特開2020-143045(P2020-143045A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-143045(P2020-143045A)
(43)【公開日】2020年9月10日
(54)【発明の名称】慢性腰背部疼痛の処置の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20200814BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20200814BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20200814BHJP
   C07K 16/22 20060101ALN20200814BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20200814BHJP
【FI】
   A61K39/395 N
   A61P25/04ZNA
   A61P29/02
   C07K16/22
   C12N15/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】43
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2020-23081(P2020-23081)
(22)【出願日】2020年2月14日
(31)【優先権主張番号】62/807025
(32)【優先日】2019年2月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/811701
(32)【優先日】2019年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/879615
(32)【優先日】2019年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/963678
(32)【優先日】2020年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100137040
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ ルース ウェスト
(72)【発明者】
【氏名】マーク トーマス ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】キャンディス ロスコフ ブラムソン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】      (修正有)
【課題】以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有する患者において、慢性腰背部疼痛を処置する方法の提供。
【解決手段】皮下注射を介して8週間毎に約10mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を前記患者に投与する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において慢性腰背部疼痛を処置するための方法であって、皮下注射を介して8週間毎に約10mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を前記患者に投与するステップを含み;前記患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、前記抗NGF抗体による処置が、前記抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、方法。
【請求項2】
患者において慢性腰背部疼痛を処置するための方法であって、皮下注射を介して8週間毎に約5mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を前記患者に投与するステップを含み;前記患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、前記抗NGF抗体による処置が、前記抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、方法。
【請求項3】
前記抗NGF抗体がタネズマブである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記処置が、腰背部疼痛強度(LBPI)を効果的に低減させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記処置が、ローランド・モリス能力障害質問票(RMDQ);16週目におけるLBPIにおける≧30%の改善;16週目におけるLBPIにおける≧50%の改善;および/またはベースラインから処置の2週目までのLBPIにおける低減によって測定して、慢性腰背部疼痛を改善する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記処置が、処置の開始の少なくとも24週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記処置が、処置の開始の少なくとも56週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記処置が、処置の開始前または開始時のベースライン値と比較して、腰背部疼痛のLBPI、RMDQおよび/またはPGAを効果的に改善する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記処置が、オピオイド鎮痛薬による処置と比較して、慢性腰背部疼痛を改善する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記処置が、トラマドールによる処置と比較して、慢性腰背部疼痛を改善する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記処置が、NSAIDによる処置と比較して、慢性腰背部疼痛を改善する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記処置が、セレコキシブによる処置と比較して、慢性腰背部疼痛を改善する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、前記抗NGF抗体を投与するステップの前に、前記鎮痛療法で以前に処置された患者である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記以前の治療が、慢性腰背部疼痛の処置に使用される、少なくとも3つの異なるカテゴリーの薬剤を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、少なくとも3つの異なるクラスの鎮痛薬からの不適切な疼痛緩和または少なくとも3つの異なるクラスの鎮痛薬に対する不耐性の履歴を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記クラスの鎮痛薬が、NSAIDおよびオピオイドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者には、前記抗NGF抗体による処置の間にNSAIDが投与されない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者には、前記抗NGF抗体による処置の間にプラセボが投与されない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、前記抗NGF抗体による処置を開始する前に、膝、股関節および/または肩のX線撮影評価に供される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
X線撮影評価が関節の急速進行性変形性関節症を同定した場合、前記患者が、前記抗NGF抗体による処置から除外される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が、中程度から重症の慢性腰背部疼痛を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、少なくとも3カ月間にわたって慢性腰背部疼痛を有していた、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、前記抗NGF抗体を投与するステップの前に、a)脊髄障害におけるケベックタスクフォースの分類に従ってカテゴリー1(照射なしの疼痛)もしくは2(近位照射ありの疼痛[膝よりも上])と分類された、第十二胸椎と殿溝下端との間の原発位置を有する腰背部疼痛;b)少なくとも3カ月間の、慢性腰背部疼痛の持続時間;c)まずまず、悪いもしくは非常に悪い、患者による全般評価(PGA)尺度;および/またはd)5よりも大きい平均LBPIスコアを有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、前記抗NGF抗体を投与するステップの前に、膝変形性関節症のX線撮影エビデンス(Kellgren Lawrenceグレード≦2)を有する;ならびに/または米国リウマチ学会(ACR)の臨床およびX線撮影基準を満たさない;ならびに/または膝変形性関節症と関連する疼痛を有さない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、前記抗NGF抗体を投与するステップの前に、股関節変形性関節症のX線撮影エビデンスを有さないもしくは可能性があるX線撮影エビデンス(Kellgren Lawrenceグレード≦1)を有する、ならびに/または米国リウマチ学会(ACR)の臨床およびX線撮影基準を満たさない;ならびに/または股関節変形性関節症と関連する疼痛を有さない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、前記抗NGF抗体を投与するステップの前に、肩の変形性関節症の症状およびX線撮影エビデンスを有さない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
一定間隔で、膝、股関節および/または肩のX線撮影評価を実施するステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗NGF抗体が、8週間間隔で少なくとも2回以上投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗NGF抗体による処置が、前記患者においてオピオイド嗜癖を防ぐ、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記以前の鎮痛療法が、前記患者へのオピオイドの投与を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記以前の鎮痛療法が、前記患者へのトラマドールの投与を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗NGF抗体が、配列番号1に示される配列を有する可変重鎖領域由来の3つのCDRおよび配列番号2に示される配列を有する可変軽鎖領域由来の3つのCDRを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗NGF抗体が、配列番号3に示される配列を有するHCDR1、配列番号4に示される配列を有するHCDR2、配列番号5に示される配列を有するHCDR3、配列番号6に示される配列を有するLCDR1、配列番号7に示される配列を有するLCDR2および配列番号8に示される配列を有するLCDR3を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗NGF抗体が、配列番号1に示される配列を有する可変重鎖領域および配列番号2に示される配列を有する可変軽鎖領域を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記抗NGF抗体が、配列番号9に示される配列を有する重鎖および配列番号10に示される配列を有する軽鎖を含み、配列番号9の重鎖アミノ酸配列のC末端リジン(K)が任意選択である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記抗NGF抗体が、配列番号11に示される配列を有する重鎖および配列番号10に示される配列を有する軽鎖を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗NGF抗体が、少なくとも80週間にわたって前記患者に投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記不適切な処置が、NSAID、オピオイド、ならびに以下のうち少なくとも1つ:タペンタドール、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピンまたは他の骨格筋弛緩薬、リドカイン、およびデュロキセチンまたは他のセロトニン−ノルエピネフリン再取り込みインヒビターの投与を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記不適切な処置が、NSAID、オピオイド、ならびに以下のうち少なくとも2つ:タペンタドール、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピンまたは他の骨格筋弛緩薬、リドカイン、およびデュロキセチンまたは他のセロトニン−ノルエピネフリン再取り込みインヒビターの投与を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記不適切な処置が、NSAID、オピオイド、ならびに以下のうち少なくとも3つ:タペンタドール、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピンまたは他の骨格筋弛緩薬、リドカイン、およびデュロキセチンまたは他のセロトニン−ノルエピネフリン再取り込みインヒビターの投与を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための抗NGF抗体であって、前記方法が、皮下注射を介して8週間毎に約10mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を前記患者に投与するステップを含み;前記患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、前記抗NGF抗体による処置が、前記抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、抗NGF抗体。
【請求項42】
患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための抗NGF抗体であって、前記方法が、皮下注射を介して8週間毎に約5mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を前記患者に投与するステップを含み;前記患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、前記抗NGF抗体による処置が、前記抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、抗NGF抗体。
【請求項43】
前記方法が、請求項3から40のいずれか一項に定義される通りである、請求項41または42に記載の使用のための抗NGF抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗神経成長因子(NGF)抗体による慢性腰背部疼痛の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
12週間よりも長く持続する背部疼痛として一般に定義される慢性腰背部疼痛は、世界中で、罹患率、能力障害および生産性喪失の大きな原因である(Borenstein D.Musculoskeletal Medicine 1996;22(3);439〜456)。慢性腰背部疼痛の有病率の推定値は、研究毎および地理的地域毎に変動するが、慢性腰背部疼痛は、研究した全ての地域における慢性疼痛および能力障害の共通の原因である。米国では、1988 United States National Health Interview Surveyから導き出された慢性腰背部疼痛の有病率は6.4%であり(Praemerら、Rosemont:AAOS、1992:1〜99)、2008年の調査では、慢性腰背部疼痛の有病率は8.1%と推定された(Johannesら、Journal of Pain;2010;11(11):1230〜1239)。欧州における推定値は、非特異的慢性腰背部疼痛の有病率が23%であることを示唆し、集団の11〜12%が、腰背部疼痛によって能力障害される(Airakinsinenら、Eur Spine J;2006;15(補遺2):S192〜S300)。日本では、大集団ベースの調査により集団の3.87%が、その生存期間の間に、慢性の能力障害性の腰背部疼痛を経験していたことが見出された(Tomokoら、Eur Spine J.オンライン発行:2012年8月7日)。
【0003】
慢性腰背部疼痛の大部分は、単一の病態生理学的または解剖学的原因に起因すると考えることはできず、通常は、多因子性の性質である。この背部疼痛は、「機械的」または「非特異的」腰背部疼痛と呼ばれる場合が多い(Deyoら、N Engl J Med 2001;344:363〜370)。背部疼痛は、椎間関節、靱帯、脊椎傍筋系、椎間板および神経を含む多くの脊髄構造に起源し得る。腰背部疼痛の一般的原因には、筋靱帯(musculoligamentous)構造に対する傷害、椎間板および椎間関節の加齢性変性プロセス、脊柱管狭窄、ならびに椎間板ヘルニアが含まれる(Deyo RAら、N Engl J Med 2001;344:363〜370)。ほとんどの症例において具体的病因が欠如しているため、治療手段は、症候の緩和を提供し機能を回復することを目的としている。
【0004】
慢性腰背部疼痛を処置するために一般に使用される医薬薬剤には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、三環系抗うつ薬、筋弛緩薬、オピオイド鎮痛薬、および中枢神経系において活性な他の薬物が含まれる。しかし、これらの薬剤は、多くの患者において完全には有効ではなく、これらの薬剤の使用は、胃腸管出血、傾眠および認知障害などの副作用によって制限され得る。さらに、高価で未実証の、多くの患者に不適切な疼痛緩和をなおも与える、種々の他の治療モダリティ、例えば、硬膜外注射、神経ブロック、椎間関節注射、移植された電気刺激装置およびポンプ、理学療法、カイロプラクティックならびに刺鍼法が存在する。オピエートの毒性を伴わない、NSAIDに対して応答性でない疼痛の薬理学的管理は、中程度から重症の慢性腰背部疼痛を経験している患者にとって必要である。
【0005】
重要な疼痛モジュレーターの機能を標的化する新規薬理的治療の開発は、改善された効力および/または安全性を有する新たな処置選択肢を提供し得る。神経成長因子(NGF)は、ニューロトロフィンであり、疼痛の重要なメディエーターであり、疼痛のシグナル伝達および病態生理において実証された役割を有する。タネズマブは、NGFに対する高い特異性および親和性を有し、それによって、その受容体TrkAおよびp75へのNGFの結合を遮断するヒト化抗NGFモノクローナル抗体である(Abdicheら、Protein Sci.2008;17(8):1326〜1335;Heftiら、Trends Pharmacol Sci.2006;27(2):85〜91;Mantyhら、Anesthesiology.2011;115(1):189〜204)。慢性疼痛状態(OAおよび慢性腰背部疼痛)を有する患者におけるランダム化臨床試験では、タネズマブは、疼痛を顕著に低減させ、身体機能および患者によるOAの全般評価(PGA)を改善することによって、臨床的に有意義な改善を提供した(Balnescuら、Ann Rheum Dis.2014;73(9):1665〜1672;Brownら、J Neurol Sci.2014;345(1〜2):139〜147;Brownら、J Pain.2012;13(8):790〜798;Brownら、Arthritis Rheum.2013;65(7):1795〜1803;Ekmanら、J Rheumatol.2014;41(11):2249〜2259;Evansら、J Urol.2011;185(5):1716〜1721;Gimbelら、Pain.2014;155(9):1793〜1801;Katzら、Pain.2011;152(10):2248〜2258;Kivitzら、Pain.2013;154(7):1009〜1021;Laneら、N Engl J Med.2010;363(16):1521〜1531;Nagashimaら、Osteoarthritis Cartilage.2011;19(12):1405〜1412;Schnitzerら、Ann Rheum Dis.2015;74(6):1202〜1211;Schnitzerら、Osteoarthritis Cartilage.2011;19(6):639〜646;Spieringsら、Pain.2013;154(9):1603〜1612;Spieringsら、Pain.2014;155(11):2432〜2433)。後期開発研究の実施の間の、全人工関節置換術を必要とする予期せぬAEにより、米国食品医薬品局は、開発中の全てのNGFインヒビター治療に対して部分的臨床試験差し止めを課した(がん疼痛を除く全ての適応症について)。盲検化された判定委員会は、関節関連AEを審査および判定し、より高い用量での、NSAIDと組み合わせたタネズマブ処置が、急速進行性OAにおける増加と関連したことを決定した(Hochbergら、Arthritis Rheumatol.2016;68(2):382〜391)。部分的臨床試験差し止めは、引き続いて解除され、リスク緩和戦略が、抗NGF抗体の試験設計に取り込まれている。
【0006】
安全性は、オピオイドまたはNSAIDによる長期治療に関連する懸念である。オピオイドは、傾眠、鎮静作用、悪心、嘔吐、眩暈、口渇、そう痒、平滑筋攣縮、尿閉および便秘を含む種々の一般的な有害効果と関連する。これは、CNSの内側および外側の両方の種々の構造、例えば、GI管(例えば、便秘)、前庭系(例えば、悪心および眩暈)および髄質(例えば、嘔吐)におけるオピオイド受容体の存在、ならびにオピオイド受容体シグナリングの役割に起因する。呼吸抑制は、慢性オピオイド使用によるあまり一般的でないAEであるが、この潜在的に重篤な事象は、脳幹の呼吸中枢に位置するμ−オピオイド受容体の活性化および/またはCO蓄積を脳幹にシグナリングする構造を介して媒介される。最後に、伝統的なμ−オピオイド受容体アゴニストは、阻害性介在ニューロンからのGABAの放出を阻害することによって、中脳辺縁系におけるドーパミンシグナリングを活性化して、これが、多幸感を生じ得、一部の患者では強力な報酬状態をもたらし得る。モニタリングされないオピオイド使用は、嗜癖の発達を生じ得、米国では1150万人の人々がオピオイドを濫用していると推定され、オピオイド過量服薬に起因する死亡は、過去十年間にわたって増加しており、年間およそ42,000人が死亡する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,816,567号
【特許文献2】米国特許第5,225,539号
【特許文献3】米国特許第5,585,089号
【特許文献4】米国特許第5,693,761号
【特許文献5】米国特許第5,693,762号
【特許文献6】米国特許第5,859,205号
【特許文献7】米国特許第6,180,370号
【特許文献8】PCT国際出願公開番号WO01/27160
【特許文献9】WO2004058184
【特許文献10】米国特許第6,737,056号
【特許文献11】米国特許第5,500,362号
【特許文献12】米国特許第5,821,337号
【特許文献13】米国特許出願公開第2009/0041717号
【特許文献14】米国特許第7,314,622号
【特許文献15】米国特許第5,047,335号
【特許文献16】米国特許第5,510,261号
【特許文献17】米国特許第5,278,299号
【特許文献18】米国特許第4,683,195号
【特許文献19】米国特許第4,800,159号
【特許文献20】米国特許第4,754,065号
【特許文献21】米国特許第4,683,202号
【特許文献22】PCT出願公開番号WO87/04462
【特許文献23】米国特許第4,485,045号
【特許文献24】米国特許第4,544,545号
【特許文献25】米国特許第5,013,556号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Borenstein D.Musculoskeletal Medicine 1996;22(3);439〜456
【非特許文献2】Praemerら、Rosemont:AAOS、1992:1〜99
【非特許文献3】Johannesら、Journal of Pain;2010;11(11):1230〜1239
【非特許文献4】Airakinsinenら、Eur Spine J;2006;15(補遺2):S192〜S300
【非特許文献5】Tomokoら、Eur Spine J.オンライン発行:2012年8月7日
【非特許文献6】Deyoら、N Engl J Med 2001;344:363〜370
【非特許文献7】Abdicheら、Protein Sci.2008;17(8):1326〜1335
【非特許文献8】Heftiら、Trends Pharmacol Sci.2006;27(2):85〜91
【非特許文献9】Mantyhら、Anesthesiology.2011;115(1):189〜204
【非特許文献10】Balnescuら、Ann Rheum Dis.2014;73(9):1665〜1672
【非特許文献11】Brownら、J Neurol Sci.2014;345(1〜2):139〜147
【非特許文献12】Brownら、J Pain.2012;13(8):790〜798
