【解決手段】主剤成分として、重量平均分子量が5000以上の水酸基含有樹脂と、着色顔料と、縮合リン酸塩と、粘性調整剤と、溶剤とを含み、硬化剤成分として、イソシアネート化合物を含む2液硬化型の塗料組成物であって、塗料組成物の不揮発分中における縮合リン酸塩の含有量が5〜15質量%であり、かつ、不揮発分中における粒子径が1μmを超える顔料の含有量が1.5〜12体積%であることを特徴とする塗料組成物である。
主剤成分として、重量平均分子量が5000以上の水酸基含有樹脂と、着色顔料と、縮合リン酸塩と、粘性調整剤と、溶剤とを含み、硬化剤成分として、イソシアネート化合物を含む2液硬化型の塗料組成物であって、塗料組成物の不揮発分中における縮合リン酸塩の含有量が5〜15質量%であり、かつ、不揮発分中における粒子径が1μmを超える顔料の含有量が1.5〜12体積%であることを特徴とする塗料組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される塗料組成物は、成分(D)に規定されるような弱溶剤を含む塗料組成物であるが、成分(A)に規定されるような分子内に水酸基を2つ以上有し且つ特定の分子量及び蒸気圧を有する化合物を配合することによって、弱溶剤系塗料組成物であるにもかかわらず塗膜形成成分の含有量を高くすることができ、更には塗膜の内部応力をも抑えることができることで、1回の塗装で所望の膜厚を有する塗膜を形成することが可能であり且つ該塗膜の基材に対する付着性も良好である常温乾燥型塗料組成物を提供することができるとしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される塗料組成物は、下塗り・上塗り兼用塗料組成物として好適であるものの、送電や通信用の鉄塔、橋梁施設、プラント等に使用される亜鉛めっき処理された鋼材(以下、亜鉛めっき鋼材ともいう)への付着性については十分ではなく、依然として改良の余地があった。
【0007】
亜鉛めっき鋼材は、50年の耐久性があるとされるが、実際は20数年で部分的な腐食が発生することから、10〜15年間隔で塗り替え塗装が行われる。このため、亜鉛めっき面への付着性に優れる塗料が求められている。
【0008】
また、特許文献1に記載される塗料組成物は、成分(A)に規定されるような分子内に水酸基を2つ以上有し且つ特定の分子量及び蒸気圧を有する化合物を配合することから、乾燥性についても改良の余地がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、厚膜の塗装が可能で、且つ亜鉛めっき処理された鋼材への付着性、乾燥性及び耐候性に優れた塗膜を形成することが可能な塗料組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる塗料組成物を用いた塗装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、2液硬化型の塗料組成物において、重量平均分子量が5000以上の水酸基含有樹脂と、着色顔料と、縮合リン酸塩とを用い、その際に、縮合リン酸塩の含有量及び特定の粒子径範囲にある顔料の含有量を調整することによって、亜鉛めっき鋼材への付着性に優れ、且つ乾燥性及び耐候性にも優れた塗膜を形成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明者は、上記のような2液硬化型の塗料組成物において、更に粘性調整剤を配合することによって、所望の膜厚を有する塗膜、好ましくは1コートで厚膜を形成することが可能であり、例えば特許文献1に記載される成分(A)を配合しなくてもよいため、乾燥性も良好な塗料組成物とすることができることを見出した。
【0011】
即ち、本発明の2液硬化型の塗料組成物は、主剤成分として、重量平均分子量が5000以上の水酸基含有樹脂と、着色顔料と、縮合リン酸塩と、粘性調整剤と、溶剤とを含み、硬化剤成分として、イソシアネート化合物を含む2液硬化型の塗料組成物であって、塗料組成物の不揮発分中における縮合リン酸塩の含有量が5〜15質量%であり、かつ、不揮発分中における粒子径が1μmを超える顔料の含有量が1.5〜12体積%であることを特徴とする。
【0012】
本発明の2液硬化型の塗料組成物の好適例においては、前記粘性調整剤が、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、及び有機変性粘土鉱物よりなる群から選ばれる粘性調整剤を含む。
【0013】
本発明の2液硬化型の塗料組成物の他の好適例においては、前記縮合リン酸塩が、縮合リン酸アルミニウム又は、縮合リン酸亜鉛である。
【0014】
本発明の2液硬化型の塗料組成物の他の好適例においては、亜鉛めっき鋼基材の塗装用である。
【0015】
本発明の2液硬化型の塗料組成物の他の好適例においては、下塗り・上塗り兼用塗料組成物であり、1コートで塗装が行われる。
【0016】
本発明の2液硬化型の塗料組成物の他の好適例においては、常温硬化型塗料組成物である。
【0017】
