【解決手段】ガイドセンサ4に対する仮想原点Cf,Crの距離Lipは走行路が直線状の場合よりカーブ状の場合の方が短く設定される。距離Lipが長い程、ズレ量df,drが同じであっても操舵角θvは小さくなるので、直線状の走行路を安定走行できる。一方、距離Lipが短い程、ズレ量df,drに対する旋回中心Cを算出するためのなす角θf,θrは大きくなり、旋回中心Cから各回転軸3cまでの旋回半径は小さくなる。これにより、ズレ量df,drが同じであっても操舵角θvは大きくなるので、カーブ状の走行路での追従性が向上する。従って、カーブ状の走行路においても安定走行を実現できる。
車体と、その車体に操舵自在に配設される複数の回転軸と、それら複数の回転軸をそれぞれ個別に操舵する複数の操舵手段と、前記複数の回転軸に車軸を介してそれぞれ取着される車輪と、その車輪を回転駆動させる駆動手段とを備えた搬送車において、
走行路を示すガイドを検知可能なガイドセンサと、
前記搬送車を前記ガイドに沿って走行させるように、前記ガイドセンサが検出したズレ量に基づいて旋回中心を算出し、その旋回中心に基づいて前記複数の操舵手段の操舵角をそれぞれ算出して操舵制御する操舵制御手段とを備え、
前記ガイドセンサは、前記車体の走行方向を車長とした場合の前後に少なくとも2か所設けられ、その前後2か所において、それぞれ前記車体の車幅中心に対する前記ガイドの位置のズレ量を検出するものであり、
前記操舵制御手段は、前記旋回中心を算出するための仮想原点を、前後2か所の前記ガイドセンサ毎にそれぞれ前記車体の車幅中心線上に設けており、前記ガイドセンサに対する前記仮想原点の距離は、前記走行路が直線状の場合よりカーブ状の場合の方が短く設定されることを特徴とする搬送車。
前記操舵制御手段は、前記ガイドセンサが検出した前記ガイドの位置のズレ量の今回検出値と前回検出値との差分値を、前回検出時までの積算値に更に積算した積算値に基づいて前記旋回中心を算出するものであることを特徴とする請求項1記載の搬送車。
車体と、その車体に操舵自在に配設される複数の回転軸と、それら複数の回転軸をそれぞれ個別に操舵する複数の操舵手段と、前記複数の回転軸に車軸を介してそれぞれ取着される車輪と、その車輪を回転駆動させる駆動手段とを備えた搬送車において、
走行路を示すガイドを検知可能なガイドセンサと、
前記搬送車を前記ガイドに沿って走行させるように、前記ガイドセンサが検出したズレ量に基づいて旋回中心を算出し、その旋回中心に基づいて前記複数の操舵手段の操舵角をそれぞれ算出して操舵制御する操舵制御手段とを備え、
前記ガイドセンサは、前記車体の走行方向を車長とした場合の前後に少なくとも2か所設けられ、その前後2か所において、それぞれ前記車体の車幅中心に対する前記ガイドの位置のズレ量を検出するものであり、
前記操舵制御手段は、前記ガイドセンサが検出した前記ガイドの位置のズレ量の今回検出値と前回検出値との差分値を、前回検出時までの積算値に更に積算した積算値に基づいて前記旋回中心を算出するものであることを特徴とする搬送車。
前記操舵制御手段は、前記ガイドの位置のズレ量が前記車幅中心に対して正方向にある場合、そのズレ量の今回検出値と前回検出値との差分値が正であれば、その差分値を前記前回検出時までの積算値に更に積算した積算値に基づいて前記旋回中心を算出し、一方、前記ズレ量の今回検出値と前回検出値との差分値が負であれば、前記前回検出時までの積算値に基づいて前記旋回中心を算出するものであることを特徴とする請求項2又は3に記載の搬送車。
前記操舵制御手段は、前記走行路の形状が直線状からカーブ状へ切り替わる場合に、前記ガイドの位置のズレ量の前回検出値を、前記前回検出時までの積算値とするものであることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の搬送車。
車体と、その車体に操舵自在に配設される複数の回転軸と、それら複数の回転軸をそれぞれ個別に操舵する複数の操舵手段と、その操舵手段を操舵制御するコンピュータと、前記複数の回転軸に車軸を介してそれぞれ取着される車輪と、その車輪を回転駆動させる駆動手段とを備えた搬送車に対し、前記コンピュータに前記操舵制御を実行させる搬送車の操舵制御プログラムにおいて、
