に制御する電力管理装置A1において、各電力設備2〜5は、それぞれの入出力電力である個別電力の制御を行う電力制御装置(パワーコンディショナ22,32,42および電力制御装置52)を備え、固定設置され鉛直上方の半天球画像を撮像するカメラ11と、半天球画像に基づいて未来の日射に関する予測値を予測する予測装置12と、各電力制御装置に指令を出力して対応する個別電力の制御を行わせる指令装置13とを備えた。指令装置13は、予測値の時系列変化が所定条件を満たす場合に、複数の電力制御装置の少なくとも1つに対策指令を出力して、当該電力制御装置に対策指令に応じた制御を行わせる。
太陽電池による発電を行う太陽光発電設備を含む複数の電力設備を備える電力システムにおいて、当該電力システム全体の入出力電力である接続点電力を目標電力に制御する電力管理装置であって、
前記各電力設備は、それぞれの入出力電力である個別電力の制御を行う電力制御装置を備え、
固定設置されて、鉛直上方の半天球画像を撮像するカメラと、
前記半天球画像に基づいて、未来の日射に関する予測値を予測する予測装置と、
前記各電力制御装置に指令を出力して対応する個別電力の制御を行わせる指令装置と、
を備え、
前記指令装置は、前記予測値の時系列変化が所定条件を満たす場合に、前記複数の電力制御装置の少なくとも1つに対策指令を出力して、当該電力制御装置に前記対策指令に応じた制御を行わせる、
ことを特徴とする電力管理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る電力管理装置を備える電力システムの全体構成を示すブロック図である。電力システムB1は、電力系統Cに連系しており、電力系統Cとの間で送受電可能である。電力システムB1は、電力システムB1と電力系統Cとの接続点における電力(以下「接続点電力」とする)が目標電力となるように制御される。なお、以下の説明において、電力システムB1が電力系統Cから受電する場合、接続点電力を正の値とする。一方、電力システムB1が電力系統Cに送電する(逆潮流)場合、接続点電力を負の値とする。電力システムB1は、電力管理装置A1、太陽光発電設備2、蓄電設備3、EVスタンド4、およびビル設備5を備えている。なお、太陽光発電設備2、蓄電設備3、EVスタンド4、およびビル設備5は、それぞれ複数備えられていてもよい。また、電力管理装置A1の管理対象である、太陽光発電設備2、蓄電設備3、EVスタンド4、およびビル設備5をまとめて示す場合、「電力設備2〜5」と記載する。
【0016】
電力管理装置A1は、接続点電力P(t)を監視し、接続点電力P(t)を目標電力P
cに制御する。目標電力P
cは、目標デマンドに応じて操作者によって設定されたり、上位の管理装置(例えば電力会社の管理装置など)によって通信により設定される。また、電力管理装置A1は、日射の変化を予測して、日射の急変などが予測される場合に、電力設備2〜5をあらかじめ制御して、対策を講じる。電力管理装置A1は、複数のカメラ11、予測装置12、および指令装置13を備えている。
【0017】
カメラ11は、半天球カメラであって、例えば超広角の魚眼レンズを有する撮像装置である。カメラ11は、レンズを鉛直上方に向けて固定設置されている。
図1に示すように、カメラ11は、設置位置である原点Oを中心として、水平方向の方位角αが0°〜360°の全範囲、仰角βが0°〜90°の範囲の画像を撮像する。なお、カメラ11は、仰角βの最小値が0°より少し前後したものでもよい。カメラ11は、撮像した半天球画像の画像データを予測装置12に出力する。本明細書では、仰角βが−90°〜90°の全範囲を撮像する「全天球カメラ」およびその撮像画像である「全天球画像」に対して、その半分の範囲を撮像する「半天球カメラ」および「半天球画像」と記載している。なお、「全天周カメラ」および「全天周画像」と呼ばれる場合もある。半天球画像には、日の出から日没までの期間、周囲の建造物等に隠されない限り、常に太陽が写っている。したがって、カメラ11は、固定されたままで、太陽を含む画像を撮像できる。よって、太陽を追いかけて撮像方向を変化させるための機構は必要ない。なお、カメラ11は、全天球カメラであってもよい。
【0018】
本実施形態では、電力管理装置A1は、複数のカメラ11を備えている。少なくとも1個のカメラ11は、太陽光発電設備2の太陽電池21の近隣に設置されている。当該カメラ11は、太陽電池21の上空を中心とした空の画像を撮像できる。また、当該カメラ11で撮像された半天球画像には、太陽電池21のパネルが写っている。
【0019】
また、他の少なくとも1個のカメラ11は、太陽電池21から少し離れた位置に設置されている。当該カメラ11は、設置位置の上空を中心とした空の画像を撮像できる。したがって、当該カメラ11は、太陽電池21の近隣に設置されたカメラ11では付近の建造物などによって空の一部が写らない場合でも、当該部分を写すことができる(そのような位置に設置される)。また、カメラ11のレンズは、超広角の魚眼レンズなので、中心から離れるほど湾曲した画像になる。電力管理装置A1の予測装置12は、互いに離れた位置に設置された複数のカメラ11からそれぞれ半天球画像を取得することで、各画像を互いに補うことができ、より精度よく予測を行うことができる。なお、電力管理装置A1が備えるカメラ11の数は限定されない。電力管理装置A1は、例えば、太陽電池21の周囲に建造物等の空を遮るものがない場合などには、カメラ11を1個だけ備えていてもよい。
【0020】
