【解決手段】火災受信機と携帯情報端末と携帯情報端末の位置を把握可能な位置情報サーバと火災情報履歴を収集する火災情報サーバとを備えたシステムにおいて、火災情報サーバは、点検モードが設定されている場合に携帯情報端末から送信された発信器情報を受信し、受信した情報に基いて点検領域もしくは点検対象の感知器を認識するステップと、火災受信機から感知器の作動に関する情報を取得するステップと、感知器の作動に関する情報に基いて当該感知器の設置位置に関する情報を取得するステップと、点検対象の感知器の認識結果と作動した感知器設置位置情報に基いて点検対象の感知器が作動したか否か判定するステップと、その判定結果を携帯情報端末へ送信するステップとを含むようにした。
前記火災受信機は、保守モードに設定されることに応じて保守モード設定情報を通信装置を介して前記火災情報サーバへ送信し、保守モードが解除されることに応じて保守モード解除情報を通信装置を介して前記火災情報サーバへ送信し、
前記火災情報サーバは、受信した保守モード設定情報に基いて前記火災受信機が保守モードであることを認識して前記点検モードを設定し、受信した保守モード解除情報に基いて前記火災受信機が保守モードであることを認識して前記点検モードを解除することを特徴とする請求項1に記載の感知器の保守点検支援方法。
前記点検モードは、前記携帯情報端末が操作されることにより前記火災情報サーバへ送信される点検モード設定要求に応じて設定され、点検モード解除要求が送信されることに応じて解除されることを特徴とする請求項1に記載の感知器の保守点検支援方法。
前記火災情報サーバは、点検モードに設定されることに応じて、点検モード設定情報を通信装置を介して前記火災受信機に送信し、前記火災受信機は、受信した点検モード設定情報に基いて、保守モードに設定することを特徴とすることを特徴とする請求項3に記載の感知器の保守点検支援方法。
前記火災受信機は、保守モードに設定されることに応じて保守モード設定情報を通信装置を介して前記火災情報サーバへ送信し、前記火災情報サーバは、受信した保守モード設定情報に基づいて、前記火災受信機が保守モードであることを認識し、保守モードであることを認識している場合に限り、前記携帯情報端末からの点検モード設定要求に応じて点検モードを設定することを特徴とする請求項3に記載の感知器の保守点検支援方法。
前記火災情報サーバは、前記第4ステップにおいて、点検対象の感知器以外の感知器が作動したと判定した場合には、前記第5ステップにおいて、前記第4ステップの判定結果を前記所定エリアに存在するすべてまたは一部の携帯情報端末へ送信することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感知器の保守点検支援方法。
点検作業員が所持する携帯情報端末は、前記所定エリア内の特定領域の感知器の点検終了時に、当該特定領域の感知器の点検が終了したことを示す情報を前記火災情報サーバへ送信可能であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の感知器の保守点検支援方法。
点検作業員が所持する携帯情報端末の操作に応じて前記火災情報サーバへ点検モード解除要求が送信されることにより、前記火災情報サーバが点検モードを解除するステップを含み、前記点検作業員が所持する携帯情報端末は、前記所定エリアに設置されている発信器からの信号を受信しなくなった場合に、点検モードが解除されていないことを示す情報または前記点検モード解除要求を前記火災情報サーバへ送信することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の感知器の保守点検支援方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明は、感知器の発報試験を行う場合、点検員が携帯端末の操作により試験対象とする感知器を選択して試験感知器通知信号をサーバに送信し、試験モードを設定させ、サーバは、試験モードが設定された感知器からの火災信号の受信を判別した場合、試験発報受信信号を携帯端末に送信して試験発報の受信結果を報知させるようにしている。これにより、実火災による感知器の作動を見逃すことなく感知器の保守点検を点検員1人で行えるという利点がある。
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明においては、1つの感知器の作動試験の際に、点検員が毎回感知器を選択して試験モードの設定を行う必要があるため、感知器の選択や試験モードの設定等の作業が多いため、作業時間が長くなるという問題点がある。
