(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-139234(P2020-139234A)
(43)【公開日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】つなぎ防塵服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/02 20060101AFI20200807BHJP
【FI】
A41D13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-33300(P2019-33300)
(22)【出願日】2019年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】594142975
【氏名又は名称】東洋リントフリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】森本 信夫
(72)【発明者】
【氏名】古谷 良雄
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA04
3B011AB02
3B011AC22
3B011AC26
(57)【要約】
【課題】極めて簡単な動作のみで、袖や裾を床面に接触させることなく容易に着用することができるつなぎ防塵服を提供する。
【解決手段】本発明に係るつなぎ防塵服1は、左裾部5aの内側下端部5bから、股下部6を通って、右裾部5cの内側下端部5dまでの範囲を開閉する下側ファスナー7が配置され、この下側ファスナー7を全開することにより、左裾部5aの内側下端部5b及び右裾部5cの内側下端部5dを含め、股下部6から左裾部5a及び右裾部5cまでの範囲を、下衣前側部9と下衣後側部10とに完全に分離することができるように構成されている。また、腰部両側部12a,12bの内側には、腰部把持手段が配置され、左裾部5aの内側下端部5b、及び、右裾部5cの内側下端部5dの近傍位置には、裾部把持手段が配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左裾部の下端部から、股下部を通って、右裾部の下端部までの範囲を開閉する下側ファスナーが配置され、この下側ファスナーを全開することにより、左裾部の下端部及び右裾部の下端部を含め、股下部から左裾部及び右裾部までの範囲を、下衣前側部と下衣後側部とに完全に分離することができるように構成されていることを特徴とするつなぎ防塵服。
【請求項2】
腰部両側部の内側に、腰部把持手段がそれぞれ配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のつなぎ防塵服。
【請求項3】
左裾部の下端部、及び、右裾部の下端部の近傍位置に、裾部把持手段がそれぞれ配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のつなぎ防塵服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム用の防塵服に関し、特に、つなぎタイプのクリーンルーム用防塵服に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム等の高清浄度空間に作業者が入室する場合、人体或いは着衣から生じる塵埃の飛散を防止できるように、防塵服が着用される。防塵服には用途に応じて様々なタイプのものがあり、例えば、上衣部と下衣部とが連続している「つなぎタイプ」や、上衣と下衣とが個別に構成される「セパレートタイプ」などがある。これらのうち、「つなぎタイプ」の防塵服は、
図4に示すように、上衣部の前側の中央に上側ファスナー24が配置され、前襟部22から股下部26の近傍位置に至る範囲を大きく開閉できるように構成されていることが多い。
【0003】
図4に示すようなつなぎ防塵服21を着用する際には、スライダー28を下ろして上側ファスナー24を全開状態とし、袖部を含む上衣部を腰部付近で背面側に折り返し、片脚立ちの状態となって、左右の裾に脚を順番に通して下衣部を装着し、次いで上衣部を立ち上げて、左右の袖に腕を順番に通し、上衣部を整えてスライダー28を引き上げ、上側ファスナー24を全閉状態とする。このように、つなぎ防塵服21は、セパレートタイプの防塵服と比べ、着用に際して非常に煩雑な動作が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−295110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クリーンルームへの入室に際して、更衣室等で作業者が防塵服を着用するとき、防塵服の一部(袖や裾等)が更衣室の床面に接触してしまうと、床面上の異物が付着して、クリーンルーム内に持ち込まれてしまう可能性があるため、作業者においては、袖や裾が床面に接触しないように工夫しながら、防塵服の着用動作を実行することが求められる。