また、本発明の塗装物は、基材上に塗膜を備えており、前記塗膜が上記の塗料組成物から形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の2液硬化型の塗料組成物によれば、厚膜の塗装が可能で、且つ亜鉛めっき処理された鋼材への付着性、乾燥性及び耐候性にも優れた塗膜を形成することが可能な塗料組成物、好ましくは更に乾燥性も良好な塗料組成物を提供することができる。また、本発明の塗装物によれば、かかる塗料組成物を用いた塗装物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の2液硬化型の塗料組成物(以下、単に本発明の塗料組成物とも称する)を詳細に説明する。本発明の塗料組成物は、主剤成分として、重量平均分子量が5000以上の水酸基含有樹脂と、着色顔料と、縮合リン酸塩と、粘性調整剤と、溶剤とを含み、硬化剤成分として、イソシアネート化合物を含む2液硬化型の塗料組成物であって、塗料組成物の不揮発分中における縮合リン酸塩の含有量が5〜15質量%であり、かつ、不揮発分中における粒子径が1μmを超える顔料の含有量が1.5〜12体積%であることを特徴とする。
【0020】
本発明の塗料組成物は、重量平均分子量が5000以上の水酸基含有樹脂を含む。重量平均分子量が上記特定した範囲内にある水酸基含有樹脂を用いることで、塗料組成物として乾燥性に優れ、且つ十分な塗膜硬度を有する塗膜を形成することができる。上記水酸基含有樹脂は、重量平均分子量が10000〜200000であることが更に好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用される。
【0021】
本発明の塗料組成物において、上記水酸基含有樹脂は、水酸基を有しており、後述するイソシアネート化合物と反応することでウレタン結合を形成し、耐候性に優れる塗膜を得ることができる。上記水酸基含有樹脂は、水酸基を有する重量平均分子量5000以上の樹脂である限り特に制限されるものではないが、本発明の塗料組成物を下塗り・上塗り兼用塗料組成物として利用する観点から、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリルシリコーン樹脂及び水酸基含有ふっ素樹脂が好ましく、水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有アクリルシリコーン樹脂が更に好ましい。なお、上記水酸基含有樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記水酸基含有樹脂は、市販品を好適に使用できるが、例えばアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂又はふっ素樹脂の合成の際に、水酸基含有モノマーを用いることで容易に調製可能である。
【0022】
上記水酸基含有樹脂は、水酸基価が10〜200mgKOH/gであることが好ましい。上記水酸基含有樹脂の水酸基価が上記特定した範囲内にあれば、良好な塗膜性能を示すのに十分な硬化性を確保することができる。なお、水酸基価は、JIS K 0070に準拠して測定できる。上記水酸基含有樹脂の水酸基価が10mgKOH/gより小さいと、十分な硬化性が得られない傾向がある。一方、上記水酸基含有樹脂の水酸基価が200mgKOH/gより大きいと、架橋点が多くなり内部応力が増大するため、基材との付着性が悪くなる場合がある。また、耐水性も悪くなる傾向がある。
【0023】
本発明の塗料組成物において、不揮発分中における上記水酸基含有樹脂の含有量は、25〜70質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることが更に好ましい。
【0024】
本明細書において、不揮発分とは、水や有機溶剤等の揮発する成分を除いた成分を指し、最終的に塗膜を形成することになる成分であるが、本発明においては、塗料組成物を130℃で60分間乾燥させた際に残存する成分を不揮発分として取り扱う。本発明の塗料組成物中において不揮発分の含有量は、50〜90質量%であることが好ましく、55〜75質量%であることが更に好ましい。
【0025】
本発明の塗料組成物は、イソシアネート化合物を含む。本発明の塗料組成物において、イソシアネート化合物は、水酸基含有樹脂の水酸基に対してイソシアネート基が0.5〜1.5当量であることが好ましく、0.8〜1.2当量であることが更に好ましい。このように、イソシアネート化合物の含有量は、水酸基含有樹脂の官能基の量に応じて適宜調整されるものであるが、例えば、本発明の塗料組成物中におけるイソシアネート化合物の含有量は、0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0026】
イソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族のイソシアネート化合物が挙げられ、イソシアネート基を2個以上有する化合物(ポリイソシアネートとも称される)であることが好ましく、その具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の他、これらイソシアネートの変性体が挙げられる。変性体の具体例としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体(例えばトリメチロールプロパン付加物)、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートの各種変性体やイソホロンジイソシアネートの各種変性体が、硬化性や塗膜特性の観点から好ましい。