【解決手段】導波管10は、樹脂で形成されている管状の樹脂部12と、樹脂部12の内面に形成されている導体層13と、樹脂部12によって保持されている金具20とを有している。金具20は、樹脂部12の材料である樹脂で覆われていない露出面21aを有する内露出部21を有している。導体層13は内露出部21の露出面21aを覆い、内露出部21に接している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において本開示で提案する導波管の一例について説明する。以下では、本開示で提案する導波管の一例として、
図1等に示す導波管10について説明する。
【0009】
以下の説明では、
図1にあるZ1及びZ2で示す方向をそれぞれ上方及び下方と称する。この「上方」及び「下方」との用語は、導波管10を構成する部材や部位などの相対的な位置関係を説明するために使用されており、使用時における導波管10の姿勢を限定するものではない。また、
図1にあるY1−Y2で示す方向を導波管10の延伸方向と称し、
図1にあるX1−X2で示す方向を導波管10の幅方向と称する。
【0010】
[全体構成]
導波管10は、例えばミリ波やマイクロ波などの高周波の伝送に利用される。導波管10の使用時、複数の導波管10がその延伸方向において相互に接続されてよい。導波管10は、例えば四角形の断面を有する管である。導波管10の断面形状は、円形であってもよいし、それ以外の形状であってもよい。また、
図1等で示す例において、導波管10は直線的に延びているが、円弧状に湾曲してもよい。
【0011】
図2に示すように、導波管10は、導波管10の延伸方向に対して直交する方向で互いに組み合わされる第1管部材11Aと第2管部材11Bとを有してよい。第1管部材11Aと第2管部材11Bは、例えば上下方向において互いに組み合わされ、1本の導波管10を構成する。
【0012】
2つの管部材11A、11Bは同じ構造を有してよい。そして、第2管部材11Bと第1管部材11Aのうち一方の管部材は、他方の管部材に対して、導波管10の延伸方向に延びている直線を中心にして180度回転していてよい。2つの管部材11A、11Bが同じ構造であると、例えば第1管部材11Aと第2管部材11Bの製造に必要な金型を共用できるので、導波管10の低廉化を図ることができる。なお、導波管10とは異なり、第1管部材11Aの構造と第2管部材11Bの構造は、異なっていてもよい。
【0013】
以下では、第1管部材11Aと第2管部材11Bとを区別しない説明においては、管部材11A、11Bの双方について符号11を付す。
【0014】
[樹脂部]
図6で示すように、管部材11は、樹脂で形成されている樹脂部12と、樹脂部12によって保持されている複数の金具20、30を有してよい。樹脂部12の材料としては、例えば、ポリカーボネートや、ABS樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ユリア樹脂などのプラスチックを利用できる。一方の管部材11の樹脂部12と、他方の管部材11の樹脂部12とが組み合わされて、管状の樹脂部が構成される。すなわち、各管部材11の樹脂部12は、導波管10の樹脂部の一部(導波管10の例において半分)を構成する。
【0015】
図5に示すように、樹脂部12は、反対側の管部材11と上下方向で向き合う底部12aと、底部12aの一方の縁に位置している第1側部12bと、底部12aの反対側の縁に位置している第2側部12cとを有してよい。第1側部12bは、例えば底部12aの縁に沿って形成される壁状であってよい。第2側部12cも、例えば底部12aの縁に沿って形成される壁状であってよい。第2側部12cと第1側部12bの高さは異なっていてもよいし、同じであってもよい。導波管10の例では、第2側部12cの高さは第1側部12bよりも高い。樹脂部12の形状は、ここで説明する例に限られない。2つの側部12b、12cのうち一方は壁状でなくてもよい。すなわち、樹脂部12は、略L形状の断面を有してもよい。
【0016】
上述したように、導波管10は上下方向で組み合わされる2つの管部材11(すなわち第1管部材11A及び第2管部材11B)によって構成されている。第1管部材11Aの第1側部12bと第2管部材11Bの第2側部12cとが上下方向で対向し、第1管部材11Aの第2側部12cと第2管部材11Bの第1側部12bとが上下方向で対向してよい。
【0017】
図5で示すように、樹脂部12の内面は、導波管10の内側を形成する面であり、底部12aの内面12a1、第1側部12bの内面12b1、第2側部の内面12c1で形成されている。管部材11が一方だけのとき、これら内面12a1、12b1、12c1が形成する空間は上方に開放されている。片側が開放されているので、後述するめっき工程や導電性材料の塗布工程を開放された側から行えるため、作業性が向上する。