前記搬送車は、走行路を示すガイドを検知可能なガイドセンサを備え、そのガイドセンサは、前記車体の走行方向を車長とした場合の前後に少なくとも2か所設けられ、その前後2か所において、それぞれ前記車体の車幅中心に対する前記ガイドの位置のズレ量を検出するものであり、
前記操舵制御プログラムは、前記搬送車を前記ガイドに沿って走行させるように、
前記ガイドセンサが検出したズレ量に基づいて旋回中心を算出する旋回中心算出ステップと、
そのステップで算出された旋回中心に基づいて前記複数の操舵手段の操舵角をそれぞれ算出する操舵角算出ステップと、
そのステップで算出された操舵角に基づいて操舵制御を実行する操舵制御ステップと、を前記コンピュータに実行させるものであり、
前記旋回中心算出ステップは、前記ガイドセンサが検出した前記ガイドの位置のズレ量の今回検出値と前回検出値との差分値を、前回検出時までの積算値に更に積算した積算値に基づいて前記旋回中心を算出するものであることを特徴とする搬送車の操舵制御プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本実施形態における無人搬送車1の構成を説明する。
図1(a)は本発明の一実施形態における無人搬送車1の側面図であり、
図1(b)は、
図1(a)の矢印Ibの方向から見た無人搬送車1の上面図である。
図1における矢印Fの方向は、無人搬送車1の走行方向である。無人搬送車1は、搬送物(図示せず)を載置し、走行路上に設置された磁気テープ製の磁気ガイドGに従って走行する搬送車であり、上面視長方形状の車体2と、走行装置3と、ガイドセンサ4とを備える。なお、無人搬送車1のその他の構成は、既知のため説明は省略する。
【0015】
走行装置3は、無人搬送車1を走行させる装置であり、車体2の下方であって、無人搬送車1の上面視における4隅にそれぞれ配設される。各走行装置3には、車軸3aと、その車軸3aの両端に配設される一対の車輪3bと、その車軸3aと車体2とを、車体2の上面視回りに操舵自在に接続する回転軸3cとが配設される。走行装置3には更に、車輪3bを回転駆動させる回転駆動装置3d(
図2参照)と、回転軸3cを操舵する操舵駆動装置3e(
図2参照)とが設けられる。走行装置3毎に、無人搬送車1が磁気ガイドGに沿って走行するための操舵角θvが算出され、操舵駆動装置3eは車輪3bがその操舵角θvを向くように、回転軸3cを操舵する。
【0016】
ガイドセンサ4は、磁気ガイドGから発する磁力を検知することで、磁気ガイドGの位置を検知する幅広のセンサであり、車体2の下部であって、無人搬送車1の上面視における長さ方向側および幅方向側の両端部中央に、それぞれ配設される。本実施形態の無人搬送車1は、車体2の長さ方向側または幅方向側のいずれかが走行方向とされ、その走行方向における前後2か所のガイドセンサ4によって、磁気ガイドGが検知される。以下、無人搬送車1の走行方向側のことを「前側」、走行方向と対向する側のことを「後側」とそれぞれ称す。
【0017】
各走行装置3の操舵角θvは、前後のガイドセンサ4で検知された、ガイドセンサ4の中心位置と磁気ガイドGとの車幅方向側の偏差であるズレ量df,drに基づいて算出される。具体的には、
図1(b)に示す通り、まず、前後のガイドセンサ4の車幅方向における中心線Lc上であって、前側のガイドセンサ4の上面視における中央位置から、後方に距離Lip移動した位置に仮想原点Cfを設定し、後側のガイドセンサ4の上面視における中央位置から、後方に距離Lip移動した位置に仮想原点Crを設定する。
【0018】
そして、前側のガイドセンサ4における磁気ガイドGの検知位置Gf、即ち中心線Lcとのズレ量dfに応じた位置と仮想原点Cfとを結ぶ線分に直交し、なおかつ車体2の後方側に向かう直線を引き、後側のガイドセンサ4における磁気ガイドGの検知位置Gr、即ち中心線Lcとのズレ量drに応じた位置と仮想原点Crとを結ぶ線分に直交し、なおかつ車体2の前方側に向かう直線を引く。これら直線の交点が旋回中心Cとされる。
