特開2020-148407(P2020-148407A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020148407-液体急速凍結・解凍設備 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-148407(P2020-148407A)
(43)【公開日】2020年9月17日
(54)【発明の名称】液体急速凍結・解凍設備
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/02 20060101AFI20200821BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20200821BHJP
   F25D 9/00 20060101ALI20200821BHJP
   A23L 3/36 20060101ALN20200821BHJP
   A23L 3/365 20060101ALN20200821BHJP
   A23B 4/06 20060101ALN20200821BHJP
   A23B 4/07 20060101ALN20200821BHJP
【FI】
   F25D17/02 303
   F25B1/00 399Y
   F25D9/00 B
   A23L3/36 A
   A23L3/365 Z
   A23B4/06 501C
   A23B4/06 501K
   A23B4/07 B
   A23B4/07 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-46762(P2019-46762)
(22)【出願日】2019年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】518015088
【氏名又は名称】株式会社光商事
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正憲
【テーマコード(参考)】
3L044
4B022
【Fターム(参考)】
3L044BA04
3L044CA04
3L044DB02
3L044FA02
3L044GA02
4B022LA06
4B022LB01
4B022LB02
4B022LF05
4B022LF11
4B022LN05
4B022LQ04
4B022LT02
(57)【要約】
【課題】被冷凍物を不凍液に浸漬して急速凍結させる設備に、低温水解凍設備とを組み合わせた液体急速凍結・解凍設備において、不凍液を有効活用する。
【解決手段】第一の蒸発器を備え被冷凍物を不凍液に漬けて急速凍結させる凍結槽と、前記第一の蒸発器に圧縮機及び凝集器を接続して冷媒を循環させる第一の管路と、第二の蒸発器と発熱器とを備え、被冷凍物を低温水に漬けて低速解凍する低温水解凍槽と、前記第二の蒸発器に前記凍結槽及びポンプを接続して前記不凍液を循環させる第二の管路と、前記発熱器に電源を供給する電源装置とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の蒸発器を備え被冷凍物を不凍液に漬けて急速凍結させる凍結槽と、
前記第一の蒸発器に圧縮機及び凝集器を接続して冷媒を循環させる第一の管路と、
第二の蒸発器と発熱器とを備え、被冷凍物を低温水に漬けて低速解凍する低温水解凍槽と、
前記第二の蒸発器に前記凍結槽及びポンプを接続して前記不凍液を循環させる第二の管路と、
前記発熱器に電源を供給する電源装置とを備えていることを特徴とする、液体急速凍結・解凍設備。
【請求項2】
前記第二の管路は、前記ポンプが吐出した不凍液を前記凍結槽にそのまま戻すバイパス路を備えていることを特徴とする、液体急速凍結・解凍設備。
【請求項3】
前記第二の管路は、前記バイパス路との分岐点に三方弁が設けられていることを特徴とする、液体急速凍結・解凍設備。
【請求項4】
前記不凍液は、エチルアルコールを主成分としていることを特徴とする請求項1又は2に記載の、液体急速凍結・解凍設備。
【請求項5】
