特開2020-144886(P2020-144886A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ CASE特許株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-144886(P2020-144886A)
(43)【公開日】2020年9月10日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20200814BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20200814BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20200814BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20200814BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20200814BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20200814BHJP
【FI】
   G08G1/00 J
   G08G1/09 F
   G08G1/16 A
   B60W30/08
   B60W40/06
   B60W60/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2020-76712(P2020-76712)
(22)【出願日】2020年4月23日
(62)【分割の表示】特願2018-130641(P2018-130641)の分割
【原出願日】2013年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-62418(P2013-62418)
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519458587
【氏名又は名称】CASE特許株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉
(72)【発明者】
【氏名】福田 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】足立 勉
(72)【発明者】
【氏名】水野 健司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健純
(72)【発明者】
【氏名】毛利 大介
(72)【発明者】
【氏名】川西 毅
(72)【発明者】
【氏名】黒田 辰美
(72)【発明者】
【氏名】前川 博司
(72)【発明者】
【氏名】横井 丈誠
(72)【発明者】
【氏名】林 茂
(72)【発明者】
【氏名】野澤 豪生
(72)【発明者】
【氏名】竹中 謙史
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BA33
3D241BB51
3D241BB58
3D241CE02
3D241CE03
3D241CE04
3D241CE05
3D241DC33Z
3D241DC41Z
3D241DC46Z
5H181AA01
5H181AA20
5H181AA21
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181EE11
5H181EE13
5H181EE15
5H181FF04
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL06
5H181LL09
5H181LL14
5H181LL16
5H181LL20
5H181MC04
5H181MC12
5H181MC16
5H181MC17
5H181MC19
5H181MC24
5H181MC27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安全性が高い車両を提供する。
【解決手段】車両1は、道路に関する危険の位置情報を取得する危険情報取得ユニットである送受信機3と、自車の位置情報を取得する自車位置情報取得ユニットであるナビシステム5と、危険の位置情報及び前記自車の位置情報が所定の位置関係にある場合、危険回避処理を実行する危険回避処理実行ユニットであるナビシステム5、スピーカ7、ABS11、HUD13、滑り止め剤噴射システム21、自動ブレーキシステム23及び制御部25と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路のインフラ側に設けられた危険情報出力ユニットから、道路に関する危険の位置情報を取得する危険情報取得ユニットと、
自車の位置情報及び自車の進行方向を取得する自車情報取得ユニットと、
前記危険の位置情報、及び前記自車の位置情報が所定の位置関係にあり、前記自車の進行方向上に前記道路に関する危険が存在する場合、危険回避処理を実行する危険回避処理実行ユニットと、
を備え、
前記道路に関する危険は、自動運転中の車両であることを特徴とする車両。
【請求項2】
道路のインフラ側に設けられた危険情報出力ユニットから、道路に関する危険の位置情報を取得する危険情報取得ユニットと、
自車の位置情報及び自車の進行方向を取得する自車情報取得ユニットと、
前記危険の位置情報、及び前記自車の位置情報が所定の位置関係にあり、前記自車の進行方向上に前記道路に関する危険が存在する場合、危険回避処理を実行する危険回避処理実行ユニットと、
前記危険情報取得ユニットが取得した前記危険の位置情報を自車の周囲に送信する送信ユニットと、
を備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2013年3月25日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2013−62418号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2013−62418号の全内容を本国際出願に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は車両に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、車両に搭載されたカメラやレーダを用いて車両前方に存在する障害物等の危険を検出し、その危険を回避するための処理を実行する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−029060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、検出できる危険の種類や危険の検出範囲に制限があるため、車両の安全性を十分に向上させることは困難であった。本発明の一側面では、安全性に優れた車両を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両は、道路に関する危険の位置情報を取得する危険情報取得ユニットと、自車の位置情報を取得する自車位置情報取得ユニットと、前記危険の位置情報、及び前記自車の位置情報が所定の位置関係にある場合、危険回避処理を実行する危険回避処理実行ユニットと、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の車両は、道路に関する危険の位置情報を取得し、その危険の位置情報と自車の位置情報との位置関係に基づき危険回避処理を実行することができる。そのため、車両の安全性が高い。
【0008】
本発明の車両は、例えば、道路のインフラ側に設けられた危険情報出力ユニットから危険の位置情報を取得することができる。この場合、車両から見て遠方に存在する危険の位置情報も取得することができる。
【0009】
前記道路に関する危険としては、例えば、道路の凍結、道路上の積雪、及び道路上の構造物の崩落等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両1及び情報配信システム101の構成を表す説明図である。
図2】車両1の構成を表すブロック図である。
図3】滑り止め剤噴射システム21の構成を表す説明図である。
図4】基地局105の構成を表すブロック図である。
図5】第1の情報取得装置107の構成を表すブロック図である。
図6】第2の情報取得装置109の構成を表すブロック図である。
図7】カメラ139の構成及び作用を表す説明図である。
図8】音波出力機143及び音波センサ145の構成及び作用を表す説明図である。
図9】光センサ147の構成及び作用を表す説明図である。
図10】導電率センサ149の構成及び作用を表す説明図である。
図11】コントロールセンター103が道路に関する危険の情報を蓄積する処理を表すフローチャートである。
図12】危険情報データベースを表す説明図である。
図13】車両1が実行する処理を表すフローチャートである。
図14A-14B】図14Aは道路上に積雪がある状態において車両1のドライバの視点からフロントガラスを通して前方を見た風景を表す説明図であり、図14Bは上記図14Aで示す風景に、道路上の事物の画像をHUD13により重畳表示した状態を表す説明図である。
