特開2020-144991(P2020-144991A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-144991(P2020-144991A)
(43)【公開日】2020年9月10日
(54)【発明の名称】圧着端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20200814BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-38563(P2019-38563)
(22)【出願日】2019年3月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】宍倉 誠司
(72)【発明者】
【氏名】池谷 洋之
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB12
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD14
5E085EE03
5E085FF01
5E085HH06
5E085JJ36
(57)【要約】
【課題】電気的な確実な導通と、割れなどの不具合の発生の抑制とを両立させた圧着端子を提供する。
【解決手段】圧着端子1は、接触部10、連結部20、および圧着部30を有する。また、圧着部30は、ワイヤバレル40とインスレーションバレル50とを有する。このワイヤバレル40は、前後方向中央部分に、中央部分を除く前後の部分の側縁42,43よりも外方に突き出た突出し部44を有する。この突出し部44は、中央部分よりも前方の部分の第1の側縁42から第1の側縁42を接線とする第1の弧を描いて突き出て、第1の弧とは逆向きの第2の弧を描いて中央部分よりも後方の部分の第2の側縁43に近づき、さらに第2の弧とは逆向きの、第2の側縁43を接線とする第3の弧を描いて該第2の側縁43に繋がった形状を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手コンタクトと接触する接触部、および、
圧着により電気ケーブルの芯線と導通するワイヤバレルと、圧着により前記電気ケーブルの被覆された部分を把持するインスレーションバレルとを有する圧着部を備え、
前記ワイヤバレルの、前後方向中央部分に、該中央部分を除く前後の部分の側縁よりも外方に突き出た突出し部を有することを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
前記突出し部が、前記中央部分よりも前方の部分の第1の側縁から該第1の側縁を接線とする第1の弧を描いて突き出て、該第1の弧とは逆向きの第2の弧を描いて該中央部分よりも後方の部分の第2の側縁に近づき、さらに該第2の弧とは逆向きの、該第2の側縁を接線とする第3の弧を描いて該第2の側縁に繋がった形状を有することを特徴とする請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
前記ワイヤバレルが、前後方向中央部を避けた前後方向両側に、セレーションを有することを特徴とする請求項1または2に記載の圧着端子。
【請求項4】
前記セレーションが、前記ワイヤバレルの前後方向中央に対し、前後に対称の形状を有することを特徴とする請求項3に記載の圧着端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケーブルが圧着される圧着部を備えた圧着端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気ケーブルが圧着された圧着端子が広く使用されている。この圧着端子にも、益々の小型化および軽量化が求められている。このため、従来よりも板厚の薄い金属板を用いて小型の圧着端子を構成することが試みられている。板厚が薄くなるなると、圧着により割れが発生するおそれがある。特に、アルミニウム電線を圧着する場合には、アルミニウム電線の表面に存在する絶縁体である酸化膜を破って、アルミニウム電線と圧着端子とを確実に電気的に接続する必要がある。このため、アルミニウム電線を圧着する場合には、銅線の場合よりも強く圧着する必要があり、したがって圧着による割れなど不都合の発生を如何にして抑えるかが問題となる。
【0003】
