【解決手段】積層造形装置は、金属の材料粉末が敷かれるテーブルと、水平一軸方向に往復移動してテーブル上に材料粉末を供給するとともに平坦化して粉末層を形成するリコータヘッドと、テーブルおよびリコータヘッドが収容され、天井部に保護ガラスが着脱可能に設置された造形室と、造形室の上方に配置され、保護ガラスを透過したレーザを粉末層の所定領域に照射して材料粉末が焼結した焼結層を形成するレーザ照射装置と、焼結層からなる造形物の造形中、保護ガラスを新たな保護ガラスに交換する保護ガラス交換装置と、を備えている。
n層目の粉末層の焼結中にレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が前記閾値に達する場合、前記保護ガラス交換装置は、前記n層目の粉末層の焼結完了後であって前記n層目の粉末層の次に形成されるn+1層目の粉末層の焼結開始前に前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とする請求項2に記載の積層造形装置。
前記ずれ量算出手段は、レーザの焦点位置の前記基準高さからのずれ量の時間変化に基づき、焼結中に前記基準高さからのずれ量が前記閾値に達するn層目の粉末層を算出し、
前記保護ガラス交換装置は、前記n層目の粉末層の前に形成されるn−1層目の粉末層の焼結完了後であって前記n層目の粉末層の焼結開始前に前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とする請求項4に記載の積層造形装置。
前記保護ガラス交換装置は、前記造形物の造形中におけるレーザの照射時間が所定時間を経過する毎に、前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とする請求項1に記載の積層造形装置。
各粉末層へのレーザの照射時間のデータからn層目の粉末層の焼結開始時間および焼結完了時間を算出するとともに、前記焼結開始時間から前記焼結完了時間までの間に、前記保護ガラスの交換を行う時間が含まれているか否かを判別する数値制御装置をさらに備え、
前記焼結開始時間から前記焼結完了時間までの間に、前記保護ガラスの交換を行う時間が含まれている場合、
前記保護ガラス交換装置は、n−1層目の粉末層の焼結完了後であって前記n層目の粉末層の焼結開始前に前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とする請求項7に記載の積層造形装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ガルバノユニットを通過したレーザは、装置本機の天井部の通孔に取り付けられた保護ガラスを通して材料粉末に照射される。このとき、保護ガラスは、通過したレーザのエネルギーの一部を吸収して発熱する。そのため、実際の造形では、その進行に伴い保護ガラスが発熱し、熱レンズ効果によって焦点位置が上方向にずれる、所謂フォーカスシフトが発生する。
【0006】
これにより、例えば、初期設定の際にレーザの焦点位置の高さを粉末層の上面或いは粉末層の上面より高い位置に設定していた場合、粉末層の上面におけるレーザのビーム径が設定した径より大きくなり、CAMデータによって指定されたビーム径と異なる大きさで焼結が行われてしまう。また、粉末層の上面においてレーザのエネルギー密度が低下するため、形成された焼結層に焼結斑が生じてしまう。以上より、レーザの焦点位置のずれは、造形物の造形品質や機械的強度に多大な影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
さらに、保護ガラスの発熱は、材料粉末の焼結時に生じるヒュームと呼ばれる煙が保護ガラスの表面に付着して蓄積することにより、造形の進行とともに大幅に増大していく。従って、例えば、高い造形品質が求められる造形物の造形時やサイズの大きい造形物の造形時等、造形時間が長時間に及ぶものでは、保護ガラスの発熱に伴うレーザの焦点位置のずれがより大きくなり、その影響も顕著となる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、造形中のレーザの焦点位置のずれを抑えることができる積層造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の積層造形装置は、金属の材料粉末が敷かれるテーブルと、水平一軸方向に往復移動して前記テーブル上に材料粉末を供給するとともに平坦化して粉末層を形成するリコータヘッドと、前記テーブルおよび前記リコータヘッドが収容され、天井部に保護ガラスが着脱可能に設置された造形室と、前記造形室の上方に配置され、前記保護ガラスを透過したレーザを粉末層の所定領域に照射して材料粉末が焼結した焼結層を形成するレーザ照射装置と、前記焼結層からなる造形物の造形中、前記保護ガラスを新たな保護ガラスに交換する保護ガラス交換装置と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明では、保護ガラス交換装置によって保護ガラスを新たな保護ガラスに交換する。これにより、造形室の天井部に取り付けられる各保護ガラスに対するレーザの照射時間を短くすることができるため、加熱を抑えることができる。従って、保護ガラスの発熱に伴うレーザの焦点位置のずれを抑え、得られる造形物の品質を安定させることができる。
【0011】