図15】走行経路情報データベースを表す説明図である。
図16】コントロールセンター103が実行する処理を表すフローチャートである。
図17】車両1が実行する処理を表すフローチャートである。
図18】車両1の構成を表すブロック図である。
図19】車両1の構成を表す斜視図である。
図20】車両1が実行する処理を表すフローチャートである。
図21】車両1が実行する処理を表すフローチャートである。
図22】車両1の構成を表すブロック図である。
図23】車両1の構成を表す斜視図である。
図24】車両1が実行する処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施形態>
1.車両1の構成
車両1の構成を図1図3に基づいて説明する。車両1は道路201上を走行可能な移動体である。車両1は、後述する情報配信システム101が配信する各種情報を受信可能である。また、車両1は、自らが取得した各種情報を情報配信システム101に送信可能である。
【0012】
車両1は、図2に示すように、送受信機3、ナビシステム5、スピーカ7、スリップ検出システム9、ABS(アンチロックブレーキシステム)11、HUD(ヘッドアップディスプレイ)13、カメラ15、赤外線カメラ17、レーダ19、車内カメラ20、滑り止め剤噴射システム21、自動ブレーキシステム23、及び制御部25を備える。
【0013】
送受信機3は、情報配信システム101との間で、無線通信によって情報の送受信を行うものである。ナビシステム5は、GPSにより車両1の位置情報を取得可能であり、また、車両1のドライバが指定した目的地に至る走行予定ルートを設定可能である。また、ナビシステム5は、インターネット回線104に接続して情報を送受信する機能を有する。スピーカ7は車両1の車室内に設けられ、音声を出力可能である。
【0014】
スリップ検出システム9は、以下の原理により車両1のスリップを検出する。スリップ検出システム9は、随時、車両1の車速と、車輪の回転数とを取得する。そして、車輪の回転数から算出される、スリップが発生していないと仮定した場合の理論上の車速と、実際の車速とを対比し、両者の差が所定の閾値より大きい場合はスリップが発生していると判断する。車両1の車速は、例えば、車両1の位置の単位時間当たりの変化量から求めることができる。
【0015】
ABS11は、所定の条件が満たされた場合に作動し、車両1のブレーキ圧を断続的に弱めることで車輪(タイヤ)のロックを防止する周知のシステムである。
HUD13は、車両1のフロントガラスに画像を表示可能な周知の画像表示システムである。すなわち、HUD13は、画像を表現する光を車両1のフロントガラスに投射し、その光はフロントガラスで反射してドライバの視点に到達する。その結果、ドライバから見ると、フロントガラス上に画像が表示されているように見える。
【0016】
カメラ15は、車両1の前端部に設けられ、車両1の前方及び車両1の真下の路面を撮影可能なカメラである。カメラ15は、可視光領域の光に基づく画像を撮影する。赤外線カメラ17は、車両1の前端部に設けられ、車両1の前方及び車両1の真下の路面の赤外線像を撮影可能なカメラである。
【0017】
レーダ19は、車両1の前端部に設けられ、車両1の前方方向にミリ波帯のレーダ波を出力するとともに、そのレーダ波が障害物等により反射した反射波を受信する。そして、レーダ波の出力時刻から反射波の受信時刻までの時間差に基づき、車両1から障害物までの距離を算出する。また、反射波が到来する方向に基づき、車両1から見た、障害物の方向を決定する。
【0018】
車内カメラ20は車両1の車室内に取り付けられ、フロントガラスを通して車両1の前方を撮影する。車両1は、車内カメラ20で撮像した画像に映っている、車両1の前方の事物(例えば先行車、信号機、歩行者等)の種類を画像認識により認識する。そして、画像に映っている事物がどの程度鮮明であるかを判断し、その判断結果に基づき、フロントガラスの汚れ具合を判断する。汚れ具合が所定の閾値以上である場合、車両1は、スピーカ7の音声やナビシステム5の表示画面により、ドライバに対し減速等の安全対策を指示する。
【0019】
滑り止め剤噴射システム21は、図3に示すように、タンク31、配管33、及び制御弁35を備えている。タンク31は金属製の密閉された耐圧容器であり、その中には、液状の滑り止め剤39と高圧窒素41とが充填されている。滑り止め剤39は、金属、砂、樹脂等の微粒子が、分散媒(例えば、水、アルコール等)中に懸濁したものである。
【0020】
配管33は、その一方の端部33aがタンク31の内部にあり、反対側の端部33bが、車両1のタイヤ43に対向している。反対側の端部33bはノズル形状を有している。制御弁35は、配管33の中間位置に設けられており、制御部25からの指令に応じて、配管33を開閉する。
【0021】
制御弁35が閉の場合、滑り止め剤39は配管33内を流れず、タンク31内に保持された状態を維持する。一方、制御弁35が開となると、滑り止め剤39は、高圧窒素41により配管33内に押し出され、端部33bから噴出し、タイヤ43の表面に付着する。滑り止め剤39が表面に付着したタイヤ43は、凍結した路面や積雪上において滑りにくくなる。
【0022】
自動ブレーキシステム23は、(ドライバのブレーキ操作が無くとも)車両1のブレーキを作動させる。制御部25は上記各構成を制御する周知のコンピュータであり、CPU、ROM、RAM等を備える。なお、車両1はその他、通常の車両と同様の構成を備えているが、その記載は省略する。
【0023】
また、車両1は、複数の制御モード(第1モード、第2モード、第3モード・・・)の間でモードを切り替えることができる。第(n+1)モードは、第nモードよりも、凍結した路面においてスリップしにくいモードである(n=1、2、3・・・)。
【0024】
各モード間におけるスリップしにくさの違いは、ABS11の作動条件、急加速や急操舵に対する制限処理により実現される。すなわち、スリップしにくいモードでは、スリップしやすいモードに比べて、ABS11が作動しやすくなり、ドライバがアクセルを所定量踏み込んでも加速が制限され、ドライバがハンドルを所定量回転させても、前輪の操舵角が制限される。
【0025】
車両1は初期においては第1モードの状態にあり、スリップ検出システム9でスリップを検出するごとに、第2、第3、第4・・・のモードに順次移行する。このことにより凍結した路面における車両1のスリップを低減できる。また、スリップ検出システム9でスリップを検出しない状態が所定時間継続すると、第1のモードに戻る。
【0026】
なお、送受信機3は、危険情報取得ユニットの一実施形態である。ナビシステム5は、自車位置情報取得ユニットの一実施形態である。ナビシステム5、スピーカ7、ABS11、HUD13、滑り止め剤噴射システム21、自動ブレーキシステム23、及び制御部25は、危険回避処理実行ユニットの一実施形態である。
【0027】
2.情報配信システム101の構成
情報配信システム101の構成を、図1図4図11に基づき説明する。情報配信システム101は、道路に関するインフラの1種であって、図1に示すように、コントロールセンター103、基地局105、第1の情報取得装置107、及び第2の情報取得装置109から成る。コントロールセンター103と、その他の構成とは有線の通信回線110により接続されている。
【0028】
コントロールセンター103は、制御部111、記憶装置113、及び通信インターフェイス115を備える。制御部111はCPU、ROM、RAM等を備える周知のコンピュータであり、コントロールセンター103の各構成を制御する。記憶装置113はHDD(ハードディスクドライブ)から成り、各種情報の書き込み、保存、読み出しが可能である。通信インターフェイス115は、基地局105、第1の情報取得装置107、及び第2の情報取得装置109との間の通信を行う。
【0029】
また、コントロールセンター103は、インターネット回線104に接続している。コントロールセンター103は、インターネット回線104を介して、携帯端末106及び車両1のナビシステム5と通信可能である。なお、コントロールセンター103の機能は、クラウドコンピュータにより実現されていてもよい。
【0030】
基地局105は、道路201に沿って、所定の距離ごとに複数設けられている。それぞれの基地局105は、図4に示すように、制御部117、通信インターフェイス119、及び送受信機121を備える。制御部117はCPU、ROM、RAM等を備える周知のコンピュータであり、基地局105の各構成を制御する。通信インターフェイス119は、コントロールセンター103との間の通信を行う。送受信機121は、車両1の送受信機3との間で、無線通信によって情報の送受信を行うものである。なお、基地局105は危険情報出力ユニットの一実施形態である。
【0031】
第1の情報取得装置107は、道路201に沿って、所定の距離ごとに複数設けられている。それぞれの第1の情報取得装置107は、図5に示すように、制御部123、通信インターフェイス125、カメラ127、赤外線カメラ129、及びレーダ131を備えている。制御部123はCPU、ROM、RAM等を備える周知のコンピュータであり、第1の情報取得装置107の各構成を制御する。通信インターフェイス125は、コントロールセンター103との間の通信を行う。
