【課題】装置に投入する紙の原料に由来する要因や、装置の経時変化に由来する要因を考慮して運転完了予定時刻を算出し、オペレータまたは装置が正確な運転完了時刻を得られる紙処理装置を提供する。
【解決手段】紙の原料となる繊維の処理を行う基本機能を有した処理部200、300と、処理部200、300の負荷を基本機能により処理する実行処理時間を算出し、算出した実行処理時間に基づいて運転完了予定時刻を出力する制御部100を備え、制御部100は、処理部200、300の基本機能による処理に関与する少なくとも一つの処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
制御部は、処理部の運転条件を示す運転設定情報、処理部の実際の稼働状況を示す稼働状況情報、処理部の過去の運転履歴を示す運転履歴情報、処理部の環境条件を示す環境情報のうち、少なくとも一つを処理時間決定要因として実行処理時間を補正することを特徴とする請求項1に記載の紙処理装置。
処理部として、紙の原料からパルプを製造する基本機能を有したパルプ製造部を備え、 制御部は、運転設定情報である、パルプ製造部の単位時間当たりの処理繊維量を処理時間決定要因として実行処理時間を補正することを特徴とする請求項2に記載の紙処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1および
図2において、紙処理装置1は、紙の原料2、例えば古紙、裁断屑を離解し、新たに製紙した紙、ここで再生紙4を製造する古紙再生処理装置を例示しているが、本発明の紙処理装置1には乾式で紙を製造するものも含まれる。
【0024】
紙処理装置1は、制御部100を備え、パルプ製造部200と抄紙部300からなり、パルプ製造部200と抄紙部300に複数の処理部を有し、各処理部は、負荷を処理する基本機能を有し、ここでは、基本機能としてそれぞれ紙の原料2の繊維の処理を行う。以下においては、負荷の大きさを紙の原料2の重量で示すが、かさ量であっても良い。
【0025】
パルプ製造部200の処理部には、紙の原料2を離解してパルプスラリーを製造する基本機能を有するパルパー装置6と、紙の原料2をパルパー装置6へ供給する基本機能を有する原料供給装置8と、パルパー装置6で得られたパルプスラリーをトナー等の印刷用着色成分を分離して除去する基本機能を有する脱墨装置10と、脱墨装置10から排出された脱墨排液16を処理する基本機能を有する脱墨排液処理装置17がある。図示を省略するが、脱墨装置10は、脱墨槽と、脱墨槽内の底部から気泡を放出する気泡放出装置と、気泡放出装置に空気を供給する空気供給装置を有している。
【0026】
抄紙部300の処理部には、脱墨装置10において脱墨されたパルプスラリーを脱水して湿紙を抄造する基本機能を有する抄紙装置12と、湿紙を脱水する基本機能を有する湿紙脱水装置13と、脱水した湿紙を乾燥して再生紙4にする基本機能を有する湿紙乾燥装置14と、再生紙4に対して仕上工程を行う基本機能を有する仕上装置15と、抄紙装置12および湿紙脱水装置13で生じる白水を貯留し、パルプ製造部200に供給する基本機能を有する白水タンク18があり、脱墨装置10および抄紙装置12に上水の供給源19が連通している。
【0027】
パルパー装置6と脱墨装置10の間にはパルプスラリーを供給するパルプスラリー供給ポンプ20が設けてあり、脱墨装置10と抄紙装置12の間には脱墨パルプスラリー送出ポンプ22を設けている。また、白水タンク18とパルパー装置6の間には希釈液供給ポンプ21Aが設けてあり、白水タンク18と脱墨装置10の間には希釈液供給ポンプ21Bが設けてある。さらに、脱墨装置10と脱墨排液処理装置17の間には脱墨排液供給ポンプ23を設け、脱墨排液処理装置17の下流側に処理した排水24を紙処理装置1の外部へ排出する排水ポンプ25を設けている。各ポンプ20、22、21A、21Bの下流側にはそれぞれ流量計31A、31B、31C、31Dを配置し、上水の供給源19と脱墨装置10の間に流量計31Eを配置している。
【0028】
