(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-145058(P2020-145058A)
(43)【公開日】2020年9月10日
(54)【発明の名称】圧着端子
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20200814BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-40256(P2019-40256)
(22)【出願日】2019年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】宍倉 誠司
(72)【発明者】
【氏名】池谷 洋之
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB01
5E085BB12
5E085DD14
5E085EE04
5E085FF01
5E085GG04
5E085HH06
5E085JJ01
5E085JJ50
(57)【要約】
【課題】圧着工程における側方への膨出を抑えた圧着端子を提供する。
【解決手段】圧着端子1は、接触部10、連結部20、および圧着部30を有する。そして、圧着部30は、圧着により電気ケーブルの芯線と導通するワイヤバレル40と、圧着により電気ケーブルの被覆された部分を把持するインスレーションバレル50とを有する。ワイヤバレル40は、底部41と、底部41の左右の側縁からそれぞれ立上った一対の壁部42とを有する。そして、一対の壁部42の各々は、底部41側の、例えば垂直に立ち上がった立上り部43と、その立上り部43の上端に繋がって側方に広がる拡開部44とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の底部と該第1の底部の幅方向両縁の各々から立ち上がった一対の第1の側壁とを有し相手コンタクトと接触する接触部、
前記接触部よりも後方の、該接触部から離間した位置に設けられた、電気ケーブルが圧着される圧着部、および
前記接触部と前記圧着部とを連結する、前記第1の底部に繋がる第2の底部と、前記一対の第1の側壁の各々に繋がり該第2の底部の幅方向両縁の各々から立ち上がった一対の第2の側壁とを有する連結部を備え、
前記圧着部が、圧着により電気ケーブルの芯線と導通するワイヤバレルを備え、該ワイヤバレルが、前記第2の底部に繋がる第3の底部と、前記一対の第2の側壁の各々に繋がり該第3の底部の幅方向両縁の各々から立ち上がった一対の第3の壁部とを有し、
前記一対の第3の壁部の各々が、幅方向について前記第1の側壁よりも内側において前記第3の底部から立ち上がった立上り部と、該立上り部の先端からさらに立ち上がりながら該立上り部よりも側方に広がった拡開部とを有することを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
前記立上り部が、垂直もしくは前記第3の底部の上に覆い被さる向きに立ち上がっていることを特徴とする請求項1に記載の圧着端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケーブルが圧着される圧着部を備えた圧着端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気ケーブルが圧着された圧着端子が広く使用されている。この圧着端子にも、益々の小型化および軽量化が求められている。小型の圧着端子を使用することで、端子間距離の小さい小型のコネクタを得ることができる。
【0003】
しかし、小型のコネクタにおいて、圧着時に側方に膨出する部分が無視できず、圧着端子をコネクタハウジングのキャビティ内に挿入することができないという問題が生じた。
【0004】
ここで、特許文献1には、曲げ加工を行なう前の展開状態において、接触部とワイヤバレルとの間の連結部に両側からスリット(余肉抑制空隙)を形成しておくことが提案されている。このスリット(余肉抑制空隙)を形成しておくと、曲げ加工時の、側方に張り出す余肉の発生を抑えることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−25987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上掲の特許文献1の提案は、圧着端子の、曲げ加工の段階での余肉の発生を抑えようとする提案である。ただし、この特許文献1の提案は、曲げ加工後よりもさらに後の、電気ケーブルを圧着する工程における側方への膨出の問題を解決するものではない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、圧着工程における側方への膨出を抑えた圧着端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の圧着端子は、
