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特開2020-143260多糖類誘導体の製造方法、及びリグニン誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-143260(P2020-143260A)
(43)【公開日】2020年9月10日
(54)【発明の名称】多糖類誘導体の製造方法、及びリグニン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 3/00 20060101AFI20200814BHJP
   C08B 3/10 20060101ALI20200814BHJP
【FI】
   C08B3/00
   C08B3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-43063(P2019-43063)
(22)【出願日】2019年3月8日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「革新材料による次世代インフラシステムの構築〜安全・安心で地球と共存できる数世紀社会の実現〜」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 大祐
(72)【発明者】
【氏名】サムエル ブディ ワルダナ クスマ
(72)【発明者】
【氏名】丸山 千恵
(72)【発明者】
【氏名】和田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 憲司
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA05
4C090BA25
4C090BB97
4C090CA34
4C090CA38
(57)【要約】
【課題】酸触媒等の試薬を用いる必要がなく、且つ副反応を生じさせず円滑に反応を進行させることができる多糖類誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の多糖類誘導体の製造方法は、多糖類を含む原料を、アニオンが非カルボン酸系アニオンであり、且つ前記アニオンの共役酸の真空中におけるpKaが4以上である少なくとも一種のイオン液体に溶解させ、アシル基供与体と反応させる工程を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類を含む原料を、アニオンが非カルボン酸系アニオンであり、且つ前記アニオンの共役酸の真空中におけるpKaが4以上である少なくとも一種のイオン液体に溶解させ、アシル基供与体と反応させる工程を含む多糖類誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記アニオンが、置換又は非置換のフェノラート、置換又は非置換のピリジンオラート、置換又は非置換のピリミジンオラート、置換又は非置換の2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロプリン−7−イド、置換又は非置換のイミダゾール−1−イド及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパン−2−オラートからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載の多糖類誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記アニオンが、以下:
【化1】
からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載の多糖類誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記多糖類が、セルロースである請求項1〜3のいずれか一項に記載の多糖類誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記アシル基供与体が、鎖状もしくは環状エステル、アルデヒド、カルボン酸ハロゲン化物又はカルボン酸無水物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の多糖類誘導体の製造方法。
【請求項6】
リグニンを含む原料を、アニオンが非カルボン酸系アニオンであり、且つ前記アニオンの共役酸の真空中におけるpKaが4以上である少なくとも一種のイオン液体に溶解させ、アシル基供与体と反応させる工程を含むリグニン誘導体の製造方法。
【請求項7】
前記アニオンが、置換又は非置換のフェノラート、置換又は非置換のピリジンオラート、置換又は非置換のピリミジンオラート、置換又は非置換の2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロプリン−7−イド、置換又は非置換のイミダゾール−1−イド及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパン−2−オラートからなる群より選択される少なくとも一種である請求項6に記載のリグニン誘導体の製造方法。
【請求項8】
前記アニオンが、以下:
【化2】
からなる群より選択される少なくとも一種である請求項6に記載のリグニン誘導体の製造方法。
【請求項9】