予測装置12は、カメラ11から入力される半天球画像の画像データに基づいて、未来の所定期間T(例えば10分間)の日射を予測するためのものである。なお、所定期間Tは限定されない。予測装置12は、時系列で複数取得した半天球画像から、雲を抽出してその形状を認識し、また、当該雲の移動速度を検出する。予測装置12は、各雲の未来の位置を推測して、太陽が雲に隠れる割合である太陽予測指標を算出する。予測装置12は、所定間隔(例えば10秒ごと)で所定期間Tの間の太陽予測指標を算出して、指令装置13に出力する。本実施形態では、太陽予測指標を0〜1の数値として出力する。太陽予測指標が、本発明の「未来の日射に関する予測値」に相当する。なお、予測装置12による日射の予測方法は限定されない。例えば、予測装置12は、半天球画像から雲の種類や、厚さ、高さなどを推測し、太陽予測指標の算出に利用してもよい。また、予測装置12は、太陽予測指標から予測日射強度を算出して、予測値として出力してもよい。太陽予測指標が大きいほど、太陽がより雲に隠されているので、日射強度は低くなると考えられる。また、予測装置12は、予測日射強度に基づいて算出された太陽電池21の最大出力を予測値として出力してもよい。
【0021】
指令装置13は、電力システムB1と電力系統Cとの接続点で検出した電力値を、接続点電力P(t)として用いる。なお、指令装置13は、電力設備2〜5でそれぞれ検出された個別の入出力電力である個別電力を受信して、これらの個別電力から算出される推算値を接続点電力P(t)として用いてもよい。指令装置13は、設定された目標電力P
cと接続点電力P(t)との差に基づいて、電力設備2〜5を制御する。具体的には、指令装置13は、目標電力P
cと接続点電力P(t)との差に基づいて、各電力設備2〜5に、それぞれの個別電力の目標値である個別電力目標を指令として出力する。同じ種類の電力設備であっても、指令装置13は、各電力設備の状況に応じて、それぞれ異なる個別電力目標を出力する。例えば、蓄電設備3が複数あった場合、指令装置13は、それぞれの蓄電容量や残容量などに応じて、異なる個別電力目標を出力する。各電力設備2〜5は、自身の個別電力を入力された個別電力目標に制御する。例えば、接続点電力P(t)が目標電力P
cより大きい場合、指令装置13は、太陽光発電設備2に出力を上昇させる指令を行い、蓄電設備3およびEVスタンド4に放電を行わせる指令を行い、ビル設備5に消費を抑制する指令を行う。どの電力設備2〜5に指令を行うか、また、指令の程度は、目標電力P
cと接続点電力P(t)との差や、各電力設備2〜5の状態などによって異なる。指令装置13は、あらかじめ設定されたアルゴリズムに従って、電力設備2〜5に指令を行う。なお、指令装置13と電力設備2〜5との通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0022】
また、指令装置13は、予測装置12から、所定期間Tの間の所定間隔ごとの太陽予測指標を入力される。指令装置13は、入力された太陽予測指標の時系列変化が所定条件を満たす場合に、電力設備2〜5の少なくとも1つに対策指令を出力する。電力設備2〜5は、対策指令に応じた制御を行う。太陽予測指標の時系列変化が所定条件を満たす場合の対策処理についての詳細は後述する。
【0023】
本実施形態では、予測装置12および指令装置13は別体の装置であり、予測装置12と指令装置13とは通信可能である。なお、予測装置12と指令装置13とは有線通信を行ってもよいし、無線通信を行ってもよい。指令装置13は、一般的な電力システムの電力管理装置の機能に加えて、予測装置12の予測結果に対応した対策処理を行う機能を追加したものである。指令装置13は、従来の電力管理装置において、対策処理のプログラムを追加することで構成されてもよい。なお、予測装置12および指令装置13は別体ではなく、1個の装置であってもよい。すなわち、電力管理装置A1がCPUやメモリを備える1個のコンピュータ装置であって、予測装置12および指令装置13を当該コンピュータ装置の機能構成として備えていてもよい。
【0024】
太陽光発電設備2は、太陽光発電を行う設備である。太陽光発電設備2は、太陽電池21およびパワーコンディショナ22を備えている。太陽電池21は、太陽光を受光して電力を発生させる。なお、太陽電池21の種類や接続形状などは限定されない。太陽電池21は、発電した直流電力をパワーコンディショナ22に出力する。パワーコンディショナ22は、太陽電池21から入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。パワーコンディショナ22は、出力電力(個別電力)が、指令装置13より入力される指令である個別電力目標になるように制御を行う。電力システムB1が電力系統Cから受電する場合の接続点電力P(t)を正の値としたので、太陽光発電設備2の出力電力(個別電力)は、出力する場合を負の値とする。
【0025】
蓄電設備3は、電力を蓄積する設備である。蓄電設備3は、蓄電池31およびパワーコンディショナ32を備えている。蓄電池31は、繰り返し充電により電力を蓄えることができる電池であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などの二次電池である。なお、蓄電池31は限定されず、電気二重層コンデンサなどのコンデンサを用いてもよい。蓄電池31は、パワーコンディショナ32より入力される直流電力を充電して蓄積し、蓄積された電力を放電して、直流電力をパワーコンディショナ32に出力する。パワーコンディショナ32は、蓄電池31から入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。また、パワーコンディショナ32は、交流電力を直流電力に変換して蓄電池31に出力する。パワーコンディショナ32は、入出力電力(個別電力)が、指令装置13より入力される指令である個別電力目標になるように制御を行う。電力システムB1が電力系統Cから受電する場合の接続点電力P(t)を正の値としたので、蓄電設備3の入出力電力(個別電力)は、蓄電池31を充電(入力)する場合を正の値とし、蓄電池31が放電(出力)する場合を負の値とする。したがって、パワーコンディショナ32は、指令装置13から正の値の個別電力目標を入力されると蓄電池31を充電し、指令装置13から負の値の個別電力目標を入力されると蓄電池31を放電させる。
【0026】
