(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-14702(P2020-14702A)
(43)【公開日】2020年1月30日
(54)【発明の名称】動作評価システム
(51)【国際特許分類】
A63B 71/06 20060101AFI20191227BHJP
G10K 15/02 20060101ALI20191227BHJP
A63B 69/00 20060101ALN20191227BHJP
【FI】
A63B71/06 A
G10K15/02
A63B69/00 514
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2018-139852(P2018-139852)
(22)【出願日】2018年7月25日
(71)【出願人】
【識別番号】318006033
【氏名又は名称】山下 克宏
(72)【発明者】
【氏名】山下 克宏
【テーマコード(参考)】
5D208
【Fターム(参考)】
5D208CA02
(57)【要約】
【課題】
ダンスパフォーマンスや体操の動作の正確性を定量化し、習熟度の判定や順位付け評価を客観的にかつ簡便に行う方法の開発
【解決手段】
ダンスパフォーマンスや体操を実施する際に手本となる教師パフォーマーを定め、その教師パフォーマーが身に着けたり、手に保持した加速度センサーから得られる加速度センサーデータと、評価される対象のパフォーマーが同様に身に着けた加速度センサーデータの一致度によりパフォーマンスのできばえを評価するアルゴリズムおよびそれを実現する加速度センサーと音響発生機器を含むシステム
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサーを用いてその動作の質を評価するシステムにおいて、(1)お手本となる教師加速度センサーデータ、(2)動作の質を評価される側の加速度センサーデータ、および(3)(1)と(2)の一致度を評価するプログラム、を有することを特徴とする、動作評価システム
【請求項2】
加速度センサーがスマホ内蔵のセンサーであることを特徴とする請求項1の動作評価システム
【請求項3】
音楽とともに動作が実施されることを特徴とする請求項1または2の動作評価システム
【請求項4】
(1)教師加速度センサーデータ、及び(4)音楽ソフトがインターネットサーバー上に保存されていることを特徴とする請求項3に記載の動作評価システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサーを用いた動作評価システムに関するものであり、評価のアルゴリズムとして、お手本となる教師加速度センサーデータとの一致度の比較によって対象となる動作の評価を実施するシステムである。
【背景技術】
【0002】
決められたリズムや音楽に合わせて動作を行うことは、歌謡曲の振付、ダンス、体操などさまざまである。この動作が適切に行われているかどうかについては、基本的には視覚的な情報で判定される。視覚的な動作情報をパターン化して利用することについては特許文献1に示されているが、基準となる動作情報との一致性を評価するものではない。
また、音楽を聴いているときの拍手等のイベント発生を判定するためのセンサーとして加速度センサーを用いることについては特許文献2に記載があるが、音楽に特有の動作パターンとの一致性を評価するものではない。
【特許文献1】特開2007-018388
【特許文献2】特開2012-212245
【0003】
一方、近年スマートフォンやウエアラブルセンサーなどの急速な普及により、各人が加速度センサーを保持、着用することが一般的になっているが、この加速度センサーのデータパターンの音楽や映像との同期性や、他の加速度センサーのデータパターンとの一致性を評価するプログラムおよびシステムは存在しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、動作の特徴を個別にもつダンスや体操に対して、それらを一意的に評価するアルゴリズム及びシステムを構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、音楽に合わせた動作が定まっている振付、ダンス、体操などの動作正確性の評価を、手本となる動作者が保持あるいは着用する加速度センサーで取得した加速度センサーデータ(教師データ)と、評価対象者の加速度センサーデータとの一致性に基づいて評価するプログラムおよびシステムにより、動作内容に関する事前情報等を全く必要とせず評価対象者の動作を評価、得点化することが可能となる。
【0006】
本発明は、手本となる動作者が保持あるいは着用する加速度センサーで得られるデータパターン(教師データ)と、評価対象となる動作者が保持あるいは着用する加速度センサーで得られるデータパターンの一致性を評価することにより、動作の適切性を評価するプログラムおよびシステムである。教師データは、評価対象者のデータ取得に先だって行われてもよいし、全く同時に取得してもよいし、場合によっては評価対象者のデータ取得の後に行っても構わない。
動作者が保持あるいは着用する加速度センサーは、本システム用に構成された加速度センサーシステムでもよいが、好ましくはスマートフォンやスマートウオッチ等に内蔵される加速度センサーである。加速度センサーを身体の複数部分に装着して、複数個所の加速度センサーデータを用いることで動作評価の精度を高めることも好ましい。
【0007】