前記アシル基供与体が、鎖状もしくは環状エステル、アルデヒド、カルボン酸ハロゲン化物又はカルボン酸無水物である請求項6〜8のいずれか一項に記載のリグニン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類誘導体の製造方法、及びリグニン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸セルロース等のセルロース誘導体は、熱可塑性プラスチック材料として有用である。このようなセルロース誘導体等の多糖類誘導体を製造する方法が種々検討されている。従来の多糖類誘導体の製造方法として、セルロースとエステル化剤とを、酸触媒の存在下、強烈な条件で反応させる古典的エステル化方法が知られている。この方法では、反応中にセルロースが分解して重合度が低下してしまい、得られるセルロース誘導体の機械的強度が低下するという問題点があった。
【0003】
また、リグニンは、芳香族化合物からなる高分子化合物であり、多糖類(セルロース及びヘミセルロース)とともに、植物の細胞壁を構成する主要成分である。紙パルプ製造プロセス又はバイオエタノール製造プロセスの副生成物として得られるが、主に燃料として利用されているのみであり、その工業的利用は進んでいないのが現状である。
【0004】
これに対し、(特許文献1)では、多糖類又はリグニンを含む原料と、アニオンの共役酸のDMSO中におけるpKaが12〜19でありカルベンを生成可能なイオン液体と、鎖状もしくは環状エステル化合物とを含む混合物中で反応を行う多糖類誘導体又はリグニン誘導体の製造方法が開示されている。
【0005】
上記(特許文献1)に係る製造方法によれば、触媒を別途用いることなく、セルロース等の多糖類あるいはリグニンを原料として、エステル化合物からなる多糖類誘導体あるいはリグニン誘導体を効率的に得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/068053号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記(特許文献1)の製造方法は、触媒を別途用いない点で優れた技術であるが、セルロース等の修飾部分に、下記式のように鎖状もしくは環状エステル化合物由来ではなくイオン液体のアニオン由来の構造が混入する副反応を生じるという問題点があった。例えば、イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(EmimOAc)の存在下、セルロースとビニル2−エチルヘキサノエートを反応させた場合には、セルロースのヒドロキシ基の全置換度(DS)1.1のうち、0.2(18.1%)がイオン液体由来の構造となることが報告されている(L.P.Hinner, et al., Green Chem., 2016, 18, 6099-6107)。
【0008】
【化1】
【0009】
そこで本発明は、酸触媒等の試薬を用いる必要がなく、且つ副反応を生じさせず円滑に反応を進行させることができる多糖類誘導体又はリグニン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意研究を行った結果、多糖類あるいはリグニンを含む原料を、アニオンがカルボン酸系アニオンではない特定のイオン液体に溶解させ、エステル化合物等のアシル基供与体と反応させることによって上記課題が解決されることを見い出し、発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
(1)多糖類を含む原料を、アニオンが非カルボン酸系アニオンであり、且つ前記アニオンの共役酸の真空中におけるpKaが4以上である少なくとも一種のイオン液体に溶解させ、アシル基供与体と反応させる工程を含む多糖類誘導体の製造方法。
(2)前記アニオンが、置換又は非置換のフェノラート、置換又は非置換のピリジンオラート、置換又は非置換のピリミジンオラート、置換又は非置換の2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロプリン−7−イド、置換又は非置換のイミダゾール−1−イド及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパン−2−オラートからなる群より選択される少なくとも一種である上記(1)に記載の多糖類誘導体の製造方法。
(3)前記アニオンが、以下:
【化2】
からなる群より選択される少なくとも一種である上記(1)に記載の多糖類誘導体の製造方法。
(4)前記多糖類が、セルロースである上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の多糖類誘導体の製造方法。
(5)前記アシル基供与体が、鎖状もしくは環状エステル、アルデヒド、カルボン酸ハロゲン化物又はカルボン酸無水物である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の多糖類誘導体の製造方法。
(6)リグニンを含む原料を、アニオンが非カルボン酸系アニオンであり、且つ前記アニオンの共役酸の真空中におけるpKaが4以上である少なくとも一種のイオン液体に溶解させ、アシル基供与体と反応させる工程を含むリグニン誘導体の製造方法。
(7)前記アニオンが、置換又は非置換のフェノラート、置換又は非置換のピリジンオラート、置換又は非置換のピリミジンオラート、置換又は非置換の2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロプリン−7−イド、置換又は非置換のイミダゾール−1−イド及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパン−2−オラートからなる群より選択される少なくとも一種である上記(6)に記載のリグニン誘導体の製造方法。
(8)前記アニオンが、以下:
【化3】
からなる群より選択される少なくとも一種である上記(6)に記載のリグニン誘導体の製造方法。
