【解決手段】軸方向一端側の端面である第1面(12a)の中央を通り、軸方向に貫通する孔である貫通孔(12b)と、前記貫通孔(12b)を画定するとともに、前記第1面(12a)へと連なる内周部(12c)と、前記内周部(12c)を囲むように配置されるとともに、前記第1面(12a)へと連なる外周部(12d)と、を備えるピストン(12)、及び、前記貫通孔(12b)に挿通されているピストンロッド(11)、を備え、前記内周部(12c)における、前記第1面(12a)の裏面側の端面である第1端面(12e)は、前記外周部(12d)における、前記裏面側の端面である第2端面(12f)よりも、前記第1面側(12a)に位置している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
実施形態1に係るシリンダ装置1について
図1〜3、4A及び4Bを参照して説明する。
図1は、シリンダ装置1の一構成例を示す断面図である。
図1に示すように、シリンダ装置1は、ピストンロッド11と、ピストンロッド11の端部(
図1では下端部)に固定されたピストン12と、ピストン12の一方の側(
図1では下側)に配置されたフリーピストン13とを備えるピストン構造体10、及びシリンダ14を備えている。なお、本実施形態では、フリーピストンを備えるピストン構造体10の構成について説明するが、これは本実施形態を限定するものではなく、ピストン構造体がフリーピストンを備えない構成であってもよい。
【0009】
シリンダ装置1が備えるシリンダ14の内部は、ピストン12によって、フリーピストン13側に配置される第2室14bと、ピストン12を挟んで第2室14bとは反対側に配置される第1室14aと、に仕切られている。
図1には、ピストン12の上側に第1室14aが配置され、ピストン12の下側に第2室14aが配置されている様子が示されている。また、シリンダ14の第2室14bと第3室14cとが、フリーピストン13によって仕切られている。
図1には、フリーピストン13の上側に第2室14bが配置され、フリーピストン13の下側に第3室14cが配置される様子が示されている。なお、ピストン構造体は、フリーピストン13を備える構成に限定されるものではない。ピストン構造体がフリーピストンを備えない構成である場合、第2室14bと、第3室14cとは区別がなくなる。このため、フリーピストンを備えない構成では、第3室14cを第2室と呼ぶこともある。
なお、シリンダ14の第1室14aを上室と呼び、シリンダ14の第3室14cを下室と呼ぶこともある。
【0010】
シリンダ装置1は、シリンダ14の第1室14a及び第3室14cに対する作動油の供給または排出を制御することによってピストンロッド11の駆動を制御する装置である。なお、第3室14cに対して図示しない第3室用油路が接続されている。当該第3室用油路を介して第3室14cに作動油を供給することによって、ピストン12及びフリーピストン13が上昇し、ピストン12に固定されているピストンロッド11が上昇する。
【0011】
続いて、
図2を参照して、ピストン構造体10の構成例についてより具体的に説明する。
図2は、ピストン構造体10の一構成例を示す拡大断面図である。
【0012】
(ピストン12)
ピストン12は、ピストン構造体10の軸方向(
図2の紙面上下方向)の一端側の端面である第1面12aの中央を通り、当該軸方向に貫通する貫通孔12bと、当該貫通孔12bを画定するとともに、第1面12aへと連なる内周部12cと、当該内周部12cを囲むように配置されるとともに、第1面12aへと連なる外周部12dを備えている。ピストン12が備える貫通孔12bには、ピストンロッド11が挿通されている。
【0013】
また、ピストン12は、第1室14aの油圧が所定の圧力よりも上昇した場合に、第1室14aの作動油を第2室14bに送出する保護バルブ17と、第2室14bから第1室14aに作動油を送出するリターンバルブ(図示せず)と、を備えている。なお、ピストン構造体がフリーピストンを備えない構成である場合、ピストン12はリターンバルブを備えない。保護バルブ17の作動油の送出方法については後述する。
【0014】
ピストン12には、外周部12dにおいて、外周に沿って凹部が形成されており、当該凹部にはOリング18が嵌合している。また、ピストン12には、内周部12cにおける第1面12aの裏面側の端面において、貫通孔12bの内周に沿って凹部が形成されており、当該凹部にはOリング19が嵌合している。