第2の発明の積層造形装置は、前記第1の発明において、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量を算出するずれ量算出手段をさらに備え、前記保護ガラス交換装置は、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が前記造形物の品質を担保することができる範囲から前記造形物の品質を担保することができない所定の閾値に達した後、レーザの焦点位置の前記基準高さからのずれ量が前記閾値近傍のときに前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、保護ガラス交換装置は、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が造形物の品質を担保することができる範囲から造形物の品質を担保することができない所定の閾値に達した後、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が閾値近傍のときに保護ガラスの交換を行う。これにより、高い品質の造形物を造形しつつ、保護ガラスの交換回数を抑えて造形中の保護ガラスの交換に要する時間を短くすることによりトータルの造形時間を抑えることができる。
【0013】
第3の発明の積層造形装置は、前記第2の発明において、n層目の粉末層の焼結中にレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が前記閾値に達する場合、前記保護ガラス交換装置は、前記n層目の粉末層の焼結完了後であって前記n層目の粉末層の次に形成されるn+1層目の粉末層の焼結開始前に前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とするものである。
【0014】
本発明では、焼結中に基準高さからのずれ量が閾値に達するn層目の粉末層の焼結完了後であってn+1層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラスの交換を行う。これにより、高い品質の造形物を造形しつつ、保護ガラスの交換回数を抑えて造形中の保護ガラスの交換に要する時間を短くすることによりトータルの造形時間を抑えることができる。
【0015】
第4の発明の積層造形装置は、前記第1の発明において、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量を算出するずれ量算出手段をさらに備え、前記保護ガラス交換装置は、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が前記造形物の品質を担保することができる範囲から前記造形物の品質を担保することができない所定の閾値に達する前、レーザの焦点位置の前記基準高さからのずれ量が前記閾値近傍のときに前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、保護ガラス交換装置は、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が造形物の品質を担保することができる範囲から造形物の品質を担保することができない所定の閾値に達する前、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が閾値近傍のときに保護ガラスの交換を行う。これにより、高い品質の造形物を造形しつつ、保護ガラスの交換回数を抑えて造形中の保護ガラスの交換に要する時間を短くすることによりトータルの造形時間を抑えることができる。
【0017】
第5の発明の積層造形装置は、前記第4の発明において、前記ずれ量算出手段は、レーザの焦点位置の前記基準高さからのずれ量の時間変化に基づき、焼結中に前記基準高さからのずれ量が前記閾値に達するn層目の粉末層を算出し、前記保護ガラス交換装置は、前記n層目の粉末層の前に形成されるn−1層目の粉末層の焼結完了後であって前記n層目の粉末層の焼結開始前に前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とするものである。
【0018】
本発明では、n−1層目の粉末層の焼結完了後であって焼結中に基準高さからのずれ量が閾値に達するn層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラスの交換を行う。これにより、高い品質の造形物を造形しつつ、保護ガラスの交換回数を抑えて造形中の保護ガラスの交換に要する時間を短くすることによりトータルの造形時間を抑えることができる。
【0019】
第6の発明の積層造形装置は、前記第2から5の何れかの発明において、前記ずれ量算出手段は、前記保護ガラスの温度を計測する温度計測装置と、前記温度計測装置によって計測された前記保護ガラスの温度に基づき、レーザの焦点位置の前記基準高さからのずれ量を算出するとともに、レーザの焦点位置の前記基準高さからのずれ量の時間変化に基づき、前記基準高さからのずれ量が前記閾値に達するn層目の粉末層を算出する数値制御装置と、からなることを特徴とするものである。
【0020】