【0019】
その旋回中心Cを中心とし、走行装置3の回転軸3cの中心を通る、円弧状の旋回経路Rを生成する。その旋回経路Rの、回転軸3cの中心における接線方向のうち、無人搬送車1の走行方向側の方向Vのなす角θvが、操舵角θvとされる。なお、
図1(b)においては、無人搬送車1の上面視右上における走行装置3の操舵角θvのみを図示しているが、他の走行装置3の操舵角θvの算出方法も同様なので、図示は省略する。
【0020】
ところで、ガイドセンサ4は、走行装置3とは離れた位置に配設されるので、ズレ量df,dr及び仮想原点Cf,Crから操舵角θvを算出し、操舵駆動装置3eで回転軸3cを操舵しても、実際にズレ量df,drが縮小するのは無人搬送車1がしばらく走行してからとなる。かかるタイムラグによって、追従遅れが生じる虞がある。特に、カーブ状の走行路を走行する場合は、かかる追従遅れが顕著に発生し、更に走行路の曲率等によっては、幅が有限であるガイドセンサ4から磁気ガイドGが外れることで走行路を追従できなくなり、結果として走行路から外れてしまう虞がある。
【0021】
ここで、仮想原点Cfと旋回中心Cとを結ぶ線分と、仮想原点Crと旋回中心Cとを結ぶ線分とのなす角は、中心線Lcと線分GfCfとのなす角θfと、中心線Lcと線分GrCrとのなす角θrとの和に等しい。従って、旋回中心Cの位置は、なす角θf,θrの大きさに応じた位置、即ちズレ量df,drの大きさと仮想原点Cf,Crの位置とに応じた位置とされる。
【0022】
よって、ズレ量df,drの大きさが同じであっても仮想原点Cf,Crがガイドセンサ4に近い(即ち距離Lipが小さい)程、なす角θf,θrが大きくなり、旋回中心Cが無人搬送車1に近づく。この場合、旋回中心Cと回転軸3cの中心との距離、即ち旋回経路Rの旋回半径が小さくなり、これによって、操舵角θvが大きくなる。従って、仮想原点Cf,Crがガイドセンサ4に近い程、無人搬送車1は急旋回できる。
【0023】
一方で、直線状の走行路において、仮想原点Cf,Crをガイドセンサ4に近づけると、ズレ量df,drの少しの変化でも、なす角θf,θr及び操舵角θvが大きく変化してしまう。即ち操舵に時間がかかるようになるため追従性が下がり、直線状の走行路を蛇行してしまう虞がある。
【0024】
そこで、本実施形態では、無人搬送車1がカーブ状の走行路を走行している場合に、距離Lipを直線状の走行路を走行する場合よりも小さくして、仮想原点Cf,Crをガイドセンサ4に近づけることで、操舵の追従性を向上させる。
【0025】
次に、
図2を参照して、無人搬送車1の電気的構成について説明する。
図2は無人搬送車1の電気的構成を示すブロック図である。無人搬送車1は、CPU10と、フラッシュROM11と、RAM12とを備え、これらはバスライン13を介して、入出力ポート14にそれぞれ接続されている。入出力ポート14には、上述したガイドセンサ4と、回転駆動装置3dと、操舵駆動装置3eとがそれぞれ接続されている。なお、ガイドセンサ4、回転駆動装置3d及び操舵駆動装置3eは、無人搬送車1に対してそれぞれ4つずつ配設されるが、
図2においては、それぞれまとめて1つのガイドセンサ4、回転駆動装置3d及び操舵駆動装置3eとして表している。
【0026】
CPU10は、バスライン13及び入出力ポート14に接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM11は、書き換え可能な不揮発性のメモリであり、制御プログラム11aと、地図データ11bとが記憶される。制御プログラム11aは、CPU10に
図3のメイン処理や
図4のカーブ処理を実行させるプログラムである。地図データ11bは、無人搬送車1の走行路に関する情報が記憶されるデータ領域であり、走行路の地図情報と共に、地点毎の走行路の形状(直線状またはカーブ状)が記憶される。
【0027】