【0015】
また、ピストン12は、貫通孔12bに挿通されたピストンロッド11の第2室14b側の端部に嵌挿された環状部材16と、当該端部に螺合する固定部材15とを用いて、ピストンロッド11に固定されている。ここで、環状部材16としては、例えば、ワッシャー等が挙げられ、固定部材15としては、例えば、ナット等が挙げられる。
【0016】
また、ピストン12は、第1面12aの裏面側において、内周部12cにおける端面である第1端面12eと、外周部12dにおける上記裏面側の端面である第2端面12fとを備えている。
図2に示すように、ピストン12は、第1端面12eが第2端面12fよりも第1面12a側に位置するように、第1端面12e及び第2端面12fを備えている。これにより、環状部材16の少なくとも一部を、第2端面12fよりも第1面12a側にオフセットした位置に配置することができる。また、第1端面12eが第2端面12fよりも第1面12a側に位置していない従来のピストン構造体よりも、固定部材15を第1面12a側にオフセットした位置に配置することができる。これにより、フリーピストン13の軸方向の長さを短くすることができるので、従来のピストン構造体よりもピストンロッド11のストローク長を増大させることができる。
【0017】
ここで、
図2に示すように、ピストンロッド11には、上記裏面側のピストンロッド11の端部において、内周部12cの第1端面12eに当接するように嵌挿された環状部材16が固定されている。また、一例として、ピストン12は、外周部12dの第2端面12f側の端部において、環状部材16の外縁16aに対向するように凹んだ凹部12gを有している。これにより、環状部材16によって作動油の送出を阻害されることなく、保護バルブ17を介してシリンダ14の第1室14aから第2室14bへ作動油をよりスムーズに送出することができる。
【0018】
更に言えば、ピストン12の内周部12cにおける第1端面12eは、環状部材16の全体が凹部12gを囲む第2端面12fよりも第1面12a側に配設されるように、備えられていることが好ましい。すなわち、ピストンロッド11の軸方向(
図1の紙面上下方向)における環状部材16の厚さをh1(h1については
図4Aを参照)とするとき、第2端面12fよりも第1面12a側に配設される第1端面12eは、ピストンロッド11の軸方向における第1端面12eと第2端面12fとの距離がh1以上となるように、備えられることが好ましい。これにより、固定部材15の位置を第1面12a側に更にオフセットすることができる。それに伴い、フリーピストン13の軸方向の長さを更に短くすることができるので、ピストンロッド11のストローク長を更に増大させることができる。
【0019】
(フリーピストン13)
図2に示すように、フリーピストン13は、ピストンロッド11に固定されていないピストンである。フリーピストン13は、ピストン12の第2端面12fよりもフリーピストン13側に突出した、上記裏面側のピストンロッド11の端部及び固定部材15を収容可能な凹部を有している。これにより、上記裏面側のピストンロッド11の端部及び固定部材15に阻害されることなく、ピストン12の第2端面12fと、当該ピストン12側のフリーピストン13の端面とを当接させることができる。
【0020】
また、フリーピストン13は、ピストン12における第1端面12aの裏面側に配置されるシリンダ14内の空間を、第2室14bと第3室14cとに仕切っている。これにより、ピストン12がリターンバルブを備える構成であっても、シリンダ14の第3室14cの作動油は、当該リターンバルブを介してシリンダ14の第1室14aに送出されることはない。フリーピストン13には、外周に沿って凹部が形成されており、当該凹部にはOリング18が嵌合している。
【0021】
なお、本実施形態においては、
図2に示すように、第3室14cに臨むフリーピストン13の端面は平坦面であるが、これは本実施形態を限定するものではない。例えば、シリンダ14の、第3室14c側の内周面(
