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特開2020-141664悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータ収集方法及びキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-141664(P2020-141664A)
(43)【公開日】2020年9月10日
(54)【発明の名称】悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータ収集方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20200814BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20200814BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALI20200814BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20200814BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20200814BHJP
【FI】
   C12Q1/02ZNA
   C12Q1/6886 Z
   C12Q1/6883 Z
   C12Q1/6869 Z
   C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-32239(P2020-32239)
(22)【出願日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2019-37912(P2019-37912)
(32)【優先日】2019年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】大坪 公士郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 邦夫
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ49
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR50
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS28
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】悪性の膵胆道系疾患を判定する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】被験者が悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータ収集方法であって、前記被験者由来の生体試料中の、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合を測定することを含み、前記割合が対照と比較して高いことが、前記被験者が悪性の膵胆道系疾患を有することを示す、データ収集方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータ収集方法であって、
前記被験者由来の生体試料中の、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合を測定することを含み、
前記割合が対照と比較して高いことが、前記被験者が悪性の膵胆道系疾患を有することを示す、データ収集方法。
【請求項2】
前記生体試料が血液であり、
前記メチル化されたシトシン残基の割合の測定を、miR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基について行い、
miR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第第91番目のシトシン残基である、請求項1に記載のデータ収集方法。
【請求項3】
前記生体試料が胆汁であり、
miR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第26番目、第49番目、第69番目、第78番目、第89番目、第91番目、第94番目及び第104番目のシトシン残基からなる群より選択されるシトシン残基であり、
miR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号2で示されるmiR−200a遺伝子のプロモーターの塩基配列における第80番目、第86番目、第156番目、第175番目及び第197番目のシトシン残基からなる群より選択されるシトシン残基であり、
miR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号3で示されるmiR−200b遺伝子のプロモーターの塩基配列における第74番目、第156番目、第160番目、第167番目、第178番目及び第186番目のシトシン残基からなる群より選択されるシトシン残基である、請求項1に記載のデータ収集方法。
【請求項4】
前記悪性の膵胆道系疾患が膵癌又は胆道癌である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のデータ収集方法。
【請求項5】
亜硫酸水素塩、及び、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドを増幅するプライマー、を含む、悪性の膵胆道系疾患を有するか否かの判定用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータ収集方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