【非特許文献13】Brownら、Arthritis Rheum.2013;65(7):1795〜1803
【非特許文献14】Ekmanら、J Rheumatol.2014;41(11):2249〜2259
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書で開示される発明は、以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有する患者において、慢性腰背部疼痛を処置することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、一態様では、本発明は、患者において慢性腰背部疼痛を処置するための方法であって、皮下注射を介して8週間毎に約10mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、方法を提供する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、患者において慢性腰背部疼痛を処置するための方法であって、皮下注射を介して8週間毎に約5mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、方法を提供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、患者において慢性腰背部疼痛を処置するための方法であって、皮下注射を介して8週間毎に約2.5mg〜約20mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、方法を提供する。
【0013】
一部の実施形態では、抗NGF抗体は、タネズマブである。
【0014】
本発明に従う処置の臨床的利点は、例えば、腰背部疼痛強度(LBPI)、ローランド・モリス能力障害質問票(Roland Morris Disability Questionnaire)(RMDQ)および/または患者による腰背部疼痛の全般評価によって測定され得る。
【0015】
一部の実施形態では、抗NGF抗体は、処置の開始後、少なくとも24週間、32週間、40週間、48週間または56週間にわたって、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。
【0016】
一部の実施形態では、この処置は、腰背部疼痛強度(LBPI)を効果的に低減させる。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、LBPIスコアを、少なくとも約2.5、少なくとも約2.6、少なくとも約2.7、少なくとも約2.8、少なくとも約2.9、少なくとも約3.0、少なくとも約3.1、少なくとも約3.2または少なくとも3.3低減させる。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、LBPIスコアを、少なくとも約38〜50%低減させる。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインと比較して、LBPIスコアを、少なくとも約38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または50%低減させる。一部の実施形態では、LBPIスコアにおける低減は、処置の16週目において観察される。一部の実施形態では、LBPIスコアにおける低減は、処置の56週目において観察される。一部の実施形態では、LBPIスコアは、一日平均LBPIスコアである。一部の実施形態では、ベースラインからの変化は、最小二乗平均である。
【0017】
一部の実施形態では、この処置は、ローランド・モリス能力障害質問票(RMDQ);16週目におけるLBPIにおける≧30%の改善;16週目におけるLBPIにおける≧50%の改善;および/またはベースラインから処置の2週目までのLBPIにおける低減によって測定して、慢性腰背部疼痛を改善する。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約3.8〜7.2改善する。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約5.8〜7.2改善する。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約6.1〜6.9改善する。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインと比較して、RMDQスコアを、約6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6、7、6.8または6.9改善する。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約35〜50%改善する。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または50%改善する。一部の実施形態では、RMDQにおける改善は、処置の16週目において観察される。一部の実施形態では、RMDQにおける改善は、処置の56週目において観察される。一部の実施形態では、ベースラインからの変化は、最小二乗平均である。
【0018】
一部の実施形態では、この処置は、患者の51〜35%に、16週目におけるLBPIにおける≧50%の改善を提供する。一部の実施形態では、この処置は、患者の43〜38%に、16週目におけるLBPIにおける≧50%の改善を提供する。一部の実施形態では、この処置は、患者の少なくとも約43%、44%、45%、46%または47%に、16週目におけるLBPIにおける≧50%の改善を提供する。
【0019】
一部の実施形態では、この処置は、オピオイド鎮痛薬による処置と比較して、慢性腰背部疼痛尺度を改善する。一部の実施形態では、この処置は、トラマドールによる処置と比較して、慢性腰背部疼痛尺度を改善する。改善される慢性腰背部疼痛尺度は、上で議論したような、LBPIおよびRMDQから選択される。
【0020】
一部の実施形態では、この処置は、NSAIDによる処置と比較して、慢性腰背部疼痛尺度を改善する。一部の実施形態では、この処置は、セレコキシブによる処置と比較して、慢性腰背部疼痛尺度を改善する。改善される慢性腰背部疼痛尺度は、上で議論したような、LBPIおよびRMDQから選択される。
【0021】
一部の実施形態では、患者は、鎮痛療法を含む以前の治療からの不適切な疼痛緩和または鎮痛療法を含む以前の治療に対する不耐性の履歴を有する。以前の治療は、CLBPの処置に使用される、少なくとも3つの異なるカテゴリーの薬剤を含み得る。これらの薬剤には、アセトアミノフェン/低用量NSAID;処方NSAID;オピオイド;タペンタドール;三環系抗うつ薬;ベンゾジアゼピンもしくは骨格筋弛緩薬;リドカインパッチ;および/またはデュロキセチンもしくは他のセロトニン−ノルエピネフリン再取り込みインヒビターが含まれ得る。
【0022】
一部の実施形態では、不適切な処置は、NSAID、オピオイド、ならびに以下のうち少なくとも1つ:タペンタドール、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピンまたは他の骨格筋弛緩薬、リドカイン、およびデュロキセチンまたは他のセロトニン−ノルエピネフリン再取り込みインヒビターの投与を含む。一部の実施形態では、不適切な処置は、NSAID、オピオイド、ならびに以下のうち少なくとも2つ:タペンタドール、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピンまたは他の骨格筋弛緩薬、リドカイン、およびデュロキセチンまたは他のセロトニン−ノルエピネフリン再取り込みインヒビターの投与を含む。一部の実施形態では、不適切な処置は、NSAID、オピオイド、ならびに以下のうち少なくとも3つ:タペンタドール、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピンまたは他の骨格筋弛緩薬、リドカイン、およびデュロキセチンまたは他のセロトニン−ノルエピネフリン再取り込みインヒビターの投与を含む。
【0023】
一部の実施形態では、患者は、少なくとも3つの異なるクラスの鎮痛薬からの不適切な疼痛緩和または少なくとも3つの異なるクラスの鎮痛薬に対する不耐性の履歴を有する。鎮痛療法は、NSAID、トラマドールまたはオピオイドを含み得る。一部の実施形態では、患者は、少なくとも2つ、少なくとも3つもしくは少なくとも4つの異なるクラスの薬剤からの不適切な疼痛緩和、または少なくとも2つ、少なくとも3つもしくは少なくとも4つの異なるクラスの薬剤に対する不耐性の履歴を有する。一部の実施形態では、患者は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つの鎮痛薬からの不適切な疼痛緩和、または少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つの鎮痛薬に対する不耐性の履歴を有する。一部の実施形態では、患者は、鎮痛療法からいくらかの利益を経験しているが、さらなる疼痛緩和をなおも必要とする。一部の実施形態では、患者は、以前の処置において、1つまたは複数の鎮痛薬、ある実施形態ではオピオイド鎮痛薬を摂取するのを嫌がった履歴を有する。一部の実施形態では、患者は、禁忌に起因して鎮痛薬を摂取できなかった。一部の実施形態では、患者は、禁忌に起因してトラマドールまたはオピオイドを摂取できなかった。一部の実施形態では、患者は、オピオイド嗜癖と診断されている。この集団の選択の根拠は、より重症のまたは処置抵抗性の疼痛を有し、残りの処置選択肢が限定された患者を選択することによって、処置される患者についての潜在的なベネフィット−リスク関係を最適化することである。
【0024】
一部の実施形態では、患者は、抗NGF抗体を投与するステップの前に、鎮痛療法で以前に処置された。
【0025】
一部の実施形態では、患者は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つの以前の治療による処置の履歴を有する。以前の治療は、CLBPの処置のための同じまたは異なるクラスの薬剤からのものであり得る。
【0026】
一部の実施形態では、患者は、鎮痛療法からいくらかの利益を経験しているが、さらなる疼痛緩和をなおも必要とする。例えば、鎮痛療法からいくらかの利益を経験しているにもかかわらず、患者は、脊髄障害におけるケベックタスクフォース(Quebec Task Force in Spinal Disorders)の分類に従ってカテゴリー1または2と分類された慢性腰背部疼痛、≧3カ月の慢性腰背部疼痛(CLBP)の持続時間、少なくとも4回の毎日の評価にわたる≧5の平均腰背部疼痛強度(LBPI)スコアによって実証される中程度から重症のCLBP、および「まずまず(fair)」、「悪い」または「非常に悪い」、患者による腰背部疼痛の全般評価のベースラインを経験し続ける。
【0027】
一部の実施形態では、鎮痛療法は、患者へのオピオイドの投与を含む。一部の実施形態では、鎮痛療法は、患者へのトラマドールの投与を含む。一部の実施形態では、鎮痛療法は、患者へのNSAIDの投与を含む。一部の実施形態では、鎮痛療法は、患者へのセレコキシブの投与を含む。
【0028】
一部の実施形態では、この処置は、患者においてオピオイド嗜癖を防ぐ。一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、オピオイドの投与を回避し、オピオイド嗜癖を防ぐ。
【0029】
一部の実施形態では、患者は、鎮痛薬に対する嗜癖の履歴を有する。一部の実施形態では、患者は、オピオイドに対する嗜癖の履歴を有する。一部の実施形態では、患者は、トラマドールに対する嗜癖の履歴を有する。
【0030】
一部の実施形態では、鎮痛薬は、オピオイド、NSAID、アセトアミノフェンから選択され得る。一部の実施形態では、NSAIDは、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロシン(naprosyn)、ジクロフェナク、ケトプロフェン、トルメチン、スリンダク(slindac)、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ジフルニサル、フルフェニサル(flufenisal)、ピロキシム(piroxim)、スドキシカム、イソキシカム;セレコキシブ、ロフェコキシブ、DUP−697、フロスリド(flosulide)、メロキシカム、6−メトキシ−2ナフチル酢酸、MK−966、ナブメトン、ニメスリド、NS−398、SC−5766、SC−58215、T−614から選択されるCOX−2インヒビター;またはそれらの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、オピオイドは、モルヒネ様の生物学的活性を示す任意の化合物であり得る。一部の実施形態では、オピオイド鎮痛薬は、トラマドール、モルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、ジアセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、オキシモルフォン、アルフェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、フェンタニル、スフェンタニル(sufentanyl)、メペリジン、メサドン、ナルブフィン、プロポキシフェンおよびペンタゾシン;またはそれらの組み合わせから選択される。
【0031】
一部の実施形態では、患者には、抗NGF抗体による処置の間、NSAIDが投与されない。一部の実施形態では、患者には、抗NGF抗体による処置の間、付随NSAIDが投与されない。一部の実施形態では、患者には、8週間の処置間隔中の10日間よりも長い任意の期間にわたって、NSAIDが投与されない。一部の実施形態では、患者には、抗体の最後の用量の後16週間にわたって、NSAIDが投与されない。
【0032】
一部の実施形態では、患者には、経口プラセボであり得るプラセボが投与されない。
【0033】
一部の実施形態では、患者は、中程度から重症の慢性腰背部疼痛を有する。
【0034】
一部の実施形態では、慢性腰背部疼痛は、連続した3カ月間よりも長い期間にわたって持続する腰背部疼痛である。
【0035】
一部の実施形態では、患者は、抗NGF抗体による処置の前に、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11または少なくとも12カ月間にわたって、慢性腰背部疼痛を有していた。一実施形態では、患者は、少なくとも3カ月間にわたって、慢性腰背部疼痛を有していた。一部の実施形態では、患者は、抗NGF抗体による処置の前に、少なくとも18、24、30、36、42、48または56カ月間にわたって、慢性腰背部疼痛を有していた。一部の実施形態では、患者は、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11または少なくとも12年間にわたって、慢性腰背部疼痛を有していた。一部の実施形態では、患者は、少なくとも10年間にわたって、慢性腰背部疼痛を有していた。
【0036】
一部の実施形態では、抗NGF抗体は、8週間間隔で、少なくとも2、3、4、5、6またはそれ以上の用量にわたって投与される。一部の実施形態では、抗NGF抗体は、少なくとも16、24、32、40、48、56、56、72、80、88または96週間にわたって患者に投与される。一部の実施形態では、抗NGF抗体は、少なくとも80週間にわたって患者に投与される。
【0037】
一部の実施形態では、抗NGF抗体は、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mg、10.5mg、11mg、11.5mg、12mg、12.5mg、13mg、13.5mg、14mg、14.5mg、15mg、15.5mg、16mg、16.5mg、17mg、17.5mg、18mg、18.5mg、19mg、19.5mgまたは20mgの用量で投与される。
【0038】
一部の実施形態では、患者は、抗NGF抗体を投与するステップの前に、a)脊髄障害におけるケベックタスクフォースの分類に従ってカテゴリー1(照射なしの疼痛)もしくは2(近位照射ありの疼痛[膝よりも上])と分類された、第十二胸椎と殿溝下端との間の原発位置を有する腰背部疼痛;b)少なくとも3カ月間の、慢性腰背部疼痛の持続時間;c)まずまず、悪いもしくは非常に悪い、患者による腰背部疼痛の全般評価(PGA)尺度;および/またはd)5よりも大きい平均LBPIスコア(これは、抗NGF抗体を投与する前の5日間の間の、少なくとも4回の毎日の評価にわたって測定され得る)を有する。
【0039】
一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置前の患者は、変形性関節症および/または変形性関節症と関連する疼痛を有さない。
【0040】
一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置前の患者は、膝変形性関節症の軽度のX線撮影エビデンス(Kellgren Lawrenceグレード≦2)を有する;ならびに/または米国リウマチ学会(ACR)の臨床およびX線撮影基準を満たさない;ならびに/または膝変形性関節症と関連する疼痛を有さない。
【0041】
一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置前の患者は、股関節変形性関節症のX線撮影エビデンスを有さないもしくは可能性があるX線撮影エビデンス(Kellgren Lawrenceグレード≦1)を有する;ならびに/または米国リウマチ学会(ACR)の臨床およびX線撮影基準を満たさない;ならびに/または股関節変形性関節症と関連する疼痛を有さない。
【0042】
一部の実施形態では、抗NGF抗体で処置する前の患者は、肩の変形性関節症の症状およびX線撮影エビデンスを有さない。
【0043】
一部の実施形態では、患者は、抗NGF抗体による処置を開始する前に、膝、股関節および/または肩のX線撮影評価に供される。一部の実施形態では、X線撮影評価が関節の急速進行性変形性関節症を同定した場合、患者は、抗NGF抗体による処置から除外される。
【0044】
一部の実施形態では、この方法は、抗NGF抗体による処置の間、一定間隔で、膝、股関節および/または肩のX線撮影評価を実施するステップをさらに含む。
【0045】
一部の実施形態では、患者が、米国リウマチ学会(ACR)の臨床およびX線撮影基準によって定義される膝もしくは股関節の変形性関節症を有する;Kellgren−Lawrenceグレード≧2の股関節変形性関節症のX線撮影エビデンスを有する;ならびに/またはKellgren−Lawrenceグレード≧3の膝変形性関節症のX線撮影評価を有する、ならびに/または肩の変形性関節症の症状およびX線撮影エビデンスを有すると診断されている場合、患者は、抗NGF抗体による処置の前またはその間に、処置から除外され得る。
【0046】
一部の実施形態では、中央の放射線医学レビュアーによって決定され、画像診断アトラスにおいて定義されるように、スクリーニング時に以下の状態のいずれかのX線撮影エビデンスが存在する場合、患者は、抗NGF抗体による処置の前またはその間に、処置から除外され得る:1)急速進行性変形性関節症、2)萎縮性もしくは発育不全性(hypotrophic)変形性関節症、3)軟骨下脆弱性骨折(subchondral
insufficiency fracture)、4)膝の特発性骨壊死(SPONK)、5)骨壊死、または6)病的骨折。
【0047】
一部の実施形態では、中央の放射線医学レビュアーによって決定され、画像診断アトラスにおいて定義されるように、任意のスクリーニング時X線写真中に、以下の状態のいずれかのX線撮影エビデンスが存在する場合、患者は、抗NGF抗体による処置の前またはその間に、処置から除外され得る:膝の過剰なマルアライメント、重症軟骨石灰化症;他の関節症(例えば、関節リウマチ)、全身性代謝性骨疾患(例えば、偽痛風、パジェット病;転移性石灰化)、大きい嚢胞性病変、原発性もしくは転移性腫瘍病変、疲労骨折または外傷性骨折。
【0048】
一部の実施形態では、慢性腰背部疼痛の評価を混乱させ得る脊髄疾患または他の状態の履歴またはエビデンスが存在する場合、患者は、抗NGF抗体による処置の前またはその間に、処置から除外され得る。一部の実施形態では、脊髄疾患には、強直性脊椎炎、関節リウマチ、腫瘍またはパジェット病が含まれ得る。一部の実施形態では、慢性腰背部疼痛の評価を混乱させ得る状態には、線維筋痛症、または内臓障害に起因する背部疼痛が含まれ得る。
【0049】
一部の実施形態では、2回の投与を受けた後に満足のいく臨床応答を有さない患者は、さらなる用量を受けない。
【0050】
一部の実施形態では、抗NGF抗体は、配列番号1に示される配列を有する可変重鎖領域由来の3つのCDRおよび配列番号2に示される配列を有する可変軽鎖領域由来の3つのCDRを含む。一部の実施形態では、抗NGF抗体は、配列番号3に示される配列を有するHCDR1、配列番号4に示される配列を有するHCDR2、配列番号5に示される配列を有するHCDR3、配列番号6に示される配列を有するLCDR1、配列番号7に示される配列を有するLCDR2および配列番号8に示される配列を有するLCDR3を含む。一部の実施形態では、抗NGF抗体は、配列番号1に示される配列を有する可変重鎖領域および配列番号2に示される配列を有する可変軽鎖領域を含む。一部の実施形態では、抗NGF抗体は、配列番号9に示される配列を有する重鎖および配列番号10に示される配列を有する軽鎖を含む。一部の実施形態では、配列番号9の重鎖アミノ酸配列のC末端リジン(K)は、任意選択である。したがって、一部の実施形態では、重鎖アミノ酸配列は、C末端リジン(K)を欠き、配列番号11に示される配列を有する。
【0051】
一部の実施形態では、この方法は、有効量の第2の治療剤を投与するステップをさらに含む。
【0052】
本明細書に記載される、患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための抗NGF抗体もまた提供される。
【0053】
したがって、本発明は、患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための抗NGF抗体であって、この方法が、皮下注射を介して8週間毎に約10mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、抗NGF抗体もまた提供する。
【0054】
患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための抗NGF抗体であって、この方法が、皮下注射を介して8週間毎に約5mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、抗NGF抗体もまた提供される。
【0055】
患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための抗NGF抗体であって、この方法が、皮下注射を介して8週間毎に約2.5mg〜約20mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、抗NGF抗体もまた提供される。
【0056】
本明細書に記載される、患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための医薬の製造における抗NGF抗体の使用もまた提供される。
【0057】
したがって、本発明は、患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための医薬の製造における抗NGF抗体の使用であって、この方法が、皮下注射を介して8週間毎に約10mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、使用もまた提供する。
【0058】
患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための医薬の製造における抗NGF抗体の使用であって、この方法が、皮下注射を介して8週間毎に約5mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、使用もまた提供される。
【0059】
患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法における使用のための医薬の製造における抗NGF抗体の使用であって、この方法が、皮下注射を介して8週間毎に約2.5mg〜約20mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、使用もまた提供される。
【0060】
本明細書に記載される慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置する方法に言及する実施形態では、かかる実施形態は、その処置における使用のための抗NGF抗体の、またはあるいは、その処置における使用のための医薬の製造における抗NGF抗体の使用の、さらなる実施形態でもある。
【0061】
本発明の各態様の好ましい特色は、変更すべきところは変更して、各他の態様に等しく当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】実施例1に記載される研究についての研究概要である。
図2】LBPIおよびRMDQスコアにおける、ベースラインから16週目までの変化を示す図である。
図3】実施例1に記載される研究についての、56週目までの、LBPIスコアについてのベースラインからの変化を示す図である。
図4】実施例1に記載される研究についての、56週目までの、RMDQについてのベースラインからの変化を示す図である。
図5】56週間の処置期間を通じた、LBPIスコアおよびRMDQスコアの両方における変化を示す図である。
図6】LBPIおよびRMDQスコアにおける、ベースラインから56週目までの変化を示す図である。
図7】16週目においてLBPIにおける>0%〜≧90%の改善を有する患者の割合を示す図である。
図8】実施例2に記載される研究についての研究概要である。
図9】実施例2に記載される研究についての、LBPIスコアにおける、ベースラインから56週目までの変化を示す図である。
