【解決手段】ハウジングは、各端子を内部にそれぞれ収容可能な複数の端子収容凹部と、端子係止部材を内部に収容可能な係止部材収容凹部とを含み、端子係止部材は、係止部材収容凹部内に収容される枠体と、枠体に一体的に形成された複数の係止凸部であって、端子係止部材が端子収容凹部への端子の挿抜を不能とする本係止位置にあるときに、それぞれが各端子と接触して端子を係止する係止凸部と、枠体及び係止凸部の面の少なくとも一部に形成されたMID形成導電パターンである導電パターンとを含み、導電パターンは、選択された複数の係止凸部の面を相互に導通させ、選択された複数の係止凸部に係止された端子同士を相互に導通させる。
前記端子は、係止開口と該係止開口内に配設された弾性片とを含み、前記端子係止部材が本係止位置にあるとき、前記係止凸部は前記係止開口内に進入し、前記係止凸部の下面に形成された導電パターンが前記弾性片と接触して導通する請求項1に記載のコネクタ。
前記枠体は斜め後方下向きの傾斜面を含み、該傾斜面に前記ハウジングの幅方向に延在する帯状の導電パターンが形成され、前記係止凸部は斜め後方下向きの傾斜面を含み、該傾斜面には、前記下面に形成された導電パターンと連続して前後方向に延在する帯状の導電パターンが形成され、該導電パターンの後端は前記ハウジングの幅方向に延在する帯状の導電パターンに接続されている請求項2に記載のコネクタ。
前記枠体は、本体部と、該本体部の上端から後方に突出する庇部と、前記本体部の両端に一体的に接続された側板部とを含み、複数の係止凸部は、前記本体部及び庇部の直下においてハウジングの幅方向に並んで配置され、前記側板部は斜め後方内向きの傾斜面を含み、該傾斜面には上下方向に延在する帯状の導電パターンが形成され、該導電パターンの上下両端は、前記本体部の斜め後方下向きの傾斜面に形成されたハウジングの幅方向に延在する帯状の導電パターン、及び、前記庇部の斜め後方下向きの傾斜面に形成されたハウジングの幅方向に延在する帯状の導電パターンに接続されている請求項3に記載のコネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は本実施の形態におけるコネクタの斜め前方から観た斜視図、
図2は本実施の形態におけるコネクタの分解図、
図3は本実施の形態におけるコネクタの三面図である。なお、なお、
図3において、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は(b)におけるA−A矢視断面図である。
【0020】
図において、1は本実施の形態におけるコネクタであり、複数の電線91を備えるケーブルの終端に接続されるコネクタである。ここで、前記コネクタ1は、相手方コネクタに嵌合されて接続されるものでなく、所望の電線91同士を電気的に接続するための、いわゆるジョイントコネクタとして機能するものであるとして説明する。また、前記コネクタ1は、各種電子機器や、家庭用機器、医療機器、産業機器、輸送機器などの各種の機器において使用されるもので、いかなる用途において使用されるものであってもよいが、ここでは、説明の都合上、自動車等の輸送機器において使用されるものとする。
【0021】
なお、本実施の形態において、コネクタ1及びその他の部材に含まれる各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、コネクタ1及びその他の部材に含まれる各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、コネクタ1及びその他の部材に含まれる各部の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0022】
前記コネクタ1は、絶縁性材料である合成樹脂等の樹脂によって一体的に形成され、概略直方体のような全体形状を備えるハウジング11と、前記電線91の終端に接続された状態で前記ハウジング11に装着される導電性の金属から成る端子51と、絶縁性材料である合成樹脂等の樹脂によって一体的に形成され、前記端子51がハウジング11から外れることを防止するリテーナとしての端子係止部材21とを備える。なお、
図2には、説明の都合上、1つの端子51のみが示されているが、端子51の数は電線91の数に対応して任意に変更することができる。また、端子51のピッチも任意に決定することができる。さらに、前記電線91は、図示の都合上、端子51の近傍部分のみが描画され、それ以外の部分が省略されている。
【0023】