【0032】
カメラ127は、道路201の路面を撮影する。赤外線カメラ129は、道路201の路面の赤外線像を撮影する。レーダ131は、道路201に向けてミリ波帯のレーダ波を出力するとともに、そのレーダ波が反射した反射波を受信する。
【0033】
第2の情報取得装置109は、道路201が通過するトンネル203の近傍に設けられている。第2の情報取得装置109は、図6に示すように、制御部133、通信インターフェイス135、振動センサ137、カメラ139、音波出力機143、音波センサ145、光センサ147、及び導電率センサ149を備える。
【0034】
制御部133はCPU、ROM、RAM等を備える周知のコンピュータであり、第2の情報取得装置109の各構成を制御する。通信インターフェイス135は、コントロールセンター103との間の通信を行う。
【0035】
振動センサ137はトンネル203の天井又は側壁中に埋め込まれており、トンネル203の振動を検出する。トンネル203の崩落、変形に伴う、あるいは前兆となる振動があれば、振動センサ137により検出することができる。
【0036】
カメラ139は、図7に示すように、トンネル203における天井203Aの一端に取り付けられており、トンネル203内を撮影可能である。天井203Aには、一定の間隔で複数の棒205が取り付けられている。棒205は爪楊枝程度の大きさであり、下端205Aを除く部分は、軟質樹脂から成る。下端205Aには、光を反射し易い金属性の反射板が取り付けられている。
【0037】
トンネル203に崩落、変形等の異常がなければ、カメラ139で撮影する画像において、複数の棒205の下端205Aは、規則正しく(例えば、一直線上で等間隔に並び)配列される。
【0038】
一方、トンネル203の崩落、変形等により、棒205の一部又は全部の位置がずれたり、棒205の軸方向が変化したりすると、カメラ139で撮影する画像において、複数の棒205の下端205Aは、不規則に配列される。よって、カメラ139で撮影する画像における複数の下端205Aの配列の状態により、トンネル203の崩落、変形等の有無を判断できる。
【0039】
音波出力機143、及び音波センサ145は、図8に示すように、ともに、トンネル203の天井203Aに取り付けられている。音波出力機143は、天井203Aに向けて超音波を出力する。音波センサ145は、天井203Aにて反射した反射波を受信する。音波出力機143が超音波を当てた位置の近傍に、亀裂や空洞等の異常部があれば、その異常部に特有の反射波のパターンが音波センサ145によって検出される。よって、音波出力機143、及び音波センサ145により、トンネル203の異常の有無を検査することができる。
【0040】
音波出力機143、及び音波センサ145は、図示しないスライド機構により、相互の位置関係を一定に維持したまま、天井203Aの面に沿って移動可能であり、移動先で上記のとおり、異常の有無を検査することができる。よって、音波出力機143、及び音波センサ145は、トンネル203における広範囲の異常を検出することができる。
【0041】
光センサ147は、図9に示すように、トンネル203の一端であって、路面付近に設けられている。トンネル203のうち、反対側の端部付近にはレーザ射出装置207が設けられ、トンネル203の中央付近における天井203Aには、反射ミラー209が設けられている。
【0042】
トンネル203に崩落、変形等の異常がなければ、レーザ射出装置207から射出されたレーザ光は、反射ミラー209で反射し、光センサ147にて検出される。一方、トンネル203の崩落、変形等により、レーザ射出装置207、反射ミラー209、及び光センサ147のうちのいずれかの位置がずれたり、向きが変わったりすると、レーザ光は光センサ147を通らなくなり、検出されなくなる。よって、光センサ147でレーザ光を検出できるか否かにより、トンネル203の崩落、変形等の有無を判断できる。なお、反射ミラー209を複数箇所に設け、その複数の反射ミラー209で順次反射されたレーザ光を光センサ147で検出するようにしてもよい。
【0043】
導電率センサ149は、図10に示すように、一対の電極211、213とともに、トンネル203における天井203Aの内部に埋め込まれている。一対の電極211、213は互いに離間しており、導電率センサ149は、一対の電極211、213それぞれと電気的に導通している。
【0044】
ところで、トンネル203の天井203A、及び側壁は、モルタル、骨材とともに、導電性を有する炭素繊維が練り込まれた材料で形成されており、電極211、213間は一定の導電率を有する。導電率センサ149は、電極211、213間の導電率を検出し、出力する。
【0045】
もし、天井203A内のうち、電極211、213間の部分に亀裂や空洞が生じると、電極211、213間の導電率が変化する。よって、導電率センサ149で出力する導電率に基づき、天井203A内の亀裂や空洞を検出できる。
【0046】
また、導電率センサ149は、トンネル203に打ち込まれたボルトの表面に貼られたアルミ箔の導電性を検出するものであってもよい。トンネル203の崩落等によりアルミ箔が破れると導電性が変化するため、その導電性の変化から崩落等を検出することができる。
【0047】
なお、第2の情報取得装置109は、橋梁(高速道路上の橋梁を含む)の近傍に設けられていてもよい。この場合、振動センサ137、カメラ139、音波出力機143、音波センサ145、光センサ147、及び導電率センサ149を橋梁に取り付け、それらのセンサにより、橋梁の崩落、変形、及び振動を検出することができる。
【0048】
3.車両1及び情報配信システム101が実行する処理
(1)第1の情報取得装置107及び第2の情報取得装置109が道路に関する危険を検出する処理
第1の情報取得装置107は、所定時間ごとに、以下のようにして、道路に関する危険を検出する。
【0049】
路面の凍結、積雪:カメラ127又は赤外線カメラ129により路面を撮影し、その画像に、路面の凍結や積雪に特有のパターン(例えば、通常の路面より輝度や反射率の高い部分が存在する、白線の一部が覆い隠されている、走行中にスリップしていると推定される車両や足を滑らしている歩行者が存在する等)が表れているか否かを画像認識により判断する。特有のパターンが表れている場合は、路面の凍結、積雪の危険を検出する。
【0050】
異常挙動車:カメラ127又は赤外線カメラ129により道路上の動画を撮影し、異常な挙動(例えば対向車線にはみ出す、蛇行する、制限速度を大きく超過する、道路上を本来の走行方向とは逆の方向に走行(逆走)している等)を行う車両の有無を判断する。また、レーダ131により、異常な挙動を行う車両の有無を判断する。異常な挙動を行う車両がある場合は、異常な挙動を行う車両の危険を検出する。
【0051】
道路上に存在する物体(例えば動物の死骸等):カメラ127又は赤外線カメラ129により道路上の動画を撮影し、道路上の物体を避けるための異常な挙動(例えば、道路上の所定の地点を迂回する、所定の地点前で減速する、所定の地点前で車線の片側に寄る等)を行う車両の有無を判断する。また、レーダ131により、異常な挙動を行う車両の有無を判断する。上記の異常な挙動を行う車両がある場合、道路上に物体が存在する危険を検出する。
【0052】
また、異常な挙動(例えば、道路上の所定の地点を迂回する、所定の地点前で減速する、所定の地点前で車線の片側に寄る等)を行う車両に関する条件を設定し、その条件を充足した場合、道路上に物体が存在すると判断し、その条件を充足しなければ、道路上に物体は存在しないと判断することができる。その条件としては、例えば、異常な挙動を行う車両が、所定時間内に、所定台数以上、道路上の定点を通過するという条件が挙げられる。また、他の条件としては、異常な挙動を行う車両が所定台数以上連続しているという条件が挙げられる。
【0053】
上記の条件を設けることにより、実際には道路上に物体が存在しないのに、道路上に物体が存在すると誤って判断してしまうことを抑制できる。
照度不足:カメラ127により道路上の画像を撮影し、そのときのカメラ127の露出と、撮影した画像の輝度とから、道路上の照度を算出する。算出した照度が所定値未満である場合、照度不足の危険を検出する。
【0054】
路面のひび割れ、崩落:カメラ127又は赤外線カメラ129により路面を撮影し、その画像に、路面のひび割れや崩落に特有のパターンが表れているか否かを画像認識により判断する。特有のパターンが表れている場合は、路面のひび割れ、崩落の危険を検出する。
【0055】
故障又は損傷した車両:赤外線カメラ129により、道路上を走行する車両、又は道路上に停止している車両を撮影する。これらの車両は、故障又は損傷があれば、外部に赤外線を放射する機能を有している。赤外線カメラ129の画像中に、その赤外線のパターンが表れていれば、故障又は損傷した車両による危険を検出する。
【0056】
ドライバが走行中に携帯電話を使用している車両:カメラ127又は赤外線カメラ129を用いて走行中の車両を撮影する。そして、画像認識により、携帯電話を使用しているドライバの像を認識できるか否かを判断する。携帯電話を使用しているドライバの像が認識できれば、ドライバが走行中に携帯電話を使用している車両による危険を検出する。