第1の底部と該第1の底部の幅方向両縁の各々から立ち上がった一対の第1の側壁とを有し相手コンタクトと接触する接触部、
上記接触部よりも後方の、その接触部から離間した位置に設けられた、電気ケーブルが圧着される圧着部、および
接触部と前記圧着部とを連結する、上記第1の底部に繋がる第2の底部と、上記一対の第1の側壁の各々に繋がり第2の底部の幅方向両縁の各々から立ち上がった一対の第2の側壁とを有する連結部を備え、
上記圧着部が、圧着により電気ケーブルの芯線と導通するワイヤバレルを備え、そのワイヤバレルが、上記第2の底部に繋がる第3の底部と、上記一対の第2の側壁の各々に繋がり第3の底部の幅方向両縁の各々から立ち上がった一対の第3の壁部とを有し、
上記一対の第3の壁部の各々が、幅方向について上記の第1の側壁よりも内側において第3の底部から立ち上がった立上り部と、その立上り部の先端からさらに立ち上がりながらその立上り部よりも側方に広がった拡開部とを有することを特徴とする。
【0009】
ワイヤバレルの形状によっては、圧着工程において連結部に側方への膨出が現れるおそれがある。本発明の圧着端子には、幅方向について第1の両側壁よりも内側において立ち上がった立上り部を有するワイヤバレルが設けられている。これにより、圧着工程において連結部に側方への膨出が現れることが抑制される。
【0010】
ここで、本発明の圧着端子において、上記の立上り部が、垂直もしくは第3の底部の上に覆い被さる向きに立ち上がっていることが好ましい。
【0011】
この形状の立上り部を有する場合、圧着工程における連結部に側方への膨出の出現がさらに有効に抑制される。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明の圧着端子によれば、圧着工程における連結部の側方への膨出が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の圧着端子を示した図である。
【
図2】
図1に示した実施形態の圧着端子の、圧着後の形状を示した平面図である。
【
図3】比較例としての従来の圧着端子の、
図1(B)の矢印X−Xに対応する部分の、圧着前の断面を示した図(A)と、圧着後の平面図である。
【
図4】ワイヤバレルの各種の断面形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態の圧着端子を示した図である。ここで、
図1(A)は斜視図、
図1(B)は平面図、
図1(C)は、
図1(B)に示した矢印X―Xに沿う断面を示した図である。
【0016】
この圧着端子1は、接触部10、連結部20、および圧着部30を有する。
【0017】
この実施形態の圧着端子1の接触部10は、前端に開口10Aが形成された箱型であって、底部11と、底部11の左右の縁からそれぞれ立ち上がった一対の側壁12と、上壁13とを有する。開口10Aからは相手端子(不図示)の雄型の接触部が挿入されて、この圧着端子10と相手端子が電気的に接続される。
【0018】
また、連結部20は、接触部10と圧着部30とを連結している部分である。この連結部20は、底部21と、その底部21の左右の縁からそれぞれ立ち上がった一対の側壁22とを有する。ここで、底部21は、接触部10の底部11に繋がり、左右の側壁22は、接触部10の左右の側壁12の各々に繋がっている。
【0019】
また、圧着部30は、電気ケーブル2(
図2参照)を圧着する部分である。この圧着部30は、圧着された電気ケーブル2の芯線と導通するワイヤバレル40と、圧着により電気ケーブル2の被覆された部分を把持するインスレーションバレル50とを有する。ワイヤバレル40は、インスレーションバレル50よりも前端側にある。したがって、連結部20は、接触部10とワイヤバレル40との間を繋いでいる。
【0020】
ワイヤバレル40は、底部41と、底部41の左右の縁からそれぞれ立ち上がった一対の壁部42とを有する。ここで、底部41は、連結部20の底部21に繋がり、左右の壁部42は、連結部20の左右の側壁22の各々に繋がっている。
【0021】
さらに、インスレーションバレル50も、底部51と、底部51の左右の縁からそれぞれ立ち上がった一対の壁部52とを有する。ここで、底部51は、ワイヤバレル40の底部41に繋がり、左右の壁部52は、ワイヤバレル40の左右の側壁42の各々に繋がっている。
