【解決手段】カラーの画像データを重なり領域を含むように分割して複数の分割画像データを取得し、各分割画像データに基づいて取得された被補正データにおける重なり領域の各データ値を、補正テーブル群を用いて補正し、得られた補正データに基づいてパノラマプリントを実行させる。補正テーブル群が、副走査方向に沿って配列された複数のラインの各々と対応付けられた補正テーブルTを備えており、各補正テーブルTにおいて、色空間に規定される座標値のいずれかと対応する番地ごとに、補正係数が保持されている。そして、被補正データの各データ値が、その色空間上の座標値と対応する番地に保持されている補正係数を用いて補正されることによって、濃度の低減と色彩の調整の両方が一度になされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の通り、熱転写プリンタでカラープリントを行う場合は、Y、M、Cの各色の染料がこの順で記録媒体上に積層されるところ、パノラマプリントにおいて分割画像が重ね合わされる部分には各色の染料の転写が2回行われることになるため、Y、M、Cの各色の染料がこの順で積層された部分の上に、Y、M、Cの各色の染料がこの順でさらに積層されることになる。このように、本来とは異なる順序で各色の染料が積層されると、色調の崩れが生じてしまう。ただし、ここでいう「色調の崩れ」とは、色の3要素である「濃度」「色相」および「彩度」の全てが変わってしまうことを意味している。
【0009】
また、分割画像が重ね合わされる部分では、既に各色の染料が転写されている記録媒体に対して、さらに各色の染料の転写が行われるため、インクのキックバック現象(記録媒体に既に転写されている染料が後の転写の際の印加エネルギーによってインクリボンに移ってしまう現象)も生じてしまう。これも、色調の崩れを生じさせる原因の1つになってしまう。
【0010】
このように、分割画像が重ね合わされる部分は、濃度が局所的に高くなるだけではなく、色相および彩度(以下、「色彩」という)も他の部分と異なるものとなってしまう。したがって、カラーのパノラマプリントにおいて、該重ね合わされる部分の不連続感・違和感を解消するためには、特許文献1のように濃度を調整するための処理では不十分である。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、カラーのパノラマプリントにおいて、簡易な構成で、複数回のプリントが重ね合わされる部分を適切に表現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0013】
すなわち、本発明に係る熱転写プリンタの制御方法は、
カラーの画像データを、互いに重複する重なり領域を含むように分割して、複数の分割画像データを取得する分割工程と、
前記複数の分割画像データの各々に基づいて取得された被補正データにおける前記重なり領域の各データ値を、補正テーブル群を用いて補正して補正データを取得する、重なり領域補正工程と、
第1の分割画像データに基づいて取得された第1の補正データに基づいてプリント動作を行わせ、該プリントされた領域における副走査方向について隣の領域に、前記重なり領域を重ならせつつ、第2の分割画像データに基づいて取得された第2の補正データに基づいてプリント動作を行わせる、パノラマプリント工程と、
を備え、
前記補正テーブル群が、複数の補正テーブルを備え、
前記複数の補正テーブルの各々が、前記副走査方向に沿って配列された複数のラインの各々と対応付けられており、
各補正テーブルにおいて、色空間に規定される座標値のいずれかと対応する番地ごとに、補正係数が保持されており、
前記被補正データにおける前記重なり領域の各データ値が、その色空間上の座標値と対応する番地に保持されている補正係数を用いて補正されることによって、濃度の低減と色彩の調整の両方が一度になされるように構成されている、
ことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、被補正データにおける重なり領域の各データ値が、その色座標値(すなわち、濃度と色彩の1個の組み合わせ)と対応して規定された補正係数を用いて補正されるので、各データ値の濃度と色彩の両方を適切に調整することができる。また、濃度の低減と色彩の調整が一度の補正でなされることにより、処理負担が小さくなり、処理時間も短くてすむ。さらに、濃度と色彩は互いに独立して変化させることが難しく、濃度の低減と色彩の調整を個別の補正(すなわち、別工程の補正)で行おうとすると、両補正が相互に干渉して適切な補正を実現できない(あるいは、適切な補正を実現するための調整作業が非常に煩雑となる)が、濃度の低減と色彩の調整が一度の補正でなされることにより、簡易な調整作業で、適切な補正を実現することが可能となる。このように、上記の構成によると、簡易な構成で、複数回のプリントが重ね合わされる部分を適切に表現することができる。
【0015】
好ましくは、前記熱転写プリンタの制御方法において、
前記第1の補正データを取得する際に用いられる第1の補正テーブル群が備える複数の補正テーブルにおいて、同じ番地に保持される各補正係数が、ラインの昇順で濃度の減少幅を大きくするような係数曲線から規定されるものであり、
前記第2の補正データを取得する際に用いられる第2の補正テーブル群が備える複数の補正テーブルにおいて、同じ番地に保持される各補正係数が、ラインの昇順で濃度の減少幅を小さくするような係数曲線から規定されるものである、
ことを特徴とする。
【0016】
この構成によると、第1の補正データは、重なり領域において、ラインの昇順で濃度の減少幅が大きくなるように濃度が低減されたものとなり、第2の補正データは、重なり領域において、ラインの昇順で濃度の減少幅が小さくなるように濃度が低減されたものとなる。これによって、複数回のプリントが重ね合わされる部分に濃度の不連続感が生じることを適切に防止できる。
【0017】
好ましくは、前記熱転写プリンタの制御方法において、
前記複数の補正テーブルにおいて、各番地に保持される各補正係数が、番地毎に個別に規定された係数曲線に基づいて規定されるものである、
ことを特徴とする。
【0018】
この構成によると、番地毎に個別に係数曲線が規定されるので、被補正データに含まれる各データ値を、その色に応じて個別に規定された補正の態様で補正することができる。
【0019】
好ましくは、前記熱転写プリンタの制御方法において、
前記第1の補正テーブル群と前記の第2の補正テーブル群のうちの一方の補正テーブル群が備える複数の補正テーブルにおいて、各番地に保持される各補正係数が、番地毎に個別に規定された係数曲線に基づいて規定されるものであり、
他方の補正テーブル群が備える複数の補正テーブルにおいて、各番地に保持される各補正係数が、番地間で共通の係数曲線に基づいて規定されるものである、
ことを特徴とする。
【0020】
この構成によると、一方の補正テーブル群のみにおいて、各番地の係数曲線が個別に規定されるので、適切な係数曲線を簡易かつ速やかに特定することができる。
【0021】
好ましくは、前記熱転写プリンタの制御方法において、
前記補正テーブルにおける一部の番地が代表番地とされ、前記代表番地に保持される補正係数を規定する係数曲線が、オペレータによる調整作業に基づいて規定されたものであり、
前記代表番地以外の番地に保持される補正係数を規定する係数曲線が、前記代表番地に保持される補正係数を規定する係数曲線に基づいて算出されることにより規定されたものである、
ことを特徴とする。
【0022】
この構成によると、オペレータは、全ての番地について、その係数曲線を規定するための調整作業を行う必要がないので、該調整作業に係るオペレータの負担が低減される。
【0023】
また、本発明は、熱転写プリンタも対象としている。すなわち、本発明に係る熱転写プリンタは、
補正テーブル群を記憶する記憶装置と、
カラーの画像データを、互いに重複する重なり領域を含むように分割して、複数の分割画像データを取得する画像データ分割部と、
前記複数の分割画像データの各々に基づいて取得された被補正データにおける前記重なり領域の各データ値を、前記補正テーブル群を用いて補正して補正データを取得する、重なり領域補正部と、