図3に示すように、制御部100は、パルプ製造部200を制御するパルプ製造部制御機能部101、抄紙部300を制御する抄紙部制御機能部102、パルプ製造部200および抄紙部300の洗浄処理を制御する洗浄処理制御機能部103、パルプ製造部200および抄紙部300の稼働準備を制御する稼働準備制御機能部104、パルプ製造部200および抄紙部300の停止準備を制御する停止準備制御機能部105、各機能部を制御して自動運転を行う自動制御機能部106、運転完了予定時刻算出部107、内部記憶部111を有している。運転完了予定時刻算出部107は、各処理部の負荷を基本機能により処理する実行処理時間を算出し、算出した実行処理時間に基づいて運転完了予定時刻を出力するもので、処理部の基本機能による処理に関与する少なくとも一つの処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0029】
制御部100には、計測部108、表示部109、操作部110が接続している。計測部108は、各ポンプ20、22、21A、21B、23、25の回転数を検出する回転数センサー、、各ポンプ20、22、21A、21Bの下流側における流量を検出する流量センサーである流量計31A、31B、31C、31D、パルパー装置6と脱墨装置10のそれぞれにおける水温を検出する温度センサー、抄紙部300の機内の空気の温度を検出する温度センサー等であり、詳細な図示は省略する。
【0030】
また、パルプ製造部200には、表示部109および操作部110を兼ねてタッチパネル201を配置している。
【0032】
図4に示すように、紙処理装置1は、制御部100による制御によって、停止状態から稼働準備121、パルプ製造処理122、抄紙処理123、洗浄処理124、停止準備125の各工程を経て装置停止となる。
【0033】
稼働準備121は稼働準備制御機能部104で制御し、操作部110において設定した各種の値を参照し、パルプ製造部200および抄紙部300における稼働を準備する。
【0034】
パルプ製造処理122はパルプ製造部制御機能部101で制御して行う。パルプ製造部200では、細断した紙の原料2、もしくは細断していない定形状の紙の原料2が原料供給装置8によってパルパー装置6へ供給され、パルパー装置6において離解処理されてパルプスラリーが製造される。パルパー装置6で得られたパルプスラリーは、繊維濃度が約2%〜4%になるまで希釈液供給ポンプ21Aで供給する白水で希釈し、その後、パルプスラリー供給ポンプ20で脱墨装置10に供給する。さらに、希釈液供給ポンプ21Bで白水タンク18の白水を脱墨装置10に供給して、繊維濃度を0.5%から0.6%に希釈する。
【0035】
脱墨装置10では、パルプスラリー中に泡を発生させ、浮上する泡にトナーを付着させてパルプスラリーからトナー等を除去する。そして、脱墨装置10から脱墨パルプスラリーを脱墨パルプスラリー送出ポンプ22によって抄紙装置12に供給する。
【0036】
抄紙処理123は、抄紙部制御機能部102で制御して行う。抄紙部300では、脱墨装置10から供給される脱墨パルプスラリーを抄紙装置12に供給して湿紙を抄造する。
【0037】
抄造した湿紙は、湿紙脱水装置13で脱水した後に、湿紙乾燥装置14で乾燥させて再生紙4となる。この再生紙4は仕上装置15で仕上げられた後に、紙処理装置1から排出される。
【0038】
洗浄処理124は洗浄処理制御機能部103で制御して行い、パルプ製造部200、抄紙部300に残る繊維を洗い流す。洗浄処理124は、上水の供給源19から上水を脱墨装置10、抄紙装置12に供給して行い、抄紙装置12の洗浄後の洗浄排水は、白水タンク18を経由してパルパー装置6および脱墨装置10に供給して洗浄に使用し、最終的に脱墨排液処理装置17から排水ポンプ25を通して外部へ排出する。
【0039】
停止準備125は停止準備制御機能部105で制御して行い、パルプ製造部200、抄紙部300を停止させて装置停止となる。
【0040】
制御部100は、運転完了予定時刻算出部107において、原料供給装置8に投入した紙の原料2の重量に基づいて各処理部の負荷を基本機能により処理するための基本的な実行処理時間を算出する。そして、算出した実行処理時間に基づいて運転完了予定時刻を表示部109のタッチパネル201に出力する。
【0041】
ここで、制御部100は、運転完了予定時刻の算出において、処理部の基本機能による処理に関与する少なくとも一つの処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正し、運転完了予定時刻を出力する。本実施の形態において、運転完了時刻は、繊維処理と装置の洗浄が完了し、電源を切ってよい状態になる時刻であり、運転完了予定時刻は、装置の電源を切ってよい状態になる予定の時刻である。
【0042】