なお、イソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の塗料組成物は、硬化触媒を含んでもよい。硬化触媒を用いることで、水酸基含有樹脂とイソシアネート化合物との硬化を促進させることができる。硬化触媒としては、公知のものを使用することができるが、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート等の錫系触媒、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒、ナフテン酸銅等のカルボキシレート系触媒、トリエチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン系触媒等が挙げられる。なお、硬化触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物中において硬化触媒の含有量は、0〜1質量%であることが好ましい。
【0028】
本発明の塗料組成物は、着色顔料を含む。本発明に使用できる着色顔料としては、特に限定されるものではなく、塗料業界において通常使用されている顔料を使用できる。具体例としては、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料や、フタロシアニン銅、アゾ系顔料、縮合多環式顔料等の有機顔料が挙げられる。なお、着色顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物において、不揮発分中における着色顔料の含有量は、2〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることが更に好ましい。
【0029】
本発明の塗料組成物は、縮合リン酸塩を含む。本発明に使用できる縮合リン酸塩としては、特に限定されるものではなく、塗料業界において通常使用されている材料を使用することができる。なお、本発明に使用できる縮合リン酸塩は、防錆顔料に分類されるものである。
【0030】
ここで、縮合リン酸塩としては、例えばオルトリン酸亜鉛、オルトリン酸カルシウム、オルトリン酸アルミニウム、オルトリン酸マグネシウムなどのオルトリン酸金属塩、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸錫、ピロリン酸鉄、ピロリン酸チタン、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸マンガンなどのピロリン酸金属塩、トリポリリン酸鉄、トリポリリン酸アルミニウムなどのトリポリリン酸金属塩、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸鉄、メタリン酸錫などのメタリン酸金属塩、さらには、層状リン酸チタン、層状リン酸ジルコニウム、層状リン酸錫などのリン酸金属塩系層状化合物等を挙げることができる。これらの中でも、亜鉛めっき鋼材への付着性の観点から、縮合リン酸塩が縮合リン酸アルミニウム又は、縮合リン酸亜鉛のどちらかであることが好ましく、縮合リン酸アルミニウムが更に好ましい。
【0031】
本発明の塗料組成物において、縮合リン酸塩は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物において、不揮発分中における縮合リン酸塩の含有量は、5〜15質量%である。
【0032】
本発明の塗料組成物は、縮合リン酸塩以外の防錆顔料を更に含んでいてもよい。縮合リン酸塩以外の防錆顔料としては、ホウ酸系防錆顔料、モリブデン酸系防錆顔料、バナジン酸系防錆顔料等を挙げることができる。
【0033】
本発明の塗料組成物は、体質顔料を含んでもよいが、耐候性を向上させる観点から言えば、体質顔料を含まないことが好ましい。体質顔料としては、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を例示することができる。本発明の塗料組成物において、不揮発分中における体質顔料の含有量は、0〜20質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明の塗料組成物は、着色顔料や体質顔料、防錆顔料等の各種顔料を含むものであるが、本発明の塗料組成物において、不揮発分中に含まれる顔料の総量は、7〜65質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることが更に好ましい。
【0035】
本発明の塗料組成物中に含まれる顔料は、50%体積平均径が0.01〜10μmであることが好ましい。
本発明において、顔料の50%体積平均径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D
50)を指し、粒度分布測定装置(例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0036】
また、本発明の塗料組成物において、不揮発分中における粒子径が1μmを超える顔料の含有量が1.5〜12体積%である。該範囲とすることにより耐候性に優れる塗膜を形成できる。なお、粒子径が1μmを超える顔料の含有量は、マイクロトラック等により測定した粒度分布より算出することができる。