RAM12は、CPU10が制御プログラム11a等の実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、旋回中心Cが記憶される旋回中心メモリ12aと、距離Lipが記憶される仮想原点距離メモリ12bと、ガイドセンサ4が検知したズレ量df,dr(以下「ズレ量の今回検出値」とも称す)が記憶されるズレ量今回値メモリ12cと、ズレ量df,drの前回値(以下「ズレ量の前回検出値」とも称す)が記憶されるズレ量前回値メモリ12dと、ズレ量今回値メモリ12cのズレ量の今回検出値とズレ量前回値メモリ12dのズレ量の前回検出値との差分値が記憶されるズレ量差分値メモリ12eと、ズレ量差分値メモリ12eの差分値を積算した積算値が記憶される差分積算値メモリ12fと、出力値メモリ12gとが設けられる。
【0028】
出力値メモリ12gは、旋回中心C及び操舵角θvの算出に用いられるズレ量df,drに相当する値が、それぞれ区別可能に記憶されるメモリである。詳細は後述するが、直線状の走行路を走行している場合は、ガイドセンサ4が検知したズレ量の今回検出値に応じた値が出力値メモリ12gに記憶され、カーブ状の走行路を走行している場合は、上述した積算値に応じた値が記憶される。
【0029】
なお、ズレ量今回値メモリ12c、ズレ量前回値メモリ12d、ズレ量差分値メモリ12e、差分積算値メモリ12f及び出力値メモリ12gには、前側のガイドセンサ4に応じた値と、後側のガイドセンサ4に応じた値とがそれぞれ区別可能に記憶される。
【0030】
次に、
図3,
図4を参照して、無人搬送車1のCPU10で実行される、メイン処理について説明する。
図3は、メイン処理のフローチャートを示す図である。メイン処理は、無人搬送車1の電源投入直後から繰り返し実行される。
【0031】
メイン処理はまず、前後のガイドセンサ4から検知された検知位置Gf,Grから、ズレ量df,drをそれぞれ取得し、ズレ量今回値メモリ12cへ保存する(S1)。なお、以下の
図3のメイン処理および
図4のカーブ処理において、ガイドセンサ4から取得されたズレ量に関する処理は、いずれも前後のガイドセンサ4のそれぞれに対して行われるが、処理内容は前後のガイドセンサ4で同様なので、特に区別しない場合は前後のガイドセンサ4に対して行うものとする。
【0032】
S1の処理の後、無人搬送車1に搭載される公知の位置検知装置(図示せず)によって検知された現時点の走行地点を地図データ11bで参照し、該当する走行路の形状を取得する(S2)。S2の処理の後、取得した走行路の形状がカーブ状であるかを確認する(S3)。S3の処理において、取得した走行路の形状がカーブ状である場合は(S3:Yes)、仮想原点距離メモリ12b(即ち
図1の距離Lip)に「500mm」を設定し(S4)、
図4で示す後述のカーブ処理を行う(S5)。
【0033】
一方で、取得した走行路の形状がカーブ状ではない場合、即ち走行路の形状が直線状である場合(S3:No)は、まず、差分積算値メモリ12fに0を設定する(S6)。詳細は後述するが、カーブ状の走行路を走行している場合は、差分積算値メモリ12fの積算値に応じて操舵角θvが算出される。この積算値は、カーブ状の走行路を走行している場合にのみ積算されるので、直線状の走行路を走行している場合は、前回のカーブ状の走行路を走行していた時点での積算値のままである。そこで走行路が直線状である場合に、差分積算値メモリ12fの積算値を0で初期化することで、前回のカーブ状の走行路での積算値が、次のカーブ状の走行路での操舵角θvに影響しないようにする。
【0034】
S6の処理の後、仮想原点距離メモリ12b(即ち
図1の距離Lip)に「1000mm」を設定し(S7)、ズレ量今回値メモリ12cの値に、所定のゲイン値Gpを乗じた値を出力値メモリ12gに保存する(S8)。本実施形態においてゲイン値Gpは「3.0」が例示されるが、3.0以上でも、3.0以下でも良い。
【0035】
即ち直線状の走行路を走行する場合の仮想原点Cr,Cfは、カーブ状の走行路を走行する場合よりもガイドセンサ4から遠ざかる。これによって、ズレ量df,drが同じであっても、後述のS10の処理で算出される旋回半径は大きくなり、更にS11の処理で算出される操舵角θvは小さくなる。よって、操舵角θvの変化量を小さくできるので、操舵が安定し、直線状の走行路を安定して走行させることができる。