この運転完了予定時刻の算出に関与する処理時間決定要因には、パルプ製造部200、抄紙部300に関係する各種の情報がある。例えば、運転条件を示す運転設定情報、実際の稼働状況を示す稼働状況情報、過去の運転履歴を示す運転履歴情報、環境条件を示す環境情報である。これらの情報は、制御部100の内部記憶部111、または、ネットワークを介して接続した外部記憶装置に記憶する。
【0043】
以下に、上記の各情報に含まれる個々の要因について説明する。
・紙の種類(運転設定情報)
紙の種類を決める要因には、繊維長さ、填料の種類・量、繊維密度がある。これらの要因によって、脱墨時における泡に対する繊維の付着性が変化する。このため、紙の種類によって、脱墨時に泡に付着してトナーとともに除去される繊維量が変化する。
【0044】
また、紙の種類は、離解度に影響を与え、同等の離解度を得るためには、紙の種類によって離解時間の変更が必要である。
【0045】
このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・設定離解時間(運転設定情報)
離解時間の増減は、そのまま製紙時間の増減となる。例えば、パルパー装置6による離解時間を20分長くすれば、実行処理時間も20分長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・紙の原料の繊維の離解時に投入する界面活性剤の量(運転設定情報)
パルパー装置6には離解処理時に界面活性剤を投入する。この界面活性剤の量は、紙の原料の投入紙重量に応じたものであり、この界面活性剤の量によって後工程の脱墨時の泡の量が変化する。泡の量が変化すれば、脱墨時に除去される繊維量も変化する。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・脱墨時に投入する界面活性剤の種類および単位時間当たりの設定使用量(運転設定情報)
界面活性剤の種類、単位時間当たりの使用量によって、脱墨装置10で発生する泡の量が変化し、泡の量の変化に伴ってトナーと一緒に除去される繊維量も変化する。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。本実施の形態では、パルパー装置6に投入する界面活性剤と脱墨装置10に投入する界面活性剤は同じものである。
・設定脱墨時間(運転設定情報)
脱墨時間、すなわち繊維が脱墨装置10を通過する時間によって、繊維が泡に付着する確率も変化する。脱墨時間が長いと、繊維が泡に付着する確率が高くなり、除去される繊維量が増加する。
【0046】
また、脱墨時間が長いということは、脱墨装置10の脱墨槽内で移動するパルプスラリーの流速が落ちることと同義である。このため、脱墨時間が長くなれば、脱墨装置10から抄紙装置12へ供給する単位時間当たりの供給繊維量が減少する。このとき、抄紙装置12の抄紙速度を変えない場合には、抄造する紙の厚さが薄くなる。また、抄造する紙の厚さを維持する場合には、抄紙速度を遅くする必要があり、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・脱墨モード(運転設定情報)
脱墨モードには、エコモード、通常モード、パワフルモードがあり、発生する泡の量が異なる。脱墨モードの選択により脱墨のレベルを設定する。エコモードは、泡の量が少なく、脱墨効果は弱くなるが、失われる繊維量が少ない。パワフルモードは、泡の量が多く、脱墨効果は高くなるが、失われる繊維量が多くなる。通常モードは、エコモードとパワフルモードの中間である。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・設定抄紙速度(運転設定情報)
抄紙速度は、抄紙装置12の抄紙ワイヤーを駆動するモータの回転速度の設定値で示す。抄紙装置12の抄紙ワイヤーにて抄紙した湿紙を十分に乾燥させる場合には、抄紙速度を遅くすることで、抄紙速度と同速度で湿紙が移動する後工程の湿紙脱水装置13、湿紙乾燥装置14における滞留時間が長くなり、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・設定紙厚さ、設定紙密度(運転設定情報)
抄紙速度を変えずに、抄造する紙厚さや繊維の密度を変更すると、単位時間当たりの繊維の使用量が変化する。そのため、脱墨装置10から抄紙装置12に供給する繊維を使い切って抄紙を完了するまでにかかる時間も変化し、結果として実行処理時間が変化する。
【0047】