図2における紙面下側の内周面)が凹部を有する場合、フリーピストン13の第3室14c側の端面は、当該凹部に対応する凸部を有していてもよい。このように、シリンダ14の第3室14c側の端面の形状とフリーピストン13の第3室14c側の端面の形状とを対応させることにより、ピストンロッド11のストローク長を増大させやすくなる。
【0022】
(保護バルブ17)
保護バルブ17は、ピストン12内部において、環状部材16よりもピストン12の第1面12a側に位置するように設けられている。保護バルブ17は、ボール17a、スプリング17b、及び当該スプリング17bの中空部に嵌挿された支持部材17cを備えている。
【0023】
ボール17aは、シリンダ14の第1室14aと第2室14bとの間の油路上に設けられている。ボール17aは、その直径が、ピストン12の第1面12aに形成された貫通孔12hの直径よりも大きい。支持部材17cは、細径部と、当該細径部よりも直径の大きいフランジ部とを有しており、スプリング17bには、支持部材17cの細径部が嵌挿される。支持部材17cのフランジ部は、スプリング17bによって第1室14a側に向けて付勢されており、当該フランジ部の第1室14a側の端面によって、ボール17aが貫通孔12hを塞ぐように押し付けられている。
【0024】
保護バルブ17の動作について
図3を参照してより具体的に説明すれば以下の通りである。
シリンダ装置1において、何らかの外力により、ピストン12がピストンロッド11と共にシリンダ14の第1室14a側に引っ張られると、第1室14aにおける油圧が上昇する。第1室14a内の作動油がボール17aを押す力がスプリング17bによって付勢される力を超えると、第1室14a内の作動油によって、ボール17aが第2室14b側に押され、保護バルブ17が開弁する。これにより、
図3において矢印で示すように、第1室14aから第2室14bへと作動油が送出される。
【0025】
このように、保護バルブ17は、第1室14aの油圧が所定の圧力よりも上昇した場合にのみ、第1室14aの作動油を第2室14bに送出し、そうでない場合には、シリンダ14の第1室14aと第2室14bとの間の作動油の流通を遮断する。
【0026】
ここで、本実施形態に係るピストン12の外周部12dには、上述したように、環状部材16の外縁16aに対向するように凹んだ凹部12gを有している。そのため、環状部材16によって作動油の送出を阻害されることなく、凹部12gを介して、作動油を第2室14bへとスムーズに送出することができる。
【0027】
なお、本実施形態に係るピストン12では、環状部材16が、第2端面12fよりも、第1面12a側にオフセットされている。このため、オフセットがない場合に比べて自然長の短いスプリング17bを用いることが好ましい。このように自然長の短いスプリング17b用いる場合、オフセットがない場合に比べて、バネ定数が大きいものを用いる、または、貫通孔12hの直径を小さくするなどの構成を採用することが好ましい。これにより、オフセットがない場合に比べて自然長の短いスプリング17bを用いたとしても、保護バルブ17を開弁させるための油圧を、オフセットがない場合と同様に高く保つことができる。なお、貫通孔12hの直径を小さくする構成を採用する場合、第1室14aから第2室14bへの作動油の送出量が低減しないよう、オフセットがない場合に比べてピストン12における保護バルブ17の数を増やす構成としてもよい。
【0028】
(比較例との比較)
続いて、
図4A及び4Bを参照して、本実施形態に係るピストン構造体10と比較例に係るピストン構造体90とを比較する。
図4Aは、ピストン構造体10の一構成例の拡大断面図を示し、
図4Bは、ピストン構造体90の拡大断面図を示す。
【0029】
図4Aに示すように、本実施形態に係るピストン構造体10では、環状部材16は第2端面12fよりも第1面12a側に位置している。一方で、
図4Bに示すように、比較例のピストン構造体90では、環状部材16は、ピストン12’のフリーピストン13’側の端面よりもフリーピストン13’側に突出する位置に、換言すれば、ピストン12’の裏面側の端部よりも第2室14b側に位置している。
【0030】
