(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-143700(P2020-143700A)
(43)【公開日】2020年9月10日
(54)【発明の名称】油圧緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20200814BHJP
B62K 25/08 20060101ALI20200814BHJP
【FI】
F16F9/32 Z
F16F9/32 C
B62K25/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-38817(P2019-38817)
(22)【出願日】2019年3月4日
(11)【特許番号】特許第6637626号(P6637626)
(45)【特許公報発行日】2020年1月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】尾池 亮
(72)【発明者】
【氏名】宮田 博行
【テーマコード(参考)】
3D014
3J069
【Fターム(参考)】
3D014DD07
3D014DE02
3D014DE08
3D014DE22
3J069AA46
3J069CC02
3J069CC40
3J069DD50
(57)【要約】
【課題】安定的に減衰力を発生させることができる油圧緩衝器を提供する。
【解決手段】油圧緩衝器(1)は、車軸側の側壁面に少なくとも1つの開口部(43)を有するシリンダ(15)と、シリンダ(15)の外側に区画され、油を貯留するリザーバ(26)と、油の流れによって減衰力を発生させる制御部(10)と、シリンダ(15)の外側かつ開口部(43)の車体側に少なくとも一部が配され、車軸側から車体側への油の移動を妨げる移動防止部材(41)とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に配された車体側チューブと、
車軸側に配された車軸側チューブと、
前記車軸側チューブに設けられ、車軸側の側壁面に少なくとも1つの開口部を有するシリンダと、
前記シリンダの外側に区画され、油を貯留するリザーバと、
前記車体側チューブに設けられたロッドと、
前記ロッドの車軸側に設けられ、前記シリンダの内周面に対して摺動するピストンと、
前記ピストンの移動によって生じる油の流れによって減衰力を発生させる減衰力発生部と、
前記シリンダの外側かつ前記開口部の車体側に少なくとも一部が配され、車軸側から車体側への油の移動を妨げる移動防止部材とを備えることを特徴とする油圧緩衝器。
【請求項2】
前記移動防止部材の、前記油の移動を妨げる車軸側の表面と、少なくとも1つの前記開口部の最も車体側の部分とが、前記油圧緩衝器の軸方向において隣接していることを特徴とする請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項3】
前記移動防止部材の、前記油の移動を妨げる車軸側の表面には、車体側に窪んだ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項4】
前記移動防止部材は、車体側から車軸側への油の流れを許容する隙間を前記シリンダの側壁面との間に画定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の油圧緩衝器。
【請求項5】
前記隙間は、前記シリンダの側壁面の周囲の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の油圧緩衝器。
【請求項6】
前記隙間の開口面積は、前記少なくとも1つの開口部の開口面積の合計以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の油圧緩衝器。
【請求項7】
前記リザーバ内にばねが設けられており、