例えば、抄造する紙厚さを厚くし、あるいは密度を上げる設定をすると、単位時間当たりの繊維使用量は増え、供給した繊維を使い切るまでの時間が短くなるため、結果として実行処理時間が短くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0048】
紙厚さ、密度の変更は、抄紙装置12の抄紙ワイヤーの速度を変更するか、抄紙装置12のヘッドボックスから抄紙ワイヤーへのパルプスラリーの流量を変更して行う。
・設定スラリー搬送速度(運転設定情報)
設定スラリー搬送速度は、パルパー装置6から脱墨装置10にパルプスラリーを搬送するパルプスラリー供給ポンプ20の搬送速度と、脱墨装置10から抄紙装置12のヘッドボックスにパルプスラリーを搬送する脱墨パルプスラリー送出ポンプ22の搬送速度であり、搬送速度はポンプの回転速度の設定値で示す。
【0049】
この二つのポンプの搬送速度を変化させると、抄紙装置12に供給する単位時間当たりの供給繊維量も変化する。供給繊維量が変化する中で、同じ厚さ、同じ密度の紙を抄造する場合、抄紙速度の変更が必要になる。
【0050】
例えば、ポンプの搬送速度を遅くすると、抄紙装置12に供給する供給繊維量が減少する。そのため、紙厚さを維持するためには、抄紙速度を遅くする必要があり、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0051】
洗浄処理工程において、スラリーは、抄紙装置12から白水タンク18を経由してパルパー装置6に流入する白水と、上水の供給源19からパルパー装置6に流入する上水と、パルパー装置6に残っていた繊維とが混ざったものであり、製紙に使用するスラリーとは繊維濃度が異なる。
【0052】
このスラリーをパルパー装置6から脱墨装置10に搬送するパルプスラリー供給ポンプ20の搬送速度は、洗浄時間に影響を与える。搬送速度が遅くなれば、スラリーを脱墨装置10に搬送する時間が長くなり、その結果、洗浄時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・設定白水搬送速度(運転設定情報)
設定白水搬送速度は、白水タンク18からパルパー装置6に白水を搬送する希釈液供給ポンプ21Aの搬送速度と、白水タンク18から脱墨装置10に白水を搬送する希釈液供給ポンプ21Bの搬送速度であり、搬送速度はポンプの回転速度の設定値で示す。
【0053】
この二つのポンプの搬送速度は、パルパー装置6における離解工程、脱墨装置10における脱墨工程の開始時刻に影響する。パルパー装置6のパルパーや、脱墨装置10の脱墨槽に供給する白水の搬送速度を遅くすれば、パルパーや脱墨槽で水位が所定レベルまで到達するのに要する時間が長くなり、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0054】
この設定白水搬送速度は、洗浄処理工程において、白水タンク18からパルパー装置6に白水を搬送する希釈液供給ポンプ21Aの搬送速度でもあり、白水タンク18から脱墨装置10に白水を搬送する希釈液供給ポンプ21Bの搬送速度でもある。この二つのポンプの搬送速度は、パルパー装置6および脱墨装置10の洗浄時間に影響し、搬送速度が遅くなれば、洗浄に必要な十分な量の水を得るまでの時間が長くなり、洗浄時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・設定上水搬送速度(運転設定情報)
洗浄に使用する上水を脱墨装置10および抄紙装置12に搬送する速度である。上水の搬送速度は、上水の供給源19の水圧、例えば水道の圧力に依拠して定まる。洗浄時に使用する上水の搬送速度が遅くなれば、洗浄に必要な十分な量の水を得るまでの時間が長くなり、洗浄時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・設定排水搬送速度(運転設定情報)
ここでの排水は、製紙工程終了後に装置内洗浄に使用した水である。排水は全て脱墨装置10、脱墨排液処理装置17を経由して排水ポンプ25で紙処理装置1の外部に搬送する。搬送速度は排水ポンプ25の回転速度の設定値で示す。この排水ポンプ25による排水の搬送速度が遅くなると、結果として洗浄時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・実抄紙速度(稼働状況情報)
実抄紙速度は、実際の抄紙速度を示すものであり、抄紙ワイヤーを駆動するモータの回転速度の計測値で示す。
