特開2020-139603(P2020-139603A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-139603(P2020-139603A)
(43)【公開日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】軸受構造体
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/063 20060101AFI20200807BHJP
   F16C 27/06 20060101ALI20200807BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20200807BHJP
   F16C 33/78 20060101ALN20200807BHJP
   F16C 3/02 20060101ALN20200807BHJP
【FI】
   F16C35/063
   F16C27/06 B
   F16C19/06
   F16C33/78 Z
   F16C3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-37250(P2019-37250)
(22)【出願日】2019年3月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
【テーマコード(参考)】
3J012
3J033
3J117
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J012AB07
3J012BB01
3J012CB03
3J012DB07
3J012DB13
3J033AA01
3J033BC03
3J033GA08
3J117AA02
3J117DA01
3J117DB07
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB02
3J216AB38
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CB02
3J216CC02
3J216CC14
3J216CC33
3J216CC45
3J701AA03
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA53
3J701BA56
3J701FA04
3J701FA38
3J701GA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軸部材に確実に嵌合されながら、転がり抵抗の増大を招かない軸受構造体を提供すること。
【解決手段】軸受構造体2は、内輪22a及び外輪22b、並びに、これらの間に配設された球体22c、を有する深溝玉軸受22と、前記内輪22aが外嵌される軸部材21と、を備え前記軸部材21に外嵌される前記内輪22aの内周面22d、及び、前記内輪に内嵌される前記軸部材21の外周面21aの一方又は両方は、前記軸部材の軸方向において前記球体22cが配置される領域の少なくとも一部に、凹んだ凹部22gを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪及び外輪、並びに、これらの間に配設された球体、を有する玉軸受と、
前記内輪が外嵌される軸部材と、を備え
前記軸部材に外嵌される前記内輪の内周面、及び、前記内輪に内嵌される前記軸部材の外周面の一方又は両方は、前記軸部材の軸方向において前記球体が配置される領域の少なくとも一部に、凹んだ凹部を有する、軸受構造体。
【請求項2】
前記領域の少なくとも中央に、前記凹部を有する、請求項1に記載の軸受構造体。
【請求項3】
前記領域の全域に亘って、前記凹部を有する、請求項1に記載の軸受構造体。
【請求項4】
少なくとも前記内周面に、前記凹部を有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の軸受構造体。
【請求項5】
少なくとも前記外周面に、前記凹部を有する、請求項1乃至3の何れか1項に記載の軸受構造体。
【請求項6】
前記内輪は、前記軸方向の一端が、前記外輪よりも延在している、請求項1乃至5の何れか1項に記載の軸受構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に使用される回転部品を支持するために軸受が用いられる。このような軸受に関する技術として、例えば特許文献1には、回転軸に外嵌されて、その抜け出しを防止する円筒部材を軸受端面に当接するまで嵌合する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4425052号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の軸受構造体は、内嵌する軸部材との嵌合を確実にするために、軸受の内径を軸部材の外径よりも僅かに小さくして、両者を弾性変形させることで強固に嵌合させる所謂圧入が用いられている。この時の軸受の内径と軸部材の外径との差を締め代と呼んでいる。
一方、従来の軸受構造体の技術においては、軸受の内輪と外輪とで形成される溝と、溝の中を転動する球体との間には僅かな隙間を持たせて、回転体が回転することにより生じる振動を抑えつつ、転がり抵抗の増大に至らないような隙間の設定が行なわれている。しかし、軸部材との嵌合で締め代を有するため軸受の内輪は拡径する方向に弾性変形して、内輪と外輪で形成される溝と球体との隙間が減少し、転がり抵抗の増大に至る虞がある。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みて考案されたものであり、その目的は、軸部材に確実に嵌合されながら、転がり抵抗の増大を招かない軸受構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第一の態様は、