EVスタンド4は、電気自動車41の給電を行う設備である。電気自動車41は、蓄電池を備えて電力で駆動され、かつ、外部から蓄電池に充電可能な自動車であり、例えばプラグインハイブリッド車なども含まれる。燃料電池車も、発電した電力を蓄積する蓄電池を備えて電力で駆動されるので、電気自動車41に含まれる。EVスタンド4は、電力システムB1における電力供給の調整にも使用される。つまり、EVスタンド4は、蓄電設備3と同様の機能を有する。また、EVスタンド4は、接続された電気自動車41の数に応じて、蓄電容量を変更することができる。EVスタンド4は、パワーコンディショナ42、および、パワーコンディショナ42に接続された電気自動車41を備えている。パワーコンディショナ42は、電気自動車41の蓄電池から入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。また、パワーコンディショナ42は、交流電力を直流電力に変換して電気自動車41の蓄電池に出力する。パワーコンディショナ42は、入出力電力(個別電力)が、指令装置13より入力される指令である個別電力目標になるように制御を行う。蓄電設備3と同様に、EVスタンド4の入出力電力(個別電力)は、電気自動車41の蓄電池を充電(入力)する場合を正の値とし、電気自動車41の蓄電池が放電(出力)する場合を負の値とする。したがって、パワーコンディショナ42は、指令装置13から正の値の個別電力目標を入力されると電気自動車41の蓄電池を充電し、指令装置13から負の値の個別電力目標を入力されると電気自動車41の蓄電池を放電させる。
【0027】
ビル設備5は、BEMS(Building Energy Management System)を備えた需要家である。ビル設備5は、ビルディング51および電力制御装置52を備えている。ビルディング51は、図示しない分電盤および複数の負荷を備えている。分電盤は、電力系統Cに繋がる電力線が接続されており、電力線を介して電力を受電し、各負荷に供給する。各負荷は、ビルディング51の各フロアや各部屋に配置されている負荷設備であり、例えば空調設備や照明設備などである。各負荷は、それぞれ分電盤に接続されており、分電盤から電力を供給される。
【0028】
電力制御装置52は、ビルディング51の受電電力(個別電力)を制御する。電力制御装置52は、いわゆるBEMSである。電力制御装置52は、指令装置13より入力される指令である個別電力目標に応じて、ビルディング51の受電電力(個別電力)を制御する。当該個別電力目標は、電力会社との間で契約された契約電力(目標デマンド値)に基づいて設定される。電力制御装置52は、受電電力の計測値に基づいて、デマンド時限(例えば30分)の間に受電する電力量(または、受電する電力の平均電力)であるデマンド値を監視し、デマンド値の予測値が目標デマンド値を超えないように、負荷のオンオフや負荷の出力調整(以下では、まとめて「負荷の稼動状態の調整」と記載する場合がある)を行う。電力システムB1が電力系統Cから受電する場合の接続点電力P(t)を正の値としたので、ビルディング51の受電電力(個別電力)は、受電する場合を正の値とする。なお、ビルディング51は、発電設備を備えていてもよい。この場合、各負荷による消費電力から、発電設備の発電電力を減じた電力が受電電力になる。
【0029】
次に、指令装置13が行う対策処理について説明する。指令装置13は、目標電力P
cと接続点電力P(t)との差に基づいて行う通常の制御に加えて、予測装置12から入力される太陽予測指標に基づいて、対策処理を行う。対策処理は、日射の変化によって発生する不都合を抑制するための処理である。
【0030】
日射が急低下した場合、太陽光発電設備2の出力電力が急低下するので、接続点電力P(t)が急上昇する。この場合、通常の制御により接続点電力P(t)が目標電力P
cに低下するまでに時間がかかる。また、蓄電設備3の蓄電量が少なかった場合や、EVスタンド4で接続されている電気自動車41が少なかった場合、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池が放電する電力が不足するので、接続点電力P(t)が低下するのにより時間がかかる。
【0031】
指令装置13は、この不都合を抑制するために、日射の急低下を予測した場合、すぐに、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池の充電を行う。具体的には、指令装置13は、蓄電設備3のパワーコンディショナ32、および、EVスタンド4のパワーコンディショナ42に、正の値の個別電力目標を対策指令として出力する。これにより、パワーコンディショナ32は蓄電池31への充電を行い、パワーコンディショナ42は電気自動車41の蓄電池への充電を行う。日射の急低下前に充電しておくことで、急低下に対応して行う放電のための電力をあらかじめ蓄積しておくことができる。なお、指令装置13がパワーコンディショナ32,42に出力する対策指令は、日射の低下の程度、日射低下の継続時間、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池の残容量などに基づいて決定される。なお、その他の要素が考慮されてもよい。また、固定値としてもよい。
【0032】
また、指令装置13は、合わせて、提携している電気自動車41に、EVスタンド4に来ることを促す連絡を行う。例えば、指令装置13は、電気自動車41のカーナビ画面などにメッセージを表示させたり、電気自動車41のドライバーのスマートフォンや携帯電話にメールを送信する。EVスタンド4のパワーコンディショナ42に接続された電気自動車41が多いほど、より多くの電力を充電できる。
【0033】