(9)前記アシル基供与体が、鎖状もしくは環状エステル、アルデヒド、カルボン酸ハロゲン化物又はカルボン酸無水物である上記(6)〜(8)のいずれか一つに記載のリグニン誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多糖類誘導体あるいはリグニン誘導体の製造方法は、酸触媒等を用いる必要がなく、そのため得られる誘導体の機械的強度を高く保持することができる。したがって、有用な熱可塑性プラスチック材料を提供することができる。そして、イオン液体由来の構造が生成物に導入される副反応を生じず、アシル基供与体に応じた目的の生成物を効率的に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に基づき本発明を詳細に説明する。
まず、多糖類誘導体の製造方法について述べる。本実施形態に係る多糖類誘導体の製造方法は、多糖類を含む原料を、特定のイオン液体に溶解させ、アシル基供与体と反応させる工程を含む。
【0014】
多糖類としては、種々の多糖が適用可能であり、例として、セルロース、ヘミセルロース、デンプン、アガロース、ペクチン、キチン、キトサン等を挙げることができる。これらの多糖類は、構造の一部が置換されていても良い。例えば、セルロースの水酸基の一部がエステル化されているセルロース誘導体を原料として用いることができる。
【0015】
また、多糖類を含む原料として、セルロース等の多糖類を混合物として含む天然材料を用いても良い。このような材料の具体例としては、バガス(サトウキビ残渣)、タケ(竹パウダー)、ケナフ、スギ、ユーカリ等の木材、ギンナン等、あるいはこれらの2種以上の混合物等を挙げることができる。なお、これらの天然材料は、本実施形態の反応に先立って裁断、乾燥等、必要に応じて種々の前処理を施すことができる。
【0016】
本実施形態に適用可能なイオン液体は、アニオンが非カルボン酸系アニオンであり、且つアニオンの共役酸の真空中におけるpKaが4以上である少なくとも一種である。なお、上記pKaとしては、Advanced Chemistry Development (ACD/ Laboratories) Software, version 11.02 (1994-2011 ACD/ Laboratories)による計算値を用いることができる。このイオン液体は、本実施形態の誘導体化反応において、セルロース等の多糖類を溶解する溶媒として用いられるとともに、強力な有機分子触媒として機能する。
【0017】
イオン液体のカチオンの種類は特に限定されるものではなく、アゾリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等の従来知られた種々のカチオンから適宜選択することができる。その中でも、アゾリウムイオンは本実施形態の誘導体化反応の溶媒として適しており、好ましく用いられる。アゾリウムイオンは、窒素原子を含有するヘテロ5員環を有するカチオンであり、具体的には、イミダゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、テトラゾリウムイオン等が適用可能である。トリアゾリウムイオンとしては、1−メチルトリアゾリウム、1−エチルトリアゾリウム、1−プロピルトリアゾリウム、1−ブチルトリアゾリウムのイオン等を挙げることができる。また、テトラゾリウムイオンとしては、1−ブチル−3−メチルテトラゾリウムイオン等を挙げることができる。
【0018】
アゾリウムイオンとして、下記式(I)で表されるイミダゾリウムイオンが反応効率に優れ、低コストであるため好ましく用いられる。
【0019】
【化4】
(式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルコキシアルキル基又は置換もしくは非置換のフェニル基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、アルケニル基、アルコキシアルキル基又は置換もしくは非置換のフェニル基である。)
【0020】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の1〜20個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基の末端には、スルホ基が結合していても良い。また、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基等の1〜20個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルケニル基が挙げられる。また、アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、2−エトキシエチル基等の2〜20個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルコキシアルキル基が挙げられる。さらに、置換もしくは非置換のフェニル基としては、水酸基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルケニル基、メチルスルホニルオキシ基、置換もしくは非置換の低級アルキル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のフェノキシ基及び置換もしくは非置換のピリジル基から選択される1〜2個の基で置換されても良いフェニル基が挙げられる。
【0021】
