親媒性物質のベシクル及び/又は水酸基を有する重縮合ポリマー粒子、並びに皮膚又は毛髪の洗浄物質を含み、ベシクル及び/又は重縮合ポリマー粒子の少なくとも一部が、油剤の少なくとも一部を囲んでなる粒子を形成している皮膚又は毛髪の洗浄剤を製造することができる。
【0080】
なお、第1〜第3いずれの態様の皮膚又は毛髪の洗浄剤においても、混合後固形状、粉末状のものを得る場合や皮膚又は毛髪の洗浄物質等を濃縮する場合等には、適宜水やアルコール等を除去することができ、また、皮膚又は毛髪の物質等を希釈する場合等には、適宜水やアルコール等を添加してもよい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下において便宜上、実施例及び比較例の試料を「皮膚洗浄剤試料」と表記するが、これらの「皮膚洗浄剤試料」が、「毛髪洗浄剤」に使用できないことを意図したものではない。
【0082】
<石鹸物質を素地とする皮膚洗浄剤>
〔泡密度の評価〕
[試料の調製]
(実施例1〜3)
ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸をグリセリン、1,3−ブチレングリコールに加えて加温溶解し、そこに予め調製しておいた水酸化カリウム水溶液を滴下し、撹拌後に冷却することで素地を得た(これを「素地1」とする。)。一方で、精製水を撹拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを滴下して重縮合ポリマーの分散液を調製し、そこに、予め着色剤を溶解させて着色した中鎖脂肪酸トリグリセライドを油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、先に調製した素地1にそのO/Wエマルションを添加し、撹拌して実施例1〜3の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表1のとおりとした。
【0083】
(比較例1)
精製水のみを素地1に添加し、撹拌して比較例1の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表1のとおりとした。
【0084】
[泡密度の評価]
比較例1及び実施例1〜3の皮膚洗浄剤試料それぞれについて、皮膚洗浄剤試料2gに水道水18gを混合し、ミキサー(HAND MIXER HM−703、輸入販売元 株式会社ドリテック)を用いて、強度1で3分間撹拌し、十分に泡立てた。その後直ちに一定体積の容器に破泡しないように泡を擦り切り状態で充填し、その重量を測定し、密度を算出した(n=1)。下記表1に泡密度の算出結果を示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1から分かるように、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び中鎖脂肪酸トリグリセライド(エマルション粒子)の添加量が増加するにしたがい、泡密度が増加することが分かった。泡密度の増加は、泡が抱える水の量が多いことを示すため、エマルション粒子の添加量が増えるにしたがい、破泡しにくいことを表す。したがって、泡密度は泡の持続性の指標でもある。
【0087】
〔泡形成に対する油の添加の影響〕
[試料の調製]
(実施例4)
精製水を撹拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを滴下して重縮合ポリマーの分散液を調製し、そこに予め着色剤を溶解させて着色した中鎖脂肪酸トリグリセライドを油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、このO/Wエマルションを比較例1の皮膚洗浄剤試料に添加し、撹拌して皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表2のとおりとした。
【0088】
(比較例2)
比較例1の皮膚洗浄剤試料に、着色剤を溶解させて着色した中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加し、撹拌して皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表2のとおりとした。
【0089】
(比較例3)
精製水にポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル(花王株式会社製「エマルゲン420」)を溶解させ、着色剤を溶解させて着色した中鎖脂肪酸トリグリセライドを滴下し、界面活性剤によるO/Wエマルションを調製した。次に、比較例1の皮膚洗浄剤試料に、この界面活性剤乳化物を添加し、撹拌して皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表2のとおりとした。
【0090】
(比較例4)
ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸を加温融解した。そこに、精製水を用いて調製した水酸化カリウム水溶液を混合して得た石鹸に着色剤を溶解させて着色した中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加し、撹拌して石鹸乳化物(中鎖脂肪酸トリグリセライドが石鹸物質である脂肪酸塩によって乳化された乳化物)を調製した。次に、比較例1の皮膚洗浄剤試料に、この石鹸乳化物を添加し、撹拌して皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表2のとおりとした。
【0091】
なお、表2では、g単位で組成を表記しており、全ての試料において比較例1の皮膚洗浄剤試料の量を統一するとともに、実施例4及び比較例2〜4の試料では中鎖脂肪酸トリグリセライドの量を一定とした。
【0092】
[泡立ち評価]
表2に記載の実施例4及び比較例1〜4の皮膚洗浄剤試料それぞれに対し、水道水18gを混合し、ミキサー(HAND MIXER HM−703、輸入販売元 株式会社ドリテック)を用いて、強度1で3分間撹拌し、十分に泡立てた。その後直ちに一定体積の容器に破泡しないように泡を擦り切り状態で充填し、その重量を測定し、密度を算出した(n=3の平均値)。下記表2にその結果を示す。なお比較例2〜4の皮膚洗浄剤試料については、泡立てを試みたが泡立ちが十分でなく、泡密度を測定することができなかった。そのため、表2において「測定不可」と記載した。一方、実施例4及び比較例1の皮膚洗浄剤試料については、泡密度を算出することができた。
【0093】
次に、実施例4及び比較例1〜4の皮膚洗浄剤試料それぞれに対し、水道水18gを混合し、ミキサー(HAND MIXER HM−703、輸入販売元 株式会社ドリテック)を用いて、強度1で3分間撹拌し、十分に泡立てた。
図1は、実施例4及び比較例1〜4の皮膚洗浄剤試料から形成された泡の泡立て直後の写真図である。なお、当該写真図の撮影にあたっては、実施例4及び比較例2〜4については、着色剤を添加しない組成とした。
【0094】
油剤を添加していない比較例1の試料では泡立ちが確認されたが、油剤を何ら処理することなく添加した比較例2、油剤を界面活性剤乳化物として添加した比較例3、油剤を石鹸乳化物として添加した比較例4の皮膚洗浄剤試料では、いずれも泡立ちが十分でなかった。これに対し、実施例4の皮膚洗浄剤試料では、油剤を含むにもかかわらず、油剤を添加していない比較例1と同様の良好な泡立ちが確認された。
【0095】
【表2】
【0096】
[光学顕微鏡観察]
実施例4及び比較例1〜4の皮膚洗浄剤試料それぞれに対し、水道水18gを混合し、ミキサー(HAND MIXER HM−703、輸入販売元 株式会社ドリテック)を用いて、強度1で3分間撹拌し、十分に泡立てた。その直後、その泡について光学顕微鏡観察を行った。
【0097】
図2は、実施例4の皮膚洗浄剤試料から形成された泡の泡立て直後の光学顕微鏡写真図であり、(a)は倍率100倍、(b)は倍率200倍である。また、
図3は、比較例1の皮膚洗浄剤試料から形成された泡の泡立て直後の光学顕微鏡写真図であり、(a)は倍率100倍、(b)は倍率200倍である。
図2から、実施例4の皮膚洗浄剤試料から形成された泡においては、プラトーボーダー又は泡膜間に、略円形又は略楕円形の粒径数μm〜数十μmのエマルション粒子(青色に着色された粒子)が存在していることが確認された。一方で、
図3から、比較例1の皮膚洗浄剤試料から形成された泡においては、そのような粒子が確認されなかった。三相乳化におけるエマルション粒子は、粒径が数μm〜数十μmの粒子でも安定であることが知られており、観察された粒子が青色に着色されていることから、
図2において確認されたプラトーボーダー又は泡膜間に存在する粒子が三相乳化によるエマルション粒子であると言える。
【0098】
比較例2〜4の皮膚洗浄剤試料においては、油が泡膜と作用し、破泡を生じるために起泡しなかったのに対して、実施例4の皮膚洗浄剤試料においては、エマルション粒子がプラトーボーダー又は泡膜間に独立して存在するため、石鹸分子が形成する泡立ちに悪影響を起こさず、油剤が添加されていない比較例1の皮膚洗浄剤試料と同様の泡立ちが確認されたと考えられる。
【0099】
〔洗浄性評価〕
[試料の調製]
(実施例5)
ラウリン酸及びミリスチン酸を加温融解し、そこに予め調製しておいた水酸化カリウム水溶液を滴下し、撹拌後に冷却することで素地を得た(これを「素地2」とする。)。一方で、精製水を撹拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを滴下し重縮合ポリマーの分散液を調製し、そこに、ミリスチン酸イソプロピルと流動パラフィンの混合物を油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、先に調製した素地2にそのO/Wエマルションを添加し、撹拌して実施例5の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表3のとおりとした。