第1の分割画像データに基づいて取得された第1の補正データに基づいてプリント動作を行わせ、該プリントされた領域における副走査方向について隣の領域に、前記重なり領域を重ならせつつ、第2の分割画像データに基づいて取得された第2の補正データに基づいてプリント動作を行わせる、パノラマプリント制御部と、
を備え、
前記補正テーブル群が、複数の補正テーブルを備え、
前記複数の補正テーブルの各々が、前記副走査方向に沿って配列された複数のラインの各々と対応付けられており、
各補正テーブルにおいて、色空間に規定される座標値のいずれかと対応する番地ごとに、補正係数が保持されており、
前記被補正データにおける前記重なり領域の各データ値が、その色空間上の座標値と対応する番地に保持されている補正係数を用いて補正されることによって、濃度の低減と色彩の調整の両方が一度になされるように構成されている、
ことを特徴とする。
【0024】
この構成によると、簡易な構成で、複数回のプリントが重ね合わされる部分を適切に表現することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、カラーのパノラマプリントにおいて、簡易な構成で、複数回のプリントが重ね合わされる部分を適切に表現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
<1.熱転写プリンタ>
<1−1.構成>
実施形態に係る熱転写プリンタの構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、熱転写プリンタ1の要部の構成を模式的に示す図である。
【0029】
熱転写プリンタ1は、サーマルヘッド11と、記録媒体供給部12と、インクリボン供給部13と、制御部14と、を備える。
【0030】
サーマルヘッド11は、通電されることにより発熱する発熱素子111を複数備える。複数の発熱素子111は一列に並んで配列されており、サーマルヘッド11は、発熱素子111の配列方向を主走査方向に沿わせるような姿勢で配置される。
【0031】
記録媒体供給部12は、記録媒体2を副走査方向に搬送して、サーマルヘッド11に供給する。記録媒体2は、例えば、紙、樹脂フィルム、等である。
【0032】
インクリボン供給部13は、染料(顔料であってもよい)を塗布した熱転写シートであるインクリボン3を、副走査方向に搬送して、サーマルヘッド11に供給する。ただし、インクリボン3の搬送経路は、記録媒体2の搬送経路の上方に規定される。
【0033】
インクリボン3には、複数の単位塗布領域30が配列されており、各単位塗布領域30に、Y(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)の有色三原色の染料、および、保護層であるOP層(オーバーコート層)の形成材料が、この順で繰り返し塗布されている。
【0034】
制御部14は、熱転写プリンタ1が備える各部11〜13を制御して、一連のプリント動作等を実行させる。制御部14の実体は、各種のモジュールが実装されたプリント基板であり、該プリント基板に、中央演算処理装置であるCPU、RAM等から構成されるメモリ、EEPROM等から構成される記憶装置140(
図2参照)、外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯型情報端末、カメラ、等)との通信を行う通信インターフェイス、熱転写プリンタ1が備える各部11〜13等を制御して一連のプリント動作を実行させるためのドライバモジュール、後述する各機能部101〜107(
図2参照)を実現するための回路モジュール、等が実装される。もっとも、各機能部101〜107は、CPUが記憶装置140に格納されたプログラムをメモリに読み出して実行することによって実現されてもよい(すなわち、ソフトウェア的に実現されてもよい)。
【0035】
<1−2.プリント動作>
次に、熱転写プリンタ1において行われるプリント動作の概要について、引き続き
図1を参照しながら説明する。
【0036】
まず、サーマルヘッド11の下方に、インクリボン3におけるY色の染料が塗布された単位塗布領域30の一端が配置される。この状態で、主走査方向に配列されている複数の発熱素子111の各々が通電により発熱することにより、1ライン分のY色の染料が記録媒体2に転写される。その後、記録媒体2がインクリボン3とともに副走査方向に移動されつつ1ライン毎の転写が繰り返される。
【0037】
サーマルヘッド11の下方に、M色の染料が塗布された単位塗布領域30の一端が到達すると、記録媒体2が初期位置まで戻された上で、上記の動作が繰り返される。これによって、Y色の染料が転写されている領域の上に、M色の染料が転写される。
【0038】
サーマルヘッド11の下方に、C色の染料が塗布された単位塗布領域30の一端が到達すると、再び記録媒体2が初期位置まで戻された上で、上記の動作が繰り返される。これによって、M色の染料が転写されている領域の上に、C色の染料が転写される。つまり、Y、M、Cの各色の染料がこの順で記録媒体2上に積層される。
【0039】
サーマルヘッド11の下方に、OP層の形成材料が塗布された単位塗布領域30の一端が到達すると、再び記録媒体2が初期位置まで戻された上で、上記の動作が繰り返される。これによって、各色の染料が転写されている領域の上に、オーバーコート層が形成される。
【0040】
ここで、各発熱素子111は1個のドットに対応し、各発熱素子111が駆動されるパルス値が大きいほど、発熱素子111にかかる印加エネルギー大きくなって発熱素子111の発熱量が大きくなり、記録媒体2に転写される染料の厚みが増す。つまり、転写される染料の厚みは、発熱素子111が駆動される際のパルス値によって規定される。一方で、各ドットに表現される色は、各色の染料の厚みの比に応じたものとなる。したがって、Y色(あるいは、M色、C色)の染料を転写する際のパルス値が、画像データの対応する画素におけるY成分(あるいは、M成分、C成分)の値に応じたものとされることによって、該画素と対応するドットに、該画素で規定される色と合致する色が表現される。
【0041】
<2.パノラマプリントに関する機能構成>
熱転写プリンタ1では、1回のプリント動作によって、記録媒体2に、インクリボン3の単位塗布領域30に相当する画像をプリントすることができる。この実施形態に係る熱転写プリンタ1は、1個の画像を分割した各分割画像を、記録媒体2上における隣り合う位置に次々とプリントすることで、単位塗布領域30よりも大きな画像を記録媒体2に表現する機能(パノラマプリント機能)を備える。パノラマプリント機能について、
図2、
図3を参照しながら説明する。
図2は、パノラマプリント機能に係る機能ブロックを示す図である。
図3は、パノラマプリント機能を説明するための図である。
【0042】
熱転写プリンタ1は、パノラマプリント機能に係る機能ブロックとして、画像データ取得部101と、画像データ分割部102と、座標変換部103と、単色分解部104と、パルス変換部105と、重なり領域補正部106と、パノラマプリント制御部107と、を備える。上記の通り、これらの各機能部101〜107は、制御部14に実装された回路モジュールによって実現されてもよいし、制御部14において、CPUが、記憶装置140に格納されたプログラムをメモリに読み出して実行することによりソフトウェア的に実現されてもよい。
【0043】
画像データ取得部101は、パノラマプリントするべきカラーの画像データ(パノラマ画像データ)Dを取得して、これを記憶装置140に格納する(
図3(a))。パノラマ画像データDは、例えば、外部機器から、通信インターフェイスを介して取得される。
【0044】
画像データ分割部102は、パノラマ画像データDを、複数の分割画像データDi(i=1,2,・・)に分割する(
図3(b))。各分割画像データDiは、インクリボン3の単位塗布領域30に対応するサイズであって、副走査方向の端部に互いに重複する重なり領域Wを含むものとされる。
【0045】
例えば、パノラマ画像データDの幅(副走査方向の長さ)が、インクリボン3の単位塗布領域30の幅(単位幅)d30の2倍である場合、