また、指令装置13は、日射の急低下が始まると予測された時刻の少し前に、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池に放電を開始させる。具体的には、指令装置13は、蓄電設備3のパワーコンディショナ32、および、EVスタンド4のパワーコンディショナ42に、負の値の個別電力目標を対策指令として出力する。これにより、パワーコンディショナ32は蓄電池31に放電させ、パワーコンディショナ42は電気自動車41の蓄電池に放電させる。したがって、日射の急低下時に、太陽光発電設備2の出力低下を補うための電力が供給される。なお、指令装置13がパワーコンディショナ32,42に出力する対策指令は、日射の低下の程度、日射低下の継続時間、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池の残容量などに基づいて決定される。なお、その他の要素が考慮されてもよい。また、固定値としてもよい。また、指令装置13がパワーコンディショナ32,42に放電のための指令を出力するタイミングは、日射の急低下が始まると予測された時刻であってもよいし、当該時刻の所定時間前であってもよい。所定時間は、日射の低下の程度などから算出される時間であってもよいし、固定時間であってもよい。
【0034】
また、指令装置13は、日射の急低下を予測した場合、蓄電池31のSoC(state of charge)の上下限を変更する。具体的には、指令装置13は、蓄電池31のSoCの上限値として設定されているパラメータの値を引き上げ、SoCの下限値として設定されているパラメータの値を引き下げる指令を、パワーコンディショナ32に出力する。これにより、蓄電池31は、通常時より長い時間の充放電が可能になる。なお、指令装置13は、SoCの上限値の引き上げ、または、SoCの下限値の引き下げのいずれか一方のみを行ってもよい。さらに、指令装置13は、日射の急低下を予測した場合、蓄電池31のCレートの上限を引き上げる。具体的には、指令装置13は、蓄電池31のCレートの上限値として設定されているパラメータの値を引き上げる指令を、パワーコンディショナ32に出力する。なお、Cレートは、蓄電池容量に対する充放電電流値の比である。これにより、蓄電池31は、通常時より大きな電流による充放電が可能になる。なお、指令装置13は、SoCの上下限の変更、または、Cレートの上限の引き上げのいずれか一方のみを行ってもよい。
【0035】
また、指令装置13は、日射の急低下が始まると予測された時刻の少し前に、ビル設備5の受電電力を抑制させる。具体的には、指令装置13は、ビル設備5の電力制御装置52に、低下させた個別電力目標(目標デマンド値)を対策指令として出力する。電力制御装置52は、入力される個別電力目標(目標デマンド値)に応じて、ビルディング51の負荷での消費電力を抑制させて、受電電力を抑制させる。これにより、日射の急低下時に、太陽光発電設備2の出力低下を補うことができる。なお、指令装置13が電力制御装置52に出力する対策指令は、日射の低下の程度、日射低下の継続時間、ビルディング51の負荷の状態などに基づいて決定される。なお、その他の要素が考慮されてもよい。また、固定値としてもよい。また、指令装置13が電力制御装置52に消費抑制のための指令を出力するタイミングは、日射の急低下が始まると予測された時刻であってもよいし、当該時刻の所定時間前であってもよい。所定時間は、日射の低下の程度などから算出される時間であってもよいし、固定時間であってもよい。
【0036】
なお、指令装置13は、日射の急低下を予測した場合に、上記の対策処理(各対策指令の出力、電気自動車41への連絡、充放電量の調整)のすべてを行わなくてもよい。指令装置13は、日射の低下の程度、日射低下の継続時間、電力設備2〜5の状態などに応じて、実行する対策処理を決定してもよい。また、指令装置13は、予測装置12から入力された太陽予測指数の時系列変化が急低下している場合に、日射の急低下を予測する。指令装置13は、例えば、太陽予測指数が所定時間の間に所定以上低下する場合に、急低下と判断する。なお、急低下の判断手法は限定されない。
【0037】
また、日射が安定しない場合、太陽光発電設備2の出力電力が安定しないので、接続点電力P(t)も不安定になる。また、この場合、通常の制御だと、蓄電池31や電気自動車41の蓄電池の充電と放電とが頻繁に繰り返されたり、ビルディング51の負荷の稼動状態の調整が頻繁に繰り返されたりする。
【0038】
指令装置13は、この不都合を抑制するために、日射が安定しないことを予測した場合、不安定化が始まると予測された時刻の少し前に、太陽光発電設備2の出力電力を抑制させる。具体的には、指令装置13は、太陽光発電設備2のパワーコンディショナ22に、個別電力目標を上昇(個別電力目標の絶対値が低下であり、「0」に近づくことを意味する)させて、対策指令として出力する。これにより、パワーコンディショナ22は出力電力を抑制する。太陽光発電設備2の出力電力は、日射の不安定期間の前からあらかじめ抑制されているので、日射が変動しても、変動が抑制される。したがって、接続点電力P(t)の不安定化も抑制される。なお、指令装置13がパワーコンディショナ22に出力する対策指令は、日射の不安定期間の最低値などに基づいて決定される。対策指令が日射の不安定期間の最低値に応じたものであった場合、太陽光発電設備2の出力電力は、最低値に応じた出力にあらかじめ抑制されているので、日射の変動にかかわらず、変動しない。なお、不安定期間の最低値に応じた出力まで抑制しなくても、ある程度抑制することで、太陽光発電設備2の出力電力の不安定化をある程度緩和することができる。また、対策指令の決定には、その他の要素が考慮されてもよい。また、対策指令は、固定値としてもよい。
【0039】
また、指令装置13は、日射が安定しないことを予測した場合、不安定化が始まると予測された時刻の前から、パワーコンディショナ32、パワーコンディショナ42、および電力制御装置52の制御動作が早くなるようにする。具体的には、指令装置13は、パワーコンディショナ32、パワーコンディショナ42、および電力制御装置52に指令(個別電力目標)を出力する間隔を短くする。これにより、制御動作が早くなって、太陽光発電設備2の出力変動に追随して制御を行うことができるので、接続点電力P(t)の不安定化が抑制される。
【0040】
なお、指令装置13は、日射の不安定化を予測した場合に、上記の対策処理(対策指令の出力、制御の高速化)のすべてを行わなくてもよい。指令装置13は、日射の不安定期間の最低値などに応じて、実行する対策処理を決定してもよい。また、指令装置13は、予測装置12から入力された太陽予測指数の時系列変化が上下動を繰り返す場合に、日射の不安定化を予測する。指令装置13は、例えば、太陽予測指数が所定の上限値以上になった後に、所定の下限値以下になり、再度所定の上限値以上になった場合に、上下動を繰り返すと判断する。なお、上下動を繰り返すことの判断手法は限定されない。