ピストン構造体10では、環状部材16が第2端面12fよりも第1面12a側に位置しているため、環状部材16の軸方向の長さh1の分だけ、固定部材15の位置を第1室14a側にオフセットさせることができる。ピストン構造体10は、フリーピストン13の軸方向の長さi1を、オフセット長h1の分だけ短くすることができる。このように、本実施形態に係るフリーピストン13の軸方向の長さi1は、比較例のピストン構造体90に備えられるフリーピストン13’の軸方向の長さi2よりも、短くなる。これにより、ピストン構造体10によれば、ピストンロッド11のストローク長を増大させることができる。
【0031】
〔実施形態2〕
実施形態2に係るシリンダ装置1aについて
図5を参照して説明する。
図5は、シリンダ装置1aにおけるピストン構造体10a(実施形態2に係るピストン構造体10a)の一構成例を示す拡大断面図である。ピストン構造体10aは、フリーピストン13に代えてフリーピストン23を備えることを除いて、ピストン構造体10と同様に構成されている。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図5に示すように、フリーピストン23は、ピストンロッド11に固定されていないピストンである。フリーピストン23は、フリーピストン13と同様に、ピストン12の第2端面12fよりも、第1面12aの裏面側に突出したピストンロッド11の端部及び固定部材15を収容可能な凹部を有している。また、フリーピストン23は、ピストン12側のフリーピストン23の端部に、環状部材16の外縁16aに対向するように凹んだ凹部12gに嵌合する凸部23aを有している。ピストン12の凹部12gとフリーピストン23の凸部23aが嵌合することにより、シリンダ14の内部において、フリーピストン23が傾くことを抑制することができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、
図5に示すように、フリーピストン23の第3室14cに臨む端面は平坦面であるが、これは本実施形態を限定するものではない。例えば、シリンダ14の、第3室14c側の内周面(
図5における紙面下側の内周面)が凹部を有する場合、フリーピストン23の第3室14c側の端面は、当該凹部に対応する凸部を有していてもよい。このように、シリンダ14の第3室14c側の端面の形状とフリーピストン23の第3室14c側の端面の形状とを対応させることにより、ピストンロッド11のストローク長を増大させやすくなる。
【0034】
〔実施形態3〕
実施形態3に係るシリンダ装置1bについて
図6及び7を参照して説明する。
図6は、シリンダ装置1bにおけるピストン構造体10b(実施形態3に係るピストン構造体10b)の一構成例を示す拡大断面図である。ピストン構造体10bは、ピストン12、フリーピストン13、固定部材15及び環状部材16に代えて、ピストン32、フリーピストン33、板状部材40及び固定部材41を備えることを除いて、ピストン構造体10と同様に構成されている。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0035】
ピストン32は、ピストン構造体10bの軸方向(
図6及び
図7の紙面上下方向)の一端側の端面である第1面32aの中央を通り、当該軸方向に貫通する貫通孔32bを備えている。この貫通孔32bは、ピストンロッド11が挿通される内周面にねじ山が形成されている。また、第1面32aの裏面側におけるピストンロッド11の端部には、貫通孔32bの内周面に形成されたねじ山と螺合するねじ山が形成されており、これらのねじ山を介して、ピストン32とピストンロッド11とが螺合している。
【0036】
板状部材40は、ピストン32の内周部32cの第1端面32eに当接するように配設されている。また、固定部材41は、板状部材40とピストン32の第1端面32eとを接触させた状態で、板状部材40を固定する。ここで固定部材41としては、例えば、ボルト等が挙げられる。これにより、ピストン32の、第1端面32eの裏面側における外周部32dの端面である第2端面32fよりも、第1面32a側にオフセットした位置に、板状部材40の少なくとも一部を配置することができる。これにより、フリーピストン33の軸方向の長さを短くすることができるので、ピストンロッド11のストローク長を増大させることができる。
【0037】
