【実施例】
【0014】
<実施例1>
図1〜
図7を参照しつつ実施例1の車両用ステアリング装置10を説明する。
図1に示されるように、車両用ステアリング装置10は、車両のステアリングホイール11の操舵入力が生じる操舵部12と、左右の転舵車輪13,13を転舵する転舵部14と、操舵部12と転舵部14との間に介在しているクラッチ15と、制御部16とを含む。クラッチ15が開放状態となる通常時には、操舵部12と転舵部14との間が機械的に分離されている。このように、車両用ステアリング装置10は、通常時において、ステアリングホイール11の操舵量に応じて転舵用アクチュエータ39を作動させることにより、左右の転舵車輪13,13を転舵する方式、いわゆるステアバイワイヤ式(steer-by-wire)を採用している。
【0015】
操舵部12は、運転者が操作するステアリングホイール11と、このステアリングホイール11に連結されているステアリング軸21と、このステアリング軸21に対して操舵反力(反力トルク)を付加する反力付加アクチュエータ22と、を含む。
【0016】
反力付加アクチュエータ22(反力発生部22)は、運転者がステアリングホイール11の操舵力に抵抗する操舵反力を発生することによって、運転者に操舵感を与える。この反力付加アクチュエータ22は、操舵反力を発生する反力モータ23と、操舵反力をステアリング軸21に伝達する反力伝達機構24と、を含む。
【0017】
反力伝達機構24は、例えばウォームギヤ機構によって構成される。このウォームギヤ機構24(反力伝達機構24)は、反力モータ23のモータ軸23aに設けられたウォームギヤ24aと、ステアリング軸21に取り付けられたウォームホイール24bとからなる。反力モータ23が発生した操舵反力は、反力伝達機構24を介して、ステアリング軸21に付加される。
【0018】
転舵部14は、ステアリング軸21に自在軸継手31,31及び連結軸32によって連結されている入力軸33と、この入力軸33にクラッチ15を介して連結されている出力軸34と、この出力軸34に操作力伝達機構35によって連結されている転舵軸36と、この転舵軸36の両端にタイロッド37,37及びナックル38,38を介して連結されている左右の転舵車輪13,13と、転舵軸36に転舵用動力を付加する転舵用アクチュエータ39と、を含む。
【0019】
操作力伝達機構35は、例えばラックアンドピニオン機構によって構成される。このラックアンドピニオン機構35(操作力伝達機構35)は、出力軸34に設けられたピニオン35aと、転舵軸36に設けられたラック35bとからなる。転舵軸36は、軸方向(車幅方向)へ移動可能である。
【0020】
転舵用アクチュエータ39は、転舵用動力を発生する転舵動力モータ41と、転舵用動力を転舵軸36に伝達する転舵動力伝達機構42とからなる。転舵動力モータ41が発生した転舵用動力は、転舵動力伝達機構42によって転舵軸36に伝達される。この結果、転舵軸36は車幅方向にスライドする。
【0021】
前記制御部16は操舵角センサ51、操舵トルクセンサ52、モータ回転角センサ53、出力軸回転角センサ54、車速センサ55、ヨーレートセンサ56、加速度センサ57、その他の各種センサ58からそれぞれ検出信号を受けて、クラッチ15、反力モータ23、転舵動力モータ41及び後述するソレノイド91A,91Bに電流を付与する。
【0022】
操舵角センサ51は、ステアリングホイール11の操舵角を検出する。操舵トルクセンサ52は、ステアリング軸21に発生する操舵トルクを検出する。モータ回転角センサ53は、反力モータ23の回転角を検出する。出力軸回転角センサ54は、出力軸34の回転角を検出する。車速センサ55は、車両の車輪速度を検出する。ヨーレートセンサ56は、車両のヨー角速度(ヨー運動の角速度)を検出する。加速度センサ57は、車両の加速度を検出する。その他の各種センサ58には、転舵動力モータ41の回転角を検出する回転角センサを含む。この回転角センサは、例えば、転舵動力モータ41に備えたレゾルバによって構成される。
【0023】
ここで、運転者がステアリングホイール11を操舵角の増大方向へ操舵することを、「切り増し操作」という。運転者が、切り増し操作の後に、ステアリングホイール11を操舵角の減少方向(中立方向)へ操舵することを、「切り戻し操作」という。
【0024】
前記車両用ステアリング装置10は、ステアリングホイール11の操舵範囲の「限界」を規定する操作範囲限界規定装置60と、ステアリングホイール11の操舵範囲を「任意」に規制可能な舵角規制装置70と、を備えている。操作範囲限界規定装置60は、例えば特許第6393858号公報に記載の構成を用いることができる。
【0025】
