【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0062】
ソーセージの作製方法および評価方法をそれぞれ以下に示す。なお、本実施例中、配合割合の%および配合比率はいずれも重量を基準とする。
【0063】
<ソーセージ作製方法>
1.生肉をミンサーで粗挽きにし、粗挽き肉を調製し、原料肉とした。
2.粗挽き肉、水(氷)、副原料および食品改良剤(ある場合)をフードカッターで1分間混合した。
3.ラードを入れて、さらにフードカッターで40秒間混合した。
4.ケーシングチューブに充填し、密封した。
5.充填したケーシングチューブを85℃にて40分間ボイル加熱した。
6.30分間氷冷することで冷却した。
【0064】
<評価方法>
(1)官能評価
パネリスト10名にて、上記作製方法の第6工程後(冷却後)のソーセージを喫食し、その食感を硬さおよび弾力感の観点から各自が評価し、協議して結論づけた。硬さおよび弾力感は、歯ごたえの程度に基づきそれらの有無、または強く感じられたかもしくは弱く感じられたかを判断した。
(2)歩留まり測定
上記作製方法の第6工程後(冷却後)に重量を測定し(「加熱後重量」)、加熱前重量を100とした場合の加熱後重量を算出し、歩留まり率(%)とした。
(3)物性評価
上記作製方法の第6工程後(冷却後)にソーセージを15mm幅にカットし、レオメーターにて破断試験力を測定した(使用機器:レオメーター(株式会社島津製作所:EZ−Test)/プランジャー:球状型プランジャー(直径4mm))。破断試験力が大きいほど破断強度が強く、ソーセージに硬さがあることが示される。上記作製方法の第5工程の加熱時に著しい離水があり、結着性が悪く物性評価不能だったものについては、「N.D.」とした。
(4)結着性評価
結着性評価について、歩留まり率と官能評価結果を総合して以下のように基準を設け、評価した。結着性不良なものは上記作製方法の第5工程の加熱時に著しい離水が見られて歩留まり率が低く、結着性良好なものは保水性が高く、歩留まり率は高くなる傾向があることから、歩留まり率が90%未満のものを「結着性が悪い」と判断した。歩留まり率が90%以上であるが、官能評価において「硬さ、弾力感がない」もしくは「硬さ、弾力感が弱い」と評価されたものは、「結着性が弱い」と判断した。歩留まり率が90%以上でかつ官能評価において、「硬さと弾力感がややある」ものは「結着性がやや良好」と判断し、「硬さ、弾力感がある」と評価されたものは、「結着性が良好」と判断した。
【0065】
<検討例1:糖または糖アルコールの添加によるソーセージの食感改良の検討>
ソーセージに通常用いられるリン酸塩の添加に代えて、種々の糖または糖アルコールの添加を検討した。ソーセージの原材料配合を表1に示す。通常のリン酸塩使用ソーセージの配合としてピロリン酸四ナトリウムを添加した場合(P1)と、リン酸塩不使用配合(N1)とをそれぞれコントロールとして用いた。
【0066】
以下は、表1に示した食感改良効果を検討した物質とその添加量を示す(「%」はソーセージ原材料合計重量に対する割合):
リン酸塩使用区(P1):ピロリン酸四ナトリウム0.2%(ポジティブコントロール)。
リン酸塩不使用区(N1):リン酸塩不使用配合(ネガティブコントロール)。
グルコース添加区(G1−1、1−2、1−3):順に、グルコース0.5%、1.0%、2.0%。
フルクトース添加区(F1−1、1−2、1−3):順に、フルクトース0.5%、1.0%、2.0%。
キシリトール添加区(Xt1−1、1−2、1−3):順に、キシリトール0.5%、1.0%、2.0%。
キシロース添加区(Xl1−1、1−2、1−3、1−4):順に、キシロース0.5%、1.0%、2.0%、3.0%。
【0067】
【表1】
【0068】
評価について、歩留まり結果、官能評価および結着性評価の結果を表2および物性評価(破断試験)の結果を
図1に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
・リン酸塩使用区(P1):硬さと弾力感があり、結着性良好である。
