(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-140852(P2020-140852A)
(43)【公開日】2020年9月3日
(54)【発明の名称】電気コンタクト
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20200807BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20200807BHJP
【FI】
H01R13/42 H
H01R13/11 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-35350(P2019-35350)
(22)【出願日】2019年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】筒井 有機
(72)【発明者】
【氏名】進藤 昌彦
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087EE06
5E087FF05
5E087FF08
5E087FF13
5E087GG17
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】引き抜きの力が加わったときのコンタクトランスの座屈を抑えた電気コンタクトを提供する。
【解決手段】電気コンタクト1には、コンタクトランス30が備えられている。このコンタクトランス30は、スタビライザ20よりも前方の、電気コンタクト1の前端に固定端を有し、後方に向かって片持ち梁形状に延びている。そして、このコンタクトランス30は、一対のスタビライザ20の間を通過してさらに後方に延び、スタビライザ20よりも後方に自由端を有する。このコンタクトランス30は、スタビライザ20よりも後方において前後方向にスタビライザ20と重なる位置まで左右各々に延びた一対の当接部31を有する。さらに、コンタクトランス30は、一対の当接部31から上方に立ち上がった一対の立上り部32を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁および上壁を有し相手コンタクトに接触する接触部と、
前記側壁から上方に延びるスタビライザと、
前記スタビライザよりも前方および後方にそれぞれ固定端および自由端を有し前記上壁から後方に片持ち梁形状に延びる、ハウジングからの抜け防止用のコンタクトランスとを備え、
前記コンタクトランスが、前記スタビライザよりも後方において前後方向に該スタビライザと重なる位置まで側方に延び、該コンタクトランスが前方への押圧力を受けたときに該スタビライザに当接する当接部を有することを特徴とする電気コンタクト。
【請求項2】
前記接触部が左右の両側壁を有し、
前記スタビライザが前記両側壁の各々から上方に延びる一対のスタビライザであって、
前記当接部が、左右各々に延びて、該コンタクトランスが前方への押圧力を受けたときに該一対のスタビライザの各々に当接する一対の当接部であることを特徴とする請求項1に記載の電気コンタクト。
【請求項3】
前記コンタクトランスが、前記当接部から上方に立ち上がった立上り部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電気コンタクト。
【請求項4】
前記スタビライザが、上方に延びた上端部に、前記コンタクトランスと上下方向に重なるように屈曲した屈曲部を有することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の電気コンタクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケーブルの端部に接続されコネクタハウジングに挿し込まれてコネクタハウジングとともにコネクタを構成する電気コンタクトに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の電気コンタクトには、電気ケーブルに不用意に力が加えられてもコネクタハウジングから抜け出ないように、コンタクトランスを備えたものがある。このコンタクトランスは、片持ち梁形状を有し、電気コンタクトをコネクタハウジングに挿し込むときに撓んで、挿し込み完了の状態ではその撓みが解除される。そして、引き抜きの力が加わったときには、このコンタクトランスの後端部がコネクタハウジングの垂直壁面に当接して、引き抜きに対する抵抗として作用する。
【0003】
ここで、近年では、一層の小型化、軽量化のため、一層板厚が薄い板材を用いて電気コンタクトを製造する必要に迫られている。その場合、コンタクトランスの肉厚も薄くなり、電気ケーブルに引き抜きの力が加わったときにコンタクトランスに加わる前方への押圧力に対する必要な抵抗力が得られずにコンタクトランスが座屈してしまうおそれがある。
【0004】