膵癌は、5年生存率が7%程度であり、すべての癌の中で最も予後不良の癌である。膵癌症例のうち、腫瘍径1cm以下の小膵癌で診断される割合は0.8%程度であり、腫瘍径2cm以下の膵癌で診断される割合は10%前後である。このように、膵癌を小病変の段階で発見することは現状難しい状況にある。
【0003】
一方、膵癌を小病変の段階で発見することができれば比較的良好な予後が期待できる。例えば、TS1a(腫瘍径3〜10mm)の膵癌の5年生存率は80.4%であり、国際対がん連合(UICC)分類のStage 0の膵癌の5年生存率は85.8%である。
【0004】
したがって、膵癌等の悪性の膵胆道系疾患を早期に発見する技術が求められている。例えば、非特許文献1には、CD1D遺伝子のメチル化が膵癌のマーカーとして有用であることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kisiel J. B., et al., New DNA Methylation Markers for Pancreatic Cancer: Discovery, Tissue Validation, and Pilot Testing in Pancreatic Juice, Clin Cancer Res., 21 (19), 4473-4481, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような背景のもと、本発明は悪性の膵胆道系疾患を判定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を含む。
[1]被験者が悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータ収集方法であって、前記被験者由来の生体試料中の、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合を測定することを含み、前記割合が対照と比較して高いことが、前記被験者が悪性の膵胆道系疾患を有することを示す、データ収集方法。
[2]前記生体試料が血液であり、前記メチル化されたシトシン残基の割合の測定を、miR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基について行い、miR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第第91番目のシトシン残基である、[1]に記載のデータ収集方法。
[3]前記生体試料が胆汁であり、miR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第26番目、第49番目、第69番目、第78番目、第89番目、第91番目、第94番目及び第104番目のシトシン残基からなる群より選択されるシトシン残基であり、miR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号2で示されるmiR−200a遺伝子のプロモーターの塩基配列における第80番目、第86番目、第156番目、第175番目及び第197番目のシトシン残基からなる群より選択されるシトシン残基であり、miR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号3で示されるmiR−200b遺伝子のプロモーターの塩基配列における第74番目、第156番目、第160番目、第167番目、第178番目及び第186番目のシトシン残基からなる群より選択されるシトシン残基である、[1]に記載のデータ収集方法。
[4]前記悪性の膵胆道系疾患が膵癌又は胆道癌である、[1]〜[3]のいずれかに記載のデータ収集方法。
[5]亜硫酸水素塩、及び、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドを増幅するプライマー、を含む、悪性の膵胆道系疾患を有するか否かの判定用キット。
【0008】
本発明は以下の態様を含むものであるということもできる。
[P1]被験者が悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータ収集方法であって、前記被験者由来の生体試料中の、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合を測定することを含み、前記割合が対照と比較して高いことが、前記被験者が悪性の膵胆道系疾患を有することを示す、データ収集方法。
[P2]miR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第26番目、第49番目、第69番目、第78番目、第89番目、第91番目、第94番目及び第104番目のシトシン残基からなる群より選択されるシトシン残基であり、miR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号2で示されるmiR−200a遺伝子のプロモーターの塩基配列における第80番目、第86番目、第156番目、第175番目及び第197番目のシトシン残基からなる群より選択されるシトシン残基であり、miR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基が、配列番号3で示されるmiR−200b遺伝子のプロモーターの塩基配列における第74番目、第156番目、第160番目、第167番目、第178番目及び第186番目のシトシン残基からなる群より選択されるシトシン残基である、[P1]に記載のデータ収集方法。
[P3]前記生体試料が、胆汁又は血液である、[P1]又は[P2]に記載のデータ収集方法。
[P4]前記悪性の膵胆道系疾患が膵癌又は胆道癌である、[P1]〜[P3]のいずれかに記載のデータ収集方法。