図4に示すように、画像データ分割部102は、まず、パノラマ画像データDの副走査方向の一方の端部から、所定幅Δdの部分を除去し、該部分を除いた端部から単位幅d30分の領域を、1個目の分割画像データD1とする。同様に、画像データ分割部102は、パノラマ画像データDの副走査方向の他方の端部から、所定幅Δdの部分を除去し、該部分を除いた端部から単位幅d30分の領域を、2個目の分割画像データD2とする。これにより、パノラマ画像データDが、インクリボン3の単位塗布領域30に対応するサイズであって、副走査方向の端部に、互いに重複する重なり領域Wを含むように分割されて、2個の分割画像データD1,D2が取得される。以下において、2個の分割画像データD1,D2を区別しない場合は、単に、「分割画像データDi(i=1,2)」とよぶ。
【0046】
座標変換部103は、各分割画像データDi(i=1,2)を、各画素のデータ値が、YMC色空間の座標値(色座標値)で表現された画像データ(色座標画像データ)Ki(i=1,2)に変換する(
図3(c))。YMC色空間は、
図5に示されるように、Y、M、Cの各軸によって規定される3次元空間であり、色座標値は、各軸について0〜255の数値範囲と対応する立方体領域Vを255
3個の部分空間に分割する格子点(すなわち、256
3個の格子点)のいずれかに対応する。
【0047】
単色分解部104は、各色座標画像データKi(i=1,2)を、単色成分のデータ値のみを保持する3個の画像データに分解する(
図3(d))。すなわち、単色分解部104は、色座標画像データKiにおける各画素のデータ値(色座標値)からY成分のみを抽出して、各画素についてY値のみを保持する画像データ(単色画像データKi(Y))を取得する。同様に、色座標画像データKiにおける各画素のデータ値からM成分のみを抽出して、各画素についてM値のみを保持する画像データ(単色画像データKi(M))を取得する。同様に、色座標画像データKiにおける各画素のデータ値からC成分のみを抽出し、各画素についてC値のみを保持する画像データ(単色画像データKi(C))を取得する。
【0048】
パルス変換部105は、各色座標画像データKi(i=1,2)から取得された単色画像データKi(Y),Ki(M),Ki(C)(i=1,2)の各々について、各画素に保持されるY値、M値、あるいはC値を、サーマルヘッド11の発熱素子111を駆動する際のパルス値に変換する(
図3(e))。上記の通り、発熱素子111を駆動する際のパルス値が大きいほど、記録媒体2に転写される染料の厚みが大きくなり、大きなY値(あるいはM値、C値)、すなわち、高濃度のY色(あるいはM色、C色)が表現される。そこで、パルス変換部105は、各単色画像データKi(Y),Ki(M),Ki(C)(i=1,2)の各画素のデータ値を、Y値(あるいはM値、C値)が大きいほど大きなパルス値となるように、変換する。
【0049】
Y値(あるいはM値、C値)をパルス値へ変換するにあたっては、記憶装置140に記憶された各色の変換曲線が用いられる。すなわち、パルス変換部105は、Y色の単色画像データKi(Y)(i=1,2)の各画素に保持されるY値を、Y色用の変換曲線を用いてパルス値に変換することにより、各画素についてY色の染料を転写する際に用いるパルス値を規定した画像データ(パルス画像データPi(Y)(i=1,2))を取得する。同様に、M色の単色画像データKi(M)(i=1,2)の各画素に保持されるM値を、M色用の変換曲線を用いてパルス値に変換することにより、各画素についてM色の染料を転写する際に用いるパルス値を規定した画像データ(パルス画像データPi(M)(i=1,2))を取得する。同様に、C色の単色画像データKi(C)(i=1,2)の各画素に保持されるC値を、C色用の変換曲線を用いてパルス値に変換することにより、各画素についてC色の染料を転写する際に用いるパルス値を規定した画像データ(パルス画像データPi(C)(i=1,2))を取得する。以下において、各色のパルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)を区別しない場合は、単に、「パルス画像データPi(i=1,2)」とよぶ。
【0050】
上記の通り、各分割画像データD1,D2は、互いに重複する重なり領域Wを含んでいる。したがって、一方の分割画像データD1に基づいて取得されたパルス画像データP1と、他方の分割画像データD2に基づいて取得された同じ色のパルス画像データP2とは、重なり領域Wに同じデータ値(パルス値)を保持している。したがって、仮に、パルス変換部105によって取得されたパルス画像データPi(i=1,2)をそのまま用いてパノラマプリント動作が行われたとすると、重なり領域Wに、適正量の印加エネルギーが2回与えられることとなってしまい(
図6(a))、重なり領域Wが局所的に濃く表現されてしまう。また、パルス画像データPi(i=1,2)をそのまま用いてパノラマプリント動作が行われると、染料の積層構造やキックバック現象に起因した色調の崩れも回避することができない。
【0051】
重なり領域補正部106は、各色について重なり領域Wに与えられる印加エネルギーがトータルで適正量となって、適正な濃度および色彩が表現されるように(
図6(b))、各パルス画像データPi(i=1,2)の重なり領域Wの各データ値(パルス値)を補正する(
図3(f))。重なり領域補正部106が行う補正の態様については後に説明する。以下において、各パルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)が、重なり領域補正部106によって補正されることによって取得されたデータを、「補正パルス画像データEi(Y),Ei(M),Ei(C)(i=1,2)」とよぶ。また、各色の補正パルス画像データEi(Y),Ei(M),Ei(C)を区別しない場合は、単に、「補正パルス画像データEi(i=1,2)」とよぶ。
【0052】
パノラマプリント制御部107は、熱転写プリンタ1が備える各部11〜13を制御して、一連のパノラマプリント動作を実行させる。具体的には、パノラマプリント制御部107は、一方の分割画像データD1に基づいて取得された補正パルス画像データE1を用いてサーマルヘッド11を駆動制御して、1回目のプリント動作を行わせ、その後、該プリントされた領域の隣に、重なり領域Wを重ならせつつ、他方の分割画像データD2に基づいて取得された補正パルス画像データE2を用いてサーマルヘッド11を駆動制御して、2回目のプリント動作を行わせる。これにより記録媒体2にパノラマ画像データDがプリントされる(
図3(g))。
【0053】
<3.重なり領域に係る補正>
次に、重なり領域補正部106について説明する。重なり領域補正部106は、上記の通り、各色について重なり領域Wに与えられる印加エネルギーがトータルで適正量となって、適正な濃度および色彩が表現されるように、各パルス画像データPi(i=1,2)の重なり領域Wの各データ値を補正する。
【0054】
<3−1.補正テーブル群>
重なり領域補正部106は、各パルス画像データPi(i=1,2)における、重なり領域Wの各データ値を、記憶装置140に格納された2個の補正テーブル群TG1,TG2(
図2)を用いて補正する。
図7には、一方の補正テーブル群TG1を説明するための図が示されており、
図8には、他方の補正テーブル群TG2を説明するための図が示されている。以下において、2個の補正テーブル群TG1,TG2を区別しない場合は、単に、「補正テーブル群TGi(i=1,2)」とよぶ。
【0055】
各補正テーブル群TGi(i=1,2)は、Y色に対応する単色補正テーブル集合TS(Y)と、M色に対応する単色補正テーブル集合TS(M)と、C色に対応する単色補正テーブル集合TS(C)と、を備える。以下において、各色の単色補正テーブル集合TS(Y),TS(M),TS(C)を区別しない場合は、単に、「単色補正テーブル集合TS」とよぶ。
【0056】
単色補正テーブル集合TSは、複数の補正テーブルT,T,・・・を備えている。複数の補正テーブルT,T,・・・の各々は、重なり領域Wにおいて、副走査方向に沿って配列された複数のラインLjの各々と対応付けられる。
【0057】
