【解決手段】エピトープ4連結ペプチドと免疫チェックポイント分子調節剤を併用投与することを特徴とする抗腫瘍剤を提供する。また、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチド及びヒトHLA−A24を共発現した細胞の提供により、ヒトにおける抗腫瘍効果を評価することができる。
SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド及びヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチドを導入した細胞。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞を用いたSART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドの抗腫瘍効果を評価するための方法であって、以下の(I)及び(II)の工程:
(I)SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に投与する工程、及び
(II)請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に移植する工程、
を含む、上記の方法。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞を用いたエピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を評価するための方法であって、以下の(I)及び(II)の工程:
(I)エピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に投与する工程、及び
(II)請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に移植する工程、
を含み、該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、上記方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、CTLエピトープ4連結ペプチドと免疫チェックポイント分子調節剤とを併用投与することにより、顕著に優れた抗腫瘍効果を示し、副作用の少ない新規な癌治療方法を提供することを課題とする。また、ヒトにおける抗腫瘍剤の効果を評価するために好適に用いることができる、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチド及びヒトHLA−A24を共発現した細胞を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は、CTLエピトープ4連結ペプチドと、免疫チェックポイント分子調節剤である抗PD−1抗体又は抗PD−L1抗体とを併用投与して抗腫瘍効果を検討したところ、単独で薬剤を使用するよりも、重篤な副作用を発症させることなく、抗腫瘍効果が顕著に増強することを見出した。さらに、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチド及びヒトHLA−A24を共発現した細胞を樹立し、当該細胞に対するヒト腫瘍抗原エピトープペプチドの抗腫瘍効果を評価できる方法を確立した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
〔1〕免疫チェックポイント分子調節剤と併用するための、リンカーを介して連結された4個のCTLエピトープペプチドを含むエピトープ4連結ペプチドを有効成分として含有することを特徴とする抗腫瘍剤であって、
該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有してもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、上記抗腫瘍剤。
〔2〕上記エピトープ4連結ペプチドに含まれるエピトープペプチドが、
PEP5、
PEP6、
PEP9、及び
PEP2、PEP4及びPEP10からなる群より選択される1個のエピトープペプチド、
から構成され、上記エピトープ4連結ペプチドのC末端がPEP2、PEP4又はPEP10である、〔1〕に記載の抗腫瘍剤。
〔3〕エピトープ4連結ペプチドが、以下より選択される配列からなる、〔1〕又は〔2〕に記載の抗腫瘍剤:
・PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP4;
・PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP2;又は、
・PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP10;
なお、式中「(L)」はリンカーを示す。
〔4〕リンカーがアミノ酸リンカーである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
〔5〕アミノ酸リンカーが、アルギニンを2個連結したアルギニンダイマー、又はアルギニンを3個連結したアルギニントリマーである、〔4〕に記載の抗腫瘍剤。
〔6〕親水性アミノ酸からなるペプチド配列が、N末端に連結され、かつアルギニンを3個連結したアルギニントリマー、又はアルギニンを4個連結したアルギニンテトラマーからなる、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
〔7〕エピトープ4連結ペプチドが、配列番号24、配列番号25、又は配列番号26である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
〔8〕免疫チェックポイント分子調節剤が、PD−1経路アンタゴニスト、ICOS経路アゴニスト、CTLA−4経路アンタゴニスト及びCD28経路アゴニストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
〔9〕免疫チェックポイント分子調節剤が、PD−1経路アンタゴニスト及びCTLA−4経路アンタゴニストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
〔10〕免疫チェックポイント分子調節剤がPD−1経路アンタゴニストである、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
〔11〕PD−1経路アンタゴニストが、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体及び抗PD−L2抗体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
〔12〕PD−1経路アンタゴニストが、抗PD−1抗体及び抗PD−L1抗体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
〔13〕抗PD−1抗体がニボルマブ又はペムブロリズマブであり、抗PD−L1抗体がアテゾリズマブ、デュルバルマブ又はアベルマブである、〔11〕又は〔12〕に記載の抗腫瘍剤。
〔14〕CTLA−4経路アンタゴニストが抗CTLA−4抗体である、〔8〕又は〔9〕に記載の抗腫瘍剤。
〔15〕抗CTLA−4抗体がイピリムマブ又はトレメリムマブである、〔14〕に記載の抗腫瘍剤。
〔16〕免疫チェックポイント分子調節剤を投与された癌患者を治療するための、エピトープ4連結ペプチドを有効成分として含有する抗腫瘍剤であって、
該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、上記抗腫瘍剤。
〔17〕エピトープ4連結ペプチドを投与された癌患者を治療するための、免疫チェックポイント分子調節剤からなる抗腫瘍剤であって、
該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有し、該免疫チェックポイント分子調節剤が、PD−1経路アンタゴニスト、ICOS経路アゴニスト、CTLA−4経路アンタゴニスト及びCD28経路アゴニストからなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記抗腫瘍剤。
〔18〕エピトープ4連結ペプチドと、免疫チェックポイント分子調節剤を組み合わせてなる組合せ製剤であって、
該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、該組合せ製剤。
〔19〕エピトープ4連結ペプチドを有効成分とする、免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を増強するための抗腫瘍効果増強剤であって、
該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
である、抗腫瘍効果増強剤。
〔20〕リンカーを介して連結された4個のCTLエピトープペプチドを含むエピトープ4連結ペプチドと、免疫チェックポイント分子調節剤とを有効成分として含有することを特徴とする抗腫瘍剤であって、
該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、上記抗腫瘍剤。
〔21〕エピトープ4連結ペプチドと使用説明書を含むキット製剤であって、当該使用説明書には、がん患者に対して、エピトープ4連結ペプチドと免疫チェックポイント分子調節剤が併用投与されることが記載されていることを特徴とするキット製剤であって、
該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、上記キット製剤。
〔22〕SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド及びヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチドを導入した細胞。
〔23〕以下の(a)〜(e)から選択されるポリヌクレオチド:
(a)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号5で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号29で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号29で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチド;
及び以下の(f)〜(j)から選択されるポリヌクレオチド:
(f)配列番号30で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(g)配列番号30で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(h)配列番号30で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(i)配列番号31で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号31で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチド;