そして、イオン液体のアニオンは、共役酸の真空中におけるpKaが4以上、好ましくは4〜10の範囲内であるような非カルボン酸系アニオンであれば適用可能である。例として、置換又は非置換のフェノラート、置換又は非置換のピリジンオラート(ピリドネート)、置換又は非置換のピリミジンオラート(ピリミドネート)、置換又は非置換の2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロプリン−7−イド、置換又は非置換のイミダゾール−1−イド、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパン−2−オラートのイオン、シアン化物イオン(CN)、フッ化物イオン(F)等を挙げることができる。これらのアニオンはいずれか一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。置換された上記アニオンにおける置換基は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜18のフルオロアルキル基、ハロゲン等であり得、上記アニオン構造中の1〜5個の水素原子を置換することができる。なお、塩化物イオン(Cl)、ヨウ素イオン(I)、臭化物イオン(Br)等のフッ化物イオン以外のハロゲンアニオン、硫酸アニオン、リン酸アニオン等の強酸のアニオンは、共役酸の真空中におけるpKaが4に満たないため不適である。
【0022】
本実施形態に係る製造方法に好適に用いられるイオン液体のアニオンの例として以下のアニオンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。下記アニオンについて、名称は次のとおりである。
(1)フェノラート、(2)4−クロロフェノラート、(3)4−(トリフルオロメチル)フェノラート、(4)2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノラート、(5)ピリジン−2−オラート、(6)ピリジン−3−オラート、(7)ピリジン−4−オラート、(8)4,6−ジメチルピリミジン−2−オラート、(9)4−メトキシフェノラート、(10)1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロプリン−7−イド、(11)イミダゾール−1−イド、(12)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパン−2−オラート。
【0023】
【化5】
【0024】
多糖類を含む原料を、上記のイオン液体に溶解させ、アシル基供与体と反応させることにより、イオン液体が触媒としても機能して多糖類の誘導体化が進行する。すなわち、多糖類のヒドロキシ基の水素原子がアシル基供与体のアシル基によって置換され、多糖類エステルが形成される。具体例として、セルロースとビニルエステルとを、カチオンが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオンであるイオン液体中で反応させ、セルロースエステルを製造する反応式を以下に示す。式中、X’は、共役酸の真空中におけるpKaが4以上である非カルボン酸系アニオンである。
【0025】
【化6】
【0026】
溶媒としてのイオン液体における、多糖類を含む原料の濃度は、多糖類の種類や分子量によって異なり、特に限定されるものではない。一般的には、イオン液体の重量を多糖類の重量の2倍以上とすることが好ましく、具体的には、イオン液体における多糖類の濃度を5重量%〜20重量%とすることが好ましい。
【0027】
また、イオン液体は、有機溶媒との共溶媒系として用いることができる。この場合も、イオン液体の重量を多糖類の重量の2倍以上とすることが好ましく、この条件の範囲内で、イオン液体の使用量を低減させることができ、残りを有機溶媒で代替することで多糖類誘導体の製造コストを抑えることが可能となる。
【0028】
共溶媒として用いる場合の有機溶媒は、生成する多糖類誘導体に対する溶解性等を考慮し、イオン液体と反応しないことを条件として種々の有機溶媒の中から適宜選択することができる。具体的には、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン等を挙げることができる。クロロホルムは、一部のイオン液体と反応するため適用できない場合が多いが、本発明の範囲から除外されるものではない。また、多糖類誘導体として酪酸セルロースを製造する場合は、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸セルロースを製造する場合は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジオキソラン等が好ましく用いられるがこれらに限定されるものではない。
【0029】
アシル基供与体は、多糖類におけるヒドロキシ基と反応し、水素原子をアシル基で置換し得る化合物であれば適用可能であり、目的とする多糖類誘導体の構造に応じて適宜選択することができる。例として、鎖状もしくは環状エステル、アルデヒド、カルボン酸ハロゲン化物又はカルボン酸無水物が挙げられる。これらのアシル基供与体は、いずれか一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。二種以上のアシル基供与体を反応させることにより、多糖類の一分子中に異なる置換基を導入することができる。
【0030】
鎖状エステル化合物としては、酢酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニル、カルボン酸ビニル、カルボン酸メチル等のカルボン酸エステル等から選択される一種以上の化合物を挙げることができる。本来、カルボン酸エステルは、カルボン酸無水物等と異なり、非常に安定な化学物質として知られていた。したがって、エステル交換反応を引き起こすには、触媒を別途用いることが必須であった。本実施形態では、溶媒であるイオン液体を触媒としても利用するため、触媒を別途加えることなく、エステル交換反応により誘導体化することが可能である。また、環状エステル化合物としては、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド等の分岐又は非分岐のラクトン類や、α−ピロン、クマリン等の、環構造の一部又は全部が芳香環である環状エステル化合物の中から選択される一種以上の化合物を挙げることができる。