本発明においては音楽とともに動作や運動が実施されるダンスや体操が好ましく、その音源(音響発生装置及び音楽ソフト)がスマートフォンやスマートウオッチに内蔵されることが一つの好ましい形態である。音楽ソフトがスマートフォンやスマートウオッチに内蔵されるとは、インターネット経由でストリーミング再生される音楽および映像等も含まれる。
また別の好ましい形態は、音楽がスマートフォンやスマートウオッチに内蔵されておらず、ライブ会場等の複数人が同時に聞くことのできる音響に対して手本となる動作者と評価対象者が同時に動作することにより、そのデータの一致性を評価することも可能である。
このとき手本となる動作者と評価対象者の加速度データ取得の同時性を担保する必要があるが、この場合の方法としては、音響発生装置側からの信号などを受け取ってデータの取得タイミングを同期させる方法も好ましい形態の1つである。
さらに手本となる動作者と一致させて動作するということでは、必ずしも音楽やリズムも必須とはならない。
【0008】
本発明において、教師データとなる加速度データはデータベースに保存されライブラリとして提供されることが好ましい。またこのライブラリを通じて、教師データの元になる音楽ソフトを配信することが好ましい。
【0009】
教師データと評価対象者データとの一致性の評価を行うプログラムは、加速度データを取得するスマートフォンやスマートウオッチなどに内蔵してもよいし、インターネットを介したサーバー(クラウド)上においても構わない。スマートフォンやスマートウオッチに内蔵のプログラムで評価を行う場合は、教師データをライブラリからダウンロードするなどして、スマートフォンやスマートウオッチに保持しておくことが必要となる。別の好ましい形態としては、教師データと評価対象者データとの一致性の評価をサーバー(クラウド)上で行うことである。
【0010】
教師データと評価対象者データとの一致性の評価方法は限定されないが、好ましい1つの例を以下に示す。
教師データとなる加速度データ(3次元データ)をfx(t)、fy(t)、fz(t)、評価対象となるデータをgx(t)、gy(t)、gz(t)に対して、
hx(t) = (gx(t) - fx(t))^2
hy(t) = (gy(t) - fy(t))^2
hz(t) = (gz(t) - fz(t))^2
を評価値として設定する。加速度データが完全に一致すれば0であり最高パフォーマンス点、静止状態のgx(t)、gy(t)、gz(t)(定数)を代入した際のhx(t)、hy(t)、hz(t)を最低パフォーマンス点として、実施されたパフォーマンスを得点化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は様々な分野で利用することが可能である。例えばエンターテイメント分野では、振り付けやダンスの正確性を評価するスマートフォンのアプリケーションや、コンサートやカラオケ等において、複数人が同一の動作を模倣する際にその動作の正確性を評価し提示するシステムなどとして利用可能である。またヘルスケア分野では、所定の動作の実施有無やその正確性に関する評価結果を元に健康管理や指導を行うなどの利用が考えられる。
【実施例1】
【0012】
本発明にて採用したシステムの構成は以下のとおりであるが、スマートフォンの機種や音楽プレーヤー、音楽ソフト等は本発明の機能を有するものであればいかなるものであっても実施可能である。
教師加速度データの取得
(1) 加速度センサー:iPhone6(Apple社製、登録商標)内蔵の加速度センサー
(2) 音響発生装置:上記iPhone6内蔵のMP3プレーヤー
(3) 音楽ソフト:ラジオ体操第一のmp3ファイル。(無償公開版)
(4) 手本となる体操実演者が(1)のiPhoneを右手に持ち、(3)の音楽に合わせてラジオ体操を行い、加速度センサーデータを100ミリ秒間隔で取得し、ネットワーク上に保存する。
評価対象者の加速度データ取得および評価
(5) (4)の教師加速度データおよび(3)の音楽ソフトを評価対象者のiPhone8にダウンロードする。
(6) 評価対象者が(6)のiPhoneを右手に持ち、音楽に合わせてラジオ体操を行い、同様に100ミリ秒間隔で加速度データを取得する。
(7) 以下のアルゴリズムで点数付けを行い、結果を表示する。
3次元ベクトルで取得されている加速度データをベクトルの絶対値に変換し、時刻tに置ける教師及び評価対象者の加速度絶対値をそれぞれA(t)、B(t)として、以下の評価にて得点化する。
得点(100点満点) = ( 1 - {A(t) - B(t)}^2 / {A(t)}^2) x 100
【実施例2】
【0013】
複数名の集団があり、各自がスマホ(機種の限定なし)を手に持っている。
そのうちの一人が教師役となり、動作を実施する。このとき音楽はなく、教師役の掛け声によって動作が開始される。
教師役以外の人は、教師役の動作と完全に一致するように自らも動作する。このとき動作の内容はあらかじめ決まっている場合もあるし、そうでない動作の場合もある。
スマホに内蔵の加速度センサーの情報がwifi経由にてwebアプリサーバーに送信され、教師の加速度センサーデータとの一致度で、各自の動作の俊敏さや正確性を評価し、ランキング付けする。
この実施例においては当然音楽が流れている場合もある。
また各自の持つ加速度センサーは本例の場合のようにスマホ内蔵センサーの場合もあるし、アップルウオッチのような腕時計型のものの場合もある。さらに一人が複数の加速度センサーを身につけて、複数の加速度センサーデータで教師データと比較することもできる。