ここで、特許文献1には、ワイヤバレルの前後方向の前半部の幅を後半部の幅よりも広く設定し、それら前半部と後半部を同じ高さとなるように圧着した圧着端子が開示されている。この圧着端子の場合、前半部で電気的な導通を確実にするとともに、後半部で機械的な強度を保持する意図と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−152110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧着端子の材料の量が場所によって不均一な場合、圧着時に、量の多い部分の伸びが量の少ない部分の伸びより大きい。上掲の特許文献1に開示された圧着端子の場合、圧着時には、ワイヤバレルの幅広の前半部は、後半部よりもさらに前方に伸びる。これにより、前半部よりも更なる前方と後半部とでは形状が大きく異なるので、材料の伸びが前半部と後半部においてアンバランスとなり、これに起因してワイヤバレルの割れなどの不都合が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、圧着時の材料の伸びのバランスの制御が容易であって、これにより割れなどの不具合の発生を抑えた圧着端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の圧着端子は、
相手コンタクトと接触する接触部、および、
圧着により電気ケーブルの芯線と導通するワイヤバレルと、圧着により電気ケーブルの被覆された部分を把持するインスレーションバレルとを有する圧着部を備え、
上記ワイヤバレルの、前後方向中央部分に、その中央部分を除く前後の部分の側縁よりも外方に突き出た突出し部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の圧着端子は、前後方向中央部分に突出し部を有する。このため、圧着時には、その中央部分の材料が、前後に均等に伸びる。これにより、突出し部の形状等による材料の伸び量の制御が容易となり、電気的に確実に導通するとともに割れなどの不具合を抑えるように調整することができる。
【0009】
ここで、本発明の圧着端子において、上記突出し部が、上記中央部分よりも前方の部分の第1の側縁から第1の側縁を接線とする第1の弧を描いて突き出て、第1の弧とは逆向きの第2の弧を描いて中央部分よりも後方の部分の第2の側縁に近づき、さらに第2の弧とは逆向きの、第2の側縁を接線とする第3の弧を描いて第2の側縁に繋がった形状を有することが好ましい。
【0010】
このように、角部の無い形状の突出し部とすることで、角部がある突出し部と比べ、圧着時の芯線の破断が抑えられる。
【0011】
また、上記ワイヤバレルが、前後方向中央部を避けた前後方向両側に、セレーションを有することが好ましい。
【0012】
上記の突出し部が設けられている中央部分は突出し部の分だけ材料の量が多い。このため、圧着時に中央部分の材料は前後に伸びるものの、中央部分の圧縮率が高まり板厚が薄くなる。材料の板厚が薄くなるので、割れなどの不具合が発生するとしたら、前後の部分よりも中央部分においてその危険性が高い。
【0013】
そこで、セレーションを、前後方向中央部を避けた前後方向両側に設けると、中央部にセレーションが存在しない分、十分な材料の板厚が確保されるので、不具合の発生の危険性が抑えられる。
【0014】
さらに、前後方向中央部を避けた前後方向両側にセレーションを設けるにあたっては、セレーションが、ワイヤバレルの前後方向中央に対し、前後に対称の形状を有することがさらに好ましい。
【0015】
この場合、圧着時の材料の前後への伸びがさらに均一となり、確実な電気的導通と割れなどの不具合の抑制との両立がさらに容易となる。
【発明の効果】
【0016】
以上の本発明によれば、確実な電気的導通と割れなどの不具合の発生の抑制とを両立させた圧着端子が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態の圧着前の圧着端子を示した斜視図である。
図2】第1実施形態の圧着後の圧着端子を示した斜視図である。
図3】第1実施形態の圧着端子のワイヤバレルを平面状に展開して、電気ケーブルが配置される側の面を示した図である。
図4】本発明の第2実施形態の圧着前の圧着端子を示した斜視図である。
図5】第2実施形態の圧着端子のワイヤバレルを平面状に展開して、電気ケーブルが配置される側の面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態の圧着前の圧着端子を示した斜視図である。この図1には、この圧着端子に圧着される電気ケーブルの先端部分も示されている。
【0020】
また、図2は、第1実施形態の圧着後の圧着端子を示した斜視図である。但し、電気ケーブルの芯線は図示されていない。
【0021】
この圧着端子1は、接触部10、連結部20、および圧着部30を有する。
【0022】