ここで、重なり領域Wは、多数のラインLj(j=1,2,・・・,n(図の例ではn=600))により規定されるところ、これら多数のラインLjの全てに対応する補正テーブルTが保持される必要はない。ここでは、該複数のラインLj(j=1,2,・・・,600)のうち、所定数本(ここでは例えば、50本)おきのラインL1,L50,L100,・・・,L600が代表ラインとして選択され、各代表ラインLj(j=1,50,100,・・・,600)に対応する補正テーブルTが保持される。つまり、代表ラインLjの総数がN個であるとすると、単色補正テーブル集合TSはN個の補正テーブルT,T,・・・を備え、これらの各々がいずれかの代表ラインLjと対応付けられる。
【0058】
各補正テーブルTには、
図9に示すように、YMC色空間に規定される座標値(色座標値)のいずれかと対応する番地Gが規定されており、番地Gごとに補正係数が保持されている。ただし、補正テーブルTにおいては、YMC色空間に規定される256
3個の色座標値の全てが、補正係数が保持される番地Gとされる必要はない。ここでは、
図9に示されるように、YMC色空間に規定される立方体領域Vが、M
3個(ただし、Mは、「255」より小さい任意の数であり、図の例ではM=10)の部分空間に分割する格子が規定され、その各格子点に相当する色座標値だけが、補正係数が保持される番地Gとされる。
【0059】
<3−2.係数曲線>
次に、各番地に保持される補正係数の値を規定する態様について、引き続き
図7、
図8を参照しながら説明する。
【0060】
上記の通り、単色補正テーブル集合TSは、複数の補正テーブルT,T,・・・を備えており、該複数の補正テーブルT,T,・・・の各々は、いずれかの代表ラインLj(j=1,50,100,・・・,600)と対応付けられている。以下において、j番目の代表ラインLj(j=1,50,100,・・・,600)と対応付けられる補正テーブルTを、「補正テーブルTj」とよぶ。
【0061】
単色補正テーブル集合TSが備える複数の補正テーブルTj(j=1,50,100,・・・,600)の各々から、同じ番地に保持されている各補正係数を取り出して、ライン順にプロットすると、各補正係数は、予め設定された係数曲線R上に配置される。つまり、ある番地に保持される各補正係数の値を規定するにあたっては、まず、その番地についての係数曲線Rが設定され、該係数曲線Rと各ラインLjの交点に相当する値が、該ラインLjと対応する補正テーブルTjにおける該番地の補正係数として保持される。
【0062】
したがって、補正テーブルTjが備える番地の総数がU個であるすると、単色補正テーブル集合TSには、U個の係数曲線Rが設定されており、各係数曲線Rに基づいて各番地の補正係数が規定される。
【0063】
上記の通り、各補正テーブル群TGiには、各々がY、M、Cの各色に対応する3個の単色補正テーブル集合TSが含まれている。したがって、各補正テーブル群TGiには、(3×U)個の係数曲線Rが設定されていることになる。
【0064】
2個の補正テーブル群TG1,TG2のうちの一方の補正テーブル群(第1の補正テーブル群)TG1(
図7)においては、単色補正テーブル集合TSに設定されるU個の係数曲線Rが、番地間で共通のもの(すなわち、互いに同じもの)となっている。つまり、各番地に保持される補正係数は、すべて同じ係数曲線Rに基づいて規定されている。例えば、(Y,M,C)=(255,255,255)=(黒色)に相当する番地(黒番地)G1に保持されている各補正係数がプロットされる係数曲線R1と、(Y,M,C)=(128,128,128)=(灰色)に相当する番地(灰色番地)G2に保持されている各補正係数がプロットされる係数曲線R2は、一致する。他の任意の番地Gu(u=1,2,・・・,U)に保持されている各補正係数がプロットされる係数曲線Ruも、該係数曲線R1,R2と一致する。全ての番地に保持される補正係数が同じ係数曲線Rから規定されるということは、各補正テーブルTjにおいて、全ての番地に同じ値の補正係数が保持されることを意味している。
【0065】
また、第1の補正テーブル群TG1においては、Y色に対応する単色補正テーブル集合TS(Y)に設定される係数曲線Rと、M色に対応する単色補正テーブル集合TS(M)に設定される係数曲線Rと、C色に対応する単色補正テーブル集合TS(C)に設定される係数曲線Rとが、全て一致する。つまり、各色の単色補正テーブル集合TS(Y),TS(M),TS(C)が、同じ係数曲線Rから規定される。これは、同じラインLjに対応する各色の補正テーブルTjに保持される補正係数が、同じ値であることを意味している。
【0066】
一方、2個の補正テーブル群TG1,TG2のうちの他方の補正テーブル群(第2の補正テーブル群)TG2(
図8)においては、単色補正テーブル集合TSに設定されるU個の係数曲線Rが、番地毎に個別に規定されたものとなっており、互いに一致するとは限らない。例えば、黒番地G1に保持されている各補正係数がプロットされる係数曲線R1と、灰色番地G2に保持されている各補正係数がプロットされる係数曲線R2は、それぞれ個別に規定されたものであり、互いに一致しない。他の任意の番地Gu(u=1,2,・・・,U)に保持されている各補正係数がプロットされる係数曲線Ruも、これらの係数曲線R1,R2とは別に規定されたものであり、各係数曲線R1,R2,Ruは一致するとは限らない。各番地に保持される補正係数が個別の係数曲線Rから規定されるということは、各補正テーブルTjにおいて、各番地に同じ値の補正係数が保持されるとは限らないことを意味している。
【0067】
また、第2の補正テーブル群TG2においては、同じ番地(例えば黒番地G1)に着目したときに、Y色に対応する単色補正テーブル集合TS(Y)において該番地G1に保持される補正係数を規定する係数曲線R1と、M色に対応する単色補正テーブル集合TS(M)において該番地G1保持される補正係数を規定する係数曲線R1と、C色に対応する単色補正テーブル集合TS(C)において該番地G1に保持される補正係数を規定する係数曲線R1は、それぞれ個別に規定されたものであり、一致するとは限らない。つまり、あるラインLjについてY色に対応する補正テーブルTjのある番地に保持される補正係数と、該ラインLjについてM色に対応する補正テーブルTjの該番地に保持される補正係数と、該ラインLjについてC色に対応する補正テーブルTjの該番地に保持される補正係数とが、互いに同じであるとは限らない。
【0068】
<3−3.補正の態様>
次に、各補正テーブル群TGiについて規定される係数曲線Rと、各補正テーブル群TGiを用いて実現される補正の態様について、引き続き
図7、
図8を参照しながら説明する。
【0069】
第1の補正テーブル群TG1の各単色補正テーブル集合TSが備える複数の補正テーブルT,T,・・・の各番地に保持される補正係数を規定する係数曲線(すなわち、共通の係数曲線)Rは、ラインの昇順で、0〜1の範囲(あるいは、それより僅かに小さな範囲)で、なだらかに減少するような曲線とされる。一方、第2の補正テーブル群TG2の各単色補正テーブル集合TSが備える複数の補正テーブルT,T,・・・の各番地に保持される補正係数を規定する係数曲線(すなわち、それぞれが個別に規定された(3×U)個の係数曲線)Rはいずれも、ラインの昇順で、0〜1の範囲(あるいは、それより僅かに小さな範囲)で、なだらかに増加するような曲線とされる。
【0070】
ここで、パルス画像データPiは、いずれかの補正テーブル群TGiが備えるいずれかの単色補正テーブル集合TSを用いて補正される。さらに、該パルス画像データPiの重なり領域Wのデータ値は、該単色補正テーブル集合TSが備えるN個の補正テーブルT,T,・・・のうち、該データ値のライン数に応じた補正テーブルTjを用いて補正される。さらに、各データ値は、該補正テーブルTjにおける、該データ値の色座標値と対応する番地に保持されている補正係数を用いて補正される。
【0071】
したがって、第1の補正テーブル群TG1を用いて補正された場合、パルス画像データPiは、重なり領域Wのデータ値(パルス値)が、ラインの昇順で減少幅が大きくなるように補正されることになる。これは、ラインの昇順で濃度の減少幅が大きくなるように補正されることを意味する。また、第2の補正テーブル群TG2を用いて補正された場合、パルス画像データPiは、重なり領域Wのデータ値が、ラインの昇順で減少幅が小さくなるように補正されることになる。これは、ラインの昇順で濃度の減少幅が小さくなるように補正されることを意味する。
【0072】