【0031】
アルデヒドとしては、製造対象とする多糖類誘導体(エステル化多糖)の種類に応じて、従来知られた種々のアルデヒドの中から適宜選択して用いることができる。具体的には、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール等の飽和脂肪族アルデヒド;アクロレイン、メタクロレイン、シス−3−ヘキセナール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−2−ヘプテナール、シス−4−ヘプテナール、トランス−4−ヘプテナール、トランス−2−オクテナール、トランス−2−ノネナール、シス−6−ノネナール、トランス−2−デセナール、シス−4−デセナール、トランス−4−デセナール、7−ウンデセナール、9−ウンデセナール、10−ウンデセナール、シトロネラール等の不飽和脂肪族アルデヒド;フルフラール等のヘテロ環式アルデヒド;ベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントラアルデヒド、クミンアルデヒド、アニスアルデヒド等の芳香族アルデヒド等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、シンナムアルデヒド、ヘキシルシンナムアルデヒド、シトラール、シナピルアルデヒド、ペリルアルデヒド、ミルテナール、青葉アルデヒド、コニフェリルアルデヒド等のα,β−不飽和アルデヒドも好ましく用いられる。
【0032】
カルボン酸ハロゲン化物としては、脂肪族カルボン酸ハロゲン化物、脂環式カルボン酸ハロゲン化物、芳香族カルボン酸ハロゲン化物等が挙げられる。また、ハロゲン化物としては、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物が挙げられる。脂肪族カルボン酸ハロゲン化物としては、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸のハロゲン化物であれば適用可能であり、具体的には、フッ化アセチル、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、フッ化プロピオニル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、フッ化ブチリル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル等を挙げることができる。脂環式カルボン酸ハロゲン化物としては、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基を有するカルボン酸のハロゲン化物であれば特に限定されず、例として、シクロヘキサンカルボニルクロリド、シクロヘキセンカルボニルクロリド等が挙げられる。また、芳香族カルボン酸ハロゲン化物としては、芳香族炭化水素基を有するカルボン酸のハロゲン化物であれば特に限定されないが、例えば、フッ化ベンゾイル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイル等が挙げられる。
【0033】
また、カルボン酸無水物としては、脂肪族カルボン酸無水物、脂環式カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸無水物等が挙げられる。脂肪族カルボン酸無水物としては、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸の無水物であれば特に限定されず、酢酸無水物、プロパン酸無水物、ブタン酸無水物、ペンタン酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、オクタン酸無水物、ノナン酸無水物、デカン酸無水物、ラウリン酸無水物、ミリスチン酸無水物、パルミチン酸無水物、ステアリン酸無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸等を挙げることができる。また、脂環式カルボン酸無水物としては、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素基を有するカルボン酸の無水物であれば適用可能であり、具体的には、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロヘキセンジカルボン酸無水物、ビス(シクロペンタンカルボン酸)無水物、ビス(シクロヘキサンカルボン酸)無水物、ビス(アダマンタンカルボン酸)無水物、ビス(ノルボルナンカルボン酸)無水物等が挙げられる。芳香族カルボン酸無水物としては、芳香族炭化水素基を有するカルボン酸の無水物であれば良く、例として、安息香酸無水物、フタル酸無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0034】
多糖類と反応させるアシル基供与体の量は、多糖類及びアシル基供与体の種類等によって異なるが、例えば、多糖類のヒドロキシ基1当量に対し0.3〜2.0当量を反応させることが好ましい。また、反応条件は、イオン液体が触媒として機能し反応が進行する条件であれば良く、例えば、多糖類を含む原料、イオン液体及びアシル基供与体の混合物を、25〜80℃で1〜48時間撹拌し反応を行うことができる。反応後の溶液は、メタノール等の溶媒を用いて再沈殿、ろ過等を行うことで、所定の多糖類誘導体を得ることができる。また、反応に用いたイオン液体は、回収して再利用することができる。
【0035】