【0100】
(実施例6)
精製水を撹拌しながらミリスチン酸ポリグリセリル−10を滴下してベシクルの分散液を調製し、そこに、ミリスチン酸イソプロピルと流動パラフィンの混合物を油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、先に調製した素地2にそのO/Wエマルションを添加し、撹拌して実施例6の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表3のとおりとした。
【0101】
(比較例5)
素地2に精製水を添加して比較例5の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表3のとおりとした。
【0102】
[評価]
シャーレにファンデーション約0.02gを塗布し、10分間乾燥させた。このシャーレに、実施例5、実施例6又は比較例5の皮膚洗浄剤試料約0.2gを添加し、当該皮膚洗浄剤試料がファンデーションとよく接触するようにして、指の腹で30回円を描くように擦った。次いで、ファンデーションを塗布した箇所を流水で流し、乾燥させ、残ったファンデーションの残量(処理後のファンデーションの重量)を測定した。上記洗浄処理前後のファンデーションの重量を用い、[洗浄除去率(%)=[(処理前のファンデーションの重量−処理後のファンデーションの重量)/処理前のファンデーションの重量]×100]の式を用いて、洗浄除去率を評価した。下記表3に各皮膚洗浄剤試料の洗浄除去率を示す。
【0103】
また、
図4は、実施例5、実施例6及び比較例5の皮膚洗浄剤試料を用いた洗浄処理前後のファンデーションを塗布したシャーレの写真図である。実施例5及び6の皮膚洗浄剤試料により洗浄したシャーレは、比較例5の皮膚洗浄剤試料により洗浄したシャーレに比べてファンデーションがよく除去できていることが分かった。
【0104】
表3及び
図4の結果から、実施例5及び6の皮膚洗浄剤試料は、比較例5の皮膚洗浄剤試料に比べてファンデーションの洗浄除去率が高いことが分かった。
【0105】
【表3】
【0106】
〔エモリエント効果評価〕
[試料の調製]
(実施例7)
ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸及びラウリン酸をグリセリン及び1,3−ブチレングリコールに投入し、加温溶解し、そこに予め調製しておいた水酸化カリウム水溶液を滴下し、撹拌後に冷却することで素地を得た(これを「素地3」とする。)。一方で、精製水を撹拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを滴下して重縮合ポリマーの分散液を調製し、そこに、予め加温溶解したシア脂、ベヘニルアルコール及びミリスチン酸オクチルドデシルを油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、先に調製した素地3にそのO/Wエマルションを添加し、撹拌して実施例7の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表4のとおりとした。
【0107】
(実施例8)
精製水を撹拌しながらミリスチン酸ポリグリセリル−10を滴下してベシクルの分散液を調製し、そこに、予め加温溶解したシア脂、ベヘニルアルコール及びミリスチン酸オクチルドデシルを油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、先に調製した素地3にそのO/Wエマルションを添加し、撹拌して実施例8の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表4のとおりとした。
【0108】
(比較例6)
素地3に精製水を添加することで、比較例6の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表4のとおりとした 。
【0109】
(比較例7)
素地3に、予め溶解混合させたシア脂、ベヘニルアルコール及びミリスチン酸オクチルドデシルを添加し、撹拌後に冷却し、さらに精製水を添加することで、比較例7の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表4のとおりとした。
【0110】
[評価]
試験部位として前腕屈側中の隣接する3か所を選択した。試験部位を約30℃のぬるま湯ですすいだ後、20±2℃、湿度45〜55%に調整した測定室で試験部位を露出して15分間安静にした。次に、試験部位3か所の角層水分量を測定し、この値を角層水分量の初期値とした。次いで、実施例7、比較例6及び比較例7の3種の皮膚洗浄剤試料を同一量の水で各々泡立て、その泡で試験部位3か所を各々洗浄した。タオルドライ後、測定室にて洗浄直後、洗浄終了から15分後、30分後の各時点における試験部位3か所の角層水分量の測定を、SKICON−200EX(株式会社ヤヨイ製)を用いて行った(n=6)。また、実施例8、比較例6及び比較例7の皮膚洗浄剤試料の組についても同様の測定を行った。
