(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-147558(P2020-147558A)
(43)【公開日】2020年9月17日
(54)【発明の名称】所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20200821BHJP
C07F 1/02 20060101ALI20200821BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20200821BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20200821BHJP
【FI】
C07F5/02 B
C07F5/02 C
C07F1/02
H01M10/0568
H01M10/0525
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-91092(P2019-91092)
(22)【出願日】2019年5月14日
(11)【特許番号】特許第6740424号(P6740424)
(45)【特許公報発行日】2020年8月12日
(31)【優先権主張番号】201910187355.9
(32)【優先日】2019年3月13日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519171538
【氏名又は名称】杉杉新材料(衢州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanshan Advanced Materials (Quzhou) Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】杜建委
(72)【発明者】
【氏名】楊氷
(72)【発明者】
【氏名】鐘子坊
(72)【発明者】
【氏名】周▲トゥン▼
(72)【発明者】
【氏名】曹青青
(72)【発明者】
【氏名】呉杰
【テーマコード(参考)】
4H048
5H029
【Fターム(参考)】
4H048AA02
4H048AA03
4H048AB91
4H048AD15
4H048AD18
4H048AD33
4H048BB17
4H048BB31
4H048BC51
4H048BC52
4H048VA11
4H048VA20
4H048VA22
4H048VA50
4H048VA75
4H048VA77
4H048VB10
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM01
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM06
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ12
5H029HJ01
5H029HJ14
5H029HJ18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高純度リチウム塩の製造方法及び前記リチウム塩を含有するリチウムイオン電池の提供。
【解決手段】工業用シュウ酸リチウムを精製するステップと、シュウ酸リチウムと三フッ化ホウ素・エチルエーテルを反応させて、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に精製補助ろ過膜で精製する合成反応のステップと、反応液を濃縮、結晶化するステップと、混合リチウム塩に対して精製及び乾燥を行うステップとを含む。本発明の高純度リチウム塩は、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムをモル比1:1の所定比率で含む混合リチウム塩であり、リチウムイオン電池用非水電解液に適用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法であって、
工業用シュウ酸リチウムに純水を加えて、撹拌してシュウ酸リチウム懸濁液を調製し、次に、金属キレート剤水溶液をシュウ酸リチウム懸濁液に加えて、30min撹拌し、吸引ろ過してシュウ酸リチウム固体を得て、次に、超純水でシュウ酸リチウム固体を3〜5回洗浄して吸引ろ過して、最後に、エタノールで洗浄してろ過し、乾燥させて、固体白色粉末として精製シュウ酸リチウムを得る、シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
撹拌しながら、シュウ酸リチウムを有機溶媒に加えて、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、調製したシュウ酸リチウム懸濁液が透明になるまで、三フッ化ホウ素・エチルエーテルを調製したシュウ酸リチウム懸濁液に滴下して、さらに反応が終了するまで撹拌し、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応ステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を真空濃縮させた後に結晶化させて、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの貧溶媒を用いて、結晶化させた粗製品を洗浄した後、上層又は下層の褐色溶液を除去して、さらに貧溶媒を添加し、このように3−4回洗浄して、上層又は下層の溶液を澄明にし、固体を真空乾燥させて、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む、ことを特徴とする調製方法。
【請求項2】
前記シュウ酸リチウムを精製するとき、金属キレート剤がエチレンジアミン四酢酸であり、乾燥温度が120℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項3】
前記合成反応において、溶媒が炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルエーテル、ジメチルホルムアミド又はアセトンであり、反応温度が70−90℃であり、反応時間が10−24hである、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項4】
前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを100:100−150:4−10:0.1−0.3:0.1−0.4:0.2−0.5の質量比で反応器に投入して、60−80℃で保温して窒素ガスを導入して、60−150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを100−300μmに制御して、紫外線で30−120s照射し、アセトンで6−24h洗浄して、静置して乾燥させ、精製補助ろ過膜を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項5】
前記反応液を濃縮させるときに、真空度が−0.01MPaであり、温度が60−90℃であり、結晶化させるときに、温度が−20℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項6】
前記混合リチウム塩を精製するときに、貧溶媒が低沸点ハロゲン化アルカン、非極性−弱極性の有機溶媒、又は両方の混合有機溶媒であり、真空乾燥させるときに、真空度が−0.01MPaであり、温度が80−100℃であることを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項7】
前記低沸点ハロゲン化アルカンが、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン又はクロロプロパンであり、前記非極性−弱極性の有機溶媒がシクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、ペンタン又は石油エーテルである、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項8】
リチウムイオン電池用非水電解液であって、所定比率混合による高純度リチウム塩0.5質量%−20質量%を含有する、ことを特徴とするリチウムイオン電池用非水電解液。
【請求項9】
リチウムイオン電池であって、
所定比率混合による高純度リチウム塩0.5質量%−20質量%を含有するリチウムイオン電池用非水電解液を、乾燥させたニッケル:コバルト:マンガンのモル比が6:2:2の4.2VNCM/グラファイトパウチ電池に注入して、従来のリチウムイオン製造技術によって製造されてなることを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池製造技術の分野に関し、具体的には、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池電解液は、電池においてイオンを輸送する担体である。通常、リチウム塩と有機溶媒からなる。電解液は、リチウム電池の正極と負極の間でイオンを伝導する役割を果たし、リチウムイオン電池に高電圧、高比エネルギーなどの利点を付与する。電解液は、通常、高純度有機溶媒、電解質リチウム塩、必要な添加剤などの原料を用いて、一定の条件で、所定比率で調製するものである。従来、最も一般的な電解質リチウム塩は六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)であり、電解液の製造過程に、六フッ化リン酸リチウムが電解液のコストの50%−60%を占め、主にリチウムイオンパワーバッテリー、リチウムイオンエネルギー貯蔵電池に用いられ、サイクル効率、熱安定性に優れて、伝導率が高いという利点を有する。
【0003】
一方、電解質リチウム塩としての六フッ化リン酸リチウムは、耐高温性、耐加水分解性が悪いという欠点があり、発生するフッ化水素が電極材料、SEI膜などの電池部材を破壊して、リチウム電池容量の低下や使用寿命の短縮の原因となる。様々なリチウム塩に備える異なる物理化学的性質を活用して、異なる種類のリチウム塩を配合することによって、各リチウム塩の優位性を組み合わせて、リチウム電池の特性を効果的に向上させることができる。
【0004】