本発明では、ずれ量算出手段は、保護ガラスの温度を計測する温度計測装置と、温度計測装置によって計測された保護ガラスの温度に基づき、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量を算出するとともに、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量の時間変化に基づき、基準高さからのずれ量が閾値に達するn層目の粉末層を算出する数値制御装置と、からなる。
【0021】
第7の発明の積層造形装置は、前記第1の発明において、前記保護ガラス交換装置は、前記造形物の造形中におけるレーザの照射時間が所定時間を経過する毎に、前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とするものである。
【0022】
本発明では、造形物の造形中におけるレーザの照射時間が所定時間を経過する毎に保護ガラスの交換を行う。これにより、従来の積層造形装置に対して複雑な機構を新たに追加することなく、定期的に保護ガラスの交換を行うことができる。
【0023】
第8の発明の積層造形装置は、前記第7の発明において、前記焼結開始時間から前記焼結完了時間までの間に、前記保護ガラスの交換を行う時間が含まれている場合、前記保護ガラス交換装置は、前記n層目の粉末層の焼結完了後であってn+1層目の粉末層の焼結開始前に前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とするものである。
【0024】
本発明では、焼結開始時間から焼結完了時間までの間に、保護ガラスの交換を行う時間が含まれている場合、保護ガラス交換装置は、n層目の粉末層の焼結完了後であってn+1層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラスの交換を行う。これにより、途中で中断させることなくすべての焼結層を形成することができるため、造形物の造形品質を安定させることができる。
【0025】
第9の発明の積層造形装置は、前記第7の発明において、各粉末層へのレーザの照射時間のデータからn層目の粉末層の焼結開始時間および焼結完了時間を算出するとともに、前記焼結開始時間から前記焼結完了時間までの間に、前記保護ガラスの交換を行う時間が含まれているか否かを判別する数値制御装置をさらに備え、前記焼結開始時間から前記焼結完了時間までの間に、前記保護ガラスの交換を行う時間が含まれている場合、前記保護ガラス交換装置は、n−1層目の粉末層の焼結完了後であって前記n層目の粉末層の焼結開始前に前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とするものである。
【0026】
本発明では、n層目の焼結開始時間から焼結完了時間までの間に、保護ガラスの交換を行う時間が含まれている場合、保護ガラス交換装置は、n−1層目の粉末層の焼結完了後であってn層目の粉末層の焼結開始前に交換を行う。これにより、途中で中断させることなくすべての焼結層を形成することができるため、造形物の造形品質を安定させることができる。
【0027】
第10の発明の積層造形装置は、前記第1〜9の何れかの発明において、粉末層を焼結した際に生じるヒュームを回収するヒューム回収装置をさらに備え、前記ヒューム回収装置によって前記造形室内のヒュームを回収した後、前記保護ガラス交換装置は、前記保護ガラスの交換を行うことを特徴とするものである。
【0028】
本発明では、ヒューム回収装置によって造形室内のヒュームを回収した後、保護ガラスを交換する。これにより、保護ガラスの交換中、保護ガラスの外側の光学部品等にヒュームが付着することを防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、装置本機の天井部に取り付けられる各保護ガラスに対するレーザの照射時間を短くすることができるため、加熱を抑えることができる。従って、保護ガラスの発熱に伴うレーザの焦点位置のずれを抑え、得られる造形物の品質を安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0032】
積層造形装置1は、焼結式材料粉末積層造形装置である。
図1に示すように、積層造形装置1には造形室1Aが設けられている。造形室1Aには、図示しない不活性ガス供給装置から不活性ガスが供給される。これにより、造形室1A内は、酸素濃度が可能な限り低くなるように構成されている。また、造形室1Aには、造形テーブル2Aが収容されている。造形テーブル2Aの上側には、金属の材料粉末が敷き詰められる造形空間が形成される。造形テーブル2Aの上には、その上側で造形物が積層造形される造形プレート4が配置されている。
【0033】
図2に示すように、粉末層形成装置2は、造形テーブル2Aと、造形テーブル2Aを支持するとともに昇降させる支持機構2Bと、支持機構2Bに動作を伝達する伝達機構2Cと、支持機構2Bを駆動する支持機構駆動モータを含む図示しない駆動装置を有している。造形テーブル2Aは、粉末層を形成する度に、次に形成される粉末層の厚さに相当する分だけ下降する。
【0034】
図3に示すように、リコータヘッド3は、ブレード3Aと材料貯蓄箱3Bとガイド機構3Cとからなる。ガイド機構3Cは、一対の軸受31と、各軸受31R,31Lがそれぞれ受ける一対の軸材32であるガイドレール32R,32Lを有している。リコータヘッド3は、後述するブレードサーボモータ制御装置12の走査指令に基づき、ガイド機構3Cのガイドレール32R,32Lに沿って造形テーブル2A上を往復移動させる。これにより、材料貯蓄箱3Bから造形テーブル2A上に材料粉末を落下させて供給するとともにブレード3Aによって平坦化することにより、造形プレート4上に粉末層を形成する。