【0055】
抄紙速度が変動すると、抄紙速度と同速で湿紙が移動する後工程の湿紙脱水装置13、湿紙乾燥装置14における湿紙の滞留時間が変動し、結果として実行処理時間も変動する。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・実スラリー流量(稼働状況情報)
実スラリー流量は、パルプ製造部200から抄紙部300へパルプスラリーを搬送するスラリー搬送経路の目詰まり状態を示すものであり、パルプスラリーが実際に流れる流量で示し、ここでは、流量計31Bで計測した計測値で示す。実スラリー流量が設定スラリー流量を下回ると、スラリー搬送経路に目詰まりが生じたと判定する。実スラリー流量が低下すると、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0056】
また、パルパー装置6から脱墨装置10へパルプスラリーを搬送するスラリー搬送経路の目詰まり状態を示すものであり、パルプスラリーが実際に流れる流量で示し、ここでは、流量計31Aで計測した計測値で示す。実スラリー流量が設定スラリー流量を下回ると、スラリー搬送経路に目詰まりが生じたと判定する。実スラリー流量が低下すると、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0057】
また、洗浄処理工程において、パルパー装置6から脱墨装置10へスラリー(上水+白水+パルパー装置6に残った繊維)を搬送するスラリー搬送経路の目詰まり状態を示すものであり、スラリーが実際に流れる流量で示し、ここでは、流量計31Aで計測した計測値で示す。パルパー装置6から脱墨装置10へのスラリー搬送経路で目詰まりなどにより、実スラリー流量が低下すると、パルパー装置6を洗浄したスラリーの排出時間が長くなり、洗浄時間も長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・実スラリー搬送速度(稼働状況情報)
実スラリー搬送速度は、パルプ製造部200から抄紙部300へパルプスラリーが実際に搬送される速度を示すものであり、パルプスラリー供給ポンプ20と脱墨パルプスラリー送出ポンプ22の回転速度をセンサー等で計測した実回転速度の計測値で示す。
【0058】
この二つのポンプの回転速度の変動は、パルプスラリーの搬送速度の変動を示す。搬送経路の目詰まりと同様に、実スラリー搬送速度が低下すると、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0059】
また、パルパー装置6から脱墨装置10へパルプスラリーが実際に搬送される速度を示すものであり、パルプスラリー供給ポンプ20の回転速度をセンサー等で計測した実回転速度の計測値で示す。
【0060】
このポンプの回転速度の変動は、パルプスラリーの搬送速度の変動を示す。搬送経路の目詰まりと同様に、実スラリー搬送速度が低下すると、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0061】
また、洗浄処理工程において、パルパー装置6から脱墨装置10にスラリー、つまりパルパー装置6で洗浄に使用した水(上水+白水)とパルパー装置6に残った繊維とが混ざったスラリーを搬送するパルプスラリー供給ポンプ20の実際の搬送速度は、洗浄時間に影響を与える。
【0062】
実スラリー搬送速度が遅くなれば、スラリーを脱墨装置10に搬送する時間が長くなり、その結果、洗浄時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・パルプ製造部200に供給する白水が実際に搬送される実白水搬送速度(稼働状況情報)
実白水搬送速度は、希釈液供給ポンプ21Aと希釈液供給ポンプ21Bの回転速度をセンサー等で計測した実回転速度の計測値で示す。
【0063】
この二つのポンプの回転速度の変動は、白水の搬送速度の変動を示す。実白水搬送速度が低下すると、パルパー装置6における離解工程、脱墨装置10における脱墨工程の開始時間が遅くなるため、結果として実行処理時間が長くなる。また、白水の搬送速度が変動すると、脱墨装置10の脱墨槽に白水が満ちる時刻が遅れるだけでなく、脱墨槽の繊維濃度も設定通りにならない。そのため、脱墨性能に影響が出るだけでなく、脱墨工程以降の後工程の処理時間にも影響が出る。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0064】