前記ハウジング11は、該ハウジング11内において前後方向に延在する端子収容凹部16を備える。該端子収容凹部16は、ハウジング11を前後方向に貫通する貫通孔であって、その両端が前面11f及び後面11rに開口する。そして、端子収容凹部16は、ハウジング11の幅方向に並んで列を成すように配設され、隣接する端子収容凹部16同士は、その間に形成された仕切壁によって仕切られている。図に示される例において、端子収容凹部16は、11個の端子収容凹部16がハウジング11の幅方向に並んだ列が、上下2列となるように配置されている。なお、端子収容凹部16の数は端子51及び電線91の数に対応して任意に変更することができる。また、端子収容凹部16のピッチも端子51及び電線91のピッチに対応して任意に決定することができる。
【0024】
前記ハウジング11は、コネクタ1の前後方向(X軸方向)に延在する一対の側壁部11cと、上方に位置する天壁部11aと、該天壁部11aと平行な下方に位置する底壁部11bとを備える。
【0025】
そして、該底壁部11bの下面には、図示されない固定用部材を取付けるための固定用部材取付部12が形成されている。前記固定用部材は、いかなる種類の部材であってもよいが、例えば、鋼等の金属から成る帯状の板材であって、一般にステーと称される細長い部材であり、その基端は、例えば、自動車等の輸送機器のボディ等の構造用部材に安定的に取付けられており、その先端が固定用部材取付部12の取付空洞12aに挿入されて係合される。これにより、前記ハウジング11は、固定用部材を介して、構造用部材に安定的に固定される。
【0026】
また、前記側壁部11cは、概ね平坦な板部材であるが、一方の外側面(
図3(a)における右側面)には結合用凸部13aが形成され、他方の外側面(
図3(a)における左側面)には結合用凹部13bが形成されている。前記結合用凸部13aは、前記結合用凹部13bに挿入されて係合されるようになっているので、1つのハウジング11の結合用凸部13aを他のハウジング11の結合用凹部13bに挿入して係合させることによって、複数のハウジング11を幅方向(Y軸方向)に並べて相互に結合させることができる。
【0027】
さらに、前記天壁部11aには、係止部材収容凹部としての係止部材受入溝17が開口している。該係止部材受入溝17は、ハウジング11の幅方向に延在してすべての端子収容凹部16の途中を横断するように形成された細長い溝状の凹部であって、端子係止部材21を収容する。
【0028】
そして、前記係止部材受入溝17における長手方向(ハウジング11の幅方向)両端面には、端子係止部材21を保持するための凸部である保持用凸部18が形成されている。該保持用凸部18は、端子係止部材21の幅方向両端面に形成された凸部である被保持凸部27と係合し、これにより、係止部材受入溝17内における端子係止部材21を所定の位置に保持する。なお、前記保持用凸部18は、上側に形成された保持用上側凸部18Aと下側に形成された保持用下側凸部18Bとを含んでいる。また、前記被保持凸部27も、保持用上側凸部18Aと係合する被保持上側凸部27Aと、保持用下側凸部18Bと係合する被保持下側凸部27Bとを含んでいる。
【0029】
前記端子51は、導電性の金属板に曲げ加工及び打抜き加工を施すことによって一体的に形成され、本体部としての接触筒部52と、該接触筒部52の後端に接続された電線接続部53とを備える。該電線接続部53は、電線91に固定されるとともに、該電線91が備える導線としての芯線92と電気的に接続される部分であり、芯線92及び該芯線92の周囲を覆う絶縁被覆93をかしめて固定する。なお、必要に応じてはんだを付与することによって、芯線92と電線接続部53とを更に強固に接続固定することができる。また、前記接触筒部52は、電線接続部53の先端から前方に向けて延出する角筒状の部分である。また、前記接触筒部52の後端は後方係止部54として機能し、端子51が端子収容凹部16内に収容されると、該端子収容凹部16の底面から斜め上に向けて前方に突出するカンチレバー状のランス16aの先端と係合する。これにより、端子収容凹部16内に収容された端子51が後方へ抜出ることが防止される。さらに、前記接触筒部52の上面には、係止部としての係止開口55が形成されている。
【0030】
前記端子係止部材21は、ハウジング11の幅方向に延在する概略細長い直方体のような全体形状の本体部22を備え、該本体部22の長手方向(ハウジング11の幅方向)両端には側板部26が一体的に接続され、さらに、該側板部26の外側面には、前記被保持凸部27が形成されている。そして、前記端子係止部材21は、本体部22の前面22fがハウジング11の前面11f側を向くような姿勢でハウジング11の係止部材受入溝17に収容される部材である。なお、本体部22の上面22aはほぼ平坦である。
【0031】