六フッ化リン酸リチウムに比べて、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF
4)はより広い動作温度範囲、より強い耐加水分解性を有する一方、イオン移動度が低く、単独での成膜能力が悪いという欠点がある。リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiODFB)は新規リチウム塩であり、優れた成膜性能を有し、熱安定性、高低温性能、電気化学的安定性などのいずれも優れている。
【0005】
CN107698611Aにおいて、電解質リチウム塩リチウムであるジフルオロ(オキサラト)ボレートの合成方法が開示されており、シラン化合物とシュウ酸を反応させて、シランシュウ酸の縮合物を得るステップ1)と、テトラフルオロホウ酸リチウムとシランシュウ酸の縮合物を溶媒において反応させて、粗製品を得るステップ2)と、粗製品を再結晶させて、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートを得るステップ3)とを含む。
【0006】
CN101648963Aにおいて、性能に優れたリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート及びテトラフルオロホウ酸リチウムを同時に製造する合成プロセスが開示されており、フッ素含有化合物、ホウ素含有化合物、リチウム含有化合物及びシュウ酸根を含む化合物を、0〜100℃、0.1〜1MPaの反応圧力で、反応媒体において反応させ、リチウム元素、フッ素元素、ホウ素元素及びシュウ酸根イオンのモル比を2〜3:5〜6:2:1とし、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムを含有する反応液を生成するステップ(1)と、反応液におけるリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムを予備分離し、次にリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート又はテトラフルオロホウ酸リチウムを抽出できる有機溶媒を用いて、さらに抽出分離を行うステップ(2)と、それぞれ再結晶させて、真空乾燥させて、電池用のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート及びテトラフルオロホウ酸リチウムを得るステップ(3)とを含む。
【0007】
従来のプロセスでは、テトラフルオロホウ酸リチウムはリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートと類似した構造を有し、且つ両方の溶液は高粘度を有するため、両方を分離することが実施しにくく、装置や技術への要求が高く、生産される両方の混合塩の純度が低く、これら原因によって混合塩電解液のコストが高まる。このため、従来技術には改良する余裕がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、工業用シュウ酸リチウムを原料として、精製、合成、濃縮などの過程を行い、製品としてリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムをモル比1:1の所定比率で混合したリチウム塩を得て、リチウムイオン電池の製造に利用でき、従来技術における再結晶の繁雑な過程及び結晶化後の固液分離(ろ過)操作を省略し、且つ製品の収率及び純度向上、プロセスフローの簡素化、生産コスト低下などが可能である、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法及びその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成させるために、本発明は下記技術案を採用する。
所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法であって、
工業用シュウ酸リチウムに純水を加えて、撹拌してシュウ酸リチウム懸濁液を調製し、次に、金属キレート剤水溶液をシュウ酸リチウム懸濁液に加えて、30min撹拌し、吸引ろ過してシュウ酸リチウム固体を得て、次に、超純水でシュウ酸リチウム固体を3〜5回洗浄して吸引ろ過して、最後に、エタノールで洗浄してろ過し、乾燥させて、固体白色粉末として精製シュウ酸リチウムを得る、シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
撹拌しながら、シュウ酸リチウムを有機溶媒に加えて、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、調製したシュウ酸リチウム懸濁液が透明になるまで、三フッ化ホウ素・エチルエーテルを調製したシュウ酸リチウム懸濁液に滴下して、さらに反応が終了するまで撹拌し、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応ステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を真空濃縮させた後に結晶化させて、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの貧溶媒を用いて、結晶化させた粗製品を洗浄した後、上層又は下層の褐色溶液を除去して、さらに貧溶媒を添加し、このように3−4回洗浄して、上層又は下層の溶液を澄明にし、固体を真空乾燥させて、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得て、洗浄過程において、結晶化固体が粘稠状からフラフわした結晶になり、色が淡褐色から白色になる、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む。
【0010】
以上の態様によれば、前記シュウ酸リチウムを精製するとき、金属キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、乾燥温度が120℃である。
【0011】
以上の態様によれば、前記合成反応において、溶媒が炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルエーテル、ジメチルホルムアミド又はアセトンであり、反応温度が70−90℃であり、反応時間が10−24hである。
【0012】
以上の態様によれば、前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを100:100−150:4−10:0.1−0.3:0.1−0.4:0.2−0.5の質量比で反応器に投入して、60−80℃で保温して窒素ガスを導入して、60−150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを100−300μmに制御して、紫外線で30−120s照射し、アセトンで6−24h洗浄して、静置して乾燥させ、精製補助ろ過膜を得る。
【0013】
以上の態様によれば、前記反応液を濃縮させるときに、真空度g−0.01MPaであり、温度が60−90℃であり、結晶化させるときに、温度が−20℃である。
【0014】
以上の態様によれば、前記混合リチウム塩を精製するときに、貧溶媒が低沸点ハロゲン化アルカン、非極性−弱極性の有機溶媒、又は両方の混合有機溶媒であり、真空乾燥させるときに、真空度が−0.01MPaであり、温度が80−100℃である。
【0015】
以上の態様によれば、前記低沸点ハロゲン化アルカンが、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン又はクロロプロパンであり、前記非極性−弱極性の有機溶媒がシクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、ペンタン又は石油エーテルである。
【0016】
リチウムイオン電池用非水電解液であって、所定比率混合による高純度リチウム塩0.5質量%−20質量%を含有する。
【0017】
リチウムイオン電池であって、所定比率混合による高純度リチウム塩0.5質量%−20質量%を含有するリチウムイオン電池用非水電解液を、乾燥させたニッケル:コバルト:マンガンのモル比が6:2:2の4.2V NCM/グラファイトパウチ電池に注入して、従来のリチウムイオン製造技術(45℃で放置して、高温治具を用いた化成及び二次封口などの工程後)によって製造されてなる。
【0018】
本発明では、工業用シュウ酸リチウムを原料とし、工業的生産コストを削減させるために、シュウ酸リチウムを精製する必要がある。工業用シュウ酸リチウムにおける金属イオンが過量であり、Na
+、K
+などの可溶性金属イオンはエタノールで洗浄でき、ほかの可溶性金属イオンは後続の洗浄過程において除去できる一方、Ca
2+などの不溶性金属イオンは、たとえばEDTAのようなキレート試薬で洗浄して除去する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
1)本発明では、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの分離及び精製の工程を減少させるため、生産プロセスを大幅に簡素化させて、コストを削減させる。
2)本発明は、混合リチウム塩の精製方法を提供し、混合リチウム塩の純度及び収率を向上させ、調製された混合リチウム塩をそのままリチウムイオン電池に適用することを可能にするとともに、低コストである。
3)本発明では、1:1の所定比率でリチウム塩を混合することによって、リチウムイオン電池の常温及び高温のサイクル特性を効果的に改善でき、六フッ化リン酸リチウムの代替品として有望であり、さらに、LiODFB又はLiBF
4を単独で添加することで、各種比率の混合リチウム塩を製造して、各種電解液の処方に適用でき、コストを削減させる。
4)本発明では、工業用シュウ酸リチウムを精製して、混合リチウム塩を調製することにより、電気性能を満たす上に、生産コストをさらに削減させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩の
11B NMRスペクトルである。
【
図2】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩の