【0037】
本発明の塗料組成物は、粘性調整剤を含む。本発明の塗料組成物は、塗装作業性、特には厚膜塗装時の作業性の観点から、粘性調整剤を用いることが好ましく、塗料業界において通常使用されている粘性調整剤を使用することができる。具体例としては、脂肪酸アマイド、ポリエチレン、脂肪酸エステル、変性ウレア、ひまし油誘導体、有機ベントナイトや有機変性セピオライト等の有機変性粘土鉱物、親水性シリカ等の粘性調整剤等が挙げられる。これらの中でも、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、及び有機変性粘土鉱物よりなる群から選ばれる粘性調整剤が好ましい。
【0038】
本発明の塗料組成物において、粘性調整剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物中において、不揮発分中における粘性調整剤の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0039】
本発明の塗料組成物は、シランカップリング剤を含んでも良い。シランカップリング剤を配合することで、基材との付着性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、公知のものを使用することができるが、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なお、シランカップリング剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物において、不揮発分中におけるシランカップリング剤の含有量は、0〜5.0質量%であることが好ましい。
【0040】
本発明の塗料組成物は、溶剤を含む。溶剤としては、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類(ラクトンを含む)、窒素含有化合物(アミド、ラクタムなど)、硫黄含有化合物、炭化水素(脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素など)等の公知の塗料用溶剤が使用できる。
【0041】
また、本発明の塗料組成物において、溶剤は、乾燥性や塗装作業性の面から、沸点が70〜210℃の範囲内にあることが好ましい。
【0042】
本発明の塗料組成物において、溶剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の塗料組成物中において、溶剤の含有量は、10〜50質量%であることが好ましく、25〜45質量%であることが更に好ましい。
【0043】
本発明の塗料組成物には、その他の成分として、他の樹脂、艶消し剤、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、防藻剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。
【0044】
本発明の塗料組成物は、主剤と硬化剤とから構成される2液硬化型の塗料組成物であるが、主剤成分として、重量平均分子量5000以上の水酸基含有樹脂と、着色顔料と、縮合リン酸塩と、粘性調整剤と、溶剤とを含み、硬化剤成分として、イソシアネート化合物を含む。
本発明の塗料組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製することができ、例えば、重量平均分子量5000以上の水酸基含有樹脂、着色顔料、縮合リン酸塩、粘性調整剤及び溶剤を含む主剤と、イソシアネート化合物を含む硬化剤とを予め用意しておき、塗装時に主剤と硬化剤とを混合することで調製することができる。
【0045】
本発明の塗料組成物は、下塗り・上塗り兼用塗料組成物、厚膜形塗料組成物及び/又は常温硬化型塗料組成物として好適である。本発明の塗料組成物は、下塗り・上塗り兼用塗料組成物として好適であり、1コートで塗装を完了することが可能である。
【0046】
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1s
−1の粘度が0.1〜10,000Pa・sであり、且つせん断速度1,000s
−1の粘度が0.05〜10Pa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度はレオメーター(TAインスツルメンツ社製レオメーターARES等)を用い、液温を23℃に調整した後測定される。
【0047】
本発明の塗料組成物の塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗装、コテ塗装、ヘラ塗装等が利用できる。
【0048】
本発明の塗料組成物は、厚みのある塗膜を形成することが可能であるため、例えば、乾燥膜厚が30〜100μmの塗膜を1回の塗装で形成することができる。
【0049】
本発明の塗料組成物により塗装できる基材としては、特に限定されるものではなく、鉄鋼、亜鉛めっき鋼、錫めっき鋼、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属又は合金を少なくとも一部に含む金属系基材を好適に挙げることができるが、本発明の塗料組成物は、特に、亜鉛めっき鋼基材に対して顕著な付着性を発揮することができる。亜鉛めっき鋼基材には、亜鉛めっき鋼材(鋼板、鋼管、条鋼等)や亜鉛めっき鋼材が使用されている構造物(送電や通信用の鉄塔、橋梁施設、プラント等)が挙げられる。