を導入した細胞。
〔24〕以下の(k)〜(o)から選択されるポリヌクレオチド:
(k)配列番号32で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(l)配列番号32で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(m)配列番号32で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(n)配列番号33で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(o)配列番号33で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド;
及び以下の(p)〜(t)から選択されるポリヌクレオチド:
(p)配列番号34で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(q)配列番号34で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(r)配列番号34で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(s)配列番号35で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(t)配列番号35で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド;
を導入した細胞。
〔25〕SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドの抗腫瘍効果を評価するための、〔22〕〜〔24〕のいずれかに記載の細胞。
〔26〕エピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を評価するための細胞であって、
該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、〔22〕〜〔24〕のいずれかに記載の細胞。
〔27〕〔22〕〜〔24〕のいずれかに記載の細胞を用いたSART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドの抗腫瘍効果を評価するための方法であって、以下の(I)及び(II)の工程:
(I)SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に投与する工程、及び
(II)〔22〕〜〔24〕のいずれかに記載の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に移植する工程、
を含む、上記の方法。
〔28〕〔22〕〜〔24〕のいずれかに記載の細胞を用いたエピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を評価するための方法であって、以下の(I)及び(II)の工程:
(I)エピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に投与する工程、及び
(II)〔22〕〜〔24〕のいずれかに記載の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に移植する工程、
を含み、該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、上記方法。
【0011】
〔29〕リンカーを介して連結された4個のCTLエピトープペプチドを含むエピトープ4連結ペプチド、免疫チェックポイント分子調節剤、及び薬学的に許容される担体を含む腫瘍の予防及び/又は治療のための医薬組成物であって、
該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有してもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、上記組成物。
〔30〕リンカーを介して連結された4個のCTLエピトープペプチドを含むエピトープ4連結ペプチドを、予防及び/又は治療に有効な量で患者に投与する工程を含む、免疫チェックポイント分子調節剤と組み合わせて腫瘍を予防及び/又は治療する方法であって、該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有してもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、上記方法。
〔31〕上記エピトープ4連結ペプチドを、上記免疫チェックポイント分子調節剤の投与前、上記免疫チェックポイント分子調節剤の投与と同時、又は上記免疫チェックポイント分子調節剤の投与後に患者に投与する、〔30〕記載の方法。
〔32〕上記免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の増強のための、〔30〕記載の方法。
〔33〕免疫チェックポイント分子調節剤と併用して腫瘍の予防及び/又は治療に使用するための、リンカーを介して連結された4個のCTLエピトープペプチドを含むエピトープ4連結ペプチドであって、該エピトープ4連結ペプチドが、
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有してもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有し、免疫チェックポイント分子調節剤の投与の前、免疫チェックポイント分子調節剤の投与と同時、又は免疫チェックポイント分子調節剤の投与の後に投与される、上記エピトープ4連結ペプチド。
〔34〕エピトープ4連結ペプチドが、配列番号24、配列番号25、又は配列番号26である、〔33〕に記載のエピトープ4連結ペプチド。
〔35〕免疫チェックポイント分子調節剤がPD−1経路アンタゴニストである、〔33〕又は〔34〕のいずれかに記載のエピトープ4連結ペプチド。
〔36〕PD−1経路アンタゴニストが、抗PD−1抗体及び抗PD−L1抗体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔33〕〜〔35〕のいずれかに記載のエピトープ4連結ペプチド。
〔37〕抗PD−1抗体がニボルマブ又はペムブロリズマブであり、抗PD−L1抗体がアテゾリズマブ、デュルバルマブ又はアベルマブである、〔33〕〜〔36〕のいずれかに記載のエピトープ4連結ペプチド。
〔38〕上記免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を増強するために使用される、上記エピトープ4連結ペプチド。
〔39〕患者における腫瘍を予防及び/又は治療する方法における使用のための、同時に、又は別個に患者に投与されるエピトープ4連結ペプチド及び免疫チェックポイント分子調節剤であって、該エピトープ4連結ペプチドが、リンカーを介して連結された4個のCTLエピトープペプチドを含み、かつ
配列番号5で表されるエピトープペプチド(PEP5)と、
配列番号1で表されるエピトープペプチド(PEP1)、配列番号2で表されるエピトープペプチド(PEP2)、配列番号4で表されるエピトープペプチド(PEP4)、配列番号6で表されるエピトープペプチド(PEP6)、配列番号7で表されるエピトープペプチド(PEP7)、配列番号8で表されるエピトープペプチド(PEP8)、配列番号9で表されるエピトープペプチド(PEP9)、配列番号10で表されるエピトープペプチド(PEP10)、配列番号13で表されるエピトープペプチド(PEP13)、配列番号15で表されるエピトープペプチド(PEP15)、配列番号17で表されるエピトープペプチド(PEP17)及び配列番号18で表されるエピトープペプチド(PEP18)からなる群より選択される3個のエピトープペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有してもよい、エピトープ4連結ペプチドであって、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である;
を有する、上記エピトープ4連結ペプチド及び免疫チェックポイント分子調節剤。
【0012】
本発明は更に、以下の態様にも関する。
・免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を増強するための、上記で表されるエピトープ4連結ペプチドの使用。
・免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果増強剤を製造するための、上記で表されるエピトープ4連結ペプチドの使用。
・腫瘍を予防及び/又は治療する際に同時に、逐次的に、又は間隔をあけて使用するための組み合わせ製剤としての、上記で表されるエピトープ4連結ペプチドと、免疫チェックポイント分子調節剤とを含む製品。
【0013】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2018-124894号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抗腫瘍剤によれば、副作用の発症を抑えつつ、高い抗腫瘍効果(特に、腫瘍縮小効果、腫瘍増殖遅延効果(延命効果))を奏する癌治療を行うことが可能である。ひいては、癌患者の長期間の生存をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、エピトープ4連結ペプチドと、免疫チェックポイント分子調節剤(例えば、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体)を併用投与することを特徴とする抗腫瘍剤、抗腫瘍効果増強剤、キット製剤及びこれらの剤の使用、腫瘍治療方法、並びに、抗腫瘍効果増強方法に関する。
【0017】
本発明においてCTLエピトープ4連結ペプチド(本明細書中においてエピトープ4連結ペプチドとも記載する)は、同一及び/又は異なる腫瘍抗原分子由来のCTLエピトープペプチドから選ばれる4つのペプチドを、リンカーを介して直鎖状に連結して1分子としたペプチドを意味する。
【0018】
腫瘍抗原分子由来のCTLエピトープペプチドとしては、以下のようなものが知られている。
KLVERLGAA(配列番号1、本明細書において「PEP1」と記載する、例えば国際公開第200l/0l1044号);
ASLDSDPWV(配列番号2、本明細書において「PEP2」と記載する、例えば国際公開第2002/010369号);
ALVEFEDVL(配列番号3、本明細書において「PEP3」と記載する、例えば国際公開第2002/010369号);
LLQAEAPRL(配列番号4、本明細書において「PEP4」と記載する、例えば国際公開第2000/12701号);
DYSARWNEI(配列番号5、本明細書において「PEP5」と記載する、例えば特開平11−318455号);
VYDYNCHVDL(配列番号6、本明細書において「PEP6」と記載する、例えば国際公開第2000/12701号);
LYAWEPSFL(配列番号7、本明細書において「PEP7」と記載する、例えば特開2003−000270号);