19F NMRスペクトルである。
【
図3】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩の
13C NMRスペクトルである。
【
図4】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩を含有する電解液の常温(25℃)サイクル(100サイクル)特性図である。
【
図5】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩を含有する電解液の高温(45℃)でのサイクル(100サイクル)特性図である。
【
図6】本発明の実施例1において製造された精製補助ろ過膜のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面及び実施例を参照しながら本発明の技術案を説明する。
【0022】
実施例1
図1−
図6に示されるように、
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、
工業用シュウ酸リチウム150gに適量の超純水を加えて、撹拌してシュウ酸リチウム懸濁液を調製し、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)0.4gを秤量して、少量の超純水に溶解し、EDTA水溶液をシュウ酸リチウム懸濁液に加えて、30min撹拌した後、吸引ろ過してシュウ酸リチウム固体を得て、さらにシュウ酸リチウム固体を3回超純水で洗浄して吸引ろ過し、最後に、エタノールで洗浄してろ過し、120℃のオーブンに入れて乾燥させ、固体白色粉末として精製シュウ酸リチウム(96wt%)を得る、シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
三つ口反応フラスコに炭酸ジメチル(DMC)500mLを加えて、激しく撹拌しながらシュウ酸リチウム102gを加え、温度を85℃に上げて1h撹拌し、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、三フッ化ホウ素・エチルエーテル284gを秤量して、撹拌しながら、2hかけてシュウ酸リチウム懸濁液に徐々に滴下し、滴下が終了した後、懸濁液が澄明になると、さらに撹拌して22h反応させ、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応のステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を、真空度−0.01MPa、温度80℃の条件で、真空濃縮させ、次に、反応フラスコを−20℃の条件で放置して結晶化させ、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
結晶化後の反応フラスコを取り出して、粘稠な固液系を得て、反応フラスコに四塩化炭素200mLを加えて、十分に撹拌した後、下層の褐色四塩化炭素相溶液を除去し、4回繰り返して洗浄し、下層の四塩化炭素相溶液を澄明な溶液にし、この際、上層の結晶化固体が褐色から真白色固体になり、吸引ろ過して四塩化炭素を除去して、−0.01MPa真空度、100℃の条件で24h乾燥させ、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む。
【0023】
得られた固体製品について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析(それぞれ
図1−
図3参照)を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率85.6%、純度99.1%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分120ppm、酸度200ppm、不溶物102ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0024】
さらに、前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:100:7:0.1:0.1:0.2の質量比で、反応器に投入して、70℃で保温して窒素ガスを導入して、100min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを100μmに制御して、紫外線で75s照射して、アセトンで15h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得た。
【0025】
本実施例の製品について関連キャラクタリゼーションを行い、結果を
図1−
図6に示した。
図1は本実施例において調製された混合リチウム塩の
11B NMRスペクトルであり、
図2は本実施例において調製された混合リチウム塩の
19F NMRスペクトルであり、
図3は本実施例において調製された混合リチウム塩の
13C NMRスペクトルであり、
図4は本実施例において調製された混合リチウム塩を含有する電解液の常温(25℃)サイクル(100サイクル)特性図であり、
図5は本実施例において調製された混合リチウム塩を含有する電解液の高温(45℃)でのサイクル(100サイクル)特性図であり、
図6は実施例1において製造された精製補助ろ過膜のIRスペクトルである。結果から、以下の結論が得られた。
(1)LiODFB及びLiBF
4には1つだけのホウ素原子があるため、いずれの
11B NMRスペクトルにも単一ピークを示す一方、
11B NMRスペクトルにおいて2つの単一ピークの面積比が1:1であることから、LiODFB及びLiBF
4のモル比が1:1であると判断でき、同様に、LiODFBにおいて、フッ素原子の化学的環境が同じであるため、
19F NMRスペクトルにおいて現れた化学シフトが同じであり、LiBF
4においてもフッ素原子の化学的環境が同じであるため、同一の化学シフトにピークが発生し、
19F NMRスペクトルにおける2つの位置での化学シフトの比値から、LiODFBとLiBF
4のモル比が1:1であることが確認できる。これは、該反応により生成したLiODFBとLiBF
4のモル比が1:1であり、精製過程に使用される貧溶媒がLiODFBとLiBF
4の両方に対して不溶であるため、精製後に混合塩におけるLiODFBとLiBF
4の比率を変更しないからである。
(2)
13C NMRスペクトルにおいて、LiODFBにおける炭素原子のピークであるピークだけがあり、LiBF
4に炭素原子が含まれていないため、
13C NMRスペクトルにピークが発生しない。
(3)
図4から明らかなように、混合塩はリチウムイオン電池の常温(25℃)サイクル特性を効果的に向上でき、且つ1.5%及び3%の添加量では、効果が最も高い。
(4)
図5から明らかなように、混合塩はリチウムイオン電池の高温(45℃)でのサイクル特性を効果的に向上でき、且つ1.5%及び0.5%の添加量では、効果が最も高い。一方、60℃で9日間保存した結果、混合塩を添加することでガスの発生を効果的に抑制でき、且つ1.5%の添加量では容量保持率を79.8%から86.67%に向上させ、対応した容量回復率を82.04%から88.88%に向上させることができる。
このような混合リチウム塩は、コスト及び効果のいずれにおいても大きな優位性を有し、六フッ化リン酸リチウムの代わりに電解液の主塩として有望できる。
(5)
図6には、精製補助ろ過膜の化学組成が示されており、907と1030がスルホン酸基の特徴的なピークであり、1260がC−S結合の特徴的なピークであり、このことから、トリフルオロメタンスルホン酸ランタンが反応に関与して吸収膜に取り込まれることが明らかになる。1500−1650がニトロ基の特徴的なピークであり、1576、1468、1434がピリジン環の特徴的な吸収ピークであり、994がピリジン環の変角振動吸収ピークであり、1700がO=C−0強吸収ピークであり、このことから、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネートが反応に関与して吸収膜に取り込まれることが明らかになり、1600がベンゼン環骨格の特徴的なピークであり、900がベンゼン環のC−H変角振動ピークであり、1000がC−F結合の特徴的なピークであり、このことから、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムが反応に関与して吸収膜に取り込まれることが明らかになる。
【0026】
本実施例において調製された混合リチウム塩を用いたリチウムイオン電池非水電解液の調製
グローブボックスにおいて、炭酸ビニル(EC)、炭酸メチルエチル(EMC)及び炭酸ジエチル(DEC)を30:45:25の質量比率で混合し、次に六フッ化リン酸リチウムを加えて溶解し、六フッ化リン酸リチウムの濃度が1Mの電解液を調製した。その後、0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%及び3質量%の実施例において調製された混合リチウム塩のサンプルを電解液に加えた。
【0027】
調製したリチウムイオン電池用非水電解液を、十分に乾燥させた4.2VのNCM(ニッケル:コバルト:マンガン=6:2:2)/グラファイトパウチ電池に注入して、45℃で放置し、高温治具を用いた化成及び二次封口などの工程後、電池性能をテストした。
【0028】
1)常温サイクル特性
常温(25℃)の条件で、上記リチウムイオン電池を1C定電流定電圧で4.2Vになるまで充電した後、1C定電流の条件で3.0Vになるまで放電した。100サイクル充放電後、100サイクル目の容量保持率を算出した。
【0029】
2)高温サイクル特性
高温(45℃)の条件で、上記リチウムイオン電池を1C定電流定電圧で4.2Vになるまで充電した後、1C定電流の条件で3.0Vになるまで放電した。100サイクル充放電後、100サイクル目後の容量保持率を算出した。
【0030】
実施例2
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、
実施例1と同様である、シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