【0057】
また、走行中の車両から携帯電話の電波を検出すれば、ドライバが走行中に携帯電話を使用している車両による危険を検出する。また、車両が、その車両のドライバによる携帯電話の使用を検出し、そのときに特有の信号を外部に出力する機能を有していてもよい。この場合、その特有の信号を受信すれば、ドライバが走行中に携帯電話を使用している車両による危険を検出する。
【0058】
ドライバが急病等の状態にある車両:カメラ127又は赤外線カメラ129を用いて走行中の車両を撮影する。そして、画像認識により、急病、失神、酩酊、居眠り等の状態にあるドライバ(例えば、ハンドルに覆いかぶさる姿勢や、横方向に大きく傾いた姿勢をとっていたり、所定時間以上連続して目を閉じているドライバ)の像を認識できるか否かを判断する。この像が認識できれば、ドライバが急病、失神、酩酊、居眠り等の状態にある車両による危険を検出する。
【0059】
また、車両が、ドライバの生体情報(脳波、脈波、心電等)を検出し、その検出結果を外部に送信する機能を有していてもよい。この場合、急病、失神、酩酊、居眠り等に対応する検出結果を受信すれば、ドライバが急病、失神、酩酊、居眠り等の状態にある車両による危険を検出する。
【0060】
道路上に存在する水溜り:カメラ127又は赤外線カメラ129を用いて路面を撮影し、画像認識により水溜りを認識すれば、水溜りによる危険を検出する。また、過去に路面を撮影した画像中で水溜りを認識し、天候が所定の条件(例えば、その時点から所定期間内に所定量以上の雨が降ったという条件)を満たすならば、その画像中の水溜りの位置に、水溜りによる危険を検出する。
【0061】
自動運転中の車両:車両は、自動運転中、その場合に特有の信号を外部に出力する。その特有の信号を受信すれば、自動運転中の車両による危険を検出する。
また、自動運転中の車両とともに、自動運転の安全性を低下させる状態(例えば、自動運転の制御に用いられる道路の白線、センターライン等が積雪等のため、カメラやセンサで識別できない状態)を検出してもよい。
【0062】
この場合、自動運転の安全性を低下させる状態であるか否かにより、自動運転中の車両による危険の程度に段階をつけることができる。例えば、自動運転中の車両を検出し、しかも、自動運転の安全性を低下させる状態であれば、自動運転中の車両による危険の程度が高いと判断する。一方、自動運転中の車両を検出しても、自動運転の安全性を低下させる状態でなければ、自動運転中の車両による危険の程度は低いと判断する。
【0063】
歩行者:携帯電話、ICカード等が発する、微弱な電波を受信する。微弱な電波の受信には、例えば、導波管を使用することができる。また、その電波の発信源の位置を経時的に観測し、発信源の移動速度を算出する。発信源の移動速度が所定の閾値(例えば10km/h)以下であれば、携帯電話、ICカード等を保持する歩行者が存在すると判断し、歩行者による危険を検出する。
【0064】
また、携帯電話が充電中か否かを識別してもよい。充電中であれば、携帯電話は車内にあり、歩行者に保持されてはいないので、歩行者による危険を検出しない。
老人が運転している車両:カメラ127又は赤外線カメラ129を用いて走行中の車両を撮影する。そして、画像認識により、ドライバが老人であるか否かを判断する。ドライバが老人であれば、老人が運転している車両による危険を検出する。
【0065】
また、第2の情報取得装置109は、上述したとおり、振動センサ137、カメラ139、音波出力機143、音波センサ145、光センサ147、及び導電率センサ149により、トンネル203の崩落、変形等の異常(道路に関する危険の一形態)を検出することができる。
【0066】
第1の情報取得装置107及び第2の情報取得装置109は、上記のように検出した道路に関する危険の種類と、その危険を検出した位置(緯度、経度)と、その危険を検出した時刻とをセットにした情報(以下では、道路に関する危険の情報とする)を記憶しておき、後述するように、コントロールセンター103からの要求に応じて送信する。
(2)車両1が道路に関する危険を検出する処理
車両1は、走行中、所定時間ごとに、以下のようにして、道路に関する危険を検出する。
【0067】
路面の凍結、積雪:カメラ15又は赤外線カメラ17により路面を撮影し、その画像に、路面の凍結や積雪に特有のパターン(例えば、通常の路面より輝度や反射率の高い部分が存在する、白線の一部が覆い隠されている、走行中にスリップしていると推定される車両や足を滑らしている歩行者が存在する等)が表れているか否かを画像認識により判断する。特有のパターンが表れている場合は、路面の凍結、積雪の危険を検出する。なお、カメラ15又は赤外線カメラ17により撮影する場所は、車両1の前方であってもよいし、車両1の真下であってもよい。
【0068】
また、カメラ15又は赤外線カメラ17を用いて路面の凍結、積雪の危険を検出する場合、凍結、積雪が存在する可能性がある場所に、ライトを当てることができる。このライトとしては、凍結、積雪のある部分と、それ以外の部分との見え方(色、輝度、反射率等)の差が一層明確となる波長、照度のものを用いることができる。ライトは車両1のヘッドライトであってもよいし、危険検出専用のライトであってもよい。
【0069】
また、操舵量及びブレーキ圧が所定値未満の条件下で、スリップ検出システム9がスリップを検出したり、ABS11が作動した場合も、路面の凍結、積雪の危険を検出する。
異常挙動車:カメラ15又は赤外線カメラ17により道路上の動画を撮影し、異常な挙動(例えば対向車線にはみ出す、蛇行する、制限速度を大きく超過する、道路上を本来の走行方向とは逆の方向に走行(逆走)している等)を行う車両の有無を判断する。また、レーダ19により、異常な挙動を行う車両の有無を判断する。異常な挙動を行う車両がある場合は、異常な挙動を行う車両の危険を検出する。
【0070】
道路上に存在する物体(例えば動物の死骸等):カメラ127又は赤外線カメラ129により道路上の動画を撮影し、道路上の物体を避けるための異常な挙動(例えば、道路上の所定の地点を迂回する、所定の地点前で減速する、所定の地点前で車線の片側に寄る等)を行う車両の有無を判断する。また、レーダ19により、異常な挙動を行う車両の有無を判断する。上記の異常な挙動を行う車両がある場合、道路上に物体が存在する危険を検出する。
【0071】
また、異常な挙動(例えば、道路上の所定の地点を迂回する、所定の地点前で減速する、所定の地点前で車線の片側に寄る等)を行う車両に関する条件を設定し、その条件を充足した場合、道路上に物体が存在すると判断し、その条件を充足しなければ、道路上に物体は存在しないと判断することができる。その条件としては、例えば、異常な挙動を行う車両が、所定時間内に、所定台数以上、道路上の定点を通過するという条件が挙げられる。また、他の条件としては、異常な挙動を行う車両が所定台数以上連続しているという条件が挙げられる。
【0072】
上記の条件を設けることにより、実際には道路上に物体が存在しないのに、道路上に物体が存在すると誤って判断してしまうことを抑制できる。
照度不足:カメラ15により道路上の画像を撮影し、そのときのカメラ15の露出と、撮影した画像の輝度とから、道路上の照度を算出する。算出した照度が所定値未満である場合、照度不足の危険を検出する。
【0073】
路面のひび割れ、崩落:カメラ15又は赤外線カメラ17により路面を撮影し、その画像に、路面のひび割れや崩落に特有のパターンが表れているか否かを画像認識により判断する。特有のパターンが表れている場合は、路面のひび割れ、崩落の危険を検出する。
【0074】
故障又は損傷した車両:赤外線カメラ17により、道路上を走行する車両、又は道路上に停止している車両を撮影する。これらの車両は、故障又は損傷があれば、外部に赤外線を放射する機能を有している。赤外線カメラ17の画像中に、その赤外線のパターンが表れていれば、故障又は損傷した車両による危険を検出する。
【0075】
ドライバが走行中に携帯電話を使用している車両:カメラ15又は赤外線カメラ17を用いて走行中の車両を撮影する。そして、画像認識により、携帯電話を使用しているドライバの像を認識できるか否かを判断する。携帯電話を使用しているドライバの像が認識できれば、ドライバが走行中に携帯電話を使用している車両による危険を検出する。
【0076】
また、走行中の車両から携帯電話の電波を検出すれば、ドライバが走行中に携帯電話を使用している車両による危険を検出する。また、車両が、その車両のドライバによる携帯電話の使用を検出し、そのときに特有の信号を外部に出力する機能を有していてもよい。この場合、その特有の信号を受信すれば、ドライバが走行中に携帯電話を使用している車両による危険を検出する。
【0077】
ドライバが急病等の状態にある車両:カメラ15又は赤外線カメラ17を用いて走行中の車両を撮影する。そして、画像認識により、急病、失神、酩酊、居眠り等の状態にあるドライバ(例えば、ハンドルに覆いかぶさる姿勢や、横方向に大きく傾いた姿勢をとっていたり、所定時間以上連続して目を閉じているドライバ)の像を認識できるか否かを判断する。この像が認識できれば、ドライバが急病、失神、酩酊、居眠り等の状態にある車両による危険を検出する。
【0078】