・リン酸塩不使用区(N1):保水性が悪く、離水がみられて歩留まりが著しく低下した。また、硬さと弾力感のない食感になり、結着性が悪い。
・グルコース添加区(G1−1〜1−3):グルコースの濃度を増すとわずかに硬さが増す傾向が見られたが、リン酸塩使用区(P1)と比べると硬さ、弾力感はなく、結着性も悪い。
・フルクトース添加区(F1−1〜1−3):フルクトースの濃度を増すとわずかに硬さが増す傾向が見られたが、リン酸塩使用区(P1)と比べると硬さ、弾力感はなく、結着性も悪い。
・キシリトール添加区(Xt1−1〜1−3):キシリトール添加は、濃度に依存せず、硬さ、弾力感、結着性向上効果は見られなかった。
・キシロース添加区:
(Xl1−1):キシロース0.5%添加では、硬さおよび弾力感がなく、結着性が悪かった。
(Xl1−2):キシロース1.0%添加では、硬さおよび弾力感がなく、結着性が悪かった。作製されたソーセージにやや甘味が感じられた。
(Xl1−3):キシロース2.0%添加では、離水は大幅に改善されて歩留まり良好で、結着性も良好であった。硬さと弾力感があり、物性は良好であった。しかし得られたソーセージの外観は褐変し、甘味も感じられた。
(Xl1−4):キシロース3.0%添加では、離水がほとんどなく歩留まり良好で、強い硬さ、弾力感を持つ良好な物性が確認され、結着性も良好であったが、得られたソーセージは褐変し、強い甘味が感じられた。
【0071】
上記のように、キシロースを添加した場合、濃度依存的にリン酸塩不使用ソーセージ(N1)の物性を改善する効果が観察された。しかし、キシロース単独の場合、添加量が多くなると、得られたソーセージに褐変や甘味が生じるという問題があった。
【0072】
<検討例2:キシロースとアルカリ塩との併用検討>
検討例1の結果に基づいてキシロースを食感改良剤の成分として選択し、そしてソーセージの褐変および甘味の問題の解消のため、アルカリ塩との併用を検討した。ソーセージの原材料配合を表3に示す。
【0073】
食感改良剤として、キシロースとアルカリ塩とを含む製剤を調製した(実施例2−1(NX2−1)および2−2(NX2−2))。アルカリ塩として炭酸ナトリウムを用いた。比較のため、ピロリン酸四ナトリウム(P2)、炭酸ナトリウム単独(Na2)ならびにキシロース単独(Xl2−1〜Xl2−3)を食感改良剤として用いた(それぞれ比較例2−1〜2−5)。
【0074】
以下は、表3に示した食感改良剤の組成とその添加量を示す(「%」はソーセージ原材料合計重量に対する割合):
<比較例>
2−1(P2):ピロリン酸四ナトリウム0.2%添加。
2−2(Na2):炭酸ナトリウム0.1%添加。
2−3(Xl2−1):キシロース0.5%添加。
2−4(Xl2−2):キシロース1.0%添加。
2−5(Xl2−3):キシロース2.0%添加。
<実施例>
2−1(NX2−1):炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース0.5%添加。
2−1(NX2−2):炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース1.0%添加。
【0075】
【表3】
【0076】
評価について、歩留まり結果、官能評価および結着性評価の結果を表4および物性評価(破断試験)の結果を
図2に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
炭酸ナトリウム単独(比較例2−1(Na2))では、離水が防止され歩留まりが高くなるが、官能評価で硬さおよび弾力感が弱かった。また、結着性が弱く、破断強度がリン酸塩使用区(比較例2−1(P2))と比べて低いことが観測された。
【0079】
キシロース単独の場合、添加量の増大と共に歩留まり率が向上したが、各添加量で以下のような結果が確認された:
0.5%添加では、官能評価で硬さと弾力感がなく、かつ結着性が悪く、破断強度は低い(比較例2−3(Xl2−1));