この実白水搬送速度は、洗浄処理工程において、白水タンク18からパルパー装置6に白水を搬送する希釈液供給ポンプ21Aの実際の搬送速度でもあり、白水タンク18から脱墨装置10に白水を搬送する希釈液供給ポンプ21Bの実際の搬送速度でもある。この二つのポンプの搬送速度は、パルパー装置6および脱墨装置10の洗浄時間に影響し、搬送速度が遅くなれば、洗浄に必要な十分な量の水を得るまでの時間が長くなり、洗浄時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・実上水搬送速度(稼働状況情報)
洗浄に使用する上水を脱墨装置10および抄紙装置12に搬送する実際の速度であり、流量計31Eで計測する流量によって測定する。洗浄時に使用する上水の実際の搬送速度が遅くなれば、洗浄に必要な十分な量の水を得るまでの時間が長くなり、洗浄時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・実排水搬送速度(稼働状況情報)
排水ポンプ25により紙処理装置1の外部に搬送される排水の実際の搬送速度であり、搬送速度はポンプの実際の回転速度の値で示す。この排水の搬送速度が遅くなると、結果として洗浄時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・前回の運転完了時刻からの経過時間(運転履歴情報)
前回の運転完了時刻からの経過時間が所定時間を超える場合には、製紙開始前に洗浄工程を実施する。このため、運転開始が遅れ、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・過去に行った所定回数分の運転実績に基づく負荷の単位量当たりの製紙時間(運転履歴情報)
過去の所定回数の運転における紙の原料2の投入紙重量と、製紙開始から製紙完了までの実行処理時間から、紙の原料2の単位重量当たりの製紙時間を求める。求めた製紙時間に今回投入する紙の原料2の投入紙重量を乗算して補正した実行処理時間を算出し、さらに洗浄時間を加算して運転完了予定時刻を算出する。ここでは、脱墨モードや抄紙速度設定等の個々の運転条件を考慮していない。
・過去に行った所定回数分の運転実績に基づく負荷の単位量当たりの離解時間(運転履歴情報)
過去の所定回数の運転における紙の原料2の投入紙重量と、離解工程の処理時間から、紙の原料2の単位重量当たりの離解時間を求める。求めた離解時間に今回投入する紙の原料2の投入紙重量を乗算して補正した離解時間を求め、この離解時間で実行処理時間を補正し、運転完了予定時刻を算出する。
・過去に行った所定回数分の運転実績に基づく負荷の単位量当たりの洗浄時間(運転履歴情報)
過去の所定回数の運転における紙の原料2の投入紙重量と、洗浄処理工程の処理時間から、紙の原料2の単位重量当たりの洗浄時間を求める。求めた洗浄時間に今回投入する紙の原料2の投入紙重量を乗算して補正した洗浄時間を算出し、この洗浄時間を実行処理時間に加算して運転完了予定時刻を算出する。
・過去の運転条件ごとの製紙時間(運転履歴情報)
過去に行った運転における製紙開始から製紙完了までの実行処理時間を、抄紙速度、脱墨モード、紙厚さ、投入する紙の原料2の種類、投入紙重量の種々の運転条件ごとに分けて制御部100の内部記憶部111に過去データとして記憶する。投入紙重量以外の運転条件が同じである運転を行う場合に、記憶した過去の運転における投入紙重量と実行処理時間から単位重量当たりの製紙時間を求める。求めた製紙時間に今回投入する紙の原料2の投入紙重量を乗算して補正した実行処理時間を算出し、さらに洗浄時間を加算して運転完了予定時刻を算出する。
【0065】
運転完了後において、今回の運転における実際の製紙時間と過去データの製紙時間の間に一定以上の差がある場合には、その原因が装置内において何れかの運転条件に変化があったとみなし、今回の運転における運転条件および運転実績を新たに保存するデータとして記憶部に追記する。
【0066】
過去の運転において同じ運転条件の運転実績がない場合には、今回の運転において設定する運転条件の下で運転を実施し、運転完了後に運転条件と運転実績を記憶部に記憶する。
【0067】
あるいは、今回の運転で設定する複数の運転条件の全てにおいて一致する過去の運転実績がなく、一部の運転条件が相違する過去の運転実績がある場合には、今回設定する運転条件に近しい運転実績を選び出し、相違する条件を考慮して単位重量当たりの製紙時間を補正して運転完了予定時刻を算出する。