なお、アシル基供与体としてアルデヒドを用いる場合は、酸素(空気中の酸素)、二酸化マンガン、過酸化水素等の無機酸化剤、アゾベンゼン等の有機酸化剤等の酸化剤の存在下で反応を行うことが好ましい。ただし、α,β−不飽和アルデヒドは、分子内に酸化度の高い二重結合を有し、アルデヒド自体が酸化剤として機能するため、酸素等の外部酸化剤を使用しなくても、イオン液体中で多糖類とアルデヒドを混合するだけで多糖類誘導体(エステル化多糖)を得ることができる。この場合、製造される多糖類誘導体では、α,β−不飽和アルデヒドにおける二重結合は還元された状態で構造中に導入される。
【0036】
製造した多糖類誘導体は、改質等を目的として、NaOH等の塩基もしくは硫酸等の酸触媒を用いる従来の方法により、あるいは引き続き本実施形態におけるイオン液体の存在下で、アシル基供与体等の各種試薬とさらに反応させ、別の多糖類誘導体へと変換することができる。
【0037】
次に、別の実施形態として、リグニン誘導体の製造方法について説明する。この製造方法は、リグニンを含む原料を、アニオンが非カルボン酸系アニオンであり、且つアニオンの共役酸の真空中におけるpKaが4以上である少なくとも一種のイオン液体に溶解させ、アシル基供与体と反応させる工程を含むことを特徴とする。多糖類を含む原料に代えてリグニンを含む原料を用いる以外は、上述の多糖類誘導体の製造方法に準じて反応を行うことにより、適用するアシル基供与体の構造に対応したリグニン誘導体を得ることができる。具体例として、リグニンとビニルエステルとを、カチオンが1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオンであるイオン液体中で反応させ、リグニンエステルを製造する反応式を以下に示す。式中、X’は、共役酸の真空中におけるpKaが4以上である非カルボン酸系アニオンである。このリグニンのエステル化物は、難燃剤等として好適に利用することができる。この際、リグニン分子中には、芳香族炭素に結合したヒドロキシ基と脂肪族炭素に結合したヒドロキシ基とがあるが、本実施形態によればいずれのヒドロキシ基も置換することができる。上述の多糖類誘導体の製造方法と同様に、所定のイオン液体が溶媒としてだけではなく触媒としても働き、リグニンのエステル化物が生成する。
【0038】
【化7】
【0039】
原料のリグニンとしては、従来知られた種々の天然リグニン及び単離リグニンから適宜選択して用いることができる。例として、針葉樹リグニン、広葉樹リグニン、イネ科植物リグニン等の天然リグニン、紙パルプ製造プロセスの化学パルプ化のパルプ廃液から大量に得られるリグノスルホン酸、クラフトリグニン、ソーダリグニン等のアルカリリグニン、ソーダ−アントラキノンリグニン、オルガノソルブリグニン、爆砕リグニン等の単離リグニン(工業リグニン)を挙げることができる。これらのリグニンは、いずれか一種を用いても良いし二種以上を併用しても良い。
【0040】
本実施形態のリグニン誘導体の製造方法において、適用可能なイオン液体の種類、アシル基供与体の種類、並びに反応条件は、上述の多糖類誘導体の製造方法の場合と同様である。
【0041】
製造したリグニン誘導体は、改質等を目的として、NaOH等の塩基もしくは硫酸等の酸触媒を用いる従来の方法により、あるいは引き続き本実施形態におけるイオン液体の存在下で、アシル基供与体等の各種試薬とさらに反応させ、別のリグニン誘導体へと変換することができる。
【実施例】
【0042】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
1)イオン液体前駆体の合成
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(30g、250mmol)及び2−プロパノール(270mL)の混合溶液と、水酸化カリウム(15g、270mmol)及び2−プロパノール(750mL)の混合溶液とを−60℃で混合して得られる懸濁液を、室温で減圧ろ過し、得られたろ液を−60℃でろ過することにより、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシドの2−プロパノール溶液を得た。安息香酸を酸成分、フェノールフタレイン溶液を呈色指示薬として用いた中和滴定実験により、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシドの2−プロパノール溶液の濃度を求めた。
【0044】
2)イオン液体の合成
濃度が明らかになった0.205Mの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロキシドの2−プロパノール溶液(50mL、10.1mmol)と、等モル量の2−ピリドン(0.96g、10.1mmol)を2−プロパノール(100mL)に溶解させた溶液とを混合し、1時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液を減圧留去した。一晩真空乾燥を行うことで、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム2−ピリドネート(Emim2OPy)(2.07g、10.1mmol)を定量的に得た。
1H NMR (600MHz, DMSO-d6) δ; 10.44 (s, 1H), 7.89 (s, 1H), 7.78-7.76 (m, 1H), 7.62 (q, J = 2.3 Hz, 1H), 6.99-6.96 (m, 1H), 5.88-5.84 (m, 2H), 4.19 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 3.85 (s, 3H), 1.34-1.29 (m, 3H). 13C NMR (150 MHz, DMSO-d6) δ; 172.0, 146.9, 138.3, 137.0, 124.0, 122.4, 114.9, 104.7, 44.4, 36.0, 15.8.
