(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-139769(P2020-139769A)
(43)【公開日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】耳式体温計
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20060101AFI20200807BHJP
G01J 5/10 20060101ALI20200807BHJP
G01J 5/24 20060101ALI20200807BHJP
【FI】
G01J5/00 101G
G01J5/10 B
G01J5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-33609(P2019-33609)
(22)【出願日】2019年2月27日
(71)【出願人】
【識別番号】500374294
【氏名又は名称】株式会社バイオエコーネット
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AC13
2G066BA09
2G066BA25
2G066BA57
2G066BB11
2G066BC11
2G066BC13
2G066CA15
(57)【要約】
【課題】測定誤差を抑制することのできる耳式体温計を提供する。
【解決手段】測温対象者の耳の鼓膜の温度を非接触で測定する赤外線センサ部を有し、測温対象者の耳穴に装着されるプローブPBを備える耳式体温計E1において、プローブは、測温対象者の耳穴に挿入されるプローブ本体20と、該プローブ本体を支持するハウジング10と、プローブ本体に装着され、測温対象者の耳穴内部に当接するインイヤ型のイヤピース12とを備え、赤外線センサ部は、プローブ本体内に配置され、プローブ本体が測温対象者の耳穴に挿入された際に、鼓膜と略直交する方向に沿って、所定距離だけ離間されて配設される第1センサSN1および第2センサSN2で構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測温対象者の耳の鼓膜の温度を非接触で測定する赤外線センサ部を有し、前記測温対象者の耳穴に装着されるプローブを備える耳式体温計において、
前記プローブは、
前記測温対象者の耳穴に挿入されるプローブ本体と、
該プローブ本体を支持するハウジングと、
前記プローブ本体に装着され、前記測温対象者の耳穴内部に当接するインイヤ型のイヤピースと
を備え、
前記赤外線センサ部は、前記プローブ本体内に配置され、
前記プローブ本体が前記測温対象者の耳穴に挿入された際に、前記鼓膜と略直交する方向に沿って、所定距離だけ離間されて配設される第1センサおよび第2センサで構成されることを特徴とする耳式体温計。
【請求項2】
前記第1センサは、
前記プローブ本体の先端側に形成される凹部内であって、該凹部の底側に形成される凹面の焦点位置に配置され、
前記第2センサは、
前記凹面より下方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項3】
前記第1センサおよび前記第2センサは、センサ基板上に配置され、
前記センサ基板は、前記プローブ本体および前記ハウジング内に収容されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耳式体温計。
【請求項4】
前記第1センサおよび前記第2センサは、サーミスタ温度素子で構成されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の耳式体温計。
【請求項5】
前記第1センサで取得した第1温度データを直線化する第1リニアライズ部と、
前記第2センサで取得した第2温度データを直線化する第2リニアライズ部と、
前記第1リニアライズ部で得られた値を所定の換算式に入力して放射温度を算出する放射温度換算部と、
前記第2リニアライズ部で得られた値に、前記放射温度を加算して体温を算出する体温換算部と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の耳式体温計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測温対象者の体温を測定する耳式体温計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば手術室や集中治療室等では、施術中の測温対象者の体温測定は必須である。
【0003】
また、例えば長時間に亘って身体的負担が大きな作業を行う労働者や、各種競技を行うアスリート等についても体調管理の一環として、体温測定が必要な場合がある。
【0004】
このような患者、労働者、アスリート等の測温対象者の体温の測定は、長時間にわたり連続して測定する必要があるため身体への負担が少ないことが重要である。
【0005】
このような要求に応える体温計として、プローブを測温対象者の耳穴に挿入して鼓膜の温度を測定する耳式体温計が種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−293466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、耳式体温計は、鼓膜から発せられている赤外線を赤外線センサで検出することで、体温を測定している。
【0008】