前記移動防止部材は、前記ばねを受けるばね受け部と、前記ばね受け部から車軸側へ延びる脚部とを備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の油圧緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面からの衝撃を緩衝する油圧緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車や三輪車等の鞍乗型車両では、車輪を懸架する懸架装置として、例えば、特許文献1に記載された、車体側チューブと車輪側チューブとをテレスコピック型にした油圧緩衝器が知られている。特許文献1の油圧緩衝器は、路面の凹凸による衝撃が車輪に入力されると、車輪側チューブが車体側チューブに出入りして伸縮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−180689号公報(2017年10月5日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の油圧緩衝器では、油圧緩衝器を搭載した鞍乗型車両が上下方向に振動すると、リザーバ内の油が上方向に移動し、リザーバからシリンダの内部へ通じる開口部の近傍に油が滞留しなくなることがある。この状況で油圧緩衝器が急速に伸長作動すると、シリンダ内への油の供給量が不足し、減衰力発生装置に流入する油に空気が混入してエア噛みが生じる可能性がある。エア噛みが生じると、所望の減衰力を発生させることができなくなる。
【0005】
本発明の一態様は、減衰力を安定的に発生させることができる油圧緩衝器を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る油圧緩衝器は、車体側に配された車体側チューブと、車輪側に配された車軸側チューブと、前記車軸側チューブに設けられ、車軸側の側壁面に少なくとも1つの開口部を有するシリンダと、前記シリンダの外側に区画され、油を貯留するリザーバと、前記車体側チューブに設けられたロッドと、前記ロッドの車軸側に設けられ、前記シリンダの内周面に対して摺動するピストンと、前記ピストンの移動によって生じる油の流れによって減衰力を発生させる減衰力発生部と、前記シリンダの外側かつ前記開口部の車体側に少なくとも一部が配され、車軸側から車体側への油の移動を妨げる移動防止部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、減衰力を安定的に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る油圧緩衝器の構成を示す断面図である。
【
図2】前記油圧緩衝器の車軸側端部の構成を示す断面図である。
【
図3】移動防止部材を軸方向から見たときの上面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係る油圧緩衝器の車軸側端部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
本発明の油圧緩衝器の一実施形態としてフロントフォークを例示して以下の説明を行う。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る油圧緩衝器の構成を示す断面図である。油圧緩衝器1は、二輪車や三輪車等の鞍乗型車両において車輪(図示せず)の両側面に左右一対に取り付けられる装置であり、車輪を懸架する懸架装置として機能する。
【0011】
図1に示すように油圧緩衝器1は、テレスコピック型であり、車体側ブラケット(図示せず)に連結される円筒状のチューブ11(車体側チューブ)と、車軸側ブラケット13が連結された円筒状のチューブ12(車軸側チューブ)とを備えている。チューブ12は、ロッド16を軸としてチューブ11に対して相対的に移動し、チューブ11の内部に出入りする。チューブ12の内部には、チューブ11とチューブ12とを伸長方向に付勢するコイルばね14が配置されている。本実施の形態では、油圧緩衝器1は、コイルばね14を有しダンパーが内蔵されていない他方の懸架装置(図示せず)と組み合わせて一対のフロントフォークを構成する。なお、別の実施の形態として、左右両側ともダンパーが内蔵されている懸架装置で構成されたフロントフォークを実現してもよい。
【0012】
油圧緩衝器1は、路面の凹凸による衝撃が車輪(図示せず)に入力されると、チューブ12がチューブ11に出入りして伸縮する。油圧緩衝器1が縮む行程を圧縮行程と称し、油圧緩衝器1が伸びる行程を伸長行程と称する。本実施の形態では、チューブ11にチューブ12が出入りする倒立型の油圧緩衝器1について説明するが、油圧緩衝器1を、チューブ11がチューブ12に出入りする正立型にすることも可能である。
【0013】
油圧緩衝器1は、中心軸C1を軸としてチューブ12の車軸側に取り付けられるシリンダ15と、中心軸C1を軸としてチューブ11の車体側に取り付けられたロッド16とを備えている。中心軸C1の延びる方向を軸方向と称する。
【0014】