操作範囲限界規定装置60と舵角規制装置70とは、操舵部12のなかの操舵トルクセンサ52とクラッチ15との間に介在している。例えば、操作範囲限界規定装置60と舵角規制装置70とは、ウォームホイール24bに対してステアリング軸21の軸方向両側に配置されている。
【0026】
舵角規制装置70は、制御部16から制御信号を受けて、ステアリングホイール11の切り増し操作を規制するように、操舵範囲を規制する。この結果、クラッチ15や反力付加アクチュエータ22には、大きい負担がかからない。クラッチ15や反力付加アクチュエータ22の小型化を図ることができる。
【0027】
以下、
図2を参照しつつ舵角規制装置70について詳しく説明する。
図2は、
図1に示される舵角規制装置70をステアリングホイール11側から見ている。
【0028】
舵角規制装置70は、1つの回転部材71と、1又は複数(実施例1では2つ)のレバー式ストッパ81A,81Bと、1又は複数(実施例1では2つ)の舵角規制用アクチュエータ91A,91Bを含む。回転部材71と各レバー式ストッパ81A,81Bは、ハウジング100(
図2参照)に収納されている。
【0029】
回転部材71は、ステアリングホイール11(
図1参照)と共に回転可能であり、例えばステアリング軸21に取り付けられている。この回転部材71は、複数の歯72を有した円盤状の部材によって、構成されている。この複数の歯72は、回転部材71(ロック用ホイール71)の外周面または盤面に対し、回転方向に一定のピッチで配列され、且つ放射状に延びている。回転部材71の回転中心線73(ステアリング軸21の中心軸73)に沿って見たときに、複数の歯72の形状は、例えば回転中心線73に交差して放射状に延びる各直線74に対して左右対称形の方形である。
【0030】
各レバー式ストッパ81A,81Bは、回転部材71に対して係合可能にスイングする。各レバー式ストッパ81A,81Bが回転部材71に係合することによって、この回転部材71の回転範囲を規制することが可能である。2つのレバー式ストッパ81A,81Bのなかの、一方のレバー式ストッパ81Aを「第1レバー式ストッパ81A」とし、他方のレバー式ストッパ81Bを「第2レバー式ストッパ81B」とする。第1レバー式ストッパ81Aは、ステアリングホイール11が一方(右への操舵方向)へ回転する場合に、回転部材71に係合可能である。第2レバー式ストッパ81Bは、ステアリングホイール11が他方(左への操舵方向)へ回転する場合に、回転部材71に係合可能である。
【0031】
ステアリング軸21を軸方向から見て、第1レバー式ストッパ81Aに対し、第2レバー式ストッパ81Bは逆向きに配置されている。例えば、第1レバー式ストッパ81Aと第2レバー式ストッパ81Bとは、ステアリング軸21の中心軸73に交差する直線75に対して、互いに対称形である他には同じ構成である。
【0032】
各レバー式ストッパ81A,81Bは、それぞれ中央部をハウジング100に保持シャフト82,82(支持軸82,82)によってスイング可能に支持された概ねバー状の部材である。
【0033】
この各レバー式ストッパ81A,81Bは、各一端(第1端)にストッパ部81a,81aを有し、各他端(第2端)に被駆動部81b,81bを有している。各ストッパ部81a,81aは、回転部材71の複数の歯72に係合するフック状の部分であって、複数の歯溝76(各歯72,72の間)に対して出没することが可能である。各被駆動部81b,81bは、それぞれ舵角規制用アクチュエータ91A,91Bによって個別にスイング駆動される。
【0034】
この舵角規制用アクチュエータ91A,91Bは、ハウジング100に取り付けられており、例えば進退可能なプランジャロッド92,92を有したソレノイドによって構成される。このソレノイド91A,91B(舵角規制用アクチュエータ91A,91B)は、制御信号に対する応答性の観点から、電磁ソレノイドによって構成されることが好ましい。このソレノイド91A,91Bは、励磁用コイルの励磁によってプランジャロッド92,92を後退させるプル型ソレノイドによって構成されている。このプランジャロッド92,92は、レバー式ストッパ81A,81Bの各被駆動部81b,81bに連結されている。なお、プランジャロッド92,92と被駆動部81b,81bとは、必ずしも連結した構成に限定する必要はない。
【0035】
次に、第1レバー式ストッパ81Aについて、より詳しく説明する。第2レバー式ストッパ81Bは、第1レバー式ストッパ81Aと同じ構成なので、説明を省略する。
【0036】
図3及び