【0006】
しかしながら、
図4に示すようなつなぎ防塵服21は、上述の通り、通常の着用動作でさえ非常に煩雑であるため、袖や裾が床面に接触しないように着用するためには、より一層煩雑な動作が必要となる。より具体的には、
図4に示すようなつなぎ防塵服21は、まず裾に脚を通して下衣部を装着し、次いで袖に腕を通して上衣部を装着することになるところ、最初に脚を裾に通すためには、脚を挿入できる高さ(膝の高さあたり)まで衣服全体を下ろして構える必要があり、このとき、裾や袖が床面に接触しないように、予め裾や袖をたくし上げておく必要がある。更に、片脚立ちの状態で、反対側の脚をつま先から裾内へ少しずつ挿入していき、適切なタイミングで、かつ、裾の下端が床面に接触しない要領で、たくし上げていた裾の下端を開放する、というような、極めて煩雑でテクニカルな動作が求められることになる。
【0007】
本発明は、このような従来技術における課題を解決しようとするものであって、極めて簡単な動作のみで、袖や裾を床面に接触させることなく容易に着用することができるつなぎ防塵服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るつなぎ防塵服は、左裾部の下端部から、股下部を通って、右裾部の下端部までの範囲を開閉する下側ファスナーが配置され、この下側ファスナーを全開することにより、左裾部の下端部及び右裾部の下端部を含め、股下部から左裾部及び右裾部までの範囲を、下衣前側部と下衣後側部とに完全に分離することができるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
尚、腰部両側部の内側に、腰部把持手段がそれぞれ配置されていることが好ましく、また、左裾部の下端部、及び、右裾部の下端部の近傍位置に、裾部把持手段がそれぞれ配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るつなぎ防塵服は、下衣部の内側部分を完全に開放できるように構成されているため、下衣部側から内側に上体を差し込んで、つまり、上衣(セーターやTシャツ等)のように上から被るように着用することができ、その結果、極めて簡単な動作のみで、袖や裾を床面に接触させることなく容易に着用することができる。また、従来のつなぎ防塵服のように、上衣部の前側を大きく開放するファスナーを配置する必要がなく、上衣部の前方への発塵を好適に抑制することができる。
【0011】
更に、腰部両側部の内側に腰部把持手段を配置した場合には、それらを直接把持して持ち上げることにより、下衣部の裏返し状態(
図3参照)へと簡単に移行することができ、また、左裾部の下端部、及び、右裾部の下端部の近傍位置に、裾部把持手段を配置した場合には、下側ファスナーの開閉時(スライダの移動時)において左裾部又は右裾部が動かないように、好適に押さえておくことができるほか、左裾部及び右裾部を着用者が直接触れずに済むという効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明に係るつなぎ防塵服1の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すつなぎ防塵服1の下衣部の正面図であって、下側ファスナー7を全開した状態を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すつなぎ防塵服1の着用方法の説明図である。
【
図4】
図4は、従来のつなぎ防塵服21の一般的な構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に沿って本発明「つなぎ防塵服」の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係るつなぎ防塵服1の正面図である。このつなぎ防塵服1は、
図4に示すような上衣部の前側を大きく開放できる上側ファスナー24の代わりに、左胸部(前襟部2から左腋下部3の近傍位置に至る範囲)を開閉できる上側ファスナー4が配置されている。
【0014】
また、左裾部5aの内側下端部5bから、股下部6を通って、右裾部5cの内側下端部5dまでの範囲を開閉する下側ファスナー7が配置されている。更に、左裾部5aの内側下端部5b、及び、右裾部5cの内側下端部5dの近傍位置には、片手で簡単に掴むことができるように構成されたフラップ13a,13b(裾部把持手段)がそれぞれ配置されており、下側ファスナー7の開閉時(スライダの移動時)において左裾部5a又は右裾部5cが動かないように、好適に押さえておくことができるほか、左裾部5a及び右裾部5cを直接触れずに済むという効果を期待することができる。