【0045】
3)イオン液体(Emim2OPy)とビニルエステルを用いたセルロースエステル合成
20mLシュレンク管内で、セルロース(240mg、4.44mmol=[OH])を1−エチル−3−メチルイミダゾリウム2−ピリドネート(Emim2OPy)(456fmg、4.44mmol)に溶解させ、80℃で3時間減圧乾燥を行った。反応容器にアルゴンガスを充填したバルーンを取り付け、容器内部をアルゴンで置換し、脱水DMSO(5.2mL、142mmol)を加え、セルロースが均一に溶液に溶解していることを確認し、ビニルピバレート(10.5mL、71.6mmol)を反応溶液中へ加え、80℃で24時間撹拌した。反応溶液を過剰量のメタノールに加えることで不溶分を析出させ、ろ過後さらにメタノールを用いて洗浄した後に回収した。減圧条件下60℃で一晩不溶分を乾燥させることで、固体を220mg得た。IR及びH NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースピバル酸エステルであることが確認された。置換度は、3.0であった。
IR (ATR, cm-1) 1730.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 1.3-0.9 (br).
【0046】
(実施例2)イオン液体(Emim4,6OPym)とビニルエステルを用いたセルロースエステル合成
20mLシュレンク管内で、セルロース(120mg、2.22mmol=[OH])を1−エチル−3−メチルイミダゾリウム4,6−ジメチル−2−ピリミドネート(Emim4,6OPym)(268mg、2.22mmol)に溶解させ、80℃で3時間減圧乾燥を行った。反応容器にアルゴンガスを充填したバルーンを取り付け、容器内部をアルゴンで置換し、脱水DMSO(2.6mL、71mmol)を加え、セルロースが均一に溶液に溶解していることを確認し、ビニルピバレート(5.25mL、35.8mmol)を反応溶液中へ加え、80℃で24時間撹拌した。反応溶液を過剰量のメタノールに加えることで不溶分を析出させ、ろ過後さらにメタノールを用いて洗浄した後に回収した。減圧条件下60℃で一晩不溶分を乾燥させることで、固体を110mg得た。IR及びH NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースピバル酸エステルであることが確認された。置換度は2.8であった。
IR (ATR, cm-1) 1730.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 1.3-0.9 (br).
【0047】
(実施例3)イオン液体(Emim2OPy)とシンナムアルデヒドを用いたセルロースエステル合成
20mLシュレンク管内で、セルロース(120mg、2.22mmol=[OH])を1−エチル−3−メチルイミダゾリウム2−ピリドネート(Emim2OPy)(456mg、2.22mmol)に溶解させ、80℃で3時間減圧乾燥を行った。反応容器にアルゴンガスを充填したバルーンを取り付け、容器内部をアルゴンで置換し、脱水DMSO(3.15mL、44.4mmol)を加えて60℃で3時間撹拌した。撹拌後、セルロースが均一に溶液に溶解していることを確認し、シンナムアルデヒド(587mg、4.44mmol)を反応溶液中へ加え、60℃で24時間撹拌した。反応溶液を過剰量のメタノールに加えることで不溶分を析出させ、ろ過後さらにメタノールを用いて洗浄した後に回収した。減圧条件下60℃で一晩不溶分を乾燥させることで、固体を220mg得た。IR及びH NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースフェニルプロピオン酸エステルであることが確認された。置換度は3.0であった。
IR (ATR, cm-1) 1729.;1H NMR (600 MHz, Acetone-d6) δ; 8.0-6.5 (br), 5.5-3.0 (br), 3.0-2.5 (br).
【0048】
(実施例4)イオン液体(Emim2OPy)とベンズアルデヒドを用いたセルロースエステル合成
20mLシュレンク管内で、セルロース(120mg、2.22mmol=[OH])をEmim2OPy(456mg、2.22mmol)に溶解させ、80℃で3時間減圧乾燥を行った。反応容器に乾燥処理を行った空気を充填したバルーンを取り付け、容器内部を空気で置換し、脱水DMSO(3.15mL、44.4mmol)を加えて60℃で3時間撹拌した。撹拌後、セルロースが均一に溶液に溶解していることを確認し、ベンズアルデヒド(226μL、2.22mmol)を反応溶液中へ加え、60℃で24時間撹拌した。反応溶液を過剰量のメタノールに加えることで不溶分を析出させ、ろ過後さらにメタノールを用いて洗浄した後に回収した。減圧条件下60℃で一晩不溶分を乾燥させることで、固体を118mg得た。IR及びH NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロース安息香酸エステルであることが確認された。置換度は1.4であった。
IR (ATR, cm-1) 1714.;1H NMR (600 MHz, Acetone-d6) δ; 8.3-6.9 (br), 5.8-3.0 (br).