DYLRSVLEDF(配列番号8、本明細書において「PEP8」と記載する、例えば国際公開第2001/011044号);
QIRPIFSNR(配列番号9、本明細書において「PEP9」と記載する、例えば国際公開第2008/007711号);
ILEQSGEWWK(配列番号10、本明細書において「PEP10」と記載する、例えば国際公開第2009/022652号);
VIQNLERGYR(配列番号11、本明細書において「PEP11」と記載する、例えば国際公開第2009/022652号);
KLKHYGPGWV(配列番号12、本明細書において「PEP12」と記載する、例えば国際公開第1999/067288号);
RLQEWCSVI(配列番号13、本明細書において「PEP13」と記載する、例えば国際公開第2002/010369号);
ILGELREKV(配列番号14、本明細書において「PEP14」と記載する、例えば国際公開第2002/010369号;
DYVREHKDNI(配列番号15、本明細書において「PEP15」と記載する、例えば国際公開第2005/071075号);
HYTNASDGL(配列番号16、本明細書において「PEP16」と記載する、例えば国際公開第2001/011044号);
NYSVRYRPGL(配列番号17、本明細書において「PEP17」と記載する、例えば特開2003−000270号);
RYLTQETNKV(配列番号18、本明細書において「PEP18」と記載する、例えば国際公開第2005/116056号)
【0019】
下記の表1に、CTLエピトープペプチドPEP1〜PEP18の由来となるタンパク質の情報を記載する。これらのタンパク質は、腫瘍組織において高発現することが報告されている。
【0021】
本発明のCTLエピトープ4連結ペプチドは、上記CTLエピトープペプチドのうち特定の13種類(配列番号1で表されるペプチド「PEP1」、配列番号2で表されるペプチド「PEP2」、配列番号4で表されるペプチド「PEP4」、配列番号5で表されるペプチド「PEP5」、配列番号6で表されるペプチド「PEP6」、配列番号7で表されるペプチド「PEP7」、配列番号8で表されるペプチド「PEP8」、配列番号9で表されるペプチドを「PEP9」、配列番号10で表されるペプチド「PEP10」、配列番号13で表されるペプチド「PEP13」、配列番号15で表されるペプチド「PEP15」、配列番号17で表されるペプチド「PEP17」及び配列番号18で表されるペプチド「PEP18」)から選択される4種類のCTLエピトープペプチドがリンカーを介して直鎖状に連結したペプチドであり、各CTLエピトープペプチドに特異的なCTLを3つ以上誘導、及び/又は、活性化することができる。なお、CTLエピトープペプチドに特異的な誘導を直接的に評価しなくても、イムノプロテアソームによる切断実験(国際公開第2015/060235号等)により、当該エピトープペプチドに特異的なCTL誘導の有無について判断することができる。
【0022】
本発明において、エピトープ4連結ペプチドは、
配列番号5で表されるペプチド「PEP5」と、
配列番号1で表されるペプチド「PEP1」、配列番号2で表されるペプチド「PEP2」、配列番号4で表されるペプチド「PEP4」、配列番号6で表されるペプチド「PEP6」、配列番号7で表されるペプチド「PEP7」、配列番号8で表されるペプチド「PEP8」、配列番号9で表されるペプチド「PEP9」、配列番号10で表されるペプチド「PEP10」、配列番号13で表されるペプチド「PEP13」、配列番号15で表されるペプチド「PEP15」、配列番号17で表されるペプチド「PEP17」及び配列番号18で表されるペプチド「PEP18」からなる群より選択される3つのペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなる、
ペプチドである。
【0023】
本発明において、PEP1、PEP2、PEP4、PEP5、PEP6、PEP7、PEP8、PEP9、PEP10、PEP13、PEP15、PEP17、及びPEP18の各アミノ酸配列において、一又は複数のアミノ酸が置換、挿入、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有し、かつ、元のペプチドと同等又はそれ以上のCTL誘導能及び/又は免疫グロブリン産生誘導能を有するペプチドも、「CTLエピトープペプチド」として使用することができる。ここで「複数」とは2〜3個、好ましくは2個である。このようなペプチドとしては、例えば、元のアミノ酸と類似した特性を有するアミノ酸で置換された(すなわち、保存的アミノ酸置換により得られた)ペプチドが挙げられる。
【0024】
「元のペプチドと同等又はそれ以上のCTL誘導能及び/又は免疫グロブリン産生誘導能を有するペプチド」であるか否かは、例えば、国際公開第2015/060235号パンフレットに記載の方法に準じて評価することができる。前記方法を用いて評価する場合、CTL誘導能は、一又は複数のアミノ酸が置換、挿入、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有する試験ペプチドを予め投与したマウス由来の細胞、同系マウス由来の抗原提示細胞及び試験ペプチドを添加したウェルにおけるIFN−γ産生細胞の数を指標とし、得られたΔ値の判定結果(陽性(10≦Δ<100)、中陽性(100≦Δ<200)、強陽性(200≦Δ))が同等又はそれ以上であれば、元のペプチドと同等又はそれ以上のCTL誘導能を有するペプチドであると判断できる。この場合、元のペプチドが「陽性」であり、一又は複数のアミノ酸が置換、挿入、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するペプチドも「陽性」であれば同等と判断する。また、免疫グロブリン産生誘導能は、試験ペプチドを投与したマウス血清中のCTLエピトープ特異的IgG抗体価を指標とし、得られたIgG抗体価の増加(fold)の測定結果(2<fold<10、10≦fold<100、100≦fold)が同等又はそれ以上であれば、同等又はそれ以上の免疫グロブリン産生誘導能を有するペプチドであると判断できる。この場合、元のペプチドの測定結果が「2<fold<10」の範囲内であり、一又は複数のアミノ酸が置換、挿入、欠失、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するペプチドの測定結果も「2<fold<10」の範囲内であれば同等と判断する。
【0025】
本発明において、リンカーは、CTLエピトープ4連結ペプチドが生体に投与された際に切断され、連結されたCTLエピトープペプチドが個々に分離されることを可能とするものであればよく、例えば、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、糖鎖リンカー、ポリエチレングリコールリンカー、アミノ酸リンカーなどが挙げられる。アミノ酸リンカーとして用いられるアミノ酸配列としては、アルギニンダイマー(RR)、アルギニントリマー(RRR)、アルギニンテトラマー(RRRR)、リジンダイマー(KK)、リジントリマー(KKK)、リジンテトラマー(KKKK)、グリシンダイマー(GG)、グリシントリマー(GGG)、グリシンテトラマー(GGGG)、グリシンペンタマー(GGGGG)、グリシンヘキサマー(GGGGGG)、アラニン−アラニン−チロシン(AAY)、イソロイシン−ロイシン−アラニン(ILA)、アルギニン−バリン−リジン−アルギニン(RVKR)等が例示され、好ましくはアルギニンダイマー(RR)又はアルギニントリマー(RRR)であり、より好ましくはアルギニンダイマー(RR)である。エピトープ連結ペプチドにおいて使用されるリンカーは当分野において知られており、当業者であれば適宜選択して使用することができる。
【0026】
本発明のエピトープ4連結ペプチドにおいて、選択されるCTLエピトープペプチド、及びその連結順序は、所定の組合せ及び所定の連結順序で合成したエピトープ4連結ペプチドをヒトHLA−A発現トランスジェニックマウスに投与し、in vivoにおいて各CTLエピトープペプチド特異的なCTL誘導の有無を評価し決定することができる。 in vivoにおいて各CTLエピトープペプチド特異的なCTL誘導の有無を評価する方法は、例えば、国際公開第2015/060235号パンフレットに記載の方法に準じて評価することができる。選択されるCTLエピトープペプチド、及びその連結順序は、当該方法を用いて、少なくとも3種以上、好ましくは4種のCTLエピトープペプチドについて、各CTLエピトープペプチドに特異的なCTLの誘導が見られたCTLエピトープペプチド、及びその連結順序に決定することができる。
【0027】
本発明のエピトープ4連結ペプチドは、好ましくは、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか1つの特徴を有する:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である。
【0028】
従って、好ましくは、本発明のエピトープ4連結ペプチドは、
配列番号5で表されるペプチド「PEP5」と、
配列番号1で表されるペプチド「PEP1」、配列番号2で表されるペプチド「PEP2」、配列番号4で表されるペプチド「PEP4」、配列番号6で表されるペプチド「PEP6」、配列番号7で表されるペプチド「PEP7」、配列番号8で表されるペプチド「PEP8」、配列番号9で表されるペプチド「PEP9」、配列番号10で表されるペプチド「PEP10」、配列番号13で表されるペプチド「PEP13」、配列番号15で表されるペプチド「PEP15」、配列番号17で表されるペプチド「PEP17」及び配列番号18で表されるペプチド「PEP18」からなる群より選択される3つのペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、以下の(1)〜(3)より選択されるいずれか一つの特徴を有するペプチド:
(1)C末端がPEP2である(ただし、N末端にPEP7及びPEP8をN末端側からリンカーを介して隣り合ってこの順で含むものを除く);
(2)C末端がPEP4である;
(3)C末端がPEP10である。
【0029】
より好ましくは、本発明のエピトープ4連結ペプチドは、配列番号5で表されるペプチド「PEP5」、配列番号6で表されるペプチド「PEP6」及び配列番号9で表されるペプチド「PEP9」と、
配列番号2で表されるペプチド「PEP2」、配列番号4で表されるペプチド「PEP4」及び配列番号10で表されるペプチド「PEP10」からなる群より選択される1つのペプチドが、
リンカーを介してそれぞれ連結されてなり、C末端がPEP2、PEP4、又はPEP10である。
【0030】
より好ましくは、本発明のエピトープ4連結ペプチドは、以下より選択される配列からなるペプチドである:
・PEP5−(L)−PEP6−(L)−PEP9−(L)−PEP4;
・PEP9−(L)−PEP5−(L)−PEP6−(L)−PEP4;
・PEP6−(L)−PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP4;
・PEP6−(L)−PEP9−(L)−PEP5−(L)−PEP4;
・PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP5−(L)−PEP4;
・PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP4;
・PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP2;又は、
・PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP10。
なお、式中「(L)」はリンカーを示す。
【0031】
より好ましくは、本発明のエピトープ4連結ペプチドは、以下より選択される配列からなるペプチドである:
・PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP4;
・PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP2;又は、
・PEP5−(L)−PEP9−(L)−PEP6−(L)−PEP10。
なお、式中「(L)」はリンカーを示す。
【0032】
より好ましくは、本発明のエピトープ4連結ペプチドは、リンカーがアルギニンダイマーである、以下より選択される配列で表されるペプチド:
・PEP5−RR−PEP9−RR−PEP6−RR−PEP4(配列番号24、本明細書においてTPV06と記載する);
・PEP5−RR−PEP9−RR−PEP6−RR−PEP2(配列番号25、本明細書においてTPV07と記載する);又は、
・PEP5−RR−PEP9−RR−PEP6−RR−PEP10(配列番号26、本明細書においてTPV08と記載する)
であり、
より好ましくは、本発明のエピトープ4連結ペプチドは、配列番号24で表されるペプチドTPV06である。
【0033】
本発明の態様の1つにおいて、エピトープ4連結ペプチドは、好ましくは、以下の表2に示す配列番号19〜28より選択される配列で表されるペプチドである。
【0035】
より好ましくは、エピトープ4連結ペプチドは、上記表2に挙げたものから選択される、以下のペプチド:
・TPV01(配列番号19);
・TPV02(配列番号20);
・TPV03(配列番号21);
・TPV04(配列番号22);
・TPV05(配列番号23);又は、
・TPV06(配列番号24);
である。
【0036】
また、本発明において、エピトープ4連結ペプチドは2種以上使用されても良く、例えば、2種、3種、4種又はそれ以上のエピトープ4連結ペプチドを別個に、または混合して使用しても良く、3種のエピトープ4連結ペプチドを混合して使用するのが好ましい。 エピトープ4連結ペプチドを2種以上使用する場合、本発明のエピトープ4連結ペプチドが少なくとも1種含まれていれば、残りの1種以上は本発明のエピトープ4連結ペプチドであっても良いし、例えば国際公開第2015/060235号に記載のもののようなエピトープ4連結ペプチドであっても良い。配列番号24で表されるペプチドと国際公開第2015/060235号に記載のCTLエピトープ4連結ペプチドを1種以上使用するのが好ましく、配列番号24で表されるペプチドと国際公開第2015/060235号に記載のエピトープ4連結ペプチドを2種使用するのがより好ましく、配列番号24で表されるペプチド、配列番号44で表されるペプチド(TPV011:PEP15−RR−PEP18−RR−PEP1−RR−PEP10)及び配列番号45で表されるペプチド(TPV012:RRRR−PEP7−RR−PEP13−RR−PEP8−RR−PEP2)の3種類を混合して使用するのがさらにより好ましい。
【0037】
本発明のCTLエピトープ4連結ペプチドは、さらに親水性アミノ酸からなるペプチド配列を有することができる。当該ペプチド配列は、CTLエピトープ4連結ペプチドのN末端及び/又はC末端に付加することができ、好ましくはN末端に付加する。当該ペプチド配列は、アルギニン、ヒスチジン、リジン、トレオニン、チロシン、セリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸からなる群から選択される1〜15個、好ましくは2〜10個、さらに好ましくは3〜5個の親水性アミノ酸からなるものを選択することができる。例えば当該ペプチド配列として、アルギニントリマー(RRR)やアルギニンテトラマー(RRRR)を利用することができ、このようなペプチド配列が付加されたCTLエピトープ4連結ペプチドとしては、RRR−TPV06、RRRR−TPV06、TPV06−RRR、TPV06−RRRR、RRR−TPV07、RRRR−TPV07、TPV07−RRR、TPV07−RRRR、RRR−TPV08、RRRR−TPV08、TPV08−RRR、TPV08−RRRR、KKK−TPV06、KKKK−TPV06、TPV06−KKK、TPV06−KKKK、KKK−TPV07、KKKK−TPV07、TPV07−KKK、TPV07−KKKK、KKK−TPV08、KKKK−TPV08、TPV08−KKK、TPV08−KKKK、HHH−TPV06、HHHH−TPV06、TPV06−HHH、TPV06−HHHH、HHH−TPV07、HHHH−TPV07、TPV07−HHH、TPV07−HHHH、HHH−TPV08、HHHH−TPV08、TPV08−HHH、TPV08−HHHH、RRKK−TPV06、RKRK−TPV06、RHRH−TPV06、RRHH−TPV06、KKHH−TPV06、KHKH−TPV06等が例示され、好ましくはRRR−TPV06、RRRR−TPV06、RRR−TPV07、RRRR−TPV07、RRR−TPV08、RRRR−TPV08、KKK−TPV06、KKKK−TPV06、KKK−TPV07、KKKK−TPV07、KKK−TPV08、KKKK−TPV08、HHH−TPV06、HHHH−TPV06、HHH−TPV07、HHHH−TPV07、HHH−TPV08、HHHH−TPV08、RRKK−TPV06、RKRK−TPV06、RHRH−TPV06、RRHH−TPV06、KKHH−TPV06、KHKH−TPV06であり、さらに好ましくはRRR−TPV06(TPV09)、RRRR−TPV06(TPV10)、RRR−TPV07、RRRR−TPV07、RRR−TPV08、RRRR−TPV08であり、最も好ましくはRRR−TPV06(TPV09)、RRRR−TPV06(TPV10)である。
【0038】
親水性アミノ酸からなる当該ペプチド配列が付加されたペプチドは、水性溶媒への溶解度が向上することが知られている(Peptides:38,302−311(2012)、特開2006−188507)。本発明のCTLエピトープ4連結ペプチドに当該ペプチド配列を付加することによって、水性溶媒へのCTLエピトープ4連結ペプチドの溶解度を向上することができる。
【0039】
本発明の「親水性アミノ酸からなるペプチド配列を更に有していてもよい、エピトープ4連結ペプチド」は、好ましくはN末端に親水性アミノ酸からなるペプチド配列を有していてもよいCTLエピトープ4連結ペプチドであり、より好ましくはN末端にアルギニン、ヒスチジン及びリジンからなる群から選択される3〜5個の親水性アミノ酸からなるペプチド配列を有していてもよいCTLエピトープ4連結ペプチドであり、より好ましくはN末端にアルギニントリマー(RRR)又はアルギニンテトラマー(RRRR)を有していてもよいCTLエピトープ4連結ペプチドであり、より好ましくは親水性アミノ酸からなるペプチド配列を有さないCTLエピトープ4連結ペプチドである。
【0040】
なお、本発明のCTLエピトープ4連結ペプチドは、例えば、国際公開第2015/060235号パンフレットに記載の方法に準じて合成することができる。
【0041】
本発明における免疫チェックポイント分子調節剤は、免疫チェックポイント分子に作用し癌患者の生体内における抗腫瘍免疫応答を誘導させ、腫瘍の免疫逃避を制御する作用を有するものである。
従って、免疫チェックポイント分子調節剤として、免疫チェックポイント分子を標的にした物質を用いることができる。免疫チェックポイント分子としては、例えば、B7 family(B7−1、B7−2、PD−L1、PD−L2等)、CD28 family(CTLA−4、PD−1等)、TNF superfamily(4−1BBL、OX40L等)、TNF receptor superfamily(4−1BB、OX40等)分子が挙げられ、これらは、刺激性の共刺激分子であるcostimulatory分子と、抑制性の共刺激分子であるcoinhibitory分子に大きく分類されている。
【0042】
本発明で好適に使用可能な免疫チェックポイント分子調節剤としては、costimulatory分子の機能を促進する物質、或いはcoinhibitory分子の機能を抑制する物質が挙げられる。より具体的には、免疫チェックポイント分子調節剤としては、例えば、PD−1経路アンタゴニスト、ICOS経路アゴニスト、CTLA−4経路アンタゴニスト、CD28経路アゴニスト、BTLA経路アンタゴニスト、4−1BB経路アゴニスト等が挙げられる。
【0043】
本発明において、免疫チェックポイント分子調節剤は、好ましくはPD−1経路アンタゴニスト、ICOS経路アゴニスト、CTLA−4経路アンタゴニスト及びCD28経路アゴニストからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはPD−1経路アンタゴニスト、CTLA−4経路アンタゴニスト及びCD28経路アゴニストからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはPD−1経路アンタゴニスト及びCTLA−4経路アンタゴニストからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、副作用抑制の観点から、さらにより好ましくはPD−1経路アンタゴニストである。
【0044】
PD−1経路アンタゴニストは、T細胞上に発現するPD−1や、そのリガンドであるPD−L1又はPD−L2による免疫抑制シグナルを阻害するものであり、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、抗PD−L2抗体、PD−1細胞外ドメイン、PD−L1細胞外ドメイン、PD−L2細胞外ドメイン、PD−1−Ig(PD−1細胞外ドメインとイムノグロブリン(Ig)のFC領域との融合タンパク質)、PD−L1−Ig、PD−L2−Ig、PD−1 siRNA、PD−L1 siRNA、PD−L2 siRNA等が挙げられる。PD−1経路アンタゴニストとして、好ましくは抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体、又は抗PD−L2抗体であり、より好ましくは抗PD−1抗体、又は抗PD−L1抗体である。なかでも、特に好ましくは抗PD−1抗体である。
【0045】
また、CTLA−4経路アンタゴニストは、T細胞上に発現するCTLA−4や、そのリガンドであるB7−1(CD80)やB7−2(CD86)による免疫抑制シグナルを阻害するものであり、抗CTLA−4抗体、CTLA−4細胞外ドメイン、CTLA−4−Ig、抗B7−1(CD80)抗体、又は抗B7−2(CD86)抗体、CTLA−4 siRNA等が挙げられる。CTLA−4経路アンタゴニストとして、好ましくは抗CTLA−4抗体、CTLA−4細胞外ドメイン、CTLA−4−Ig、抗B7−1(CD80)抗体、又は抗B7−2(CD86)抗体であり、より好ましくは抗CTLA−4抗体、又はCTLA−4−Igである。なかでも、特に好ましくは抗CTLA−4抗体である。