また、車両が、ドライバの生体情報(脳波、脈波、心電等)を検出し、その検出結果を外部に送信する機能を有していてもよい。この場合、急病、失神、酩酊、居眠り等に対応する検出結果を受信すれば、ドライバが急病、失神、酩酊、居眠り等の状態にある車両による危険を検出する。
【0079】
道路上に存在する水溜り:カメラ15又は赤外線カメラ17を用いて路面を撮影し、画像認識により水溜りを認識すれば、水溜りによる危険を検出する。また、過去に路面を撮影した画像中で水溜りを認識し、天候が所定の条件(例えば、その時点から所定期間内に所定量以上の雨が降ったという条件)を満たすならば、その画像中の水溜りの位置に、水溜りによる危険を検出する。
【0080】
自動運転中の車両:車両は、自動運転中、その場合に特有の信号を外部に出力する。その特有の信号を受信すれば、自動運転中の車両による危険を検出する。
また、自動運転中の車両とともに、自動運転の安全性を低下させる状態(例えば、自動運転の制御に用いられる道路の白線、センターライン等が積雪等のため、カメラやセンサで識別できない状態)を検出してもよい。
【0081】
この場合、自動運転の安全性を低下させる状態であるか否かにより、自動運転中の車両による危険の程度に段階をつけることができる。例えば、自動運転中の車両を検出し、しかも、自動運転の安全性を低下させる状態であれば、自動運転中の車両による危険の程度が高いと判断する。一方、自動運転中の車両を検出しても、自動運転の安全性を低下させる状態でなければ、自動運転中の車両による危険の程度は低いと判断する。
【0082】
歩行者:携帯電話、ICカード等が発する、微弱な電波を受信する。微弱な電波の受信には、例えば、導波管を使用することができる。また、その電波の発信源の位置を経時的に観測し、発信源の移動速度を算出する。発信源の移動速度が所定の閾値(例えば10km/h)以下であれば、携帯電話、ICカード等を保持する歩行者が存在すると判断し、歩行者による危険を検出する。
【0083】
また、携帯電話が充電中か否かを識別してもよい。充電中であれば、携帯電話は車内にあり、歩行者に保持されてはいないので、歩行者による危険を検出しない。
車両1の横(左側、又は右側)をすり抜ける自転車又は二輪車:自転車又は二輪車は、電波、赤外線、可視光等を発する装置を備えている。それらの電波、赤外線、可視光等は、自転車又は二輪車に特有の特徴(波長、強弱のパターン等)を有することが好ましい。また、それらの電波、赤外線、可視光等は指向性を有し、主として車両1の側に向けて射出されることが好ましい。車両1は、その横方向において、上述した電波、赤外線、可視光等を検出すれば、車両1の横をすり抜ける自転車又は二輪車による危険を検出する。
【0084】
老人が運転している他の車両:カメラ15又は赤外線カメラ17を用いて周囲の車両を撮影する。そして、画像認識により、ドライバが老人であるか否かを判断する。ドライバが老人であれば、老人が運転している車両による危険を検出する。
【0085】
車両1は、上記のように検出した道路に関する危険の種類と、その危険を検出した位置(緯度、経度)と、その危険を検出した時刻とをセットにした情報(道路に関する危険の情報)を記憶しておき、後述するように、コントロールセンター103からの要求に応じて送信する。
(3)コントロールセンター103が道路に関する危険の情報を蓄積する処理
コントロールセンター103は、図11のフローチャートに示す処理により、道路に関する危険の情報を蓄積する。この処理は所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0086】
ステップ1では、第1の情報取得装置107、第2の情報取得装置109、及び車両1に対し、道路に関する危険の情報の送信を要求する。この要求は、第1の情報取得装置107、及び第2の情報取得装置109に対しては、有線の通信回線110を介して行う。また、車両1に対しては、基地局105の送受信機121から、要求信号を送信することで行う。
【0087】
なお、第1の情報取得装置107、第2の情報取得装置109、及び車両1は、コントロールセンター103からの情報送信要求を受けた場合、前回の情報送信の後に新たに記憶した、道路に関する危険の情報がある場合は、その情報をコントロールセンター103に送信する。第1の情報取得装置107、及び第2の情報取得装置109の場合は、有線の通信回線110を介して、道路に関する危険の情報をコントロールセンター103に送信する。車両1の場合は、道路に関する危険の情報は、まず、車両1の送受信機3から近傍の基地局105に送信され、そこから、コントロールセンター103に転送される。
【0088】
第1の情報取得装置107、第2の情報取得装置109、及び車両1から送信される道路に関する危険の情報には、上述したように、道路に関する危険の種類(例えば、路面の凍結、積雪、異常挙動車の存在、道路上の物体、照度不足、トンネルの崩落や変形、路面のひび割れや崩落)、その危険が存在する位置(緯度、経度)、その危険が検出された時刻が含まれる。
【0089】
ステップ2では、第1の情報取得装置107、第2の情報取得装置109、及び車両1から、道路に関する危険の情報を新たに受信したか否かを判断する。受信した場合はステップ3に進み、受信しなかった場合は本処理を終了する。
【0090】
ステップ3では、新たに受信した、道路に関する危険の情報を加え、危険情報データベースを更新する。ここで、危険情報データベースとは、コントロールセンター103の記憶装置113(図1参照)に作成されている、道路に関する危険の情報のデータベースであって、図12に示す構造を有する。すなわち、道路に関する危険の情報は、それぞれ、識別番号を付され、危険の種類、その危険が存在する位置(緯度、経度)、及び危険が検出された時刻がセットとなって記憶されている。
【0091】
なお、道路に関する危険の情報は、危険情報データベースに記憶された後、所定時間が経過すると自動的に消去される。
(4)情報配信システム101が危険に関する情報を配信する処理
コントロールセンター103は、定期的に、各基地局105に対し、それぞれの基地局105に対応する、道路に関する危険の情報を送信する。例えば、A地点に存在する基地局105に対しては、A地点から一定の範囲内で検出された、道路に関する危険の情報を危険情報データベースから定期的に読み出し、送信する。各基地局105は、コントロールセンター103から送信された、道路に関する危険の情報を常時送信する。送信される情報には、道路に関する危険の種類、その危険が存在する位置(緯度、経度)、及びその危険が検出された時刻が含まれる。
【0092】
基地局105は、道路に関する危険の情報専用の送信設備であってもよいし、VICS(Vehicle Information and Communication System,登録商標)情報の送信設備であってもよい。VICS情報の送信設備である場合、基地局105は、VICS情報の一つとして、道路に関する危険の情報を送信する。
【0093】
なお、車両1は、ある基地局105の近傍を走行しているとき、その基地局105が送信している、道路に関する危険の情報(その基地局105から一定の範囲内で検出された道路に関する危険の情報)を、送受信機3を用いて受信することができる。よって、車両1は、それが存在する位置に応じた、道路に関する危険の情報を受信することができる。
【0094】
(5)走行中の車両1が実行する処理(その1)
走行中の車両1が所定時間ごとに繰り返し実行する処理を図13のフローチャートに基づき説明する。
【0095】
ステップ11では、基地局105が送信した、道路に関する危険の情報を受信したか否かを判断する。受信した場合はステップ12に進み、受信しなかった場合は本処理を終了する。
【0096】
ステップ12では、車両1のその時点における位置情報及び進行方向を取得する。
ステップ13では、道路に関する危険の情報に含まれる、危険の位置情報と、前記ステップ12で取得した車両1の位置情報及び進行方向とに基づき、以下の条件C1、C2の両方が成立するか否かを判断する。
【0097】
C1:危険の位置と、車両1の位置とが一定距離内にある。
C2:車両1の進行方向上に危険が存在する。
条件C1、C2の両方が成立する場合はステップ14に進み、一方でも成立しない場合は本処理を終了する。
【0098】
なお、ステップ13の処理は、条件C1、C2のうちの一方でも成立すればステップ14に進み、両方が成立しなければ本処理を終了するものであってもよい。また、ステップ13の処理は、条件C1が成立すればステップ14に進み、成立しなければ本処理を終了するものであってもよい。また、ステップ13の処理は、条件C2が成立すればステップ14に進み、成立しなければ本処理を終了するものであってもよい。
【0099】
ステップ14では、道路に関する危険を回避するための危険回避処理を実行する。この危険回避処理は、道路に関する危険の種類に応じて予め定められているものであり、例えば、以下のものがある。
【0100】
(i)道路に関する危険の種類が路面の凍結の場合
凍結している場所に至る前に、自動ブレーキシステム23によりブレーキを作動し、減速する。
【0101】
また、ABS11が作動する基準を通常より緩くする。
また、滑り止め剤噴射システム21を使用する。
また、スピーカ7により、凍結を警告する内容の音声警報を発する。
【0102】