この実施形態の圧着端子1の接触部10は、前端に開口10Aが形成された箱型であって、底壁11と、底壁11の左右の縁からそれぞれ立ち上がった一対の側壁12と、上壁13とを有する。開口10Aからは相手端子(不図示)の雄型の接触部が挿入されて、この圧着端子10と相手端子が電気的に接続される。
【0023】
また、連結部20は、接触部10と圧着部30とを連結している部分である。
【0024】
また、圧着部30は、電気ケーブル2を圧着する部分である。この圧着部30は、圧着された電気ケーブル2の芯線2aと導通するワイヤバレル40と、圧着により電気ケーブル2の被覆された部分2bを把持するインスレーションバレル50とを有する。
【0025】
圧着に当たっては、電気ケーブル2の先端の、芯線2aがむき出しになった部分がワイヤバレル40にあてがわれる。この芯線2aがむき出しになった部分の長さはコントロールされている。そして、芯線2aがむき出しになった部分がワイヤバレル40にあてがわれると、電気ケーブル2の被覆された部分2bがインスレーションバレル50にあてがわれる。その状態で、圧着が行われ、図2に示した形状となる。
【0026】
図3は、第1実施形態の圧着端子のワイヤバレルを平面状に展開して、電気ケーブルが配置される側の面を示した図である。
【0027】
このワイヤバレル40には、幅方向に延びる3本のセレーション41が形成されている。このセレーション41は、この実施形態の場合は電気ケーブルが配置される側の面が窪んだ形状となっている。窪んだ形状に代えて突条となっていてもよい。このセレーション41は、圧着による、ワイヤバレル40の芯線2aへの食い込みを助け、圧着端子1と芯線2aとの導通を確実にするためのものである。
【0028】
また、このワイヤバレル40は、前後方向中央部分に、中央部分を除く前後の部分の側縁42,43よりも外方に突き出た突出し部44を有する。この突出し部44は、中央部分よりも前方の部分の第1の側縁42から第1の側縁42を接線とする第1の弧を描いて突き出て、第1の弧とは逆向きの第2の弧を描いて中央部分よりも後方の部分の第2の側縁43に近づき、さらに第2の弧とは逆向きの、第2の側縁43を接線とする第3の弧を描いて該第2の側縁43に繋がった形状を有する。
【0029】
このワイヤバレル40は、前後方向の中央部分が突出し部44の分だけ材料が多い。このため、圧着により中央部分が強く圧着されて圧縮率が高まる。また、中央部分の多い材料の一部は、圧着時に、突出し部44の形状や圧着時の圧力などにより決まる量だけ伸びる。ここで、圧着時の、前方への伸び量と後方への伸び量は均一であり、伸びがいずれか一方に偏っている場合よりも制御が容易である。これにより、確実な電気的導通と割れなどの不具合の発生の抑制とを両立させることができる。
【0030】
図4は、本発明の第2実施形態の圧着前の圧着端子を示した斜視図である。
【0031】
また、図5は、第2実施形態の圧着端子のワイヤバレルを平面状に展開して、電気ケーブルが配置される側の面を示した図である。
【0032】
ここでは、上述の第1実施形態の説明に用いた符号と同じ符号を付して示し、第1実施形態との相違点についてのみ、説明する。
【0033】
この第2実施形態におけるワイヤバレル40には、前後方向中央部を避けた前後方向両側にセレーションが形成されている。これらのセレーション41は、ワイヤバレル40の前後方向中央に対し、前後に対称の形状を有する。
【0034】
この第2実施形態の場合、セレーション41を、前後方向中央部を避けた前後方向両側に設けていて、中央部分にセレーション41が存在しない分、十分な材料の板厚が確保されるので、ワイヤバレル40の割れ等の不具合の発生の危険性が低下し信頼性が向上する。さらに、この第2実施形態の場合、セレーション41が、ワイヤバレル40の前後方向中央に対し、前後に対称の形状を有する。このため、圧着時の材料の前後への伸びがさらに均一となり、確実な電気的導通と不具合の抑制との両立がさらに容易となり、信頼性がさらに向上する。
【0035】
なお、ここでは、箱型の接触部10を有する圧着端子1について説明したが、本発明は、接触部の形状とは無関係に適用することができる。すなわち、接触部は、雄型であってもよく、雌雄同形であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 圧着端子
2 電気ケーブル
2a 芯線
2b 被覆された部分
10 接触部
10A 開口
11 底壁
12 側壁
13 上壁
20 連結部
30 圧着部
40 ワイヤバレル
41 セレーション
42 第1の側縁
43 第2の側縁
44 突出し部
50 インスレーションバレル
図1
図2
図3
図4
図5