図10】実施例2に記載される研究についての、56週目までの、RMDQについてのベースラインからの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本明細書で開示される発明は、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有する患者における慢性腰背部疼痛の処置に関する。
【0064】
したがって、一態様では、本発明は、患者において慢性腰背部疼痛を処置するための方法であって、皮下注射を介して8週間毎に約10mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、方法を提供する。
【0065】
さらなる態様では、本発明は、患者において慢性腰背部疼痛を処置するための方法であって、皮下注射を介して8週間毎に約5mgの用量の抗神経成長因子(NGF)抗体を患者に投与するステップを含み;患者が、鎮痛薬を含む以前の治療に対する不適切な処置応答の履歴を有し、抗NGF抗体による処置が、抗NGF抗体による処置の開始の少なくとも16週間後に、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する、方法を提供する。
【0066】
一般的技術
本発明の実施は、特記しない限り、当業者の技術範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を使用する。かかる技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.GriffithsおよびD.G.Newell編、1993〜1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.編、IRL Press、1988〜1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献中で完全に説明されている。
【0067】
定義
以下の用語は、特記しない限り、以下の意味を有すると理解されものとする:
【0068】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、標的、例えば、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどへの特異的結合が可能な免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、この用語は、インタクトなポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけではなく、特記しない限り、特異的結合についてインタクトな抗体と競合するその任意の抗原結合部分、抗原結合部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変された立体配置もまた包含する。抗原結合部分には、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、ドメイン抗体(dAb、例えば、サメおよびラクダ科動物の抗体)、相補性決定領域(CDR)を含む断片、単鎖可変断片抗体(scFv)、マキシボディ(maxibody)、ミニボディ(minibody)、イントラボディ(intrabody)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、v−NARおよびbis−scFv、ならびにそのポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部分を含むポリペプチドが含まれる。抗体には、任意のクラス、例えば、IgG、IgAもしくはIgM(またはそれらのサブクラス)の抗体が含まれ、抗体は、任意の特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスに割当てられ得る。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgAおよびIgAへとさらに分割され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置は、周知である。
【0069】
抗体の「可変領域」は、単独または組み合わせでのいずれかの、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域を指す。当該分野で公知のように、重鎖および軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としても公知の3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなり、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。特に、CDR領域の外側(即ち、フレームワーク領域中)のアミノ酸残基において置換を有する、対象可変領域のバリアントが所望される場合、適切なアミノ酸置換、好ましくは、保存的アミノ酸置換は、対象可変領域を、対象可変領域と同じカノニカルクラスのCDR1およびCDR2配列を含む他の抗体の可変領域と比較することによって、同定され得る(ChothiaおよびLesk、J Mol Biol 196(4):901〜917、1987)。
【0070】
ある特定の実施形態では、CDRの定義的描写、および抗体の結合部位を構成する残基の同定は、抗体の構造を解析することおよび/または抗体−リガンド複合体の構造を解析することによって達成される。ある特定の実施形態では、それは、当業者に公知の種々の技術のいずれか、例えばX線結晶学によって達成され得る。ある特定の実施形態では、分析の種々の方法が、CDR領域を同定または近似するために使用され得る。ある特定の実施形態では、分析の種々の方法が、CDR領域を同定または近似するために使用され得る。かかる方法の例には、Kabat定義、Chothia定義、AbM定義、接触定義およびコンフォメーション定義が含まれるがこれらに限定されない。
【0071】
Kabat定義は、抗体中の残基を番号付けするための基準であり、典型的には、CDR領域を同定するために使用される。例えば、JohnsonおよびWu、2000、Nucleic Acids Res.、28:214〜8を参照のこと。Chothia定義は、Kabat定義と類似であるが、Chothia定義は、特定の構造的ループ領域の位置を考慮に入れる。例えば、Chothiaら、1986、J.Mol.Biol.、196:901〜17;Chothiaら、1989、Nature、342:877〜83を参照のこと。AbM定義は、抗体構造をモデル化する、Oxford Molecular Groupが作成したコンピュータープログラムの統合スイートを使用する。例えば、Martinら、1989、Proc Natl Acad Sci(USA)、86:9268〜9272;「AbMTM,A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies」、Oxford、UK;Oxford Molecular,Ltd.を参照のこと。AbM定義は、Samudralaら、1999、「Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach」、PROTEINS、Structure,Function and Genetics 補遺3:194〜198に記載されるものなどの、知識データベースおよびab initio法の組み合わせを使用して、一次配列から抗体の三次構造をモデル化する。接触定義は、入手可能な複合体結晶構造の分析に基づく。例えば、MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、5:732〜45を参照のこと。本明細書でCDRの「コンフォメーション定義」と呼ばれる別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基として同定され得る。例えば、Makabeら、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156〜1166を参照のこと。なお他のCDR境界定義は、上記アプローチのうち1つに厳密に従わなくてもよいが、それにもかかわらずKabat CDRの少なくとも一部分と重複するが、それらは、特定の残基または残基の群は抗原結合に顕著には影響しないという予測または実験的知見の観点から、短縮または延長され得る。本明細書で使用する場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当該分野で公知の任意のアプローチによって定義されるCDRを指し得る。本明細書で使用される方法は、これらのアプローチのいずれかに従って定義されるCDRを利用し得る。1つよりも多くのCDRを含む任意の所与の実施形態について、CDRは、Kabat、Chothia、拡張型(extended)、AbM、接触および/またはコンフォメーション定義のいずれかに従って定義され得る。
【0072】
当該分野で公知のように、抗体の「定常領域」は、単独または組み合わせでのいずれかの、抗体軽鎖の定常領域または抗体重鎖の定常領域を指す。
【0073】
本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る可能な天然に存在する変異を除き、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対して指向される。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して指向された異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られるとして抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、1975、Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作製され得、または米国特許第4,816,567号に記載されるような組換えDNA法によって作製され得る。モノクローナル抗体は、例えば、McCaffertyら、1990、Nature 348:552〜554に記載される技術を使用して生成されるファージライブラリーからも単離され得る。
【0074】
本明細書で使用する場合、「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または抗体の他の抗原結合サブ配列)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。好ましくは、ヒト化抗体は、レシピエントのCDR由来の残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する、非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラットまたはウサギのCDR由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも、インポートされたDCR中にもフレームワーク配列中にも見出されないが、抗体性能をさらに精緻化および最適化するために含まれる残基を含み得る。
【0075】
一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にも、インポートされたDCR中にもフレームワーク配列中にも見出されないが、抗体性能をさらに精緻化および最適化するために含まれる残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、任意選択により、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものもまた含む。本発明の一部の態様では、抗体は、PCT国際出願公開番号WO99/58572に記載されるように改変されたFc領域を有する。他の形態のヒト化抗体は、元の抗体由来の1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる、元の抗体に関して変更され得る、1つまたは複数のCDR(CDR L1、CDR L2、CDR L3、CDR H1、CDR H2またはCDR H3)を有する。
【0076】
ヒト化は、げっ歯類または変異体げっ歯類CDRまたはCDR配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することによって、Winterおよび共同研究者の方法に従って本質的に実施され得る(Jonesら、Nature 321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature 332:323〜327(1988);Verhoeyenら、Science 239:1534〜1536(1988))。米国特許第5,225,539号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;同第5,859,205号もまた参照のこと;これらは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。一部の例では、ヒト免疫グロブリンの1つまたは複数の可変領域のフレームワーク領域内の残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる(例えば、米国特許第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号を参照のこと)。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含み得る。これらの改変は、(例えば、所望の親和性を得るために)抗体性能をさらに精緻化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、任意選択により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものもまた含む。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321:522〜525(1986);Riechmannら、Nature 332:323〜327(1988);およびPresta Curr.Op.Struct.Biol.2:593〜596(1992)を参照のこと;これらは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。したがって、かかる「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインに実質的に満たない部分が、非ヒト種由来の対応する配列によって置換された抗体を含み得る。実務上、ヒト化抗体は、典型的には、一部のCDR残基およびおそらくは一部のフレームワーク残基が、げっ歯類抗体中の類似の部位由来の残基によって置換された、ヒト抗体である。例えば、米国特許第5,225,539号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;同第5,859,205号を参照のこと。所定の抗原に対する改善された親和性を有するヒト化抗体、およびかかるヒト化抗体を産生するための技術が開示された、米国特許第6,180,370号およびPCT国際出願公開番号WO01/27160もまた参照のこと。
【0077】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、および/または本明細書で開示されるヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。
【0078】
用語「キメラ抗体」は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指す意図である。
【0079】
抗体「タネズマブ」は、ヒト神経成長因子(NGF)に対して指向されたヒト化2型免疫グロブリンG(IgG2)モノクローナル抗体である。タネズマブは、高い親和性および特異性でヒトNGFに結合し、細胞培養モデルにおいてNGFの活性を効果的に遮断する。タネズマブおよび/またはそのマウス前駆体は、関節炎、がん疼痛および術後疼痛を含む病理学的疼痛の動物モデルにおいて、有効な鎮痛薬であることが示されている。タネズマブは、それぞれ配列番号1および2の可変重鎖領域および可変軽鎖領域の配列を有する。重鎖および軽鎖配列は、配列番号9および10、または配列番号11および10で提供される。配列番号9の重鎖アミノ酸配列のC末端リジン(K)は任意選択であり、プロセシングされて、C末端リジン(K)を欠き、配列番号11に示される配列を有する重鎖アミノ酸配列を生じ得る。タネズマブの配列は、以下の表1に提供される。タネズマブは、参照によって本明細書に組み込まれるWO2004058184において、抗体E3として記載されている。
【0080】
当該分野で公知のように、「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、本明細書で相互交換可能に使用されて、任意の長さのヌクレオチドの鎖を指し、これには、DNAおよびRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変されたヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、あるいはDNAまたはRNAポリメラーゼによって鎖中に取り込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、改変されたヌクレオチド、例えば、メチル化されたヌクレオチドおよびそれらのアナログを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、鎖のアセンブリの前または後に与えられ得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド構成成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、標識化構成成分とのコンジュゲーションによって、重合後にさらに改変され得る。他の型の改変には、例えば、「キャップ」、アナログによる1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド内改変、例えば、非荷電連結を有するもの(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート(phosphoamidate)、カルバメートなど)および荷電連結を有するもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)など、ペンダント部分、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)を含むもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレーターを含むもの(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属など)、アルキル化薬を含むもの、改変型連結を有するもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、ならびに非改変形態のポリヌクレオチド(複数可)が含まれる。さらに、糖中に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基によって置き換えられ得、標準的な保護基によって保護され得、もしくはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を調製するために活性化され得、または固体支持体にコンジュゲートされ得る。5’および3’末端OHは、リン酸化され得、または1〜20個の炭素原子のアミンもしくは有機キャップ基部分で置換され得る。他のヒドロキシルはまた、標準的な保護基へと誘導体化され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−または2’−アジド−リボース、炭素環式糖アナログ、アルファ−またはベータ−アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログおよび塩基脱落ヌクレオシドアナログ、例えば、メチルリボシドが含まれる、当該分野で一般に公知の類似の形態のリボースまたはデオキシリボース糖もまた含み得る。1つまたは複数のホスホジエステル連結は、代替的な連結基によって置き換えられ得る。これらの代替的な連結基には、リン酸が、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH(「ホルムアセタール(formacetal)」)によって置き換えられた実施形態が含まれるがこれらに限定されず、式中、各RまたはR’は、独立して、H、またはエーテル(−O−)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジル(araldyl)を含んでいてもよい置換もしくは非置換のアルキル(1〜20C)である。ポリヌクレオチド中の全ての連結が同一である必要はない。上述の記載は、RNAおよびDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0081】
エピトープに「優先的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書で相互交換可能に使用される)抗体は、当該分野で十分理解される用語であり、かかる特異的または優先的な結合を決定するための方法もまた、当該分野で周知である。分子は、代替的な細胞または物質と相互作用または会合するときよりも、特定の細胞または物質と、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、および/またはより高い親和性で相互作用または会合する場合、「特異的結合」または「優先的結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するときよりも、より高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、標的(例えば、PD−1)エピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他の標的エピトープまたは非標的エピトープに結合するときよりも、より高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い持続時間で、このエピトープに結合する抗体である。この定義を読むことによって、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分もしくはエピトープ)は、第2の標的に特異的または優先的に結合してもしなくてもよいことも理解される。このように、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的結合を必ずしも要求しない(しかし、排他的結合を含み得る)。一般に、必ずではないが、結合に対する言及は、優先的結合を意味する。
【0082】
本明細書で使用する場合、「実質的に純粋」は、少なくとも50%純粋(即ち、混入物を含まない)、より好ましくは、少なくとも90%純粋、より好ましくは、少なくとも95%純粋、なおより好ましくは、少なくとも98%純粋、最も好ましくは、少なくとも99%純粋である材料を指す。
【0083】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の取り込みのためのベクター(複数可)のレシピエントであり得るまたはレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞は、単一の宿主細胞の子孫を含み、子孫は、天然の、偶発的なまたは計画的な変異に起因して、必ずしも元の親細胞と完全に同一(形態学において、またはゲノムDNA相補体において)でなくてもよい。宿主細胞には、本発明のポリヌクレオチド(複数可)をin vivoでトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0084】
当該分野で公知のように、用語「Fc領域」は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。「Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域またはバリアントFc領域であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位におけるアミノ酸残基から、またはPro230位から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域中の残基の番号付けは、Kabatと同様、EUインデックスのものである。Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1991。免疫グロブリンのFc領域は、一般に、2つの定常ドメインCH2およびCH3を含む。当該分野で公知のように、Fc領域は、ダイマーまたはモノマー形態で存在し得る。
【0085】
当該分野で使用する場合、「Fc受容体」および「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述する。好ましいFcRは、ネイティブ配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するFcR(ガンマ受容体)であり、これには、それらの受容体の対立遺伝子バリアントおよび選択的スプライシングされた形態を含む、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体が含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、その細胞質ドメインにおいて主に異なる、類似のアミノ酸配列を有する。FcRは、RavetchおよびKinet、1991、Ann.Rev.Immunol.、9:457〜92;Capelら、1994、Immunomethods、4:25〜34;ならびにde Haasら、1995、J.Lab.Clin.Med.、126:330〜41において概説されている。「FcR」には、母系IgGの胎児への移入を担う新生児型受容体FcRnもまた含まれる(Guyerら、1976、J.Immunol.、117:587;およびKimら、1994、J.Immunol.、24:249)。