そして、前記本体部22は、前後方向に延在する端子挿通開口23を備える。該端子挿通開口23は、本体部22を前後方向に貫通する貫通孔であって、その両端が前面22f及び後面に開口する。そして、端子挿通開口23は、端子係止部材21の幅方向に並んで列を成すように配設され、隣接する端子挿通開口23同士は、その間に形成された仕切壁によって仕切られている。図に示される例において、端子挿通開口23は、1列となるように配置され、端子係止部材21がハウジング11の係止部材受入溝17に収容されると、2列のうちの上側の列の端子収容凹部16に対応する。また、各端子挿通開口23内には、天井から下方に向けて突出する上側係止凸部25Aが形成され、本体部22の下面22bにおける各上側係止凸部25Aに対応する位置には、下方に向けて突出する下側係止凸部25Bが形成されている。なお、前記上側係止凸部25Aと下側係止凸部25Bとを統合的に説明する場合には、係止凸部25として説明する。該係止凸部25は、前記端子51の係止開口55に上から進入して端子51を係止する部材であり、これにより、端子収容凹部16内に収容された端子51が前後へ変位することが防止される。
【0032】
さらに、前記端子係止部材21の所定の面には、後述される導電パターン61が、MID技術を使用して、選択的に形成されている。これにより、端子収容凹部16内に収容された端子51のうちの選択されたもの同士が相互に導通する。
【0033】
次に、前記端子51及び端子係止部材21の構成について詳細に説明する。
【0034】
図4は本実施の形態における端子の三面図、
図5は本実施の形態における端子係止部材の斜め後方から観た斜視図、
図6は本実施の形態における端子係止部材の第1の二面図、
図7は本実施の形態における端子係止部材の三面図、
図8は本実施の形態における端子係止部材の第2の二面図、
図9は本実施の形態における端子係止部材が本係止位置にあるときのコネクタの二面図、
図10は本実施の形態における端子係止部材が仮係止位置にあるときのコネクタの断面図である。なお、
図4において、(a)は側面図、(b)は側断面図、(c)は上面図であり、
図6において、(a)は上面図、(b)は下面図であり、
図7において、(a)は正面図、(b)は(a)におけるB−B矢視断面図、(c)は(a)におけるC−C矢視断面図であり、
図8において、(a)は背面図、(b)は(a)におけるD−D矢視断面図であり、
図9において、(a)は正面図、(b)は(a)におけるE−E矢視断面図である。
【0035】
図4に示されるように、端子51の電線接続部53は、芯線かしめ部53Aと被覆かしめ部53Bとを含み、前記芯線かしめ部53Aが電線91の終端に露出する芯線92を直接かしめて該芯線92と電気的に接続され、前記被覆かしめ部53Bが芯線92の周囲を覆う絶縁被覆93ごと電線91をかしめるようになっている。
【0036】
また、角筒状の接触筒部52は、その内部に形成された前側弾性片56Aと後側弾性片56Bとを含んでいる。前記前側弾性片56Aは、接触筒部52の前端の底面から斜め上に向けて後方に突出するカンチレバー状の板ばねであり、前記後側弾性片56Bは、接触筒部52の後端の底面から斜め上に向けて前方に突出するカンチレバー状の板ばねである。そして、前側弾性片56A及び後側弾性片56Bの先端、すなわち、自由端は係止開口55の直下に位置している。なお、前側弾性片56Aと後側弾性片56Bとを統合的に説明する場合には、弾性片56として説明する。
【0037】
図5〜8に示されるように、端子係止部材21の所定の面には、MID技術を使用して形成された導電パターンであるMID形成導電パターンとしての導電パターン61が選択的に形成されている。この場合、端子係止部材21の材料である樹脂として、例えば、レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)に使用される樹脂であって、芳香族ポリアミド等の高耐熱性の樹脂をベースとして有機金属錯体等の非導電性金属化合物を含む添加物を混合したものを使用する。非導電性金属化合物である有機金属錯体は、レーザービーム照射によって熱エネルギが付与されると活性化し、有機物の配位子が分離して金属核としての金属原子を出現させるという性質を有する。そこで、レーザービームを照射して、端子係止部材21の所定の面に前記導電パターン61と同様のパターンを描画する。すると、前記端子係止部材21の面に前記導電パターン61と同様のパターンを形成するように金属原子が露出して金属シードを形成する。続いて、無電解銅めっき処理を行って、前記端子係止部材21の面に露出している金属シードに、導電性金属である銅を析出させる。これにより、前記端子係止部材21の面に銅めっき膜から成る導電パターン61を得ることができる。