シリンダ15の車体側の開口部は、ロッドガイド17によって閉塞され、ロッド16の車軸側はロッドガイド17を貫通する。ロッドガイド17は、ロッド16を摺動可能に支持すると共に、ロッドガイド17の車軸側には、チューブ11およびチューブ12の最伸長時に反力を発生するリバウンドばね18が配されている。
【0015】
シリンダ15の内部には油(作動油)が充満し、ロッド16の車軸側に設けられたピストン19が、チューブ11およびチューブ12の伸縮時にシリンダ15の内周面に対して摺動する。ピストン19は下方室20と上方室21とにシリンダ15を区画する。
【0016】
図1に示すように、ロッド16は、油を流通させる流路22を内部に有する中空の軸部材である。ロッド16は、車軸側端部において開口する開口部23と、車体側端部において開口する開口部24とを有している。本実施の形態では開口部23は、シリンダ15内の上方室21の内部に位置している。上方室21とは、シリンダ15の内部を摺動するピストン19によって区画される油室のうちの車体側の油室である。
【0017】
油圧緩衝器1では、圧縮行程および伸長行程の両方において、油は上方室21から流路22に流入し、流路22の内部を車軸側から車体側へ向かって流れ、ロッド16の車体側に配された制御部10を通過する。
【0018】
シリンダ15の車軸側の端部にはベースバルブ27が配され、チューブ11の車体側に配されたキャップ部材25に制御部10(減衰力発生部)が配される。制御部10は、ロッド16の開口部24から流出する油の流れ(すなわち、ピストン19の移動によって生じる油の流れ)によって減衰力を発生させる減衰力発生装置であり、可変絞り弁の開口面積を電子制御することにより、当該可変絞り弁を油が通過するときに生じる減衰力の大きさを制御する。
【0019】
なお、油圧緩衝器1に設けられる制御部10は、電子制御される減衰力発生装置である必要はなく、手動で減衰力の調整を行う減衰力発生装置を油圧緩衝器1に設けてもよい。また、油圧緩衝器1が備える減衰力発生装置は、チューブ11の車体側にユニットとして形成された装置でなくてもよい。油圧緩衝器1は、代替可能な公知の減衰力発生装置を備えていればよい。
【0020】
チューブ11の車体側の開口はキャップ部材25によって塞がれており、チューブ12は車軸側の開口は車軸側ブラケット13によって塞がれている。チューブ11およびチューブ12の内部に封入される気体や油が漏れ出ないように、チューブ11とチューブ12とが重複する部分に形成される筒状の隙間はオイルシール等で塞がれる。
【0021】
油圧緩衝器1は、チューブ11およびチューブ12に囲まれたシリンダ15の外側の空間であるリザーバ26に油を貯留する。すなわち、リザーバ26とは、シリンダ15の外側かつ、チューブ11およびチューブ12の内側に区画された、油を貯留する油室である。リザーバ26は、油で完全には満たされていないため、貯留された油の液面(図示せず)から車体側に空気等の気体が占める気室が形成される。リザーバ26は、ロッド16がシリンダ15へ進入するときの進入体積分の油、および温度変化に伴う油の体積変化を補償する。
【0022】
図2は、油圧緩衝器1の車軸側端部の構成を示す断面図である。
図2に示すように、シリンダ15の車軸側の側壁面には、開口部43が形成されている。開口部43は、少なくとも1つ形成されており、例えば、4つ形成されている。開口部43は、リザーバ26に貯留された油をシリンダ15の内部に流入させるための開口部である。これら開口部43は、ベースバルブ27の積層バルブ33よりも車軸側に形成されている。開口部43の開口中心軸C2は、中心軸C1に対して直交している。
【0023】
シリンダ15の外側(すなわち、リザーバ26の内部)には、リザーバ26における車軸側から車体側への油の移動を妨げる移動防止部材41が設けられている。移動防止部材41は、コイルばね14の一端を受けるばね受け部41A(車軸側の面)と、ばね受け部41Aから車軸側へ延びる脚部41Bとを備えている。ばね受け部41Aは、開口部43よりも車体側に位置している。移動防止部材41の少なくとも一部が開口部43の車体側に配されていればよい。
【0024】
脚部41Bの車軸側の端部は、車軸側ブラケット13の内壁面に形成された段差部13Aと当接し、移動防止部材41、車軸側ブラケット13の内壁面およびシリンダ15の外壁面によって油溜り室42が画定される。
【0025】
図3は、移動防止部材41を軸方向から見たときの上面図である。