【0035】
粉末層の形成後にリコータヘッド3が待機する待機場所の上方には、材料貯蓄箱3Bに材料粉末を供給する図示しない材料供給装置が備えられている。材料供給装置は、造形物の造形中、材料貯蓄箱3Bの中の材料粉末が不足しないように、適宜、材料貯蓄箱3Bに材料粉末を供給する。
【0036】
図4に示すように、レーザ照射装置20は、レーザ光源となるレーザ素子が取り付けられたレーザ発振器21と、レーザのビーム径を調節して所望の位置に照射するためのガルバノユニット22と、それらを制御するレーザ制御装置13を有している。ガルバノユニット22は、レーザ発振器21から出力されたレーザを平行光にするためのコリメータレンズ22A1、レーザの焦点高さを設定するためのZフォーカスレンズ22A2およびレーザを収束させるためのフォーカスレンズ22A3からなるレーザ伝達部22Aと、図示しない電動アクチュエータによって角度制御してレーザの照射位置を決定するための2つのガルバノミラー22B1,22B2が設けられたレーザ走査部22Bからなる。
【0037】
レーザ発振器21から出力されたレーザは、レーザ伝達部22Aを通してレーザ走査部22Bのガルバノミラー22B1,22B2に到達する。ガルバノミラー22B1,22B2によって反射されたレーザは、造形室1Aの天井部に穿設された通孔に設置された保護ガラス1Cを通過し、所定の走査経路に沿って粉末層毎に定義された照射領域に照射される。
【0038】
保護ガラス交換装置5は、レーザ照射によって加熱された保護ガラス1Cを交換するためのものである。保護ガラス交換装置5は、
図1に示すように、例えば、保護ガラス1Cをハンドリング可能なロボットアームからなる。保護ガラス交換装置5は、造形室1A内に配置されている。
【0039】
保護ガラス1Cを交換する際には、造形室1Aの側壁に設けられた開閉シャッター1Bが開き、常温(15〜25℃)且つ表面にヒューム等の汚れが付着していない未使用の保護ガラス1Cが複数枚、格納されたマガジン6が造形室1A内に入室する。保護ガラス交換装置5は、造形室1Aの天井部の通孔から使用済の保護ガラス1Cを取り外す。さらに、保護ガラス交換装置5は、使用済の保護ガラス1Cをマガジン6内に回収し、未使用の保護ガラス1Cを取得する。保護ガラス1C取得後、造形室1A外にマガジン6が退室し、開閉シャッター1Bが閉じられる。保護ガラス交換装置5は、未使用の保護ガラス1Cを当該通孔に取り付ける。
【0040】
図5に示すように、CAD装置7は、造形する造形物の形状および寸法を示す三次元形状データであるCADデータを作成するためのものである。CAD装置7は、造形物のCADデータを作成する演算部7Aと、演算部7Aで作成されたCADデータを記憶する記憶部7Bを備えている。記憶部7Bは、CAM装置8の記憶部8BにCADデータを出力する。
【0041】
CAM装置8は、CAD装置7から読み込んだCADデータに基づき、造形物を造形する際の積層造形装置1を構成する各装置の動作予測データであるCAMデータを生成するためのものである。CAMデータには、例えば、粉末層毎のレーザの照射軌跡、レーザの送り速度等のデータが含まれる。なお、上記2つのデータが含まれていることにより、CAMデータは、各粉末層へのレーザの照射時間のデータを含んでいる。CAM装置8は、CAD装置7から読み込んだCADデータに基づきCAMデータを生成する演算部8Aと、当該CADデータおよび演算部8Aで生成されたCAMデータを記憶する記憶部8Bを備えている。記憶部8Bは、数値制御装置9にCAMデータを出力する。
【0042】
数値制御装置9は、CAM装置8から読み込んだCAMデータに基づき、積層造形装置1を構成する各装置に出力される動作指令を示す数値制御プログラムを生成して実行するためのものである。数値制御プログラムは、レーザ照射装置20、リコータヘッド3および保護ガラス交換装置5の動作指令を含んでいる。数値制御装置9は、記憶部9Aと演算部9Bを備えている。記憶部9Aは、CAM装置8で生成された造形物のCAMデータ、および、当該CAMデータに基づき生成された数値制御プログラムを記憶する。演算部9Bは、CAMデータから数値制御プログラムを生成し、当該数値制御プラグラムに基づく指令をガラス交換制御装置11、ブレードサーボモータ制御装置12およびレーザ制御装置13に出力する。
【0043】
ガラス交換制御装置11には、数値制御装置9の演算部9Bからの交換指令が信号或いはデータで入力される。保護ガラス交換装置5の駆動部は、ガラス交換制御装置11から送信された指令に基づき、保護ガラス交換装置5を駆動させて保護ガラス1Cの交換を行う。
【0044】
ブレードサーボモータ制御装置12には、数値制御装置9の演算部9Bからの移動指令が信号或いはデータで入力される。図示しないブレードサーボモータは、ブレードサーボモータ制御装置12から送信された指令に基づき、造形テーブル2A上でブレード3Aを水平方向に往復移動させる。
【0045】
レーザ制御装置13には、数値制御装置9の演算部9Bからの指令が信号或いはデータで入力される。レーザ照射装置20の図示しない電動アクチュエータは、レーザ制御装置13から送信された指令に基づき、所望の方向にガルバノミラー22B1,22B2を傾斜させる。また、当該電動アクチュエータは、レーザ制御装置13から送信された指令に基づき、Zフォーカスレンズ22A2を常に動かして位置制御することにより、焼結対象である粉末層の上面の高さにおけるレーザのビーム径が粉末層の上面の全領域で初期設定した値になるように調節する。