【0038】
前記端子係止部材21は、本体部22の上端から後方に突出する庇部28を含んでいる。前後方向(X軸方向)に関し、庇部28の後端の位置は、本体部22の後面よりも後方に位置し、側板部26の後端の位置とほぼ同等である。そして、後方から観ると、前記本体部22、側板部26及び庇部28は、概略門型の枠体を形成し、該枠体に複数の係止凸部25が一体的に形成されたようになっている。なお、上側係止凸部25Aは庇部28の直下においてハウジング11の幅方向に並んで配置され、下側係止凸部25Bは本体部22の直下においてハウジング11の幅方向に並んで配置されているとも言える。
【0039】
ここで、庇部28における下側のハウジング11の幅方向に延在する面は、斜め後方下向きの傾斜面であって、庇傾斜面28cと称される。また、左右の側板部26におけるハウジング11の幅方向中心側を向き上下方向(Z軸方向)に延在する面は、斜め後方内向きの傾斜面であって、側板傾斜面26cと称される。さらに、本体部22における端子挿通開口23より下側のハウジング11の幅方向に延在する面は、斜め後方下向きの傾斜面であって、本体傾斜面22cと称される。さらに、各上側係止凸部25A及び各下側係止凸部25Bにおいて、前方を向いた前面は、本体部22の前面22fと面一であって上下方向に延在し、係止凸部前面25fと称され、真下を向いた下面(X−Y平面に平行な面)は、係止凸部下面25cと称され、後方を向いた面は、斜め後方下向きの傾斜面であって、係止凸部傾斜面25rと称される。なお、各下側係止凸部25Bの係止凸部傾斜面25rは、本体傾斜面22cと面一であって、該本体傾斜面22cと連続している。
【0040】
上述のように、端子係止部材21の材料は、レーザー照射によって活性化し、有機物の配位子が分離して金属核としての金属原子を出現させる材料である。そして、前記端子係止部材21は、レーザービームを連続して照射可能な連続面を有する。具体的には、
図7に示されるようなレーザー照射方向Lから同時に視認可能に連続して形成された面として、次の(a)〜(c)を有する。
(a)上側係止凸部25Aに係る庇傾斜面28c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25c
(b)下側係止凸部25Bに係る本体傾斜面22c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25c
(c)側板傾斜面26c
すなわち、(a)上側係止凸部25Aに係る庇傾斜面28c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25cと、(b)下側係止凸部25Bに係る本体傾斜面22c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25cとは、連続して配置され、それらを繋ぐ(c)側板傾斜面26cが更に連続して、同時に視認可能に配置される。
【0041】
(a)上側係止凸部25Aに係る庇傾斜面28c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25cと、(b)下側係止凸部25Bに係る本体傾斜面22c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25cとは、適切入射角αの範囲で連続して形成され、(c)側板傾斜面26cは、極小さな範囲で動かせば、適切入射角αとなる面である。
【0042】
なお、前記レーザー照射方向Lとは、本実施の形態においては、X−Z平面に平行で、かつ、斜め前方上向きであって、下側係止凸部25Bにより上側係止凸部25Aの係止凸部下面25cが遮られない方向である。また、前記適切入射角αは、金属原子を出現させるために必要なエネルギを照射するための、金属原子を出現させる面に対するレーザービームの入射角であって、例えば、70度以内の角度である。
【0043】
本実施の形態においては、連続面上に、短絡させようとする端子51に応じたパターンとなるようにレーザー照射を行って連続した金属原子露出面を出現させて金属シードを形成し、該金属シードに無電解めっきにより連続した導電パターン61を形成する。同時(一度)に視認可能な面にレーザー照射を行って金属原子露出面を形成するので、レーザービームの適切入射角αを得るために端子係止部材21を動かしたり、レーザー光源を動かしたりする必要がなく、動かしたとしても極小さな範囲で動かせばよいことになる。
【0044】
これにより、本実施の形態においては、MID技術を使用するための治具の作製が容易になり、作業が容易になる。