また、ナビシステム5により、凍結を警告する内容の警告表示を行うとともに、凍結している場所を避ける代替ルートを表示する。
また、HUD13を用いて、車両1のフロントガラスに、凍結している部分を表示する。すなわち、フロントガラスのうち、車両1のドライバの視点から見て、凍結している箇所と重なる部分に、フロントガラスの他の部分とは異なる色を表示する。
【0103】
(ii)道路に関する危険の種類が積雪の場合
凍結の場合と同様の危険回避処理を行う。
また、HUD13を用いて、車両1のフロントガラスに、積雪がない場合に道路上に見えるはずの事物(例えば図14Bに示す道路の境界線301、センターライン303、停止線305等)の画像を表示する。この画像において、境界線301、センターライン303、停止線305等の事物は、ドライバの視点から見て、積雪がないと仮定した場合にそれらが見えるはずの位置に表示される。よって、実際には、図14Aに示すように、車両1の前方が積雪で覆われ、上記の事物が見えない状況においても、HUD13の表示によって、図14Bに示すように、ドライバには、あたかも、積雪がなく、上記の事物が表れているように見える。
【0104】
なお、HUD13で表示する画像は、積雪がないときに撮影した、同じ場所の画像(以下、原画像とする)から作成することができる。原画像は、ドライバの視点とは異なる位置のカメラで撮影された画像であってもよい。この場合、周知の方法で画像を加工して、ドライバの視点からフロントガラス方向に見える画像とすることができる。原画像は、車両1のカメラ15で撮影し、車両1に保存していてもよいし、インフラから入手してもよいし、インターネット等の電気通信回線上で公開されている画像を利用してもよい。
【0105】
(iii)道路に関する危険の種類がトンネル203の崩落である場合
トンネル203に至る前に、自動ブレーキシステム23によりブレーキを作動し、車両1を停止する。
【0106】
また、スピーカ7により、トンネルの崩落を警告する内容の音声警報を発する。
また、車両1がトンネル203の入口に未だ到達していなければ、ナビシステム5により、トンネル203を避ける代替ルートを表示する。一方、車両1が既にトンネル203内にあるならば、ナビシステム5により、脱出経路、非常口を表示する。
【0107】
(iv)道路に関する危険の種類が、異常挙動車、故障又は損傷した車両、ドライバが携帯電話を使用中の車両、ドライバが急病等の状態にある車両、老人が運転している車両である場合
それらの車両の手前で、自動ブレーキシステム23によりブレーキを作動し、減速する。また、スピーカ7により、それらの車両の存在に関する音声警報を発する。また、それらの車両との車間距離を所定値以上に保つようにする。また、自動操舵によって車両1の進路を変更し、それらの車両を避ける。また、ナビシステム5により、それらの車両を避ける代替ルートを表示する。また、それらの車両に近づいたとき、クラクションを鳴らす。
【0108】
(v)道路に関する危険の種類が水溜り、道路上に存在する物体である場合
水溜りや物体の場所に至る前に、自動ブレーキシステム23によりブレーキを作動し、減速する。また、スピーカ7により、水溜りや物体の存在に関する音声警報を発する。また、自動操舵によって車両1の進路を変更し、水溜りや物体を避ける。
【0109】
(vi)道路に関する危険の種類が、自動運転中の車両である場合
自動運転中の車両の手前で、自動ブレーキシステム23によりブレーキを作動し、減速する。また、スピーカ7により、自動運転中の車両に関する音声警報を発する。また、自動運転中の車両との車間距離を所定値以上に保つようにする。また、ナビシステム5により、自動運転中の車両を避ける代替ルートを表示する。
【0110】
(vii)道路に関する危険の種類が歩行者である場合
歩行者の手前で、自動ブレーキシステム23によりブレーキを作動し、減速する。また、スピーカ7により、歩行者の存在に関する音声警報を発する。また、自動操舵によって車両1の進路を変更し、歩行者を避ける。また、歩行者に近づいたとき、クラクションを鳴らす。
【0111】
(viii)その他
道路に関する危険の種類が、路上に存在する、背の低い物体(例えば、犬、猫、倒れている人等)である場合、車両1の車高を上げて、その物体との接触を抑制する。また、道路に関する危険の種類が、車両1の上方に存在する物体(例えば、トンネル、歩道橋、看板、橋梁、横方向に張り出した木の枝等)である場合、車両1の車高を下げて、その物体との接触を抑制する。なお、車両1の車高は、周知の機構により上下させることができる。
【0112】
(6)走行中の車両1が実行する処理(その2)
走行中の車両1が所定時間ごとに繰り返し実行する処理を図17のフローチャートに基づき説明する。
【0113】
ステップ31では、基地局105が送信した、道路に関する危険の情報を所定時間内に受信したか否かを判断する。受信した場合はステップ32に進み、受信しなかった場合はステップ33に進む。
【0114】
ステップ32では、前記ステップ31で受信したと判断した、道路に関する危険の情報を、送受信機3を用いて送信する。なお、車両1の周囲(例えば、車両1の後方)に位置する他の車両は、送信した情報を受信し、その情報に基づき危険回避処理を実行することができる。
【0115】
ステップ33では、車両1が道路に関する危険を所定時間内に検出したか否かを判断する。検出した場合はステップ34に進み、検出しなかった場合はステップ35に進む。
ステップ34では、前記ステップ33で検出したと判断した、道路に関する危険の情報を、送受信機3を用いて送信する。なお、車両1の周囲(例えば、車両1の後方)に位置する他の車両は、送信した情報を受信し、その情報に基づき危険回避処理を実行することができる。
【0116】
ステップ35では、車両1が危険回避処理を実行中であるか否かを判断する。危険回避処理を実行中である場合はステップ36に進み、実行中でない場合は本処理を終了する。
ステップ36では、危険回避処理を実行中である旨と、道路に関する危険の種類と、危険回避処理の種類とを、送受信機3を用いて送信する。なお、車両1の周囲(例えば、車両1の後方)に位置する他の車両は、車両1が送信した情報を受信し、その情報に基づき、車両1との衝突等を避けるための処理(例えば、減速、停止、針路変更等)を実行することができる。
【0117】
また、ステップ32、34、36における情報の送信は、可視光通信を用いて行ってもよい。特に、道路がカーブしており、そのカーブ付近にミラーが設置されている場合は、車両1が照射する可視光をミラーで反射させ、カーブの向こう側に位置する他の車両に到達させることができる。
【0118】
(7)コントロールセンター103が実行する携帯端末106への情報配信処理
ユーザ(車両1のドライバであってもよいし、それ以外の者であってもよい)は、インターネット回線104を介して、走行経路情報をコントロールセンター103に送信することができる。この走行経路情報には、過去に使用した走行経路に関するものと、将来使用する予定の走行経路に関するものとがある。
【0119】
過去に使用した走行経路に関する走行経路情報には、ユーザの識別番号、走行経路(出発点から到達点に至るまでの地図データ上の経路)、及びその走行経路を使用した日時が含まれる。
【0120】
また、将来使用する予定の走行経路に関する走行経路情報には、ユーザの識別番号、走行経路(出発点から到達点に至るまでの地図データ上の経路)、及びその走行経路を使用する予定の日時が含まれる。
【0121】
走行経路情報の送信は、ユーザが保有する携帯端末(例えば携帯電話(例えばいわゆるスマートフォン)、携帯型ナビゲーションシステム、タブレット端末、ノートパソコン等)106で行ってもよいし、車両1のナビシステム5で行ってもよい。
【0122】
なお、携帯端末106やナビシステム5は、ユーザの入力に応じて走行経路を設定する機能、インターネット回線104に接続して情報を送受信する機能等、周知の機能を有する。
【0123】
コントロールセンター103は、ユーザが送信した走行経路情報を蓄積し、図15に示す走行経路情報データベースを記憶装置113に作成する。走行経路情報データベースは、ユーザごとに区分され、各ユーザの区分内に、そのユーザの走行経路が記憶されている。
【0124】
また、走行経路情報が、過去に使用した走行経路に関するもの(例えば図15におけるA−1、A−2、B−1、C−1〜4)である場合は、それぞれの走行経路に関連付けて、その走行経路が使用された累積使用回数、及び使用された日時(曜日を含む)が記憶されている。また、走行経路情報が、将来使用する予定の走行経路に関するもの(例えば図15におけるA−3、B−2)である場合は、それぞれの走行経路に関連付けて、使用する予定日時が記憶されている。
【0125】
走行経路情報データベースは、コントロールセンター103が新たな走行経路情報を受信するごとに更新される。
コントロールセンター103は、上記の走行経路情報データベースを使用して、図16のフローチャートに示す処理を所定時間ごとに繰り返し実行する。
【0126】
図16のステップ21では、走行経路情報データベースと、危険情報データベースとを照合し、走行経路情報データベースに記憶された各走行経路のそれぞれについて、走行経路上に危険情報データベースに記憶された道路に関する危険が存在するか否かをチェックする。