内輪及び外輪、並びに、これらの間に配設された球体、を有する玉軸受と、
前記内輪が外嵌される軸部材と、を備え
前記軸部材に外嵌される前記内輪の内周面、及び、前記内輪に内嵌される前記軸部材の外周面の一方又は両方は、前記軸部材の軸方向において前記球体が配置される領域の少なくとも一部に、凹んだ凹部を有する、軸受構造体である。
【0007】
前記する第一の態様によれば、軸部材と軸受の嵌合は軸受の軸方向の一部(例えば凹部以外の部位)で確実に行なわれており、これ以外の範囲(例えば、凹部)においては嵌合関係とならない。凹部により、軸受の内輪が弾性変形することが抑制され、軸受の内輪と外輪とで形成される溝と球体との隙間が変動することが抑制される。当該隙間の変動を抑制することにより、転がり抵抗の増大を抑制できる。すなわち、凹部以外の部位と凹部とを有することにより、軸部材に確実に嵌合されながら、転がり抵抗の増大を招かない、という効果を奏することができる。
【0008】
また、前記第一の態様において、前記領域の少なくとも中央に、前記凹部を有することが好ましい。
【0009】
前記球体は一般的には内輪の溝の軸方向中央で内輪と接触して転動するので、これと同じ領域で内輪と軸部材とが嵌合されなければ、内輪の弾性変形による、軸受の内輪と外輪とで形成される溝と球体との隙間の変動が、より効果的に抑制される。すなわち、前記領域の少なくとも中央に前記凹部を設けることにより、転がり抵抗の増大を防止しやすくなる。
【0010】
また、前記第一の態様において、前記領域の全域に亘って、前記凹部を有することが出来る。
【0011】
軸受の一部には球体と内輪の溝とが軸方向中心から前後に離間した2点で接触して転動する方式のものもある。球体が配置される領域の全域に凹部を形成することにより、このような軸受においても内輪の弾性変形による、軸受の内輪と外輪とで形成される溝と球体との隙間の変動がより効果的に抑制される。
【0012】
また、前記第一の態様において、前記凹部は前記内輪の内周面に形成されていても良く、前記凹部は前記軸部材の外周面に形成されていても良い。
【0013】
凹部が、内輪の内周面と軸部材の外周面との何れかに形成されていても、内輪の弾性変形による、軸受の内輪と外輪とで形成される溝と球体との隙間の変動が、より効果的に抑制される。
【0014】
また、前記第一の態様において、前記軸方向の一端が、前記外輪よりも延在していることが好ましい。
【0015】
内輪を延在させることにより、延在させた部分において軸部材との嵌合をより確実にすることが可能となる。また、延在させた内輪の外周部分にオイルシールを摺接させるほか、ダストカバーを配置させることが可能となる。これにより、上記効果に加えて、軸受に浸入する泥水やダストからより確実に軸受を保護することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軸部材に確実に嵌合されながら、転がり抵抗の増大を招かない軸受構造体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】推進軸全体を上方より視た半断面図である。
図2】第一実施形態の軸受構造体を拡大した拡大図である。
図3】第二実施形態の軸受構造体を拡大した拡大図である。
図4】第三実施形態の軸受構造体を拡大した拡大図である。
図5】第四実施形態の軸受構造体を拡大した拡大図である。
図6】第二実施形態の軸受を拡大した拡大図である。
図7】第三実施形態の軸受を拡大した拡大図である。
【0018】
続いて各実施形態の軸受構造体2,102,202,302について図面を参照しながら説明する。各実施形態で共通する技術的要素には、共通の符号を付するとともに説明を省略する。
【0019】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を推進軸に適用した例で説明する。
推進軸1は、車両の前方に搭載された原動機(不図示)及び変速機(不図示)から出力された動力を、車両の後方に搭載された終減速装置(不図示)に伝達する。
図1に示すように、推進軸1は、その軸方向(以下において、「前後方向」とも称する。)両端に自在継手3、4を備えるほか、前後方向の中央部付近にも自在継手5を備えている。
自在継手5は、円筒状の外輪51と、外輪51の内側で揺動自在な内輪52と、外輪51に形成された溝51aと内輪に形成された溝52aとの間を転動する複数の球体53と、内輪52にスプライン嵌合する軸部材21を備える。
軸部材21は、基端側が大径となり、その端部に鋼管6が溶接により接合され、他端が自在継手5の内輪52にスプライン嵌合される。自在継手5と鋼管6との間に存在している軸部材21の軸方向中央部には、軸受構造体2(以下において、「中間軸受2」とも称する。)が配置される。鋼管6の、軸部材21が接合される側と反対側の端は、自在継手3に溶接により接合される。自在継手5の外輪51には、鋼管7が溶接により接合され、外輪51が接合される側と反対側の、鋼管7の端は自在継手4に溶接により接合されている。
【0020】
軸受構造体2(中間軸受2)は、図2に示すように、深溝玉軸受22(以下において、「軸受22」と称することがある)と、軸受22に外嵌される防振部材23と、防振部材23を保持するブラケット24と、軸受22の一端に当接するように嵌合された固定部材25を備える。