【0045】
そして、
図5〜8に示される例において、導電パターン61は、
図8(a)において、第1導電パターン61−1〜第4導電パターン61−4として示されるように、4つ形成されている。
【0046】
第1導電パターン61−1は、
図8(a)において、左端寄りの3つの上側係止凸部25A及び左端寄りの3つの下側係止凸部25Bの係止凸部下面25cを相互に導通させるようになっている。
【0047】
これは、(a)上側係止凸部25Aに係る庇傾斜面28c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25cと、(b)下側係止凸部25Bに係る本体傾斜面22c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25cと、(c)側板傾斜面26cとを同時に視認可能な連続面とした例である。
【0048】
具体的には、左端寄りの3つの上側係止凸部25Aのそれぞれにおける係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25rのほぼ全面に亘って連続するように導電パターン61が形成される。また、庇傾斜面28cには、左端から3つ目の上側係止凸部25Aに対応する位置から左端までハウジング11の幅方向に延在する帯状の連続した導電パターン61が形成される。なお、各上側係止凸部25Aの係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25rに形成された導電パターン61は、それぞれ、帯状に連続して、庇傾斜面28cに形成された導電パターン61に接続される。したがって、第1導電パターン61−1における庇傾斜面28cと各上側係止凸部25Aとに形成された部分は、
図8(b)に示されるように、下方から観ると、概略櫛歯の形状を有する連続した帯状のパターンとなる。なお、各端子挿通開口23の内面において、上側係止凸部25Aの係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25r以外の面には、導電パターン61が形成されない。さらに、上側係止凸部25Aの係止凸部前面25fにも、導電パターン61が形成されない。
【0049】
また、左端寄りの3つの下側係止凸部25Bのそれぞれにおける係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25rのほぼ全面に亘って連続するように導電パターン61が形成される。さらに、本体傾斜面22cには、左端から3つ目の下側係止凸部25Bに対応する位置から左端までハウジング11の幅方向に延在する帯状の連続した導電パターン61が形成される。なお、各下側係止凸部25Bの係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25rに形成された導電パターン61は、それぞれ、帯状に連続して、本体傾斜面22cに形成された導電パターン61に接続される。したがって、第1導電パターン61−1における本体傾斜面22cと各下側係止凸部25Bとに形成された部分は、
図6(b)に示されるように、下方から観ると、概略櫛歯の形状を有する連続した帯状のパターンとなる。なお、本体部22の下面22bにおいて、下側係止凸部25Bの係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25r以外の面には、導電パターン61が形成されない。また、下側係止凸部25Bの係止凸部前面25fにも、導電パターン61が形成されない。
【0050】
さらに、左側の側板部26の側板傾斜面26cには、上下方向に延在する帯状の連続した導電パターン61が形成される。そして、該帯状の連続した導電パターン61の上下両端は、庇傾斜面28cに形成された導電パターン61の左端、及び、本体傾斜面22cに形成された導電パターン61の左端に、それぞれ、接続される。これにより、庇傾斜面28c及び各上側係止凸部25Aに形成された概略櫛歯状の導電パターン61と、本体傾斜面22c及び各下側係止凸部25Bに形成された概略櫛歯状の導電パターン61とは、庇傾斜面28cに形成された上下方向に延在する帯状の導電パターン61によって接続され、左端寄りの3つの上側係止凸部25A及び左端寄りの3つの下側係止凸部25Bの係止凸部下面25cを相互に導通させる第1導電パターン61−1が形成される。
【0051】
側板傾斜面26cに対するレーザービームの入射角が大きく適切入射角α以上となっている場合でも、側板傾斜面26cがレーザー照射方向Lに対して傾斜しているので、適切入射角αにするためには、極小さい角度で動かせばよい。