また、特許文献1には、そのような煩わしさを軽減するため、同一フロア内の感知器群など複数の感知器を一括で試験対象に選択して発報試験を行えるようにした技術が記載されているが、感知器を一括選択した場合には、同一フロア内で火災が発生して感知器が発報したときに、火災受信機は感知器試験による発報であると誤って判断してしまうおそれがあるという課題がある。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的とするところは、火災報知システムと位置情報システムとを統合または混在したシステムにおいて、感知器の作動試験を実施する作業員の行う端末操作等の作業量を増加させることなく感知器の保守点検を行える保守点検支援方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、火災報知システムと位置情報システムとを統合または混在したシステムにおいて、実火災による感知器の作動を見逃すことなく感知器の保守点検を行える保守点検支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、
所定エリアに設置されている複数の感知器からの信号を受信する火災受信機と、
前記所定エリアに設置されている発信器からの信号を受信して当該発信器の識別情報を含む発信器情報および自己の識別情報を送信可能な携帯情報端末と、
前記携帯情報端末により送信された発信器情報に基いて当該携帯情報端末の現在位置を把握する位置情報サーバと、
火災受信機からネットワークを介して火災受信機の各種情報を収集する火災情報サーバと、
を備えたシステムにおける感知器の保守点検支援方法において、
前記火災情報サーバにおいて点検モードが設定されている場合に、
前記位置情報サーバから受信した情報に基いて点検領域もしくは点検対象の感知器を認識する第1ステップと、
前記火災受信機から前記感知器の作動に関する情報を取得する第2ステップと、
前記感知器の作動に関する情報に基いて当該感知器の設置位置に関する情報を取得する第3ステップと、
前記第1ステップの結果と前記第3ステップの結果に基いて、点検対象の感知器が作動したか否か判定する第4ステップと、
前記第4ステップの判定結果を前記携帯情報端末へ送信する第5ステップと、
を含むようにしたものである。
【0009】
上記のような感知器の保守点検支援方法によれば、火災情報サーバは、位置情報サーバから受信した情報に基いて携帯情報端末の位置および点検領域もしくは点検対象の感知器を把握し、火災受信機から受信した情報に基いて点検対象の感知器が作動したか否か判定して判定結果を携帯情報端末へ送信するため、携帯情報端末を所持する点検作業員は、作動試験により感知器が正常に作動したか否かを確認することができる。
【0010】
ここで、前記火災受信機は、保守モードに設定されることに応じて保守モード設定情報を通信装置を介して前記火災情報サーバへ送信し、保守モードが解除されることに応じて保守モード解除情報を通信装置を介して前記火災情報サーバへ送信し、
前記火災情報サーバは、受信した保守モード設定情報に基いて前記火災受信機が保守モードであることを認識して前記点検モードを設定し、受信した保守モード解除情報に基いて前記火災受信機が保守モードであることを認識して前記点検モードを解除するようにする。
あるいは、前記点検モードは、前記携帯情報端末が操作されることにより前記火災情報サーバへ送信される点検モード設定要求に応じて設定され、点検モード解除要求が送信されることに応じて解除されるようにする。
かかる方法によれば、1つの感知器の作動試験の度に点検作業員が毎回感知器試験モードの設定をする操作が不要となり、感知器の作動試験を実施する作業員の行う端末操作等の作業量を増加させることなく感知器の保守点検を支援することができる。
【0011】
また、前記火災情報サーバは、点検モードに設定されることに応じて、点検モード設定情報を通信装置を介して前記火災受信機に送信し、前記火災受信機は、受信した点検モード設定情報に基いて、保守モードに設定するようにしても良い。
あるいは、前記火災受信機は、保守モードに設定されることに応じて保守モード設定情報を通信装置を介して前記火災情報サーバへ送信し、前記火災情報サーバは、受信した保守モード設定情報に基づいて、前記火災受信機が保守モードであることを認識し、保守モードであることを認識している場合に限り、前記携帯情報端末からの点検モード設定要求に応じて点検モードを設定するようにしても良い。
【0012】