【0046】
これらの抗体は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY等)、Fabフラグメント、F(ab’)
2フラグメント、一本鎖抗体フラグメント(scFv)、シングルドメイン抗体、Diabody等(Nat.Rev.Immunol.,6:343−357,2006)が挙げられ、これらはヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ラマ抗体、ニワトリ抗体等のモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体が挙げられる。
好ましくは、ヒト化IgGモノクローナル抗体又はヒトIgGモノクローナル抗体である。
【0047】
本発明における抗PD−1抗体としては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ(Cemiplimab)又はスパルタリズマブ(Spartalizumab)等が挙げられ、ニボルマブ又はペムブロリズマブが好ましい。
本発明における抗PD−L1抗体としては、アテゾリズマブ、デュルバルマブ又はアベルマブ等が挙げられ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ又はアベルマブが好ましい。
本発明における抗CTLA−4抗体としては、イピリムマブ又はトレメリムマブ等が挙げられ、イピリムマブが好ましい。
本発明におけるCTLA−4−Igとしては、アバタセプト等が挙げられ、好ましくはアバタセプトである。
【0048】
これらの抗体は、通常公知の抗体作製方法により製造できる。
また、抗PD−1抗体は、ニボルマブ又はペムブロリズマブとして、抗PD−L1抗体は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ又はアベルマブとして、抗CTLA−4抗体は、イピリムマブ又はトレメリムマブとして、CTLA−4−Igは、アバタセプトとして既に販売され、また販売予定であり、これを用いることもできる。
【0049】
本発明において、2種以上の免疫チェックポイント分子調節剤を用いる場合、例えば、抗PD−1抗体や抗CTLA−4抗体を併用して用いることもできるし、PD−1及びCTLA−4の両方に結合可能な二重特異性抗体を用いることもできる。二重特異性抗体としては、例えば、XmAb20717(PD−1×CTLA−4)が挙げられる。
【0050】
本発明において使用されるエピトープ4連結ペプチドのヒトにおける推奨用量は、単独投与の場合、エピトープ4連結ペプチド1種あたり3〜9mg/body/dayの範囲である。本発明において、エピトープ4連結ペプチドの投与日における1日あたりの投与量としては、エピトープ4連結ペプチドによる免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の増強効果の観点から、エピトープ4連結ペプチドを単独で投与する場合における推奨用量の50〜200%が好ましく、80〜120%がより好ましく、100%が特に好ましい。
【0051】
従って、ヒトにおける推奨用量が3mg/body/dayである場合、投与量はエピトープ4連結ペプチド1種あたり1.5〜6mg/body/dayが好ましく、2.4〜3.6mg/body/dayがより好ましく、3mg/body/dayが特に好ましい。また、ヒトにおける推奨用量が9mg/body/dayである場合、投与量はエピトープ4連結ペプチド1種あたり4.5〜18mg/body/dayが好ましく、7.2〜10.8mg/body/dayがより好ましく、9mg/body/dayが特に好ましい。
【0052】
本発明において、免疫チェックポイント分子調節剤の投与日における1日あたりの投与量としては、エピトープ4連結ペプチドによる免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の増強作用の観点から、免疫チェックポイント分子調節剤を単独で投与する場合における推奨用量の50〜100%が好ましく、100%がより好ましい。
【0053】
具体的には、ニボルマブを単独で投与する場合の推奨用量は、日本において承認を受けた投与量である1回2mg/kg(体重)又は1回3mg/kg(体重)であることから、本発明におけるニボルマブの投与日における1日あたりの投与量は、1回1〜3mg/kg(体重)が好ましく、より好ましくは1回2mg/kg(体重)又は1回3mg/kg(体重)である。
【0054】
ペムブロリズマブを単独で投与する場合の推奨用量は、日本において承認を受けた投与量である1回2mg/kg(体重)又は1回200mgであることから、本発明におけるペムブロリズマブの投与日における1日あたりの投与量は、1回1〜2mg/kg(体重)又は1回100〜200mgが好ましく、より好ましくは1回2mg/kg(体重)又は1回200mgである。
【0055】
アテゾリズマブを単独で投与する場合の推奨用量は、日本において承認を受けた投与量である1回1200mgであることから、本発明におけるアテゾリズマブの投与日における1日あたりの投与量は、1回600〜1200mgが好ましく、より好ましくは1回1200mgである。
【0056】
アベルマブ又はデュルバルマブを単独で投与する場合の推奨用量は、米国において承認を受けた投与量である1回10mg/kg(体重)であることから、本発明におけるアベルマブ又はデュルバルマブの投与日における1日あたりの投与量は、1回5〜10mg/kg(体重)が好ましく、より好ましくは1回10mg/kg(体重)である。
【0057】
イピリムマブを単独で投与する場合の推奨用量は、日本において承認を受けた投与量である1回3mg/kg(体重)であることから、本発明におけるイピリムマブの投与日における1日あたりの投与量は、1回1.5〜3mg/kg(体重)が好ましく、より好ましくは1回3mg/kg(体重)である。
【0058】
なお、本発明において「推奨用量」とは、臨床試験などにより決定された、重篤な副作用を発症せずに安全に使用できる範囲で、最大の治療効果をもたらす投与量でありうる。具体的には、日本独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)、米国食品医薬品局(FDA;Food and Drug Administration)、欧州医薬品庁(EMA;European Medicines Agency)等の公的機関や団体により承認・推奨・勧告され、添付文書・インタビューフォーム・治療ガイドライン等に記載された投与量が挙げられ、PMDA、FDA又はEMAのいずれかの公的機関により承認された投与量が好ましい。
【0059】
本発明の抗腫瘍剤の投与スケジュールは、癌種や病期等に応じて適宜選択しうる。
エピトープ4連結ペプチドの場合は、1週間に1回投与する工程を3回(1日目、8日目、15日目に1日1回)繰り返す計21日間を1サイクルとした投与スケジュールが好ましい。また、3サイクル目以降は、1日目に投与し20日間の休薬を行う計21日間を1サイクルとした投与スケジュール(3週間に1回投与する方法)が好ましい。
【0060】
ニボルマブの場合は、2週間又は3週間間隔で投与する投与スケジュールが好ましい。
ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ又はイピリムマブの場合は、3週間間隔で投与する投与スケジュールが好ましい。
アベルマブ又はデュルバルマブの場合は、2週間間隔で投与する投与スケジュールが好ましい。
【0061】
本発明の抗腫瘍剤の1日の投与回数は、癌種や病期等に応じて適宜選択しうる。
エピトープ4連結ペプチド、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ又はイピリムマブの場合は、1日1回が好ましい。
本発明のエピトープ4連結ペプチド及び免疫チェックポイント分子調節剤の投与順序は、癌種や病期等に応じて適宜選択しうるが、どちらを先に投与しても、同時に投与しても構わない。ここで両剤を同時に投与しない場合、両剤の投与間隔は、抗腫瘍効果の増強効果を奏するかぎり適宜選択しうるが、1〜21日が好ましく、1〜14日がより好ましく、1〜7日が特に好ましい。本発明のエピトープ4連結ペプチド及び免疫チェックポイント分子調節剤の投与順序は、エピトープ4連結ペプチドを先に投与するのが好ましい。
【0062】
本発明において対象となる腫瘍は、抗腫瘍効果の増強効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、好ましくはエピトープ4連結ペプチドが抗腫瘍効果を発揮する腫瘍であり、より好ましくはLck、WHSC2、SART2、SART3、MRP3、UBE2V、EGFR、又はPTHrP陽性の悪性腫瘍であり、より好ましくはSART2陽性の悪性腫瘍である。
【0063】
本発明の対象となる癌としては、具体的には、脳腫瘍、頭頚部癌、消化器癌(食道癌、胃癌、十二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(胆嚢・胆管癌など)、膵臓癌、小腸癌、大腸癌(結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌など)、消化管間質腫瘍など)、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、乳癌、卵巣癌、子宮癌(子宮頚癌、子宮体癌など)、腎癌、尿路上皮癌(膀胱癌、腎盂癌、尿管癌)、前立腺癌、皮膚癌、原発不明癌等が挙げられる。なお、ここで癌には、原発巣のみならず、他の臓器(肝臓など)に転移した癌をも含む。このうち、抗腫瘍効果の観点から、頭頸部癌、消化器癌、肺癌、腎癌、尿路上皮癌、皮膚癌が好ましく、消化器癌、肺癌、尿路上皮癌、皮膚癌がより好ましく、肺癌、尿路上皮癌が特に好ましい。また、本発明の抗腫瘍剤は、腫瘍を外科的に摘出した後に再発防止のために行われる術後補助化学療法に用いるものであっても、腫瘍を外科的に摘出するために事前行われる術前補助化学療法であってもよい。
【0064】
本発明において、エピトープ4連結ペプチド、及び免疫チェックポイント分子調節剤は、各有効成分の投与形態や投与スケジュールに基づき、各有効成分を複数の剤形に分けて製剤化してもよく、一つの剤形にまとめて製剤化(すなわち、配合剤として製剤化)してもよい。また、各製剤を併用に適した1個のパッケージにまとめて製造販売してもよく、また各製剤を別個のパッケージに分けて製造販売してもよい。
【0065】
本発明の抗腫瘍剤の投与形態としては特に制限は無く、治療目的に応じて適宜選択でき、具体的には経口剤(錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤など)、注射剤、坐剤、貼付剤、軟膏剤等が例示できる。
エピトープ4連結ペプチド、抗PD−1抗体、抗PD−L1抗体及び抗CTLA−4抗体の投与形態としては、上記の投与形態が挙げられ、好ましくは注射剤である。
【0066】