【0052】
次に、第2導電パターン61−2は、
図8(a)において、ハウジング11の幅方向中心寄りの5つの上側係止凸部25Aの係止凸部下面25cを相互に導通させるようになっている。
【0053】
これは、(a)上側係止凸部25Aに係る庇傾斜面28c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25cを同時に視認可能な連続面とした例である。
【0054】
具体的には、ハウジング11の幅方向中心寄りの5つの上側係止凸部25Aのそれぞれにおける係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25rのほぼ全面に亘って連続するように導電パターン61が形成される。また、庇傾斜面28cには、ハウジング11の幅方向中心寄りの5つの上側係止凸部25Aに対応する範囲に、ハウジング11の幅方向に延在する帯状の連続した導電パターン61が形成される。なお、各上側係止凸部25Aの係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25rに形成された導電パターン61は、それぞれ、帯状に連続して、庇傾斜面28cに形成された導電パターン61に接続される。したがって、第2導電パターン61−2における庇傾斜面28cと各上側係止凸部25Aとに形成された部分は、
図8(b)に示されるように、下方から観ると、概略櫛歯の形状を有する連続した帯状のパターンとなる。なお、各端子挿通開口23の内面において、上側係止凸部25Aの係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25r以外の面には、導電パターン61が形成されない。また、上側係止凸部25Aの係止凸部前面25fにも、導電パターン61が形成されない。これにより、ハウジング11の幅方向中心寄りの5つの上側係止凸部25Aの係止凸部下面25cを相互に導通させる第2導電パターン61−2が形成される。
【0055】
次に、第3導電パターン61−3は、
図8(a)において、ハウジング11の幅方向中心寄りの5つの下側係止凸部25Bの係止凸部下面25cを相互に導通させるようになっている。
【0056】
これは、(b)下側係止凸部25Bに係る本体傾斜面22c、係止凸部傾斜面25r及び係止凸部下面25cを同時に視認可能な連続面とした例である。
【0057】
具体的には、ハウジング11の幅方向中心寄りの5つの下側係止凸部25Bのそれぞれにおける係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25rのほぼ全面に亘って連続するように導電パターン61が形成される。また、本体傾斜面22cには、ハウジング11の幅方向中心寄りの5つの下側係止凸部25Bに対応する範囲に、ハウジング11の幅方向に延在する帯状の連続した導電パターン61が形成される。なお、各下側係止凸部25Bの係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25rに形成された導電パターン61は、それぞれ、帯状に連続して、本体傾斜面22cに形成された導電パターン61に接続される。したがって、第3導電パターン61−3における本体傾斜面22cと各下側係止凸部25Bとに形成された部分は、
図6(b)に示されるように、下方から観ると、概略櫛歯の形状を有する連続した帯状のパターンとなる。なお、本体部22の下面22bにおいて、下側係止凸部25Bの係止凸部下面25c及び係止凸部傾斜面25r以外の面には、導電パターン61が形成されない。また、下側係止凸部25Bの係止凸部前面25fにも、導電パターン61が形成されない。これにより、ハウジング11の幅方向中心寄りの5つの下側係止凸部25Bの係止凸部下面25cを相互に導通させる第3導電パターン61−3が形成される。
【0058】
次に、第4導電パターン61−4は、
図8(a)において、右端寄りの3つの上側係止凸部25A及び右端寄りの3つの下側係止凸部25Bの係止凸部下面25cを相互に導通させるようになっている。なお、第4導電パターン61−4は、ハウジング11の幅方向中心を通るX−Z平面に関して、前記第1導電パターン61−1と面対称であるので、具体的な説明については、前記第1導電パターン61−1の説明を援用して省略する。
【0059】
次に、端子51を端子係止部材21によって係止し、選択された端子51同士を相互に導通させる動作について説明する。
【0060】
まず、端子51をハウジング11に装着する前に、オペレータは、端子係止部材21をハウジング11に対して相対的に上昇させて、