[P5]亜硫酸水素塩、及び、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドを増幅するプライマー、を含む、悪性の膵胆道系疾患を有するか否かの判定用キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、悪性の膵胆道系疾患を判定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】実験例1において、膵癌患者由来の試料におけるmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図1B】実験例1において、胆道癌患者由来の試料におけるmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図1C】実験例1において、良性膵胆道疾患患者由来の試料におけるmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図2A】実験例1において、膵癌患者由来の試料におけるmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図2B】実験例1において、胆道癌患者由来の試料におけるmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図2C】実験例1において、良性膵胆道疾患患者由来の試料におけるmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図3A】実験例1において、膵癌患者由来の試料におけるmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図3B】実験例1において、胆道癌患者由来の試料におけるmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図3C】実験例1において、良性膵胆道疾患患者由来の試料におけるmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図4A】実験例2において、膵癌患者由来の試料におけるmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図4B】実験例2において、胆道癌患者由来の試料におけるmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図4C】実験例2において、良性膵胆道疾患患者由来の試料におけるmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図5】(a)は、実験例2において、胆道癌患者と、良性膵胆道疾患患者の血漿中のmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列(配列番号1)における第91番目のシトシン残基のメチル化の割合の測定結果を示すグラフである。(b)は、実験例2において、胆道癌患者と、良性膵胆道疾患患者の血漿中のmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列(配列番号1)における第91番目のシトシン残基のメチル化の割合に基づいて作成したROC曲線である。
図6A】実験例2において、膵癌患者由来の試料におけるmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図6B】実験例2において、胆道癌患者由来の試料におけるmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図6C】実験例2において、良性膵胆道疾患患者由来の試料におけるmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図7A】実験例2において、膵癌患者由来の試料におけるmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図7B】実験例2において、胆道癌患者由来の試料におけるmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
図7C】実験例2において、良性膵胆道疾患患者由来の試料におけるmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[データ収集方法]
1実施形態において、本発明は、被験者が悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータ収集方法であって、前記被験者由来の生体試料中の、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合を測定することを含み、前記割合が対照と比較して高いことが、前記被験者が悪性の膵胆道系疾患を有することを示す、データ収集方法を提供する。
【0012】
実施例において後述するように、本実施形態の方法によれば、被験者が悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータを収集することができる。なお、データ収集方法は医師が判断する工程を含まない。本実施形態の方法は、悪性の膵胆道系疾患の検出方法、膵胆道系疾患が悪性であるか良性であるかを判定する方法等といいかえることもできる。本実施形態の方法において、悪性の膵胆道系疾患としては、膵癌、胆道癌が挙げられる。
【0013】
本実施形態の方法において、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合が、被験者が悪性の膵胆道系疾患を有するか否かを判定するためのデータである。
【0014】