【0086】
用語「競合する」は、抗体に関して本明細書で使用する場合、その同族エピトープとの第1の抗体の結合の結果が、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下で検出可能に減少されるように、第1の抗体またはその抗原結合部分が、第2の抗体またはその抗原結合部分の結合と十分に類似の様式でエピトープに結合することを意味する。そのエピトープへの第2の抗体の結合もまた第1の抗体の存在下で検出可能に減少される代替法もあり得るが、その必要はない。即ち、第1の抗体は、そのそれぞれのエピトープへの第1の抗体の結合を第2の抗体が阻害することなしに、そのエピトープへの第2の抗体の結合を阻害できる。しかし、各抗体が、その同族エピトープまたはリガンドへの他の抗体の結合を、同程度までであれ、より高い程度までであれ、より低い程度までであれ、検出可能に阻害する場合、抗体は、それらのそれぞれのエピトープ(複数可)の結合について、互いと「交差競合する(cross-compete)」と言われる。競合性抗体および交差競合性抗体は共に、本発明によって包含される。かかる競合または交差競合が生じる機構(例えば、立体障害、コンフォメーション変化、または共通するエピトープもしくはその部分への結合)にかかわらず、当業者は、かかる競合性および/または交差競合性抗体が包含され、本明細書で開示される方法のために有用であり得ることを、本明細書に提供される教示に基づいて理解する。
【0087】
「機能的Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能を有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害;食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節などが含まれる。かかるエフェクター機能は、一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、かかる抗体エフェクター機能を評価するための当該分野で公知の種々のアッセイを使用して評価され得る。
【0088】
「ネイティブ配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸改変によってネイティブ配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるが、ネイティブ配列Fc領域の少なくとも1つのエフェクター機能をなおも保持するアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、例えば、ネイティブ配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域中に、約1〜約10個のアミノ酸置換、好ましくは、約1〜約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書のバリアントFc領域は、好ましくは、ネイティブ配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と、少なくとも約80%の配列同一性を有し、最も好ましくは、それと少なくとも約90%の配列同一性、より好ましくは、それと少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の配列同一性を有する。
【0089】
本明細書で使用する場合、「処置」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的では、有益なまたは所望の臨床結果には、例えば、抗NGF抗体の投与前と比較した、慢性腰背部疼痛における低減または改善が含まれる。
【0090】
「軽快させる」は、例えば、本明細書に記載される抗NGF抗体を投与しない場合と比較した、慢性腰背部疼痛の減少または改善を意味する。「軽快させる」には、症状の持続時間における短縮または低減もまた含まれる。
【0091】
本明細書で使用する場合、薬物、化合物または医薬組成物の「有効投薬量」または「有効量」は、任意の1つまたは複数の有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量である。より具体的な態様では、有効量は、慢性腰背部疼痛を防止する、軽減するもしくは軽快させる。予防的使用について、有益なまたは所望の結果には、リスクを排除もしくは低減させること、重症度を減少させること、または疾患、その合併症、および疾患の発達の間に呈される中間の病理学的表現型の生化学的、組織学的および/もしくは行動学的症状を含む疾患の発端を遅延させることが含まれる。治療的使用について、有益なまたは所望の結果には、慢性腰背部疼痛を低減させること、疾患を処置するために必要とされる他の薬物療法の用量を減少させること、別の薬物療法の効果を増強すること、および/または患者における疾患の進行を遅延させることなどの、臨床結果が含まれる。有効投薬量は、1つまたは複数の投与で投与され得る。本発明の目的では、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、予防的または治療的処置を直接的または間接的に達成するのに十分な量である。臨床状況で理解されるように、薬物、化合物または医薬組成物の有効投薬量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併せて達成されてもされなくてもよい。したがって、「有効投薬量」は、1つまたは複数の治療剤を投与する状況において検討され得、単一の薬剤は、1つまたは複数の他の薬剤と併せて望ましい結果が達成され得るまたは達成される場合、有効量で与えられたとみなされ得る。
【0092】
用語「以前の治療に対する不適切な処置応答」は、以前の治療による処置の後に有害事象を経験したことがある患者;以前の治療による処置に対して不応性である患者;以前の治療によっても、慢性腰背部疼痛の1つもしくは複数の尺度において臨床的に有意義な改善を示さない患者;以前の治療からいくらかの利益を経験しているが、さらなる疼痛緩和をなおも必要とする患者;以前の治療(オピオイドなどの鎮痛薬を含む)に耽溺している患者;および/または以前の治療を摂取するのを嫌がっている患者を指す。一部の実施形態では、患者は、少なくとも3つの異なるクラスの鎮痛薬を含み得る以前の治療からの不適切な疼痛緩和またはかかる以前の治療に対する不耐性の履歴を有する。
【0093】
処置は、慢性腰背部疼痛の評価が、ベースラインと比較して、処置期間の間および/または後に、臨床尺度を介して定量される場合、「効果的に改善する」または「効果的に低減させる」。ベースラインにおける臨床尺度と処置の間/後の臨床尺度との間の差異は、比較され、腰背部疼痛が改善されたかどうか、および処置が有効であるかどうかを決定するために使用される。この比較は、プラセボ、または事前の治療のうち1つもしくは複数に対する比較を含み得る。一実施形態では、比較は、プラセボに対して、またはオピオイド鎮痛薬、例えばトラマドール;もしくはNSAID、例えばセレコキシブによる処置に対してであり得る。臨床尺度は、腰背部疼痛強度(LBPI)であり得る。腰背部疼痛強度(LBPI)尺度は、ベースラインにおいて患者について決定され得、次いで、処置期間を通じて、例えば、2、4、6、8、16、24、32、40、48、56週目またはそれ以降において、決定され得る。同様に、ローランド・モリス能力障害質問票(RMDQ)も、この様式で決定され得る。なおさらに、患者による腰背部疼痛の全般評価(PGA)尺度も、この様式で決定され得る。
【0094】
一部の実施形態では、この処置は、腰背部疼痛強度(LBPI)を効果的に低減させる。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、LBPIスコアを、少なくとも約2.5、少なくとも約2.6、少なくとも約2.7、少なくとも約2.8、少なくとも約2.9、少なくとも約3、少なくとも約3.1、少なくとも約3.2または少なくとも約3.3低減させる。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、LBPIスコアを、少なくとも約38〜50%低減させる。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインと比較して、LBPIスコアを、少なくとも約38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%または95%低減させる。一部の実施形態では、この処置は、プラセボと比較して、LBPIスコアを効果的に低減させる。一部の実施形態では、この処置は、プラセボと比較して、LBPIスコアを、少なくとも約0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6または0.65、効果的に低減させる。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインおよび/またはプラセボと比較して、LBPIスコアを、トラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬および/またはセレコキシブであり得るNSAIDよりも高い程度まで、効果的に低減させる。一部の実施形態では、この処置は、LBPIスコアを、プラセボおよび/またはトラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬よりも、少なくとも約2〜10%大きく低減させる。一部の実施形態では、この処置は、LBPIスコアを、プラセボおよび/またはトラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬よりも、少なくとも約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%大きく低減させる。一部の実施形態では、LBPIにおける低減は、処置の16週目において観察される。一部の実施形態では、LBPIにおける低減は、処置の56週目において観察される。一部の実施形態では、LBPIスコアは、一日平均LBPIスコアである。一部の実施形態では、ベースラインからの変化は、最小二乗平均である。
【0095】
一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約3.8〜7.2改善する。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約5.8〜7.2改善する。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約6.1〜6.9改善する。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインと比較して、RMDQスコアを、約6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6、7、6.8または6.9改善する。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約35〜50%改善する。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%または95%改善する。一部の実施形態では、この処置は、プラセボと比較して、RMDQスコアを効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、プラセボと比較して、RMDQスコアを、少なくとも約0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3または2.4、効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインおよび/またはプラセボと比較して、RMDQスコアを、トラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬よりも高い程度まで、効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、RMDQスコアを、プラセボおよび/またはトラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬よりも、少なくとも約2〜10%大きく改善する。一部の実施形態では、この処置は、RMDQスコアを、プラセボおよび/またはトラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬よりも、少なくとも約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%大きく改善する。一部の実施形態では、RMDQにおける改善は、処置の16週目において観察される。一部の実施形態では、RMDQにおける改善は、処置の56週目において観察される。一部の実施形態では、ベースラインからの変化は、最小二乗平均である。
【0096】
一部の実施形態では、この処置は、患者の51〜35%に、16週目におけるLBPIにおける≧50%の改善を提供する。一部の実施形態では、この処置は、患者の43〜48%に、16週目におけるLBPIにおける≧50%の改善を効果的に提供する。一部の実施形態では、この処置は、患者の少なくとも約43%、44%、45%、46%または47%に、16週目におけるLBPIにおける≧50%の改善を提供する。一部の実施形態では、この処置は、プラセボと比較して、16週目においてLBPIにおける≧50%の改善を有する患者の割合を、効果的に提供する。一部の実施形態では、この処置は、プラセボと比較して、16週目においてLBPIにおける≧50%の改善を有する患者の割合を、少なくとも約1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55または1.60のオッズ比で、効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインおよび/またはプラセボと比較して、LBPIにおける≧50%の改善を有する患者の割合を、トラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬よりも高い程度まで、効果的に改善する。一部の実施形態では、改善は、処置の16週目において観察される。一部の実施形態では、改善は、処置の56週目において観察される。
【0097】
一部の実施形態では、この処置は、16週目においてLBPIにおける≧30%の改善を有する患者の割合を、効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、患者の少なくとも58%に、16週目におけるLBPIにおける≧30%の改善を効果的に提供する。一部の実施形態では、この処置は、患者の少なくとも約59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%または70%に、16週目におけるLBPIにおける≧30%の改善を提供する。一部の実施形態では、この処置は、プラセボと比較して、16週目においてLBPIにおける≧30%の改善を有する患者の割合を、効果的に提供する。一部の実施形態では、この処置は、プラセボと比較して、16週目においてLBPIにおける≧30%の改善を有する患者の割合を、少なくとも約1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55または1.60のオッズ比で、効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、ベースラインおよび/またはプラセボと比較して、LBPIにおける≧30%の改善を有する患者の割合を、トラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬よりも高い程度まで、効果的に改善する。一部の実施形態では、改善は、処置の16週目において観察される。一部の実施形態では、改善は、処置の56週目において観察される。
【0098】
一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、2週目におけるLBPIスコアを、少なくとも約1.3、1.4、1.5、1.6、1.7または1.8、効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、2週目におけるLBPIスコアを、少なくとも約15〜30%改善する。一部の実施形態では、この処置は、プラセボと比較して、2週目におけるLBPIスコアを、少なくとも約0.2、0.3、0.4、0.5または0.6、効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、2週目におけるLBPIスコアを、プラセボよりも、少なくとも約3〜15%大きく改善する。一部の実施形態では、この処置は、2週目におけるLBPIスコアを、ベースラインおよび/またはプラセボと比較して、トラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬よりも高い程度まで、効果的に改善する。一部の実施形態では、ベースラインからの変化は、最小二乗平均である。
【0099】
一部の実施形態では、この処置は、処置の開始前または開始時のベースラインと比較して、処置の56週目におけるLBPIおよび/またはRMDQスコアを、効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、56週目におけるLBPIおよび/またはRMDQスコアを、トラマドールであり得るオピオイド鎮痛薬よりも大きく、効果的に改善する。一部の実施形態では、この処置は、56週目におけるLBPIおよび/またはRMDQスコアを、セレコキシブであり得るNSAID鎮痛薬よりも大きく、効果的に改善する。
【0100】
用語「ベースライン」は、処置方法の一部としての抗NGF抗体の投与の前の、患者についての腰背部疼痛関連尺度の値を指す。一部の実施形態では、用語「ベースライン」は、慢性腰背部疼痛を有さない対照の健康な対象についての徴候または症状関連尺度の値を指す。
【0101】
一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、この抗体による処置の開始の少なくとも8週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、この抗体による処置の開始の少なくとも10週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、この抗体による処置の開始の少なくとも12週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、この抗体による処置の開始の少なくとも14週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、この抗体による処置の開始の少なくとも16週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、この抗体による処置の開始の少なくとも24週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、この抗体による処置の開始の少なくとも32週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、この抗体による処置の開始の少なくとも40週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。一部の実施形態では、抗NGF抗体による処置は、この抗体による処置の開始の少なくとも56週間後において、慢性腰背部疼痛を効果的に改善する。
【0102】
一部の実施形態では、慢性腰背部疼痛は、中程度から重症である。
【0103】
腰背部疼痛強度(LBPI)尺度は、0(疼痛なし)から10(起こり得る最悪の疼痛)までの範囲の11ポイントの数的評価スケールで評価する。LBPIスコアは、一日平均LBPIスコアであり得る。
【0104】
ローランド・モリス能力障害質問票(RMDQ)は、毎日の活動に関して、腰背部疼痛を有する対象がどれだけ良好に機能できるかの指標である(Roland M、Fairbank.The Roland−Morris Questionnaire and the Oswestry Disability Questionnaire.Spine.2000;25(4)3115〜3124)。これは、0から24までの範囲のスコア(より低いスコアは、より良好な機能を示す)による、身体機能の腰背部疼痛特異的評価である。
【0105】
患者による全般評価(PGA)尺度は、最良である1のスコア(非常に良好)および最悪である5のスコア(非常に悪い)を有する5ポイントのLikertスケールを利用する全般評価である。この評価では、患者は、以下の質問に回答する:
「ご自分の腰背部疼痛がご自身に与える影響を全て考慮した場合、本日の具合はいかがですか?」
【0106】
【表1】
【0107】
Kellgren−Lawrence X線グレードは、変形性関節症の重症度を分類する方法である(KellgrenおよびLawrence.、Ann Rheum Dis 2000:16(4):494〜502)。
【0108】
変形性関節症についての米国リウマチ学会(ACR)分類基準(Altmanら、Arthritis Rheum 1986;29:1039〜49)は、股関節または膝の変形性関節症についての臨床およびX線撮影基準を含む。
【0109】
股関節の急速進行性変形性関節症(RPOA)は、Forestierによって1957年に最初に記載され、引き続いて、いくつかの研究において、萎縮性変形性関節症、急速破壊性変形性関節症、急速破壊性関節症、急速進行性股関節疾患または急速破壊性股関節炎として記載された。急速進行性股関節変形性関節症は、しばしば重症の股関節疼痛を典型的には呈する対象を特徴とし、X線写真は、事前のX線写真から、軟骨溶解の結果として、迅速な関節腔狭小化を示し、引き続いて、大腿骨頭および寛骨臼が関与する重症の進行性萎縮性骨破壊を伴う溶骨性期を示す。荷重負荷領域には、大腿骨頭の顕著な平板化および軟骨下骨の喪失が存在し得、一部の場合には、大腿骨頭は、削ぎ取られたようになる。骨棘は、典型的には、はっきりと小さいまたは存在しない。骨硬化症は、大腿骨頭および寛骨臼の嵌入の部位に存在する場合が多く、軟骨下残骸が必ず存在し、滑膜炎をもたらし得る骨断片化および細片が一般に観察される。Lequesneは、2mm/年以上の関節腔狭小化、または1年以内の関節腔の50%よりも多くの喪失を有する対象を、急速進行性変形性関節症を有するとみなすべきであると提唱した。縦断的研究の欠如に起因して、関節腔の迅速な喪失(軟骨溶解症)を有する対象のどの程度の割合が、骨破壊を有するまで進行するかは明らかではない。変形性関節症の迅速な進行は、肩および膝においても記載されている。
【0110】
変形性関節症集団全体における急速進行性変形性関節症の発生率は、十分に定義されていない。股関節変形性関節症の迅速な進行について、有病率は、臨床症例シリーズ分析に基づいて、およそ2%から18%までの範囲である。急速進行性変形性関節症の病態生理は、理解されていない。以下を含む種々の機構が提唱されている;虚血、静脈うっ血、局所的栄養障害、滑膜炎、機械的過負荷、NSAIDまたはコルチコステロイドの使用、ヒドロキシアパタイトまたはピロリン酸塩結晶の関節内沈着、および軟骨下脆弱性骨折。
【0111】
進行したOA集団における急速進行性OAの比率およびこの疾患進行の原因について、文献中にはデータが欠如している。Hochbergら(Arthritis Rheumatol.、68巻、2号、382〜391頁)によって記載されるように、「急速進行性変形性関節症は、疼痛を特徴とし、X線写真は、軟骨溶解症の結果として、迅速な関節腔狭小化を示す(1型)」。おそらくは引き続いて、これらの患者は、重症の進行性萎縮性骨破壊を伴う溶骨性期へと進行する(2型)。しかし、この連続性は、縦断的研究の欠如に起因して明らかではない(Hochbergら、Arthritis Rheumatol.、68巻、2号、382〜391頁)。
【0112】
両方の膝、両方の股関節および両方の肩のX線撮影評価(X線)は、処置の前、スクリーニング時に、実施され得るまたは得られ得る。変形性関節症を示唆する徴候または症状を示す他の主要な関節もまた、画像診断され得る。主要な関節は、足趾および手の関節を除く、四肢、例えば、肩、肘、手首、股関節、膝、足首における可動性の滑膜関節として定義される。スクリーニング時に画像診断した任意の関節、または研究期間の間に同定された他のリスクのある関節もまた、画像診断すべきである。
【0113】
中央の放射線医学リーダー(中央のリーダー)は、排他的関節状態の決定および同定を含む適格性の評価のために、放射線医学画像を審査し得る。スクリーニング時に必要とされるX線写真は、画像の、中央での放射線医学審査を可能にし、NGF抗体の初回投薬についての対象の適格性を確立するために、初期疼痛評価期間(Initial Pain Assessment Period)(IPAP)の開始の少なくとも2週間前に得られ得る。一部の実施形態では、対象は、スクリーニング時X線写真が審査され、適格性が確立されるまで、NGF抗体の投薬を開始することが許されない場合がある。
【0114】
X線技師は、その専門的訓練および認定に加えて、膝、股関節および肩についてのX線撮影プロトコールを実施する訓練を受けている。膝および股関節における関節腔幅測定の再現性および精度を促進するために、半自動化ソフトウェアおよび位置決定フレーム標準化対象(positioning frame standardized subject)および関節位置決定(joint positioning)プロトコールが利用され得る。Core Imaging Laboratoryは、スクリーニングおよび追跡の時点においてなされたX線撮影画像診断/評価の品質、標準化および再現性を確実にするために、現場と連携する責任を負い得る。必要とされるX線に関するさらなる詳細は、現場の画像診断マニュアル中に提供され得る。
【0115】