図4に示されるように、第1レバー式ストッパ81Aは、ハウジング100の内部に設けられている一対の保持部101,102(支持ブラケット101,102)間に位置するとともに、この一対の保持部101,102に保持シャフト82によってスイング可能に組み付けられている。この保持シャフト82の軸線82aは、
図2に示される回転部材71の回転中心線73に対して平行である。
【0037】
より具体的に説明すると、第1レバー式ストッパ81Aは、保持シャフト82を嵌合可能に貫通した嵌合孔81cを有している。一対の保持部101,102も、保持シャフト82を嵌合可能に貫通した一対のシャフト嵌合孔101a,102a(支持孔101a,102a)を有している。第1レバー式ストッパ81Aの嵌合孔81cと、一対の保持部101,102のシャフト嵌合孔101a,102aは、保持シャフト82の軸線82a上に一直線状に位置している。
【0038】
第1レバー式ストッパ81Aのなかの、保持シャフト82の軸線82aに対して直交した両側の面81d,81dのことを、「両側の端面81d,81d」という。また、一対の保持部101,102同士の互いに向かい合う面101b,102bのことを、「保持部101,102の内端面101b,102b」という。第1レバー式ストッパ81Aの両側の端面81d,81dと、保持部101,102の内端面101b,102bとの間には、それぞれ筒状のカラー83,83が配置されている。保持シャフト82は、これらの一対のカラー83,83にも嵌合している。
【0039】
図3に示されるように、第1レバー式ストッパ81Aの両側の端面81d,81d間の厚みに、一対のカラー83,83の長さを加えた、総長さはL1である。以下、この総長さL1のことを「アセンブリ総長さL1」という。このアセンブリ総長さL1は、一対の保持部101,102間の間隔Ds、つまり保持部101,102の内端面101b,102b間の間隔Ds以下の長さである(L1≦Ds)。このため、保持部101,102の内端面101b,102bと一対のカラー83,83の一端面との間には、第1レバー式ストッパ81Aのスイング運動が可能な程度に、若干の隙間を有している。
【0040】
図2に示されるように、第1レバー式ストッパ81Aは、回転部材71から外れる方向(矢印Rd方向)に、スプリング84によって付勢されている。このスプリング84は、第1レバー式ストッパ81Aが回転部材71から外れる方向にスイングする動作を円滑にする付勢部材であって、ねじりコイルばねによって構成されている。スプリング84を有するので、仮に、被駆動部81bとプランジャロッド92との連結が外れた場合に、回転部材71に対して第1レバー式ストッパ81Aがロックすることはない。
【0041】
好ましくは
図3及び
図4に示されるように、このスプリング84は、一対のコイル84a,84aと、この一対のコイル84a,84aの各一端から延びている一対の第1アーム84b,84bと、この一対の第1アーム84b,84b同士を繋いでいる引っ掛け部84cと、この一対のコイル84a,84aの各他端から延びている一対の第2アーム84d,84dと、からなる、いわゆるダブルコイル式ばねである。
【0042】
一対のコイル84a,84aの内径D1(
図5(b)参照)は、一対のカラー83,83の外径D2(
図5(b)参照)以上である(D1≧D2)。一対のコイル84a,84aは、一対のカラー83,83の外周面にそれぞれ嵌め込まれてなる。この結果、スプリング84は、一対のカラー83,83を介して保持シャフト82に保持される。一対のコイル84a,84aを、一対のカラー83,83を介して保持シャフト82によって支持するので、保持シャフト82に対するスプリング84の作動性を円滑にすることができる。一対のコイル84a,84aは、一対のカラー83,83の一端面よりも若干の寸法L2,L2(
図5(b)参照)だけ第1レバー式ストッパ81Aの両側の端面81d,81d側に位置している。
【0043】
引っ掛け部84cと一対の第2アーム84d,84dとの、いずれか一方(例えば引っ掛け部84c)は、被駆動部81bに掛け止められている。引っ掛け部84cと一対の第2アーム84d,84dとの、いずれか他方(例えば第2アーム84d,84d)は、ハウジング100の内部に設けられているストッパバー103に対してねじり方向の付勢力を有して掛け止められている。このねじり方向の付勢力は、第1レバー式ストッパ81Aを回転部材71から外れる方向に付勢する力である。
【0044】
ストッパバー103は、保持シャフト82に対して平行に位置している。
図2に示されるように、第1レバー式ストッパ81Aは、回転部材71から外れる方向(矢印Rd方向)にスイングしたときに、ストッパバー103によって受け止められる。
【0045】