図3では、移動防止部材41およびシリンダ15以外の部材は省略されている。
図3に示すように、ばね受け部41Aは、略円形の外縁を有しており、脚部41Bは、前記外縁に沿って筒状に形成されている。ばね受け部41Aの中央には、シリンダ15を受け入れる開口部41Cが形成されている。開口部41Cの口径は、シリンダ15の外径よりも大きいため、開口部41Cとシリンダ15の外壁面との間には環状の隙間50が形成される。
【0026】
図2において実線の矢印で示すように、通常、リザーバ26の油は、隙間50を通って車体側から車軸側へ移動した後、開口部43を通ってシリンダ15の内部へ流入する。そのため、移動防止部材41は、車体側から車軸側への油の流れを許容する隙間50を画定するといえる。
【0027】
上述したようにリザーバ26の車体側には気体が存在しているため、油圧緩衝器1が上下方向に振動すると、リザーバ26の内部の油が車体側に移動し、開口部43の近傍に油が存在しない状態となる。このような状態において油圧緩衝器1が急速に伸長作動すると、シリンダ15の内部に供給される油が不足する。その結果、ロッド16の流路22を通って制御部10へ供給される油に空気が混入し、減衰力が発生しなくなる、いわゆるエア噛みと呼ばれる現象が発生する。エア噛みが発生すると、車両の乗り心地や操按性が悪化してしまう。
【0028】
このような現象を防止するために移動防止部材41が設けられている。すなわち、油圧緩衝器1が上下方向に振動することに伴い、
図2において破線の矢印で示すように、リザーバ26の車軸側の油が車体側に移動する。移動防止部材41は、このような油の流れの一部をばね受け部41Aによって妨害し、油を油溜り室42に留める。その結果、開口部43の近傍に油を滞留させることができ、シリンダ15の内部への油の供給が途絶えることを防止できる。ばね受け部41Aの車軸側の表面41Eは、車体側への油の移動を妨げる、移動防止部材41の車軸側の表面に相当する。
【0029】
このようにばね受け部41Aによって移動を妨害された油が開口部43からシリンダ15の内部に効率良く流入するように、開口部43の最も車体側の部分が、ばね受け部41Aの表面41Eと概ね一致していることが好ましい。
図2に示す例では、ばね受け部41Aの表面41Eは平坦であり、表面41Eと、開口部43の最も車体側の部分とが油圧緩衝器1の軸方向において隣接している。例えば、表面41Eの、前記軸方向における位置と、開口部43の最も車体側の部分の、前記軸方向における位置とが、設計誤差を考慮した範囲内で実質的に一致している。
【0030】
ただし、移動防止部材41の位置、特に表面41Eの位置は、
図2に示したものに限定されず、表面41Eの、前記軸方向における位置が、開口部43と重なるか、または開口部43よりも車体側に位置していればよい。また、実施形態2で例示するように、表面41Eは平坦でなくてもよい。
【0031】
また、隙間50の開口面積は、複数の開口部43の開口面積の合計以上であることが好ましい。隙間50の開口面積が複数の開口部43の開口面積の合計よりも小さくなると、隙間50を通過する油に対する流路抵抗が大きくなり、シリンダ15の内部への油の流入が妨げられるためである。
【0032】
また、
図2および
図3に示すように、移動防止部材41は、ばね受け部41Aの車体側の面と、開口部41Cとの間に傾斜面41Dを有している。傾斜面41Dを開口部41Cの一部とみなせば、移動防止部材41に形成された開口部41Cの口径は、車軸側よりも車体側の方が大きくなっている。
【0033】
そのため、車体側から車軸側への油の流れは、効率的に開口部41Cを通過するが、車軸側から車体側への油の流れは、妨害されやすい。
【0034】
(油圧緩衝器1における油の流れ)
圧縮行程では、上方室21(
図1参照)の容積の増大に伴い、下方室20から上方室21へ油が流入する。さらに、下方室20ではロッド16の浸入した体積に相当する量の油が余剰となるため、余剰の油は開口部43を通過してリザーバ26に流出する。
【0035】
一方、伸長行程では、下方室20の容積の増大に伴い、リザーバ26の油が、開口部43を通過してシリンダ15内に流入する。
【0036】
(まとめ)
以上のように油圧緩衝器1は、車体側のチューブ11と、車軸側のチューブ12と、チューブ11に設けられ、車軸側の側壁面に少なくとも1つの開口部43を有するシリンダ15と、シリンダ15の外側に区画され、油を貯留するリザーバ26と、チューブ11に設けられたロッド16と、ロッド16の車軸側に設けられ、シリンダ15の内周面に対して摺動するピストン19と、ピストン19の移動によって生じる油の流れによって減衰力を発生させる制御部10と、シリンダ15の外側かつ開口部43の車体側に少なくとも一部が配され、車軸側から車体側への油の移動を妨げる移動防止部材41とを備えている。