【0018】
[導体層]
図6で示すように、樹脂部12の内面12a1、12b1及び12c1には、導電性を有している導体層13が形成されてよい。導体層13は樹脂部12の内面の全域に亘って形成されてよい。樹脂部12の外面には導体層13は形成されなくてもよい。
【0019】
導体層13は、複数の層で構成されてよい。具体的には、導体層13は、樹脂部12の内面12a1、12b1、12c1に直接形成されている、いわゆるシード層としての第1導体層13Aと、その第1導体層13Aを電解めっきのカソード電極として用いて形成される第2導体層13Bとを有してよい。金具20、30は樹脂部12の内面12a1、12b1及び12c1で露出する露出面21a、31aを有している(
図6参照)。露出面21a、31aは第1導体層13Aと電気的に接続している。電解めっきにおいて、金具20、30を通して電圧が加えられることによって、第1導体層13Aがカソード電極として機能し得る。第1導体層13Aは、例えば、インク状やペースト状の導電性材料が樹脂部12の内面12a1、12b1、12c1に塗布されて形成された層である。導電性材料としては、例えば、銀や、銅、酸化亜鉛などのインク(又はペースト)を利用することができるが、その材料はこれらに限られない。上述のようにインク又はペースト状の導電体とすることで、塗布するだけで容易にシード層を形成できる。シード層としての第1導体層13Aを形成するにはスパッタリングなどの方法も考えられる。第2導体層13Bは電解めっき処理によって第1導体層13A上に形成された層であり、例えば銅めっき層、ニッケルめっき層、銀めっき層である。
【0020】
第1導体層13Aの材料と第2導体層13Bの材料は、異なっていてもよいし、同じであってもよい。導体層13は、第1導体層13Aと第2導体層13Bとが明瞭な境界を持った層となるわけではない。導体層13Bが導体層13Aに拡散され、明確な境界ができない場合がある。また、同一材料を用いた場合などには一つの層となる場合もある。導体層13は2層構造ではなく、さらに保護膜としてのニッケル層が積層された3つの導体層で構成されてよい。
【0021】
[金具]
図3、
図4A、及び
図4Bに示されるように、管部材11は、形状が異なる2種類の金具20、30を有している。金具20、30は、金属板をプレス加工して形成されてよい。金具20、30の材料は、高い電気伝導性を有する金属の薄板で、導体層13に接続していてよい。金具20、30は、例えば銅や銅合金の薄板である。金具20、30は、例えば、インサート成形によって樹脂部12に固定される。金具20、30は、インサート成形ではなく、樹脂部12に形成された孔に圧入されて、樹脂部12に固定されてもよい。
【0022】
図4Aに示すように、第1金具20は、第1内露出部21と、第1接続部22と、係合部23と、第1通電部24とを一体に有してよい。すなわち、第1金具20は、第1接続部22の基部と係合部23の基部とを接続する部分20bや、第1接続部22の基部と第1内露出部21の基部とを接続する部分20aを有している。
そして、第1通電部24は第1接続部22の基部から曲げられて外方に向かって形成されている。第1内露出部21と第1接続部22と係合部23以外の部分は樹脂部12に埋まっていてよい。例えば、部分20a、20bは樹脂部12に埋まっている。これによって、第1金具20が樹脂部12に強固に固定される。第1通電部24は、複数の第1金具20が樹脂部12の延伸方向に配置されるよう、管部材11の製造過程において延伸部28を切断する前の状態では延伸部28により連結部29に繋がれている(
図7B参照)。
【0023】
図4Bに示すように、第2金具30は、第2内露出部31と、第2接続部32と、第2通電部34(
図6参照)とを有してよい。これらは互いに繋がっている。すなわち、第2金具30は、第2接続部32の基部と第2内露出部31の基部とを接続する部分30aを有し、第2接続部32の基部から第2通電部34が外面に向かって形成されている。第2内露出部31と第2接続部32以外の部分は樹脂部12に埋まっている。例えば、部分30aは樹脂部12に埋まっていてよい。これによって、第2金具30が樹脂部12に強固に固定される。第2通電部34は、第1金具20と同様、複数の第2金具30が樹脂部12の延伸方向に配置されるよう、管部材11の製造過程において延伸部38を切断する前の状態では延伸部38により連結部39に繋がれている(
図7B参照)。
【0024】
[内露出部]
第1金具20及び第2金具30が有している第1内露出部21及び第2内露出部31は、
図4A、4B及び