【0127】
ステップ22では、走行経路情報データベースに記憶された走行経路の中に、走行経路上に道路に関する危険が存在するもの(以下、危険存在走行経路とする)があるか否かを判断する。危険存在走行経路がある場合はステップ24に進み、ない場合は本処理を終了する。
【0128】
ステップ24では、危険存在走行経路が、以下の報知条件C3、C4、C5を充足するか否かを判断する。
C3:危険存在走行経路の累積使用回数が所定の閾値以上である。
【0129】
C4:過去に危険走行経路を使用した曜日が、その日の曜日と一致する。
C5:危険走行経路を使用する予定日が、その日である。
上記報知条件C3〜C5のうちのいずれか1つでも充足する場合はステップ25に進み、いずれも充足しない場合は本処理を終了する。
【0130】
ステップ25では、危険走行経路に対応するユーザに、走行経路上に道路に関する危険が存在する旨の電子メールを送信する。その電子メールには、危険を検出した場所を避ける代替の走行経路を表示する。電子メールの送信先は、ユーザが保有する携帯端末106であってもよいし、ユーザが乗車する車両1のナビシステム5であってもよい。
【0131】
なお、ユーザのメールアドレスは、走行経路情報データベースに記憶されている。ユーザは、コントロールセンター103に送信する走行経路情報にメールアドレスを含めておくことができる。
【0132】
4.車両1及び情報配信システム101が奏する効果
(1)車両1は、道路に関する危険を検出し、その危険を回避する処理を実行することができる。その結果、車両1の安全性が向上する。
【0133】
(2)情報配信システム101は、道路に関する危険を検出し、その危険の情報を車両1に配信することができる。特に、情報配信システム101は、車両1では検出できない、車両1から遠い場所の危険や、車両1では検出することが困難な種類の危険(例えばトンネル203の崩落等)も検出し、それらの危険の情報を車両1に配信することができる。その結果、車両1の安全性が向上する。
【0134】
(3)情報配信システム101は、車両1の走行経路上に危険が存在する場合、車両1にその旨を報知し、また、危険を検出した場所を避ける代替の走行経路を送信する。そのことにより、車両1の安全性が向上する。
【0135】
(4)車両1は、自らが検出した道路に関する危険の情報や、情報配信システム101から受信した道路に関する危険の情報を、車両1の周囲に送信することができる。車両1の周囲に位置する他の車両は、その情報を受信し、危険回避処理を実行することができる。
【0136】
(5)車両1は、危険回避処理の実行中、危険回避処理を実行中である旨と、道路に関する危険の種類と、危険回避処理の種類とを、車両1の周囲に送信する。車両1の周囲に位置する他の車両は、それらの情報を受信し、危険回避処理を実行中の車両1との衝突等を避けるための処理(例えば、減速、停止、針路変更等)を実行することができる。
【0137】
<第2の実施形態>
1.車両1の構成
本実施形態における車両1の構成を図18、及び図19に基づき説明する。車両1は、基本的には前記第1の実施形態と同様の構成を有している。車両1は、さらに、一対の赤外線センサ151、153を備えている。赤外線センサ151、153は、図19に示すように、車両1の両側面のうち、前寄りの位置に取り付けられている。赤外線センサ151、153は、車両1の横方向から照射された赤外線を検出することができる。
【0138】
なお、図19に示すように、道路201沿いに、ゲート部材215を設置することができる。ゲート部材215は、道路201を横切る方向に赤外線ビーム217を照射する。赤外線ビーム217の高さは、赤外線センサ151、153の高さと同じである。道路201を走行中の車両1がゲート部材215に至ると、赤外線センサ151、153が赤外線ビーム217を検出する。
【0139】
ゲート部材215は、赤外線ビーム217を常時照射してもよいし、予め設定された時間帯に赤外線ビーム217を照射してもよいし、外部からの指示に応じて赤外線ビーム217を照射してもよい。
【0140】
2.車両1が実行する処理
本実施形態の車両1は、基本的には前記第1の実施形態と同様の処理を実行する。車両1は、さらに、走行中、図20に示す処理を所定時間ごとに繰り返し実行する。図20のステップ41では、赤外線センサ151、153のうちの少なくとも一方で赤外線を検出したか否かを判断する。赤外線を検出した場合はステップ42に進み、検出しなかった場合は本処理を終了する。ステップ42では、車両1を停止する処理を実行する。
【0141】
3.車両1が奏する効果
(1)車両1は、前記第1の実施形態と略同様の効果を奏することができる。
(2)車両1は、ゲート部材215において停止することができる。ゲート部材215を、車両1が侵入すべきではない領域(例えば、工事現場、災害現場、交通事故現場、通学路等)の手前に設置しておけば、車両1がその領域に侵入することを抑制できる。
【0142】
4.変形例
前記ステップ42で実行する処理は、例えば、車両1を一定の速度以下に減速する処理であってもよい。また、前記ステップ42で実行する処理は、スピーカ7により、音声警報を発する処理であってもよい。
【0143】
また、赤外線ビーム217の波長、振幅などを時間の経過とともに変化させ、赤外線ビーム217で情報を車両1に伝えてもよい。この場合、車両1は、その情報の内容に応じた処理を実行することができる。
【0144】
また、赤外線センサ151、153の代わりに、超音波、レーダ波、可視光等を検出するセンサを車両1に取り付けてもよい。この場合、ゲート部材215として、赤外線ビーム217の代わりに、超音波、レーダ波、可視光等を照射するものを用いる。
【0145】
<第3の実施形態>
1.車両1の構成
本実施形態の車両1は、前記第1の実施形態と同様の構成を有している。
【0146】
2.車両1が実行する処理
本実施形態の車両1は、基本的には前記第1の実施形態と同様の処理を実行する。ただし、車両1は、図13におけるステップ14の危険回避処理として、図21に示す処理を実行する。
【0147】
図21のステップ51では、カメラ15、赤外線カメラ17、レーダ19、ナビシステム5等を用いて、車両1の周囲の状況を取得する。周囲の状況としては、道路201の形状(例えば、直線であるか、カーブであるか、カーブである場合はその曲率はどの程度か、道幅はどの程度か等)、道路201の傾斜(傾斜の向き、傾斜の大きさ等)、周囲の車両(車両1と同方向に走行している車両、対向車、路側に駐車している車両等)の有無、周囲の車両と自車両1との距離等が挙げられる。
【0148】
ステップ52では、前記ステップ51で取得した周囲の状況に基づき、受信した道路に関する危険(図13のステップ11参照)の程度が高いか否かを判断する。例えば、道路に関する危険の種類が路面の凍結又は積雪である場合、道路201がカーブしていたり、道路201に傾斜があったり、周囲に車両が存在すれば、道路に関する危険の程度が高く、それ以外の場合は道路に関する危険の程度が低いと判断する。道路に関する危険の程度が高い場合はステップ53に進み、それ以外の場合は本処理を終了する。
【0149】
ステップ53では、車内カメラ20を用いて車両1の車室内を撮影し、車両1の車室内の状況を取得する。
ステップ54では、前記ステップ53で取得した車室内の状況に基づき、道路に関する危険に応じて危険回避処理を実行すると、車両1の車室内で危険が生じるおそれがあるか否かを判断する。
【0150】
例えば、前記ステップ53で取得した車両1の車室内の状況が、立ち上がっている乗員がいたり、シートベルトを締めていない乗員がいる状況であって、危険回避処理が、車両1の減速や針路変更を伴うものであるならば、危険回避処理を実行すると、車両1の車室内で危険(乗員の転倒等)が生じるおそれがあると判断する。
【0151】
一方、立ち上がっている乗員やシートベルトを締めていない乗員がいなければ、危険回避処理を実行しても車両1の車室内で危険が生じるおそれはないと判断する。また、立ち上がっている乗員やシートベルトを締めていない乗員がいても、危険回避処理の種類が、車両1の減速や針路変更を伴わないもの(例えば、クラクションを鳴らす処理等)である場合は、危険回避処理を実行しても車両1の車室内で危険が生じるおそれはないと判断する。
【0152】
車両1の車室内で危険が生じるおそれがない場合はステップ55に進み、危険回避処理を実行する。一方、車両1の車室内で危険が生じるおそれがある場合は、危険回避処理を実行することなく、本処理を終了する。
【0153】
3.車両1が奏する効果
(1)車両1は、前記第1の実施形態と略同様の効果を奏することができる。
(2)車両1は、その周囲の状況に基づき、道路に関する危険の程度を判断する。そして、道路に関する危険の程度が高いことを条件として、危険回避処理を実行する。そのため、必要性が低い危険回避処理の実行を抑制できる。
【0154】
(3)車両1は、危険回避処理の実行により生じる、車両1の車室内における危険を抑制できる。
4.変形例
図21に示す処理において、ステップ52で肯定判断した場合は、直接ステップ55に進んでもよい。また、図21に示す処理において、ステップ51、52の処理は省略してもよい。また、ステップ54で肯定判断した場合、通常より穏やかな(例えば、車両1の減速や針路変更を通常より穏やかに行う)危険回避処理を実行するようにしてもよい。