ここでは、先のプリント動作で用いられる分割画像データ(すなわち、下塗り側の分割画像データ)D1に基づいて取得されたパルス画像データP1は、第1の補正テーブル群TG1を用いて補正され、後のプリント動作で用いられる分割画像データ(すなわち、上塗り側の分割画像データ)D2に基づいて取得されたパルス画像データP2は、第2の補正テーブル群TG2を用いて補正される。つまり、下塗り側のパルス画像データP1は、重なり領域Wのデータ値(パルス値)が、ラインの昇順で濃度の減少幅が大きくなるように補正され、上塗り側の各パルス画像データP2は、重なり領域Wのデータ値が、ラインの昇順で濃度の減少幅が小さくなるように補正される((
図3(f))参照)。
【0073】
また、各パルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)は、対応する補正テーブル群TGiにおける対応する色の単色補正テーブル集合TS(Y),TS(M),TS(C)を用いて補正される。
【0074】
上記の通り、第1の補正テーブル群TG1に設定される(3×U)個の係数曲線Rは、全て同じものである。したがって、第1テーブル群TG1では、同じラインLjの同じ番地において、Y色に対応する補正テーブルTjと、M色に対応する補正テーブルTjと、C色に対応する補正テーブルTjとで、互いに同じ補正係数が保持される。これは、第1の補正テーブル群TG1が備える各色の単色補正テーブル集合TS(Y),TS(M),TS(C)を用いて補正された場合、補正の前後において、各色(ここでいう「色」は、各色座標値から規定される色を差す)の成分比が維持される(すなわち、基本的に、色彩が維持されつつ濃度だけが変更される)ことを意味している。また、第1テーブル群TG1では、各補正テーブルTjにおいて、各番地に同じ値の補正係数が保持される。これは、同一のラインLjにある限り、全ての色が、同じ低減幅で濃度を低減されることを意味している。
【0075】
一方、第2の補正テーブル群TG2に設定される(3×U)個の係数曲線Rは、それぞれ個別に規定されたものであり、互いに一致するとは限らない。したがって、第2テーブル群TG2では、同じラインLjの同じ番地であっても、Y色に対応する補正テーブルTjと、M色に対応する補正テーブルTjと、C色に対応する補正テーブルTjとで、互いに異なる補正係数が保持されることがある。これは、第2の補正テーブル群TG2が備える各色の単色補正テーブル集合TS(Y),TS(M),TS(C)を用いて補正された場合、補正の前後において、各色の成分比が変更される(すなわち、濃度と色彩の両方が変更される)ことを意味している。また、第2テーブル群TG2では、各補正テーブルTjにおいて、各番地に異なる値の補正係数が保持される。これは、同一のラインLjにあっても、全ての色が、同じ低減幅で濃度を低減されるわけではないことを意味している。また、各色の成分比が一律に変更されるのではなく、各色の成分比が、色毎に規定された態様で、変更されることを意味している。
【0076】
このように、第2の補正テーブル群TG2を用いて補正されることにより、パルス画像データP2の重なり領域Wのデータ値に対して、濃度の低減と色彩の調整の両方が一度になされることとなる。後述するように、第2の補正テーブル群TG2に係る各係数曲線Rが適切に調整されたものとされることによって、複数回のプリントが重ね合わされる部分に適正な濃度および色彩が表現されるような補正が実現される。
【0077】
<3−4.係数曲線の規定態様>
第2の補正テーブル群TG2に設定される(3×U)個の係数曲線Rを規定する態様について、
図8、
図9に加え、
図10を参照しながら説明する。
図10は、代表番地Gtを選択する態様を説明するための図である。
【0078】
係数曲線Rを規定するにあたっては、まず、補正テーブルTに規定される各番地Gのうちの一部が、代表番地として選択される。ここでは例えば、YMC色空間に規定される立方体領域Vの各辺上にある各番地Gと(
図10(a))、YMC色空間の原点(Y,M,C)=(0,0,0)=(白色)と立方体領域Vの各頂点とを結ぶ線上にある各番地Gと(
図10(b))、原点から最も遠い頂点(Y,M,C)=(255,255,255)=(黒色)と各頂点とを結ぶ線上にある各番地Gとが(
図11(c))、代表番地Gtとして選択される。
【0079】
代表番地Gtが選択されると、続いて、各代表番地Gtに保持される各補正係数を規定するための係数曲線Rが、オペレータのトライアルアンドエラーによる調整作業によって規定される。
【0080】
例えば、各色の単色補正テーブル集合TS(Y),TS(M),TS(C)の黒番地G1に保持される各補正係数を規定するための各係数曲線R1を規定するにあたっては、まず、適宜の係数曲線R1が仮に設定され、これに基づいて各補正係数が算出されて、第2の補正テーブル群TG2が取得される。そして、これを用いて、黒番地G1に相当する色(すなわち黒)のべた塗りのパノラマ画像データDのパノラマプリントが実行される。
【0081】
オペレータは、パノラマプリントされた画像の重なり領域Wの濃度および色彩を見て、これが適正なものとなるように各単色補正テーブル集合TS(Y),TS(M),TS(C)の係数曲線R1を修正する。例えば、あるラインに黄色味が強く現れている場合は、Y色用の単色補正テーブル集合TS(Y)について設定されている係数曲線R1における該ラインの近傍の部分を下方に修正する。
【0082】
新たな係数曲線R1が設定されると、これに基づいて各補正係数が算出されて、新たな第2の補正テーブル群TG2が取得される。その後、これを用いてもう一度同じパノラマ画像データDのパノラマプリントが実行される。このような作業が、重なり領域Wの全体で適切な濃度および色彩が表現されるような補正テーブル群TG2が得られるまで繰り返されることによって、各単色補正テーブル集合TS(Y),TS(M),TS(C)の係数曲線R1が規定される。同様にして、全ての代表番地Gtの各々について、係数曲線Rが個別に規定される。
【0083】
ただし、このような調整作業が行われる際に、第1の補正テーブル群TG1は変更されない。すなわち、第1の補正テーブル群TG1については、適宜の係数曲線Rが設定され、これに基づいて各補正係数が算出されて、第1の補正テーブル群TG1が取得されると、これが以後変更されることなく用いられる。第1の補正テーブル群TG1側の係数曲線Rを固定しつつ、第2の補正テーブル群TG2側の係数曲線Rだけを変更ながら調整作業を行うことで、適切な係数曲線Rを速やかに特定することができる。
【0084】
複数の代表番地Gtの全てについて係数曲線Rがそれぞれ規定されると、続いて、代表番地Gt以外の番地(普通番地)の係数曲線Rが規定される。普通番地の係数曲線Rは、代表番地Gtについて規定された係数曲線Rを用いて色座標に基づく補間演算を行うことによって取得される。このようにすれば、全ての番地Gについてトライアルアンドエラーによる調整作業で係数曲線Rを規定する必要がないので、調整作業にかかる負担が大きく低減される。
【0085】
<4.パノラマプリントに係る処理の流れ>
<4−1.全体の処理の流れ>
熱転写プリンタ1において行われるパノラマプリント動作に係る処理の流れについて、
図3と
図11を参照しながら説明する。
図11は、該処理の流れを示す図である。
【0086】
ステップS1:まず、画像データ取得部101が、パノラマ画像データDを取得して、これを記憶装置140に格納する(
図3(a))。
【0087】
ステップS2:続いて、画像データ分割部102が、ステップS1で取得されたパノラマ画像データDを、単位塗布領域30に対応するサイズであって重なり領域Wを含む、複数(ここでは2個)の分割画像データDi(i=1,2)に分割する(
図3(b))。
【0088】
ステップS3:続いて、座標変換部103が、ステップS2で取得された各分割画像データDi(i=1,2)に含まれる各画素のデータ値を、YMC色空間の座標値に変換して、色座標画像データKi(i=1,2)を取得する(
図3(c))。
【0089】
ステップS4:続いて、単色分解部104が、ステップS3で取得された各色座標画像データKi(i=1,2)を、Y成分、M成分、C成分のそれぞれだけを含む単色画像データKi(Y),Ki(M),Ki(C)i(i=1,2)に分解する(