図5に示すように、樹脂部12の内面側に位置して樹脂材料で覆われていない部分である第1露出面21a及び第2露出面31aを有する。すなわち、導体層13が形成されてない状態では、第1露出面21a及び第2露出面31aは樹脂部12の表面、すなわち底部12aの内面12a1で露出している。第1露出面21a及び第2露出面31aは導体層13(より詳細には、第1導体層13A)によって覆われ、導体層13に接触している。この構造によると、導波管10の製造を容易化できる。例えば、電解めっき工程によって第2導体層13Bを形成する場合に、第1金具20と第1導体層13Aとを電解めっきのカソード電極として利用することが可能となる。このため、第2導体層13Bを形成するのに要する時間を短くできる。すなわち、導波管10の内面に必要とされる導体層13を効率よく形成できる。
【0025】
特に、内露出部21、31の露出面21a、31aは樹脂部12の内面(底部12aの内面12a1)と面一(同一平面である共通平面P1)に位置してよい。この構造によると、内露出部21、31の周りに段差がないので内面を平滑化することができ、均一な厚さの導体層13が形成され易くなる。
また、底部12aの内面12a1の幅(X1−X2方向での幅)は、側部12b、12cの内面12b1、12c1(すなわち高さZ1ーZ2方向での幅)よりも大きい。そのため、第1内露出部21及び第2内露出部31を底部12aの内面12a1に設けることにより、第1露出面21a及び第2露出面31aの面積を確保することが容易となる。
【0026】
図3に示すように、導波管10は、導波管10の延伸方向で並んでいる複数の第1金具20及び第2金具30を有している。そのため、複数の第1内露出部21及び第2内露出部31が導波管10の延伸方向で並ぶこととなる。この配置によりそれぞれの第1金具20と第2金具30をカソード電極とすると、電解めっき工程において第2導体層13Bを形成するときに、第1導体層13Aの電位が導波管10の延伸方向において不均一となることを防ぐことができ、第2導体層13Bの厚さ、ひいては導体層13の厚さの不均一を軽減できる。
【0027】
また、導波管10の例とは異なり、1つの金具に複数の第1内露出部21あるいは第2内露出部31が形成されていてもよい。言い換えれば、隣り合う2つあるいは複数の金具が繋がった形状を有してもよい。
【0028】
図5に示すように、第1内露出部21と第2内露出部31は、導波管10の幅方向(X1−X2方向)において離れている。内露出部21、31のこの配置によると、電解めっき工程において第2導体層13Bを形成するときに、第1導体層13Aの電位が導波管10の幅方向で不均一となることを防ぐことができ、第2導体層13Bの厚さ、ひいては導体層13の厚さの不均一を軽減できる。第1内露出部21と第2内露出部31は、例えば、導波管10の幅方向(X1−X2方向)の中心を通る平面に対して対称に配置されてよい。
【0029】
第1内露出部21、第2内露出部31の位置は、導波管10の例に限られない。第1内露出部21は、側部12bの内面(導波管10の内側に向いた面)に位置してもよいし、側部12bの内面と底部12aの内面の双方に位置してもよい。さらに他の例として、第1内露出部21は、側部12bの対向面12e(
図3参照)に位置していてもよい。ここで対向面12eとは、2つの管部材11が組み合わされる方向に向いた面である。また、第2内露出部31は、側部12cの内面(導波管10の内側に向いた面)に位置してもよいし、側部12cの内面と底部12aの内面の双方に位置してもよい。さらに他の例として、第2内露出部31は、側部12bの対向面12f(
図3参照)に位置していてもよい。ここで対向面12fとは、2つの管部材11が組み合わされる方向に向いた面である。
【0030】
導波管10の例とは異なり、2種類の金具20、30のうち一方の金具だけが内露出部を有してもよい。この場合、内露出部の露出面は、導波管10の幅方向(X1−X2方向)における中心又は中心近くに配置されてよい。すなわち、内露出部の露出面は、導波管10の幅方向における中心を通る平面と交差するように配置されてよい。
【0031】
第1金具20と第2金具30のそれぞれは、金属板で形成されてよい。すなわち、第1金具20と第2金具30のそれぞれは、金属板をプレス加工することによって形成されてよい。内露出部21、31の露出面21a、31aは金属板の一方の表面の一部であってよい。こうすることによって、例えば内露出部21、31として金属板の端面(金属板の厚さに対応する面)を利用する場合に比して、内露出部21、31の面積が確保し易くなる。
【0032】
内露出部21、31と樹脂部12の構造は、