三つ口反応フラスコに酢酸エチル(EA)500mLを加えて、激しく撹拌しながらシュウ酸リチウム102gを加え、温度を85℃に上げて1h撹拌し、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、三フッ化ホウ素・エチルエーテル284gを秤量して、撹拌しながら、2hかけてシュウ酸リチウム懸濁液に徐々に滴下し、滴下が終了した後、懸濁液が澄明になると、さらに撹拌して22h反応させ、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応のステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を、真空度−0.01MPa、温度60℃の条件で、真空濃縮させ、次に、反応フラスコを−20℃の条件で放置して結晶化させ、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
結晶化後の反応フラスコを取り出して、粘稠な固液系を得て、反応フラスコにジクロロメタン200mLを加えて、十分に撹拌した後、上層の褐色ジクロロメタン相溶液を除去し、4回繰り返して洗浄し、上層のジクロロメタン相溶液を澄明な溶液にし、この際、下層の結晶化固体が褐色から真白色固体になり、吸引ろ過してジクロロメタンを除去して、−0.01MPa真空度、100℃の条件で24h乾燥させ、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む。
【0031】
さらに、前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:125:7:0.2:0.25:0.35の質量比で、反応器に投入して、80℃で保温して窒素ガスを導入して、120min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを200μmに制御して、紫外線で120s照射して、アセトンで20h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得た。
【0032】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率87.6%、純度99.9%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分112ppm、酸度148ppm、不溶物95ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0033】
実施例3
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、
実施例1と同様である、シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
三つ口反応フラスコにアセトニトリル500mLを加えて、激しく撹拌しながらシュウ酸リチウム102gを加え、温度を85℃に上げて1h撹拌し、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、三フッ化ホウ素・エチルエーテル284gを秤量して、撹拌しながら、2hかけてシュウ酸リチウム懸濁液に徐々に滴下し、滴下が終了した後、懸濁液が澄明になると、さらに撹拌して22h反応させ、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応のステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を、真空度−0.01MPa、温度70℃の条件で、真空濃縮させ、次に、反応フラスコを−20℃の条件で放置して結晶化させ、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
結晶化後の反応フラスコを取り出して、粘稠な固液系を得て、反応フラスコにシクロヘキサン200mLを加えて、十分に撹拌した後、上層の褐色シクロヘキサン相溶液を除去し、4回繰り返して洗浄し、上層の褐色シクロヘキサン相溶液を澄明な溶液にし、この際、下層の結晶化固体が褐色から真白色固体になり、吸引ろ過してシクロヘキサンを除去して、−0.01MPa真空度、100℃の条件で24h乾燥させ、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む。
【0034】
さらに、前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:150:10:0.3:0.4:0.5の質量比で、反応器に投入して、78℃で保温して窒素ガスを導入して、150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを300μmに制御して、紫外線で120s照射して、アセトンで24h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得た。
【0035】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率85.4%、純度99.9%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分65ppm、酸度127ppm、不溶物78ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0036】
実施例4
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、合成反応に有機溶媒としてテトラヒドロフランを用いる以外、実施例3とほぼ同じであった。
【0037】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率86.2%、純度98.4%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分98ppm、酸度239ppm、不溶物184ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0038】
実施例5
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:150:10:0.4:0.5の質量比で、反応器に投入して、75℃で保温して窒素ガスを導入して、130min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを300μmに制御して、紫外線で100s照射して、アセトンで20h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得る以外、実施例3とほぼ同じであった。
【0039】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率86.1%、純度98.7%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分81ppm、酸度174ppm、不溶物91ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0040】
実施例6
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:150:10:0.3:0.5の質量比で、反応器に投入して、78℃で保温して窒素ガスを導入して、150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを300μmに制御して、紫外線で120s照射して、アセトンで20h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得る以外、実施例3とほぼ同じであった。
【0041】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率85.6%、純度98.9%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分77ppm、酸度145ppm、不溶物91ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0042】
実施例7
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:150:10:0.3:0.4の質量比で、反応器に投入して、75℃で保温して窒素ガスを導入して、150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを300μmに制御して、紫外線で120s照射して、アセトンで24h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得る以外、実施例3と同じであった。
【0043】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率85.6%、純度98.8%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分81ppm、酸度194ppm、不溶物93ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0044】
比較実施例1
所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法であって、
三つ口反応フラスコにアセトニトリル500mLを加えて、激しく撹拌しながらシュウ酸リチウム102gを加え、温度を85℃に上げて1h撹拌し、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、三フッ化ホウ素・エチルエーテル284gを秤量して、撹拌しながら、2hかけてシュウ酸リチウム懸濁液に徐々に滴下し、滴下が終了した後、懸濁液が澄明になると、さらに撹拌して22h反応させ、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得る、合成反応のステップ(1)と、