【0036】
一方で、カーブ状の走行路を走行する場合の仮想原点Cr,Cfの位置は、直線状の走行路を走行する場合よりもガイドセンサ4に近くなる。これにより、ズレ量df,drが同じであっても、操舵角θvを大きくできる。かかる大きな操舵角θvによって、ズレ量df,drの縮小を早めることができるので、カーブ状の走行路での追従性を向上できる。これによって、カーブ状の走行路でも安定して走行させることができる。
【0037】
ところで、磁気ガイドGの局所的な歪みや磁気不良等に起因するノイズによって、ズレ量の今回検出値が突発的にばらつく場合がある。カーブ状の走行路を走行する場合は、仮想原点Cr,Cfの位置がガイドセンサ4に近いので、ズレ量の今回検出値のばらつきによって、操舵角θvが大きく振動し、無人搬送車1の挙動が不安定となってしまう。
【0038】
そこで、S5のカーブ処理によって、カーブ状の走行路を走行する場合は、ズレ量の今回検出値とズレ量の前回検出値との差分値を積算した積算値を、旋回中心C及び操舵角θvの算出に用いるズレ量df、drとすることで、ズレ量df、drのばらつきを極力抑え、カーブ状の走行路を更に安定して走行させる。
図4を参照して、かかるカーブ処理を説明する。
【0039】
図4(a)は、カーブ処理のフローチャートを示す図であり、
図4(b)は、差分値の積算を説明するための図である。カーブ処理はまず、ズレ量今回値メモリ12cの値と、ズレ量前回値メモリ12dの値との差分値を算出し、ズレ量差分値メモリ12eに保存する(S20)。S20の処理の後、後述のS21〜S24の処理による、差分積算値メモリ12fへの差分値の積算を行い、その差分積算値メモリ12fの積算値に、所定のゲイン値Gpを乗じた値を出力値メモリ12gに保存する(S25)。なお、S25の処理におけるゲイン値Gpは、
図3のS8の処理におけるゲイン値Gpと同一であっても良いし、異なった値でも良い。
【0040】
次にS21〜S24の処理を、
図4(b),
図5を参照しながら説明する。
図4(b)においては、ガイドセンサ4における車幅方向側の位置関係として、中心線Lcの位置が0とされ、ガイドセンサ4の上面視における右側が正、左側が負とされる。
図4(b)では、4つのズレ量の今回値とズレ量の前回値との推移の例(パターン1〜4)を示しており、ズレ量の前回値を一重の丸で表し、ズレ量の今回値を二重の丸で表している。S21〜S24の処理においては、差分積算値メモリ12fにS20の処理で算出した差分値を積算するが、その積算する条件は、ズレ量今回値メモリ12cのズレ量の今回検出値の正負と、ズレ量の今回検出値とズレ量の前回検出値との差分値の正負とに基づく。
【0041】
具体的には、ズレ量今回値メモリ12cのズレ量の今回検出値が正で、ズレ量差分値メモリ12eの差分値も正の場合(S21:Yes、且つS22:Yes)、即ち
図4(b)におけるパターン1の場合は、ズレ量が拡大していると判断され、かかる場合は、S23の処理によって、差分値を差分積算値メモリ12fに積算する。
【0042】
また、ズレ量の今回検出値が負であり、差分値が負の場合(S21:No、且つS24:Yes)、即ち
図4(b)におけるパターン3の場合は、パターン1と同様にズレ量が拡大していると判断されるので、S23の処理によって、差分値を差分積算値メモリ12fに積算する。
【0043】
一方で、ズレ量の今回検出値が正で、差分値が負の場合(S21:Yes、且つS22:No)、即ち
図4(b)におけるパターン2の場合は、ズレ量の今回検出値は正側に位置するものの、そのズレ量は縮小していると判断されるので、かかる場合は、S23の処理をスキップし、差分積算値メモリ12fの値をキープする。同様に、ズレ量の今回検出値が負で、差分値が正の場合(S21:No、且つS24:No)、即ち
図4(b)におけるパターン4の場合も、ズレ量が中心線Lcに近づく方向に縮小していると判断されるので、S23の処理をスキップし、差分積算値メモリ12fの値をキープする。ここで、