図5に示す例に限られない。例えば、内露出部21、31は樹脂部12の内部に位置してよい。そして、樹脂部12に孔が形成され、導体層13が形成されてない状態では、この孔を通して第1内露出部21が樹脂部12の内側に向かって(導波管10の内側に向かって)を露出していてよい。
【0033】
[通電部]
図6に示すように、第1金具20は第1通電部24を有し、第2金具30は第2通電部34を有してよい。通電部24、34は、内露出面21a、31aと電気的に接続している。電解めっきを行う際、通電部24、34を通じて金具20、30及び第1導体層13Aに電圧が加えられ、これらがカソード電極として利用される。通電部24、34は樹脂部12の外面(導波管10の外側に向いた面)で露出し、管部材11の製造過程において延伸部28を切断する前の状態では延伸部28、38に繋がっている(
図7B参照)。管部材11の製造過程において、延伸部28、38は樹脂部12から延出され、ている。複数の延伸部28、38が連結部29、39で繋がれている。
【0034】
導波管10の製造過程において、電解めっきの終了後に、延伸部28と連結部29及び延伸部38と連結部39が切断される(
図3参照)。
【0035】
なお、通電部24、34の位置は、導波管10の例に限られない。例えば、通電部24、34は導波管10の延伸方向における樹脂部12の対向面12f(
図3参照)に位置してもよい。さらに他の例として、通電部24、34は底部12aの外面(
図6において下面)に位置してもよい。
【0036】
導波管10の例において、複数の第1金具20のそれぞれが第1通電部24を有している。言い換えれば、1つの第1内露出部21について、1つの第1通電部24が設けられている。同様に、複数の第2金具30のそれぞれが第2通電部34を有している。言い換えれば、1つの第2内露出部31について、1つの第2通電部34が設けられている。
【0037】
金具20、30の構造は、これに限られない。例えば、複数の金具20が繋がれて金属板から形成され、複数の第1内露出部21、複数の第1接続部22、及び複数の係合部23について1つの第1通電部24だけが設けられてもよい。同様に、複数の金具30が繋がれて金属板から形成され、複数の第2内露出部31、及び複数の第2接続部32について1つの第1通電部34だけが設けられてもよい。
[接続部]
【0038】
図6に示すように、第1金具20の第1接続部22は、一方の管部材11の第1側部12bの対向面12eから、他方の管部材11に向かって突出してよい。第1接続部22は導波管10の幅方向(X1ーX2方向)において弾性変形可能であってよい。第1接続部22は、例えば板ばね状である。すなわち、第1接続部22は、第1側部12bの対向面12eから導波管10の幅方向(X1−X2方向)における内側に向かって斜めに延びている。第1接続部22の端部22aは導波管10の幅方向(X1−X2方向)における外側に向かって傾斜してよい。一方、第2金具30の第2接続部32は、第2側部12cの外面に沿って形成され、導波管10の幅方向(X1−X2方向)における外側に向かって露出している。樹脂部12の第2側部12cには溝12kが形成されてよい。第2接続部32はこの溝12kに配置されてよい。
【0039】
上述したように、導波管10の例において、2つの管部材11は同じ構造を有している。したがって、
図6に示すように、第1管部材11Aと第2管部材11Bとが上下方向で組み合わされている状態では、一方の管部材11の第1接続部22の内側に、他方の管部材11の第2接続部32が位置し、両者が直接的に接触してよい。このことによって、第1管部材11Aの第1金具20と第2管部材11Bの第2金具30とが電気的に接続し、第1管部材11Aの第2金具30と第2管部材11Bの第1金具20とが電気的に接続してよい。
【0040】
図6に示すように、各管部材11において、第1金具20の第1接続部22と第2金具30の第2接続部32は、導波管10の幅方向(X1ーX2方向)において離れて位置している。すなわち、各管部材11において、第1金具20の第1接続部22は、一方の側部12bに位置し、第2金具30の第2接続部32は他方の側部12cに位置している。したがって、第1管部材11Aの第1金具20と第2管部材11Bの第2金具30は一方の側部(12b又は12c)で接続し、第1管部材11Aの第2金具30と第2管部材11Bの第1金具20は他方の側部(12b又は12c)で接続している。この構造によると、第1管部材11Aの導体層13と第2管部材11Bの導体層13が導通して環状の導体層を形成するので、例えば、一方の側部だけで2つの金具20、30が接続する構造に比して、第1管部材11Aに形成されている導体層13の電位と、第2管部材11Bに形成されている導体層13の電位とのずれを、より効果的に低減できる。
【0041】