【0155】
<第4の実施形態>
1.車両1の構成
本実施形態における車両1の構成を図22、及び図23に基づき説明する。車両1は、基本的には前記第1の実施形態と同様の構成を有している。車両1は、さらに、右側圧力計155及び左側圧力計157を備えている。右側圧力計155及び左側圧力計157は、気圧を測定可能な計器である。
【0156】
図23に示すように、右側圧力計155は車両1の右側面に取り付けられており、左側圧力計157は車両1の左側面に取り付けられている。また、車両1は、ハンドルアシストの機能(左右のうち一方の側へのハンドルの回転をモータ等の駆動力を用いて補助する機能)を有している。
【0157】
2.車両1が実行する処理
本実施形態の車両1は、基本的には前記第1の実施形態と同様の処理を実行する。車両1は、さらに、走行中、図24に示す処理を所定時間ごとに繰り返し実行する。図24のステップ61では、右側圧力計155及び左側圧力計157の測定値を取得する。
【0158】
ステップ62では、右側圧力計155の測定値から左側圧力計157の測定値を差し引いた値(以下、差Δとする)を算出し、その差Δの絶対値が、所定の閾値以上であるか否かを判断する。差Δの絶対値が閾値以上である場合はステップ63に進み、閾値未満である場合は本処理を終了する。
【0159】
なお、差Δは、車両1に吹いている横風の向きと強さとを反映する。車両1の右側から横風が吹いているとき、差Δは正の値となり、差Δの絶対値は、風速が大きいほど、大きくなる。また、車両1の左側から横風が吹いているとき、差Δは負の値となり、差Δの絶対値は、風速が大きいほど、大きくなる。
【0160】
ステップ63では、ハンドルアシストを行う。ハンドルアシストの方向は、差Δが正の値である場合(右側から横風が吹いている場合)は右方向であり、差Δが負の値である場合(左側から横風が吹いている場合)は左方向である。また、ハンドルアシストの駆動力は、差Δの絶対値が大きいほど、大きくする。
【0161】
3.車両1が奏する効果
(1)車両1は、前記第1の実施形態と略同様の効果を奏することができる。
(2)車両1は、右側から横風が吹いているときは、右方向へのハンドルアシストを行い、左側から横風が吹いているときは、左方向へのハンドルアシストを行う。そのため、横風が強い状況でも、車両1の直進性が低下しにくい。
【0162】
4.変形例
横風の風向や風速を検出するための構成は、右側圧力計155及び左側圧力計157以外のものであってもよい。例えば、横風の風向及び風速を測定可能な周知の風速計を車両1に取り付けてもよい。
【0163】
また、車両1は、所定の風速以上の風を検出したとき、風により流されてくるもの(例えばシート等)を回避する制御を行ってもよい。
尚、本発明は前記実施の形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0164】
例えば、第2の情報取得装置109は、トンネル以外の構造物(例えば、橋梁、高架式道路、ダム、堤防、道路沿いの法面等)の近傍に設けられ、そのような構造物の異常を検出するものであってもよい。
【0165】
また、道路に関する危険の情報は、道路に関する危険の種類と、その危険を検出した位置(緯度、経度)と、その危険を検出した時刻とのうち、1又は2から成るものであってもよい。
【0166】
また、車両1は、例えば、先行車との距離が所定値以下となったとき、先行車で撮影したカメラ画像を取得することができる。なお、先行車は、そこで撮影したカメラ画像を無線通信により周囲に送信している。この場合、車両1は、自車両で取得したカメラ画像と同様に、先行車から取得したカメラ画像を用いて、上述した各処理を実行できる。
【0167】
また、車両1は、ドライバの操作により、冒険モードと、安全モードとのうちのいずれかのモードを設定できるものであってもよい。冒険モードとは、安全モードに比べて、危険回避処理が実行されにくい(道路に関する危険のレベルが高くない限り、危険回避処理を実行しない)モードである。ドライバは、例えば、大切な物を車両1に搭載しているときは安全モードを設定し、それ以外のときは冒険モードを設定することができる。
【0168】
また、車両1は、道路やサービスエリアで、自車両が本来の走行方向とは逆の方向に走行している状態(逆走)を検出する機能を有していてもよい。そして、逆走を検出した場合、車両1のドライバに警告する、反対側の車線に誘導する、他の車両に対し目立つように表示(例えばヘッドライトの点滅等)を行う等の処理を実行することができる。
【0169】
また、前記第1〜第4の実施形態における構成の全部又は一部を適宜選択して組み合わせてもよい。
また、車両1は、鉄道車両であってもよい。鉄道車両には、レール上を走行するタイプ、磁気浮上式リニアモーターカー、鉄輪式リニアモーターカー、モノレール等が含まれる。
【0170】
車両1が鉄道車両である場合、情報配信システム101により、鉄道車両が走行する軌道(レール、及びリニアモーターカー用のインフラを含む)、トンネル、橋梁、駅、踏切、及びそれらの周辺の危険とその危険の位置情報を検出し、鉄道車両に送信することができる。また、鉄道車両自身が、上記の危険を検出することができる。そして、鉄道車両は、道路上を走行する車両と同様に、危険の種類や危険の位置情報に応じて、危険回避処理を実行することができる。
【符号の説明】
【0171】
1…車両、3…送受信機、5…ナビシステム、7…スピーカ、9…スリップ検出システム、15…カメラ、17…赤外線カメラ、19…レーダ、20…車内カメラ、21…滑り止め剤噴射システム、23…自動ブレーキシステム、25…制御部、31…タンク、33…配管、33a、33b…端部、35…制御弁、39…滑り止め剤、41…高圧窒素、43…タイヤ、101…情報配信システム、103…コントロールセンター、104…インターネット回線、105…基地局、106…携帯端末、107…第1の情報取得装置、109…第2の情報取得装置、110…通信回線、111…制御部、113…記憶装置、115…通信インターフェイス、117…制御部、119…通信インターフェイス、121…送受信機、123…制御部、125…通信インターフェイス、127…カメラ、129…赤外線カメラ、131…レーダ、133…制御部、135…通信インターフェイス、137…振動センサ、139…カメラ、143…音波出力機、145…音波センサ、147…光センサ、149…導電率センサ、151、153…赤外線センサ、155…右側圧力計、157…左側圧力計、201…道路、203…トンネル、203A…天井、205…棒、205A…下端、207…レーザ射出装置、209…反射ミラー、211、213…電極、215…ゲート部材、217…赤外線ビーム、301…境界線、303…センターライン、305…停止線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A-14B】
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【手続補正書】
【提出日】2020年6月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に関する危険を検出する危険検出ユニットと、
前記危険検出ユニットが検出した前記危険の情報を、前記情報を蓄積するコントロールセンターへ送信する情報送信ユニットと、
前記コントロールセンターに蓄積された前記情報を、インフラ側に設けられた危険情報出力ユニットから得する報取得ユニットと、
前記情報取得ユニットが取得した前記情報における前記危険を回避するための危険回避処理を実行する危険回避処理実行ユニットと、
を備えことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記危険は、路面の凍結、路面の積雪、走行中にスリップしている車両、道路上に存在する物体、異常な挙動を行う車両、路面のひび割れ、路面の崩落、故障した車両、ドライバが走行中に携帯電話を使用している車両、ドライバが急病の状態にある車両、道路上に存在する水溜り、自動運転中の車両、歩行者、及び、老人が運転している車両のいずれかであることを特徴とする、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記危険が前記異常な挙動を行う車両である場合、前記危険回避処理は、自車を減速させる処理である、
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記危険が前記歩行者である場合、前記危険回避処理は、自動操舵によって前記歩行者を避ける処理である、
請求項2又は3に記載の車両。
【請求項5】
前記危険情報出力ユニットは前記情報を常時送信することを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
自車の位置情報及び自車の進行方向を取得する自車情報取得ユニットをさらに備え、
前記危険の位置、及び前記自車の位置が所定の位置関係にあり、前記自車の進行方向上に前記危険が存在する場合、前記危険回避処理実行ユニットは前記危険回避処理を実行する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両。