【0046】
しかしながら、造形物の造形時には、ヒュームが表面に付着した状態でのレーザ照射を主要因とした発熱によりフォーカスシフトが発生する。これにより、造形開始前に設定したレーザの初期の焦点高さ(以下、基準高さと称する)におけるビーム径の大きさがZフォーカスレンズ22A2の位置制御によって調節した値から変化し、造形物の造形品質や機械的強度に影響を及ぼすおそれがある。なお、基準高さは、例えば、焼結を行う粉末層の上面の高さに設定される。熱レンズ効果によるフォーカスシフトは上方向に生じるため、基準高さを粉末層の上面の高さに設定した場合、ずれの発生とともにビーム径が大きくなり、単位面積当たりのレーザのエネルギー密度が想定した値より小さくなってしまう。
【0047】
そこで、本実施形態では、基準高さからの焦点位置のずれ量が所定の閾値に達した後または閾値に達する前に、保護ガラス交換装置5によって保護ガラス1Cの交換を行う。以下では、実施形態(a)〜(c)における積層造形装置1の動作について、それぞれ詳細に説明する。なお、実施形態(a)〜(c)では、計測装置10の温度計測部10Aと数値制御装置9の演算部9Bが特許請求の範囲におけるずれ量算出手段に対応している。
【0048】
(a)ずれ量が閾値に達した直後に保護ガラス1Cの交換を行う場合
作業者は、基準高さ、および、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量の閾値を数値制御装置9の記憶部9Aに記憶させる。なお、以下の実施形態(a)〜(c)では、粉末層の上面の高さを基準高さとする。
【0049】
造形室1A内に配置された計測装置10の温度計測部10Aは、積層造形物の造形中、例えば、赤外線サーモグラフィー等によって保護ガラス1Cの表面温度を継続的に計測する。より具体的には、温度計測部10Aは、保護ガラス1Cの造形室1A側の表面のうち、造形時にレーザが通過する領域の最高温度を継続的に計測する。温度計測部10Aは、温度計測データを数値制御装置9の記憶部9Aに逐次送信する。
【0050】
数値制御装置9は、計測装置10の温度計測部10Aから送られた温度計測データを記憶部9Aに記憶させる。数値制御装置9の演算部9Bは、保護ガラス1Cの表面の温度計測データを以下の算出式1に代入することにより、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量を算出する。なお、算出式1のyはレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量であって、xは造形開始時点からの保護ガラス1Cの表面の温度上昇幅である。また、比例定数aは保護ガラス1Cの厚さや材質等によって異なる。比例定数aは、例えば、保護ガラス1Cの厚さが厚いほど大きくなる。
【0052】
数値制御装置9の演算部9Bは、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が所定の閾値に達すると、保護ガラス1Cの交換を行うための交換指令をガラス交換制御装置11に出力する。なお、閾値は、造形物の品質を担保することができる範囲と造形物の品質を担保することができない範囲との境界であって、造形に使用する材料粉末の材料や造形条件や求める造形精度等によってそれぞれ異なる。
【0053】
保護ガラス交換装置5は、ガラス交換制御装置11からの交換指令に基づき、例えば、粉末層の形成や造形テーブル2Aの降下と同時進行で保護ガラス1Cの交換を行う。また、粉末層の焼結中にレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が閾値に達した場合、当該粉末層へのレーザ照射を一時中断し、保護ガラス1Cの交換を行う。そして、保護ガラス1Cの交換完了後、当該粉末層へのレーザ照射を再開し、照射領域の残り部分の焼結を完了させる。
【0054】
本実施形態では、保護ガラス交換装置5は、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が閾値に達した直後に保護ガラス1Cの交換を行う。これにより、粉末層の上面の高さにおけるビーム径の変動を抑え、得られる造形物の品質を一定以上に担保することができる。また、保護ガラス1Cの交換回数を抑え、造形中の保護ガラス1Cの交換に要する時間を短くすることにより、トータルの造形時間を抑えることができる。
【0055】
(b)n層目の粉末層の焼結中にずれ量が閾値に達し、当該粉末層の焼結が完了した後に保護ガラス1Cの交換を行う場合
作業者は、基準高さ、および、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量の閾値を数値制御装置9の記憶部9Aに記憶させる。
【0056】
計測装置10の温度計測部10Aは、上記実施形態と同様に、積層造形物の造形中、保護ガラス1Cの表面温度を継続的に計測する。温度計測部10Aは、温度計測データを数値制御装置9の記憶部9Aに逐次送信する。
【0057】