ここで、特許文献1には、コンタクトランスの側面に設けられた突片を保護壁の係合孔に差し込むことで、コンタクトランスの上方への変位を規制してコンタクトランスのめくれを防止する構造の電気コンタクトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−93508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上掲の特許文献1の構造の電気コネクタの場合、コンタクトランスの、上方へのめくれは防止されるが、電気ケーブルの引き抜きの力に対する座屈が防止される構造となっているかは定かではない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、引き抜きの力が加わったときのコンタクトランスの座屈を抑えた電気コンタクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の電気コンタクトは、
側壁および上壁を有し相手コンタクトに接触する接触部と、
上記側壁から上方に延びるスタビライザと、
上記スタビライザよりも前方および後方にそれぞれ固定端および自由端を有し上記上壁から後方に片持ち梁形状に延びる、ハウジングからの抜け防止用のコンタクトランスとを備え、
上記コンタクトランスが、スタビライザよりも後方において前後方向にスタビライザと重なる位置まで側方に延び、コンタクトランスが前方への押圧力を受けたときにスタビライザに当接する当接部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の電気コンタクトは、コンタクトランスが上記の当接部を有する。このため、コンタクトランスが前方への押圧力を受けたときには、コンタクトランスだけでなくスタビライザも一緒になって、その押圧力に抵抗する。このため、コンタクトランスの座屈が抑制されて高い抵抗力を得ることができる。
【0010】
ここで、本発明の電気コンタクトにおいて、
上記接触部が左右の両側壁を有し、
上記スタビライザが上記両側壁の各々から上方に延びる一対のスタビライザであって、
上記当接部が、左右各々に延びて、コンタクトランスが前方への押圧力を受けたときにそれら一対のスタビライザの各々に当接する一対の当接部であることが好ましい。
【0011】
この場合、コンタクトランスが前方への押圧力を受けたときには、左右一対のスタビライザが一体となってその押圧力の抵抗となる。このため、片側のみの場合と比べ、コンタクトランスの座屈がさらに確実に抑制されてさらに高い抵抗力を得ることができる。
【0012】
また、本発明の電気コンタクトにおいて、上記コンタクトランスが、当接部から上方に立ち上がった立上り部を有することも好ましい。
【0013】
この立上り部があると、立上り部がなく横に延びた当接部だけの構造と比べ、コンタクトランスの座屈がさらに確実に抑制されてさらに高い抵抗力を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明の電気コンタクトにおいて、上記スタビライザが、上方に延びた上端部に、コンタクトランスと上下方向に重なるように屈曲した屈曲部を有することが好ましい。
【0015】
スタビライザが上記の屈曲部を有すると、組立時等におけるコンタクトランスの上方へのめくれが抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
以上の本発明によれば、引き抜きの力が加わったときのコンタクトランスの座屈を抑えた電気コンタクトが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の電気コンタクトの斜視図(A)と、
図1(A)に示す円R1の部分の拡大図である。
【
図2】
図1に示す電気コンタクトの平面図(A)と、
図2(A)に示す円R2の部分の拡大図である。
【
図3】
図1に示す電気コンタクトの側面図(A)と、
図3(A)に示す円R3の部分の拡大図である。
【
図4】
図1に示す電気コンタクトの拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態の電気コンタクトの斜視図(A)と、
図1(A)に示す円R1の部分の拡大図である。
【0020】
また、
図2は、
図1に示す電気コンタクトの平面図(A)と、
図2(A)に示す円R2の部分の拡大図である。
【0021】
また、
図3は、
図1に示す電気コンタクトの側面図(A)と、
図3(A)に示す円R3の部分の拡大図である。
【0022】
さらに、
図4は、
図1に示す電気コンタクトの拡大正面図である。
【0023】
ここで、
図3(B)および
図4には、コネクタハウジングの、この電気コンタクトの近傍の部分が一点鎖線で示されている。
【0024】
この電気コンタクト1は、相手コンタクトに接触して電気的に接続される接触部10を有する。この接触部10は、底壁11、左右の側壁12、および上壁13を有する箱型の接触部であって、その前面には、開口10Aが形成されている。この開口10Aからは、相手コンタクト(不図示)の雄型の接触部が挿入されて、このコンタクトと相手コンタクトが電気的に接続される。
【0025】
また、この電気コンタクト1には、左右の側壁12の各々から上方に延びる一対のスタビライザ20が設けられている。これらのスタビライザ20は、ハウジングへの誤挿入防止用である。
【0026】