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を、真空度−0.01MPa、温度70℃の条件で、真空濃縮させ、次に、反応フラスコを−20℃の条件で放置して結晶化させ、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(2)と、
結晶化後の反応フラスコを取り出して、粘稠な固液系を得て、反応フラスコにシクロヘキサン200mLを加えて、十分に撹拌した後、上層の褐色シクロヘキサン相溶液を除去し、4回繰り返して洗浄し、上層の褐色シクロヘキサン相溶液を澄明な溶液にし、この際、下層の結晶化固体が褐色から真白色固体になり、吸引ろ過してシクロヘキサンを除去して、−0.01MPa真空度、100℃の条件で24h乾燥させ、混合リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(3)とを含む。
【0045】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率77.4%、純度85.1%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)であることを確認した。
【0046】
以上の実施例は本発明の技術案を説明するものに過ぎず、限定的なものではなく、上記実施例にて本発明について詳細に説明したが、当業者であれば、本発明について修正又は同等置換を行えることが理解でき、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われる修正及び部分的な置換が本発明の特許請求の範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2020年5月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法であって、
工業用シュウ酸リチウムに純水を加えて、撹拌してシュウ酸リチウム懸濁液を調製し、次に、金属キレート剤水溶液をシュウ酸リチウム懸濁液に加えて、30min撹拌し、吸引ろ過してシュウ酸リチウム固体を得て、次に、超純水でシュウ酸リチウム固体を3〜5回洗浄して吸引ろ過して、最後に、エタノールで洗浄してろ過し、乾燥させて、固体白色粉末として精製シュウ酸リチウムを得る、精製シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
撹拌しながら、精製シュウ酸リチウムを有機溶媒に加えて、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、調製したシュウ酸リチウム懸濁液が透明になるまで、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテルを調製したシュウ酸リチウム懸濁液に滴下して、さらに反応が終了するまで撹拌し、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応ステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を真空濃縮させた後に結晶化させて、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの貧溶媒を用いて、結晶化させた粗製品を洗浄した後、上層又は下層の褐色溶液を除去して、さらに貧溶媒を添加し、このように3−4回洗浄して、上層又は下層の溶液を澄明にし、固体を真空乾燥させて、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む、ことを特徴とする調製方法。
【請求項2】
前記シュウ酸リチウムを精製するとき、金属キレート剤がエチレンジアミン四酢酸であり、乾燥温度が120℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項3】
前記合成反応において、溶媒が炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルエーテル、ジメチルホルムアミド又はアセトンであり、反応温度が70−90℃であり、反応時間が10−24hである、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項4】
前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを100:100−150:4−10:0.1−0.3:0.1−0.4:0.2−0.5の質量比で反応器に投入して、60−80℃で保温して窒素ガスを導入して、60−150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを100−300μmに制御して、紫外線で30−120s照射し、アセトンで6−24h洗浄して、静置して乾燥させ、精製補助ろ過膜を得る、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項5】
前記反応液を濃縮させるときに、真空度が−0.01MPaGであり、温度が60−90℃であり、結晶化させるときに、温度が−20℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項6】
前記混合リチウム塩を精製するときに、貧溶媒が低沸点ハロゲン化アルカン、非極性−弱極性の有機溶媒、又は両方の混合有機溶媒であり、真空乾燥させるときに、真空度が−0.01MPaGであり、温度が80−100℃であることを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【請求項7】
前記低沸点ハロゲン化アルカンが、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン又はクロロプロパンであり、前記非極性−弱極性の有機溶媒がシクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、ペンタン又は石油エーテルである、ことを特徴とする請求項1に記載の所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池製造技術の分野に関し、具体的には、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池電解液は、電池においてイオンを輸送する担体である。通常、リチウム塩と有機溶媒からなる。電解液は、リチウム電池の正極と負極の間でイオンを伝導する役割を果たし、リチウムイオン電池に高電圧、高比エネルギーなどの利点を付与する。電解液は、通常、高純度有機溶媒、電解質リチウム塩、必要な添加剤などの原料を用いて、一定の条件で、所定比率で調製するものである。従来、最も一般的な電解質リチウム塩は六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)であり、電解液の製造過程に、六フッ化リン酸リチウムが電解液のコストの50%−60%を占め、主にリチウムイオンパワーバッテリー、リチウムイオンエネルギー貯蔵電池に用いられ、サイクル効率、熱安定性に優れて、伝導率が高いという利点を有する。
【0003】
一方、電解質リチウム塩としての六フッ化リン酸リチウムは、耐高温性、耐加水分解性が悪いという欠点があり、発生するフッ化水素が電極材料、SEI膜などの電池部材を破壊して、リチウム電池容量の低下や使用寿命の短縮の原因となる。様々なリチウム塩に備える異なる物理化学的性質を活用して、異なる種類のリチウム塩を配合することによって、各リチウム塩の優位性を組み合わせて、リチウム電池の特性を効果的に向上させることができる。
【0004】
六フッ化リン酸リチウムに比べて、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF
4)はより広い動作温度範囲、より強い耐加水分解性を有する一方、イオン移動度が低く、単独での成膜能力が悪いという欠点がある。リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiODFB)は新規リチウム塩であり、優れた成膜性能を有し、熱安定性、高低温性能、電気化学的安定性などのいずれも優れている。
【0005】
CN107698611Aにおいて、電解質リチウム塩リチウムであるジフルオロ(オキサラト)ボレートの合成方法が開示されており、シラン化合物とシュウ酸を反応させて、シランシュウ酸の縮合物を得るステップ1)と、テトラフルオロホウ酸リチウムとシランシュウ酸の縮合物を溶媒において反応させて、粗製品を得るステップ2)と、粗製品を再結晶させて、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートを得るステップ3)とを含む。
【0006】
CN101648963Aにおいて、性能に優れたリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート及びテトラフルオロホウ酸リチウムを同時に製造する合成プロセスが開示されており、フッ素含有化合物、ホウ素含有化合物、リチウム含有化合物及びシュウ酸根を含む化合物を、0〜100℃、0.1〜1MPaの反応圧力で、反応媒体において反応させ、リチウム元素、フッ素元素、ホウ素元素及びシュウ酸根イオンのモル比を2〜3:5〜6:2:1とし、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムを含有する反応液を生成するステップ(1)と、反応液におけるリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムを予備分離し、次にリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート又はテトラフルオロホウ酸リチウムを抽出できる有機溶媒を用いて、さらに抽出分離を行うステップ(2)と、それぞれ再結晶させて、真空乾燥させて、電池用のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート及びテトラフルオロホウ酸リチウムを得るステップ(3)とを含む。
【0007】