また、一例として、ピストン32は、外周部32dの第2端面32f側の端部において、板状部材40の外縁40aに対向するように凹んだ凹部32gを有している。これにより、板状部材40によって作動油の送出を阻害されることなく、保護バルブ17を介してシリンダ14の第1室14aから第2室14bへ作動油をよりスムーズに送出することができる。
【0038】
更にいえば、ピストン32の内周部32cにおける第1端面32eは、板状部材40の全体が凹部32gを囲む第2端面32fよりも第1面32a側に配設されるように、備えられていることが好ましい。すなわち、第2端面32fよりも第1面32a側に配設される第1端面32eは、ピストンロッド11の軸方向における第1端面32eと第2端面32fとの距離が、ピストンロッド11の軸方向における板状部材40の厚さ以上になるように、備えられることが好ましい。これにより、板状部材40の位置を第1面32a側に更にオフセットすることができる。それに伴い、フリーピストン33の軸方向の長さを更に短くすることができるので、ピストンロッド11のストローク長を更に増大させることができる。
【0039】
フリーピストン33は、
図6に示すように、ピストンロッド11に固定されていないピストンであり、ピストン32の第2端面32fよりもフリーピストン33側に突出した板状部材40及び固定部材41を収容可能な凹部を有している。これにより、板状部材40及び固定部材41に阻害されることなく、ピストン32の第2端面32fと、当該ピストン32側のフリーピストン33の端面とを当接させることができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、
図6に示すように、第3室14cに臨むフリーピストン33の端面は平坦面であるが、これは本実施形態を限定するものではない。例えば、シリンダ14の、第3室14c側の内周面(
図6及び
図7における紙面下側の内周面)が凹部を有する場合、フリーピストン33の第3室14c側の端面は、当該凹部に対応する凸部を有していてもよい。このように、シリンダ14の第3室14c側の端面の形状とフリーピストン33の第3室14c側の端面の形状とを対応させることにより、ピストンロッド11のストローク長を増大させやすくなる。
【0041】
また、本実施形態に係るピストン構造体における保護バルブ17は、実施形態1と同様に、ボール17a、スプリング17b、及び当該スプリング17bの中空部に嵌挿された支持部材17cを備えている。保護バルブ17は、シリンダ14の第1室14a内の作動油がボール17aを押す力がスプリング17bによって付勢される力を超えることにより開弁する。これにより、
図7において矢印で示すように、貫通孔32hを介して、シリンダ14の第1室14aから第2室14bへと作動油が送出される。
【0042】
このように、保護バルブ17は、第1室14aの油圧が所定の圧力よりも上昇した場合にのみ、第1室14aの作動油を第2室14bに送出し、そうでない場合には、シリンダ14の第1室14aと第2室14bとの間の作動油の流通を遮断する。
【0043】
ここで、本実施形態に係るピストン32には、上述したように、板状部材40の外縁40aに対向するように凹んだ凹部32gを有している。そのため、板状部材40によって作動油の送出を阻害されることなく、凹部32gを介して、作動油を第2室14bへとスムーズに送出することができる。
【0044】
〔実施形態4〕
本発明の第4の実施形態に係る船舶用推進装置の昇降装置100(以下において、「船外機昇降装置100」と称する。)について、
図8〜
図10を参照して説明する。本発明の第4の実施形態に係る船外機昇降装置100は、上述の実施形態に係るシリンダ装置1をチルトシリンダとして適用した船舶用推進装置の昇降装置である。なお、本実施形態では、上述の実施形態に係るシリンダ装置1をチルトシリンダに適用した構成を例示しているが、本実施形態に係る船外機昇降装置100は、上述の実施形態に係るシリンダ装置1を船舶用推進装置の昇降装置が備えるトリムシリンダに適用する構成であってもよい。このほか、本実施形態では、上述の実施形態に係るシリンダ装置1a又はシリンダ装置1bを、船舶用推進装置の昇降装置が備えるチルトシリンダとして適用する構成であってもよく、シリンダ装置1a又はシリンダ装置1bを、船舶用推進装置の昇降装置が備えるトリムシリンダとして適用する構成であってもよい。
【0045】
船外機昇降装置100は、船外機300を昇降させるための装置である。