また、望ましくは、前記携帯情報端末には、点検作業員が所持する携帯情報端末と点検作業員以外の者が所持する携帯情報端末とがあり、
前記火災情報サーバは、前記第5ステップにおいて、前記第4ステップの判定結果を、点検作業員が所持する携帯情報端末へ送信するようにする。
かかる方法によれば、点検作業員が保持する携帯情報端末以外の携帯情報端末へ感知器が作動したか否かの判定結果が送信されて混乱を招くことを回避することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記火災情報サーバは、前記第4ステップにおいて、点検対象の感知器以外の感知器が作動したと判定した場合には、前記第5ステップにおいて、前記第4ステップの判定結果を前記所定エリアに存在するすべてまたは一部の携帯情報端末へ送信するようにする。
かかる方法によれば、点検対象以外の感知器が作動した場合には、すべてまたは一部の携帯情報端末へ火災が発生したことを知らせることができるため、実火災による感知器の作動を見逃すことなく感知器の保守点検を行うことができる。
【0014】
さらに、望ましくは、前記携帯情報端末には、2以上の点検作業員が所持する2以上の携帯情報端末があり、
前記火災情報サーバは、前記第1ステップにおいて、前記2以上の携帯情報端末から受信した情報に基いて2以上の点検領域もしくは点検対象の感知器を認識し、認識した結果を前記2以上の点検作業員が所持する携帯情報端末へ送信するようにする。
かかる方法によれば、複数の点検作業員が手分けをして感知器の作動試験を実施する場合に、各点検作業員は他の点検作業員の位置や作業の進行状況を把握しながら作業を進めることが可能となる。
【0015】
また、望ましくは、点検作業員が所持する携帯情報端末は、前記所定エリア内の所定領域の感知器の点検終了時に、当該所定領域の感知器の点検が終了したことを示す情報を前記火災情報サーバへ送信可能であるようにする。
かかる方法によれば、所定領域(各フロア)の点検が終了したことを火災情報サーバが把握することができるため、例えば管理者が保持する情報端末へ点検作業に関する情報を送信することで、管理者が容易に感知器点検作業の進行状況を把握することができる。
【0016】
また、望ましくは、点検作業員が所持する携帯情報端末の操作に応じて前記火災情報サーバへ点検モード解除要求が送信されることにより、前記火災情報サーバが点検モードを解除するステップを含み、前記点検作業員が所持する携帯情報端末は、前記所定エリアに設置されている発信器からの信号を受信しなくなった場合に、点検モードが解除されていないことを示す情報または前記点検モード解除要求を前記火災情報サーバへ送信するようにする。
かかる方法によれば、点検作業員が点検モードを解除せずに所定の監視エリアから外に出てしまった場合に、注意を促すメッセージを出したり点検モード解除要求を火災情報サーバへ送ったりすることができるため、点検モードの解除忘れによって実火災による感知器の作動を見逃してしまうのを回避することができる。
【0017】
さらに、望ましくは、前記第1ステップの後に第1ステップで認識した点検領域もしくは点検対象の感知器に関する情報を前記火災情報サーバから前記火災受信機へ送信するステップを有し、
前記火災受信機は、保守モードが設定されている状態で作動した感知器があった場合に、前記点検領域もしくは点検対象の感知器が存在する領域の感知器が作動したか否かの判断を行い、作動した感知器が前記点検領域もしくは点検対象の感知器が存在する領域内であると判断した場合には前記保守モードを継続し、作動した感知器が前記点検領域もしくは点検対象の感知器が存在する領域内でないと判断した場合には火災発生時の処理へ移行するようにする。
かかる方法によれば、火災受信機の側で作動した感知器が点検領域もしくは点検対象の感知器であるか否かを判断することができ、点検領域もしくは点検対象の感知器以外の感知器が実火災を検知して作動した場合に、速やかに火災発報等の処理を実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、火災報知システムと位置情報システムとを統合または混在したシステムにおいて、感知器の作動試験を実施する作業員の行う端末操作等の作業量を増加させることなく感知器の保守点検を行うことができる。また、実火災による感知器の作動を見逃すことなく感知器の保守点検を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を適用した位置情報システムと火災報知システムを統合した実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の統合システムの第1実施形態の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の位置情報システムは、