また、本実施形態の方法において、対照とは、悪性の膵胆道系疾患を有しないことが予め明らかである被験者由来の生体試料中の、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合である。悪性の膵胆道系疾患を有しないことが予め明らかである被験者としては、健常者、良性の膵胆道系疾患を有すると診断された患者等が挙げられる。
【0015】
miR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基としては、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第26番目、第49番目、第69番目、第78番目、第89番目、第91番目、第94番目及び第104番目のシトシン残基からなる群より選択される1又は複数のシトシン残基が挙げられる。
【0016】
実施例において後述するように、発明者らは、悪性の膵胆道系疾患を有する患者由来の生体試料では、これらのシトシン残基がメチル化されている割合が、対照における割合と比較して有意に高いことを明らかにした。
【0017】
miR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基としては、配列番号2で示されるmiR−200a遺伝子のプロモーターの塩基配列における第80番目、第86番目、第156番目、第175番目及び第197番目のシトシン残基からなる群より選択される1又は複数のシトシン残基が挙げられる。
【0018】
実施例において後述するように、発明者らは、悪性の膵胆道系疾患を有する患者由来の生体試料では、これらのシトシン残基がメチル化されている割合が、対照における割合と比較して有意に高いことを明らかにした。
【0019】
miR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおける前記シトシン残基としては、配列番号3で示されるmiR−200b遺伝子のプロモーターの塩基配列における第74番目、第156番目、第160番目、第167番目、第178番目及び第186番目のシトシン残基からなる群より選択される1又は複数のシトシン残基が挙げられる。
【0020】
実施例において後述するように、発明者らは、悪性の膵胆道系疾患を有する患者由来の生体試料では、これらのシトシン残基がメチル化されている割合が、対照における割合と比較して有意に高いことを明らかにした。
【0021】
本実施形態の方法では、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子、miR−200b遺伝子のうち、いずれか1種の遺伝子においてメチル化されたシトシン残基の割合を測定してもよいし、いずれか2種の遺伝子においてメチル化されたシトシン残基の割合を測定してもよいし、3種類全ての遺伝子においてメチル化されたシトシン残基の割合を測定してもよい。
【0022】
miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のメチル化されたシトシン残基の割合を測定することにより、被験者が悪性の膵胆道系疾患を有するか否かをより高精度に判定することが可能となる。
【0023】
本実施形態の方法において、前記生体試料としては、胆汁又は血液を用いることができる。血液としては、血漿を用いることが好ましい。より具体的には、生体試料中に存在する、セルフリーDNA(cfDNA)、circulating tumor DNA(ctDNA)等を抽出し、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子、miR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のメチル化の割合を測定する。
【0024】
cfDNAの多くは、血球系細胞の死滅に由来するDNAであるといわれている。また、癌の発生により、癌細胞が免疫によって破壊されたり、自ら細胞死(アポトーシス)をおこしたり、血中に漏れ出した循環腫瘍細胞(CTC)が何らかの影響によって血中で破壊されたりすると、癌細胞のゲノムDNAが血中に漏出することになる。このようなDNAは特にctDNA (circulating tumor DNA)と呼ばれる場合がある。
【0025】
CpGアイランドとは、シトシンの次にグアニンが現れる2塩基配列(ジヌクレオチド)であるCpGの出現頻度が、ゲノム中の他の領域と比べて高い領域のことである。CpGの「p」の文字は、シトシンとグアニンの間のホスホジエステル結合を表している。哺乳類の遺伝子の多くは、プロモーター内部又は近傍にCpGアイランドを含んでいることが知られている。
【0026】
上記の生体試料中には、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子、miR−200b遺伝子等をコードするゲノムDNA由来の遺伝子断片が含まれている。本実施形態の検出方法では、これらの遺伝子断片のプロモーター領域のCpGアイランドにおけるシトシン残基のメチル化を検出する。
【0027】
シトシン残基のメチル化の検出は、DNA断片のバイサルファイト(亜硫酸水素塩)処理を利用する方法により好適に行うことができる。DNA断片のバイサルファイト処理は、市販のキット等を用いて実施することができる。バイサルファイト処理により、シトシン残基は脱アミノ化されてウラシル残基に変換されるが、メチル化されたシトシン残基はそのまま残る。
【0028】
そこで、バイサルファイト処理後のDNA断片をシーケンスすることにより、シトシン残基のメチル化を検出することができる。ここで、次世代シーケンサーを用いて全DNA断片の塩基配列をシーケンスすることにより、メチル化されたシトシン残基の割合を測定することができる。
【0029】
あるいは、バイサルファイト処理後のDNA断片を鋳型とし、シトシン残基又はウラシル残基を識別するプライマーを用いたPCR法によってもシトシン残基のメチル化を検出することができる。ここで、定量的PCRを行うことにより、メチル化されたシトシン残基の割合を測定することができる。