次に、第1レバー式ストッパ81Aをハウジング100の内部に組み込む方法について、
図3及び
図5〜
図6を参照しつつ説明する。この組み込み方法は、保持シャフト82の代わりに、暫定的に仮のシャフト111を用いることを特徴とする。
図5(a)は、第1レバー式ストッパ81Aとスプリング84と仮のシャフト111とをハウジング100の内部に組み込んだ状態を示している。
図5(b)は、
図5(a)に示される第1レバー式ストッパ81Aとスプリング84と仮のシャフト111の要部を拡大して表している。
【0046】
仮のシャフト111の径は、保持シャフト82の径と同じである。仮のシャフト111の長さは、アセンブリ総長さL1と同じである。このため、仮のシャフト111の長さL1は、一対の保持部101,102間の間隔Ds、つまり保持部101,102の内端面101b,102b間の間隔Ds以下の長さである(L1≦Ds)。保持シャフト82の代わりとなる仮のシャフト111に対して、第1レバー式ストッパ81Aと一対のカラー83,83とスプリング84とを組み込むことによって、
図6に示されるように「暫定的なレバーアセンブリ112」を構成することができる。この暫定的なレバーアセンブリ112に仮組された状態では、引っ掛け部84cが被駆動部81bに掛け止められ、第2アーム84d,84dがストッパ部81aに仮に掛け止められる。
【0047】
第1レバー式ストッパ81Aをハウジング100の内部に組み込む手順は、次の通りである。先ず、
図4に示されるように、保持シャフト82の代わりに暫定的に用いるための仮のシャフト111を準備する(準備工程)。
【0048】
次に、
図5(a)及び
図6に示されるように、仮のシャフト111に対して、第1レバー式ストッパ81Aとカラー83,83とスプリング84とを組み込んで、暫定的なレバーアセンブリ112に仮組みする(仮組み工程)。
【0049】
次に、
図7(a)に示されるように、仮組された状態の暫定的なレバーアセンブリ112を、ハウジング100の側壁104に有している開口105から一対の保持部101,102の間へ挿入し、
図7(b)及び
図5(a)に示されるように、一対の保持部101,102に有している一対のシャフト嵌合孔101a,102aに対して仮のシャフト111の位置を合わせる(セット工程)。このセット工程のときには、第1レバー式ストッパ81Aのストッパ部81aと、スプリング84の第2アーム84d,84dとによって、ストッパバー103を挟み込むようにセットする。この結果、ストッパ部81aと第2アーム84d,84dとは、互いに接近する方向に付勢されることになる。
【0050】
次に、
図7(c)に示されるように、保持シャフト82を一対のシャフト嵌合孔101a,102aに挿入して、仮のシャフト111と置き換えることにより、一対の保持部101,102に保持シャフト82によって第1レバー式ストッパ81Aとスプリング84とを組み付ける(組み付け工程)。これで、組み込み作業を完了する。
【0051】
詳しく述べると、
図5(a)に示されるように、保持シャフト82を一方のシャフト嵌合孔101aから挿入することにより、保持シャフト82の先端によって仮のシャフト111を他方のシャフト嵌合孔102aへ向かって押し出す。仮のシャフト111が押し出されるにつれて、保持シャフト82は一方のカラー83、第1レバー式ストッパ81A、他方のカラー83、他方のシャフト嵌合孔102aに順次嵌り込む(
図3(a)参照)。スプリング84は、各カラー83,83と共に保持シャフト82に組み付けられる。また、仮のシャフト111は、他方のシャフト嵌合孔102aから抜け出る。
【0052】
実施例1の説明をまとめると、次の通りである。
実施例1は、
図2及び
図3に示されるように、ステアリングホイール11(
図1参照)と共に回転可能な回転部材71に係合することによって前記回転部材71の回転範囲を規制するレバー式ストッパ81A(第1レバー式ストッパ81A)と、このレバー式ストッパ81Aを前記回転部材71から外れる方向に付勢するスプリング84とを、ハウジング100の内部に設けられている一対の保持部101,102の間に挿入し且つ前記一対の保持部101,102に保持シャフト82によって組み付ける、舵角規制装置10の組立方法であって、
図4に示されるように、前記一対の保持部101,102の間隔Ds以下の長さの仮のシャフト(111)を準備する、準備工程と、
次に、
図7(a)に示されるように、前記仮のシャフト111に対して、前記レバー式ストッパ81Aと前記スプリング84とを組み込んで、レバーアセンブリ112に仮組みする、仮組み工程と、
次に、