図1に示すように、建物内部の複数箇所に配設されているビーコン(発信器)10からの信号(電波)を受信可能な携帯情報端末20と、携帯電話基地局30及びインターネット等の通信ネットワークNを介して携帯情報端末20との間でデータ通信を行う位置情報サーバ40と、建物内部の複数箇所に配設されている火災感知器50からの火災検出信号を受信可能な火災受信機60と、火災受信機60や位置情報サーバ40からの情報に基いて火災発生位置や火災を検知した感知器を把握する火災情報サーバ80と、火災受信機60と火災情報サーバと間のデータ転送を担う通信装置70及び管理者用情報端末90などから構成されている。
【0021】
管理者用情報端末90は、インターネット等の通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40との間でデータ通信を行い携帯情報端末20の位置情報を取得したり火災情報サーバ80から火災発報情報や火災発生位置情報を取得したりするタブレットPCやノート型パソコンなどの携帯型の情報端末からなる。
なお、管理者用情報端末90は、携帯型の情報端末でなく火災受信機60が設置されている防災管理室などに設置されている机上型のパーソナルコンピュータであっても良いが、携帯型の情報端末の場合には、建物内部に配設されているビーコン(発信器)10からの信号(電波)を受信する機能を備えているのが望ましい。
【0022】
携帯情報端末20へ無線信号(機器IDや設備情報などの固有情報)を発信するビーコン10の通信方式としては、例えばBluetooth(登録商標)通信やIEEE 802.11規格に従ったWiFi等の無線LAN、赤外線通信、可視光通信など公知の通信方式を利用することができる。ビーコン10を配置する間隔は特に限定されないが、以下の説明では、隣接するそれぞれのビーコン10の通信範囲が建物内の空間を網羅できるように配置されているものとする。
【0023】
また、ビーコン10は、電源に関する情報(内蔵電池情報又は外部電源情報)と自己の識別情報とを無線信号に乗せて定期的に周囲に発信する発信部を備える。ビーコン10が無線で発信する信号(ビーコン信号)には、少なくとも当該ビーコン10の識別情報(発信器の機器ID)が含まれていれば良く、さらに、設置されているエリアに関する情報が含まれても良い。
携帯情報端末20は、例えばCPU(Central Processing Unit)、CPUが実行するプログラムを格納した不揮発性メモリ、作業用のRAM(Random Access Memory)などからなるデータ処理機能の他、ビーコン10からの信号を受信する受信機能と、無線通信機能とを備える機器であり、公知のスマートフォン等を利用することができる。
【0024】
本実施形態における携帯情報端末20には、感知器の点検試験を行う点検作業員用情報端末と、位置情報システムのサービスを受けて位置情報を表示する一般者用情報端末がある。
点検作業員用の携帯情報端末20の内部メモリには、定期的にビーコン10から無線で発信されるビーコン信号を受信して当該ビーコン信号に含まれる識別情報(機器ID)等を抽出し、識別情報等を含むビーコン情報を携帯電話基地局30及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する処理を実行するアプリケーション・プログラムが格納されている。一般者用の携帯情報端末20の内部メモリには、ビーコン情報を位置情報サーバ40へ送信する処理の他、位置情報サーバ40から送信されたフロア図情報に基くフロア図画像を画面に表示する処理を実行するアプリケーション・プログラム(位置情報表示アプリ)が格納されている。
【0025】
火災感知器50は、警戒区域ごとに異なる感知器回線51を介して火災受信機60に接続されており、熱、煙、炎、有害ガスなどの発生を検出すると、感知器回線51を介して火災検出信号を火災受信機60へ送信する。火災感知器50は、火災検出信号に自己の設置アドレスを付加するタイプの感知器であっても良いし、設置アドレスを付加しないタイプの感知器であっても良い。火災受信機(R型またはP型)60は、火災感知器50からの火災検出信号を受信した場合、表示部に火災報知表示を行うとともに地区ベルの鳴動や防排煙装置などの連動制御を行う。