本発明における抗腫瘍剤は、エピトープ4連結ペプチドについても免疫チェックポイント分子調節剤についてもその投与形態に応じて、薬学的に許容される担体を用いて、通常公知の方法により調製することができる。斯かる担体としては、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を例示できる。
【0067】
本発明はまた、癌患者に対する免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を増強するためのエピトープ4連結ペプチドを有効成分として含む抗腫瘍効果増強剤に関する。当該抗腫瘍効果増強剤は、上記抗腫瘍剤の製剤形態を有する。
【0068】
本発明はまた、免疫チェックポイント分子調節剤を投与された癌患者を治療するためのエピトープ4連結ペプチドを含む抗腫瘍剤に関する。当該抗腫瘍剤は、上記の製剤形態を有する。
本発明はまた、エピトープ4連結ペプチドを投与された癌患者を治療するための免疫チェックポイント分子調節剤を含む抗腫瘍剤に関する。当該抗腫瘍剤は、上記の製剤形態を有する。
【0069】
「治療」には、腫瘍を外科的に摘出した後に再発防止のために行われる術後補助化学療法、腫瘍を外科的に摘出するために事前に行われる術前補助化学療法が包含される。
【0070】
本発明はまた、癌患者に対する免疫チェックポイント分子調節剤と併用することを特徴とする、エピトープ4連結ペプチドを含む抗腫瘍剤に関する。当該抗腫瘍剤は、上記の製剤形態を有する。
本発明はまた、癌患者に対するエピトープ4連結ペプチドと併用することを特徴とする、免疫チェックポイント分子調節剤を含む抗腫瘍剤に関する。当該抗腫瘍剤は、上記の製剤形態を有する。
【0071】
本発明はまた、エピトープ4連結ペプチドを含む抗腫瘍剤と、癌患者に対してエピトープ4連結ペプチドと免疫チェックポイント分子調節剤が併用投与されることを記載した使用説明書を含むキット製剤に関する。
ここで「使用説明書」とは、上記投与量が記載されたものであればよく、法的拘束力の有無を問わないが、上記投与量が推奨されているものが好ましい。具体的には、添付文書、パンフレット等が例示される。また、使用説明書を含むキット製剤とは、キット製剤のパッケージに使用説明書が印刷・添付されているものであっても、キット製剤のパッケージに抗腫瘍剤とともに使用説明書が同封されているものであってもよい。
【0072】
一方、本発明者等のグループは、非ヒト動物において、ヒト又は非ヒト由来のβ2ミクログロブリン、HLAクラスIのα1及びα2領域、並びにヒト又は非ヒト由来のMHCクラスIのα3領域が連結した人工キメラ遺伝子を発現させる技術を確立し、HLAクラスIを発現する非ヒト動物の作製に成功している(国際公開第2015/056774号)。
【0073】
上記の非ヒト動物を用いることで、非ヒト動物において、ヒトにおける免疫応答を再現することが可能となる。すなわち、上記非ヒト動物における抗原提示細胞は、HLAクラスIのα1及びα2領域を発現するため、これと結合しうるヒト腫瘍抗原エピトープペプチドを提示することができる。
【0074】
本発明者は更に、ヒトHLA−A24とSART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドとを共発現させることで、エピトープ4連結ペプチドの投与によるCTL誘導の効果を評価できることを見出した。例えば、マウス腫瘍由来の培養細胞に対してヒトHLA−A24とSART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドとを共発現させ、上記の非ヒト動物に移植させることで、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドを提示する腫瘍を増殖させることができる。
【0075】
すなわち、本発明は、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド、及びヒトHLA−A24の特にα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチドを導入した細胞を提供するものである。ここで、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドは、PEP5を含むことが好ましく、従って、当該細胞へはPEP5をコードするポリヌクレオチドを導入することが好ましい。
【0076】
本発明者は、上記の非ヒト動物において、HLA−A24とPEP5とを共発現する腫瘍の生着に成功し、この系により、本発明の抗腫瘍剤等の評価が可能であることを実証した。
従って、本発明は、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド及びヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチドを導入した細胞(以下、「本発明の細胞」とも称する)に関する。
【0077】
SART2は、先に記載した通り、腫瘍組織において高発現することが報告されているタンパク質の1種である。樹状細胞等の抗原提示細胞において、HLA−A24型のHLA分子と結合して提示されうるSART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドとして、上記のPEP5が挙げられる。ペプチドPEP5のアミノ酸配列は配列番号5に、ペプチドPEP5をコードするポリヌクレオチド配列は配列番号29に示す。
【0078】
本明細書において、「SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、好ましくは、以下の(a)〜(e)から選択されるポリヌクレオチド:
(a)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号5で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号29で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号29で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチド;
であり、より好ましくは、以下の(a)〜(e)から選択されるポリヌクレオチド:
(a)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(ただし、アミノ酸の付加はN末端側への付加に限る);
(c)配列番号5で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号29で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(e)配列番号29で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチド;
であり、より好ましくは、前記(a)又は(d)から選択されるポリヌクレオチドである。
【0079】
本明細書において、「配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド」は、シグナル配列が付加した配列であっても良い。好ましくは、「配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド」は、配列番号5で示されるアミノ酸配列のN末端側にシグナル配列である10〜30個のアミノ酸が付加したポリペプチドであり、より好ましくはシグナル配列である15〜25個のアミノ酸が付加したポリペプチドであり、より好ましくは配列番号32で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0080】
同様に、本明細書において、「配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド」は、シグナル配列が付加した配列であっても良い。好ましくは、配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列のN末端側にシグナル配列である10〜30個のアミノ酸が付加したポリペプチドであり、より好ましくはシグナル配列である15〜25個のアミノ酸が付加したポリペプチドであり、より好ましくは配列番号32で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0081】
同様に、本明細書において、「配列番号5で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド」は、シグナル配列が付加した配列であっても良い。好ましくは、配列番号5で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列のN末端側にシグナル配列である10〜30個のアミノ酸が付加したポリペプチドであり、より好ましくはシグナル配列である15〜25個のアミノ酸が付加したポリペプチドであり、より好ましくは配列番号32で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0082】
同様に、本明細書において、「配列番号29で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド」は、シグナル配列をコードする塩基配列が付加した配列であっても良い。好ましくは、配列番号29で示される塩基配列の5’末端側にシグナル配列をコードする30〜90塩基が付加したポリヌクレオチドであり、より好ましくはシグナル配列をコードする45〜75塩基が付加したポリヌクレオチドであり、より好ましくは配列番号33で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0083】
同様に、本明細書において、「配列番号29で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチド」は、シグナル配列をコードする塩基配列が付加した配列であっても良い。好ましくは、配列番号29で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列の5’末端側にシグナル配列をコードする30〜90塩基が付加したポリヌクレオチドであり、より好ましくはシグナル配列をコードする45〜75塩基が付加したポリヌクレオチドであり、より好ましくは配列番号33で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0084】
本発明の態様の1つにおいて、「SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、好ましくは、以下の(k)〜(o)から選択されるポリヌクレオチド:
(k)配列番号32で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(l)配列番号32で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(m)配列番号32で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(n)配列番号33で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(o)配列番号33で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド;