【0030】
あるいは、バイサルファイト処理後のDNA断片を鋳型としたPCR反応を行った後、シトシン残基又はウラシル残基を識別する制限酵素処理によりPCR増幅断片が切断されるか否かを検討することによってもシトシン残基のメチル化を検出することができる。
【0031】
[キット]
1実施形態において、本発明は、亜硫酸水素塩、及び、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドを増幅するプライマー、を含む、悪性の膵胆道系疾患を有するか否かの判定用キットを提供する。
【0032】
本実施形態のキットにより、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合を測定することができる。
【0033】
本実施形態のキットは、亜硫酸水素塩、上記の各プライマーのほかにも、cfDNA又はctDNAの抽出用試薬を更に含んでいてもよい。
【0034】
[その他の実施形態]
1実施形態において、本発明は、被験者由来の生体試料中の、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合を測定することと、前記割合が対照と比較して高い場合に、前記被験者に外科的治療を行うか、抗癌薬の有効量を投与するか、又は放射線治療を行うことと、を含む、悪性の膵胆道系疾患の治療方法を提供する。
【0035】
上述したように、発明者らは、悪性の膵胆道系疾患を有する患者由来の生体試料では、miR−1247遺伝子、miR−200a遺伝子又はmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基がメチル化されている割合が、対照における割合と比較して有意に高いことを明らかにした。したがって、これらのシトシン残基がメチル化されている割合が、対照における割合と比較して有意に高い場合、被験者は悪性の膵胆道系疾患を有すると判断することができる。
【0036】
本実施形態の治療方法において、対照、悪性の膵胆道系疾患、メチル化されたシトシン残基の割合の測定方法等は上述したものと同様である。
【0037】
抗癌薬を用いる治療としては、ゲムシタビン療法、S−1療法、ゲムシタビン+エルロチニブ療法、フォルフィリノックス療法、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法等が用いられる。
【実施例】
【0038】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実験例1]
(胆汁を用いた検討)
膵癌53例、胆道癌25例、良性膵胆道疾患20例、計98例の患者から、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)又は経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)により、胆汁を採取した。
【0040】
続いて、以下の方法により、胆汁中に含まれるDNA断片を精製し、16個のmiRNA(miR−26a1、miR−29c、miR−30d、miR−31、miR−34bc、miR−96、miR−126、miR−130b、miR−145、miR−192、miR−200a、miR−200b、miR−345、miR−615−5p、miR−1247、miR−1254−1)のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のメチル化の割合を解析した。
【0041】
まず、DNA自動抽出機器(商品名、「Maxwell RSC ccfDNA Plasma Kit」、プロメガ社)及び抽出キット(AS1480、プロメガ社)を用いて、胆汁からセルフリーDNAを抽出した。
【0042】
続いて、DNA断片のバイサルファイト(亜硫酸水素塩)処理を行った。この段階でメチル化されていないシトシン残基はウラシル残基に変換されるが、メチル化されたシトシン残基は変換されない。
【0043】
続いて、各miRNAのプロモーターのCpGアイランドを中心に数か所の標的領域でプライマーを設定し、標的領域ごとに個別にPCR増幅を行った。続いて、ライブラリー調製、テンプレート調製を行い、次世代シーケンサー(NGS)を用いてバイサルファイトシーケンスを行った。続いて、各miRNAの標的領域のシトシン残基のうちメチル化されたシトシン残基の割合をそれぞれ算出した。
【0044】
続いて、各miRNAのプロモーターに数か所ずつ設定した標的領域において、それぞれ膵癌、胆道癌、良性膵胆道疾患の3群でメチル化の割合に有意差があるかについて、t検定を用いて統計学的に検討を行った。P<0.05を有意差ありとした。
【0045】
(miR−1247)
miR−1247遺伝子のプロモーター領域を増幅するプライマーとして、配列番号4及び5に塩基配列を示すプライマーを使用した。図1Aは、膵癌患者由来の胆汁中のmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図1A中、「PC」は膵癌を示す。
【0046】
図1Bは、胆道癌患者由来の胆汁中のmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図1B中、「BTC」は胆道癌を示す。
【0047】
図1Cは、良性膵胆道疾患患者由来の胆汁中のmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図1C中、「BD」は良性膵胆道疾患を示す。
【0048】
図1A図1B図1C中、CpG No.1〜8は、それぞれ、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第26番目、第49番目、第69番目、第78番目、第89番目、第91番目、第94番目及び第104番目のシトシン残基を示す。