【0041】
図2は、指令装置13が行う対策処理を説明するためのフローチャートの一例である。当該対策処理は、所定のタイミング毎に実行される。
【0042】
まず、予測装置12から太陽予測指標が入力される(S1)。次に、日射の急低下が予測されるか否かが判断される(S2)。具体的には、指令装置13が、入力された太陽予測指数の時系列変化が急低下しているか否かにより判断する。日射の急低下が予測される場合(S2:YES)、提携している電気自動車41への連絡が行われ(S3)、充電が開始される(S4)。具体的には、指令装置13が、パワーコンディショナ32,42に、正の値の個別電力目標を対策指令として出力する。次に、蓄電池31の充放電量の調整が行われる(S5)。具体的には、指令装置13が、蓄電池31のSoCの上限値として設定されているパラメータの値を引き上げ、SoCの下限値として設定されているパラメータの値を引き下げる指令を、パワーコンディショナ32に出力する。また、指令装置13が、蓄電池31のCレートの上限値として設定されているパラメータの値を引き上げる指令を、パワーコンディショナ32に出力する。次に、日射の急低下が始まると予測された時刻の前の所定のタイミングになるまで待って(S6)、放電が開始される(S7)。具体的には、指令装置13は、パワーコンディショナ32,42に、負の値の個別電力目標を対策指令として出力する。次に、電力消費が抑制されて(S8)、対策処理が終了される。具体的には、指令装置13は、電力制御装置52に、低下させた個別電力目標(目標デマンド値)を対策指令として出力する。
【0043】
日射の急低下が予測されない場合(S2:NO)、日射の不安定化が予測されるか否かが判断される(S9)。具体的には、指令装置13が、入力された太陽予測指数の時系列変化が上下動を繰り返すか否かにより判断する。日射の不安定化が予測される場合(S9:YES)、制御速度が増加される(S10)。具体的には、指令装置13が、パワーコンディショナ32、パワーコンディショナ42、および電力制御装置52に指令(個別電力目標)を出力する間隔を短くする。次に、日射の不安定化が始まると予測された時刻の前の所定のタイミングになるまで待って(S11)、太陽光発電設備2の出力電力が抑制される(S12)。具体的には、指令装置13が、パワーコンディショナ22に、上昇させた個別電力目標を対策指令として出力する。次に、日射の不安定化が終了すると予測された時刻のタイミングになるまで待って(S13)、太陽光発電設備2の出力電力の抑制が解除される(S14)。具体的には、指令装置13が、パワーコンディショナ22に、対策指令の出力を停止して、通常の指令の出力に切り替える。次に、制御速度が元に戻されて(S15)、対策処理が終了される。具体的には、指令装置13が、パワーコンディショナ32、パワーコンディショナ42、および電力制御装置52に指令(個別電力目標)を出力する間隔を元に戻す。なお、予測装置12による予測期間である所定期間Tの間に日射の不安定化が終了しない場合は、ステップS13〜S15は省略される。
【0044】
日射の不安定化が予測されない場合(S9:NO)、対策処理が終了される。なお、
図2のフローチャートに示す処理は一例であって、指令装置13が行う対策処理は上述したものに限定されない。例えば、ステップS9で「NO」の場合、太陽予測指数の時系列変化に対するその他の条件を設定して、対応する対策を行うようにしてもよい。
【0045】
図3は、指令装置13による対策処理のシミュレーションを行ったときの、各値の変化を示すタイムチャートである。同図(a)は、予測装置12から入力される太陽予測指標を示している。本シミュレーションでは、時刻t0において、時刻t0から時刻t4までの所定期間Tの間の太陽予測指標を、指令装置13に入力している。同図(a)に示すように、太陽予測指標は、時刻t0から時刻t3まで「1」であり、時刻t3から時刻T4まで「0.5」である。すなわち、日射が時刻t3で急低下するとの予測を示す太陽予測指標が指令装置13に入力されている。
【0046】
同図(b)は、指令装置13がパワーコンディショナ32に出力する指令である個別電力目標の変化を示している。同図(b)に示すように、指令装置13は、時刻t0において、蓄電池31を充電させるために、対策指令として、正の値の個別電力目標(30)を出力している。また、日射が急低下すると予測された時刻t3の前の時刻t1において、蓄電池31を放電させるために、対策指令として、負の値の個別電力目標(−50)を出力している。なお、本シミュレーションでは、EVスタンド4を省略している。
【0047】
同図(c)は、指令装置13が電力制御装置52に出力する指令である個別電力目標の変化を示している。同図(c)に示すように、指令装置13は、日射が急低下すると予測された時刻t3の前の時刻t2において、受電電力を抑制させるために、通常時の指令である個別電力目標(500)から、対策指令である個別電力目標(450)に変更している。
【0048】
同図(d)は、太陽光発電設備2の出力電力を示している。同図(c)に示すように、出力電力は、予測装置12による予測通りに、時刻t3において半減している。
【0049】
同図(e)は、蓄電設備3の入出力電力を示している。同図(e)に示すように、蓄電設備3は、指令装置13から入力される個別電力目標(同図(b)参照)に応じて、時刻t0から充電を開始し、時刻t1から放電を開始している。
【0050】
同図(f)は、ビル設備5の受電電力を示している。同図(f)に示すように、ビル設備5は、指令装置13から入力される個別電力目標(同図(c)参照)に応じて、時刻t2から受電電力を抑制している。
【0051】