図5を参照して、ズレ量の今回検出値と差分積算値メモリ12fの積算値とを比較する。
【0044】
図5は、ズレ量の今回検出値と積算値とを比較するためのグラフである。
図5において、積算値を実線で、ズレ量の今回値を破線でそれぞれ表しており、横軸は時間軸を、縦軸はズレ量の今回検出値および積算値の大きさをそれぞれ表している。
【0045】
まず、時刻0から時刻t1にかけて、ズレ量の今回検出値が増加している。かかる場合は、ズレ量の今回検出値が正であり、差分値も正側に推移しているので、
図4(b)のパターン1に該当し、積算値が積算される。
【0046】
その後、時刻t1においてズレ量の今回検出値が突発的に減少される。かかる場合、ズレ量の今回検出値が正である一方で、差分値が負側に推移するので、
図4(b)のパターン2に該当し、積算値がキープされる。
【0047】
時刻t1〜時刻t2にかけては、再びズレ量の今回検出値が増加することでパターン1に該当するので、積算値が積算され、時刻t2〜時刻t3にかけては、ズレ量の今回検出値が正であるのに対して、差分値が減少することで、パターン2に該当するので、積算値がキープされる。
【0048】
時刻t3において、ズレ量の今回検出値が突発的に増加する。かかる場合、ズレ量の今回検出値が正であると共に、差分値が正側に推移するので、
図4(b)のパターン1に該当し、積算値が積算される。
【0049】
時刻t4〜t5にかけては、ズレ量の今回検出値が減少することで、
図4(b)のパターン3に該当するので、積算値が積算され、時刻t5〜t6にかけては、ズレ量の今回検出値が負であるのに対して、差分値が増加するので、
図4(b)のパターン4に該当し、積算値がキープされる。
【0050】
即ちズレ量が正側または負側に拡大している場合は、差分積算値メモリ12fに差分値が積算されるので、差分積算値メモリ12fの値から算出される出力値メモリ12gの値も積算され、出力値メモリ12gの値によって算出される操舵角θvも積算される。これによって、無人搬送車1はズレ量を減少させる方向に操舵されるので、カーブ状の走行路を追従させることができる。
【0051】
一方でズレ量が縮小している状態では、差分積算値メモリ12fの値がキープされる。従って、ズレ量の今回検出値がノイズによって左右に振動し、ズレ量の拡大および縮小が繰り返されても、ズレ量を縮小する方向への差分積算値メモリ12fの差分値の積算が抑制される。これにより、差分積算値メモリ12fの積算値の振動が抑えられることで、操舵角θvの振動が極力抑えられ、無人搬送車1を安定して走行させることができる。
【0052】
図4(a)に戻る。S25の処理の後、
図3のメイン処理へ戻る。
【0053】
図3に戻る。S5,S8の処理の後、ズレ量前回値メモリ12dに、ズレ量今回値メモリ12cの値を保存する(S9)。S9の処理の後、仮想原点距離メモリ12bの距離Lipに応じた仮想原点Cf,Crと、出力値メモリ12gの値をズレ量df,drに換算した値とを用いて、
図1で説明した方法により旋回中心Cを算出し、旋回中心メモリ12aに保存する(S10)。
【0054】
S10の処理の後、旋回中心メモリ12aの旋回中心Cと、各走行装置3の回転軸3cの中心とから操舵角θvを算出し、その操舵角θvに基づいて各操舵駆動装置3eを操舵させながら、回転駆動装置3dを動作させて無人搬送車1を走行させる(S11)。S11の処理の後、S1の処理を繰り返す。
【0055】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0056】
上記実施形態では、搬送車の例として、無人搬送車1を用いて説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば本発明をユニットキャリアなどに適用しても良い。
【0057】