【0022】
ここで、ワイヤバレル40の左右の壁部42は、
図1(C)に示すように、底部41から立ち上がった立上り部43と、その立上り部43の先端からさらに立上った拡開部44とを有する。立上り部43は、幅方向について、接触部10の側壁12よりも内側において、底部41から、この実施形態の場合は垂直に、立ち上がっている。そして、この立上り部43が連結部20の側壁22に繋がっている。拡開部44は、立上り部43の上端から、その立上り部43よりも側方に広がっている。
【0023】
図2は、
図1に示した実施形態の圧着端子の、圧着後の形状を示した平面図である。
【0024】
また、
図3は、比較例としての従来の圧着端子の、
図1(B)の矢印X−Xに対応する部分の、圧着前の断面を示した図(A)と、圧着後の平面図である。分かり易さのため、この比較例においても、
図1,
図2に示した実施形態において使用した符号と同じ符号を付して示し、相違点についてのみ説明する。
【0025】
図3に示した比較例の場合、ワイヤバレル40の圧着前の断面は、
図3(A)に示す形状となっている。すなわち、この
図3(A)の断面を、
図1(C)の断面と比べると、底部41については、互いに同じ形状となっている。これに対し、壁部42は、
図1(C)の断面のような立上り部43と拡開部44との区別がなく、底部41から側方に斜めに一様に広がっている。図示は省略しているが、連結部20の側壁22は、
図3(A)に示す断面形状のワイヤバレル40の壁部42に繋がるように、ワイヤバレル40側が側方に斜めに広がっている。
【0026】
図3(A)に示した断面形状のワイヤバレル40を有する圧着端子1の圧着部30に電気ケーブル2を圧着する。すると、連結部20に、
図3(B)に示すような、左右に突き出た部分23が出現する。この左右に突き出た部分23どうしの幅は、接触部10よりも広幅である。このため、連結部20についても接触部10の幅と同じ幅を想定して設計したコネクタハウジング(不図示)への挿入が困難となる。一方、この左右に突き出た部分23の出現を予定してコネクタハウジングを設計すると、コネクタ全体が大型化するおそれがある。
【0027】
この
図3を参照しての比較例の説明を踏まえ、実施形態の説明に戻る。
【0028】
図2に示す平面図から分かるように、ここには、
図3(B)に示したような、左右に突き出た部分23は出現せず、連結部20も接触部10と同じ幅となっている。したがって、この実施形態の圧着端子1の場合、連結部20についても接触部10の幅と同じ幅を想定して設計したコネクタハウジングへの挿入が可能となる。
【0029】
図4は、ワイヤバレルの各種の断面形状を示した図である。ここでは、断面形状が
図1(C)よりも拡大されている。
【0030】
図4(A)には、
図1(C)と同じ形状の断面が示されている。立上り部43は、底部41の左右の縁から垂直に立ち上がっている。また、拡開部44は、立上り部43の上端との間に鈍角をなして、側方に斜めに広がっている。
【0031】
図4(B)には、第1変形例の断面が示されている。立上り部43の底部41の近傍の部分は、
図4(A)と同じく垂直に立ち上がっている。ただし、この立上り部43の上端近傍および拡開部44の下端近傍は、連続したカーブとなるように曲面に形成されている。
【0032】
また、
図4(C)には、第2変形例の断面が示されている。この第2変形例の立上り部43は、底部41の左右の端縁から、少し内向き、すなわち底部41の上に覆い被さる向きに立ち上がっている。拡開部44は、
図4(A)と同様に、立上り部43の上端との間に鈍角をなして、側方に斜めに広がっている。ただし、
図4(C)における拡開部44は、拡開部44の上端における開き幅が
図4(A)と同じ幅となるように、
図4(A)の拡開部44よりも開き角45が大きくなっている。
【0033】
ワイヤバレル40の断面形状を、
図4(B),(C)の形状とした場合も、圧着後において
図3(B)に示した比較例のような左右に突き出た部分23は出現しない。このように、ワイヤバレル40に、底部41から垂直に、あるいは底部41の上に覆い被さる向きに立ち上げた立上り部43を形成することによって、接触部10と同じ幅の連結部20が形成される。
【符号の説明】
【0034】
1 圧着端子
2 電気ケーブル
10 接触部
10A 開口
11 底部
12 側壁
13 上壁
20 連結部
21 底部
22 側壁
30 圧着部
40 ワイヤバレル
41 底部
42 壁部
43 立上り部
44 拡開部
50 インスレーションバレル
51 底部
52 壁部