同図(g)は、接続点電力P(t)を示している。接続点電力P(t)は、時刻t0で蓄電設備3が充電を開始したことで上昇し、時刻t1で蓄電設備3が放電を開始したことで低下している。また、時刻t2でビル設備5が受電電力の抑制を開始したことで、さらに低下している。そして、時刻t3で太陽光発電設備2の出力電力が半減したことで上昇している。しかし、あらかじめ、蓄電設備3が放電を開始し、ビル設備5が受電電力の抑制を開始しているので、接続点電力P(t)の上昇は抑制されている。また、接続点電力P(t)のピークも抑制されている。このように、指令装置13は、予測装置12から入力される太陽予測指標に基づいて対策処理を行うことで、日射が急低下した場合でも接続点電力P(t)の急上昇を抑制できることが示されている。
【0052】
次に、本実施形態に係る電力管理装置A1の作用および効果について説明する。
【0053】
本実施形態によると、予測装置12は、カメラ11から入力される半天球画像の画像データに基づいて、所定期間Tの間の太陽予測指標を算出して、指令装置13に出力する。指令装置13は、入力された太陽予測指標の時系列変化が所定条件を満たす場合に、対策処理を行う。したがって、電力管理装置A1は、実際に日射が変化する前に、日射の変化に対応した処理を行うことができる。これにより、日射の変化によって発生する不都合を抑制できる。
【0054】
本実施形態によると、指令装置13は、日射の急低下を予測した場合、すぐに、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池の充電を行う。日射の急低下前に充電しておくことで、急低下に対応して行う放電のための電力をあらかじめ蓄積しておくことができる。また、指令装置13は、日射の急低下を予測した場合、提携している電気自動車41に、EVスタンド4に来ることを促す連絡を行う。これにより、EVスタンド4に接続される電気自動車41を増加させることができ、EVスタンド4の蓄電容量を増加することができる。また、指令装置13は、日射の急低下が始まると予測された時刻の少し前に、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池に放電を開始させる。これにより、日射の急低下時に、太陽光発電設備2の出力低下を補うための電力を供給することができる。また、指令装置13は、日射の急低下を予測した場合、蓄電池31のSoCの上限値を引き上げ、SoCの下限値を引き下げる。これにより、蓄電池31は、通常時より長い時間の充放電が可能になる。さらに、指令装置13は、蓄電池31のCレートの上限を引き上げる。これにより、蓄電池31は、通常時より大きな電流による充放電が可能になる。
【0055】
本実施形態によると、指令装置13は、日射の急低下が始まると予測された時刻の少し前に、ビル設備5の受電電力を抑制させる。これにより、日射の急低下時に、太陽光発電設備2の出力低下を補うことができる。
【0056】
本実施形態によると、指令装置13は、日射が安定しないことを予測した場合、不安定化が始まると予測された時刻の少し前に、太陽光発電設備2の出力電力を抑制させる。これにより、日射が変動しても、太陽光発電設備2の出力電力の変動は抑制され、接続点電力P(t)の不安定化も抑制される。また、指令装置13は、日射が安定しないことを予測した場合、不安定化が始まると予測された時刻の前から、パワーコンディショナ32、パワーコンディショナ42、および電力制御装置52の制御動作が早くなるようにする。これにより、制御動作が早くなって、太陽光発電設備2の出力変動に追随して制御を行うことができるので、接続点電力P(t)の不安定化が抑制される。
【0057】
本実施形態によると、予測装置12は、固定設置されたカメラ11が撮像した鉛直上方の半天球画像に基づいて予測を行う。カメラ11は、固定されたままで太陽を含む画像を撮像できるので、太陽を追いかけて撮像方向を変化させるための機構が不要である。したがって、電力管理装置A1は、容易に予測を行うことができる。また、少なくとも1個のカメラ11は、太陽光発電設備2の太陽電池21の近隣に設置されて、太陽電池21上空を中心とした空の画像を撮像できる。したがって、予測装置12は、精度よく予測を行うことができる。また、他の少なくとも1個のカメラ11は、太陽電池21から少し離れた位置に設置されて、設置位置の上空を中心とした空の画像を撮像できる。予測装置12は、互いに離れた位置に設置された複数のカメラ11からそれぞれ半天球画像を取得することで、各画像を互いに補うことができ、より精度よく予測を行うことができる。
【0058】
本実施形態では、日射の急低下を予測した場合の対策処理と、日射の不安定化を予測した場合の対策処理について説明した。指令装置13は、その他の日射の変化を予測して、当該予測に対する対策処理を行ってもよい。例えば、指令装置13は、予測装置12から入力された太陽予測指数の時系列変化が急上昇している場合に日射の急上昇を予測し、以下の対策処理を行ってもよい。すなわち、指令装置13は、日射の急上昇を予測した場合、すぐに、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池の放電を行う。日射の急上昇前に放電しておくことで、急上昇に対応して行う充電のために、各蓄電池の充電可能量を増加させておくことができる。また、指令装置13は、合わせて、提携している電気自動車41に、EVスタンド4に来ることを促す連絡を行う。また、指令装置13は、日射の急上昇が始まると予測された時刻の少し前に、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池に充電を開始させる。これにより、日射の急上昇時に、太陽光発電設備2の出力上昇によって逆潮流が発生することを抑制できる。また、指令装置13は、日射の急上昇を予測した場合に、日射の急低下を予測した場合と同様に、蓄電池31のSoCの上下限を変更し、蓄電池31のCレートの上限を引き上げる。
【0059】