ところが、従来の耳式体温計は、一つの赤外線センサで鼓膜の温度を測定していたため、実際の体温と測定結果とに誤差を生じ易いという不都合があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、測定誤差を抑制することのできる耳式体温計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る耳式体温計は、測温対象者の耳の鼓膜の温度を非接触で測定する赤外線センサ部を有し、前記測温対象者の耳穴に装着されるプローブを備える耳式体温計において、前記プローブは、前記測温対象者の耳穴に挿入されるプローブ本体と、該プローブ本体を支持するハウジングと、前記プローブ本体に装着され、前記測温対象者の耳穴内部に当接するインイヤ型のイヤピースとを備え、前記赤外線センサ部は、前記プローブ本体内に配置され、前記プローブ本体が前記測温対象者の耳穴に挿入された際に、前記鼓膜と略直交する方向に沿って、所定距離だけ離間されて配設される第1センサおよび第2センサで構成されることを要旨とする。
【0011】
これにより、測定誤差を抑制して、より正確な体温を測定することができる。
【0012】
請求項2に係る耳式体温計は、請求項1に記載の発明において、前記第1センサは、前記プローブ本体の先端側に形成される凹部内であって、該凹部の底側に形成される凹面の焦点位置に配置され、前記第2センサは、前記凹面より下方に配置されることを要旨とする。
【0013】
これにより、より正確な体温測定を行うことができる。
【0014】
請求項3に係る耳式体温計は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記第1センサおよび前記第2センサは、センサ基板上に配置され、前記センサ基板は、前記プローブ本体および前記ハウジング内に収容されることを要旨とする。
【0015】
これにより、測定誤差を抑制することのできる耳式体温計を提供することができる。
【0016】
請求項4に係る耳式体温計は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記第1センサおよび前記第2センサは、サーミスタ温度素子で構成されることを要旨とする。
【0017】
これにより、測定誤差を抑制することのできる耳式体温計を提供することができる。
【0018】
請求項5に係る耳式体温計は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の発明において、前記第1センサで取得した第1温度データを直線化する第1リニアライズ部と、前記第2センサで取得した第2温度データを直線化する第2リニアライズ部と、前記第1リニアライズ部で得られた値を所定の換算式に入力して放射温度を算出する放射温度換算部と、前記第2リニアライズ部で得られた値に、前記放射温度を加算して体温を算出する体温換算部とを備えることを要旨とする。
【0019】
これにより、測定誤差を抑制して、より正確な体温を測定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、測定誤差を抑制できる耳式体温計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態に係る耳式体温計の構成例を示す右側面(a)、底面図(b)および正面図(c)である。
【
図2】実施の形態に係る耳式体温計の構成例を示す一部断面図である。
【
図3】実施の形態に係る耳式体温計の要部を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係る耳式体温計の要部を示す断面図である。
【
図5】実施の形態に係る耳式体温計に搭載されるセンサ基板を示す平面図である。
【
図6】実施の形態に係る耳式体温計の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態に係る耳式体温計で実行される体温算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図7を参照して、本発明の実施の形態に係る耳式体温計E1について説明する。
【0023】
図1(a)は、実施の形態に係る耳式体温計E1の構成例を示す右側面、
図1(b)は底面図、
図1(c)はその正面図、
図2は耳式体温計E1の構成例を示す一部断面図、
図3は、耳式体温計E1の要部を示す斜視図、
図4は、耳式体温計E1の要部を示す断面図、
図5は、耳式体温計E1に搭載されるセンサ基板500を示す平面図である。
【0024】
本実施の形態に係る耳式体温計E1は、
図1、
図2等に示すように、測温対象者の耳の鼓膜の温度を非接触で測定する赤外線センサ部としての第1センサSN1、第2センサSN2を有し、測温対象者の耳穴に装着されるプローブPBを備えている。
【0025】
プローブPBは、主に、測温対象者の耳穴に挿入されるプローブ本体20と、プローブ本体20を支持するハウジング10と、プローブ本体20に装着され、測温対象者の耳穴内部に当接するインイヤ型のイヤピース12とから構成されている。
【0026】
ハウジング10およびプローブ本体20は、ABS樹脂等によって成形される。なお、ハウジング10とプローブ本体20は、一体的に成形してもよい。
【0027】
本実施の形態に係る耳式体温計E1では、赤外線センサ部は、プローブ本体20の先端側に形成される凹部20b内に配置されている。
【0028】
そして、鼓膜(図示せず)に近接する位置に配置される第1センサSN1、第2センサSN2によって、より正確な体温測定を行うことができる。詳細な構成例については後述する。
【0029】
図2等に示すように、イヤピース12は、プローブ本体20側の溝部20aと係合する係合部(凹部)12cを有し、一部が中空の円錐状を呈する基底部12aと、基底部12aの一端に、ハウジング10から離間する方向に延設される略円筒状の先端部12bとを有する。
【0030】