【0037】
この構成によれば、油圧緩衝器1を搭載する車両が上下方向に振動した場合でも、リザーバ26内の油が上方向に移動することを移動防止部材41が妨害するので、開口部43の近傍に油が滞留することになる。
【0038】
そのため、油圧緩衝器1が急速に伸長作動しても、シリンダ15の内部へ油が供給されるので、制御部10に流入する油に空気が混入されることは無く、それゆえ、減衰力を安定的に発生させることができる。
【0039】
移動防止部材41の車軸側の表面41Eと、開口部43の最も車体側の部分とが、油圧緩衝器1の軸方向において隣接している。そのため、移動防止部材41の表面41Eによって移動を妨害された油を開口部43に効率良く流入させることができる。
【0040】
移動防止部材41は、車体側から車軸側への油の流れを許容する隙間50をシリンダ15の側壁面との間に画定する。リザーバ26の油は、隙間50を通って、車体側から車軸側へ移動することになる。シリンダ15の側壁面との隙間を油の流路とすることにより、移動防止部材41の別の部分に流路を形成する場合よりも、流路の形成が容易になる。
【0041】
また、隙間50をシリンダ15の側壁面の周囲の少なくとも一部に形成することにより、リザーバ26の油を車体側から車軸側へ移動させることができる。
【0042】
さらに、隙間50の開口面積は、少なくとも1つの開口部43の開口面積の合計以上である。この構成により、隙間50を通過する油に対する流路抵抗が小さくなり、シリンダ15の内部への油の供給が妨げられることを防止できる。
【0043】
リザーバ26内にコイルばね14が設けられており、移動防止部材41は、コイルばね14を受けるばね受け部41Aと、ばね受け部41Aから車軸側へ延びる脚部41Bとを備えている。この構成により、移動防止部材41は、リザーバ26内のコイルばね14を受けるばね受け部の機能を兼ねることができる。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0045】
図4は、本実施形態に係る油圧緩衝器1Aの車軸側端部の構成を示す断面図である。
図4に示すように、油圧緩衝器1Aが備える移動防止部材51は、移動防止部材41と同様にばね受け部51A、脚部51B、開口部51Cおよび傾斜面51Dを備えている。移動防止部材51は、ばね受け部51Aの車軸側の表面に、車体側に窪んだ凹部51Eを有している点で、移動防止部材41と異なっている。そのため、凹部51Eの最も車体側の部分(凹部の底)は、開口部43の最も車体側の部分よりも車体側に位置している。
【0046】
なお、開口部51Cを形成する部分の車軸側の表面は、開口部43の最も車体側の部分と実質的に一致している。この点については、実施形態1の移動防止部材41と同様である。
【0047】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、本実施形態における変形例は、移動防止部材51についても適用できる。
【0048】
移動防止部材41が形成する隙間50は、シリンダ15の側壁面の全周にわたって形成されている必要は必ずしもなく、側壁面の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0049】
また、コイルばね14を受けるばね受けを移動防止部材41とは別に設け、脚部41Bを備えない移動防止部材41を開口部43の車体側に配置してもよい。
【0050】
また、ばね受け部41Aは、車体側から車軸側への油の流れを許容する、隙間50の代替としての開口部を、シリンダ15の側壁面から離れた位置に有していてもよい。さらに、前記開口部は、車体側から車軸側への油の流れを許容するとともに、車軸側から車体側への油の流れを制限する構造または形状を有していてもよい。
【0051】
例えば、ばね受け部41Aに開口部を形成し、車体側から車軸側への油の流れを許容するとともに、車軸側から車体側への油の流れを制限するチェック弁を前記開口部に設けてもよい。
【0052】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 油圧緩衝器
10 制御部(減衰力発生部)