また、指令装置13は、日射の急上昇が始まると予測された時刻の少し前に、ビル設備5の受電電力の抑制を緩和させる。具体的には、指令装置13は、ビル設備5の電力制御装置52に、上昇させた個別電力目標(目標デマンド値)を対策指令として出力する。電力制御装置52は、入力される個別電力目標(目標デマンド値)に応じて、ビルディング51の負荷での消費電力を増加させて、受電電力の抑制を緩和させる。これにより、日射の急上昇時に、太陽光発電設備2の出力上昇を補うことができる。なお、指令装置13は、ビル設備5の受電電力の抑制を解除してもよい。
【0060】
図4は、第2実施形態に係る電力管理装置A2を備える電力システムB2の全体構成を示すブロック図である。
図4において、第1実施形態に係る電力システムB1と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0061】
本実施形態に係る電力システムB2は、電力管理装置A2が接続点電力P(t)を目標電力P
cに制御するための指標prを算出し、各電力設備2〜5に共通の指標prを指令として出力する点で、第1実施形態に係る電力システムB2とは異なる。各電力設備2〜5は、電力管理装置A2から入力された共通の指標prを用いて、それぞれ設定されている最適化問題に基づいて、自設備の個別電力の目標値である個別電力目標を算出する。そして、個別電力が個別電力目標になるように制御を行う。各電力設備2〜5が指標prに基づいて、自律的に個別電力を制御することで、接続点電力P(t)が目標電力P
cに制御される。指標prを用いた自律分散協調制御については、例えば特許文献2に開示されている。
【0062】
電力管理装置A2は、指令装置13に代えて指令装置14を備えている。指令装置14は、目標電力P
cと接続点電力P(t)との差に基づいて指標prを算出し、各電力設備2〜5に共通の指標prを指令として出力する。指標prの算出方法の説明は省略する。また、当該指令装置14は、予測装置12から入力された太陽予測指標の時系列変化が所定条件を満たす場合、目標電力P
cを変更することで、指標prを変更し、変更後の指標prを対策指令として電力設備2〜5に出力する。電力設備2〜5は、対策指令に応じた制御を行う。指令装置14が行う対策処理についての詳細は後述する。
【0063】
太陽光発電設備2は、パワーコンディショナ22に代えて、パワーコンディショナ23を備えている。パワーコンディショナ23は、目標電力算出部231および制御部232を備えている。目標電力算出部231は、指令装置14から入力された指標prを用いて、あらかじめ設定されている最適化問題に基づいて、個別電力目標を算出する。なお、目標電力算出部231には、太陽電池21の制御に適した最適化問題があらかじめ設定されている。制御部232は、目標電力算出部231が算出した個別電力目標に基づいて、個別電力の制御を行う。つまり、パワーコンディショナ23は、パワーコンディショナ22に目標電力算出部231が追加されたものである。
【0064】
蓄電設備3は、パワーコンディショナ32に代えて、パワーコンディショナ33を備えている。パワーコンディショナ33は、パワーコンディショナ32に、目標電力算出部231と同様の構成が追加されたものである。なお、パワーコンディショナ33には、蓄電池の充放電に適した最適化問題があらかじめ設定されている。
【0065】
EVスタンド4は、パワーコンディショナ42に代えて、パワーコンディショナ43を備えている。パワーコンディショナ43は、パワーコンディショナ42に、目標電力算出部231と同様の構成が追加されたものである。なお、パワーコンディショナ43には、電気自動車41の蓄電池の充放電に適した最適化問題があらかじめ設定されている。
【0066】
ビル設備5は、電力制御装置52に代えて、電力制御装置53を備えている。電力制御装置53は、目標電力算出部531および制御部532を備えている。目標電力算出部531は、目標電力算出部231と同様のものである。なお、目標電力算出部531には、負荷の制御に適した最適化問題があらかじめ設定されている。制御部532は、目標電力算出部531が算出した個別電力目標に基づいて、個別電力の制御を行う。つまり、電力制御装置53は、電力制御装置52に目標電力算出部531が追加されたものである。なお、制御部532は、デマンドに応じた制御ではなく、制御部232と同様に、瞬時値制御を行うようにしてもよい。すなわち、制御部532は、個別電力目標と個別電力との差に基づいて、負荷の稼動状態の調整を行ってもよい。
【0067】
パワーコンディショナ23,33,43および電力制御装置53に設定される最適化問題は、目的に応じた制御が可能なように設計されている。例えば、本実施形態では、パワーコンディショナ23に設定される最適化問題は、指標prが所定値以上のときに個別電力目標が上昇(個別電力目標の絶対値が低下であり、「0」に近づくことを意味する)するように設計されている。また、指標prが減少したとき、パワーコンディショナ33,43より電力制御装置53が遅れて個別電力目標を低下させるように、各最適化問題は設計されている。
【0068】
次に、指令装置14が行う対策処理について説明する。
【0069】
指令装置14は、日射の急低下を予測した場合、すぐに、目標電力P
cを増加させることで指標prを増加させ、増加した指標prを対策指令として出力する。これにより、パワーコンディショナ33,43が算出する個別電力目標が上昇して、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池への充電が開始される。また、指令装置14は、日射の急低下が始まると予測された時刻の少し前に、目標電力P
cを減少させることで指標prを減少させ、減少した指標prを対策指令として出力する。これにより、パワーコンディショナ33,43が算出する個別電力目標が低下して、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池の放電が開始される。また、少し遅れて、電力制御装置53が算出する個別電力目標が低下して、負荷での消費電力が抑制されて、受電電力が抑制される。つまり、指令装置13が各電力設備2〜5に対策指令としての個別電力目標をそれぞれ出力することで行わせた制御を、指令装置14は、目標電力P