前記被冷凍物は予め真空パックされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の、液体急速凍結・解凍設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮮魚や食肉等の被冷凍物とした液体急速凍結設備に、低温水解凍設備を組み合わせた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような凍結装置の従来例として、次の特許文献には、被冷凍物を不凍液に漬けて急速凍結させる装置において、ジェットスクリューポンプによって不凍液を噴流撹拌することで被冷凍物を均一に凍結させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特告平7−28710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記特許文献の構成では、不凍液が被冷凍物の凍結のためのみに使われており有効利用されていない。これに対して本発明は、そのような不凍液を有効利用することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による凍結解凍装置は、第一の吸熱器を備え被冷凍物を不凍液に漬けて急速凍結させる凍結槽と、前記第一の吸熱器に圧縮機及び放熱器を接続して冷媒を循環させる第一の管路と、第二の吸熱器と発熱器とを備え、被冷凍物を低温水に漬けて低速解凍する低温解凍槽と、前記第二の吸熱器に前記凍結槽及びポンプを接続して前記不凍液を循環させる第二の管路と、前記発熱器に電源を供給する電源装置とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による凍結解凍設備は、凍結槽と低温水解凍槽とを組み合わせて構成されており、低温解凍槽の水温を保つために、凍結槽から循環させた不凍液を用いるようにしている。そのため不凍液Bが有効利用できる。また低温水解凍槽によって、被冷凍物をその種別等に適した低温で解凍することが可能であり、これによって解凍中の変質等が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明による凍結解凍設備の基本構成を示す縦断面図である。
図2】(a)は被冷凍物として魚の生き〆を想定したときの凍結プロセスを説明するフロー図、(b)は、被冷凍物の解凍プロセスを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明による凍結解凍設備の基本構成を示す縦断面図である。
凍結解凍設備1は、第一の吸熱器11を備え、被冷凍物Tを不凍液(ブライン)Bに漬けて急速凍結させる凍結槽10と、吸熱器11に圧縮機13及び放熱器14を接続して冷媒を循環させる第一の管路12と、第二の吸熱器16と発熱器17とを備え、被冷凍物Tを低温水に漬けて低速解凍する低温解凍槽17と、吸熱器16に凍結槽10及びポンプ18を接続して不凍液Bを循環させる第二の管路19と、発熱器17に電源を供給する電源装置20とを備えている。
【0009】
凍結槽10は、不凍液Bを溜める堅牢な槽であって、ステンレス等の板金と、樹脂板と、樹脂やセラミック等の断熱材とからなり、基台10bに載置されている。
凍結槽10の内面側は水密処理されている。凍結槽10の容積は特に制限されず、被冷凍物Tのサイズ等によって数立米〜数百立米が可能である。
【0010】
蓋部10aは、凍結槽10を閉鎖するための板体であって、凍結槽10と同様の素材からなる。蓋部10aは、単一の板体でもよいし、分割式の板体であってもよい。ただし蓋部に水圧がかかることはないので軽量なものにするとよい。
蓋部10aは凍結槽10から取外し可能であってもよいし、蝶番によって凍結槽10に連結されていてもよい。また蓋部10aを自動開閉するためのモーター装置を備えてもよい。このような蓋部10aを設けることで、凍結液の温度上昇、蒸発、異物混入が抑えられる。
【0011】
吸熱器11は、凍結槽10に溜められた不凍液Bから吸熱するための熱交換器であって、十分な長さを有した銅管等の金属管11aからなる。金属管11aは凍結槽10の内周面に沿って(内周面に接触せずに)槽内を周回するように配置されている。金属管11aには複数のフィン(図示なし)を設けてもよい。放熱器14の配置は特に制限されないが、放熱器14によって冷却された不凍液Bが凍結槽10の中で自然対流を生じるような配置が望ましい。なお放熱器14の入口部分には膨張弁(図示なし)が内蔵されている。
【0012】
管路12は、冷媒が吸熱器11、圧縮機13及び放熱器14を循環するためのループ経路を形成する配管であって、金属管又は樹脂管等からなる。
【0013】
圧縮機13は、気体状態の冷媒を圧縮する装置であって、その駆動用に図示しないモーター等の動力源を備えている。圧縮機13の種別に特段の制限はなく、ターボ型、スクリュー型、レスプロ型等を用いることができる。なお冷媒の種別に応じた圧縮圧を得るため圧縮機13は多段構成にする等の構成も可能である。