2つの管部材11のそれぞれにおいて、複数の第1金具20が導波管10の延伸方向において並び、且つ複数の第2金具30が導波管10の延伸方向において並んでいる。そのため、上記の接続部22、32も導波管10の延伸方向に配置される。この構造によると、一方の管部材11に形成されている導体層13の電位と、他方の管部材11に形成されている導体層13の電位とのずれを、導波管10の延伸方向に亘ってより効果的に低減できる。
【0042】
なお、2つの管部材11が有している金具の接続構造は、導波管10の例に限られない。例えば、1つの第1金具20に複数の第1接続部22が設けられてもよい。同様に、1つの第2金具30に複数の第2接続部32が設けられてもよい。さらに他の例として、一方の管部材11が有している複数の第1金具20のなかには、他方の管部材11の第2金具30に接続しないものがあってもよい。
【0043】
[導体層による接続]
図6に示すように、導体層13は、樹脂部12の内面だけでなく、第1側部12bの対向面12eと、第2側部12cの対向面12fとに形成されてよい。上述したように、対向面12e、12fは2つの管部材11が組み合わされる方向(導波管10の例において上下方向)に向いている面である。この構造によると、2つの管部材11が組み合わされたときに、一方の管部材11の対向面12e、12fに形成された導体層13が、他方の管部材11の対向面12e、12fに形成された導体層13に接触する。その結果、一方の管部材11に形成されている導体層13の電位と、他方の管部材11に形成されている導体層13の電位とのずれを、より効果的に低減できる。
【0044】
[係合部]
図3に示すように、管部材11は、被係合部12hと係合部23とを有してよい。そして、一方の管部材11の係合部23は他方の管部材11の被係合部12hに係合し、2つの管部材11を固定してもよい。この構造によると、2つの管部材11の組立作業が容易化できる。
【0045】
図3及び
図4Aに示すように、係合部23は、例えば第1金具30に形成される。係合部23は、第1側部12bの対向面12eから、2つの管部材11が組み合わされる方向において突出している。一方、被係合部12hは樹脂部12の第2側部12cに形成されている。具体的には、被係合部12hは第2側部12cの対向面12fに形成される孔である。一方の管部材11の係合部23と被係合部12hは、他方の管部材11の被係合部12hと係合部23と篏合する。これによって、2つの管部材11が組み合わされた状態で固定される。係合部23の外面には被係合部12hの内面に引っかかる爪が形成されてよい。
【0046】
2つの管部材11の固定構造は、導波管10の例に限られない。例えば、係合部23は第1金具20ではなく、樹脂部12に形成されてもよい。つまり、一方の管部材11の樹脂部12と他方の管部材11の樹脂部12とが係合し、互いに固定されてもよい。他の例では、被係合部12hは樹脂部12ではなく、第2金具30に形成されてもよい。つまり、一方の管部材11の第1金具20と他方の管部材11の第2金具30とが互いに係合してもよい。
【0047】
[製造方法]
導波管10の製造方法の例について説明する。
図7Aに示すように、延伸部28及び連結部29により連結された複数の第1金具20を準備する。連結部29は一般的にキャリアであり、金具20はプレス工程により連続して形成される。同様に、延伸部38及び連結部39により連結された複数の第2金具30を準備する。連結部39もキャリアであり、金具30がプレス工程により連続して形成される。
【0048】
次に、
図7Bに示すように、インサート成形により、金具20、30と樹脂部12とを一体化する。すなわち、樹脂部12を成形するための金型内に金具20、30を装着し、その金型に樹脂を注入して金具20、30と樹脂部12とを一体化する。このとき、内露出部21、31の露出面21a、31aは樹脂部12の内面で露出している。また、延伸部28、38と連結部29、39は樹脂部12から突出している。
【0049】
次に、
図7Cに示すように、樹脂部12の内面に導体層13を形成する。具体的には、樹脂部12の内面にインク状やペースト状の導電性材料を塗布し、第1導体層13Aを形成する。これにより、第1導体層13Aと内露出部21、31とが接触する。導電性材料としては、例えば、銀や、銅、酸化亜鉛などのインク(又はペースト)を利用することができる。第1導体層13Aは、樹脂部12の側部12b、12cの対向面12e、12fにも塗布されてよい。
【0050】
導電性材料を塗布する前に、樹脂部12の内面に粗化処理を施してもよい。粗化処理としては、例えば、レーザ処理や、ブラスト処理、UV照射処理、プラズマ処理が利用できる。粗化処理によって導体層13と樹脂部12の表面との密着性を向上できる。また、樹脂部12の内面を粗化することによって、第1導体層13Aとなる導電性材料を塗布したときに、第1導体層13Aを樹脂部12の内面に均一に広げることができる。