なお、火災受信機60は、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されている場合には、当該設置アドレスに基いて火災の発生場所を特定する。一方、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されていない場合には、当該火災検出信号を伝送した感知器回線51に基いて火災の発生場所(警戒区域)を特定する。
【0026】
位置情報サーバ40は、当該位置情報サーバ40が管理する建物の各フロアの地図情報(フロア図)と、携帯情報端末固有の識別情報(端末ID)と、携帯情報端末の保有者の権限や資格等の属性に関する情報(保有者属性情報)とを記憶するデータベース41を備えている。なお、各フロアの地図情報(フロア図情報)には、各フロアに設置されているビーコン10の機器ID及び設置位置情報などが含まれる。
【0027】
位置情報サーバ40は、携帯情報端末20からビーコン10の機器IDを受信すると、受信したビーコンの機器IDとデータベース41に記憶されている情報に基いて当該携帯情報端末20の現在位置を算出する。そして、データベース41から当該携帯情報端末20が位置しているフロアのマップ情報を読み出し、読み出したフロア図データに携帯情報端末20の現在位置情報を付加して当該携帯情報端末20へ送信する処理を実行する。
【0028】
通信装置70は、ネットワークNおよび火災情報サーバ80を介して点検作業員用の携帯情報端末20から火災受信機60に対する点検モード設定要求を受けると、火災受信機60に対して点検モード設定要求を転送し、火災受信機60を点検モードへ移行させる。
また、通信装置70は、火災受信機60が火災感知器50からの信号に基いて火災の発生を検出すると、火災受信機60から送信された火災発報情報や火災発生位置情報をネットワークNを介して火災情報サーバ80および管理者用情報端末90へ転送する機能を有する。
【0029】
火災情報サーバ80は、内部メモリに監視エリア内に設置されているすべての火災感知器のIDと設置位置情報との関係を示すテーブルデータを記憶しており、位置情報サーバ40からフロア図情報と点検作業員用の携帯情報端末20の位置情報を読み出して、テーブルデータを参照して携帯情報端末20の位置情報と滞在時間とから点検作業員が作動試験を実施している感知器を特定する機能を有する。
また、火災情報サーバ80は、点検作業員が作動試験を実施している感知器に関して、火災受信機60から通信装置70を介して火災発報情報および火災発生位置情報など火災受信機の各種情報を受信すると、点検対象の感知器が正常に動作したか否か判定し、ネットワークNを介して点検作業員用の携帯情報端末20へ送信する機能を有する。その結果、点検作業員は、監視エリア内に設置されている火災感知器を1人で点検することが可能になる。なお、上記「火災受信機の各種情報」には、感知器の作動情報や受信機の保守モード設定情報等が含まれる。
【0030】
また、火災情報サーバ80は、点検作業員が作動試験を実施している感知器の位置情報もしくは感知器IDを、火災受信機60へ通信装置70を介して送信する機能を有する。これにより、火災受信機60は点検対象の感知器以外の感知器が発報したか否か判定することができ、点検対象の感知器以外の感知器が発報したと判定したときには、火災発生の報知を実行することができる。その結果、実火災による感知器の作動を見逃すことなく感知器の保守点検を行うことが可能になる。
【0031】
さらに、管理者用情報端末90は、位置情報サーバ40からフロア図情報と点検作業員用の携帯情報端末20の位置情報および火災情報サーバ80から受信した火災発報情報に基いて、点検作業員の現在位置や点検中、点検済み感知器を把握して、表示部に感知器のマークを付記したフロア図を表示させる機能を有する。そして、この表示の際に、管理者用情報端末90は、点検中や点検済み感知器を点検前の感知器とは異なる形態のマークで表示可能に構成されている。これにより、管理者がいる場合には、管理者が感知器の点検作業の進行状況を把握することができ、その結果、点検漏れの感知器の発生を防止することができる。
【0032】
次に、
図1に示す上記統合システムにおいて、定期的に実施する火災感知器の保守点検作業時における点検作業員用の携帯情報端末(以下、点検者用端末と称する)20および位置情報サーバ40と火災情報サーバ80の具体的な処理手順の一例を、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。