1.0%添加では、硬さと弾力感がなく、かつ結着性が悪く、破断強度は0.5%添加に比べると高いもののなお低く、そしてやや甘みが感じられた(比較例2−4(Xl2−2));そして
2.0%添加では、硬さと弾力感があり、かつ結着性が良好となり、破断強度も
図2に見られるように相当に上昇したが、ソーセージに褐変が生じ、比較例2−4よりも強い甘みが感じられた(比較例2−5(Xl2−2))。
【0080】
これらに対して、キシロースと炭酸ナトリウムとを併用した場合は、以下の結果が得られた:
実施例2−1(NX2−1)では、キシロース0.5%単独添加(比較例2−3(Xl2−1))および炭酸ナトリウム単独(比較例2−1(Na2))と比べて歩留まり率が高くなり、そして官能評価の硬さ、弾力感と結着性とが改善された。また破断強度は、
図2に見られるように、キシロース2.0%単独添加(比較例2−5)と同等程度に高くなった;そして
実施例2−2(NX2−2)では、やや甘みが感じられたが、歩留まり率が高く、結着性は良好であり、かつ官能評価で硬さと弾力感があり、破断強度も高かった。
【0081】
以上のように、炭酸ナトリウムを併用すると、キシロース0.5%添加の際に、ソーセージの味覚および外観のような他の品質に大きな問題を与えることなく比較的良好な食感および物性を得ることができた。
【0082】
<検討例3:キシロースと併用するアルカリ塩の量変化検討>
キシロース0.5%添加条件で炭酸ナトリウムの添加量の変化を検討した。ソーセージの原材料配合を表5に示す。
【0083】
以下は、表5に示した食感改良剤の組成とその添加量を示す(「%」はソーセージ原材料合計重量に対する割合):
<比較例>
3−1(P3):ピロリン酸四ナトリウム0.2%添加。
<実施例>
3−1(NX3−1):キシロース0.5%および炭酸ナトリウム0.05%添加。
3−2(NX3−2):キシロース0.5%および炭酸ナトリウム0.1%添加。
3−3(NX3−3):キシロース0.5%および炭酸ナトリウム0.2%添加。
【0084】
【表5】
【0085】
評価について、歩留まり結果、官能評価および結着性評価の結果を表6および物性評価(破断試験)の結果を
図3に示す。
【0086】
【表6】
【0087】
実施例3−1〜3−3の結果に見られるように、炭酸ナトリウムの量の増加につれて歩留まり率は高くなり、保水性が高まる傾向を示した。他方で炭酸ナトリウム0.2%添加(実施例3−3(NX3−3))の場合、硬さに関してやや弱まる傾向が示された。実施例3−2(炭酸ナトリウム0.1%添加(NX3−2))において、官能評価で硬さ、弾力性があり、かつ結着性が良好で、物性評価(破断試験)でも高い破断強度が観測された。
【0088】
<検討例4:鶏生肉による物性改良検討>
炭酸ナトリウム0.1%添加条件でキシロースの量の変化を検討した。さらに原料肉の豚モモ肉に鶏生肉を併用した場合についても検討した。鶏生肉は、ブロイラーの生のムネ肉を用い、上記のソーセージの作製方法の第1工程で豚モモ肉と共にミンサーで粗挽きにした。ソーセージの原材料配合を表7に示す。
【0089】
以下は、表7に示した食感改良剤の組成とその添加量を示す(「%」はソーセージ原材料合計重量に対する割合であり、鶏ムネ肉は原料肉の豚モモ肉との重量比にて表す):
<比較例>
4−1(P4):ピロリン酸四ナトリウム0.2%添加。鶏ムネ肉使用なし。通常のリン酸塩使用ソーセージの配合に対応する。
4−2(N4):リン酸塩不使用。鶏ムネ肉使用なし。
4−3(NC4):豚モモ肉:鶏ムネ肉=80:20。
4−4(NaC4):炭酸Na0.1%添加。豚モモ肉:鶏ムネ肉=80:20。
4−5(XC4):キシロース0.5%添加。豚モモ肉:鶏ムネ肉=80:20。
<実施例>
4−1(NX4):炭酸Na0.1%およびキシロース0.5%添加。鶏ムネ肉使用なし。
4−2(NXC4):炭酸Na0.1%およびキシロース0.5%添加。豚モモ肉:鶏ムネ肉=80:20。
【0090】
【表7】
【0091】
評価について、歩留まり結果、官能評価および結着性評価の結果を表8および物性評価(破断試験)の結果を