であり、より好ましくは、以下の(k)〜(o)から選択されるポリヌクレオチド:
(k)配列番号32で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(l)配列番号32で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(ただし、アミノ酸の付加はN末端側への付加に限る);
(m)配列番号32で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(n)配列番号33で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(o)配列番号33で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド;
であり、より好ましくは、前記(k)又は(n)から選択されるポリヌクレオチドである。
【0085】
なお、「SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチド」は、配列番号5で示されるアミノ酸配列特異的なCTLが認識できることが好ましい。
ここで、「配列番号5で示されるアミノ酸配列に特異的なCTLが認識できる」とは、例えば、本発明の細胞と配列番号5で示されるアミノ酸配列に特異的なCTLを用いた
51Crリリースアッセイ、ELISA法(例えば、IFN−γの測定)やELISPOTアッセイ(例えば、IFN−γの測定)により確認できる。
【0086】
本明細書において、「ヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチド」は、好ましくは、以下の(f)〜(j)から選択されるポリヌクレオチド:
(f)配列番号30で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(g)配列番号30で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(h)配列番号30で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(i)配列番号31で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(j)配列番号31で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチド;
であり、より好ましくは前記(f)又は(i)から選択されるポリヌクレオチドである。
【0087】
本明細書において、「配列番号30で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド」は、好ましくは配列番号30で示されるアミノ酸配列のN末端側にβ2ミクログロブリンが付加し、C末端側にMHCクラスIのα3領域が付加したポリペプチドであり、より好ましくは配列番号34で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0088】
本明細書において、「配列番号30で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列を含むポリペプチド」は、好ましくは配列番号30で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列のN末端側にβ2ミクログロブリンが付加し、C末端側にMHCクラスIのα3領域が付加したポリペプチドであり、より好ましくは配列番号34で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0089】
本明細書において、「配列番号30で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド」は、好ましくは配列番号30で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列のN末端側にβ2ミクログロブリンが付加し、C末端側にMHCクラスIのα3領域が付加したポリペプチドであり、より好ましくは配列番号34で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0090】
本明細書において、「配列番号31で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド」は、好ましくは配列番号31で示される塩基配列の5’末端側にβ2ミクログロブリンをコードする塩基配列が付加し、3’末端側にMHCクラスIのα3領域をコードする塩基配列を付加したポリヌクレオチドであり、より好ましくは配列番号35で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0091】
本明細書において、「配列番号31で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むポリヌクレオチド」は、好ましくは配列番号31で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列の5’末端側にβ2ミクログロブリンをコードする塩基配列が付加し、3’末端側にMHCクラスIのα3領域をコードする塩基配列を付加したポリヌクレオチドであり、より好ましくは配列番号35で示される塩基配列からなるポリヌクレオチドである。
【0092】
本明細書において、「β2ミクログロブリン」は、MHCクラスI分子のβ鎖を構成するタンパク質をいう。本明細書において、「β2ミクログロブリン」は、ヒト又は非ヒト(マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ等)由来のいずれであっても良く、好ましくはヒトβ2ミクログロブリン(本明細書中において「hβ2M」とも記載する)である。
【0093】
本明細書において、「ヒトβ2ミクログロブリン」は、以下の(i)〜(iii)から選択されるポリヌクレオチド:
(i)配列番号36で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(ii)配列番号36で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加され、かつMHCクラスIのα鎖と複合体を形成することにより当該MHCクラスI特異的な抗原提示能を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(iii)配列番号36で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、かつMHCクラスIのα鎖と複合体を形成することにより当該MHCクラスI特異的な抗原提示能を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
であり、好ましくは(i)で表されるポリヌクレオチドである。
【0094】
本明細書において、「MHCクラスIのα3領域」は、CTL表面に発現する補助レセプターであるCD8分子との結合に関与するα3領域とそのC末端側に存在する膜貫通領域及び細胞内領域をいう。本明細書において、「MHCクラスIのα3領域」は、ヒト又は非ヒト(マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ等)由来のいずれであっても良く、好ましくはマウスMHCクラスIのα3領域(本明細書中において「mα3」とも記載する)である。
【0095】
本明細書において、「マウスMHCクラスIのα3領域」は、以下の(iv)〜(vi)から選択されるポリヌクレオチド:
(iv)配列番号37で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(v)配列番号37で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加され、かつCD8分子結合能を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(vi)配列番号37で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、かつCD8分子結合能を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
であり、好ましくは(iv)で表されるポリヌクレオチドである。
【0096】
本発明の態様の1つにおいて、本明細書において、「ヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチド」は、好ましくは、以下の(p)〜(t)から選択されるポリヌクレオチド:
(p)配列番号34で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(q)配列番号34で示されるアミノ酸配列において、1個若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(r)配列番号34で示されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
(s)配列番号35で示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(t)配列番号35で示される塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド;
であり、より好ましくは前記(p)又は(s)から選択されるポリヌクレオチドである。
【0097】
なお、「ヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチド」は、コードされたα1及びα2領域が配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを抗原として提示できることが好ましく、配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを抗原として提示でき、かつCD8分子結合能を有することが好ましく、配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを抗原として提示でき、かつCD8分子結合能を有し、さらにβ2ミクログロブリンがMHCクラスIのα鎖と複合体を形成することにより当該MHCクラスI特異的な抗原提示能を有するが好ましい。
これらの機能を有するかどうかは、例えば、本発明の細胞と配列番号5で示されるアミノ酸配列に特異的なCTLを用いた
51Crリリースアッセイ、ELISA法(例えば、IFN−γの測定)やELISPOTアッセイ(例えば、IFN−γの測定)により確認できる。
【0098】
本発明の細胞の樹立に用いられる宿主細胞は、好ましくは動物由来の細胞株であり、動物に移植した場合に腫瘍を形成し得るものである。より好ましくは、宿主細胞はマウス由来の細胞株であり、マウスに移植した場合に腫瘍を形成し得るものである。宿主細胞によって形成される腫瘍は、限定するものではないが、例えばメラノーマやリンパ腫等の固形腫瘍とすれば、腫瘍の増殖及び退縮等の評価が容易であるため好ましい。宿主細胞として、好ましくはB16F10細胞である。