なお、火災感知器の設置場所に関する位置情報は、火災感知器の機器IDと対応して記載されたテーブルに格納され、該テーブルのデータがサーバ装置(40)のデータベース41に記憶されている。また、ビーコンの設置場所に関する位置情報も、機器ID(ビーコンID)と対応したテーブルデータとして、データベース41に記憶されている。
【0033】
火災感知器およびビーコンの点検作業では、先ず点検作業員が点検者用端末(20)を操作して火災情報サーバ80に対して火災情報サーバを点検モードに設定するための点検モード設定要求を送信する(ステップS1)。すると、火災情報サーバ80において自身の点検モードが設定される(ステップS2)。
なお、
図2のフローチャートの処理が開始される際に、火災受信機60においても保守モードが設定されている。ただし、点検者用端末(20)から火災情報サーバ80へ点検モード設定要求を送信すると、通信装置70が点検モード設定要求を火災受信機60へ転送し、火災受信機60を点検モードへ移行させるようにしても良い。
【0034】
次に、点検者用端末(20)は、ビーコンからの信号を受信し、受信した信号からビーコン情報(ビーコンIDおよび受信電波強度)を取得し(ステップS3)、取得したビーコン情報を、通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する(ステップS4)。なお、このステップS3とS4の処理は、点検処理と並行して周期的に繰り返し実行するようにしてもよい。
位置情報サーバ40は、点検者用端末(20)より送信されたビーコン情報を受信し、受信したビーコン情報からビーコンIDを抽出する(ステップS5)。そして、そのビーコンIDを用いて、当該ビーコンが設置されている位置情報を位置情報サーバ40のデータベース41から取得し、感知器のテーブルデータを参照して点検領域を認識し、火災情報サーバ80へ送信する(ステップS6)。点検領域は、点検者用端末(20)が存在する位置を含む領域であればよく、例えば警戒区域や感知器の設定位置(アドレス)であり、複数の感知器を含む範囲であっても良い。
【0035】
一方、点検作業員が感知器試験器を使用して点検対象の火災感知器の作動試験を実行すると、感知器試験器を発熱もしくは発煙させた結果、感知器が作動(検知信号を出力)したか否かを火災受信機60が検出しており、通信装置70が、火災受信機60から試験結果情報(感知器作動情報)を取得して、作動した感知器の情報(感知器ID、発報区域、作動時刻等)を火災情報サーバ80へ送信する。そして、送信された感知器作動情報は火災情報サーバ80によって受信され、火災情報サーバ80は感知器作動情報を取得する(ステップS7)。
【0036】
続いて、火災情報サーバ80は、ステップS7で取得した感知器作動情報から感知器IDを抽出し、感知器IDに基いてデータベース41から当該感知器の設置位置情報を取得する(ステップS8)。次に、火災情報サーバ80は、ステップS6で取得した点検領域とステップS8で取得した感知器の設置位置とが一致するか否か判定する(ステップS9)。ここで、点検領域と感知器の設置位置とが一致する(Yes)と判定すると、データベース41からフロア図情報を読み出して、該フロア図上に、ステップS6で取得したビーコン設置位置情報と感知器の設置位置情報に対応した位置にビーコンのマークと感知器のマークを付記したフロアマップ情報を作成して、点検者用端末(20)へ送信する(ステップS10)。このとき、感知器のマークは、作動しているか作動していないかを識別できる形態で表示させる。
【0037】
このフロアマップ情報を受信した点検者用端末(20)は、受信したマップを表示部へ表示する(ステップS12)。これにより、端末を携帯した点検作業員は、この表示を見ることで、点検対象の感知器が作動試験によって発報したか否か確認することができる。マップの形態で表示する代わりに、表形式あるいは文章で表示しても良いし、音声で報知するようにしても良い。
一方、ステップS9で、点検領域と感知器の設置位置とが一致していない(No)と判定すると、火災が発生している可能性があるので、フロア図上に、作動した感知器の設置位置情報に対応した位置に火災発生のマークを付記したフロアマップ情報を作成して、点検者用端末(20)へ送信し(ステップS11)、点検者用端末(20)が受信したマップを表示部へ表示する(ステップS12)。
【0038】
なお、ステップS9の判定で、点検領域と感知器の設置位置とが一致していない場合、すなわち点検領域とは異なる領域の感知器が作動した場合には、点検者用端末(20)の他に管理者用端末(90)や火災発生検知領域の近傍に存在する一般用端末へ、火災発生のマークを付記したフロアマップ情報と火災が発生している可能性がある旨の情報を送信するようにしても良い。所定エリア内に存在する、すべての携帯情報端末へ送信しても良い。
