【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、複数の種雄牛個体の受胎性を検討したところ、低受胎個体が特定の家系で多く確認され、この低受胎の形質が遺伝することを想定した。そこで、受胎率の判明している黒毛和種及びホルスタイン種の種雄牛のDNAを用いて、GWAS解析や次世代シーケンス解析等を用いたゲノム解析を行った結果、特定のDNA変異が低受胎の雄個体に共通することを突き止めた。さらに、集団内で共通して大きな効果をもたらすゲノム領域であることも判明し、このゲノム領域を受胎性に焦点を当てた指標マーカーとして利用することで、受胎性の判定を行うことができると考え、DNAマーカー、並びにそれを用いた検査方法及び検査キットの発明に至った。
【0011】
したがって、本発明は、低受胎を判定できるDNAマーカー、検査方法及び検査キットに関して、より具体的には以下に掲げる構成とした。
[1] ウシの染色体における配列番号1と配列番号2に示す塩基配列により挟まれる及び/又は配列番号3と配列番号4に示す塩基配列により挟まれる、連続する核酸領域に含まれる、一又は複数の変異マーカーであって、受胎性の判定に用いるDNAマーカー。
[2] 前記配列番号1と配列番号2に示す塩基配列に挟まれるが、配列番号5と配列番号6に示す塩基配列により挟まれる、であることを特徴とする[1]に記載のDNAマーカー。
[3] 前記一又は複数の変異マーカーが、下記(1)から(50)のいずれかに記載の変異マーカーであることを特徴とする[1]に記載のDNAマーカー、
(1)配列番号7に記載の塩基配列の一部であり、100_101位の挿入部位を含み、かつ該挿入部位の塩基がT、
(2)配列番号8に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がG、
(3)配列番号9に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(4)配列番号10に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(5)配列番号11に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(6)配列番号12に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(7)配列番号13に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がC、
(8)配列番号14に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(9)配列番号15に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(10)配列番号16に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(11)配列番号17に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がC、
(12)配列番号18に記載の塩基配列の一部であり、101位の欠失部位を含む、
(13)配列番号19に記載の塩基配列の一部であり、101位の欠失部位を含む、
(14)配列番号20に記載の塩基配列の一部であり、100_101位の挿入部位を含み、かつ該挿入部位の塩基がC、
(15)配列番号21に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(16)配列番号22に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(17)配列番号23に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(18)配列番号24に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(19)配列番号25に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(20)配列番号26に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(21)配列番号27に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がC、
(22)配列番号28に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がC、
(23)配列番号29に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がG、
(24)配列番号30に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(25)配列番号31に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(26)配列番号32に記載の塩基配列の一部であり、101_103位の欠失部位を含む、
(27)配列番号33に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(28)配列番号34に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(29)配列番号35に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(30)配列番号36に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(31)配列番号37に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(32)配列番号38に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(33)配列番号39に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(34)配列番号40に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(35)配列番号41に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(36)配列番号42に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(37)配列番号43に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(38)配列番号44に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(39)配列番号45に記載の塩基配列の一部であり、101位の欠失部位を含む、
(40)配列番号46に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がG、
(41)配列番号47に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(42)配列番号48に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(43)配列番号49に記載の塩基配列の一部であり、101位の欠失部位を含む、
(44)配列番号50に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(45)配列番号51に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がA、
(46)配列番号52に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(47)配列番号53に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(48)配列番号54に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(49)配列番号55に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT、
(50)配列番号56に記載の塩基配列の一部であり、101位の置換部位を含み、かつ該置換部位の塩基がT。
[4] 前記(1)から(50)のいずれかに記載の変異マーカーが、ホモ接合型又はヘテロ接合型であることを特徴とする[3]に記載のDNAマーカー。
[5] 前記ホモ接合型であれば低受胎又は前記ヘテロ接合型であれば低受胎の保因であることを特徴とする[4]に記載のDNAマーカー。
[6] 前記(6)の変異マーカーであって、MIR2443の上流12塩基にあることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[7] 前記(9)の変異マーカーであって、CDPF1遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸がLeuであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[8] 前記(10)の変異マーカーであって、CDPF1遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸が終止コドンであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[9] 前記(17)の変異マーカーであって、CELSR1遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸がValであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[10] 前記(44)の変異マーカーであって、ALG12遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸がIleであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[11] 前記(45)の変異マーカーであって、MLC1遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸がValであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[12] 前記(46)の変異マーカーであって、SELENOO遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸がTrpであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[13] 前記(47)の変異マーカーであって、HDAC10遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸がIleであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[14] 前記(48)の変異マーカーであって、DENND6B遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸がIleであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[15] 前記(49)の変異マーカーであって、DENND6B遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸がLysであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[16] 前記(50)の変異マーカーであって、PPP6R2遺伝子のアミノ酸置換部位を含み、かつ該置換部位のアミノ酸がAspであることを特徴とする[3]から[5]のいずれかに記載のDNAマーカー。
[17] [1]から[16]のいずれかに記載の一又は複数のDNAマーカーの部位の塩基配列を決定する塩基決定工程と、決定された塩基から受胎性を判定する受胎性判定工程を備える、受胎性の判定方法。
[18] 前記塩基決定工程が、DNAサンガーシーケンス、次世代シーケンサ、SNPタイピング又はリアルタイムPCRを用いることを特徴とする[17]に記載の受胎性の判定方法。
[19] 前記塩基決定工程が、前記一又は複数のDNAマーカーの部位の塩基配列を決定するためのプローブ又はプライマーを用いることを特徴とする[17]に記載の受胎性の判定方法。
[20] [1]から[16]のいずれかに記載の一又は複数のDNAマーカーの部位の塩基配列を決定する塩基決定手段を備える、受胎性の判定キット。
[21] 前記塩基決定手段が、DNAサンガーシーケンス、次世代シーケンサ、SNPタイピング又はリアルタイムPCRを用いることを特徴とする[20]に記載の受胎性の判定キット。
[22] 前記一又は複数のDNAマーカーの部位の塩基配列を決定するためのプローブ又はプライマーを用いることを特徴とする[20]に記載の受胎性の判定キット。
[23] [1]から[16]のいずれかに記載の一又は複数のDNAマーカーの部位の塩基配列を決定するためのプローブ又はプライマー。