図3(d))。
【0090】
ステップS5:続いて、パルス変換部105が、ステップS4で取得された、各単色画像データKi(Y),Ki(M),Ki(C)(i=1,2)に含まれる各画素のデータ値(Y値、M値、あるいは、C値)を、発熱素子111を駆動する際のパルス値に変換して、パルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)を取得する(
図3(e))。
【0091】
ステップS6:続いて、重なり領域補正部106が、ステップS5で取得された、各パルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)における、重なり領域Wの各データ値を補正して、補正パルス画像データEi(Y),Ei(M),Ei(C)(i=1,2)を取得する(
図3(f))。ステップS6の処理については、後に詳細に説明する。
【0092】
ステップS7:続いて、パノラマプリント制御部107が、ステップS6で取得された、補正パルス画像データEi(Y),Ei(M),Ei(C)(i=1,2)に基づいて熱転写プリンタ1が備える各部11〜13を制御して、一連のパノラマプリント動作を実行させる。
【0093】
具体的には、パノラマプリント制御部107は、まず、一方の分割画像データD1に基づいて取得された各補正パルス画像データE1(Y),E1(M),E1(C)を用いてサーマルヘッド11を駆動制御して、1回目のプリント動作を行わせる。すなわち、各補正パルス画像データE1(Y),E1(M),E1(C)における重なり領域Wと反対側の端部St(
図3(f)、
図4参照)から順に、1ライン分のデータが次々と読み出され、これに基づいてサーマルヘッド11が駆動制御される。これによって、分割データD1が記録媒体2にプリントされる。
【0094】
その後、パノラマプリント制御部107は、該プリントされた領域における副走査方向について隣の領域に、重なり領域Wを重ならせつつ、他方の分割画像データD2に基づいて取得された各補正パルス画像データE2(Y),E2(M),E2(C)を用いてサーマルヘッド11を駆動制御して、2回目のプリント動作を行わせる。すなわち、記録媒体2にプリントされている分割画像データD1における重なり領域Wと非重なり領域の境界部分がサーマルヘッド11の下方に配置され、この状態から、各補正パルス画像データE2(Y),E2(M),E2(C)における重なり領域Wの側の端部St(
図3(f)、
図4参照)から順に、1ライン分のデータが次々と読み出され、これに基づいてサーマルヘッド11が駆動制御される。これによって、重なり領域Wを重ならせつつ、分割データD2が記録媒体2にプリントされる。
【0095】
さらにその後、パノラマプリント制御部107は、1回目および2回目のプリント動作でプリントされた領域の全体に、オーバーコート層を形成させる。これによって、パノラマ画像データDが記録媒体2にプリントされる(
図3(g))。
【0096】
<4−2.重なり領域の補正に係る処理の流れ>
重なり領域補正部106が、各パルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)における、重なり領域Wの各データ値を補正する処理(ステップS6)の流れについて、
図7、
図8、
図12を参照しながら具体的に説明する。
図12は、該処理の流れを示す図である。
【0097】
ステップS61:重なり領域補正部106は、まず、一群のパルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)のうちの1個を読み出して、補正対象パルス画像データとして取得する。
【0098】
ステップS62:続いて、重なり領域補正部106は、補正対象パルス画像データにおける、重なり領域Wのデータ値(すなわち、パルス値)を1個読み出し、補正対象パルス値として取得する。
【0099】
ステップS63:続いて、重なり領域補正部106は、記憶装置140に格納されている補正テーブル群TGi(i=1,2)の中から、ステップS62で取得された補正対象パルス値の補正に用いるべき補正テーブルTを選択する。
【0100】
具体的には、重なり領域補正部106は、まず、ステップS61で取得された補正対象パルス画像データの属性に基づいて、1個の単色補正テーブル集合TSを選択する。すなわち、重なり領域補正部106は、補正対象パルス画像データが、下塗り側の分割画像データD1に基づいて取得されたものである場合は、第1の補正テーブル群TG1を選択し、補正対象パルス画像データが上塗り側の分割画像データD2に基づいて取得されたものである場合は、第2の補正テーブル群TG2を選択する。さらに、重なり領域補正部106は、選択された補正テーブル群TGiが備える3個の単色補正テーブル集合TS(Y),TS(M),TS(C)のうち、補正対象パルス画像データの色と対応するものを選択する。
【0101】
例えば、補正対象パルス画像データが、上塗り側の分割画像データD2に基づいて取得されたY色のパルス画像データP2(Y)である場合、重なり領域補正部106は、第2の補正テーブル群TG2に含まれる、Y色用の単色補正テーブル集合TS(Y)を選択する。
【0102】
続いて、重なり領域補正部106は、選択された単色補正テーブル集合TSに含まれる複数の補正テーブルT,T,・・・のうち、ステップS62で取得された補正対象パルス値が属するライン数に応じた補正テーブルTを選択する。すなわち、重なり領域補正部106は、補正対象パルス値が属するラインの補正テーブルTがある場合(すなわち、補正対象パルス値が属するラインが代表ラインである場合)、該ラインと対応する補正テーブルTを選択する。一方、重なり領域補正部106は、補正対象パルス値が属するラインの補正テーブルTがない場合(すなわち、補正対象パルス値が属するラインが代表ラインでない場合)、該ラインの両側にある最も近い代表ラインとそれぞれ対応する2個の補正テーブルT,Tを選択する。
【0103】
例えば、補正対象パルス値が、300番目のラインL300に属するものである場合、重なり領域補正部106は、先に選択された単色補正テーブル集合TSに含まれる複数の補正テーブルT,T,・・・のうち、ラインL300と対応する補正テーブルT300を選択する。また例えば、補正対象パルス値が、301番目のラインL301に属するものである場合、重なり領域補正部106は、第先に選択された単色補正テーブル集合TSに含まれる複数の補正テーブルT,T,・・・のうち、ラインL300と対応する補正テーブルT300と、ラインL350と対応する補正テーブルT350とを選択する。
【0104】
ステップS64:続いて、重なり領域補正部106は、ステップS63で選択された補正テーブルTから、補正対象パルス値の補正に用いる補正係数を取得する。
【0105】
ステップS63で1個の補正テーブルTが選択されている場合(すなわち、補正対象パルス値が代表ラインに属するものである場合)、重なり領域補正部106は、まず、補正対象パルス値の色座標値を特定する。すなわち、重なり領域補正部106は、補正対象パルス画像データと対応する色座標画像データKiを参照して、補正対象パルス値と対応する画素の色座標値を特定する。続いて、重なり領域補正部106は、ステップS63で選択された1個の補正テーブルTにおける、補正対象パルス値と対応する画素の色座標値に合致する番地に格納されている補正係数を読み出す。ただし、補正対象パルス値と対応する画素の色座標値に合致する番地がない場合、重なり領域補正部106は、該色座標値の周囲にある番地にそれぞれ保持されている補正係数を読み出し、これらを用いて色座標に基づく補間演算を行って、該色座標値の補正係数を算出する。重なり領域補正部106は、このようにして読み出された(あるいは、補間演算で算出された)補正係数を、補正対象パルス値の補正に用いる補正係数として取得する。
【0106】