【0014】
放熱器14は、冷媒の熱を空気中に放熱させるための装置であって、十分な長さを有した銅管等の金属管14aと複数のフィン14bとブロアー14cとからなる。金属管14aは所定間隔で配置されたフィン14bを貫いた態様で固着されている。また金属管14aは、フィン14bの全体が所定の厚みを有する板形状をなすように蛇行している。ブロアー14cはこれが発生された気流がフィン14bの間隙を通り抜けるように配置されている。
【0015】
管路12の経路中、圧縮機13の入口近傍にはアキュムレーター15が介設されており、また放熱器14の出口近傍には、レシーバー16が介設けられている。アキュムレーター15は圧縮機13に吸い込まれる前の冷媒から液体を捕集して蓄積する気液分離タンクである。これによって圧縮機13の破損が防止できる。一方レシーバー16は、放熱器14から放出された後の冷媒から気体を捕集する気液分離タンクである。吸熱器11に液体のみを送ることで吸熱効果が高められる。
【0016】
低温解凍槽17は、被冷凍物Tを低速解凍(ゆっくりと解凍)するための低温水CWを溜める堅牢な槽であって、凍結槽と同様の構造であり、基台17bに載置されている。凍結槽10の容積は特に制限されず、凍結槽10と同等あるいはそれ以上とすることができる。
蓋部17aは、凍結槽10用の蓋部10aと同様のものである。
【0017】
吸熱器18は、低温解凍槽17に溜められた低温水CWから吸熱するための熱交換器であって、十分な長さを有した銅管等の金属管18aからなる。金属管18aは低温解凍槽17の内周面に沿って(内周面に接触せずに)槽内を周回するように配置されている。金属管18aには複数のフィン(図示なし)を設けてもよい。
【0018】
発熱器19は、被冷凍物Tの解凍中に低温水CWが凍結するのを防止して水温を保つためのものであって、特にその種別は制限されないが、例えば、水没させて使用できる潜水式ヒーター等が適している。潜水式ヒーターは、耐水ケースの内部に電熱線あるいはカーボン発熱体等を収容した構造になっている。
【0019】
電源装置20は、発熱器19に電源を供給する要素であって、交流安定化電源、直流安定化電源、PWM電源等を用いることができる。
【0020】
管路21は、凍結槽10に溜められた不凍液Bがポンプ22を介して吸熱器18を循環するための経路を形成する配管であって、金属管又は樹脂管等からなる。管路21の両端は、凍結槽10内に開放されている。管路21は、ポンプ22が吐出した不凍液Bを凍結槽10にそのまま戻すバイパス路23を備えている。
【0021】
ポンプ22は、その種別に特段の制限はないが、低温用マグネットポンプ等が特に適している。ポンプ22は、凍結槽10に溜められている不凍液Bを吸熱器18に向けて吐出する。
【0022】
三方弁24は、管路21とバイパス路22との分岐点に設けられており、1つの流入口を2つの流出口のいずれかに選択的に連通させる構成の弁体である。つまり三方弁24は、ポンプ22が吐出した不凍液Bを吸熱器18に送るか、凍結槽10に戻すかを選択する。ポンプ22及び三方弁24をコンピューター等によって自動制御すれば、ポンプ22が吐出した不凍液Bを所望の割合で吸熱器18に送ることが可能である。なお三方弁24の替わりに開度調節可能な複数の二方弁を用い、手動操作によって所望の量の不凍液Bを吸熱器18に送るようにしてもよい。
【0023】
制御手段25は、パーソナルコンピューターあるいは専用のコンピューター装置からなり、圧縮機13、ポンプ18、電源装置20、三方弁24を制御する。制御装置22には、不凍液Bの目標温度、低温水の目標温度等を設定するための操作部(図示なし)が設けられる。
【0024】
冷媒は、例えばR410等のHFC混合冷媒、HFC134等のHFC単体冷媒、アンモニア等の自然冷媒が使用できる。
【0025】
不凍液Bは、特段の制限はないが、その液温として摂氏マイナス40度以下の運用を前提とすればエチルアルコールやエチレングリコール等を主成分としたものが適している。
【0026】
また、冷凍解凍設備1は、被冷凍物Tを高速解凍するための中高温水解凍槽26を更に備えてもよい。
中高温解凍槽26は、中高温水HWを溜める堅牢な槽であって、凍結槽10と同様の構造であり、基台26bに載置されている。中高温解凍槽26の容積は特に制限されず、凍結槽10と同等あるいはそれ以上とすることができる。
蓋部26aは、凍結槽10の蓋部10aと同様のものである。
【0027】