軸受22は、内輪22aと、外輪22bと、これらの間に配置された複数の球体22cを備え、球体22cは内輪22aの外周面に形成された溝22dと、外輪22bの内周面に形成された溝22eの間に配置されている。軸受22の潤滑を行なうために、内輪22aと外輪22bとの間には潤滑剤が封入され、球体22cの、上記軸方向の両側には、潤滑剤の保持のための封止部材22fが設けられている。
【0021】
内輪22aの内周面には凹部22g(以下において、「溝22g」と称することがある)が形成されている。溝22gは、内輪22aの軸方向中央を含むように形成され、溝22gに隣接するように配置されている、溝22gの上記軸方向の両端(内輪22aの内周面のうち、凹部22g以外の部位)は、軸部材21に外嵌している。なお、図2では誇張して表現しているが、溝22gの深さは0.5mm程度あれば十分である。
なお、本実施形態において、凹部は内輪22aの内周面に限らず、軸部材21の外周面21aに設けても良い。
【0022】
内輪22aの嵌合部の内径は、軸部材21の嵌合部の外径より小さい。そのため、軸受22が軸部材21に嵌合されると、所謂圧入となり、その結果、内輪22aは僅かに弾性変形して拡径する。
しかし、内輪22aの溝22gは軸部材21とは圧入となっていないため、弾性変形の影響を受けない。このため、溝22gの外径側に形成された溝22dは拡径が生じない。その結果、球体22cと溝22dとの間の隙間、ならびに球体22cと溝22eとの間の隙間は、弾性変形による減少が生じないので、転がり抵抗の増大を抑制することができる。
【0023】
以上、第一実施形態によれば、軸部材21に確実に嵌合されながら、軸受22の内部隙間が減少することはなく、転がり抵抗の増大を抑制することができる。
【0024】
(第二実施形態)
次に図3及び図6を用いて本発明の第二実施形態の軸受構造体102を推進軸に適用した例で説明する。
図3及び図6において、軸受構造体2と同様の構成については図2と同様の番号を付し、その説明を適宜省略する。軸受構造体102は、軸受構造体2の軸受22に代えて、軸受122を備えている。
軸受構造体102は、図6に示すように軸受122の内周面に凹部として形成された溝122gが、軸受中央位置からの幅が軸方向前後ともaで等しく、その軸方向幅の中央が内輪122aの外周溝122dの軸方向中央と一致していることを除いて、第一実施形態の軸受構造体2と同様に構成されている。
一般的な軸受では、球体と溝との接触位置Aは、溝の軸方向中央に設けられている。第二実施形態では内輪の内周面に形成された溝122gの軸方向幅の中央が、球体22cと内輪122aの接触位置と一致している。
なお、本実施形態において、凹部は内輪122aの内周面に限らず、軸部材21の外周面21aに設けても良い。
【0025】
以上、第二実施形態によれば、軸部材21に確実に嵌合されながら、軸受122の内部隙間が減少することはなく、転がり抵抗の増大を抑制することができる。
【0026】
(第三実施形態)
次に図4及び図7を用いて本発明の第三実施形態の軸受構造体202を推進軸に適用した例で説明する。
図4及び図7において、軸受構造体102と同様の構成については図3及び図6と同様の番号を付し、その説明を適宜省略する。軸受構造体202は、軸受構造体102における軸受122に代えて、軸受222を備えている。
軸受構造体202は、図7に示すように軸受222の内周面に凹部として形成された溝222gが、その幅cが内輪222aの外周溝222dの幅bよりも大きくなっていることを除いて、第二実施形態の軸受構造体122と同様に構成されている。
【0027】
一部の軸受では、球体と溝の接触位置Bは、溝の軸方向中央に対して軸方向前後二点に設けているものがあるが、第三実施形態によれば、そのような軸受であっても、軸部材21に確実に嵌合されながら、軸受222の内部隙間が減少することはなく、転がり抵抗の増大を抑制することができる。
【0028】
(第四実施形態)
図5において、軸受構造体102と同様の構成については図3及び図6と同様の番号を付し、その説明を適宜省略する。軸受構造体302は、軸受構造体102における軸受122に代えて、軸受322を備えている。
軸受322の内輪322aは、上記軸方向の一端側である後端が、外輪22bの軸方向端面より延在するように、円筒部322hが形成されている。凹部としての溝322gは、上記第一実施例乃至第三実施例の何れかの溝と同様に形成されている。円筒部322hの内径は、円筒部322hと嵌合する軸部材21の外径よりも僅かに小さく形成され、所謂圧入の嵌合となる。凹部である溝322gを形成することにより、溝322gを形成しない場合と比較して、軸受422と軸部材21との嵌合範囲が減少し、その抜け出しに対する荷重が低下するが、本実施形態のように円筒部322hにて嵌合することにより、抜け出しを防止する荷重を確保できる。
さらに、円筒部322hの外周面にオイルシール26を摺接させるとともに、円筒部322hの軸方向一端側の先端には、固定部材25に代えてダストカバー27を配置している。
以上、第四実施形態によれば、軸部材21に確実に嵌合されながら、軸受22の内部隙間が減少することはなく、転がり抵抗の増大を抑制することができることに加えて、固定部材25を廃止することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 推進軸
2,102,202,302 軸受構造体(中間軸受)
21 軸部材
21a 軸部材外周面
22,122,222,322 軸受
22a,122a,222a,322a 軸受内輪
22b 軸受外輪
22d,122d,222d,322d 軸受内輪内周面
22g,122g,222g,322g 凹部
322h 延在部(円筒部)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7