例えば、ステップS63で1個の補正テーブルTが選択されており、補正対象パルス値の色座標値が(Y,M,C)=(255,255,255)=(黒色)である場合、重なり領域補正部106は、選択された補正テーブルTの黒番地G1に格納されている補正係数を読み出して、これを補正対象パルス値の補正に用いる補正係数として取得する。また例えば、補正対象パルス値の色座標値が(Y,M,C)=(1,1,1)である場合、重なり領域補正部106は、選択された補正テーブルTにおける、該色座標値の周囲にある番地にそれぞれ保持されている補正係数を読み出し、これらを用いて色座標に基づく補間演算を行って、該色座標値の補正係数を算出する。そして、算出された値を、補正対象パルス値の補正に用いる補正係数として取得する。
【0107】
一方、ステップS63で2個の補正テーブルT,Tが選択されている場合(すなわち、補正対象パルス値が代表ラインに属するものでない場合)も、重なり領域補正部106は、まず、補正対象パルス値の色座標値を特定する。続いて、重なり領域補正部106は、ステップS63で選択された2個の補正テーブルT,Tのそれぞれから、補正対象パルス値と対応する画素の色座標値に合致する番地に格納されている補正係数を読み出す。ただし、ここでも、補正対象パルス値と対応する画素の色座標値に合致する番地がない場合は、重なり領域補正部106は、該色座標値の周囲にある番地にそれぞれ保持されている補正係数を読み出し、これらを用いて色座標に基づく補間演算を行って、該色座標値の補正係数を算出する。続いて、重なり領域補正部106は、2個の補正テーブルT,Tのそれぞれから、このようにして読み出された(あるいは、補間演算で算出された)補正係数を用いて、ライン数に基づく補間演算を行い、算出された値を、補正対象パルス値の補正に用いる補正係数として取得する。
【0108】
例えば、ステップS63で2個の補正テーブルT,Tが選択されており、補正対象パルス値の色座標値が(Y,M,C)=(255,255,255)=(黒色)である場合、重なり領域補正部106は、選択された2個の補正テーブルT,Tの各黒番地G1に格納されている補正係数をそれぞれ読み出す。そして、これらを用いてライン数に基づく補間演算を行って、該色座標値の補正係数を算出し、該算出された値を、補正対象パルス値の補正に用いる補正係数として取得する。また例えば、補正対象パルス値の色座標値が(Y,M,C)=(1,1,1)である場合、重なり領域補正部106は、選択された2個の補正テーブルT,Tの一方から、該色座標値の周囲にある番地にそれぞれ保持されている補正係数を読み出し、これらを用いて色座標に基づく補間演算を行って、該色座標値の補正係数を算出する。同様に、他方の補正テーブルからも、該色座標値の補正係数を算出する。そして、取得された2個の補正係数を用いて、ライン数に基づく補間演算を行い、算出された値を、補正対象パルス値の補正に用いる補正係数として取得する。
【0109】
ステップS65:続いて、重なり領域補正部106は、ステップS64で取得された補正係数を、ステップS62で取得された補正対象パルス値に乗算し、得られた値を補正パルス値として取得する。
【0110】
ステップS66:続いて、再びステップS62に戻り、補正対象パルス画像データにおける、重なり領域Wの別のパルス値が読み出されて、新たな補正対象パルス値として取得される。そして、該新たな補正対象パルス値に対して、ステップS63〜65の処理が行われて、補正パルス値が取得される。補正対象パルス画像データにおける重なり領域Wの全てのパルス値から補正パルス値が取得されるまで、ステップS62〜66の処理が繰り返される。補正対象パルス画像データにおける重なり領域Wの全てのパルス値から補正パルス値が取得されることにより、1個の補正パルス画像データが取得される。
【0111】
ステップS67:補正パルス画像データが取得されると、再びステップS61に戻り、別のパルス画像データが読み出されて、新たな補正対象パルス画像データとして取得される。そして、該新たなパルス画像データに対してステップS62〜ステップS66の処理が行われることによって、新たな補正パルスデータが取得される。
【0112】
一群のパルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)から一群の補正パルス画像データEi(Y),Ei(M),Ei(i=1,2)が取得されると、ステップS6の処理が終了する。
【0113】
<5.効果>
この実施形態に係る熱転写プリンタ1においては、パノラマプリント動作を行うに当たって、カラーのパノラマ画像データDを、互いに重複する重なり領域Wを含むように分割して、複数の分割画像データDi(i=1,2)を取得する分割工程(ステップS1)と、複数の分割画像データDi(i=1,2)の各々に基づいて取得され被補正データ(この実施形態では、各パルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2))における重なり領域Wの各データ値を、補正テーブル群TGi(i=1,2)を用いて補正して補正データ(この実施形態では、補正パルス画像データEi(Y),Ei(M),Ei(C)(i=1,2))を取得する、重なり領域補正工程(ステップS6)と、第1の分割画像データD1に基づいて取得された第1の補正データ(この実施形態では、補正パルス画像データE1(Y),E1(M),E1(C))に基づいてプリント動作を行わせ、該プリントされた領域における副走査方向について隣の領域に、重なり領域Wを重ならせつつ、第2の分割画像データD2に基づいて取得された第2の補正データ(この実施形態では、補正パルス画像データE2(Y),E2(M),E2(C))データに基づいてプリント動作を行わせる、パノラマプリント工程(ステップS7)と、を備える。
【0114】
そして、ステップS6の処理に用いられる補正テーブル群TGi(i=1,2)が、複数の補正テーブルTj(j=1,50,・・・,600)を備え、各補正テーブルTjが、副走査方向に沿って配列された複数のラインLjの各々と対応付けられている。さらに、各補正テーブルTjにおいて、色空間に規定される座標値のいずれかと対応する番地ごとに、補正係数が保持されている。そして、各被補正データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)における重なり領域Wの各データ値が、その色空間上の座標値と対応する番地に保持されている補正係数を用いて補正されることによって、濃度の低減と色彩の調整の両方が一度になされるように構成されている。
【0115】
この構成によると、被補正データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)における重なり領域Wの各データ値が、その色座標値(すなわち、濃度と色彩の1個の組み合わせ)と対応して規定された補正係数を用いて補正されるので、各データ値の濃度と色彩の両方を適切に調整することができる。また、濃度の低減と色彩の調整が一度の補正でなされることにより、処理負担が小さくなり、処理時間も短くてすむ。さらに、濃度と色彩は互いに独立して変化させることが難しく、濃度の低減と色彩の調整を個別の補正(すなわち、別工程の補正)で行おうとすると、両補正が相互に干渉して適切な補正を実現できない(あるいは、適切な補正を実現するための調整作業が非常に煩雑となる)が、濃度の低減と色彩の調整が一度の補正でなされることにより、簡易な調整作業で、適切な補正を実現することが可能となる。このように、この実施形態によると、簡易な構成で、複数回のプリントが重ね合わされる部分を適切に表現することができる。
【0116】
また、この実施形態では、第1の補正データE1(Y),E1(M),E1(C)を取得する際に用いられる第1の補正テーブル群TG1の各単色補正テーブル集合TSが備える複数の補正テーブルT,T,・・・において、同じ番地に保持される各補正係数が、ラインの昇順で濃度の減少幅を大きくするような係数曲線から規定されるものであり、第2の補正データE1(Y),E1(M),E1(C)を取得する際に用いられる第2の補正テーブル群TG2の各単色補正テーブル集合TSが備える複数の補正テーブルT,T,・・・において、同じ番地に保持される各補正係数が、ラインの昇順で濃度の減少幅を小さくするような係数曲線から規定されるものである。
【0117】
この構成によると、第1の補正データE1(Y),E1(M),E1(C)は、重なり領域Wにおいて、ラインの昇順で濃度の減少幅が大きくなるように濃度が低減されたものとなり、第2の補正データE2(Y),E2(M),E2(C)は、重なり領域Wにおいて、ラインの昇順で濃度の減少幅が小さくなるように濃度が低減されたものとなる。これによって、複数回のプリントが重ね合わされる部分に濃度の不連続感が生じることを適切に防止できる。