発熱器27は、被冷凍物Tを解凍中に中高温水の水温を保つためのものであって、低温水解凍槽17用の発熱器19と同様である。
発熱器27に電源を供給する電源装置28は、発熱器19用の電源装置20を共用してもよいし、独立したものでもよい。
【0028】
凍結解凍設備の基本的な作用は次のようである。
凍結槽10に不凍液Bを溜めた状態で圧縮機13を連続作動させると、冷媒が管路12を介して吸熱器11と放熱器14との間を循環し、吸熱器11において気化膨張して不凍液Bから吸熱する一方、圧縮機13、放熱器14で圧縮凝結して空気中に放熱するというヒートポンプの作用をなす。これによって不凍液Bの液温が下がっていく。吸熱器11、放熱器14、圧縮機13の能力や冷媒の種別を適切に選択すれば不凍液Bの温度を摂氏マイナス40度以下まで下げられる。不凍液Bの水温は、圧縮機13の駆動制御によって自在に調節きる。
【0029】
前記のようにして極めて低温になった不凍液Bに被冷凍物Tを漬けると、不凍液Bは空気に比べて比熱も熱伝導率も高いので、被冷凍物Tは急速凍結される。その所要時間は10〜30分程度になると考えられる。被冷凍物Tを急速に凍結させればその組織の破壊が抑えられるので、解凍時にドリップがほとんど発生せず、また味覚、食感の劣化もごく僅かになる。
【0030】
また低温水解凍槽17に常温の水を溜めた状態として、ポンプ18を作動させて不凍液Bを低温解凍槽17の吸熱器16に循環させれば、所望温度(摂氏5度〜15度)の低温水CWになる。この低温水CWに凍結された状態の被冷凍物Tを漬けて発熱器19を適宜作動させれば、低温水CWの水温低下を防止して一定温度に保つことができ、被冷凍物Tをその種別等に適した低温で解凍することが可能である。これによって解凍中の変質等が抑えられる。
【0031】
また中高温水解凍槽26に常温の水を溜めた状態として、発熱器27を作動させれば、所望温度(摂氏15度〜40度)の中高温水HWになる。この中高温水HWに被冷凍物Tを漬けて発熱器27を適宜作動させれば、中高温水HWの水温低下を防止して一定温度に保つことができ、被冷凍物Tを適した中高温で解凍することが可能である。
低温水解凍槽17、温水解凍槽26は、被冷凍物Tの種別等に応じて使い分ければよい。
【0032】
このように本発明では、凍結冷凍設備1は、凍結槽10、低温水解凍槽17、更に中高温水解凍槽26を組み合わせて構成されており、低温解凍槽17の水温を保つために、凍結槽10から循環させた不凍液Bを用いるようにしている。そのため不凍液Bが有効利用できる。
また低温水解凍槽17、温水解凍槽26の使い分けによって、被冷凍物Tをその種別等に適した低温または中高温で解凍できるから、解凍中の変質等を抑えつつ迅速な解凍が可能である。
【0033】
図2(a)は、被冷凍物として魚の生き〆を想定したときの凍結プロセスを説明するフロー図、図2(b)は、被冷凍物の解凍プロセスを説明するフロー図である。
【0034】
凍結プロセスでは、被冷凍物Tは、生き〆、水洗、水切りしたあと予め真空パックにする。そして被冷凍物Tを金属カゴ30に入れ、その金属カゴ30を摂氏マイナス40度以下の不凍液Bに漬けてから凍結槽10を閉ざす。被冷凍物Tを金属カゴ30に入れることでその扱い、つまり凍結槽10への漬け入れ、引き上げが楽になる。
被冷凍物Tを不凍液Bに漬けてから所定時間が経過したあと、凍結槽10を開いて金属カゴ30を引き上げる。そしてエアブロー等によって被冷凍物Tに付着している不凍液Bを除去して、被冷凍物Tを樹脂カゴ等に移し替え、それを冷凍庫(図示なし)に搬入する。その後被冷凍物Tは冷凍庫で所望期間、冷凍保存される。
【0035】
解凍プロセスでは、被解凍物Tを冷凍庫から取り出して解凍カゴ31に入れ、それを低温解凍槽17の低温水CW又は中高温水解凍槽26の中高温水HWに漬けてから、低温水解凍槽17又は温水解凍槽26を閉ざす。その後所定時間経過して被冷凍物Tが解凍されたあと、解凍カゴ31を引き上げる。そして解凍された被冷凍物Tを解凍カゴ31から取り出しエアブロー等によって付着している中高温水HWを除去し、被冷凍物Tを真空パックから取り出す。このようにして凍結槽10で凍結された、あるいは他の手段によって凍結された被冷凍物Tを、その種別等に適した低温、または中高温で解凍する。
【符号の説明】
【0036】
1 凍結解凍設備
10 凍結槽
11 第一の吸熱器
12 第一の管路
13 圧縮機
14 放熱器
19 発熱器
17 低温水解凍槽
20 電源装置
21 第二の管路
22 ポンプ
23 バイパス路
24 三方弁
B 不凍液
CW 低温水
T 被冷凍物
図1
図2