【0051】
第1導体層13Aの形成後、電解めっき工程によって、第2導体層13Bとしてめっき層を第1導体層13A上に形成する。このとき、金具20、30及び第1導体層13Aがカソード電極として機能するように、金具20、30にかける電位を設定する。金具20は延伸部28及び連結部29により一体に形成されているので、連結部29に通電することで複数の金具20に同時に通電できる。また、金具30も同様に、延伸部38及び連結部39により一体に形成されているので、連結部39に通電することで複数の金具30に同時に通電できる。
【0052】
次に、
図3に示すように、延伸部28を樹脂部12の外面で切断する。同様に、延伸部38を樹脂部12の外面で切断する。
【0053】
これによって、管部材11が得られる。そして、以上の方法によりもう一つの管部材11を製造し、2つの管部材11を
図2に示すようにして上下方向で組み合わせる。これによって導波管10が製造される。
【0054】
導波管10の製造方法は、
図3、
図7A〜
図7Cを参照しながら説明した例に限られない。例えば、
図7Bに示した例では、延伸部28、38および連結部29、39は、樹脂部12の側部12b、12cの外面から突出している。しかしながら、複数の金具20あるいは複数の金具30を樹脂部12の内部で連結し、一つの延伸部29あるいは39を樹脂部12の延伸方向での端面12g(
図7B参照)から突出してもよい。この場合、電解めっき工程では、この突出している部分を通して第1導体層13Aに電位を加えることができる。
【0055】
さらに他の例として、インサート成形は利用されなくてもよい。樹脂部12を形成した後に、樹脂部12に形成した孔に金具20、30が圧入されてもよい。
【0056】
[第1変形例]
図8〜
図11を参照しながら、導波管10の変形例について説明する。これらの図では、変形例として導波管110が示されている。以下では、導波管10と導波管110の相違点を中心にして説明する。導波管110について導波管10と同符号で説明のない事項は、導波管10で説明した構造が適用されてよい。
【0057】
導波管110は、金具の構造において、導波管10と異なっている。導波管110において、2つの管部材11のそれぞれは第1金具120(
図10A参照)と第2金具130(
図10B参照)とを有している。
【0058】
導波管110の例においても、2つの管部材11は同じ構造を有しており、第1管部材11Aの第1金具120と第2管部材11Bの第2金具130とが電気的に接続し、第1管部材11Aの第2金具130と第2管部材11Bの第1金具120とが電気的に接続している。第1金具120は第1接続部122(
図10A参照)を有し、第2金具130は第2接続部132(
図10B参照)を有している。
【0059】
一方の管部材11の第1金具120の第1接続部122と、他方の管部材11の第2金具130の第2接続部132は、それらの電気的接続を確立すると同時に、2つの管部材11の分離を規制するように互いに係合している(
図11参照)。このように、2つの管部材11は接続部122、132によって係合するので、第1金具120は、上述した第1金具20とは異なり、係合部23を有していない。また、樹脂部材12は被係合部12hを有していない。
【0060】
図9に示すように、第1接続部122は、樹脂部12の第1側部12bから、2つの管部材11が組み合わされる方向に突出している。第1接続部122は、2本の弾性部122a(
図10A参照)を有している。2本の弾性部122aの上端は互いに接続し、2本の弾性部122aの下端も互いに接続している。2本の弾性部122aの中途部は互いに離れており、それらの中途部が互いに近づいたり離れたりするように弾性変形可能である。一方、第2金具130の第2接続部132には、2つの管部材11が組み合わされる方向(対向方向)に貫通する孔132a(
図10B参照)が形成されている。
【0061】
2つの管部材11が組み合わされた状態において、第1接続部122の2本の弾性部122aは第2接続部132の孔の内側に嵌められている。このとき、2本の弾性部122aは反対方向に弾性変形し、自身の弾性力により、第2接続部132の孔132aの内側に押しつけられる。すなわち、第2接続部132が2本の弾性部122aを挟む。これにより、2つの接続部122、132は電気的に接続するとともに、それらの分離を規制する。
【0062】
また、導波管110の例では、2つの管部材11の樹脂部12も互いに嵌合するよう形成されている。詳細には、
図8及び