中央の放射線医学リーダー(中央のリーダー)は、有資格の放射線科医であり得るか、または筋骨格放射線科医と同等の国際的な資格を有し得る。中央のリーダーは、画像診断アトラスおよび彼らの責任の範囲の具体的な記載を含む画像診断認可状によって管理され得る。中央のリーダーは、適格性の評価(Kellgren−Lawrenceグレードの決定を含む)ならびに急速進行性変形性関節症、萎縮性または発育不全性変形性関節症、軟骨下脆弱性骨折(膝の特発性骨壊死[SPONK])、原発性骨壊死および病的骨折などの排他的関節状態の同定のために、スクリーニング時の放射線医学画像を審査し得る。処置の開始後、中央のリーダーは、可能性があるもしくは可能性が高い急速進行性変形性関節症、軟骨下脆弱性骨折(膝の特発性骨壊死[SPONK])、原発性骨壊死または病的骨折などの関節状態の診断のために、放射線医学画像を審査し得、判定委員会によるさらなる評価を保証する。
【0116】
可能性があるもしくは可能性が高い関節事象(即ち、急速進行性変形性関節症、軟骨下脆弱性骨折、膝の特発性骨壊死(SPONK)、原発性骨壊死または病的骨折)を有すると同定された対象、および任意の理由のために全人工関節置換術を受けている対象について、全ての画像および他のソースドキュメンテーションは、事象の審査および判定のために、盲検化された判定委員会に提供され得る。判定委員会による事象の評価は、事象の最終的分類を示し得る。
【0117】
中央の放射線医学レビュアーによって決定され、画像診断アトラスにおいて定義されるように、任意のスクリーニング時X線写真中に、以下の状態のいずれかのX線撮影エビデンスが存在する場合、患者は、抗NGF抗体による処置の間またはその前に、抗NGF抗体による処置から除外され得る:膝の過剰なマルアライメント、重症軟骨石灰化症;他の関節症(例えば、関節リウマチ)、全身性代謝性骨疾患(例えば、偽痛風、パジェット病;転移性石灰化)、大きい嚢胞性病変、原発性もしくは転移性腫瘍病変、疲労骨折または外傷性骨折。一部の実施形態では、中央の放射線医学レビュアーによって決定され、画像診断アトラスにおいて定義されるように、スクリーニング時に以下の状態のいずれかのX線撮影エビデンスが存在する場合、患者は、抗NGF抗体による処置の前またはその間に、抗NGF抗体による処置から除外され得る:1)急速進行性変形性関節症、2)萎縮性もしくは発育不全性変形性関節症、3)軟骨下脆弱性骨折、4)膝の特発性骨壊死(SPONK)、5)骨壊死、または6)病的骨折。
【0118】
一部の実施形態では、患者が、米国リウマチ学会(ACR)の臨床およびX線撮影基準によって定義される膝もしくは股関節の変形性関節症を有する;Kellgren−Lawrenceグレード≧2の股関節変形性関節症のX線撮影エビデンスを有する;ならびに/またはKellgren−Lawrenceグレード≧3の膝変形性関節症のX線撮影評価を有する、ならびに/または肩の変形性関節症の症状およびX線撮影エビデンスを有すると診断されている場合、患者は、抗NGF抗体による処置の前またはその間に、処置から除外され得る。X線撮影基準は、中央のリーダーによって評価され得る。
【0119】
本明細書で相互交換可能に使用される「患者」、「個体」または「対象」は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリなど)、スポーツ動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットもまた含まれるがこれらに限定されない。
【0120】
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、目的の1つまたは複数の遺伝子(複数可)または配列(複数可)を送達することが可能な、および好ましくは、宿主細胞においてそれらを発現させることが可能な、構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性縮合剤と関連したDNAまたはRNA発現ベクター、リポソーム中にカプセル封入されたDNAまたはRNA発現ベクター、およびある特定の真核生物細胞、例えば産生細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0121】
本明細書で使用する場合、「発現制御配列」は、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現制御配列は、プロモーター、例えば、構成的もしくは誘導性プロモーター、またはエンハンサーであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に作動可能に連結される。
【0122】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」は、活性成分と組み合わせた場合に、その成分が生物学的活性を保持することを可能にし、対象の免疫系と非反応性である、任意の材料を含む。例には、標準的な薬学的担体のいずれか、例えば、リン酸緩衝溶液、水、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、および種々の型の湿潤剤が含まれるがこれらに限定されない。エアロゾルまたは非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝溶液(PBS)または規定濃度の(0.9%)生理食塩水である。かかる担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990;およびRemington、The Science and Practice of Pharmacy 第20版、Mack Publishing、2000を参照のこと)。
【0123】
用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に帰せられる生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、Fc受容体結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、食作用、C1q結合、および細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方調節が含まれるがこれらに限定されない。例えば、米国特許第6,737,056号を参照のこと。かかるエフェクター機能は、一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、かかる抗体エフェクター機能を評価するための当該分野で公知の種々のアッセイを使用して評価され得る。エフェクター機能の例示的な測定は、Fcγ3および/またはC1q結合を介してである。
【0124】
本明細書で使用する場合、「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」または「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞上の結合した抗体を認識し、標的細胞の溶解を引き続いて引き起こす、細胞媒介性の反応を指す。目的の分子のADCC活性は、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるものなどのin vitro ADCCアッセイを使用して評価され得る。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)およびNK細胞が含まれる。あるいはまたはさらに、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynesら、1998、PNAS(USA)、95:652〜656に開示されるものなどの動物モデルにおいて、in vivoで評価され得る。
【0125】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」は、補体の存在下での標的の溶解を指す。補体活性化経路は、同族抗原と複合体化した分子(例えば、抗体)への、補体系の最初の構成成分(C1q)の結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano−Santoroら、J.Immunol.Methods、202:163(1996)に記載されるようなCDCアッセイが実施され得る。
【0126】
用語「kon」または「k」は、本明細書で使用する場合、抗原に対する抗体の会合についての速度定数を指す。具体的には、速度定数(konまたはkおよびkoffまたはk)および平衡解離定数は、抗体全体(即ち、二価)およびモノマータンパク質を使用して測定される。
【0127】
用語「koff」または「k」は、本明細書で使用する場合、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての速度定数を指す。
【0128】
用語「K」は、本明細書で使用する場合、抗体−抗原相互作用の平衡解離定数を指す。
【0129】
本明細書の「約」値またはパラメーターに対する言及は、その値またはパラメーター自体に関する実施形態を含む(および記述する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。数的範囲は、その範囲を規定する数字を含む。一般に言って、用語「約」は、変数の示された値、および示された値の実験誤差内(例えば、平均についての95%信頼区間内)または示された値の10パーセント以内のいずれか大きい方の、変数の全ての値を指す。用語「約」が、期間(年、月、週、日など)の文脈内で使用される場合、用語「約」は、その期間に、次の下位の期間の量を1つ分加えたもしくは引いた期間を意味し(例えば、約1年は、11〜13カ月を意味し;約6カ月は、6カ月プラスもしくはマイナス1週間を意味し;約1週間は、6〜8日間を意味する;など)、または示された値の10パーセント以内のいずれか大きい方を意味する。
【0130】
用語「皮下投与」は、皮下層中への物質の投与を指す。
【0131】
用語「予防する(preventing)」または「予防する(prevent)」は、(a)障害が発生しないようにすること、または(b)障害の発症もしくは障害の症状の発症を遅延させることを指す。
【0132】
実施形態が、「含む(comprising)」という言葉によって本明細書に記載される場合には、「〜からなる」および/または「本質的に〜からなる」の用語で記載される他の点では類似の実施形態もまた提供されることが理解される。
【0133】
本発明の態様または実施形態が、マーカッシュ群または選択肢の他の群分けに関して記載される場合、本発明は、全体として列挙された群全体だけではなく、群の各メンバーを個々に包含し、主要群の全ての可能な下位群だけでなく、群メンバーのうち1つまたは複数が存在しない主要群もまた包含する。本発明は、特許請求された発明中の群メンバーのいずれかのうち1つまたは複数の明示的な除外もまた想定する。
【0134】
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。本明細書および特許請求の範囲を通じて、単語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などのバリエーションは、述べられた整数または整数の群を含むことを含意するが、いずれの他の整数または整数の群も除外することは含意しないと理解される。文脈が他を要求しない限り、単数形の用語は、複数を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。用語「例えば(e.g.)」または「例えば(for example)」の後ろの任意の例(複数可)は、徹底的でも限定的でもない意味である。
【0135】
例示的な方法および材料が本明細書に記載されているが、本明細書に記載される方法および材料と類似または等価な方法および材料もまた、本発明の実施または試験において使用され得る。材料、方法および例は、例示に過ぎず、限定を意図しない。
【0136】
抗NGF抗体
本明細書に記載される処置の方法における使用のための抗NGF抗体が、本明細書で提供される。
【0137】
一態様では、抗NGF抗体は、NGFに結合し、trkAおよび/またはp75へのNGFの結合を阻害する。
【0138】
ある実施形態では、抗体は、配列番号1の重鎖可変領域由来の3つのCDRを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号2の軽鎖可変領域由来の3つのCDRを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1の重鎖可変領域由来の3つのCDRおよび配列番号2の軽鎖可変領域由来の3つのCDRを含む。
【0139】
一部の実施形態では、CDRは、Kabat、Chothia、拡張型、AbM、接触および/またはコンフォメーション定義のいずれかに従って定義され得る。一部の実施形態では、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8に示されるCDRは、Kabat方法およびChothia方法の組み合わせによって決定される。
【0140】
本発明に使用される例示的な抗体配列には、以下に列挙した配列が含まれるがこれらに限定されない。
【0141】
【表2-1】

【0142】
【表2-2】
【0143】
一実施形態では、抗体は、タネズマブである。
【0144】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号3に示される配列を有するHCDR1、配列番号4に示される配列を有するHCDR2、配列番号5に示される配列を有するHCDR3、配列番号6に示される配列を有するLCDR1、配列番号7に示される配列を有するLCDR2および配列番号8に示される配列を有するLCDR3を含む。
【0145】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号1に示される配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号1に示される配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0146】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。一部の実施形態では、配列番号9の重鎖アミノ酸配列のC末端リジン(K)は、任意選択である。したがって、一部の実施形態では、重鎖アミノ酸配列は、C末端リジン(K)を欠き、配列番号11に示される配列を有する。したがって、一部の実施形態では、抗体は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0147】
一部の実施形態では、抗体は、ファシヌマブ(fasinumab)もしくはREGN475(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0041717号を参照のこと)である、またはファシヌマブもしくはREGN475と同じもしくは実質的に同じアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、抗体は、フルラヌマブ(fulranumab)である。
【0148】
本明細書に記載される抗体は、当該分野で公知の任意の方法によって作製され得る。抗体は、適切な宿主細胞を使用して、組換え作製され得る。本開示の抗NGF抗体をコードする核酸は、発現ベクター中にクローニングされ得、これは次いで、組換え宿主細胞中での抗体の合成を得るために、宿主細胞中に導入され得るが、この細胞は、さもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない。細胞培養、およびタンパク質またはポリペプチドの発現を受け入れる任意の宿主細胞が、本発明に従って利用され得る。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物である。発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当該分野で周知であり、これには、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。非限定的な例示的な哺乳動物細胞には、NS0細胞、HEK 293およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ならびにそれらの誘導体、例えば、293−6EおよびCHO DG44細胞、CHO DXB11、およびPotelligent(登録商標)CHOK1SV細胞(BioWa/Lonza、Allendale、NJ)が含まれるがこれらに限定されない。哺乳動物宿主細胞には、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2)、ベビーハムスター腎臓(BHK、ATCC CCL 10)細胞、サル腎臓細胞(COS)およびヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)もまた含まれるがこれらに限定されない。本発明に従って使用され得る哺乳動物細胞の他の非限定的な例には、ヒト網膜芽細胞(retinoblast)(PER.C6(登録商標);CruCell、Leiden、The Netherlands);SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系統(COS−7、ATCC CRL 1651);懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされたヒト胎児由来腎臓系統293(HEK 293)または293細胞(Grahamら、J.Gen Virol.1997;36:59);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.1980;23:243〜251);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1 587);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TR1細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.1982;383:44〜68);MRC 5細胞;FS4細胞;ヒト肝細胞癌系統(Hep G2);ならびにBALB/cマウス骨髄腫系統(NS0/1、ECACC番号85110503)、NS0細胞およびSp2/0細胞が含まれるがこれらに限定されない多数の骨髄腫細胞株が含まれる。
【0149】
さらに、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する任意の数の市販のおよび非市販の細胞株が利用され得る。当業者は、異なる細胞株が、異なる栄養要求を有し得ること、ならびに/または最適な増殖およびポリペプチドもしくはタンパク質の発現のために異なる培養条件を必要とし得ることを理解し、必要に応じて条件を改変することができる。
【0150】
ハイブリドーマ細胞株の産生のために、宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは、一般に、本明細書にさらに記載されるように、抗体刺激および産生のための確立された従来の技術に沿っている。ヒトおよびマウス抗体の産生のための一般的技術は、当該分野で公知である、および/または本明細書に記載される。
【0151】
ヒトを含む任意の哺乳動物対象およびそれ由来の抗体産生細胞は、ヒトを含む哺乳動物およびハイブリドーマ細胞株の産生のための基礎として機能するように操作され得ることが企図される。典型的には、宿主動物には、本明細書に記載されるものを含む、ある量の免疫原が、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内および/または真皮内接種される。
【0152】
ハイブリドーマは、Kohler,B.およびMilstein,C.、Nature 256:495〜497、1975の一般的な体細胞ハイブリッド形成技術を使用して、またはBuck,D.W.ら、In Vitro、18:377〜381、1982によって改変されたように、リンパ球および不死化骨髄腫細胞から調製され得る。X63−Ag8.653、およびSalk Institute、Cell Distribution Center、San Diego、Calif.、USAのものが含まれるがこれらに限定されない利用可能な骨髄腫系統が、ハイブリッド形成において使用され得る。一般に、この技術には、ポリエチレングリコールなどの融合因子(fusogen)を使用して、または当業者に周知の電気的手段によって、骨髄腫細胞およびリンパ系細胞を融合させることが関与する。融合後、細胞は、融合培地から分離され、ハイブリッド形成していない親細胞を排除するために、選択的増殖培地、例えば、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地中で増殖される。血清を補充したまたは補充していない本明細書に記載される培地のいずれかが、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するために使用され得る。細胞融合技術の別の代替法として、EBV不死化B細胞が、本発明のモノクローナル抗体を産生するために使用され得る。ハイブリドーマは、拡大増殖およびサブクローニングされ、所望される場合、上清が、従来のイムノアッセイ手順(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイまたは蛍光イムノアッセイ)によって、抗免疫原活性についてアッセイされる。
【0153】
抗体の供給源として使用され得るハイブリドーマは、全ての誘導体、モノクローナル抗体を産生する親ハイブリドーマの子孫細胞を包含する。
【0154】
本発明に使用される抗体を産生するハイブリドーマは、公知の手順を使用して、in vitroまたはin vivoで増殖され得る。モノクローナル抗体は、所望により、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィーおよび限外濾過などの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培地または体液から単離され得る。所望されない活性は、存在する場合、例えば固相に結合した免疫原から作製された吸着剤上に調製物を流し、所望の抗体を溶出または放出させて免疫原から外すことによって、除去され得る。二官能性薬剤または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOClまたはRN=C=NR(式中、RおよびRは、異なるアルキル基である)を使用した、抗体標的(例えば、PD−1)、ヒト標的タンパク質(例えば、PD−1)、または免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンもしくはダイズトリプシンインヒビターにコンジュゲートされた標的アミノ酸配列を含む断片を発現する細胞による宿主動物の免疫化は、抗体(例えば、モノクローナル抗体)の集団を生じ得る。
【0155】
所望される場合、目的の抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)は、配列決定され得、次いで、ポリヌクレオチド配列は、発現または繁殖のためにベクター中にクローニングされ得る。目的の抗体をコードする配列は、宿主細胞中のベクター中で維持され得、次いで、宿主細胞は、拡大増殖され得、将来の使用のために凍結され得る。細胞培養物中での組換えモノクローナル抗体の産生は、当該分野で公知の手段による、B細胞からの抗体遺伝子のクローニングを介して実施され得る。例えば、Tillerら、J.Immunol.Methods 329、112、2008;米国特許第7,314,622号を参照のこと。
【0156】
一部の実施形態では、抗体は、ハイブリドーマテクノロジーを使用して作製され得る。ヒトを含む任意の哺乳動物対象およびそれ由来の抗体産生細胞は、ヒトを含む哺乳動物、ハイブリドーマ細胞株の産生のための基礎として機能するように操作され得ることが企図される。宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは、一般に、本明細書にさらに記載されるように、抗体刺激および産生のための確立された従来の技術に沿っている。典型的には、宿主動物には、本明細書に記載されるものを含む、ある量の免疫原が、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内および/または真皮内接種される。
【0157】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗体は、その定常領域中の保存された位置においてグリコシル化される(JefferisおよびLund、1997、Chem.Immunol.65:111〜128;WrightおよびMorrison、1997、TibTECH 15:26〜32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boydら、1996、Mol.Immunol.32:1311〜1318;WittweおよびHoward、1990、Biochem.29:4175〜4180)ならびに糖タンパク質のコンフォメーションおよび提示された三次元表面に影響を与え得る糖タンパク質の部分間の分子内相互作用(JefferisおよびLund、上記;WyssおよびWagner、1996、Current Opin.Biotech.7:409〜416)に影響を与える。オリゴ糖は、特異的認識構造に基づいて、所与の糖タンパク質を特定の分子へと標的化するようにも機能し得る。抗体のグリコシル化は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に影響を与えることも報告されている。特に、二分岐するGlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリン調節される発現を有するCHO細胞によって産生される抗体は、改善されたADCC活性を有することが報告された(Umanaら、1999、Nature Biotech.17:176〜180)。
【0158】
抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリン、アスパラギン−X−スレオニンおよびアスパラギン−X−システインは、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列であり、式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的グリコシル化部位を創出する。O結合型グリコシル化は、糖であるN−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのうち1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンもまた使用され得る。
【0159】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、上記トリペプチド配列のうち1つまたは複数を含むようにアミノ酸配列を変更することによって簡便に達成される(N結合型グリコシル化部位について)。変更は、元の抗体の配列への1つもしくは複数のセリンもしくはスレオニン残基の付加、または1つもしくは複数のセリンもしくはスレオニン残基による置換によってもなされ得る(O結合型グリコシル化部位について)。
【0160】
抗体のグリコシル化パターンはまた、根底にあるヌクレオチド配列を変更することなしに変更され得る。グリコシル化は、抗体を発現させるために使用される宿主細胞に大きく依存する。潜在的な治療薬としての組換え糖タンパク質、例えば抗体の発現のために使用される細胞型がネイティブ細胞であることはめったにないので、抗体のグリコシル化パターンにおけるバリエーションが予測され得る(例えば、Hseら、1997、J.Biol.Chem.272:9062〜9070を参照のこと)。
【0161】
宿主細胞の選択に加えて、抗体の組換え産生の間のグリコシル化に影響を与える因子には、増殖様式、培地処方、培養密度、酸素添加、pH、精製スキームなどが含まれる。オリゴ糖産生に関与する特定の酵素を導入または過剰発現することを含む、特定の宿主生物において達成されるグリコシル化パターンを変更するための種々の方法が提案されている(米国特許第5,047,335号;同第5,510,261号および同第5,278,299号)。グリコシル化、または特定の型のグリコシル化は、例えば、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、N−グリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3を使用して、糖タンパク質から酵素的に除去され得る。さらに、組換え宿主細胞は、特定の型の多糖のプロセシングが欠損するように遺伝子操作され得る。これらおよび類似の技術は、当該分野で周知である。
【0162】
改変の他の方法には、酵素的手段、酸化的置換およびキレート化が含まれるがこれらに限定されない、当該分野で公知のカップリング技術を使用することが含まれる。改変は、例えば、イムノアッセイのための標識の結合のために使用され得る。改変されたポリペプチドは、当該分野で確立された手順を使用して作製され、当該分野で公知の標準的なアッセイを使用してスクリーニングされ得、その一部は、以下および実施例に記載される。
【0163】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
本発明は、本明細書に記載される抗NGF抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドもまた提供する。一態様では、本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを作製する方法を提供する。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の手順によって、作製および発現され得る。
【0164】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドのいずれかを含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載される抗NGF抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。
【0165】
別の態様では、本明細書に記載される抗NGF抗体を産生する単離された細胞株が提供される。
【0166】
任意のかかる配列に対して相補的なポリヌクレオチドもまた、本発明によって包含される。ポリヌクレオチドは、一本鎖(コーディングもしくはアンチセンス)または二本鎖であり得、DNA(ゲノム、cDNAもしくは合成)またはRNA分子であり得る。RNA分子には、イントロンを含み、一対一の様式でDNA分子に対応するHnRNA分子、およびイントロンを含まないmRNA分子が含まれる。さらなるコーディングまたは非コーディング配列が、本発明のポリヌクレオチド内に存在してもよいがその必要はなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持体材料に連結されてもよいがその必要はない。
【0167】
ポリヌクレオチドは、ネイティブ配列(即ち、抗体またはその断片をコードする内因性配列)を含み得、またはかかる配列のバリアントを含み得る。ポリヌクレオチドバリアントは、コードされたポリペプチドの免疫反応性が、ネイティブの免疫反応性分子と比較して弱められないような、1つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含む。コードされたポリペプチドの免疫反応性に対する影響は、一般に、本明細書に記載されるように評価され得る。バリアントは、好ましくは、ネイティブ抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも約70%の同一性、より好ましくは、少なくとも約80%の同一性、なおより好ましくは、少なくとも約90%の同一性、最も好ましくは、少なくとも約95%の同一性を示す。
【0168】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列が、以下に記載されるように最大の対応を求めてアラインされる場合に同じである場合、「同一」であると言われる。2つの配列間の比較は、典型的には、配列類似性の局所的領域を同定および比較するために、比較ウインドウにわたって配列を比較することによって実施される。「比較ウインドウ」は、本明細書で使用する場合、少なくとも約20個連続する位置、通常は30〜約75または40〜約50個連続する位置のセグメントを指し、ここで、配列は、2つの配列が最適にアラインされた後に、同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る。
【0169】
比較のための配列の最適なアラインメントは、デフォルトパラメーターを使用して、Lasergene(登録商標)スイートのバイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR(登録商標),Inc.、Madison、WI)中のMegAlign(登録商標)プログラムを使用して実施され得る。このプログラムは、以下の参考文献中に記載されるいくつかのアラインメントスキームを具体化する:Dayhoff,M.O.、1978、A model of evolutionary change in proteins−Matrices for detecting distant relationships.、Dayhoff,M.O.(編)Atlas of Protein Sequence and Structure、National Biomedical Research Foundation、Washington DC 5巻、補遺3、345〜358頁;Hein J.、1990、Unified Approach to Alignment and Phylogenes 626〜645頁 Methods in Enzymology 183巻、Academic Press,Inc.、San Diego、CA;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.、1989、CABIOS 5:151〜153;Myers,E.W.およびMuller W.、1988、CABIOS 4:11〜17;Robinson,E.D.、1971、Comb.Theor.11:105;Santou,N.、Nes,M.、1987、Mol.Biol.Evol.4:406〜425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.、1973、Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy、Freeman Press、San Francisco、CA;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726〜730。
【0170】
好ましくは、「配列同一性の百分率」は、少なくとも20個の位置の比較ウインドウにわたって、2つの最適にアラインされた配列を比較することによって決定され、ここで、比較ウインドウ中のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(これは、付加も欠失も含まない)と比較して、20パーセント以下、通常は5〜15パーセントまたは10〜12パーセントの付加または欠失(即ち、ギャップ)を含み得る。百分率は、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定してマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を、参照配列中の位置の総数(即ち、ウインドウサイズ)によって除算し、結果に100を乗算して配列同一性の百分率を得ることによって、計算される。
【0171】
バリアントはまた、またはあるいは、ネイティブ遺伝子、またはその一部分もしくは相補体に対して実質的に相同であり得る。かかるポリヌクレオチドバリアントは、ネイティブ抗体をコードする天然に存在するDNA配列(または相補的な配列)に、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能である。
【0172】
適切な「中程度にストリンジェントな条件」は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中での事前洗浄;50℃〜65℃、5×SSCで一晩のハイブリダイゼーション;その後の、0.1%SDSを含む2×、0.5×および0.2×のSSCの各々で65℃で20分間の洗浄2回を含む。
【0173】
本明細書で使用する場合、「高度にストリンジェントな条件」または「高いストリンジェンシーの条件」は、(1)洗浄のために、低いイオン強度および高い温度、例えば、50℃で、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを使用するもの;(2)ハイブリダイゼーションの間に、42℃で、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含むpH6.5の0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液と共に、変性剤、例えば、ホルムアミド、例えば、50%(v/v)ホルムアミドを使用するもの;または(3)0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中42℃および50%ホルムアミド中55℃での洗浄、その後の、55℃でのEDTAを含む0.1×SSCからなる高いストリンジェンシーの洗浄と共に、42℃で、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDSおよび10%デキストラン硫酸を使用するもの、である。当業者は、プローブ長さなどの因子に合わせるために必要に応じて、温度、イオン強度などを調整する方法を認識している。
【0174】
遺伝コードの縮重の結果として、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することが、当業者によって理解される。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意のネイティブ遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する。それにもかかわらず、コドン用法における差異に起因して変動するポリヌクレオチドが、本発明によって具体的に企図される。さらに、本明細書で提供されるポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子は、本発明の範囲内である。対立遺伝子は、ヌクレオチドの1つまたは複数の変異、例えば、欠失、付加および/または置換の結果として変更された内因性遺伝子である。得られたmRNAおよびタンパク質は、変更された構造または機能を有してもよいが、その必要はない。対立遺伝子は、標準的な技術(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅および/またはデータベース配列比較)を使用して同定され得る。
【0175】
本発明のポリヌクレオチドは、化学的合成、組換え方法またはPCRを使用して得られ得る。化学的ポリヌクレオチド合成の方法は、当該分野で周知であり、本明細書で詳細に記載する必要はない。当業者は、所望のDNA配列を生成するために、本明細書で提供される配列および市販のDNA合成機を使用することができる。
【0176】
組換え方法を使用してポリヌクレオチドを調製するために、本明細書でさらに議論されるように、所望の配列を含むポリヌクレオチドが、適切なベクター中に挿入され得、このベクターは次いで、複製および増幅のために適切な宿主細胞中に導入され得る。ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の手段によって、宿主細胞中に挿入され得る。細胞は、直接的取込み、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F接合(F-mating)またはエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することによって、形質転換される。導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクター(例えば、プラスミド)として細胞内に維持され得、または宿主細胞ゲノム中に組み込まれ得る。そうして増幅されたポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法によって、宿主細胞から単離され得る。例えば、Sambrookら、1989を参照のこと。
【0177】
あるいは、PCRが、DNA配列の再生産を可能にする。PCRテクノロジーは、当該分野で周知であり、米国特許第4,683,195号、同第4,800,159号、同第4,754,065号および同第4,683,202号、ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction、Mullisら編、Birkauswer Press、Boston、1994に記載されている。
【0178】
RNAは、適切なベクター中の単離されたDNAを使用し、それを適切な宿主細胞中に挿入することによって得られ得る。細胞が複製し、DNAがRNAに転写されると、このRNAは、次いで、例えば、Sambrookら、1989、上記に示されるように、当業者に周知の方法を使用して単離され得る。
【0179】
適切なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築され得る、または当該分野で入手可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されるクローニングベクターは、使用が意図される宿主細胞に従って変動し得、有用なクローニングベクターは、一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼに対する単一の標的を有し得、および/またはベクターを含むクローンを選択する際に使用され得るマーカーの遺伝子を有し得る。適切な例には、プラスミドおよび細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBSSK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにシャトルベクター、例えば、pSA3およびpAT28が含まれる。これらおよび多くの他のクローニングベクターは、BioRad、StrategeneおよびInvitrogenなどの業者から入手可能である。
【0180】
発現ベクターがさらに提供される。発現ベクターは、一般に、本発明に従うポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、または染色体DNAの統合された一部として、宿主細胞中で複製可能でなければならないことが含意される。適切な発現ベクターには、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスを含むウイルスベクター、コスミド、およびPCT出願公開番号WO87/04462に開示される発現ベクター(複数可)が含まれるがこれらに限定されない。ベクター構成成分には、一般に、以下のうち1つまたは複数が含まれ得るがこれらに限定されない:シグナル配列;複製起点;1つまたは複数のマーカー遺伝子;適切な転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーおよびテーミネーター)。発現(即ち、翻訳)のために、1つまたは複数の翻訳制御エレメント、例えば、リボソーム結合部位、翻訳開始部位および終止コドンもまた、通常必要とされる。
【0181】
目的のポリヌクレオチドを含むベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランまたは他の物質を使用するトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;および感染(例えば、ベクターが、ワクシニアウイルスなどの感染性因子である場合)を含むいくつかの適切なのいずれかによって、宿主細胞中に導入され得る。導入するベクターまたはポリヌクレオチドの選択は、宿主細胞の特色に依存する場合が多い。
【0182】
本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞もまた提供する。異種DNAを過剰発現させることが可能な任意の宿主細胞が、目的の抗体、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子を単離する目的で使用され得る。哺乳動物宿主細胞の非限定的な例には、COS、HeLaおよびCHO細胞が含まれるがこれらに限定されない。PCT出願公開番号WO87/04462もまた参照のこと。適切な非哺乳動物宿主細胞には、原核生物(例えば、大腸菌(E.coli)または枯草菌(B.subtilis))および酵母(例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)、分裂酵母(S.pombe)またはクリベロマイセス・ラクティス(K.lactis))が含まれる。好ましくは、宿主細胞は、存在する場合、宿主細胞中の目的の対応する内因性抗体またはタンパク質のcDNAよりも、約5倍より高い、より好ましくは、10倍より高い、さらにより好ましくは、20倍より高いレベルで、cDNAを発現する。NGFへの特異的結合についての宿主細胞のスクリーニングは、イムノアッセイまたはFACSによってもたらされる。目的の抗体またはタンパク質を過剰発現する細胞が同定され得る。
【0183】
組成物
本発明は、有効量の本明細書に記載される抗NGF抗体を含む医薬組成物、および本明細書に記載される処置の方法における使用のためのかかる医薬組成物もまた提供する。かかる組成物の例、ならびに製剤化するための方法もまた、本明細書に記載される。
【0184】
組成物は、1つよりも多い抗NGF抗体を含み得ることが理解される。
【0185】
本発明において使用される組成物は、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態で、薬学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤をさらに含み得る(Remington:The Science and practice of Pharmacy 第20版、2000、Lippincott Williams and Wilkins、K.E.Hoover編)。許容できる担体、賦形剤または安定剤は、その投薬量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム(octadecyldimethylbenzyl ammonium chloride);塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;グルコース、マンノースもしくはデキストランを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。薬学的に許容できる賦形剤は、本明細書にさらに記載される。
【0186】
抗NGF抗体およびその組成物はまた、薬剤の有効性を増強および/または補完するように機能する他の薬剤と併せて使用され得る、またはそれと別々に、同時にもしくは順次投与され得る。
【0187】
慢性腰背部疼痛を処置するための方法
一態様では、本発明は、本明細書で定義される、患者において慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置するための方法を提供する。
【0188】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、さらなる形態の治療を用いて対象を処置するステップをさらに含む。一部の実施形態では、さらなる形態の治療は、NGFアンタゴニスト、trkAアンタゴニスト、IL−1アンタゴニスト、IL−6アンタゴニスト、IL−6Rアンタゴニスト、オピオイド、アセトアミノフェン、局所麻酔薬、NMDAモジュレーター、カンナビノイド受容体アゴニスト、P2Xファミリーモジュレーター、VR1アンタゴニスト、サブスタンスPアンタゴニスト、Nav1.7アンタゴニスト、サイトカインまたはサイトカイン受容体アンタゴニスト、ステロイド、他の炎症インヒビターおよびコルチコステロイドから選択され得るさらなる治療剤である。
【0189】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、患者へのNSAIDの投与を含まない。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、患者へのオピオイドの投与を含まない。
【0190】
本明細書に記載される全ての方法に関して、抗NGF抗体に対する言及は、1つまたは複数のさらなる薬剤を含む組成物もまた含む。これらの組成物は、適切な賦形剤、例えば、当該分野で周知の緩衝液を含む薬学的に許容できる賦形剤をさらに含み得る。本発明は、単独で、または処置の他の方法と組み合わせて使用され得る。
【0191】
本明細書に記載される抗NGF抗体は、全身投与(例えば、静脈内または皮下投与)を介して対象に投与される。好ましくは、抗体は、皮下注射を介して投与される。
【0192】
抗NGF抗体の種々の製剤が、投与に使用され得る。薬学的に許容できる賦形剤は、当該分野で公知であり、薬理学的に有効な物質の投与を容易にする、比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形態もしくは堅牢性を与え得、または希釈剤として作用し得る。適切な賦形剤には、安定化剤、湿潤剤および乳化剤、モル浸透圧濃度を変動させるための塩、カプセル封入剤、緩衝液、ならびに皮膚浸透増強剤が含まれるがこれらに限定されない。非経口および経口(nonparenteral)薬物送達のための賦形剤ならびに製剤は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing、2000に示されている。
【0193】
一部の実施形態では、これらの薬剤は、注射(例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内、関節内、硬膜外、くも膜下腔内、椎間板中への注射など)による投与のために製剤化される。したがって、これらの薬剤は、薬学的に許容できるビヒクル、例えば、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液などと組み合わされ得る。特定の投薬量レジメン、即ち、用量、タイミングおよび反復は、特定の個体およびその個体の病歴に依存する。
【0194】
一部の実施形態では、抗NGF抗体、例えばタネズマブは、参照によって本明細書に組み込まれるWO2010/032220中に記載される製剤で投与される。
【0195】
一部の実施形態では、製剤は、液体製剤であり、約2.5mg/ml、5mg/ml、10mg/mlまたは20mg/mlの濃度の抗NGF抗体;およびヒスチジン緩衝液を含む。
【0196】
一部の実施形態では、製剤は、ポリソルベート20であり得る界面活性剤をさらに含む。一部の実施形態では、製剤は、無水トレハロースまたはスクロースをさらに含む。一部の実施形態では、製剤は、EDTA;一部の実施形態では、EDTA二ナトリウムであり得るキレート剤をさらに含む。一部の実施形態では、製剤は、pH6.0±0.3である。
【0197】
一部の実施形態では、製剤は、約2.5mg/ml、5mg/ml、10mg/mlまたは20mg/mlのタネズマブ;約10mMのヒスチジン緩衝液;約84mg/mlの無水トレハロース;約0.1mg/mlのポリソルベート20;約0.05mg/mlのEDTA二ナトリウムを含み;この製剤は、pH6.0±0.3である。
【0198】
一部の実施形態では、製剤は、約5mg/mlまたは10mg/mlを含む。一部の実施形態では、製剤は、約1mlの総体積を有する。
【0199】
一部の実施形態では、製剤は、ガラスまたはプラスチックのバイアルまたはシリンジ中に含まれる。一部の実施形態では、製剤は、予め充填されたガラスまたはプラスチックのバイアルまたはシリンジ中に含まれる。
【0200】