・過去の運転条件ごとの離解時間(運転履歴情報)
離解時間に影響する運転条件には、設定離解時間のほかに、紙の種類、水温、設定白水搬送速度がある。設定離解時間が同じでも、紙の種類、水温によって離解度が異なるので、同等の離解度を得るためには、紙の種類、水温によって設定離解時間の変更が必要である。
【0068】
設定白水搬送速度と実際の白水の搬送速度が異なり、白水の搬送時間が遅くなると、注入時間が長くなり、離解処理の開始時間が遅くなるため、離解時間が長くなる。このため、設定白水搬送速度が同条件である過去の運転実績における離解時間に基づいて補正した運転完了予定時刻を求める。
・過去の運転条件ごとの洗浄時間(運転履歴情報)
洗浄時間に影響する要因には、洗浄時に装置内を流れる上水、白水、スラリー、排水の各搬送速度があり、運転条件としては、設定上水搬送速度、設定白水搬送速度、設定スラリー搬送速度、設定排水搬送速度である。
【0069】
洗浄時に装置内を流れる上水、白水、スラリー、排水の各搬送速度が遅くなれば、洗浄時間が長くなる。
【0070】
このため、設定上水搬送速度、設定白水搬送速度、設定スラリー搬送速度、設定排水搬送速度の運転条件ごとに、過去の運転実績における同条件下の洗浄時間に基づいて補正した運転完了予定時刻を求める。
【0071】
さらに脱墨装置10においてトナーと一緒に除去される繊維量も洗浄時間に影響を与える。この繊維量に影響する要因には、投入紙量、紙の種類、界面活性剤の種類、離解時に投入する界面活性剤の量、脱墨時に投入する界面活性剤の単位時間当たりの設定使用量、設定脱墨時間、脱墨モードがある。
【0072】
この繊維量の増減は、脱墨排液処理と排水時間に影響し、除去される繊維量が多くなると脱墨廃液処理の時間が増加する。
【0073】
このため、投入紙量、紙の種類、界面活性剤の種類、離解時に投入する界面活性剤の量、脱墨時に投入する界面活性剤の単位時間当たりの設定使用量、設定脱墨時間、脱墨モードの運転条件ごとに、過去の運転実績における同条件下の洗浄時間に基づいて補正した運転完了予定時刻を求める。
・水温(環境情報)
パルプ製造部200のパルパー装置6における水温は離解処理の進捗に影響を与える要因である。水温が予定水温より低い場合には離解の進み具合が遅くなり、予定水温の下で行う離解処理と同じ離解結果を得るには離解時間を長く設定する必要がある。
【0074】
パルプ製造部200の脱墨装置10における水温は脱墨工程で発生する泡量に影響を与える要因である。水温が予定水温より低い場合には発生する泡量が少なくなり、予定水温の下で行う脱墨処理と同じ脱墨効果を得るには脱墨時間を長く設定するか、パルプスラリー中への散気量を多くして泡量を増やす。
【0075】
また、水温は、乾燥時間にも影響を及ぼす。水温が低ければ、乾燥工程において、乾燥に必要な所定温度に達するまでの時間がかかるため、実行処理時間の補正が必要となり得る。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
・気温(環境情報)
気温は抄紙後の乾燥時間に影響を与える要因である。気温が低い場合、乾燥時間を長く設定するために、抄造した紙の搬送速度を落とす必要があり、結果として実行処理時間が長くなる。または、湿紙乾燥装置14の乾燥工程におけるヒータ温度を上げる必要があり、さらにヒータが運転可能な温度に達するまでの時間が長くなり、結果として実行処理時間が長くなる。このため、処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を出力する。
【0076】
上記の実施の形態では、表示部109のタッチパネル201を出力部としたが、他の出力部としては、ネットワークを介して接続したパーソナルコンピュータ、高機能携帯電話(いわゆるスマートフォン)、タブレット、携帯端末の表示装置がある。さらに、音声通知することも可能であり、オペレータへの報知とは別途に他の装置に通知することも可能である。
【0077】
出力する内容は、以下に例示する種々のものであってもよい。
・補正後の運転完了予定時刻の表示
・負荷のみから算出した基本的な運転完了予定時刻と、上述した実施の形態で求めた補正後の運転完了予定時刻の両方を表示
・処理時間決定要因ごとに算出した運転完了予定時刻
・補正後の運転完了予定時刻までの残り時間
・運転完了時に、運転完了予定時刻と実際の運転完了時刻の両方を表示(または予定の実行処理時間と実際の実行処理時間)