図9に示すように、第1側部12bの対向面12eには凸部12mが形成され、第2側部12cの対向面12fに凹部12nが形成されてよい。2つの管部材11が組み合わされたとき、一方の管部材11の凸部12nは他方の管部材11の凹部12nに嵌まる。
【0063】
また、第1金具120は第1内露出部121(
図9及び
図10A参照)と通電部124(
図8参照)を有している。第1内露出部121は樹脂部12の材料で覆われていない露出面121aを有する。この露出面121aと通電部124の作用効果は第1内露出部21の露出面21aと通電部24と同様である。
【0064】
第2金具130は第2内露出部131(
図10B参照)と通電部134(
図8参照)を有している。そして、第2内露出部131は樹脂部12の材料で覆われていない部分である露出面131a(
図10B)を有する。この露出面131aと通電部134の作用効果は第2内露出部31の露出面31aと通電部34と同様である。
【0065】
導波管110の製造方法は、基本的には、
図3、
図7A〜
図7Cを参照して説明した導波管10の製造方法と同じである。導波管10と異なる点は、2つの管部材11を上下方向で組み合わせると、第1金具120と第2金具130が第1接続部122と第2接続部132により電気的に接続されるのと同時に係止されることである。すなわち、導波管10の例では、金具20と金具30の電気的接続と管部材11の結合が異なる構成で行われたが、導波管110の例では、電気的接続と管部材11の結合が第1接続部122と第2接続部132により同時に行われる。
【0066】
[第2変形例]
上述したように、導波管10、110はその延伸方向に対して直交する方向において組み合わされる2つの管部材によって構成されている。しかしながら、導波管の全体が一体的に形成されてもよい。
図13及び
図14は、そのような構造の導波管の例である導波管210を説明するための図である。
図15A及び
図15Bは導波管210の製造方法の例を説明するための図である。以下では、導波管10と導波管210の相違点を中心にして説明する。導波管210について説明のない事項は、導波管10で説明した構造が適用されてよい。
【0067】
図13及び
図14に示す導波管210は管状の樹脂部212を有している。樹脂部212は、導波管10の樹脂部とは異なり、一体的に形成されている。すなわち、樹脂部212は、導波管210の全周に亘って繋がっている。樹脂部212は円柱状であるが、四角柱であってもよい。また、延伸方向にまっすぐでも良いし、湾曲していてもよい。
【0068】
図14に示すように、金具220は、樹脂部212の内面に位置し且つ樹脂部212の材料で覆われていない内露出部221を有している。内露出部221の樹脂に覆われていない面である露出面221aは導体層13によって覆われ導体層13に接触している。詳細には、露出面221aはインク状又はペースト状の導電性材料で形成されている第1導体層13Aに接している。金具220は、上述した金具20、30と同様、金属板から形成されている。内露出部221の露出面221aはこの金属板の一方の面である。また、金具220は、金具20、30と同様に、樹脂部212の外周面で露出している通電部224(
図14参照)を有している。
【0069】
導波管210の例において、樹脂部212の断面は円環状である。そのため、露出部212は樹脂部212の内面212aに合わせて円弧状に湾曲している。すなわち、樹脂部212は内露出部221を取り囲む部分を有し、露出面221aは樹脂部212の内面212aと面一に形成されている。このことによって、厚さが均一な導体層13を形成できる。
【0070】
導波管210は複数の露出部212を有してよい。例えば、導波管210は、導波管210の延伸方向で並ぶ複数の露出部212を有してよい。さらに他の例では、導波管210は、導波管210の周方向において間隔をあけて配置される複数の露出部212を有してもよい。
【0071】
導波管210の製造方法の例について説明する。導波管210の製造方法は、基本的には、
図3、
図7A〜
図7Cを参照して説明した導波管10の製造方法と同じである。すなわち、
図15Aに示すように、延伸部228により連結部229で連結された複数の金具220を準備する。
図15B示すように、インサート成形により、金具220と樹脂部212とを一体化する。すなわち、樹脂部212を成形するための金型内に金具220を挿入し、その金型に樹脂を注入して金具220と樹脂部212とを一体化する。このとき、内露出部221の露出面221Aは樹脂部212の内面212aで露出している。また、延伸部228と連結部229は樹脂部212から突出している。
【0072】