【0049】
その結果、胆汁を試料に用いた場合、膵癌患者及び胆道癌患者では、良性膵胆道疾患患者と比較して、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第26番目、第69番目、第78番目、第89番目及び第104番目のシトシン残基のメチル化の割合が有意に高いことが明らかとなった。
【0050】
また、胆汁を試料に用いた場合、胆道癌患者では、膵癌患者及び良性膵胆道疾患患者と比較して、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第49番目、第91番目及び第94番目のシトシン残基のメチル化の割合が有意に高いことが明らかとなった。
【0051】
(miR−200a)
miR−200a遺伝子のプロモーター領域を増幅するプライマーとして、配列番号6及び7に塩基配列を示すプライマーを使用した。図2Aは、膵癌患者由来の胆汁中のmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図2A中、「PC」は膵癌を示す。
【0052】
図2Bは、胆道癌患者由来の胆汁中のmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図2B中、「BTC」は胆道癌を示す。
【0053】
図2Cは、良性膵胆道疾患患者由来の胆汁中のmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図2C中、「BD」は良性膵胆道疾患を示す。
【0054】
図2A図2B図2C中、CpG No.1〜9は、それぞれ、配列番号2で示されるmiR−200a遺伝子のプロモーターの塩基配列における第67番目、第80番目、第86番目、第109番目、第114番目、第156番目、第166番目、第175番目及び第197番目のシトシン残基を示す。
【0055】
その結果、胆汁を試料に用いた場合、膵癌患者及び胆道癌患者では、良性膵胆道疾患患者と比較して、配列番号2で示されるmiR−200a遺伝子のプロモーターの塩基配列における第80番目、第86番目、第156番目、第175番目及び第197番目のシトシン残基のメチル化の割合が有意に高いことが明らかとなった。
【0056】
(miR−200b)
miR−200b遺伝子のプロモーター領域を増幅するプライマーとして、配列番号8及び9に塩基配列を示すプライマーを使用した。図3Aは、膵癌患者由来の胆汁中のmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図3A中、「PC」は膵癌を示す。
【0057】
図3Bは、胆道癌患者由来の胆汁中のmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図3B中、「BTC」は胆道癌を示す。
【0058】
図3Cは、良性膵胆道疾患患者由来の胆汁中のmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図3C中、「BD」は良性膵胆道疾患を示す。
【0059】
図3A図3B図3C中、CpG No.1〜12は、それぞれ、配列番号3で示されるmiR−200b遺伝子のプロモーターの塩基配列における第32番目、第44番目、第59番目、第74番目、第77番目、第105番目、第134番目、第156番目、第160番目、第167番目、第178番目及び第186番目のシトシン残基を示す。
【0060】
その結果、胆汁を試料に用いた場合、膵癌患者では、良性膵胆道疾患患者と比較して、配列番号3で示されるmiR−200b遺伝子のプロモーターの塩基配列における第74番目、第156番目、第160番目、第167番目、第178番目及び第186番目のシトシン残基のメチル化の割合が有意に高いことが明らかとなった。
【0061】
[実験例2]
(血漿を用いた検討)
膵癌29例、胆道癌9例、良性膵胆道疾患22例、計60例の患者から、血漿を採取した。
【0062】
続いて、以下の方法により、血漿中に含まれるDNA断片を精製し、miR−1247、miR−200a、miR−200bのプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のメチル化の割合を解析した。
【0063】
まず、DNA自動抽出機器(商品名、「Maxwell RSC ccfDNA Plasma Kit」、プロメガ社)及び抽出キット(AS1480、プロメガ社)を用いて、血漿からセルフリーDNAを抽出した。
【0064】
続いて、DNA断片のバイサルファイト(亜硫酸水素塩)処理を行った。この段階でメチル化されていないシトシン残基はウラシル残基に変換されるが、メチル化されたシトシン残基は変換されない。
【0065】
続いて、各miRNAのプロモーターのCpGアイランドを中心に数か所の標的領域でプライマーを設定し、標的領域ごとに個別にPCR増幅を行った。続いて、ライブラリー調製、テンプレート調製を行い、次世代シーケンサー(NGS)を用いてバイサルファイトシーケンスを行った。続いて、各miRNAの標的領域のシトシン残基のうちメチル化されたシトシン残基の割合をそれぞれ算出した。
【0066】
続いて、各miRNAのプロモーターに数か所ずつ設定した標的領域において、それぞれ膵癌、胆道癌、良性膵胆道疾患の3群でメチル化の割合に有意差があるかについて、t検定を用いて統計学的に検討を行った。P<0.05を有意差ありとした。
【0067】
(miR−1247)
miR−1247遺伝子のプロモーター領域を増幅するプライマーとして、配列番号4及び5に塩基配列を示すプライマーを使用した。図4Aは、膵癌患者由来の血漿中のmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図4A中、「PC」は膵癌を示す。
【0068】