上記実施形態では、制御プログラム11aをフラッシュROM11に記憶した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、制御プログラム11aをRAMカード等のフラッシュROM11以外の半導体メモリや、DVD等の光ディスクや、ハードディスク・ドライブ等の磁気媒体に記憶して実行しても良いし、ネットワーク(インターネットやイントラネット等)上のサーバに制御プログラム11aを記憶し、該サーバから制御プログラム11aをダウンロードして実行しても良い。
【0058】
上記実施形態では、ガイドとして磁気テープ製の磁気ガイドGを走行路上に設置した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、走行路の上方の天井に、走行路に沿って吊設されたブラケットをガイドとしても良いし、無人搬送車1が潜り込むパレットの天井に走行路に沿って吊設されたブラケットをガイドとしても良い。かかる場合、ガイドセンサ4の代わりに、光学式センサ(例えば、カメラや赤外線式センサ、レーザー式センサ等)を車体2の上部に設け、光学式センサによってブラケットの位置を検知すれば良い。
【0059】
また、走行路上に設置されるガイドは、磁気テープ製の磁気ガイドGに限られるものではなく、ガイドを走行路上に塗られた白線としても良い。かかる場合、ガイドセンサ4の代わりに車体2の下部に設けた、上述の光学式センサによって該白線の位置を検知すれば良い。
【0060】
上記実施形態では、
図3のS5,S6の処理によって、直線状の走行路を走行している場合に、差分積算値メモリ12fを0で初期化した。しかし、積算値の初期値は0に限られるものではなく、0以上でも、0以下でも良い。特に、差分積算値メモリ12fの初期値として、ズレ量前回値メモリ12dのズレ量の前回検出値を設定しても良い。これにより、ズレ量の前回検出値、即ちカーブ状の走行路に切り替わる直前のズレ量に対して、差分値が積算されるので、ズレ量が大きい状態で走行路がカーブ状に切り替わっても、無人搬送車1をスムーズに操舵させることができる。
【0061】
また、差分積算値メモリ12fを初期化するタイミングは、直線状の走行路を走行している場合に限られるものではなく、走行路が直線状からカーブ状に切り替わった直後に行っても良いし、直線状またはカーブ状にかかわらず、走行路の形状が切り替わった直後に行っても良い。
【0062】
上記実施形態では、
図3のS3,S4,S7の処理によって、カーブ状の走行路において距離Lipを500mmに設定し、直線状の走行路では距離1000mmに設定した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、カーブ状の走行路における距離Lipを500mm以上に設定しても良いし、500mm以下に設定しても良い。また、直線状の走行路における距離Lipを1000mm以上に設定しても良いし、1000mm以下に設定しても良い。更に、カーブ状の走行路での距離Lipと、直線状の走行路での距離Lipとを、同じ長さとしても良いし、カーブ状の走行路での距離Lipを直線状の走行路での距離Lipよりも長くしても良い。
【0063】
上記実施形態では、直線状の走行路では、S8の処理によってズレ量の今回検出値に基づいて旋回中心C及び操舵角θvを算出し、カーブ状の走行路では、S5の処理によって積算値に基づいて旋回中心C及び操舵角θvを算出した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、直線状の走行路でも、S8の処理の代わりにS5のカーブ処理を実行して、積算値に基づいて旋回中心C及び操舵角θvを算出しても良いし、カーブ状の走行路でも、S5のカーブ処理の代わりにS8の処理を行い、ズレ量の今回検出値に基づいて旋回中心C及び操舵角θvを算出しても良い。
【0064】
上記実施形態では、
図4のカーブ処理において、ズレ量が拡大している場合に、差分積算値メモリ12fに差分値を積算し、ズレ量が縮小している場合に、差分積算値メモリ12fの値をキープした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、S21,S22,S24の処理を省略して、ズレ量が縮小している場合でも差分積算値メモリ12fの値に差分値を積算しても良い。