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、前記レバーアセンブリ112を、前記ハウジング100の側壁104に有している開口105から前記一対の保持部101,102の間へ挿入し、前記一対の保持部101,102に有している一対のシャフト嵌合孔101a,102aに対して前記仮のシャフト111の位置を合わせる、セット工程と、
次に、
図7(c)に示されるように、前記保持シャフト82を前記一対のシャフト嵌合孔101a,102aに挿入して、前記仮のシャフト111と置き換えることにより、前記一対の保持部101,102に前記保持シャフト82によって前記レバー式ストッパ81Aと前記スプリング84とを組み付ける、組み付け工程と、を有している。
【0053】
このように、実施例1では、
図7(a)〜
図7(c)に示されるように、仮のシャフト111に対して、レバー式ストッパ81Aとスプリング84とを組み込むことにより、レバーアセンブリ112として仮組みする。このため、仮のシャフト111に対する、スプリング84の位置ズレを防止することができる。スプリング84が、自己の付勢力によって仮のシャフト111から変位する心配はない。
次に、仮組み状態のレバーアセンブリ112を、ハウジング100の側壁104に有している開口105から一対の保持部101,102の間へ挿入し、一対の保持部101,102に有している一対のシャフト嵌合孔101a,102aに対して位置を合わせる。この場合、
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、仮のシャフト111の長さL1が、一対の保持部101,102間の間隔Dsよりも短いので、一対の保持部101,102間にレバーアセンブリ112を挿入することは容易である。
次に、保持シャフト82を一対のシャフト嵌合孔101a,102aに挿入する。この結果、一対の保持部101,102に保持シャフト82によってレバー式ストッパ81Aとスプリング84とを、容易に組み付けることができる。
従って、ハウジング100の内部であっても、舵角規制装置70の組立作業性を高めることができる。
【0054】
<実施例2>
図8及び
図9を参照しつつ実施例2の車両用ステアリング装置200を説明する。
図8は、
図5に対応して表してある。
図9は、
図3に対応して表してある。実施例2の車両用ステアリング装置200は、
図1〜
図7に示される上記実施例1の車両用ステアリング装置10の舵角規制装置70のレバーアセンブリ112を、
図8及び
図9に示される舵角規制装置270のレバーアセンブリ212に変更したことを特徴とし、他の構成は実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0055】
実施例2のレバーアセンブリ212は、
図5に示される実施例1の仮のシャフト111及び2つのカラー83,83を、
図8に示されるパイプ状のカラー283に変更したことを特徴とする。このカラー283は、保持シャフト82を嵌合可能(例えば圧入することが可能)である。
【0056】
このカラー283の長さは、上記
図5(b)に示されるアセンブリ総長さL1と同じである。このため、カラー283の長さL1は、一対の保持部101,102間の間隔Ds、つまり保持部101,102の内端面101b,102b間の間隔Ds以下(L1≦Ds)、且つ、レバー式ストッパ81Aの厚み方向長さよりも長い。このカラー283の外径D12は、第1レバー式ストッパ81Aの嵌合孔81cに嵌合可能な大きさである。このカラー283の内径は、保持シャフト82を嵌合可能な大きさである。一対のコイル84a,84aの内径D11は、カラー283の外径D12以上である(D11≧D12)。一対のコイル84a,84aは、カラー283の外周面にそれぞれ嵌め込まれてなる。この結果、スプリング84はカラー283に保持される。一対のコイル84a,84aをカラー283によって支持するので、カラー283に対するスプリング84の作動性を円滑にすることができる。
【0057】
カラー283に対して、第1レバー式ストッパ81Aとスプリング84とを組み込むことによって、レバーアセンブリ212を構成することができる。このレバーアセンブリ212は、保持シャフト82をカラー283に嵌合することによって、保持部101,102に支持される。このように、実施例2のレバーアセンブリ212は、全ての部品をそのまま用いる、いわゆるサブアセンブリである。
【0058】
第1レバー式ストッパ81Aをハウジング100の内部に組み込む手順は、次の通りである。
先ず、
図8に示されるように、保持シャフト82を嵌合可能なパイプ状のカラー283を準備する(準備工程)。