端末へ送信されたこのフロアマップの表示を見ることで、点検作業員や管理者、火災のおそれがある場所の付近の人は、点検領域以外の感知器が火災を検出して発報しているおそれがあることを認識することができる。
【0039】
ステップS12の後、全感知器の作動試験が終了していない(ステップS13:No)の場合はステップS2へ戻って、次の感知器の作動試験に対する処理を実行し、すべての感知器に対する作動試験が終了した(ステップS13:Yes)の場合は、点検者用端末(20)から火災情報サーバ80に対して火災情報サーバの点検モードを解除するための点検モード解除要求が送信され(ステップS14)、この要求を受けた火災情報サーバ80が自身の点検モードを解除して(ステップS15)、一連の処理が終了する。
【0040】
なお、上記説明では、点検作業員が1人である場合を想定したが、複数の点検作業員が同時に複数の領域で点検作業を実施する場合にも、火災情報サーバ80が上述の処理を複数の点検者用端末(20)に対して実行することで適用することができる。その場合、火災情報サーバ80は、感知器が作動した場合に作動した領域に存在する点検者用端末(20)へのみ作動した旨と位置情報を送信しても良いし、複数の点検者用端末(20)すべてに対して情報を送信するようにしても良い。
さらに、点検作業員は、担当している領域のすべての感知器の点検作業が終了した時点で作業終了情報を火災情報サーバ80へ送信し、情報を受信した火災情報サーバ80は他の点検者用端末(20)へその情報を送信するようにしても良い。これにより、各点検作業員は、他の点検作業員による作業の進行状況を把握しながら作業を進めることができるようになる。
【0041】
さらに、
図2に示すフローチャートでは、すべての感知器に対する作動試験が終了した時点で、点検者用端末(20)から火災情報サーバ80へ点検モード解除要求を送信するようにしているが、ステップS12の後に、点検者用端末(20)が位置情報システムの監視エリアの外へ出たこと、すなわちビーコンの情報を送信して来なくなったことを把握した場合に、監視エリアの外へ出たと判断して、点検者用端末(20)から火災情報サーバ80へ、点検モードが解除されていないことまたは点検モード解除要求を自動的に送信するようにしても良い。また、ステップS14の代わりに、点検者用端末(20)がGPSの情報から監視エリア外であることを把握した場合に、監視エリアの外へ出たと判断して、火災情報サーバ80が自動的に点検モードを解除するようにしても良い。また、火災受信機に異常がないことを前提とした上で、点検モードを解除できるようにしても良い。
上記のような処理を行うことで、点検作業員による点検モードの解除忘れを防止することができる。
【0042】
(第2実施形態)
図3には、本発明の位置情報システムと火災報知システムを統合したシステムの第2実施形態の概略構成が示されている。
第2実施形態の位置情報システムは、第1実施形態のシステムにおけるビーコン(発信器)10の代わりにIoTゲートウェイ(IoTGW)52を設け、IoTゲートウェイ52が携帯情報端末20に実装されているICタグの情報を受信して、受信した携帯情報端末20の情報とIoTゲートウェイ52の情報を、携帯電話基地局30及びインターネット等の通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信することで、携帯情報端末20の位置を位置情報サーバ40において把握するように構成されている。
また、IoTゲートウェイ52は、それぞれのエリアに存在するセンサや電子機器等のICタグTの情報を受信して、位置情報サーバ40や他のシステムへ送信する機能を有する。
【0043】
また、位置情報サーバ40から携帯情報端末20への情報の送信は、IoTゲートウェイ52を介さずに通信ネットワークNを介して行うように構成されている。
なお、IoTゲートウェイ52と位置情報サーバ40との間の通信は、無線でも有線でもよい。火災感知器の点検作業における処理手順は、携帯情報端末20の位置把握処理(ステップS3〜S6)以外の処理は、
図2に示すフローチャートと同様である。
本実施形態によれば、携帯情報端末以外のICタグが搭載された機器等の位置も把握できる位置情報システムであっても、本発明を実施することができるという利点がある。
【0044】
(第3実施形態)
図4には、本発明の位置情報システムと火災報知システムを統合したシステムの第3実施形態の概略構成が示されている。