抗NGF抗体は、8週間毎に投与され得る。数回にわたる反復投与では、処置は、変形性関節症の徴候および症状の所望の抑制が生じるまで、持続される。この治療の進行は、従来の技術およびアッセイによってモニタリングされ得る。
【0201】
投薬レジメン(使用される具体的な抗NGF抗体を含む)は、経時的に変動し得る。例えば、一部の実施形態では、投薬量は、8週間毎に投与される10mgである。一部の実施形態では、投薬量は、8週間毎に投与される5mgである。一部の実施形態では、5mgの投薬量は、引き続く投与については10mgに増加され得る。例えば、5mgの投薬量が、治療の開始時に投与され得、次いで、10mgの投薬量が、8週間の時点で投与され得、10mgの投薬量が、16週間の時点および各引き続く8週間毎に投与される。さらに、別の例として、5mgの投薬量が、治療の開始時および8週間の時点で投与され得、10mgの投薬量が、16週間の時点および各引き続く8週間毎に投与される。さらに、別の例として、5mgの投薬量が、治療の開始時に、次いで8週間毎に1回、2回またはそれよりも多くの回数にわたって投与され得、その後に、8週間毎に10mgの引き続く投薬量が投与される。
【0202】
抗体がファシヌマブ(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0041717号を参照のこと)である一部の態様では、抗体は、0.5mg〜50mgの間の用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、0.5mgと12mgとの間の用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、皮下または静脈内投与される。一部の実施形態では、抗体は、4週間毎または8週間毎に投与される。
【0203】
抗体が、ファシヌマブ(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0041717号を参照のこと)と同じまたは実質的に同じアミノ酸配列を含む一部の態様では、抗体は、0.5mg〜50mgの間の用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、0.5mgと12mgとの間の用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗体は、皮下または静脈内投与される。一部の実施形態では、抗体は、4週間毎または8週間毎に投与される。
【0204】
一部の実施形態では、負荷用量(または導入用量)が投与された後に、より低い量またはより低い頻度での維持用量が投与される。
【0205】
本発明の目的では、抗NGF抗体の適切な投薬量は、使用される抗体、処置される症状の型および重症度、薬剤が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の臨床履歴および薬剤に対する応答、投与された薬剤についての患者のクリアランス速度、主治医の慎重さに依存する。典型的には、臨床医は、所望の結果を達成する投薬量に達するまで、抗NGF抗体を投与する。用量および/または頻度は、処置の過程にわたって変動し得る。経験的考慮事項、例えば半減期は、一般に、投薬量の決定に寄与する。投与の頻度は、治療の過程にわたって決定および調整され得、一般に、必ずではないが、症状の処置および/または抑制および/または軽快および/または遅延に基づく。
【0206】
一実施形態では、抗NGF抗体についての投薬量は、抗NGF抗体の1つまたは複数の投与が与えられた個体において、経験的に決定され得る。例えば、個体には、抗NGF抗体の増分投薬量が与えられる。効力を評価するために、慢性腰背部疼痛の指標は、以下の通りであり得る。
【0207】
本発明における方法に従う、本明細書に記載される抗NGF抗体の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療的か予防的か、および当業者に公知の他の因子に依存して、連続的または間欠的であり得る。抗NGF抗体の投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であり得、または間隔をあけた一連の投与であり得る。
【0208】
一部の実施形態では、1つよりも多い抗NGF抗体が存在し得る。少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの異なる、またはそれよりも多くの抗NGF抗体が存在し得る。一般に、これらの抗NGF抗体は、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有し得る。
【0209】
一部の実施形態では、抗NGF抗体は、1つまたは複数のさらなる治療剤の投与と組み合わせて投与され得る。
【0210】
一部の実施形態では、抗NGF抗体の投与は、手術を含む伝統的な治療をさらに含む処置レジメンと組み合わされる。
【0211】
製剤
本発明に従って使用される抗NGF抗体の治療的製剤は、所望の程度の純度を有するタンパク質を、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態の、任意選択の薬学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤(Remington、The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing、2000)と混合することによって、貯蔵のために調製される。許容できる担体、賦形剤または安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸;塩、例えば、塩化ナトリウム;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジン;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール;塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。
【0212】
抗NGF抗体を含むリポソームは、例えば、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985);Hwangら、Proc.Natl Acad.Sci.USA 77:4030(1980);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載される、当該分野で公知の方法によって調製される。増強された循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発方法によって生成され得る。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを得るために、規定された孔サイズのフィルターを介して押し出される。
【0213】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術もしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中、またはマクロエマルジョン中に封入され得る。かかる技術は、Remington、The Science and Practice of Pharmacy 第20版 Mack Publishing(2000)中に開示されている。
【0214】
徐放性調製物が調製され得る。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、成形物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸および7エチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、イソ酪酸酢酸スクロース、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0215】
in vivo投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。これは、例えば、無菌濾過メンブレンを介した濾過によって、容易に達成される。治療的抗NGF抗体組成物は、一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアル中に配置される。
【0216】
本発明に従う組成物は、経口、非経口もしくは直腸投与、または吸入もしくは吹送法による投与のために、単位投薬形態、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁物、または坐剤中にあり得る。
【0217】
錠剤などの固体組成物を調製するために、主要な活性成分は、医薬担体、例えば、従来の錠剤化成分、例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムもしくはガム、および本発明の化合物の均一な混合物を含む固体予備処方組成物を形成するための他の医薬希釈剤、例えば水、または非毒性の薬学的に許容できるそれらの塩と混合される。これらの予備処方組成物を均一と呼ぶ場合、それは、組成物が容易に、等しく有効な単位投薬形態、例えば、錠剤、丸剤およびカプセルへとさらに分割され得るように、活性成分が、組成物の至るところに均等に分散されていることを意味する。次いで、この固体予備処方組成物は、約0.1〜約500mgの本発明の活性成分を含む、上記型の単位投薬形態へとさらに分割される。新規組成物の錠剤または丸剤は、延長された作用の利点を提供する投薬形態を提供するために、コーティングされ得るまたは他の方法で配合され得る。例えば、錠剤または丸剤は、内部投薬構成成分および外部投薬構成成分を含み得、後者は、前者の上の外皮の形態である。2つの構成成分は、胃での崩壊に対して抵抗するように機能し、内部構成成分がインタクトなままで十二指腸中へと通過することを可能にする、またはその放出が遅延されることを可能にする腸溶性層によって分離されていてもよい。種々の材料が、かかる腸溶性層またはコーティングのために使用され得、かかる材料には、いくつかのポリマー酸、ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの材料との混合物が含まれる。
【0218】
適切な表面活性剤には、特に、非イオン性薬剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標)20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えば、Span(商標)20、40、60、80または85)が含まれる。表面活性剤を含む組成物は、簡便には、0.05%と5%との間の表面活性剤を含み、これは、0.1%と2.5%との間であり得る。必要に応じて、他の成分、例えば、マンニトールまたは他の薬学的に許容できるビヒクルが添加され得ることが理解される。
【0219】
適切なエマルジョンは、市販の脂肪エマルジョン、例えば、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)およびLipiphysan(商標)を使用して調製され得る。活性成分は、予め混合されたエマルジョン組成物中に溶解され得、あるいは、油(例えば、ダイズ油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油またはアーモンド油)、ならびにリン脂質(例えば、卵リン脂質、ダイズリン脂質またはダイズレシチン)および水との混合の際に形成されるエマルジョン中に溶解され得る。エマルジョンの浸透圧を調整するために、他の成分、例えば、グリセロールまたはグルコースが添加され得ることが理解される。適切なエマルジョンは、典型的には、最大で20%の油、例えば、5%と20%との間の油を含む。脂肪エマルジョンは、0.1μmと1.0μmとの間、特に0.1μmと0.5μmとの間の脂肪滴を含み得、5.5〜8.0の範囲のpHを有し得る。
【0220】
エマルジョン組成物は、抗NGF抗体を、Intralipid(商標)またはその構成成分(ダイズ油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)と混合することによって調製された組成物であり得る。
【0221】
吸入または吹送法のための組成物には、薬学的に許容できる水性もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁物、ならびに粉末が含まれる。液体または固体組成物は、上に提示した適切な薬学的に許容できる賦形剤を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、局所または全身効果のために、経口または経鼻呼吸器経路によって投与される。好ましくは無菌の薬学的に許容できる溶媒中の組成物は、気体の使用によって噴霧され得る。噴霧される溶液は、噴霧デバイスから直接吸い込まれ得、または噴霧デバイスは、フェイスマスク、テントまたは間欠的陽圧呼吸器に取り付けられ得る。溶液、懸濁物または粉末組成物は、適切な様式で製剤を送達するデバイスから、好ましくは経口または経鼻投与され得る。
【0222】
本明細書に記載される慢性腰背部疼痛(CLBP)を処置する方法に言及する実施形態では、かかる実施形態は、その処置における使用のための抗NGF抗体の、またはあるいは、その処置における使用のための医薬の製造における抗NGF抗体の使用の、さらなる実施形態でもある。
【0223】
キット
本発明は、本明細書に記載される抗NGF抗体のいずれかまたは全てを含むキットもまた提供する。本発明のキットは、本明細書に記載される抗NGF抗体を含む1つまたは複数の容器、および本明細書に記載される本発明の方法のいずれかに従う使用についての指示書を含む。一般に、これらの指示書は、上記治療的処置のための抗NGF抗体の投与の説明を含む。一部の実施形態では、単一用量の投与単位を産生するためのキットが提供される。ある特定の実施形態では、キットは、乾燥タンパク質を有する第1の容器および水性製剤を有する第2の容器の両方を含み得る。ある特定の実施形態では、単一またはマルチチャンバーの予め充填されたシリンジ(例えば、液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringe))を含むキットが含まれる。
【0224】
抗NGF抗体の使用に関する指示書は、一般に、意図した処置のための投薬量、投薬スケジュールおよび投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルク包装(例えば、マルチ用量包装)またはサブ単位用量であり得る。本発明のキット中に提供される指示書は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キット中に含まれる紙シート)上の書面による指示書であるが、器械可読指示書(例えば、磁気または光学保存ディスク上に保持される指示書)もまた許容できる。
【0225】
本発明のキットは、適切な梱包材料中にある。適切な梱包材料には、バイアル、瓶、ジャー、可撓性梱包材料(例えば、密封Mylarまたはプラスチックバッグ)などが含まれるがこれらに限定されない。特定のデバイス、例えば、吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、アトマイザー)または注入デバイス、例えばミニポンプと組み合わせた使用のための包装もまた企図される。キットは、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。容器もまた、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性な薬剤は、抗NGF抗体である。容器は、第2の薬学的に活性な薬剤をさらに含み得る。
【0226】
キットは、さらなる構成成分、例えば、緩衝液および説明情報を任意選択で提供し得る。通常、キットは、容器、および容器上のまたは容器と関連するラベルまたは添付文書(複数可)を含む。
【実施例】
【0227】
(実施例1)
研究設計
この研究(「研究1059」と呼ぶ)は、慢性腰背部疼痛を有する成人患者における、56週間までにわたりSC注射によって投与した場合のタネズマブの効力および安全性の、ランダム化二重盲検プラセボ対照および実対照多施設並行群第3相研究であった。患者は、脊髄障害におけるケベックタスクフォースの分類に従ってカテゴリー1または2と分類された、第十二胸椎と殿溝下端との間の原発位置を有するベースライン時の腰背部疼痛、≧3カ月の慢性腰背部疼痛の持続時間、ランダム化日の前の5日間の間の、少なくとも4回の毎日の評価にわたる平均LBPIスコア>5によって実証される中程度から重症の慢性腰背部疼痛、および「まずまず」、「悪い」または「非常に悪い」、患者による腰背部疼痛の全般評価のベースラインスコアを有した。患者は、慢性腰背部疼痛の処置のために一般に使用され概して有効とみなされる少なくとも3つの異なるカテゴリーの薬剤に対する以前の不適切な処置応答の報告された履歴を有することも必要であった。患者は、一次効力評価期間(16週目まで)の間に、慢性腰背部疼痛の処置のための全ての薬物療法を中止する必要があった。米国リウマチ学会の臨床およびX線撮影基準の組み合わせによって定義される膝もしくは股関節の変形性関節症の診断を有する患者またはKellgren Lawrenceグレード≧2の股関節変形性関節症のX線撮影エビデンスもしくはKellgren Lawrenceグレード≧3の膝変形性関節症のX線撮影エビデンスを有した患者は除外した。
【0228】
およそ1800人の患者は、2:2:2:3の比で以下の4つの処置群のうち1つへと最初にランダム化することを計画した:
1. 16週目まで8週間間隔でSC投与されるプラセボ+トラマドールPRにマッチするプラセボ。16週目の来診時に、この群の患者を、56週目まで8週間間隔でSC投与されるタネズマブ5mgまたはタネズマブ10mgのいずれか+トラマドールPRにマッチするプラセボへと、1:1の比で盲検様式で切り替えた;
2. 56週目まで8週間間隔でSC投与されるタネズマブ5mg+トラマドールPRにマッチするプラセボ;
3. 56週目まで8週間間隔でSC投与されるタネズマブ10mg+トラマドールPRにマッチするプラセボ;
4. 56週目までの毎日の経口トラマドールPR 100〜300mg+8週間間隔でSC投与されるプラセボ。
【0229】
プラセボ患者について、初回ランダム化および16週目の意図した再ランダム化を達成するために、プラセボ→タネズマブ5mg(16週目の時点)、プラセボ→タネズマブ10mg(16週目の時点)、タネズマブ5mg、タネズマブ10mgおよびトラマドールPRについて、1:1:2:2:3のランダム化比を、試験の開始時に使用した。
【0230】
この研究は、80週間までの総持続時間(ランダム化後)で設計し、以下の3つの期間からなった:(1)スクリーニング期間、(2)二重盲検処置期間(16週間の一次効力期ならびに40週間の長期安全性および効力期から構成される)、および(3)24週間の追跡期間(図1)。
【0231】
患者集団
患者は、脊髄障害におけるケベックタスクフォースの分類に従ってカテゴリー1(照射なしの疼痛)または2(近位照射ありの疼痛[膝よりも上])と分類された、第十二胸椎と殿溝下端との間の原発位置を有する腰背部疼痛、および≧3カ月の慢性腰背部疼痛の持続時間を有する必要があった。表2は、スクリーニング前の鎮痛薬物療法使用についての要件ならびにLBPIおよび患者によるCLBPの全般評価(PGA)についての要件をまとめる。本研究は、CLBPについての標準治療処置に対してより不応性であり、ベースライン時により高いLBPIスコアを有した患者を登録した。
【0232】
【表3】
【0233】
表3 重要な人口統計学的およびベースライン特徴 − 安全性集団
処置群にわたる患者のCLBPのベースライン特徴を、本研究について表3にまとめる。LBPIおよびRMDQについての処置群にわたる平均スコアの範囲は、この研究に登録された患者(LBPI=7.17〜7.24;RMDQ=14.81〜15.10)が、以前の研究に登録された患者よりも重症のCLBPを有したことを示唆している。この研究は、以前の研究と比較して、主席調査者が評価した場合に変性関節疾患/変形性関節症を有する患者がおよそ15%少なく、変性椎間板疾患を有する患者は約5%多かった。神経障害性疼痛要素が個々の患者において存在する可能性を予測するためのpainDETECTスクリーニングツールからの評価に基づいて、この研究に登録された患者のうち68%が、優勢な非神経障害性疼痛要素を有し、およそ13%は、神経障害性疼痛要素を有した可能性が高かった。
【0234】
【表4】
【0235】
表4は、この研究に含めた一次エンドポイント(ベースラインから16週目までのLBPI変化)および重要な二次エンドポイント(ベースラインから16週目までのRMDQ変化)についてのデータをまとめる。4つの効力エンドポイントのうち3つ(ベースラインから16週目までのLBPIおよびRMDQ変化、ならびにLBPIにおける≧50%の改善)にわたって、プラセボ応答は、以前の研究よりもこの研究においてより大きい。LBPIエンドポイントについて、タネズマブ10mg対プラセボについての処置差異は、以前の研究と比較して、本研究においてより控えめであった。それにもかかわらず、LBPIについてのタネズマブ10mgとプラセボとの間での処置比較は全て、両方の研究において統計的に有意であった。RMDQ(ベースラインから16週目までの変化)について、両方の用量強度のタネズマブによる処置応答は、以前の研究と比較して、本研究においてより大きかった。
【0236】
この研究における活性対照薬は、トラマドールPRであったが、以前の研究における活性対照薬はナプロキセン500mg BIDであった。トラマドールPRは、表4にまとめたエンドポイントのいずれについても、プラセボと有意には異ならなかった。しかし、ナプロキセン500mg BIDは、LBPIエンドポイントについてはプラセボと比較して有意差を実証したが、RMDQエンドポイントについては有意差を実証しなかった。JAMA Intern Med(2016;176(7):958〜968)に公開された腰背部疼痛の処置のためのオピオイド鎮痛薬の体系的審査およびメタ分析は、トラマドールの研究が、疼痛における改善について混合型の効力結果を有していたことを示し、一部の研究はプラセボとは区別されたが、一部の研究はプラセボとは区別されなかった。これらの研究の処置持続時間は、4週間から12週間までの範囲であった。
【0237】
【表5-1】
【0238】
【表5-2】
【0239】
ベースラインおよびトラマドールと比較したLBPIおよびRMDQにおける改善は、研究を通じて維持されたが、56週目の時点において、タネズマブ5mg(N=407;LS平均[95%CI]差異=LBPIについては−0.11[−0.51、0.28]、RMDQについては−0.44[−1.47、0.58])または10mg(N=407;LS平均[95%]差異=LBPIについては−0.21[−0.61、0.18]、RMDQについては−0.83[−1.84、0.18])について、トラマドール(N=605;平均用量=209mg/日)よりも有意に良好なわけではなかった。
【0240】
16週目においてLBPIにおける≧30%の改善を達成している患者の百分率は、プラセボ(55.9%)と比較して、タネズマブ5mg(64.8%)群およびタネズマブ10mg(65.5%)群においてより高かった。プラセボに対するオッズ比(95%CI)は、タネズマブ5mgについては1.45(1.09、1.92;p=0.0101)、タネズマブ10mgについては1.50(1.13、1.99;p=0.0054)であった。図7に示されるように、16週目においてLBPIにおける>0%〜≧90%の改善を有する患者の割合は、プラセボ群よりも両方のタネズマブ群においてより大きかったが、処置差異は、応答閾値のレベルの増加と共に徐々に減少した。さらに、16週目においてLBPIにおける≧30%の改善を達成している患者の百分率は、プラセボ(55.9%)群とトラマドール(57.9%)群との間で異ならず、プラセボに対するオッズ比(95%CI)は、1.08(0.84、1.39;p=0.5493)であった。16週目においてLBPIにおける≧30%の改善を達成している患者の百分率は、トラマドール(57.9%)と比較して、タネズマブ5mg(64.8%)群およびタネズマブ10mg(65.5%)群においてより高かった。トラマドールに対するオッズ比(95%CI)は、タネズマブ5mgについては1.34(1.03、1.74;p=0.0269)、タネズマブ10mgについては1.38(1.07、1.80;p=0.0144)であった。56週目の時点で、LBPIにおけるトラマドールに対するLS平均(95%CI)差異は、タネズマブ10mgについては−0.21(−0.61、0.18;P=0.2887)、タネズマブ5mgについては−0.11(−0.51、0.28;P=0.5763)であった。
【0241】
図2は、16週目におけるベースラインからのLBPIおよびRMDQスコアについてのベースラインからの変化を示す。図3は、56週目までの、LBPIスコアについてのベースラインからの変化を示す(ITT集団、多重補完)。図4は、56週目までの、RMDQについてのベースラインからの変化を示す(ITT集団)。図5は、56週間の処置期間を通じた、LBPIスコアおよびRMDQスコアの両方における変化を示す。図6は、56週目における、LBPIおよびRMDQスコアについてのベースラインからの変化を示す。図7は、16週目においてLBPIにおける>0%〜≧90%の改善を有する患者の割合を示す。
【0242】
安全性
この研究において観察されたタネズマブ処置による全体的有害事象プロファイルは、CLBPを有する患者において実施された以前の研究と概して一致した。この研究では、いずれかのタネズマブ処置群における処置期間の間の有害事象の全体的発生率は、一次エンドポイントを評価した16週目まで、および56週間の処置期間の間の両方で、トラマドールPR処置群よりも低かった。56週間の処置期間の間の重篤有害事象の発生率は、タネズマブ10mg処置群において最も高く、次がトラマドールPR処置群およびタネズマブ5mg処置であった。16週目までの、および56週間の処置期間の間の、有害事象に起因する処置の中止の発生率は、タネズマブ10mgおよび5mg処置群と比較して、トラマドールPR処置群において最も高かった。
【0243】