次に、カラー283に対して、第1レバー式ストッパ81Aとスプリング84とを組み込んで、レバーアセンブリ212に仮組みする(仮組み工程)。
【0059】
次に、レバーアセンブリ212を、
図7(a)に示されるハウジング100の側壁104に有している開口105から一対の保持部101,102の間へ挿入し、
図8に示されるように、一対の保持部101,102に有している一対のシャフト嵌合孔101a,102aに対してカラー283の位置を合わせる(セット工程)。このときには、第1レバー式ストッパ81Aのストッパ部81aと、スプリング84の第2アーム84d,84dとによって、ストッパバー103を挟み込むようにセットする。この結果、ストッパ部81aと第2アーム84d,84dとは、互いに接近する方向に付勢されることになる。
【0060】
次に、
図9に示されるように、保持シャフト82を一対のシャフト嵌合孔101a,102aとカラー283の嵌合孔283aとに挿入する(例えば圧入する)ことにより、一対の保持部101,102に保持シャフト82によって第1レバー式ストッパ81Aとスプリング84とを組み付ける(組み付け工程)。これで、組み込み作業を完了する。
【0061】
実施例2の説明をまとめると、次の通りである。
実施例2は、
図2及び
図3に示されるように、ステアリングホイール11(
図1参照)と共に回転可能な回転部材71に係合することによって前記回転部材71の回転範囲を規制するレバー式ストッパ81A(第1レバー式ストッパ81A)と、このレバー式ストッパ81Aを前記回転部材71から外れる方向に付勢するスプリング84とを、ハウジング100の内部に設けられている一対の保持部101,102の間に挿入し且つ前記一対の保持部101,102に保持シャフト82によって組み付ける、舵角規制装置270の組立方法であって、
図8に示されるように、前記保持シャフト82を嵌合可能な、前記一対の保持部101,102の間隔Ds以下且つ前記レバー式ストッパ81Aの厚み方向長さよりも長いカラー283を準備する、準備工程と、
次に、
図8に示されるように、前記カラー283に対して、前記レバー式ストッパ81Aと前記スプリング84とを組み込んで、レバーアセンブリ212に仮組みする、仮組み工程と、
次に、
図8に示されるように、前記レバーアセンブリ212を、前記ハウジング100(
図7(a)参照)の側壁104に有している開口105から前記一対の保持部101,102の間へ挿入し、前記一対の保持部101,102に有している一対のシャフト嵌合孔101a,102aに対して前記カラー283の位置を合わせる、セット工程と、
次に、
図9に示されるように、前記保持シャフト82を前記一対のシャフト嵌合孔101a,102aに挿入して、前記カラー283に嵌合することにより、前記一対の保持部101,102に前記保持シャフト82によって前記レバー式ストッパ81Aと前記スプリング84とを組み付ける、組み付け工程と、を有している。
【0062】
このように、実施例2では、
図8及び
図9に示されるように、カラー283に対して、レバー式ストッパ81Aとスプリング84とを組み込むことにより、レバーアセンブリ212として仮組みする。このため、カラー283に対する、スプリング84の位置ズレを防止することができる。スプリング84が、自己の付勢力によってカラー283から変位する心配はない。
次に、仮組み状態のレバーアセンブリ212を、ハウジング100(
図7(a)参照)の側壁104に有している開口105から一対の保持部101,102の間へ挿入し、一対の保持部101,102に有している一対のシャフト嵌合孔101a,102aに対して位置を合わせる。この場合、カラー283の長さL1が、一対の保持部101,102間の間隔Dsよりも短いので、一対の保持部101,102間にレバーアセンブリ212を挿入することは容易である。
次に、保持シャフト82を一対のシャフト嵌合孔101a,102aに挿入する。この結果、一対の保持部101,102に保持シャフト82によってレバー式ストッパ81Aとスプリング84とを、容易に組み付けることができる。
従って、ハウジング100の内部であっても、舵角規制装置270の組立作業性を高めることができる。
【0063】
なお、本発明による舵角規制装置70,270の組立方法は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、実施例に限定されるものではない。
例えば、舵角規制装置70,270は、回転部材71と第1レバー式ストッパ81Aと第1ソレノイド191Aとの組み合わせ構造と、回転部材71と第2レバー式ストッパ81Bと第2ソレノイド191Bとの組み合わせ構造の、いずれか一方のみを有した構成であってもよい。