【0015】
図2は、
図1に示すつなぎ防塵服1の下衣部の正面図であって、下側ファスナー7を全開した状態を示す図である。図示されているように、このつなぎ防塵服1は、下側ファスナー7を全開することにより、下衣部の股下内側部分を完全に開放する(内側下端部5b,5dを含め、股下部6から左裾部5a及び右裾部5cまでの範囲を、下衣前側部9と下衣後側部10とに完全に分離する)ことができるように構成されている。
【0016】
本実施形態のつなぎ防塵服1は、このように、下衣部の内側部分を完全に開放できるように構成されているため、下衣部側から内側に上体を差し込んで、つまり、上衣(セーターやTシャツ等)のように上から被るように着用することができ、その結果、極めて簡単な動作のみで、袖や裾を床面に接触させることなく容易に着用することができる。また、
図4に示したような従来のつなぎ防塵服21のように、上衣部の前側を大きく開放する上側ファスナー24を配置する必要がなく、上衣部の前方への発塵を好適に抑制することができる。
【0017】
ここで本実施形態のつなぎ防塵服1の着用方法の一例について具体的に説明すると、まず、上側ファスナー4、及び、下側ファスナー7を開放する。尚、下側ファスナー7は、
図2に示すように全開状態とする。次に、股下部6から下衣部の内側に両手を差し込み、腰部両側部12a,12b付近を内側からそれぞれ把持し、それらを支点としてつなぎ防塵服1の全体を吊り下げた状態とする。
【0018】
そうすると
図3に示すように、上下逆向きとなった上衣部の外側に、下衣部が裏返しの状態で重なった形となり、上端には腰部開口11が現れることになる。尚、図示されているように、腰部両側部12a,12bの内側に、持ち手紐14a,14b(腰部把持手段)を取り付けておき、
図2に示す状態から、持ち手紐14a,14bを直接把持して持ち上げることにより、
図3に示すような下衣部の裏返し状態へと簡単に移行することができる。また、持ち手紐14a,14bの一方(或いは、その近傍位置)に、左右のいずれかであるかがわかるような目印をつけておけば、つなぎ防塵服1の前後方向を容易に識別することができる。
【0019】
そして、
図3に示す状態から、腰部開口11を介して上衣部の内側へ腕及び頭を差し入れて、上衣部を被り、両袖に腕を通し、襟首に頭を通し、上側ファスナー4(
図3参照)を閉じて上衣部を装着する。続いて、下衣部を両脚に被せ、左裾部5a及び右裾部5c(
図2参照)を各足首に巻いて、下側ファスナー7を全閉状態とする。このように本実施形態のつなぎ防塵服1は、極めて簡単な動作のみで、袖や裾を床面に接触させることなく容易に着用することができる。
【0020】
尚、下側ファスナーを全開した場合において、裾の内側下端部が、完全には分離できないように構成されている場合(例えば、裾部がループ状に縫着されている場合)、下衣部の装着時において足先を裾部のループに通す必要があり、このとき、床面から十分に高い位置に掲げた状態で足先を通すか、或いは、楽に足先を通すためにはズボン丈を長く設定する必要があるが、ズボン丈を長くすると裾部が床面に触れてしまう蓋然性が増大してしまうという問題がある。
【0021】
また、オーバーガウニング(防塵服の上から更に防塵服を着用すること)を行う場合には、靴を履いた状態で外側の防塵服を着用することになるが、この外側の防塵服の裾部がループ状に縫着されている場合、靴の一部(特に踵など)が裾部のループに引っ掛かったり、靴底等に由来する異物で防塵服の裾部)が汚染されてしまう可能性がある。
【0022】
これに対して本実施形態のつなぎ防塵服1においては、上述の通り下側ファスナー7を全開することにより、内側下端部5b,5dを含め、股下部6から左裾部5a及び右裾部5cまでの範囲を、下衣前側部9と下衣後側部10とに完全に分離することができるように構成されているため、上記のような問題を生じさせることなく、靴を履いた状態でも簡単に着用することができる。
【0023】
尚、
図1及び
図3には、着用者の頭部を覆うフードを付帯していないつなぎ防塵服1が示されているが、本発明は、上衣部において頭部を覆うフードが一体的に形成されたつなぎ防塵服(図示せず)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1,21:つなぎ防塵服、
2,22:前襟部、
3:左腋下部、
4,24:上側ファスナー、
5a:左裾部、
5b:内側下端部、
5c:右裾部、
5d:内側下端部、
6,26:股下部、
7:下側ファスナー、
8,28:スライダー、
9:下衣前側部、
10:下衣後側部、
11:腰部開口、
12a,12b:腰部両側部、
13a,13b:フラップ、
14a,14b:持ち手紐