【0111】
図5は、実施例7、比較例6及び比較例7の組の皮膚洗浄剤試料を用いた洗浄処理前後の角層水分量の相対値対経過時間のプロットである。また、
図6は、実施例8、比較例6及び比較例7の組の皮膚洗浄剤試料を用いた洗浄処理前後の角層水分量の相対値対経過時間のプロットである。すなわち、
図5及び6において、横軸は経過時間、縦軸は、角層水分量の相対値である。ここで、「角層水分量の相対値」とは、角層水分量の初期値に対する、特定時点における角層水分量の割合(特定時点における角層水分量×100/角層水分量の初期値、単位:%)である。
【0112】
図5及び6から、素地3に三相乳化物を添加した実施例7及び8の皮膚洗浄剤試料は、素地3のみからなる比較例6の皮膚洗浄剤試料や、素地3に油剤を単独配合した比較例7の皮膚洗浄剤に比べて経時による角層水分量の低下が有意に(Wilcoxon符号順位検定 p<0.05)抑制されることが分かった。これらの結果から、三相乳化物に配合された油剤は肌に留まり、エモリエント効果を発揮したと考えられる。
【0113】
【表4】
【0114】
<合成界面活性剤を素地とする皮膚洗浄剤>
〔洗浄性評価〕
[試料の調製]
(実施例9)
精製水にラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びラウリル硫酸ナトリウムを加温融解し、撹拌後に冷却することで素地を得た(これを「素地4」とする。)。一方で、精製水を撹拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを滴下し重縮合ポリマーの分散液を調製し、そこに、ミリスチン酸イソプロピルと流動パラフィンの混合物を油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、先に調製した素地4にそのO/Wエマルションを添加し、撹拌して実施例9の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表5のとおりとした。
【0115】
(実施例10)
精製水を撹拌しながらミリスチン酸ポリグリセリル−10を滴下してベシクルの分散液を調製し、そこに、ミリスチン酸イソプロピルと流動パラフィンの混合物を油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、先に調製した素地4にそのO/Wエマルションを添加し、撹拌して実施例10の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表5のとおりとした。
【0116】
(比較例8)
素地4に精製水を添加して比較例8の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表5のとおりとした。
【0117】
[評価]
石鹸物質を素地とする皮膚洗浄剤の洗浄性評価と同様にして、洗浄除去率を評価した。下記表5に各皮膚洗浄剤試料の洗浄除去率を示す。
【0118】
また、
図7は、実施例9、実施例10及び比較例8の皮膚洗浄剤試料を用いた洗浄処理前後のファンデーションを塗布したシャーレの写真図である。実施例9及び10の皮膚洗浄剤試料により洗浄したシャーレは、比較例8の皮膚洗浄剤試料により洗浄したシャーレに比べてファンデーションがよく除去できていることが分かった。
【0119】
表5及び
図7の結果から、実施例9及び10の皮膚洗浄剤試料は、比較例8の皮膚洗浄剤試料に比べてファンデーションの洗浄除去率が高いことが分かった。
【0120】
【表5】
【0121】
〔泡形成に対する油の添加の影響〕
[試料の調製]
(実施例11)
精製水を撹拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを滴下して重縮合ポリマーの分散液を調製し、そこに中鎖脂肪酸トリグリセライドを油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、このO/Wエマルションを比較例8の皮膚洗浄剤試料に添加し、撹拌して皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表6のとおりとした。
【0122】
(比較例9)
比較例8の皮膚洗浄剤試料に、中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加し、撹拌して皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表6のとおりとした。
【0123】
(比較例10)