・運転完了予定時刻を音声通知
・運転完了予定時刻までの残り時間を音声通知
・運転完了予定時刻を表示したことをアラーム音で報知
・運転完了予定時刻の所定時間前(例えば、30分前)に運転完了を表示または音声により予告
上述の実施の形態ではパルプ製造部200の離解工程、抄紙部300の製紙工程における要因に基づいて運転完了予定時刻を算出しているが、これらの要因からは下記の時刻も算出可能である。よって、運転完了予定時刻のほかに下記の時刻を表示してもよい。
・製紙完了予定時刻(最後の再生紙4が紙受に排出される時刻)
・1枚目の再生紙4が紙受に排出される時刻
また、運転完了予定時刻を出力するタイミングは、以下に例示する時でよい。
・運転開始前(重量計測時または原料載置時)
上述した処理時間決定要因に基づいて実行処理時間を補正して運転完了予定時刻を算出した後に出力する。
・装置の稼働中に実スラリー流量、実スラリー搬送速度に変化があった場合に、再計算してリアルタイムに出力
・抄紙速度、紙厚さ、脱墨モードなどの運転条件の設定が変更された場合に、再計算して出力
上述した実施の形態では、パルプ製造部200と抄紙部300を有する構成を例示して説明したが、抄紙部300を有しないパルプ製造部200だけの構成においても本発明を実施することができる。
実施例1(基本形)
【0078】
【表1】
実施例2(稼働状況情報の実スラリー流量に基づく補正)
脱墨装置10の脱墨槽から抄紙装置12のヘッドボックスの間における目詰まりに起因して、または脱墨パルプスラリー送出ポンプ22の回転速度の低下に起因して、設定スラリー流量に対して実スラリー流量が5%低下したときに、抄紙速度を落として紙厚さを変更しない場合を例示する。
【0079】
ここでは、実行処理時間が0.3h(18分)増加して合計運転時間が0.3hの増加となる。
【0080】
【表2】
実施例3(運転履歴情報の過去に行った実際の製紙時間に基づく補正)
過去3回分の運転実績における実行処理時間と投入紙重量と単位時間当たりの製紙時間を示す。
【0081】
【表3】
過去3回の運転実績における単位重量当たりの製紙時間の平均値は、0.76h/kgである。
【0082】
この運転実績の条件下で今回の投入紙重量6kgの紙の原料を処理する場合に、実行処理時間は以下となる。
【0083】
6kg×0.76h/kg=4.56h(およそ4時間34分)
ここに、離解時間1.5h、洗浄時間1.0hを加えて、合計運転時間は、7.06h(およそ7時間4分)となる。
実施例4(運転履歴情報である過去の運転条件ごとの実行処理時間に基づく補正)
過去の運転実績を運転条件ごとに記憶部に記憶し、運転実績が一致する過去の運転実績に基づいて実行処理時間を算出する。
【0085】
【表4】
過去データ1の運転条件と運転実績
【0086】
【表5】
過去データ2の運転条件と運転実績
【0087】
【表6】
今回の運転条件は、抄紙速度、脱墨モード、紙厚さ、投入用紙種類の全てにおいて、過去データ1の運転条件と同じである。
【0088】
運転条件が同じであれば、投入紙の単位重量当たりの製紙時間は同じであると考え、過去データ1の運転実績の投入紙重量7.5kgと実行処理時間5.5hから、単位重量当たりの製紙時間0.73h/kgを算出する。
【0089】
求めた製紙時間0.73h/kgと今回の運転における投入紙重量を乗算して、補正した実行処理時間3.65hを算出し、これに離解時間1.5h、洗浄時間1hを加えて合計運転時間を求め、運転完了予定時刻を出力する。
実施例5(運転履歴情報である過去の実行処理時間に基づく補正)
過去の運転条件と運転実績として、先の実施例4で示した表5の過去データ1の運転条件と運転実績、および表6の過去データ2の運転条件と運転実績があり、今回の運転条件が表7に示すものである場合に、運転条件が全て一致する過去データはない。
【0090】
【表7】
しかし、過去データ2の運転条件とは、抄紙速度が異なるだけである。このため、過去データ2の運転条件が、今回の運転条件に近いと判断し、この過去データ2の運転実績の数値を採用する。ここでは、単位重量当たりの製紙時間0.8h/kgと今回の運転条件の投入紙重量5.0kgを乗算して実行処理時間4hを算出し、これに離解時間1.5h、洗浄時間1hを加えて合計運転時間6.5hを求め、運転完了予定時刻を出力する。
【0091】
また、過去データ2の運転条件をそのまま採用するのではなく、抄紙速度90%と95%の差について補正した運転実績を採用することもある。