次に樹脂部212の内面212aを粗化した後に、内面212aに導体層13を形成する。詳細には、インク状やペースト状の導電性材料を内面212aに塗布し、第1導体層13Aを形成する。その後、電解めっき工程によって、第2導体層13Bとしてめっき層を第1導体層13A上に形成する。この電解めっき工程では、棒状のアノード電極が樹脂部212の内側に挿入されてよい。第2導体層13Bの形成後、金属板220Aの延伸部228を樹脂部212の外面で切断する。これによって、管部材210が得られる。
【0073】
[まとめ]
以上説明したように、導波管10、110、210においては、樹脂で形成されている管状の樹脂部12、212と、樹脂部12、212の内面に形成されている導体層13と、樹脂部12、212によって保持されている少なくとも1つの金具20、30、120、130、220とを有している。金具20、30、120、130、220は、樹脂部12、212の材料である樹脂で覆われていない内露出部21、31、121、132、221を有している。導体層13は内露出部21、31、121、132、221を覆い内露出部21、31、121、132、221に接している。この構造によると、電解めっき工程を利用した導体層13の形成が容易化できる。
【0074】
また、各導波管10、110、210には、互いに離れている複数の内露出部21、31、121、132、221が設けられている。より詳細には、複数の内露出部21、121、221は導波管10、110、210の延伸方向において間隔をあけて並んでいる。また、複数の内露出部31、131は導波管10、110の延伸方向において間隔をあけて並んでいる。さらに、内露出部21、121と内露出部31、131は、導波管10、110の幅方向において離れている。この構造によると、電解めっき工程において第2導体層13Bを形成するときに、第1導体層13Aの電位が不均一となることを防ぐことができ、第2導体層13Bの厚さの不均一を軽減できる。
【0075】
また、導波管10、110は2つの管部材11を有している。2つの管部材11のそれぞれは、樹脂部12の内面に形成されている導体層13と、樹脂部12によって保持されており且つ導体層13に接続している内露出部21、31を有している金具20、30を有している。そして、一方の管部材11の金具20、30と他方の管部材11の金具30、40とが互いに接続している。これによると、2つの管部材11の導体層13の電位のずれを低減できる。
【0076】
[他の変形例]
本開示で提案する導波管は、上述した導波管10、110、210の構造に限られない。
【0077】
例えば、各金具20が複数の内露出部21を有してもよい。同様に、各金具30、120、130、220が、導波管10、110、210の延伸方向で並んでいる複数の内露出部31、121、132、221を有してもよい。
【0078】
内露出部21、31の露出面21a、31aの位置は樹脂部12の内面でなくてもよい。例えば、露出面21a、31aは樹脂部12の側部12b、12cの対向面12e、12fに位置し、第1導体層13Aと接していてもよい。同様に、導波管110において、露出面121a、131aの位置は樹脂部12の内面でなくてもよい。
【0079】
導波管10、110とは異なり、2つの管部材11の構造は異なっていてもよい。例えば、第1管部材11Aが有している樹脂部12と、第2管部材11Bが有している樹脂部12は、組み合わされて管状をなす構造を有していれば、それらの構造は互いに異なっていてもよい。さらに他の構造として、2つの管部材11の樹脂部12の構造は同じであるものの、金具20、30の形状が2つの管部材11において異なっていてもよい。
【0080】
導波管10において、2つの管部材11は、係合部23と被係合部12hとによって固定されていた。しかしながら、導波管10は、2つの管部材11を固定する部材(例えば、管部材11の外側に巻かれるバンド)を有してもよい。
【0081】
導波管10は2種類の金具20、30を有している。同様に、導波管110は2種類の金具120、130を有している。しかしながら、金具の種類は1種類でもよい。
【0082】
導体層13は第1導体層13Aと第2導体層13Bとを有している。しかしながら、導体層13は、必ずしも2層構造でなくてもよい。例えば、導体層13は、インク状又はペースト状の導電性材料が樹脂部12の内面に塗布されて形成された第1導体層13Aだけで構成されてもよい。他の例として、導波管の製造工程において、インク状又はペースト状の導電性材料(例えば、銅)と、電解めっき工程で形成されるめっき層の材料とが同じであってよい。この場合、導体層13はその材料で形成される1層となる。
【0083】
導波管10を構成する管部材11の数は、2つより多くてもよい。例えば、3つ又は4つの管部材が、導波管の延伸方向に直交する方向で組み合わされて1本の導波管が構成されてもよい。