数値制御装置9は、計測装置10の温度計測部10Aから送られた温度計測データを記憶部9Aに記憶させる。数値制御装置9の演算部9Bは、保護ガラス1Cの表面の温度計測データを上述した算出式1に代入してレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量を算出する。そして、造形テーブル2A側からn層目の粉末層の焼結中にレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が所定の閾値に達したとき、数値制御装置9の演算部9Bは、「n層目の粉末層の焼結完了後であってn+1層目の粉末層の焼結が開始される前に保護ガラス1Cの交換を行う」ための指令をガラス交換制御装置11に出力する。
【0058】
より具体的には、造形を行う造形物の形状が直方体形状、すなわち、各粉末層の焼結時間が等しい場合、例えば、造形テーブル2A側から10層目の粉末層の焼結中にレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が所定の閾値に初めて達したとき、数値制御装置9の演算部は、「10,20,30,...層目の粉末層の焼結完了後であって11,21,31,...層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行う」ための指令をガラス交換制御装置11に出力する。
【0059】
保護ガラス交換装置5は、ガラス交換制御装置11からの指令に基づき、n層目の粉末層の焼結完了後であって、n層目の粉末層の次に形成されるn+1層目の粉末層の焼結前に、保護ガラス1Cの交換を行う。より具体的には、保護ガラス交換装置5は、n層目の粉末層の焼結が完了した後、例えば、造形テーブル2Aが下降してn+1層目の粉末層が形成されている間に、保護ガラス1Cの交換を完了させる。
【0060】
なお、例えば、造形テーブル2Aの下降中、或いは、粉末層の形成中等、粉末層の焼結中ではないタイミングでレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が所定の閾値に達した場合、保護ガラス交換装置5は、次の粉末層の焼結が開始される前までに、保護ガラス1Cの交換を行う。
【0061】
本実施形態では、焼結中に基準高さからのずれ量が閾値に達するn層目の粉末層の焼結完了後であってn+1層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行う。これにより、高い品質の造形物を造形しつつ、保護ガラス1Cの交換回数を抑えて造形中の保護ガラス1C交換に要する時間を短くすることができる。
【0062】
(c)n層目の粉末層の焼結中にずれ量が閾値に達し、当該粉末層の焼結を開始する前に保護ガラス1Cの交換を行う場合
作業者は、基準高さ、および、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量の閾値を数値制御装置9の記憶部9Aに記憶させる。
【0063】
計測装置10の温度計測部10Aは、上記実施形態と同様に、積層造形物の造形中、保護ガラス1Cの表面温度を継続的に計測する。温度計測部10Aは、温度計測データを数値制御装置9の記憶部9Aに逐次送信する。
【0064】
計測装置10の時間計測部10Bは、ある一枚の保護ガラス1Cをレーザが通過する時間の累計、すなわち、ある一枚の保護ガラス1Cを通して粉末層にレーザが照射された時間の累計を計測する。より具体的には、時間計測部10Bは、積層造形開始後、1層目の粉末層にレーザ照射が開始されると、時間の計測を開始する。その後、1層目の粉末層の焼結が完了すると、時間計測部10Bは、2層目の粉末層の焼結が開始されるまでの間、時間の計測を一時停止させる。時間計測部10Bは、2層目の粉末層へのレーザ照射が開始されると、時間の計測を再開する。時間計測部10Bは、時間計測データを数値制御装置9の記憶部9Aに逐次送信する。
【0065】
数値制御装置9は、計測装置10の温度計測部10Aから送られた温度計測データと計測装置10の時間計測部10Bから送られた時間計測データを記憶部9Aに記憶させる。数値制御装置9の演算部9Bは、温度計測データを上記算出式1に代入してレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量を求め、当該ずれ量と時間計測データからずれ量の時間変化量を算出し、当該ずれ量が閾値に達する時間を推算する。さらに、数値制御装置9の演算部9Bは、CAMデータに含まれる各粉末層へのレーザの照射時間のデータ、および、上述したように推算したレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が閾値に達する時間から、レーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が焼結中に閾値に達するn層目の粉末層を推算する。そして、数値制御装置9の演算部9Bは、「n−1層目の粉末層の焼結完了後であってn層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行う」ための指令をガラス交換制御装置11に出力する。
【0066】
より具体的には、造形を行う造形物の形状が直方体形状、すなわち、各粉末層の焼結時間が等しい場合、例えば、造形テーブル2A側から10層目の粉末層の焼結中にレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が所定の閾値に初めて達すると推算されたとき、数値制御装置9の演算部9Bは、「9,19,29,...層目の粉末層の焼結完了後であって10,20,30,...層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行うための指令をガラス交換制御装置11に出力する。