従来のプロセスでは、テトラフルオロホウ酸リチウムはリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートと類似した構造を有し、且つ両方の溶液は高粘度を有するため、両方を分離することが実施しにくく、装置や技術への要求が高く、生産される両方の混合塩の純度が低く、これら原因によって混合塩電解液のコストが高まる。このため、従来技術には改良する余裕がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、工業用シュウ酸リチウムを原料として、精製、合成、濃縮などの過程を行い、製品としてリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムをモル比1:1の所定比率で混合したリチウム塩を得て、リチウムイオン電池の製造に利用でき、従来技術における再結晶の繁雑な過程及び結晶化後の固液分離(ろ過)操作を省略し、且つ製品の収率及び純度向上、プロセスフローの簡素化、生産コスト低下などが可能である、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法及びその応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成させるために、本発明は下記技術案を採用する。
所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法であって、
工業用シュウ酸リチウムに純水を加えて、撹拌してシュウ酸リチウム懸濁液を調製し、次に、金属キレート剤水溶液をシュウ酸リチウム懸濁液に加えて、30min撹拌し、吸引ろ過してシュウ酸リチウム固体を得て、次に、超純水でシュウ酸リチウム固体を3〜5回洗浄して吸引ろ過して、最後に、エタノールで洗浄してろ過し、乾燥させて、固体白色粉末として精製シュウ酸リチウムを得る、シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
撹拌しながら、シュウ酸リチウムを有機溶媒に加えて、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、調製したシュウ酸リチウム懸濁液が透明になるまで、
三フッ化ホウ素・ジエチルエーテルを調製したシュウ酸リチウム懸濁液に滴下して、さらに反応が終了するまで撹拌し、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応ステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を真空濃縮させた後に結晶化させて、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの貧溶媒を用いて、結晶化させた粗製品を洗浄した後、上層又は下層の褐色溶液を除去して、さらに貧溶媒を添加し、このように3−4回洗浄して、上層又は下層の溶液を澄明にし、固体を真空乾燥させて、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得て、洗浄過程において、結晶化固体が粘稠状からフラフわした結晶になり、色が淡褐色から白色になる、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む。
【0010】
以上の態様によれば、前記シュウ酸リチウムを精製するとき、金属キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり、乾燥温度が120℃である。
【0011】
以上の態様によれば、前記合成反応において、溶媒が炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチルエチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチルエーテル、ジメチルホルムアミド又はアセトンであり、反応温度が70−90℃であり、反応時間が10−24hである。
【0012】
以上の態様によれば、前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを100:100−150:4−10:0.1−0.3:0.1−0.4:0.2−0.5の質量比で反応器に投入して、60−80℃で保温して窒素ガスを導入して、60−150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを100−300μmに制御して、紫外線で30−120s照射し、アセトンで6−24h洗浄して、静置して乾燥させ、精製補助ろ過膜を得る。
【0013】
以上の態様によれば、前記反応液を濃縮させるときに、真空度g−0.01
MPaGであり、温度が60−90℃であり、結晶化させるときに、温度が−20℃である。
【0014】
以上の態様によれば、前記混合リチウム塩を精製するときに、貧溶媒が低沸点ハロゲン化アルカン、非極性−弱極性の有機溶媒、又は両方の混合有機溶媒であり、真空乾燥させるときに、真空度が−0.01
MPaGであり、温度が80−100℃である。
【0015】
以上の態様によれば、前記低沸点ハロゲン化アルカンが、四塩化炭素、トリクロロメタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン又はクロロプロパンであり、前記非極性−弱極性の有機溶媒がシクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、ペンタン又は石油エーテルである。
【0016】
リチウムイオン電池用非水電解液であって、所定比率混合による高純度リチウム塩0.5質量%−20質量%を含有する。
【0017】
リチウムイオン電池であって、所定比率混合による高純度リチウム塩0.5質量%−20質量%を含有するリチウムイオン電池用非水電解液を、乾燥させたニッケル:コバルト:マンガンのモル比が6:2:2の4.2V NCM/グラファイトパウチ電池に注入して、従来のリチウムイオン製造技術(45℃で放置して、高温治具を用いた化成及び二次封口などの工程後)によって製造されてなる。
【0018】
本発明では、工業用シュウ酸リチウムを原料とし、工業的生産コストを削減させるために、シュウ酸リチウムを精製する必要がある。工業用シュウ酸リチウムにおける金属イオンが過量であり、Na
+、K
+などの可溶性金属イオンはエタノールで洗浄でき、ほかの可溶性金属イオンは後続の洗浄過程において除去できる一方、Ca
2+などの不溶性金属イオンは、たとえばEDTAのようなキレート試薬で洗浄して除去する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
1)本発明では、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの分離及び精製の工程を減少させるため、生産プロセスを大幅に簡素化させて、コストを削減させる。
2)本発明は、混合リチウム塩の精製方法を提供し、混合リチウム塩の純度及び収率を向上させ、調製された混合リチウム塩をそのままリチウムイオン電池に適用することを可能にするとともに、低コストである。
3)本発明では、1:1の所定比率でリチウム塩を混合することによって、リチウムイオン電池の常温及び高温のサイクル特性を効果的に改善でき、六フッ化リン酸リチウムの代替品として有望であり、さらに、LiODFB又はLiBF
4を単独で添加することで、各種比率の混合リチウム塩を製造して、各種電解液の処方に適用でき、コストを削減させる。
4)本発明では、工業用シュウ酸リチウムを精製して、混合リチウム塩を調製することにより、電気性能を満たす上に、生産コストをさらに削減させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩の
11B NMRスペクトルである。
【
図2】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩の
19F NMRスペクトルである。
【
図3】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩の
13C NMRスペクトルである。
【
図4】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩を含有する電解液の常温(25℃)サイクル(100サイクル)特性図である。
【
図5】本発明の実施例1において調製された混合リチウム塩を含有する電解液の高温(45℃)でのサイクル(100サイクル)特性図である。
【
図6】本発明の実施例1において製造された精製補助ろ過膜のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面及び実施例を参照しながら本発明の技術案を説明する。
【0022】
実施例1
図1−
図6に示されるように、
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、
工業用シュウ酸リチウム150gに適量の超純水を加えて、撹拌してシュウ酸リチウム懸濁液を調製し、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)0.4gを秤量して、少量の超純水に溶解し、EDTA水溶液をシュウ酸リチウム懸濁液に加えて、30min撹拌した後、吸引ろ過してシュウ酸リチウム固体を得て、さらにシュウ酸リチウム固体を3回超純水で洗浄して吸引ろ過し、最後に、エタノールで洗浄してろ過し、120℃のオーブンに入れて乾燥させ、固体白色粉末として精製シュウ酸リチウム(96wt%)を得る、シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
三つ口反応フラスコに炭酸ジメチル(DMC)500mLを加えて、激しく撹拌しながらシュウ酸リチウム102gを加え、温度を85℃に上げて1h撹拌し、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、
三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル284gを秤量して、撹拌しながら、2hかけてシュウ酸リチウム懸濁液に徐々に滴下し、滴下が終了した後、懸濁液が澄明になると、さらに撹拌して22h反応させ、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応のステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を、真空度−0.01