図4に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
鶏生肉配合のみ(比較例4−3(NC3))では、リン酸不使用品(比較例4−2(N4))と同様に、加熱時に離水が発生し、結着性ならびに硬さおよび弾力感は改善されなかった。鶏生肉を配合した炭酸ナトリウム添加(比較例4−4(NaC4))では、歩留まり率が高いが、硬さおよび弾力感がいずれも弱く、結着性は弱かった。鶏生肉を配合したキシロース添加(比較例4−5(XC4))では、リン酸不使用品(比較例4−2(N4))より歩留まり率が若干向上したが、加熱時に離水が発生し、結着性が悪かった。
【0094】
キシロースと炭酸Naとの併用の場合、鶏生肉非配合系(実施例4−1(NX4))で歩留まり率が高く、官能評価で硬さと弾力感がややあり、結着性がやや良好であった。鶏生肉を配合することで(実施例4−2(NXC4))、保水性が高く、かつ硬さと弾力感があり、より結着性に優れたソーセージを得ることができた。
【0095】
<検討例5:鶏生肉比率変化の検討>
炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース0.5%添加として、原料肉に対する鶏生肉(生の鶏ムネ肉)の比率変化を検討した。ソーセージの原材料配合を表9に示す。
【0096】
以下は、表9に示した食感改良剤の組成とその添加量を示す(「%」はソーセージ原材料合計重量に対する割合であり、鶏ムネ肉は原料肉の豚モモ肉との重量比にて表す):
<比較例>
5−1:ピロリン酸四ナトリウム0.2%添加。鶏ムネ肉使用なし。通常のリン酸塩使用ソーセージの配合に対応する。
<実施例>
5−1:炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース0.5%添加。鶏ムネ肉使用なし。
5−2:炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース0.5%添加。豚モモ肉:鶏ムネ肉=95:5。
5−3:炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース0.5%添加。豚モモ肉:鶏ムネ肉=90:10。
5−4:炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース0.5%添加。豚モモ肉:鶏ムネ肉=80:20。
5−5:炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース0.5%添加。豚モモ肉:鶏ムネ肉=70:30。
5−6:炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース0.5%添加。豚モモ肉:鶏ムネ肉=50:50。
5−7:炭酸ナトリウム0.1%、キシロース0.5%添加。鶏ムネ肉のみ使用。
【0097】
【表9】
【0098】
評価について、歩留まり結果、官能評価および結着性評価の結果を表10および物性評価(破断試験)の結果を
図5に示す。
【0099】
【表10】
【0100】
炭酸ナトリウム0.1%およびキシロース0.5%添加の際、鶏生肉を原料肉に対して5%配合させた場合(実施例5−2)、鶏生肉非配合の場合(実施例5−1)と比べて、官能評価で硬さと弾力感が若干強くあり、結着性がやや良好で、物性評価(破断試験)でもより高い破断強度が観測された。原料肉に対して10%の割合で鶏生肉を配合した場合(実施例5−3)、歩留まり率が高く、官能評価で硬さと弾力感があり、かつ結着性が良好で、よりソーセージらしい物性が得られた。鶏生肉比率20%〜50%(実施例5−4、実施例5−5および実施例5−6)により、リン酸塩使用ソーセージ(比較例5−1)により近い食感となり、ソーセージのプリッと感がより感じられた。実施例5−6では、リン酸塩使用ソーセージ(比較例5−1)よりも強い弾力感のソーセージが得られた。原料肉に豚モモ肉を用いずに鶏ムネ肉を用いた場合(実施例5−7)、硬さが少し軟らかかったが、弾力感があり、結着性は良好であった。