【0067】
保護ガラス交換装置5は、ガラス交換制御装置11からの指令に基づき、n層目の粉末層の前に形成されるn−1層目の粉末層の焼結完了後であって、n層目の粉末層の焼結開始前に、保護ガラス1Cの交換を行う。より具体的には、保護ガラス交換装置5は、n−1層目の粉末層の焼結完了後、例えば、造形テーブル2Aが下降してn層目の粉末層の形成が完了するまでに、保護ガラス1Cの交換を完了させる。
【0068】
なお、例えば、造形テーブル2Aの下降中、或いは、粉末層の形成中等、粉末層の焼結中ではないタイミングでレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が所定の閾値に達した場合、保護ガラス交換装置5は、次の粉末層の焼結が開始される前までに、保護ガラス1Cの交換を行う。
【0069】
本実施形態では、n−1層目の粉末層の焼結完了後であって焼結中に基準高さからのずれ量が閾値に達するn層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行う。これにより、高い品質の造形物を造形しつつ、保護ガラス1Cの交換回数を抑えて造形中の保護ガラス1C交換に要する時間を短くすることができる。
【0070】
以上、保護ガラス1Cの表面温度に基づいて算出されるレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量に基づき保護ガラス1Cの交換のタイミングを決定する場合について記載したが、本発明は、レーザ照射時間の累計によって保護ガラス1Cの交換のタイミングを決定しても構わない。以下、実施形態(d)〜(f)における積層造形装置1の動作について、それぞれ詳細に説明する。なお、実施形態(d)〜(f)のように保護ガラス1Cの交換を行う場合、積層造形装置1は、
図1に示す温度計測部10Aが設けられていなくても構わない。
【0071】
(d)所定時間経過直後毎に保護ガラス1Cの交換を行う場合
作業者は、保護ガラス1Cの交換を行う時間間隔である所定時間を数値制御装置9の記憶部9Aに記憶させる。
【0072】
計測装置10の時間計測部10Bは、上記実施形態と同様に、ある一枚の保護ガラス1Cをレーザが通過する時間の累計、すなわち、ある一枚の保護ガラス1Cを通して粉末層にレーザが照射された時間の累計を計測する。時間計測部10Bは、時間計測データを数値制御装置9の記憶部9Aに逐次送信する。
【0073】
数値制御装置9は、計測装置10の時間計測部10Bから送られた時間計測データを記憶部9Aに記憶させる。数値制御装置9の演算部9Bは、粉末層へのレーザ照射時間の累計が所定時間に達すると、保護ガラス1Cの交換を行うための交換指令をガラス交換制御装置11に出力する。
【0074】
なお、粉末層へのレーザ照射時間の累計が所定時間に達すると、計測装置10の時間計測部10Bによる時間の積算はリセットされる。計測装置10の時間計測部10Bは、交換後の保護ガラス1Cを通して次の粉末層へのレーザ照射が開始されたとき、時間の積算を開始する。
【0075】
保護ガラス交換装置5は、粉末層の焼結中に保護ガラス1Cの交換時間となるとともに、当該粉末層へのレーザ照射を一時中断し、保護ガラス1Cの交換を行う。そして、保護ガラス1Cの交換完了後、当該粉末層へのレーザ照射を再開し、照射領域の残り部分の焼結を完了させる。
【0076】
本実施形態では、造形物の造形中におけるレーザの照射時間が所定時間を経過する毎に保護ガラス1Cの交換を行う。これにより、従来の積層造形装置1に対して複雑な機構を新たに追加することなく、定期的に保護ガラス1Cの交換を行うことができる。
【0077】
(e)n層目の粉末層の焼結中に保護ガラス1Cの交換時間となり、当該粉末層の焼結を完了した後に保護ガラス1Cの交換を行う場合
作業者は、保護ガラス1Cの交換を行う時間間隔である所定時間を数値制御装置9の記憶部9Aに記憶させる。
【0078】
計測装置10の時間計測部10Bは、上記実施形態と同様に、ある一枚の保護ガラス1Cをレーザが通過する時間の累計、すなわち、ある一枚の保護ガラス1Cを通して粉末層にレーザが照射された時間の累計を計測する。時間計測部10Bは、時間計測データを数値制御装置9の記憶部9Aに逐次送信する。
【0079】
数値制御装置9は、計測装置10の時間計測部10Bから送られた時間計測データを記憶部9Aに記憶させる。数値制御装置9の演算部9Bは、造形テーブル2A側からn層目の粉末層の焼結中に粉末層へのレーザ照射時間の累計が所定時間に達したとき、「n層目の粉末層の焼結完了後であってn+1層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行う」ための指令をガラス交換制御装置11に出力する。
【0080】
より具体的には、造形を行う造形物の形状が直方体形状、すなわち、各粉末層の焼結時間が等しい場合、例えば、造形テーブル2A側から10層目の粉末層の焼結中に粉末層へのレーザ照射時間の累計が初めて所定時間に達したとき、数値制御装置9の演算部9Bは、「10,20,30,...層目の粉末層の焼結完了後であって11,21,31,...層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行う」ための指令をガラス交換制御装置11に出力する。