なお、基材は、その表面に防食処理等のプライマー処理が施されていてもよいし、表面の少なくとも一部に旧塗膜(本発明の塗料組成物により塗装を行う際に既に基材上に形成されている塗膜)が存在していてもよい。
【0050】
次に、本発明の塗装物を詳細に説明する。本発明の塗装物は、基材上に塗膜を備えており、前記塗膜が上述した本発明の塗料組成物から形成されていることを特徴とする。本発明の塗装物によれば、亜鉛めっき処理された鋼材への付着性に優れ、且つ耐候性にも優れた塗膜を有する塗装物を提供することができる。
【0051】
本発明の塗装物において、基材は、本発明の塗料組成物において説明した通りであるが、特に亜鉛めっき鋼基材であることが好ましい。また、本発明の塗装物において、基材上に形成される上記塗膜の厚さは30〜100μmであることを例示することができる。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
表1に示す配合処方に従い、主剤成分と硬化剤成分とから主剤と硬化剤とを製造した後、同主剤および硬化剤を混合することにより、実施例1〜8と比較例1〜6の塗料組成物を製造した。なお、上記配合処方における主剤成分と硬化剤成分に付された数値の単位は質量%である。
【0054】
【表1】
【0055】
使用した原料の詳細を以下に示す。なお、記載の重量平均分子量は、TSKgelカラム(東ソー製)、RI装備GPC(東ソー製、HLC−8220GPC)、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、標準物質としてTSK標準ポリスチレンを用い、流速0.35ml/分、温度40℃の条件にて測定し、算出した値である。
アクリディックA−871:水酸基含有アクリルシリコーン樹脂分散液(DIC製)、不揮発分55質量%、重量平均分子量140000
アクリディックA−837:水酸基含有アクリル樹脂溶液(DIC製)、不揮発分50質量%、重量平均分子量33000
アクリディックA−817:水酸基含有アクリル樹脂溶液(DIC製)、不揮発分50質量%、重量平均分子量18000
アクリディック55−129:水酸基含有アクリル樹脂溶液(DIC製)、不揮発分65質量%、重量平均分子量8000
URIC H−62:水酸基含有樹脂(伊藤製油製)、不揮発分100質量%、重量平均分子量1200
JR−806:二酸化チタン(テイカ製)、D
50=0.25μm
K−WHITE #105:縮合リン酸アルミニウム(テイカ製)、D
50=1.6μm
K−WHITE #82:縮合リン酸アルミニウム(テイカ製)、D
50=3.5μm
TF重炭:炭酸カルシウム(丸尾カルシウム製)、D
50=6.8μm
ディスパロンD6820−20M:脂肪酸アマイド(楠本化成製)、不揮発分20質量%
ターレン2200A:脂肪酸エステル(共栄社製)、不揮発分50質量%
GARAMITE1958:有機変性粘土鉱物(BYK製)
ダッポーSN−359:非水系塗料抑泡剤(サンノプコ製)
デュラネートTSS100:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート体(旭化成ケミカルズ製)、不揮発分100質量%
コロネートHX:ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート体(東ソー製)、不揮発分100質量%
ミネラルスピリット(沸点:150〜205℃)
キシレン(沸点:138〜144℃)
ソルベッソ100(エクソンモービル製、沸点:162〜178℃)
【0056】
<乾燥性(歩行性)>
23℃条件下において、8milのアプリケータにて、75×150mmのブリキ板に上記の塗料組成物を塗布し、2時間後に塗板を踏みつけ、靴への付着状況から乾燥性を評価した。
○:靴への塗料付着なし
×:靴に塗料が付着
【0057】
付着性および防食性、耐候性の試験板は以下の通り、作製した。3.2×70×150mmの溶融亜鉛めっき鋼板を大日本塗料(株)那須工場内の屋外にて12か月間曝露させ、劣化亜鉛めっき鋼板を得た。次いで、この劣化亜鉛めっき鋼板上に塗料組成物を乾燥膜厚が60μmとなるように刷毛塗り塗装し、23℃で7日間乾燥させ、試験板を得た。
【0058】
<付着性>
試験板を23℃水道水に168時間浸漬後に取り出し、表面の水を拭き取って2時間乾燥させたのち、JIS K 5600−5−6 付着性(クロスカット法)に基づき、2mm間隔25マスの条件にて、碁盤目付着性試験を行い、以下の基準により評価を行った。
○:はく離なし(25マス残存)
×:はく離あり
【0059】
<耐候性>
JIS K 5400−9−8に基づき、試験板をサンシャインカーボンアーク灯式の促進耐候性試験に2000時間供した後、塗膜表面の60°鏡面光沢を促進試験前後で測定し、光沢保持率を算出し、以下の基準により評価を行った。
○:光沢保持率80%以上
×:光沢保持率80%未満
【0060】
<厚膜性>
23℃条件下において、20milのアプリケータにて、ブリキ板に塗料組成物を塗布後、直ちに、塗板を垂直に立てた状態で乾燥し、塗膜のたるみ具合を以下の基準により評価した。
○:タレなし
×:タレあり