精製水にポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル(花王株式会社製「エマルゲン420」)を溶解させ、中鎖脂肪酸トリグリセライドを滴下し、界面活性剤によるO/Wエマルションを調製した。次に、比較例8の皮膚洗浄剤試料に、この界面活性剤乳化物を添加し、撹拌して皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表6のとおりとした。
【0124】
(比較例11)
ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸を加温融解した。そこに、精製水を用いて調製した水酸化カリウム水溶液を混合して得た石鹸に中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加し、撹拌して石鹸乳化物(中鎖脂肪酸トリグリセライドが石鹸物質である脂肪酸塩によって乳化された乳化物)を調製した。次に、比較例8の皮膚洗浄剤試料に、この石鹸乳化物を添加し、撹拌して皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表6のとおりとした。
【0125】
なお、表6では、g単位で組成を表記しており、全ての試料において比較例8の皮膚洗浄剤試料の量を統一するとともに、実施例11及び比較例9〜11の試料では中鎖脂肪酸トリグリセライドの量を一定とした。
【0126】
[泡立ち評価]
表6に記載の実施例11及び比較例8〜11の皮膚洗浄剤試料それぞれに対し、水道水18gを混合し、ミキサー(HAND MIXER HM−703、輸入販売元 株式会社ドリテック)を用いて、強度1で3分間撹拌し、十分に泡立てた。
図8は、実施例11及び比較例8〜11の皮膚洗浄剤試料から形成された泡の泡立て直後の写真図である。
【0127】
油剤を添加していない比較例8の試料では泡立ちが確認されたが、油剤を何ら処理することなく添加した比較例9、油剤を界面活性剤乳化物として添加した比較例10、油剤を石鹸乳化物として添加した比較例11の皮膚洗浄剤試料では、いずれも泡立ちが十分でなかった。これに対し、実施例11の皮膚洗浄剤試料では、油剤を含むにもかかわらず、油剤を添加していない比較例8と同様の良好な泡立ちが確認された。
【0128】
【表6】
【0129】
〔エモリエント効果評価〕
[試料の調製]
(実施例12)
精製水を撹拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロースを滴下して重縮合ポリマーの分散液を調製し、そこに、予め加温溶解したシア脂、ベヘニルアルコール及びミリスチン酸オクチルドデシルを油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、先に調製した素地4にそのO/Wエマルションを添加し、撹拌して実施例12の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表7のとおりとした。
【0130】
(実施例13)
精製水を撹拌しながらミリスチン酸ポリグリセリル−10を滴下してベシクルの分散液を調製し、そこに、予め加温溶解したシア脂、ベヘニルアルコール及びミリスチン酸オクチルドデシルを油性成分として滴下しO/Wエマルションを調製した。次いで、先に調製した素地4にそのO/Wエマルションを添加し、撹拌して実施例13の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表7のとおりとした。
【0131】
(比較例12)
素地4に精製水を添加することで、比較例12の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表7のとおりとした 。
【0132】
(比較例13)
素地4に、予め溶解混合させたシア脂、ベヘニルアルコール及びミリスチン酸オクチルドデシルを添加し、撹拌後に冷却し、さらに精製水を添加することで、比較例13の皮膚洗浄剤試料を得た。皮膚洗浄剤試料の組成は、下記表7のとおりとした。
【0133】
[評価]
試験部位として前腕屈側中の隣接する4か所を選択した。試験部位を約30℃のぬるま湯ですすいだ後、20±2℃、湿度45〜55%に調整した測定室で試験部位を露出して15分間安静にした。次に、試験部位4か所の角層水分量を測定し、この値を角層水分量の初期値とした。次いで、実施例12、実施例13、比較例12及び比較例13の4種の皮膚洗浄剤試料を同一量の水で各々泡立て、その泡で試験部位4か所を各々洗浄した。タオルドライ後、測定室にて洗浄終了から30分後における試験部位4か所の角層水分量の測定を、SKICON−200EX(株式会社ヤヨイ製)を用いて行った(n=6)。その結果を下記表7に示す。
【0134】
【表7】
【0135】
表7から、素地4に三相乳化物を添加した実施例12及び実施例13の皮膚洗浄剤試料は、素地4のみからなる比較例12の皮膚洗浄剤試料や、素地4に油剤を単独配合した比較例13の皮膚洗浄剤に比べて経時による角層水分量の低下が抑制されることが分かった。これらの結果から、三相乳化物に配合された油剤は肌に留まり、エモリエント効果を発揮したと考えられる。