また、この電気コンタクト1には、コンタクトランス30が備えられている。このコンタクトランス30は、スタビライザ20よりも前方(この実施形態では、この電気コンタクト1の前端)の上壁13に固定端を有し、後方に向かって片持ち梁形状に延びている。そして、このコンタクトランス30は、一対のスタビライザ20の間を通過してさらに後方に延び、スタビライザ20よりも後方に自由端を有する。このコンタクトランス30は、この電気コンタクト1の、コネクタハウジング2(
図3(B),
図4参照)からの抜け防止用である。このコンタクトランス30の、抜け防止の作用については、後述する。
【0027】
このコンタクトランス30は、スタビライザ20よりも後方において前後方向にスタビライザ20と重なる位置まで左右各々に延びた一対の当接部31を有する。さらに、このコンタクトランス30は、一対の当接部31から上方に立ち上がった一対の立上り部32を有する。
【0028】
また、一対のスタビライザ20の各々は、上方に延びた上端部に、コンタクトランス30と上下方向に重なるように屈曲した屈曲部21を有する。さらに、このコンタクトランス30は、その自由端側に、自由端にまで至る、上方に膨らんだ膨出部33を有する。コンタクトランス30の、この膨出部33に対応する下面側には、上面の膨出に伴う窪みが形成されている。
【0029】
さらに、この電気コンタクト1は、電気ケーブル3の先端部を圧着接続した圧着部40を有する。なお、電気ケーブル3は、ここには、電気コンタクト1の近傍の部分しか示されていないが、この電気ケーブル3は、さらに後方にまで延びている。また、ここには、電気ケーブル3の芯線は図示されていない。
【0030】
次に、コンタクトランス30の、コネクタハウジング2からの抜け防止機能について説明する。
【0031】
この電気コンタクト1は、コネクタハウジング2の後方から前方に向かって、
図3(B)に示す矢印Xの向きに挿し込まれる。このコンタクトランス30は、片持ち梁形状を有するため、電気コンタクト1をコネクタハウジング2に挿し込むときはコネクタハウジング2の内壁に押されて撓み、挿し込み完了の状態ではその撓みが解除される。この撓みが解除された段階ではコンタクトランス30の直ぐ後方に、コネクタハウジング2の垂直壁面2aがコンタクトランス30と対面した状態となっている。この状態にあるときに、電気ケーブル3が不用意に引っ張られたとする。この引っ張りの力の向きは、
図3(B)に示す矢印Aの向きである。すると、コンタクトランス30の後端がの垂直壁面2aに当接して矢印Bの向きの力を受ける。すると、コンタクトランス30が若干撓みながら、
図3(B)に点線で示す領域Tにおいて、コンタクトランス30の当接部31と立上り部32がスタビライザ20に当接する。すると、このコンタクトランス30に加え、スタビライザ20も一体となって矢印Bの向きの押圧力に抵抗し、コンタクトランス30の座屈が抑えられる。本実施形態の電気コンタクト1の場合、この構造により、コンタクトランス30の座屈が抑えられている。なお、膨出部33(
図1(B)参照)は、垂直壁面2aとの当接面積の増大により、電気コンタクト1の保持力の向上に寄与している。
【0032】
また、スタビライザ20には、その上端部に屈曲部21を有する。自由端側のコンタクトランス30の下に電線が入り込んでコンタクトランス30が持ち上げられたとする。その場合、コンタクトランス30がスタビライザ20の屈曲部21の下向き面に当接し、コンタクトランス30がそれ以上持ち上げられることが阻止される。本実施形態の電気コンタクト1の場合、この屈曲部21を設けたことにより、コンタクトランス30のめくれも防止される。
【0033】
また、この電気コンタクト1の圧着部40は、
図2(A)に示すように、横向きに窪んだリテーナ受容部50を有する。このリテーナ受容部50には、この電気コンタクト1がコネクタハウジング2に挿し込まれた後で、そのコネクタハウジング2に横向きに挿し込まれるリテーナ(不図示)が配置される。そして、そのリテーナによっても電気コンタクト1の抜けが防止される。したがって、この実施形態の電気コンタクト1の場合、コンタクトランス30による抜け防止は、リテーナが挿し込まれるまでの間の仮係止の意味合いを有する。この実施形態の電気コンタクト1の場合、上記のコンタクトランス30の座屈防止の構造は、仮係止の段階で電気ケーブルが引っ張られた時の座屈防止用である。
【0034】
なお、上記の実施形態では、コンタクトランス30には立上り部32が設けられていることにより、スタビライザ20との当接面積が増大し、コンタクトランス30の座屈抑制効果が高い。ただし、立上り部32が無くて当接部31のみであっても、スタビライザ20に当接して座屈を防止する機能を有する。
【0035】
また、上記の実施形態では、コンタクトランス30の当接部31およびスタビライザ20は一対ずつ設けられていることでコンタクトランス30の座屈抑制効果が高いが、左右のいずれか一方にのみ設けられていてもよい。
【0036】
さらに、一対の屈曲部21は、各スタビライザ20の上端部から互いに接近するように斜め下方に延びていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 電気コンタクト
2 コネクタハウジング
2a 垂直壁面
3 電気ケーブル
10 接触部
10A 開口
11 底壁
12 側壁
13 上壁
20 スタビライザ
21 屈曲部
30 コンタクトランス
31 当接部
32 立上り部
33 膨出部
40 圧着部
50 リテーナ受容部