この研究では、米国リウマチ学会(ACR)の臨床およびX線撮影基準の組み合わせによって定義される膝もしくは股関節の変形性関節症の診断を有する患者またはKellgren Lawrenceグレード≧2の股関節変形性関節症のX線撮影エビデンス(OA;明確な骨棘、可能性がある関節腔狭小化)もしくはKellgren Lawrenceグレード≧3の膝OAのX線撮影エビデンス(中程度の骨棘、明確な関節腔狭小化、いくらかの硬化症、可能性がある骨端変形)を有した患者は除外した。したがって、Kellgren Lawrenceグレード≦2の膝OAのX線撮影エビデンスを有したが、ACR基準を満たさず、膝OAと関連する疼痛を有さなかった患者は、本研究への関与に適格であった。
【0244】
判定のための基準を満たした、80週間の観察期間の間に関節安全性事象を有した合計30人の患者(患者全体の1.6%)のうち、トラマドールPR処置患者(4/602=0.7%)と比較して、より高い数のタネズマブ処置患者(26/1008=患者の2.6%)が、判定を必要とした。プラセボ処置群中の患者は、判定を必要とした関節安全性事象を有さなかった;したがって、プラセボ処置群には、判定された関節安全性エンドポイントは存在しなかった。
【0245】
複合関節安全性エンドポイント(急速進行性OA[RPOA]、原発性骨壊死、軟骨下脆弱性骨折、病的骨折)の発生率は、タネズマブ5mg処置群(1.0%)およびトラマドールPR処置群(0.2%)と比較して、タネズマブ10mg処置群において最も高かった(2.6%)。処置群にわたって、膝が、複合関節安全性エンドポイント中に含まれる判定された事象を有した16/19人の患者(84.2%)における罹患関節であった。罹患関節についてのベースラインKellgren Lawrenceグレードは、グレード0(関節腔狭小化も反応性変化も有さない)が7人の患者、グレード1(疑わしい関節腔狭小化、可能性がある骨増殖性辺縁(osteophytic lipping))が6人の患者、グレード2のOAのX線撮影エビデンスが5人の患者であった。Kellgren Lawrenceグレードは、肩x線では評価しなかったが、肩にエンドポイントを有した患者は、スクリーニング時肩x線では骨棘のX線撮影エビデンスを有さなかった。これらの患者についてのベースライン特徴および病歴のさらなる評価が、任意の素因となるリスク因子が同定され得るかどうかを決定するために実施される。
【0246】
タネズマブ処置患者のおよそ1.4%(14/1008)が、トラマドールPR処置患者の0.2%(1/602)と比較して、RPOAの判定された事象を有した。合計13人の患者が、1型RPOAと判定された関節安全性事象を有した(タネズマブ10mg処置群中の7人[1.4%]、タネズマブ5mg処置群中の5人[1.0%]およびトラマドールPR処置群中の1人[0.2%])。共にタネズマブ10mg処置群中の2人の患者(0.4%)が、2型RPOAと判定された関節安全性事象を有した。タネズマブについて、1型RPOAの2型RPOAに対する比率は、6:1であった。タネズマブ10mg処置群中の4人の患者(0.8%)が、軟骨下脆弱性骨折と判定された関節安全性事象を有した。2人の患者が、OAの通常の進行と判定された関節安全性事象を有した(タネズマブ5mg処置群中の1人の患者およびタネズマブ10mg処置群中の1人の患者)。
【0247】
判定のための基準を満たす関節安全性事象を有した合計30人の患者のうち、合計7人の患者が、研究観察期間(ベースラインから80週目または処置期間の26週間後までのいずれか遅い方)の間に、単一の全人工関節置換術(TJR)を有した。全ての患者を、タネズマブ10mgで処置した。置換された関節は、膝(n=4)、股関節(n=1)および肩(n=2)であった。さらに、全てのTJRは、有害事象と関連したおよび/または複合関節安全性事象と判定された(即ち、手術が待機的とみなされなかった)。これらの患者のうち2人が、1型RPOAの判定転帰を有し、2人の患者が、2型RPOAの判定転帰を有し、1人の患者が、軟骨下脆弱性骨折の判定転帰を有した。TJRを有した残り2人の患者は、その他の判定転帰(半月板断裂および外傷)を有した。
【0248】
主要結果の解釈
研究の主要な目標は、タネズマブ10mgで達成されたが、タネズマブ5mgでは達成されなかった。タネズマブ10mg処置対プラセボ処置について、一次効力エンドポイントであるLBPIスコアにおけるベースラインから16週目までの変化には、統計的に有意な改善が存在した。16週目において、タネズマブ5mg処置対プラセボ処置で、統計的に有意な改善は実証されなかった。
【0249】
トラマドールPRは、16週目において、プラセボと比較してLBPIをわずかにのみ改善し、処置差異は、統計的に有意ではなかった。タネズマブ10mg処置およびタネズマブ5mg処置の両方による、LBPIにおけるベースラインから16週目までの変化は、トラマドールPRと比較して好ましかったが、いずれの処置差異も、統計的有意性には達しなかった。
【0250】
タネズマブ10mgによる処置は、プラセボ処置と比較して、優れたレスポンダー率(16週目におけるLBPIにおける≧50%の改善)および身体機能における優れた改善(16週目におけるRMDQにおけるベースラインからの変化)を提供し、2週目において効果の発生を実証した。
【0251】
タネズマブ5mg処置は、16週目においてプラセボ処置と比較してRMDQにおけるより大きな改善を提供したが、予め特定された試験手順に従った、LBPIにおける、タネズマブ5mg対プラセボの有意な処置差異の欠如に起因して、この比較についてタネズマブ5mgの優位性の結論を下すことは不可能であった。両方のタネズマブ処置が、α=0.05(多重度補正なし)で、トラマドールPR処置よりも、16週目におけるRMDQにおいて有意に大きい改善を示した。
【0252】
LBPIおよびRMDQについてのベースラインから56週目までの変化についての処置差異は、トラマドールPR処置群と比較して、タネズマブ10mg処置群および5mg処置群の両方においてわずかにだけより大きく、差異は、統計的に有意ではなかった。疼痛および機能における改善は、長期間維持された。
【0253】
この研究において観察されたタネズマブ処置による有害事象プロファイルは、CLBPを有する患者において実施された以前の研究と一致した。いずれかのタネズマブ処置群における処置期間の間の有害事象の全体的発生率は、一次エンドポイントを評価した16週目まで、および56週間の処置期間の間の両方で、トラマドール処置群よりも低かった。56週間の処置期間の間の重篤有害事象の発生率は、タネズマブ10mg処置群において最も高く、次がトラマドールPR処置群およびタネズマブ5mg処置であった。16週目までの、および56週間の処置期間の間の、有害事象に起因する処置の中止の発生率は、タネズマブ10mgおよび5mg処置群と比較して、トラマドールPR処置群において最も高かった。
【0254】
複合関節安全性エンドポイント(急速進行性OA、原発性骨壊死、軟骨下脆弱性骨折、病的骨折)の発生率および観察時間を調整した比率は、タネズマブ5mg処置群(1.0%および10.0事象/1000人の患者−年)およびトラマドール処置群(0.2%および1.9事象/1000人の患者−年)と比較して、タネズマブ10mg処置群において最も高かった(2.6%および25.7事象/1000人の患者−年)。複合関節安全性エンドポイントは、プラセボ処置群では観察されなかった。合計13人の患者が、1型急速進行性OAと判定された関節安全性事象を有した(タネズマブ5mg − 5人の患者、タネズマブ10mg − 7人の患者、およびトラマドール − 1人の患者)。タネズマブ10mg処置群中の2人の患者が、2型急速進行性OAの判定された事象を有し、これもまたタネズマブ10mg処置群中の4人の患者が、軟骨下脆弱性骨折の判定された事象を有した。
【0255】
関節安全性転帰について判定された事象を有した30人の患者のうち、タネズマブ10mg処置群中の7人の患者が、研究観察期間の間に全人工関節置換術を受けた。
【0256】
この研究は、現在利用可能な医薬で緩和を達成することができなかった中程度から重症の慢性腰背部疼痛に罹患している個体を処置する、タネズマブを含む抗NGF抗体の潜在力を実証している。慢性腰背部疼痛と共に生きるかかる患者は、不変の疼痛に罹患しており、これが、日常的な作業を実行する彼らの能力に顕著に影響を与える。タネズマブを含む抗NGF抗体の使用は、この生活を変える衰弱性の状態に対処することを助ける革新的な非オピオイド処置を提示する。
【0257】
(実施例2)
研究設計
この第2の研究(「研究1063」と呼ぶ)は、慢性腰背部疼痛(CLBP)を有する対象における、56週間までにわたりSC注射によって投与した場合のタネズマブの安全性および効力を評価するための、日本におけるランダム化二重盲検実対照多施設並行群第3相研究であった。患者は、脊髄障害におけるケベックタスクフォースの分類に従ってカテゴリー1または2と分類された、第十二胸椎と殿溝下端との間の原発位置を有するベースライン時の腰背部疼痛、≧3カ月のCLBPの持続時間、ランダム化日の前の5日間の間の、少なくとも4回の毎日の評価にわたる≧5の平均腰背部疼痛強度(LBPI)スコアによって実証される中程度から重症のCLBP、および「まずまず」、「悪い」または「非常に悪い」、患者による腰背部疼痛の全般評価のベースラインを有した。患者はまた、NSAID(セレコキシブ200mg/日[100mg BID]、ロキソプロフェン120〜180mg/日またはメロキシカム5〜15mg/日)処置の経口治療の彼らの現在の安定用量レジメンからいくらかの利益を経験している必要があったが、スクリーニング時にさらなる疼痛緩和をなおも必要とした。患者は、16週目までのCLBPの処置のための全ての薬物療法(スクリーニングの少なくとも30日前以降安定用量で摂取されてきた筋弛緩薬、プレガバリン、ガバペンチンおよび抗うつ薬を除く)を中止する必要があった。米国リウマチ学会の臨床およびX線撮影基準の組み合わせによって定義される膝もしくは股関節の変形性関節症の診断を有する患者またはKellgren Lawrenceグレード≧2の股関節変形性関節症のX線撮影エビデンスもしくはKellgren Lawrence グレード≧3の膝変形性関節症のX線撮影エビデンスを有した患者は除外した。
【0258】
およそ200人の患者(170〜220人の患者、処置群当たりおよそ66人の患者[56〜73人の患者])は、研究の実現可能性および安全性評価に関して、1:1:1の比で3つの処置群のうち1つへとランダム化することを計画した。しかし、安全性の観点から220人よりも多くの患者をランダム化することが許容できた。
【0259】
患者は、8週間分離させた合計7回のSC注射(タネズマブまたはプラセボ)、および56週目に至るまでの毎日のセレコキシブ100mg BIDを受けた。処置群は、以下の通りであった:
1. タネズマブ5mg SCおよびセレコキシブBIDについてのプラセボ;
2. タネズマブ10mg SCおよびセレコキシブBIDについてのプラセボ;
3. タネズマブSCおよびセレコキシブBIDについてのプラセボ。
【0260】
この研究は、80週間の総(ランダム化後)持続時間で設計し、以下の3つの期間からなった:(1)スクリーニング期間(最大で37日間まで)、(2)二重盲検処置期間(56週間)、および(3)安全性追跡(24週間)期間(図8)。スクリーニング期間は、必要に応じて休薬期間(2〜32日間持続する)、および初期疼痛評価期間(IPAP)(ランダム化/ベースライン前の5日間;最低4日間)を含んだ。
【0261】
16週目の来診時に、患者は、1週目〜15週目のいずれかの週において、ベースラインと比較した平均LBPIスコアにおける30%以上の低減、およびベースラインからの平均LBPIスコアにおける15%以上の低減を有していなければならない。これらの応答基準を満たさなかった患者は、処置期間を中止し、早期終結安全性追跡期間に入った。
【0262】
患者集団
治療企図(ITT)分析セットは、ランダム化され、少なくとも1用量のSC研究薬物療法(タネズマブまたはプラセボのいずれか)を受けた全ての患者を含んだ。この分析セットは、ランダム化割り当てに従って分析した全ての効力エンドポイントについて最重要のものであり、「ITT集団」と表示した。
【0263】
安全性分析セットは、少なくとも1用量のSC研究処置を受けた全ての患者を含んだ。この分析セットは、受けた処置に従って分析した全ての安全性エンドポイントについて最重要のものであり、「安全性集団」と表示した。
【0264】
この研究では、ITTおよび安全性分析セットは同一であった。
【0265】
合計277人の患者をランダム化した。92人の患者をタネズマブ5mgにランダム化し、93人の患者をタネズマブ10mgにランダム化し、92人の患者をセレコキシブにランダム化した。さらなる患者の素質は、表5および表6に示される。
【0266】
【表6】
【0267】
【表7】
【0268】
人口統計学的およびベースライン特徴(表7)は、3つの処置群にわたって類似であった。
【0269】
【表8】
【0270】
安全性
表8は、56週間の処置期間の間の処置下で発現した有害事象をまとめる。有害事象は、タネズマブ5mg群についてよりも、セレコキシブ群についてより頻繁に報告されたが、タネズマブ10mg群は、最も少ない有害事象を報告した。処置期間の間の重篤有害事象の発生率は、タネズマブ10mg群において最も高く、次がタネズマブ5mg群およびセレコキシブ群であった。全ての群において、有害事象に起因して処置を中止した患者はわずかであった。
【0271】
【表9】
【0272】
処置期間の間の最も頻繁な有害事象(任意の処置群中で≧3%)は、表9に示される。上咽頭炎、転倒および挫傷は、セレコキシブ群よりも、両方のタネズマブ群においてより頻繁に報告された(処置群間で>1%の差異)。関節痛、発熱、下痢、胃腸炎および高血圧は、両方のタネズマブ群よりも、セレコキシブ群においてより頻繁に報告された(処置群間で>1%の差異)。
【0273】
【表10】
【0274】
処置期間の間の異常な末梢感覚の有害事象の頻度は、タネズマブ5mg群において最も高かった(タネズマブ5mgについては9.8%、タネズマブ10mgについては4.3%、セレコキシブについては4.3%)。潜在的な交感神経機能不全の有害事象の頻度は、セレコキシブ群において最も高かった(セレコキシブ群については7.6%、タネズマブ10mgについては4.3%、タネズマブ5mgについては3.3%)。処置期間の間にも安全性追跡期間の間にも、死亡は報告されなかった。合計5人の患者(各タネズマブ群中の2人の患者およびセレコキシブ群中の1人の患者)が、関節安全性事象の判定のための基準を満たした(表10)。複合関節安全性エンドポイント(急速進行性変形性関節症[RPOA]、原発性骨壊死、軟骨下脆弱性骨折、病的骨折)の発生率および観察時間を調整した比率は、タネズマブ10mg群において最も高く(2.2%および21.0事象/1000人の患者−年)、次がタネズマブ5mg群であった(1.1%および8.9事象/1000人の患者−年);セレコキシブ群では、複合エンドポイントは存在しなかった(0%および0事象/1000人の患者−年)。
【0275】
【表11】
【0276】
3つの処置群にわたる判定された関節安全性エンドポイントを有した5人の患者のうち、タネズマブ10mg群中の1人の患者が、全人工関節置換術をもたらした2型RPOAの判定された事象を有した。これが、研究観察期間の間に報告された唯一の全人工関節置換術であった。この患者の罹患関節は、スクリーニング時x線でKellgren Lawrence(KL)グレード1であった股関節であった。タネズマブ10mg群中の別の患者は、軟骨下脆弱性骨折と判定された関節安全性事象を有した。罹患関節は、スクリーニング時x線でKLグレード2であった膝であった。タネズマブ5mg群中の1人の患者は、判定された1型RPOA事象を有した。この患者では、両方の膝関節が、1型RPOAの判定された転帰を有した。両方の膝が、スクリーニング時x線でOAのX線撮影エビデンスを有した(KLグレード1、右膝;KLグレード2、左膝)。2人の患者は、「その他」の判定カテゴリー(即ち、予め特定された複合関節安全性エンドポイントなし)と判定された関節安全性事象を有した。2人の患者のうち、タネズマブ5mg群中の1人の患者は、既存の軟骨下脆弱性骨折(スクリーニング時X線写真中に存在する軟骨下脆弱性骨折)を有し、セレコキシブ群中の別の患者は、既存の関節形成術を有した。
【0277】
効力
LBPIスコアにおけるベースラインから16週目までの変化、RMDQ合計スコア、および16週目におけるLBPIスコアにおける50%レスポンダーの効力エンドポイントが、表11に示される。タネズマブ5mgおよび10mgによる処置は、セレコキシブ群と比較して、LBPIについてのベースラインから16週目までの変化について、数値的により大きい改善を示し、タネズマブ10mgによる処置は、タネズマブ5mgおよびセレコキシブ処置と比較して、RMDQについてのベースラインから16週目までの変化について、数値的により大きい改善を示した。
【0278】
LBPIおよびRMDQについてのベースラインから56週目までの変化は、図9および図10に示される。LBPIおよびRMDQについてのベースラインから56週目までの変化についての処置差異は、タネズマブ10mg群およびセレコキシブ群の両方と比較して、タネズマブ5mg群において、数値的により大きかった。
【0279】
【表12】
【0280】
主要結果の解釈
研究の主要な目標は、56週間の処置の過程にわたり、セレコキシブ処置と比較したタネズマブ10mgおよび5mg SCの長期安全性を評価することであった。この研究において観察されたタネズマブ処置の安全性プロファイルは、CLBPを有する患者において実施された以前の研究(実施例1)と一致した。両方のタネズマブ群における処置期間の間の有害事象の全体的発生率(5mg:63.0%、10mg:54.8%)は、56週間の処置期間の間、セレコキシブ群(67.4%)よりも低かった。56週間の処置期間の間の重篤有害事象の発生率は、タネズマブ10mg群において最も高く(9.7%)、次がタネズマブ5mg群(4.3%)およびセレコキシブ群(2.2%)であった。処置期間の間の有害事象に起因した処置の中止の発生率は、セレコキシブ処置群(4.3%)およびタネズマブ5mg処置群(3.3%)と比較して、タネズマブ10mg処置群(5.4%)において最も高かった。研究1063の間には死亡は報告されなかった。
【0281】
複合関節安全性エンドポイントの発生率および観察時間を調整した比率は、タネズマブ10mg群において最も高く(2.2%および21.0事象/1000人の患者−年)、次がタネズマブ5mg群(1.1%および8.9事象/1000人の患者−年)およびセレコキシブ群(0%および0事象/1000人の患者−年)であった。複合関節安全性エンドポイント中に含まれた3人の患者のうち、研究観察期間の間に、タネズマブ10mg群中の各々1人の患者が、2型RPOAまたは軟骨下脆弱性骨折の判定転帰を有し、タネズマブ5mg群中の1人の患者が、1型RPOAの判定転帰を有した。
【0282】
タネズマブ5mgおよび10mgによる処置は、LBPIについてのベースラインから16週目までの変化について、数値的により大きい改善を示し、LBPIおよびRMDQについてのベースラインから56週目までの変化についての処置差異は、タネズマブ10mg群およびセレコキシブ群の両方と比較して、タネズマブ5mg群において数値的により大きかった。
【0283】
研究1063(実施例2)および研究1059(実施例1)のまとめ
表12は、CLBP研究1063および1059についての研究設計のまとめを提供する。
【0284】
【表13】
【0285】
処置群にわたるベースライン特徴を、この研究(1063)およびタネズマブを用いた世界的CLBP研究(1059)について表13にまとめる。LBPIおよびRMDQについての処置群にわたる平均スコアの範囲は、研究1063に登録した患者(LBPI=6.72〜6.82;RMDQ=7.75〜8.27)が、特に身体機能に関して、研究1059に登録した患者(集団全体LBPI=7.17〜7.24;RMDQ=14.81〜15.10、日本人集団LBPI=6.71〜7.21;RMDQ=8.48〜11.47)よりも軽度のCLBPを有したことを示唆している。研究1063は、およそ10%少ない、変性関節疾患/変形性関節症を有する患者(1063=14.8%対1059=24.3%)および変性椎間板疾患を有する、より多くの患者(1063=39.7%対1059=30.1%)を有した。研究1063は、研究1059と比較して、より小さい割合の、傷害/筋緊張に起因するCLBPを有する患者を有した(1063=2.5%対1059=32.4%)。研究1063は、その病因が「その他」として報告された多くのCLBP患者(43.0%)を含み、これらの患者のほとんど(73.9%、88/119)におけるLBPの原因は、特定されなかった(即ち、未知、非特異的LBPなど)。神経障害性疼痛要素が個々の患者中に存在する可能性を予測するためのpainDETECTスクリーニングツールからの評価に基づくと、研究1063に登録された患者のうち85.6%が、優勢に非神経障害性の疼痛要素を有し(研究1059:68.4%)、およそ6.1%が、神経障害性疼痛要素を有した可能性が高かった(研究1059:12.6%)。
【0286】
研究1063における処置期(56週目まで)の完了者の比率(5mg:67.4%、10mg:46.2%)は、研究1059(5mg:34.4%、10mg:39.1%)よりも高かった。
【0287】
【表14】
【0288】
安全性
日本人研究1063において観察されたタネズマブ処置の全般的安全性および関節安全性を含む有害事象プロファイルは、世界的CLBP研究1059と概して一致した。
【0289】
全般的安全性
研究1063では、タネズマブ処置群における56週間の処置期間の間の有害事象の全体的発生率(5mg:63.0%、10mg:54.8%)は、セレコキシブ処置群(67.4%)よりも低かった(研究1059:5mg;58.3%、10mg;63.7%)。56週間の処置期間の間の重篤有害事象の発生率は、タネズマブ10mg処置群において最も高く(9.7%)、次がタネズマブ5mg処置群(4.3%)およびセレコキシブ処置群(2.2%)であった(参照研究1059:5mg;2.2%、10mg;4.6%)。56週間の処置期間の間の、有害事象に起因する処置の中止の発生率は、セレコキシブ処置群(4.3%)およびタネズマブ5mg処置群(3.3%)と比較して、タネズマブ10mg処置群において最も高かった(5.4%)(研究1059:5mg;6.7%、10mg;7.4%)。研究1063の間には死亡は報告されなかった。
【0290】
最も頻繁な有害事象(研究1063における任意のタネズマブ処置群中で≧3%)は、上咽頭炎、背部疼痛、挫傷、転倒、関節痛、頭痛、椎間板ヘルニア、感覚鈍麻、筋肉痛、四肢における疼痛、筋骨格疼痛、肺炎であった。
【0291】
研究1063における異常な末梢感覚の有害事象の発生率は、タネズマブ5mg処置群において9.8%、タネズマブ10mg処置群において4.3%、セレコキシブ処置群において4.3%であった;研究1063における異常な末梢感覚の最も一般的な有害事象は、感覚鈍麻(5mg:5.4%、10mg:2.2%[研究1059 5mg:3.0%、10mg:3.8%])および手根管症候群(5mg:1.1%、10mg:2.2%[研究1059 5mg:1.0%、10mg:1.6%])であった;研究1063のタネズマブ処置群における全ての異常な末梢感覚有害事象は、重症度が軽度であった。
【0292】
研究1063における潜在的な交感神経機能不全の有害事象の発生率は、タネズマブ5mg群において3.3%、タネズマブ10mg群において4.3%、セレコキシブ群において7.6%であった(研究1059 5mg:5.9%、10mg:6.4%);研究1063のタネズマブ処置群における全ての潜在的な交感神経機能不全事象は、重症度が軽度であった。
【0293】
これらの結果は、研究1063における全体的有害事象プロファイルが、世界的研究1059と著しくは異ならなかったことを示唆している。
【0294】
関節安全性
5人の患者(患者全体の1.8%)は、80週間の観察期間の間に、関節安全性転帰の判定のための基準を満たし、セレコキシブ処置患者(1/92=1.1%)と比較して、判定のための基準を満たしたより高い数のタネズマブ処置患者(4/185=患者の2.2%)が存在した。
【0295】
タネズマブ5mg処置群では、1人の患者が、1型RPOAの判定された事象(右および左の両方の膝、それぞれ、ベースラインKellgren Lawrence[KL]グレード1およびグレード2)を有し、別の患者が、「その他」(予め特定されたカテゴリー以外の判定転帰)/既存のSIF(右膝、ベースラインKLグレード1)の判定された事象を有した。タネズマブ10mg処置群では、1人の患者が、2型RPOAの判定された事象(左股関節、ベースラインKLグレード1)を有し、別の患者が、SIFの判定された事象(左膝、ベースラインKLグレード2)を有した。セレコキシブ処置群では、1人の患者が、その他/既存の関節形成術の判定された事象(右膝、ベースラインKLグレード:NA)を有した。
【0296】
表14は、CLBP研究1063および1059についてのタネズマブ処置群における複合関節安全性エンドポイントおよび個々の関節安全性エンドポイントのまとめを提供し、参照として以前のOA研究1058からのデータも提供する。
【0297】
研究1063における組み合わされたタネズマブ処置群における複合関節安全性エンドポイントの発生率(1.6%)は、CLBP研究1059(1.8%)と類似しており、これは、以前のOA研究1058(5.5%)よりも低かった。研究1063においてタネズマブ処置群へとランダム化された患者数(N=185)は、研究1059のサイズ(N=1008)のおよそ18%ではあったが、複合関節安全性エンドポイントの類似の発生率は、研究1063からのデータが研究1059と概して一致し、さらなる関節安全性シグナルが研究1063から同定されなかったことを示唆している。
【0298】
【表15】
【0299】
効力
タネズマブ5mgおよび10mgによる処置は、セレコキシブ処置と比較して、LBPIスコアについてのベースラインから16週目までの変化において、数値的により大きい改善を提供した(表15)。研究1063は、タネズマブ処置群が活性対照薬よりも数値的に大きい改善を達成したという点で、研究1059と概して一致していた。
【0300】
【表16】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【外国語明細書】
2020143045000001.pdf