図8Aは、船外機昇降装置100の使用例を示す図であり、船体(本体)200の後部と船外機300とに取り付けられた船外機昇降装置100を示している。
図8Aにおける実線は、船外機300が下降した状態を示し、
図8Aにおける破線は、船外機300が上昇した状態を示している。
図8Bは、船外機300の内部構成を概略的に示す模式図である。
図8Bに示すように、船外機300は、エンジン301と、プロペラ303と、エンジン301からプロペラ303に動力を伝達する動力伝達機構302とを備えている。ここで、動力伝達機構302は、例えば、シャフトやギヤによって構成される。
【0046】
図9は、船外機昇降装置100の構成の一例を示す正面図であり、
図10は、
図9におけるA−A線矢視断面図である。
図9に示すように、船外機昇降装置100は、シリンダユニット110と、船体200の後部に取り付けられる1対のスターンブラケット170と、船外機300に取り付けられるスイベルブラケット180とを備えている。
【0047】
シリンダユニット110は、一例として、
図9に示すように、2本のトリムシリンダ112、1本のチルトシリンダ1(シリンダ装置1)、モータ116、タンク(貯油タンク)118、上部ジョイント122、及び、基部124を備えている。トリムシリンダ112及びチルトシリンダ1は、基部124に対して相対移動不能に設けられている。
【0048】
なお、シリンダユニット110が備えるトリムシリンダ112及びチルトシリンダ1の数は本実施形態を限定するものではなく、1又は複数のトリムシリンダ112及び1又は複数のチルトシリンダ1を備えるシリンダユニット110も本実施形態に含まれる。また、そのように任意の数のトリムシリンダ112及びチルトシリンダ1を有するシリンダユニット110に対しても以下の説明が成り立つ。
【0049】
トリムシリンダ112は、シリンダ112aと、シリンダ112a内に摺動可能に設けられたピストンと、ピストンに固定されたピストンロッド112bとを備えている。また、チルトシリンダ1は、シリンダ14と、シリンダ14内に摺動可能に設けられたピストン12と、ピストン12に固定されたピストンロッド11とを備えている。
【0050】
また、
図9に示すように、基部124とスターンブラケット170には、それぞれ貫通孔が形成されており、これらの貫通孔を貫通するアンダーシャフト126を介して、基部124とスターンブラケット170とが相対回転可能に接続されている。
【0051】
また、
図9に示すように、ピストンロッド11の先端には、上部ジョイント122が設けられており、スイベルブラケット180には、支持部材128が固定されている。上部ジョイント122及び支持部材128には、それぞれ貫通孔が形成されており、これらの貫通孔を貫通するアッパーシャフト123を介して、上部ジョイント122とスイベルブラケット180とが相対回転可能に接続されている。
【0052】
また、スターンブラケット170及びスイベルブラケット180の上部一端にはそれぞれ貫通孔が形成されており、
図10に示すように、これらの貫通孔を貫通する支持軸132によって、スターンブラケット170とスイベルブラケット180とが相対回転可能に接続されている。
【0053】
(トリム域及びチルト域)
チルトシリンダ1のピストンロッド11が上昇及び下降することにより、スイベルブラケット180が上昇及び下降するので、船外機300が上昇及び下降する。
【0054】
チルトシリンダ1のピストンロッド11の上昇及び下降によって調整される船外機300の角度領域は、
図8Aに示したトリム域とチルト域とから構成される。チルト域は、トリムシリンダ112のピストンロッド112bの先端がスイベルブラケット180に当接不能な角度領域であり、チルト域での船外機300の角度調整はチルトシリンダ1のピストンロッド11によって行われる。
【0055】
一方、トリム域は、トリムシリンダ112のピストンロッド112bの先端がスイベルブラケット180に当接可能な角度領域であり、チルト域での船外機300の角度調整はトリムシリンダ112のピストンロッド112b及びチルトシリンダ1のピストンロッド11の双方によって行われ得る。
【0056】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。