【0049】
(実施例5)イオン液体(Emim3OPy)とビニルピバレートを用いたセルロースエステル合成
20mLシュレンク管内で、セルロース(120mg、2.22mmol=[OH])を1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ピリジン−3−オラート(Emim3OPy)(456mg、2.22mmol)に溶解させ、80℃で3時間減圧乾燥を行った。反応容器にアルゴンガスを充填したバルーンを取り付け、容器内部をアルゴンで置換し、脱水DMSO(2.6mL、71mmol)を加え、セルロースが均一に溶液に溶解していることを確認し、ビニルピバレート(5.25mL、35.8mmol)を反応溶液中へ加え、80℃で24時間撹拌した。反応溶液を過剰量のメタノールに加えることで不溶分を析出させ、ろ過後さらにメタノールを用いて洗浄した後に回収した。減圧条件下60℃で一晩不溶分を乾燥させることで、固体を110mg得た。IR及びH NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースピバル酸エステルであることが確認された。置換度は2.9であった。
IR (ATR, cm-1) 1730.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 1.3-0.9 (br).
【0050】
(実施例6)イオン液体(Emim4OPy)とビニルピバレートを用いたセルロースエステル合成
20mLシュレンク管内で、セルロース(120mg、2.22mmol=[OH])を1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ピリジン−4−オラート(Emim4OPy)(456mg、2.22mmol)に溶解させ、80℃で3時間減圧乾燥を行った。反応容器にアルゴンガスを充填したバルーンを取り付け、容器内部をアルゴンで置換し、脱水DMSO(2.6mL、71mmol)を加え、セルロースが均一に溶液に溶解していることを確認し、ビニルピバレート(5.25mL、35.8mmol)を反応溶液中へ加え、80℃で24時間撹拌した。反応溶液を過剰量のメタノールに加えることで不溶分を析出させ、ろ過後さらにメタノールを用いて洗浄した後に回収した。減圧条件下60℃で一晩不溶分を乾燥させることで、固体を110mg得た。IR及びH NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースピバル酸エステルであることが確認された。置換度は2.7であった。
IR (ATR, cm-1) 1730.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 1.3-0.9 (br).
【0051】
(実施例7)イオン液体(EmimPri)とビニルピバレートを用いたセルロースエステル合成
20mLシュレンク管内で、セルロース(120mg、2.22mmol=[OH])を1−エチル−3−メチルイミダゾリウム 1,3−ジメチル−2,6−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロプリン−7−イド(EmimPri)(664mg、2.22mmol)に溶解させ、80℃で3時間減圧乾燥を行った。反応容器にアルゴンガスを充填したバルーンを取り付け、容器内部をアルゴンで置換し、脱水DMSO(2.6mL、71mmol)を加え、セルロースが均一に溶液に溶解していることを確認し、ビニルピバレート(5.25mL、35.8mmol)を反応溶液中へ加え、80℃で24時間撹拌した。反応溶液を過剰量のメタノールに加えることで不溶分を析出させ、ろ過後さらにメタノールを用いて洗浄した後に回収した。減圧条件下60℃で一晩不溶分を乾燥させることで、固体を110mg得た。IR及びH NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースピバル酸エステルであることが確認された。置換度は2.7であった。
IR (ATR, cm-1) 1730.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 1.3-0.9 (br).
【0052】
(実施例8)イオン液体(Emim2OPy)とビニルラウレートを用いたセルロースエステル合成
20mLシュレンク管内で、セルロース(120mg、2.22mmol=[OH])を1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ピリジン−2−オラート(Emim2OPy)(456mg、2.22mmol)に溶解させ、80℃で3時間減圧乾燥を行った。反応容器にアルゴンガスを充填したバルーンを取り付け、容器内部をアルゴンで置換し、脱水DMSO(2.6mL、71mmol)を加え、セルロースが均一に溶液に溶解していることを確認し、ビニルラウレート(8.05mL、35.8mmol)を反応溶液中へ加え、80℃で24時間撹拌した。反応溶液を過剰量のメタノールに加えることで不溶分を析出させ、ろ過後さらにメタノールを用いて洗浄した後に回収した。減圧条件下60℃で一晩不溶分を乾燥させることで、固体を110mg得た。IR及びH NMR測定の解析結果から、回収物は目的のセルロースラウリル酸エステルであることが確認された。置換度は3.0であった。
IR (ATR, cm-1) 1750.;1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ; 5.5-3.0 (br), 2.5-0.8 (br).