【0081】
保護ガラス交換装置5は、ガラス交換制御装置11からの指令に基づき、n層目の粉末層の焼結完了後であってn層目の粉末層の次に形成されるn+1層目の粉末層の焼結前に保護ガラス1Cの交換を行う。より具体的には、保護ガラス交換装置5は、n層目の粉末層の焼結が完了した後、例えば、造形テーブル2Aが下降してn+1層目の粉末層が形成されている間に、保護ガラス1Cの交換を行う。
【0082】
本実施形態では、n層目の粉末層の焼結開始時間から焼結完了時間までの間に、保護ガラス1Cの交換を行う時間が含まれている場合、保護ガラス交換装置5は、n層目の粉末層の焼結完了後であってn+1層目の粉末層の焼結開始前に交換を行う。これにより、途中で中断させることなくすべての焼結層を形成することができるため、造形物の造形品質を安定させることができる。
【0083】
(f)n層目の粉末層の焼結中に保護ガラス1Cの交換時間となり、当該粉末層の焼結を開始する前に保護ガラス1Cの交換を行う場合
作業者は、保護ガラス1Cの交換を行う時間間隔である所定時間を数値制御装置9の記憶部9Aに記憶させる。
【0084】
数値制御装置9の演算部9Bは、CAMデータに含まれる各粉末層へのレーザの照射時間のデータから、粉末層へのレーザ照射時間の累計が所定時間となるn層目の粉末層を推算する。そして、数値制御装置9の演算部9Bは、「n−1層目の粉末層の焼結完了後であってn層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行う」ための指令をガラス交換制御装置11に出力する。
【0085】
より具体的には、造形を行う造形物の形状が直方体形状、すなわち、各粉末層の焼結時間が等しい場合、例えば、造形テーブル2A側から10層目の粉末層の焼結中に粉末層へのレーザ照射時間の累計が所定時間に初めて達したとき、数値制御装置9の演算部9Bは、「9,19,29,...層目の粉末層の焼結完了後であって10,20,30,...層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行う」ための指令をガラス交換制御装置11に出力する。
【0086】
保護ガラス交換装置5は、ガラス交換制御装置11からの指令に基づき、n層目の粉末層の焼結前に形成されるn−1層目の粉末層の焼結完了後であってn層目の粉末層の焼結開始前に保護ガラス1Cの交換を行う。より具体的には、保護ガラス交換装置5は、n−1層目の粉末層の焼結完了後、例えば、造形テーブル2Aが下降してn層目の粉末層の形成している間に、保護ガラス1Cの交換を行う。
【0087】
本実施形態では、n層目の粉末層の焼結開始時間から焼結完了時間までの間に、保護ガラス1Cの交換を行う時間が含まれている場合、保護ガラス交換装置5は、n−1層目の粉末層の焼結完了後であってn層目の粉末層の焼結開始前に交換を行う。これにより、途中で中断させることなくすべての焼結層を形成することができるため、造形物の造形品質を安定させることができる。
【0088】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0089】
本実施形態(b)では、n層目の粉末層の焼結中にレーザの焦点位置の基準高さからのずれ量が閾値に達したことを確認した後、n層目の粉末層の焼結完了後に保護ガラス1Cの交換を行う場合について記載したが、例えば、実施形態(c)と同様の方法により、焼結中に閾値に達するn層目の粉末層を予め推算し、n層目の粉末層の焼結完了後に保護ガラス1Cを交換しても構わない。
【0090】
また、本実施形態(e)では、n層目の粉末層の焼結中に保護ガラス1Cの交換時間となったことを確認した後、n層目の粉末層の焼結完了後に保護ガラス1Cの交換を行う場合について記載したが、例えば、実施形態(f)と同様の方法により、焼結中に保護ガラス1Cの交換時間となるn層目の粉末層を予め推算し、n層目の粉末層の焼結完了後に保護ガラス1Cを交換しても構わない。
【0091】
また、
図6に示すように、積層造形装置1にヒューム回収装置14を設け、当該ヒューム回収装置14によって造形室1A内のヒュームを回収した後に保護ガラス1Cの交換を行っても構わない。これにより、保護ガラス1Cの交換中、保護ガラス1Cの外側の光学部品等にヒュームが付着することを防止できる。
【0092】
なお、本実施形態では、Zフォーカスレンズ22A2によって粉末層の上面におけるビーム径を調節する場合について記載したが、例えば、f-θレンズによって粉末層の上面におけるビーム径を調節しても構わない。
【0093】
また、本実施形態(c),(d),(e)では、計測装置10の時間計測部10Bは、ある一枚の保護ガラス1Cをレーザが通過する時間の累計、すなわち、ある一枚の保護ガラス1Cを通して粉末層にレーザが照射された時間の累計を計測すると記載したが、粉末層の形成や造形テーブル2Aの降下等、レーザ照射時間以外の時間を含めて時間の累計を計測しても構わない。本実施形態(e)において、造形テーブル2Aの下降中、或いは、粉末層の形成中等、粉末層の焼結中以外のタイミングで粉末層へのレーザ照射時間の累計が所定時間に達した場合、保護ガラス交換装置5は、次の粉末層の焼結が開始される前までに保護ガラス1Cの交換を行う。