図10に示されるような仮係止位置に位置させる。なお、
図10は、
図9(b)と同様の部分を示す断面図であって、端子係止部材21が仮係止位置にある点、及び、端子51がハウジング11に装着されていない点でのみ、
図9(b)と相違する。端子係止部材21が仮係止位置にあるときは、上側係止凸部25A及び下側係止凸部25Bが係止部材受入溝17における端子収容凹部16に対応する箇所に進入していないので、端子収容凹部16への端子51の挿抜が可能であって、該端子51をハウジング11の後面11rから端子収容凹部16内に挿入して前面11fの近傍にまで押込むことができ、また、前記端子51を端子収容凹部16から引抜くことができる。
【0061】
なお、端子係止部材21が仮係止位置にあるときは、係止部材受入溝17に形成された保持用上側凸部18Aの上側面が端子係止部材21に形成された被保持上側凸部27Aの下側面と係合し、係止部材受入溝17に形成された保持用下側凸部18Bの下側面が端子係止部材21に形成された被保持下側凸部27Bの上側面と係合するので、端子係止部材21は上下方向にほとんど変位することがない。したがって、端子51を端子収容凹部16の前面11fの近傍にまで、容易に押込むことができる。
【0062】
続いて、オペレータは、端子係止部材21をハウジング11に対して相対的に下降させて、
図9に示されるような端子収容凹部16への端子51の挿抜を不能とする本係止位置にまで変位させる。すると、上側係止凸部25Aが上側の列の端子収容凹部16に収容された端子51の係止開口55内に進入し、下側係止凸部25Bが下側の列の端子収容凹部16に収容された端子51の係止開口55内に進入する。これにより、端子収容凹部16内に収容された端子51が前後へ変位することが防止される。また、各係止凸部25の係止凸部下面25cが、前記係止開口55内において、弾性片56の自由端を下方に押下げ、該弾性片56の自由端と接触する。
図9(b)に示される例においては、各係止凸部25の係止凸部下面25cが、主として、前側弾性片56Aの自由端と接触している。これにより、各係止凸部25の係止凸部下面25cに形成された導電パターン61が対応する端子51と導通する。
【0063】
なお、端子係止部材21が本係止位置にあるときは、
図9(a)に示されるように、係止部材受入溝17に形成された保持用上側凸部18Aの下側面が端子係止部材21に形成された被保持上側凸部27Aの上側面と係合するので、端子係止部材21は上方向に変位して仮係止位置に戻ってしまうことがない。したがって、各係止凸部25は対応する端子51との導通状態を安定的に維持することができる。
【0064】
そして、
図5〜8に示される例において、導電パターン61が第1導電パターン61−1〜第4導電パターン61−4のように形成されているので、
図9(a)に示されるように、正面から観た状態において、上下2列に配置された端子収容凹部16の各々に収容された端子51及び該端子51に接続された電線91のうち、上側の列における右端寄りの3つの端子51及び電線91と下側の列における右端寄りの3つの端子51及び電線91とが、第1導電パターン61−1を介して、相互に導通され、上側の列におけるハウジング11の幅方向中心寄りの5つの端子51及び電線91が、第2導電パターン61−2を介して、相互に導通され、下側の列におけるハウジング11の幅方向中心寄りの5つの端子51及び電線91が、第3導電パターン61−3を介して、相互に導通され、上側の列における左端寄りの3つの端子51及び電線91と下側の列における左端寄りの3つの端子51及び電線91とが、第4導電パターン61−4を介して、相互に導通される。
【0065】
なお、本実施の形態においては、導電パターン61が、
図5〜8に示されるように、第1導電パターン61−1〜第4導電パターン61−4となるように形成された例についてのみ説明したが、導電パターン61の形態、すなわち、パターニングは、
図5〜8に示される例に限定されるものでなく、任意に変更することができる。
【0066】
このように、本実施の形態において、コネクタ1は、電線91に接続された端子51が複数装着されるハウジング11と、端子51がハウジング11から外れることを防止する端子係止部材21とを備える。そして、ハウジング11は、各端子51を内部にそれぞれ収容可能な複数の端子収容凹部16と、端子係止部材21を内部に収容可能な係止部材受入溝17とを含み、端子係止部材21は、係止部材受入溝17内に収容される枠体を形成する本体部22、側板部26及び庇部28と、枠体に一体的に形成された複数の係止凸部25であって、端子係止部材21が端子収容凹部16への端子51の挿抜を不能とする本係止位置にあるときに、それぞれが各端子51と接触して端子51を係止する係止凸部25と、枠体及び係止凸部25の面の少なくとも一部に形成されたMID形成導電パターンである導電パターン61とを含み、導電パターン61は、選択された複数の係止凸部25の面を相互に導通させ、選択された複数の係止凸部25に係止された端子51同士を相互に導通させる。