11 チューブ(車体側チューブ)
12 チューブ(車軸側チューブ)
14 コイルばね
15 シリンダ
16 ロッド
19 ピストン
26 リザーバ
43 開口部
41 移動防止部材
41A ばね受け部
41B 脚部
41D 傾斜面
41E 表面
50 隙間
51 移動防止部材
51E 凹部
【手続補正書】
【提出日】2019年10月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に配された車体側チューブと、
車軸側に配された車軸側チューブと、
前記車軸側チューブに設けられ、車軸側の側壁面に少なくとも1つの開口部を有するシリンダと、
前記シリンダの外側に区画され、油を貯留するリザーバと、
前記車体側チューブに設けられたロッドと、
前記ロッドの車軸側に設けられ、前記シリンダの内周面に対して摺動するピストンと、
前記ピストンの移動によって生じる油の流れによって減衰力を発生させる減衰力発生部と、
前記シリンダの外側かつ前記開口部の車体側に少なくとも一部が配され、車軸側から車体側への油の移動を妨げる移動防止部材とを備え、
前記移動防止部材の、前記油の移動を妨げる車軸側の表面には、車体側に窪んだ凹部が形成されていることを特徴とする油圧緩衝器。
【請求項2】
車体側に配された車体側チューブと、
車軸側に配された車軸側チューブと、
前記車軸側チューブに設けられ、車軸側の側壁面に少なくとも1つの開口部を有するシリンダと、
前記シリンダの外側に区画され、油を貯留するリザーバと、
前記車体側チューブに設けられたロッドと、
前記ロッドの車軸側に設けられ、前記シリンダの内周面に対して摺動するピストンと、
前記ピストンの移動によって生じる油の流れによって減衰力を発生させる減衰力発生部と、
前記シリンダの外側かつ前記開口部の車体側に少なくとも一部が配され、車軸側から車体側への油の移動を妨げる移動防止部材とを備え、
前記移動防止部材は、車体側から車軸側への油の流れを許容する隙間を前記シリンダの側壁面との間に画定することを特徴とする油圧緩衝器。
【請求項3】
前記隙間は、前記シリンダの側壁面の周囲の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の油圧緩衝器。
【請求項4】
前記隙間の開口面積は、前記少なくとも1つの開口部の開口面積の合計以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の油圧緩衝器。
【請求項5】
車体側に配された車体側チューブと、
車軸側に配された車軸側チューブと、
前記車軸側チューブに設けられ、車軸側の側壁面に少なくとも1つの開口部を有するシリンダと、
前記シリンダの外側に区画され、油を貯留するリザーバと、
前記車体側チューブに設けられたロッドと、
前記ロッドの車軸側に設けられ、前記シリンダの内周面に対して摺動するピストンと、
前記ピストンの移動によって生じる油の流れによって減衰力を発生させる減衰力発生部と、
前記シリンダの外側かつ前記開口部の車体側に少なくとも一部が配され、車軸側から車体側への油の移動を妨げる移動防止部材とを備え、
前記リザーバ内にばねが設けられており、
前記移動防止部材は、前記ばねを受けるばね受け部と、前記ばね受け部から車軸側へ延びる脚部とを備えていることを特徴とする油圧緩衝器。
【請求項6】
前記移動防止部材の、前記油の移動を妨げる車軸側の表面と、少なくとも1つの前記開口部の最も車体側の部分とが、前記油圧緩衝器の軸方向において隣接していることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の油圧緩衝器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る油圧緩衝器は、車体側に配された車体側チューブと、車輪側に配された車軸側チューブと、前記車軸側チューブに設けられ、車軸側の側壁面に少なくとも1つの開口部を有するシリンダと、前記シリンダの外側に区画され、油を貯留するリザーバと、前記車体側チューブに設けられたロッドと、前記ロッドの車軸側に設けられ、前記シリンダの内周面に対して摺動するピストンと、前記ピストンの移動によって生じる油の流れによって減衰力を発生させる減衰力発生部と、前記シリンダの外側かつ前記開口部の車体側に少なくとも一部が配され、車軸側から車体側への油の移動を妨げる移動防止部材とを備え
、前記移動防止部材の、前記油の移動を妨げる車軸側の表面には、車体側に窪んだ凹部が形成されていることを特徴とする。