図4Bは、胆道癌患者由来の血漿中のmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図4B中、「BTC」は胆道癌を示す。
【0069】
図4Cは、良性膵胆道疾患患者由来の血漿中のmiR−1247遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図4C中、「BD」は良性膵胆道疾患を示す。
【0070】
図4A図4B図4C中、CpG No.1〜8は、それぞれ、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第26番目、第49番目、第69番目、第78番目、第89番目、第91番目、第94番目及び第104番目のシトシン残基を示す。
【0071】
その結果、血漿を試料に用いた場合、膵癌患者及び胆道癌患者では、良性膵胆道疾患患者と比較して、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第91番目のシトシン残基のメチル化の割合が有意に高いことが明らかとなった(p=0.019)。
【0072】
また、血漿を試料に用いた場合、胆道癌患者では、良性膵胆道疾患患者と比較して、配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第91番目のシトシン残基のメチル化の割合が有意に高いことが明らかとなった(p=0.0058)。
【0073】
図5(a)は、膵癌患者及び胆道癌患者と、良性膵胆道疾患患者の、血漿中の配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第91番目のシトシン残基のメチル化の割合の測定結果を示すグラフである。図5(a)中、「*」はp<0.05で有意差が存在することを示す(p=0.019)。
【0074】
また、図5(b)は、膵癌患者及び胆道癌患者と、良性膵胆道疾患患者の、血漿中の配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第91番目のシトシン残基のメチル化の割合に基づいて作成したROC曲線である。その結果、ROC曲線下面積(AUC)は0.69と算出された。
【0075】
また、図5(a)と同様の解析を、胆道癌患者と、良性膵胆道疾患患者の、血漿中の配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第91番目のシトシン残基のメチル化の割合について行った。その結果、両者の間に有意差が存在することが明らかとなった(p=0.0058)。
【0076】
また、図5(b)と同様のROC曲線を、胆道癌患者と、良性膵胆道疾患患者の、血漿中の配列番号1で示されるmiR−1247遺伝子のプロモーターの塩基配列における第91番目のシトシン残基のメチル化の割合について作成した。その結果、ROC曲線下面積(AUC)は0.84と算出された。
【0077】
(miR−200a)
miR−200a遺伝子のプロモーター領域を増幅するプライマーとして、配列番号6及び7に塩基配列を示すプライマーを使用した。図6Aは、膵癌患者由来の血漿中のmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図6A中、「PC」は膵癌を示す。
【0078】
図6Bは、胆道癌患者由来の血漿中のmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図6B中、「BTC」は胆道癌を示す。
【0079】
図6Cは、良性膵胆道疾患患者由来の血漿中のmiR−200a遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図6C中、「BD」は良性膵胆道疾患を示す。
【0080】
図6A図6B図6C中、CpG No.1〜9は、それぞれ、配列番号2で示されるmiR−200a遺伝子のプロモーターの塩基配列における第67番目、第80番目、第86番目、第109番目、第114番目、第156番目、第166番目、第175番目及び第197番目のシトシン残基を示す。
【0081】
その結果、血漿を試料に用いた場合には、膵癌患者、胆道癌患者、良性膵胆道疾患患者の3群でメチル化の割合に有意差は認められなかった。
【0082】
(miR−200b)
miR−200b遺伝子のプロモーター領域を増幅するプライマーとして、配列番号8及び9に塩基配列を示すプライマーを使用した。図7Aは、膵癌患者由来の血漿中のmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図7A中、「PC」は膵癌を示す。
【0083】
図7Bは、胆道癌患者由来の血漿中のmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図7B中、「BTC」は胆道癌を示す。
【0084】
図7Cは、良性膵胆道疾患患者由来の血漿中のmiR−200b遺伝子のプロモーターのCpGアイランドにおけるシトシン残基のうち、メチル化されたシトシン残基の割合の測定結果を示す表である。最も左の列は患者番号を示す。図7C中、「BD」は良性膵胆道疾患を示す。
【0085】
図7A図7B図7C中、CpG No.1〜12は、それぞれ、配列番号3で示されるmiR−200b遺伝子のプロモーターの塩基配列における第32番目、第44番目、第59番目、第74番目、第77番目、第105番目、第134番目、第156番目、第160番目、第167番目、第178番目及び第186番目のシトシン残基を示す。
【0086】
その結果、血漿を試料に用いた場合には、膵癌患者、胆道癌患者、良性膵胆道疾患患者の3群でメチル化の割合に有意差は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、悪性の膵胆道系疾患を判定する技術を提供することができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]