第3実施形態の位置情報システムは、第1実施形態のシステムにおけるビーコン(発信器)10と共にIoTゲートウェイ52が設けられている。ビーコンの機能を備えたIoTゲートウェイを使用しても良い。携帯情報端末20はビーコンの信号を受信して、受信したビーコン信号に含まれる情報を抽出してその情報と携帯情報端末20の情報を、携帯電話基地局30及びインターネット等の通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信することで、携帯情報端末20の位置を位置情報サーバ40において把握するようにされている。位置情報サーバ40から携帯情報端末20への情報の送信は、通信ネットワークNを介して行う。
【0045】
なお、火災感知器の点検作業における処理手順は、携帯情報端末20の位置把握処理(ステップS3〜S6)以外の処理は、
図2に示すフローチャートと同様である。
本実施形態によれば、第2実施形態に比べて、IoTゲートウェイ52が扱うデータ量を軽減し、本来IoTゲートウェイ52が実行するセンサや電子機器等のICタグTの情報を収集する機能を圧迫することがないという利点がある。また、建物内の通信環境が悪く携帯情報端末20と位置情報サーバ40との間の通信が行えないような場合には、携帯情報端末20のICタグの情報を、IoTゲートウェイ52を介して位置情報サーバ40へ送信することで、位置情報サーバ40は携帯情報端末20のおおよその位置を把握することができる。IoTゲートウェイ52を介して、位置情報サーバ40から携帯情報端末20へ情報の送信を行うことも可能である。
【0046】
以上、本発明を実施形態に基いて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、位置情報サーバ40及び火災情報サーバ80は、別体ではなく支援サーバ等として一体的に構成されていても良い。また、上記実施形態では、火災情報サーバ80が点検領域と感知器の設置位置の判定等を行っているが、それらの機能は位置情報サーバ40が持っていても良く、その場合、火災情報サーバ80は、火災情報履歴等を位置情報サーバ40に送信すれば良い。また、上記実施形態では、携帯情報端末20とは別個に管理者用情報端末90を設けているが、管理者用情報端末90がタブレットPCのような可搬型の装置の場合、実施形態の携帯情報端末20の機能と管理者用情報端末90の機能の両方を1つの装置に搭載するようにしても良い。
【0047】
さらに、上記実施形態では、点検作業を開始する際に、点検作業員が携帯情報端末20を操作して火災情報サーバ80へ点検モード設定要求を行い点検モードに入る例を説明したが、火災受信機60側の操作で保守モードスイッチが投入されると、火災受信機60から通信装置70を介して携帯情報端末20および火災情報サーバ80へ保守モードであることを知らせ、火災情報サーバ80が自ら点検モードを設定あるいは携帯情報端末からの点検モード設定要求に応じて点検モードを設定するように構成しても良い。また、火災情報サーバ80は、火災受信機60が保守モードである事を認識した際に、点検者用携帯情報端末対して、火災情報サーバが保守モードである旨や点検モードに設定させるか否かを問う旨を送信しても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、火災情報サーバ80が把握した点検作業の情報を携帯情報端末20や90へ送信する例を示したが、火災情報サーバ80が把握した点検作業の情報を火災受信機60へ供給するように構成しても良い。これにより、火災受信機は、火災情報サーバ80から受信した点検領域の情報に基いて、感知器作動時に点検作業員端末の点検領域の内か外かを判断し、領域内である場合には点検に起因するものと判断して試験復旧を行い、領域外である場合には火災と判断して試験復旧を行わずに通常の火災検知処理を実行することができる。
【0049】
さらに、上記実施形態では、ビーコンは情報を送信する機能のみ有していると説明したが、携帯情報端末や他の発信器(無線タグ、端末等)からの無線信号を受信する機能さらには受信した情報を位置情報サーバへ送信する機能を有するものであっても良い。
また、上記実施形態では、位置情報システムとして、ビーコンによる測位を利用したシステムを例示したが、これに限定されず、位置情報システムは、例えばIMES(Indoor Messaging System)等のその他の方式による測位を利用したシステムであっても良い。すなわち、発信器は、ビーコンに限定されずIMES送信機等であっても良い。