【0118】
また、この実施形態では、第2の補正テーブル群TG2の各単色補正テーブル集合TSが備える複数の補正テーブルT,T,・・・において、各番地に保持される各補正係数が、番地毎に個別に規定された係数曲線Rに基づいて規定される。
【0119】
この構成によると、番地毎に個別に係数曲線Rが規定されるので、被補正データP2(Y),P2(M),P2(C)に含まれる各データ値を、その色応じて個別に規定された補正の態様で補正することができる。
【0120】
また、この実施形態では、第1の補正テーブル群TG1の各単色補正テーブル集合TSが備える複数の補正テーブルT,T,・・・において、各番地に保持される各補正係数が、番地間で共通の係数曲線Rに基づいて規定されるものである。
【0121】
この構成によると、第2の補正テーブル群TG2のみにおいて、各番地の係数曲線Rが個別に規定されるので、適切な係数曲線Rを簡易かつ速やかに特定することができる。
【0122】
また、この実施形態では、補正テーブルTにおける一部の番地が代表番地とされ、代表番地に保持される補正係数を規定する係数曲線Rが、オペレータによる調整作業に基づいて規定されたものであり、代表番地以外の番地(普通番地)に保持される補正係数を規定する係数曲線Rが、代表番地に保持される補正係数を規定する係数曲線Rに基づいて算出されることにより規定されたものである。
【0123】
この構成によると、オペレータは、全ての番地について、その係数曲線Rを規定するための調整作業を行う必要がないので、該調整作業に係るオペレータの負担が低減される。
【0124】
また、この実施形態では、複数の分割画像データDi(i=1,2)の各々を、各画素のデータ値が、色空間の座標値で表現された色座標画像データKi(i=1,2)に変換する座標変換工程(ステップS3)と、色座標画像データKi(i=1,2)を、単色成分のデータ値のみを保持する複数の単色画像データKi(Y),Ki(M),Ki(C)i(i=1,2)に分解する単色分解工程(ステップS4)と、複数の単色画像データKi(Y),Ki(M),Ki(C)i(i=1,2)の各々を、プリント動作に用いられる発熱素子を駆動する際のパルス値で表現されたパルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)に変換するパルス変換工程(ステップS5)と、を備える。そして、重なり領域補正工程(ステップS6)における被補正データが、このパルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)である。
【0125】
この構成によると、発熱素子111を駆動する際のパルス値を規定したパルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)が被補正データとされ、これが補正テーブル群TGi(i=1,2)を用いて補正される。したがって、補正データが、そのまま、発熱素子111の駆動に用いられることになる。これにより、各画像部分の重ね合わせ部分が適切に表現されることを十分に担保することができる。
【0126】
<6.他の実施形態>
上記の実施形態においては、パノラマ画像データDが2個の分割画像データD1,D2に分割される場合を説明したが、パノラマ画像データDは、3個以上の分割画像データに分割されてもよい。例えば、パノラマ画像データDが3個の分割画像データに分割される場合、真ん中の分割画像データは、一方の重なり領域Wが上塗り用の分割画像データとなり、他方の重なり領域Wが下塗り用の分割画像データとなる。したがって、該真ん中の分割画像データに基づいて取得された被補正データは、上塗り用となる一方側の重なり領域Wの各データ値が、第2の補正テーブル群TG2を用いて補正され、下塗り用となる他方側の重なり領域Wの各データが、第1の補正テーブル群TG1を用いて補正される。
【0127】
上記の実施形態においては、重なり領域補正部106は、パルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)(i=1,2)を被補正データとして、これに対して補正を行うものとしたが、被補正データは、必ずしもパルス画像データPi(Y),Pi(M),Pi(C)でなくともよい。例えば、パルス値に変換される前の単色画像データKi(Y),Ki(M),Ki(C)(i=1,2)が被補正データとされてもよい。この場合、重なり領域補正部106によって単色画像データKi(Y),Ki(M),Ki(C)(i=1,2)の補正がなされた後に、補正後の各単色画像データを、パルス変換部105がパルス画像データに変換する。
【0128】
上記の実施形態においては、(3×U)個の係数曲線Rが全て同じものとされる第1の補正テーブル群TG1が、下塗り用の分割画像データD1に基づいて取得された被補正データの補正に用いられるものとし、(3×U)個の係数曲線Rが個別に規定される第2の補正テーブル群TG2が、上塗り用の分割画像データD2に基づいて取得された被補正データの補正に用いられるものとしたが、これが逆であってもよい。すなわち、(3×U)個の係数曲線Rが全て同じものとされる補正テーブル群が、上塗り用の分割画像データに基づいて取得された被補正データの補正に用いられ、(3×U)個の係数曲線Rが個別に規定される補正テーブル群が、下塗り用の分割画像データD1に基づいて取得された被補正データの補正に用いられてもよい。
【0129】
また、上記の実施形態において、2個の補正テーブル群TG1,TG2の両方において、(3×U)個の係数曲線Rが個別に規定されてもよい。
【0130】
また、上記の実施形態においては、第2の補正テーブル群TG2において(3×U)個の係数曲線Rを規定するにあたって、代表番地に係る係数曲線Rだけが、オペレータのトライアルアンドエラーによる調整作業によって規定されるものとしたが、全ての番地に係る係数曲線Rがオペレータのトライアルアンドエラーによる調整作業によって規定されてもよい。
【0131】
また、上記の実施形態においては、各補正テーブル群TG1,TG2が、3個の単色補正テーブル集合TSを備えるものとし、各単色補正テーブル集合TSが備える各補正テーブルT,T,・・・の各番地には、1個の補正係数が保持されるものとした。しかしながら、各補正テーブル群TG1,TG2が、1個の補正テーブル集合を備えるものとし、これが備える各補正テーブルの各番地に、Y色、C色、M色のそれぞれに対応する3個の補正係数が保持されるものとしてもよい。
【0132】
また、上記の実施形態において、熱転写プリンタ1に、コンピュータ(すなわち、CPU、メモリ、記憶装置、通信インターフェイス、表示部、入力部、等を含んで構成される一般的なパーソナルコンピュータ)が接続されるものとし、該コンピュータのCPUが、該コンピュータの記憶装置に格納されたプログラムをメモリに読み出して実行することによって、上述した各機能部101〜106がソフトウェア的に実現されるものとしてもよい。また、上述した各機能部101〜106のうちの一部が熱転写プリンタ1において実現され、残りが該コンピュータにおいて実現されてもよい。
【0133】
また、上記の実施形態に係るプリント動作では、第1の分割画像データD1における重なり領域Wと反対側の端部St側から順にプリントがなされるものとしたが、第2の分割画像データD2における重なり領域Wと反対側の端部から順にプリントがなされるものとしてもよい。
【0134】
また、上記の実施形態では、熱転写プリンタ1でパノラマプリント動作が行われる場合について説明したが、いうまでもなく、熱転写プリンタ1では、通常のプリント動作(すなわち、記録媒体2に、インクリボン3の単位塗布領域30以下のサイズの画像をプリントするプリント動作)を行うことも可能である。また、パノラマプリント(あるいは通常のプリント)が施された記録媒体2は、熱転写プリンタ1に設けられた図示しないカッター等を用いて切断されて外部に排出されてもよいし、そのまま巻き取られてもよい。
【0135】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。