MPaG、温度80℃の条件で、真空濃縮させ、次に、反応フラスコを−20℃の条件で放置して結晶化させ、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
結晶化後の反応フラスコを取り出して、粘稠な固液系を得て、反応フラスコに四塩化炭素200mLを加えて、十分に撹拌した後、下層の褐色四塩化炭素相溶液を除去し、4回繰り返して洗浄し、下層の四塩化炭素相溶液を澄明な溶液にし、この際、上層の結晶化固体が褐色から真白色固体になり、吸引ろ過して四塩化炭素を除去して、−0.01
MPaG真空度、100℃の条件で24h乾燥させ、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む。
【0023】
得られた固体製品について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析(それぞれ
図1−
図3参照)を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率85.6%、純度99.1%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分120ppm、酸度200ppm、不溶物102ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0024】
さらに、前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:100:7:0.1:0.1:0.2の質量比で、反応器に投入して、70℃で保温して窒素ガスを導入して、100min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを100μmに制御して、紫外線で75s照射して、アセトンで15h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得た。
【0025】
本実施例の製品について関連キャラクタリゼーションを行い、結果を
図1−
図6に示した。
図1は本実施例において調製された混合リチウム塩の
11B NMRスペクトルであり、
図2は本実施例において調製された混合リチウム塩の
19F NMRスペクトルであり、
図3は本実施例において調製された混合リチウム塩の
13C NMRスペクトルであり、
図4は本実施例において調製された混合リチウム塩を含有する電解液の常温(25℃)サイクル(100サイクル)特性図であり、
図5は本実施例において調製された混合リチウム塩を含有する電解液の高温(45℃)でのサイクル(100サイクル)特性図であり、
図6は実施例1において製造された精製補助ろ過膜のIRスペクトルである。結果から、以下の結論が得られた。
(1)LiODFB及びLiBF
4には1つだけのホウ素原子があるため、いずれの
11B NMRスペクトルにも単一ピークを示す一方、
11B NMRスペクトルにおいて2つの単一ピークの面積比が1:1であることから、LiODFB及びLiBF
4のモル比が1:1であると判断でき、同様に、LiODFBにおいて、フッ素原子の化学的環境が同じであるため、
19F NMRスペクトルにおいて現れた化学シフトが同じであり、LiBF
4においてもフッ素原子の化学的環境が同じであるため、同一の化学シフトにピークが発生し、
19F NMRスペクトルにおける2つの位置での化学シフトの比値から、LiODFBとLiBF
4のモル比が1:1であることが確認できる。これは、該反応により生成したLiODFBとLiBF
4のモル比が1:1であり、精製過程に使用される貧溶媒がLiODFBとLiBF
4の両方に対して不溶であるため、精製後に混合塩におけるLiODFBとLiBF
4の比率を変更しないからである。
(2)
13C NMRスペクトルにおいて、LiODFBにおける炭素原子のピークであるピークだけがあり、LiBF
4に炭素原子が含まれていないため、
13C NMRスペクトルにピークが発生しない。
(3)
図4から明らかなように、混合塩はリチウムイオン電池の常温(25℃)サイクル特性を効果的に向上でき、且つ1.5%及び3%の添加量では、効果が最も高い。
(4)
図5から明らかなように、混合塩はリチウムイオン電池の高温(45℃)でのサイクル特性を効果的に向上でき、且つ1.5%及び0.5%の添加量では、効果が最も高い。一方、60℃で9日間保存した結果、混合塩を添加することでガスの発生を効果的に抑制でき、且つ1.5%の添加量では容量保持率を79.8%から86.67%に向上させ、対応した容量回復率を82.04%から88.88%に向上させることができる。
このような混合リチウム塩は、コスト及び効果のいずれにおいても大きな優位性を有し、六フッ化リン酸リチウムの代わりに電解液の主塩として有望できる。
(5)
図6には、精製補助ろ過膜の化学組成が示されており、907と1030がスルホン酸基の特徴的なピークであり、1260がC−S結合の特徴的なピークであり、このことから、トリフルオロメタンスルホン酸ランタンが反応に関与して吸収膜に取り込まれることが明らかになる。1500−1650がニトロ基の特徴的なピークであり、1576、1468、1434がピリジン環の特徴的な吸収ピークであり、994がピリジン環の変角振動吸収ピークであり、1700がO=C−0強吸収ピークであり、このことから、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネートが反応に関与して吸収膜に取り込まれることが明らかになり、1600がベンゼン環骨格の特徴的なピークであり、900がベンゼン環のC−H変角振動ピークであり、1000がC−F結合の特徴的なピークであり、このことから、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムが反応に関与して吸収膜に取り込まれることが明らかになる。
【0026】
本実施例において調製された混合リチウム塩を用いたリチウムイオン電池非水電解液の調製
グローブボックスにおいて、炭酸ビニル(EC)、炭酸メチルエチル(EMC)及び炭酸ジエチル(DEC)を30:45:25の質量比率で混合し、次に六フッ化リン酸リチウムを加えて溶解し、六フッ化リン酸リチウムの濃度が1Mの電解液を調製した。その後、0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%及び3質量%の実施例において調製された混合リチウム塩のサンプルを電解液に加えた。
【0027】
調製したリチウムイオン電池用非水電解液を、十分に乾燥させた4.2VのNCM(ニッケル:コバルト:マンガン=6:2:2)/グラファイトパウチ電池に注入して、45℃で放置し、高温治具を用いた化成及び二次封口などの工程後、電池性能をテストした。
【0028】
1)常温サイクル特性
常温(25℃)の条件で、上記リチウムイオン電池を1C定電流定電圧で4.2Vになるまで充電した後、1C定電流の条件で3.0Vになるまで放電した。100サイクル充放電後、100サイクル目の容量保持率を算出した。
【0029】
2)高温サイクル特性
高温(45℃)の条件で、上記リチウムイオン電池を1C定電流定電圧で4.2Vになるまで充電した後、1C定電流の条件で3.0Vになるまで放電した。100サイクル充放電後、100サイクル目後の容量保持率を算出した。
【0030】
実施例2
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、
実施例1と同様である、シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
三つ口反応フラスコに酢酸エチル(EA)500mLを加えて、激しく撹拌しながらシュウ酸リチウム102gを加え、温度を85℃に上げて1h撹拌し、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、
三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル284gを秤量して、撹拌しながら、2hかけてシュウ酸リチウム懸濁液に徐々に滴下し、滴下が終了した後、懸濁液が澄明になると、さらに撹拌して22h反応させ、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応のステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を、真空度−0.01
MPaG、温度60℃の条件で、真空濃縮させ、次に、反応フラスコを−20℃の条件で放置して結晶化させ、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
結晶化後の反応フラスコを取り出して、粘稠な固液系を得て、反応フラスコにジクロロメタン200mLを加えて、十分に撹拌した後、上層の褐色ジクロロメタン相溶液を除去し、4回繰り返して洗浄し、上層のジクロロメタン相溶液を澄明な溶液にし、この際、下層の結晶化固体が褐色から真白色固体になり、吸引ろ過してジクロロメタンを除去して、−0.01
MPaG真空度、100℃の条件で24h乾燥させ、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む。
【0031】
さらに、前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:125:7:0.2:0.25:0.35の質量比で、反応器に投入して、80℃で保温して窒素ガスを導入して、120min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを200μmに制御して、紫外線で120s照射して、アセトンで20h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得た。
【0032】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率87.6%、純度99.9%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分112ppm、酸度148ppm、不溶物95ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0033】