【0067】
これにより、端子51同士を導通させる所望の導電パターン61が形成された各種の端子係止部材21を、端子係止部材21の成形用金型を変更する必要がなく、低コストで、かつ、容易に用意することができ、端子係止部材21を所望の導電パターン61が形成されたものに変更するだけで、所望の端子51同士を導通させることができるコネクタ1を得ることができる。したがって、端子51同士又は端子51に接続された電線91同士を導通させるパターンとして多種多様なものを低コストで容易に用意することができ、多種多様なパターンのうちから、所望のものを適宜選択することができる。
【0068】
また、端子51は、係止開口55と係止開口55内に配設された弾性片56とを含み、端子係止部材21が本係止位置にあるとき、係止凸部25は係止開口55内に進入し、係止凸部25の係止凸部下面25cに形成された導電パターン61が弾性片56と接触して導通する。このように、係止凸部下面25cに形成された導電パターン61が弾性片56と接触するので、導電パターン61と弾性片56との接触が確実に維持され、導電パターン61と端子51との導通が確実に維持される。
【0069】
さらに、枠体は斜め後方下向きの傾斜面である本体傾斜面22c及び庇傾斜面28cを含み、本体傾斜面22c及び庇傾斜面28cにハウジング11の幅方向に延在する帯状の導電パターン61が形成され、係止凸部25は斜め後方下向きの傾斜面である係止凸部傾斜面25rを含み、係止凸部傾斜面25rには、係止凸部下面25cに形成された導電パターン61と連続して前後方向に延在する帯状の導電パターン61が形成され、この導電パターン61の後端はハウジング11の幅方向に延在する帯状の導電パターン61に接続されている。これにより、ハウジング11の幅方向に並んだ複数の係止凸部25の係止凸部下面25cに形成された導電パターン61を接続する概略櫛歯状の導電パターン61を得ることができる。また、レーザービームを照射して形成される導電パターン61は、下向きの係止凸部下面25c、又は、斜め後方下向きの係止凸部傾斜面25r、本体傾斜面22c及び庇傾斜面28cに形成されるので、図示されないレーザービーム照射装置に対する端子係止部材21の姿勢を、その斜め後方からレーザービームが照射されるように制御するだけで、容易に所望の導電パターン61を形成することができる。
【0070】
さらに、枠体は、本体部22と、本体部22の上端から後方に突出する庇部28と、本体部22の両端に一体的に接続された側板部26とを含み、複数の係止凸部25は、本体部22及び庇部28の直下においてハウジング11の幅方向に並んで配置され、側板部26は斜め後方内向きの側板傾斜面26cを含み、側板傾斜面26cには上下方向に延在する帯状の導電パターン61が形成され、この導電パターン61の上下両端は、本体傾斜面22cに形成されたハウジング11の幅方向に延在する帯状の導電パターン61、及び、庇傾斜面28cに形成されたハウジング11の幅方向に延在する帯状の導電パターン61に接続されている。これにより、保持用上側凸部18Aの係止凸部下面25cに形成された導電パターン61と保持用下側凸部18Bの係止凸部下面25cに形成された導電パターン61とを接続することができ、上側の端子収容凹部16に収容された端子51と下側の端子収容凹部16に収容された端子51とを導通させることができる。また、上下方向に延在する帯状の導電パターン61は、斜め後方内向きの側板傾斜面26cに形成されるので、上述のように、図示されないレーザービーム照射装置に対する端子係止部材21の姿勢を、その斜め後方からレーザービームが照射されるように制御するだけで、容易に上下方向に延在する帯状の導電パターン61も形成することができる。
【0071】
さらに、MID形成導電パターンは、枠体及び係止凸部25の面にレーザービームを照射して端子係止部材21の材料に含まれる非導電性金属化合物から金属核を出現させ、めっき処理を行って形成された金属核を核とする導電性金属のめっき膜から成る。これにより、導電パターン61を銅等の導電性金属のめっき膜によって形成することができ、導電性樹脂と比較すると極めて導電抵抗の低い導電パターン61を得ることができる。
【0072】
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。