なお、基底部12aと先端部12bとは、シリコンゴム等の柔軟な可撓性材料により一体的に形成される。
【0031】
(赤外線センサ部の構成)
図2等に示すように、赤外線センサ部は、プローブ本体20内に配置され、プローブ本体20が測温対象者の耳穴に挿入された際に、鼓膜と略直交する方向に沿って、所定距離だけ離間されて配設される第1センサSN1および第2センサSN2で構成される。
【0032】
ここで、赤外線センサ部は、赤外線による温度の上昇を測定対象(鼓膜)との温度差(相対温度)として捉え、赤外線センサ部自身の温度を加算することで対象物(鼓膜)の温度を測定する。
【0033】
第1センサSN1および第2センサSN2は、サーミスタ温度素子等で構成することができる。
【0034】
そして、
図2〜
図4に示すように、第1センサSN1は、プローブ本体20の先端側に形成される凹部20b内であって、この凹部20bの底側に形成される凹面20cの焦点位置に配置される。
【0035】
これにより、第1センサSN1は、センサの前方より入射する赤外線を効率よく受けることができる。
【0036】
また、第1センサSN1の後方にある凹面20cから反射される赤外線の集光位置に設置されているので、より効率的に赤外線を受けることができる。
【0037】
なお、凹面20cは、想定される鼓膜位置(例えば10mm程度前方)からの赤外線を集光する形状とするとよい。
【0038】
これにより、第1センサSN1の温度は、前方および凹面20cからの赤外線を受け、第1センサSN1が設置されている空間温度よりも上昇することになる。
【0039】
一方、第2センサSN2は、凹面20cより下方に配置される。
【0040】
このように、第2センサSN2は、前面および凹面20cからの赤外線を極力受けない位置に配置される。
【0041】
即ち、第2センサSN2を凹面20cよりも深い位置とすることにより、第1センサSN1の赤外線吸収量と、第2センサSN2の赤外線吸収量との間に差を生じるようにしている。
【0042】
このように、第2センサSN2は、前方からの赤外線は若干吸収するが、凹面20cよりも深い位置に配置することで、第1センサSN1が赤外線の影響を受けないときの温度である空間温度を取得することができる。なお、空間温度は、プローブ温度と呼ぶこともできる。
【0043】
このプローブ温度は、外耳道温度が外気温度より高い場合には、プローブが接触している外耳道から流入する熱と、プローブ背面からの外気に放散する熱とのバランスにより決定される。なお、外耳道温度が外気温度より低い場合では熱の流れは逆転する。
【0044】
図5に示すように、第1センサSN1および第2センサSN2は、センサ基板500上に配置されている。
【0045】
なお、センサ基板500には、端子部502a〜502cと、この端子部502a〜502cと第1センサSN1および第2センサSN2とを接続する配線部501が形成されている。
【0046】
図4に示すように、センサ基板500は、プローブ本体20の中央部に穿設された空間20dおよびハウジング10内に収容される。
【0047】
(耳式体温計の機能構成)
図6のブロック図を参照して、本実施の形態に係る耳式体温計E1の機能構成について説明する。
【0048】
耳式体温計E1は、
図6に示すように、第1センサSN1と、第1センサSN1で取得した第1温度データを直線化する第1リニアライズ部601と、第2センサSN2と、第2センサSN2で取得した第2温度データを直線化する第2リニアライズ部602と、第1リニアライズ部601で得られた値を所定の換算式に入力して放射温度を算出する放射温度換算部603と、第2リニアライズ部602で得られた値に、放射温度を加算して体温を算出する体温換算部604とを備える。
【0049】
なお、第1リニアライズ部601、第2リニアライズ部602、放射温度換算部603および体温換算部604は、マイクロコンピュータ等で構成される。
【0050】
また、耳式体温計E1の外部装置として、体温換算部604で算出された体温を表示する液晶表示装置等で構成される表示器700が設けられる。
【0051】
なお、第1リニアライズ部601、第2リニアライズ部602、放射温度換算部603および体温換算部604を含めて外部装置として構成してもよい。
【0052】
(体温算出処理)
図7のフローチャートを参照して、本実施の形態に係る耳式体温計E1で実行される体温算出処理の処理手順について説明する。
【0053】
まず、ステップS10では、第1センサSN1で温度測定を行い、第1リニアライズ部601で測定値のリニアライズを行ってステップS11に移行する。
【0054】
ステップS11では、第2センサSN2で温度測定を行い、第2リニアライズ部602で測定値のリニアライズを行ってステップS12に移行する。
【0055】
ステップS12では、放射温度換算部603で、第1リニアライズ部601で得られた値を所定の換算式に入力して放射温度を算出してステップS13に移行する。
【0056】
ステップS13では、体温換算部604で、第2リニアライズ部602で得られた値に、放射温度を加算して体温を算出してステップS14に移行する。
【0057】
ステップS14では、算出された体温を表示器700に表示して処理を終了する。
【0058】
以上、本発明の耳式体温計を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0059】
E1…耳式体温計
10…ハウジング
12…イヤピース
20…プローブ本体
20c…凹面
500…センサ基板
601…第1リニアライズ部
602…第2リニアライズ部
603…放射温度換算部
604…体温換算部
700…表示器
SN1…第1センサ
SN2…第2センサ