実施例3
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、
実施例1と同様である、シュウ酸リチウムを精製するステップ(1)と、
三つ口反応フラスコにアセトニトリル500mLを加えて、激しく撹拌しながらシュウ酸リチウム102gを加え、温度を85℃に上げて1h撹拌し、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、
三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル284gを秤量して、撹拌しながら、2hかけてシュウ酸リチウム懸濁液に徐々に滴下し、滴下が終了した後、懸濁液が澄明になると、さらに撹拌して22h反応させ、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得て、次に、精製補助ろ過膜で精製する、合成反応のステップ(2)と、
精製後のリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を、真空度−0.01
MPaG、温度70℃の条件で、真空濃縮させ、次に、反応フラスコを−20℃の条件で放置して結晶化させ、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(3)と、
結晶化後の反応フラスコを取り出して、粘稠な固液系を得て、反応フラスコにシクロヘキサン200mLを加えて、十分に撹拌した後、上層の褐色シクロヘキサン相溶液を除去し、4回繰り返して洗浄し、上層の褐色シクロヘキサン相溶液を澄明な溶液にし、この際、下層の結晶化固体が褐色から真白色固体になり、吸引ろ過してシクロヘキサンを除去して、−0.01
MPaG真空度、100℃の条件で24h乾燥させ、所定比率混合による高純度リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(4)とを含む。
【0034】
さらに、前記精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:150:10:0.3:0.4:0.5の質量比で、反応器に投入して、78℃で保温して窒素ガスを導入して、150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを300μmに制御して、紫外線で120s照射して、アセトンで24h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得た。
【0035】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率85.4%、純度99.9%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分65ppm、酸度127ppm、不溶物78ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0036】
実施例4
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、合成反応に有機溶媒としてテトラヒドロフランを用いる以外、実施例3とほぼ同じであった。
【0037】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率86.2%、純度98.4%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分98ppm、酸度239ppm、不溶物184ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0038】
実施例5
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:150:10:0.4:0.5の質量比で、反応器に投入して、75℃で保温して窒素ガスを導入して、130min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを300μmに制御して、紫外線で100s照射して、アセトンで20h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得る以外、実施例3とほぼ同じであった。
【0039】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率86.1%、純度98.7%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分81ppm、酸度174ppm、不溶物91ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0040】
実施例6
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:150:10:0.3:0.5の質量比で、反応器に投入して、78℃で保温して窒素ガスを導入して、150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを300μmに制御して、紫外線で120s照射して、アセトンで20h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得る以外、実施例3とほぼ同じであった。
【0041】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率85.6%、純度98.9%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分77ppm、酸度145ppm、不溶物91ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0042】
実施例7
本発明は、所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法を提供し、精製補助ろ過膜の製造過程として、エタノール、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,1'−(メチレンビス−4,1−フェニレン)ビス[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−アセトン]、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン、2−(3−ニトロ−2−ピリジン)ジメチルマロネート、ベンゾフラン−2−トリフルオロホウ酸カリウムを、100:150:10:0.3:0.4の質量比で、反応器に投入して、75℃で保温して窒素ガスを導入して、150min撹拌し、混合物をガラス板に注いで、次に混合物の上方に石英ガラス板をカバーし、混合物の厚みを300μmに制御して、紫外線で120s照射して、アセトンで24h洗浄し、静置して乾燥させ、前記精製補助ろ過膜を得る以外、実施例3と同じであった。
【0043】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率85.6%、純度98.8%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)、水分81ppm、酸度194ppm、不溶物93ppm、濁度1.5であることを確認した。
【0044】
比較実施例1
所定比率混合による高純度リチウム塩の調製方法であって、
三つ口反応フラスコにアセトニトリル500mLを加えて、激しく撹拌しながらシュウ酸リチウム102gを加え、温度を85℃に上げて1h撹拌し、シュウ酸リチウム懸濁液を調製し、
三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル284gを秤量して、撹拌しながら、2hかけてシュウ酸リチウム懸濁液に徐々に滴下し、滴下が終了した後、懸濁液が澄明になると、さらに撹拌して22h反応させ、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を得る、合成反応のステップ(1)と、
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムの混合反応液を、真空度−0.01
MPaG、温度70℃の条件で、真空濃縮させ、次に、反応フラスコを−20℃の条件で放置して結晶化させ、混合リチウム塩の結晶化粗製品を得る、反応液の濃縮及び結晶化のステップ(2)と、
結晶化後の反応フラスコを取り出して、粘稠な固液系を得て、反応フラスコにシクロヘキサン200mLを加えて、十分に撹拌した後、上層の褐色シクロヘキサン相溶液を除去し、4回繰り返して洗浄し、上層の褐色シクロヘキサン相溶液を澄明な溶液にし、この際、下層の結晶化固体が褐色から真白色固体になり、吸引ろ過してシクロヘキサンを除去して、−0.01
MPaG真空度、100℃の条件で24h乾燥させ、混合リチウム塩(リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比1:1)を得る、混合リチウム塩の精製及び乾燥のステップ(3)とを含む。
【0045】
得られた固体について
19F NMR、
11B NMR、
13C NMR分析を行ったところ、生産物はリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレートとテトラフルオロホウ酸リチウムのモル比が1:1の混合リチウム塩(NMRの積分面積で算出)であり、収率77.4%、純度85.1%(核磁気共鳴によるキャラクタリゼーション)であることを確認した。
【0046】
以上の実施例は本発明の技術案を説明するものに過ぎず、限定的なものではなく、上記実施例にて本発明について詳細に説明したが、当業者であれば、本発明について修正又は同等置換を行えることが理解でき、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われる修正及び部分的な置換が本発明の特許請求の範囲に属する。