cを変化させることで変化した指標prを対策指令として出力することで行わせる。また、指令装置14は、指令装置13と同様に、EVスタンド4に来ることを促す連絡や、蓄電池31の充放電量の調整も行う。
【0070】
また、指令装置14は、日射が安定しないことを予測した場合、不安定化が始まると予測された時刻の少し前に、目標電力P
cを増加させることで指標prを増加させ、増加した指標prを対策指令として出力する。指標prを所定値以上に増加させることで、パワーコンディショナ23が算出する個別電力目標が上昇して、太陽光発電設備2の出力電力が抑制される。また、指令装置14は、指令装置13と同様に、パワーコンディショナ33、パワーコンディショナ43、および電力制御装置53に指令(指標pr)を出力する間隔を短くすることで、制御動作を早くする。
【0071】
図5は、指令装置14が行う対策処理を説明するためのフローチャートの一例である。
【0072】
図5に示すフローチャートは、ステップS1〜3,S5,S6,S9〜S11,S13,S15については、
図2に示すフローチャートと同じである。
図5に示すフローチャートでは、ステップS4がステップS4’に変更され、ステップS7,S8がステップS7’に変更され、ステップS12がステップS12’に変更され、ステップS14がステップS14’に変更されている。
【0073】
ステップS4’では、目標電力P
cが増加される。これにより、指標prが増加して、パワーコンディショナ33,43が算出する個別電力目標が上昇し、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池への充電が開始される。ステップS7’では、目標電力P
cが減少される。これにより、指標prが減少して、パワーコンディショナ33,43が算出する個別電力目標が低下し、蓄電池31および電気自動車41の蓄電池の放電が開始される。また、少し遅れて、電力制御装置53が算出する個別電力目標が低下し、負荷での消費電力が抑制されて、受電電力が抑制される。ステップS12’では、目標電力P
cが増加される。これにより、指標prが増加して、パワーコンディショナ23が算出する個別電力目標が上昇し、太陽光発電設備2の出力電力が抑制される。ステップS14’では、目標電力P
cが元に戻される。これにより、指標prが元に戻って、パワーコンディショナ23が算出する個別電力目標が元に戻り、太陽光発電設備2の出力電力の抑制が解除される。なお、
図5のフローチャートに示す処理は一例であって、指令装置14が行う対策処理は上述したものに限定されない。
【0074】
図6は、指令装置14による対策処理のシミュレーションを行ったときの、各値の変化を示すタイムチャートである。
図6(a)は、
図3(a)と同様、予測装置12から入力される太陽予測指標を示している。つまり、本シミュレーションは、指令装置13を指令装置14に変更した上で、
図3と同じ状態をシミュレーションしたものである。
図6(b)は、指令装置14に設定される目標電力P
cの変化を示している。
図6(b)に示すように、指令装置14は、時刻t0において、目標電力P
cを増加させている。また、時刻t1において、目標電力P
cを減少させている。そして、時刻t3において、目標電力P
cを元に戻している。
図6(c)は、指令装置14が算出した指標prの変化を示している。
図6(c)に示すように、指標prは、時刻t0において増加し、時刻t1において減少している。
【0075】
パワーコンディショナ33が指標prに基づいて算出した個別電力目標の変化は、
図3(b)と同様になる。したがって、
図6(e)に示す蓄電設備3の入出力電力の変化は、
図3(e)と同様になっている。また、電力制御装置53が指標prに基づいて算出した個別電力目標の変化は、
図3(c)と同様になる。したがって、
図6(f)に示すビル設備5の受電電力の変化は、
図3(f)と同様になっている。したがって、
図6(g)に示す接続点電力P(t)の変化は、
図3(g)と同様になっている。
【0076】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、本実施形態によると、電力管理装置A2は、各電力設備2〜5の個別の状態などを把握することなく、指標prを算出して出力するだけなので、演算や通信の負担が小さい。つまり、電力管理装置A2は、高性能で高価な装置である必要がないので、初期導入費用を軽減できる。また、電力システムB2を拡張する場合に、電力管理装置A2の大きな改修が必要にならない。
【0077】
なお、電力管理装置A2が各電力設備2〜5に出力する指標prは共通のものに限られない。電力管理装置A2は、電力設備の種類ごとにそれぞれ異なる指標prを出力してもよい。ただし、電力管理装置A2は、同じ種類の電力設備には共通の指標prを出力する。
【0078】
なお、上記第1および第2実施形態においては、電力システムB1(B2)が、ビル設備5を備える場合について説明したが、これに限れない。電力システムB1(B2)は、ビル設備5に代えてまたは追加して、その他の需要家設備を備えていてもよい。その他の需要家設備としては、例えば、工場での受電電力を制御するFEMS(Factory Energy Management System)を備えた工場設備や、家庭での受電電力を制御するHEMS(Home Energy Management System)を備えた家庭設備などであってもよい。また、電力システムB1(B2)は、太陽光発電設備2、蓄電設備3、EVスタンド4、およびビル設備5(需要家設備)の全てを備えている必要はない。電力システムB1(B2)は、太陽光発電設備2と、予測装置12の予測結果に対応した対策処理を行うためのいずれかの電力設備を備えていればよい。
【0079】
本発明に係る電力管理装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る電力管理装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。