【0099】
本発明の細胞の樹立に用いられる宿主細胞に、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド及びヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチドを導入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、導入する宿主の種類、導入方法等に応じて適宜選択できる。例えば、プラスミドDNAベクター、ウイルスベクターが挙げられる。プラスミドDNAベクターとしては、例えば、pCMV6(Origene)、piggyBac Transposon Vector(System Biosciences)、pCAG(富士フイルム和光純薬)、pcDNA3.1(Thermo Fisher Scientific)が挙げられる。また、ウイルスベクターとしては、例えば、pMX(Cell Biolabs)、pLVSIN(タカラバイオ)、pAAV(タカラバイオ)、pAdenoX(Clontech Laboratories)が挙げられる。
【0100】
当該ベクターを用いて宿主を形質転換するには、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等を用いて行うことができる。得られた形質転換体は、資化しうる炭素源、窒素源、金属塩、ビタミン等を含む培地を用いて適当な条件下で培養すればよい。
【0101】
細胞が、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド及びヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチドを導入した細胞であるかの確認は、例えば、ヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチド又はポリペプチド及びヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチド又はポリペプチドの発現の検出方法を用い、その発現を指標として確認することができる。
【0102】
SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現の検出方法は、例えば、PEP5をコードするポリヌクレオチドを含む配列番号29若しくは配列番号33で示されるポリヌクレオチド、又は配列番号29若しくは配列番号33で示されるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするポリペプチドをプライマーとして用い、ノーザンブロッティング法、サザンブロッティング法、RT−PCR法、リアルタイムPCR法、デジタルPCR法、DNAマイクロアレイ法、in situハイブリダイゼーション法、シークエンス解析法など、通常慣用の検出法を用いることができる。
【0103】
ヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリヌクレオチドの発現の検出方法は、例えば、HLA−A24のα1及びα2領域のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む配列番号31若しくは配列番号35で示されるポリヌクレオチド、又は配列番号31若しくは配列番号35で示されるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドをプライマーとして用い、上記の通常慣用の検出法を用いることができる。
【0104】
当該プライマーは、配列番号29若しくは配列番号33で示されるポリヌクレオチド若しくは配列番号29若しくは配列番号33で示されるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドとして、通常公知の手法により作製される。また、配列番号31若しくは配列番号35で示されるポリヌクレオチド又は配列番号31若しくは配列番号35で示されるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするポリヌクレオチドとして、通常公知の手法により作製される。当該プライマーの塩基数は、10〜50塩基、好ましくは10〜40塩基、より好ましくは10〜30塩基である。
【0105】
また、当該プライマーは、配列番号29若しくは配列番号33で示されるポリヌクレオチド若しくは配列番号29若しくは配列番号33で示されるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド又は配列番号31若しくは配列番号35で示されるポリヌクレオチド若しくは配列番号31若しくは配列番号35で示されるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするものであれば、完全に相補的である必要は無い。かかるプライマーは、対応する塩基配列と比較して、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の同一性を有するポリヌクレオチドであり、完全に相補的でポリヌクレオチドが最も好ましい。
【0106】
SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現の検出方法に用いるプライマーは、好ましくは配列番号42及び配列番号43で示されるプライマーセットである。
【0107】
SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドをコードするポリペプチドの発現の検出方法は、例えば、配列番号5で示されるポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いたELISA法、ウエスタンブロッティング法、フローサイトメトリー法又は免疫組織化学染色法など、通常慣用の検出方法を用いることができる。好ましくは、フローサイトメトリー法である。配列番号5で示されるポリペプチドに特異的に結合する抗体は、市販品を使用すること、又は通常公知の方法で作製することが可能である。
【0108】
ヒトHLA−A24のα1及びα2領域をコードするポリペプチドの発現の検出方法は、例えば、HLA−A24のα1及びα2領域を含む配列番号30若しくは配列番号34で示されるポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いたELISA法、ウエスタンブロッティング法、フローサイトメトリー法又は免疫組織化学染色法など、通常慣用の検出方法を用いることができる。好ましくは、フローサイトメトリー法である。配列番号30若しくは配列番号34で示されるポリペプチドに特異的に結合する抗体は、市販品を使用すること、又は通常公知の方法で作製することが可能である。市販品の抗体としては、例えば、anti−human HLA−A,B,C Antibody(Clone:W6/32、Biolegend)、Anti−HLA−A24(Human) mAb(Clone:22E1、MBL)、Anti−HLA A抗体(Clone:EP1395Y、Abcam)が挙げられ、好ましくは、anti−human HLA−A,B,C Antibody(Clone:W6/32、Biolegend)である。なお、これらの抗体は、例えばanti−human HLA−A,B,C Antibody(Clone:W6/32、Biolegend)であれば、PEでラベル化されたPE anti−human HLA−A,B,C Antibody(Clone:W6/32、Biolegend)やFITCでラベル化されたFITC anti−human HLA−A,B,C Antibody(Clone:W6/32、Biolegend)などのラベル化体もanti−human HLA−A,B,C Antibody(Clone:W6/32、Biolegend)に含まれる。
【0109】
本発明の細胞は、in vivoでの評価を可能とするために、非免疫不全非ヒト動物に移植した際に、非免疫不全非ヒト動物内で腫瘍を形成し、かつ自然退縮しないことが好ましい。当該細胞が自然退縮しないことを確認するための方法は、例えば、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウス(国際公開第2015/056774号)の皮下に本発明の細胞を移植し、腫瘍径を測定することにより確認することができる。本発明の細胞は、非免疫不全非ヒト動物に移植した際に、少なくとも移植後20日以上腫瘍径が退縮していないこと(腫瘍径が増加していること)が好ましい。また、in vivo試験の期間中において、薬剤を投与していない群(コントロール群)で、移植した細胞が退縮していないこと(腫瘍径が増加していること)が確認できれば、自然退縮しない期間が20日未満であっても本発明の細胞に含まれる。
【0110】
本発明において、非免疫不全非ヒト動物の「非免疫不全」とは、動物本来の免疫能又は改変された免疫能を有することをいい、従ってヌードマウス等の免疫不全動物は含まない。また、「非ヒト動物」は、β2ミクログロブリン遺伝子座を有し、外来遺伝子を導入できる動物であれば特に限定されるものではないが、好ましくは齧歯類であり、より好ましくはマウス又はラットであり、飼育及び操作上の点から特に好ましいのはマウスである。
【0111】
本発明はまた、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドの抗腫瘍効果を評価するための本発明の細胞に関する。
【0112】
本発明はまた、エピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を評価するための本発明の細胞に関する。
【0113】
本発明はまた、本発明の細胞を用いたSART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドの抗腫瘍効果を評価するための方法に関する。当該方法は、本発明の細胞を移植したヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物を用いて行うことが好ましい。ここで、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物は、ヒトHLA−A24のα1及びα2領域を有する非免疫不全非ヒト動物であれば良く、国際公開第2015/056774号で開示されたヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウス(B2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウス)が好ましい。
【0114】
当該方法において、移植する本発明の細胞の数は、適宜選択しうるが、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウス(B2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウス)を用いる場合、1×10
5〜1×10
7細胞/bodyが好ましく、1×10
5〜5×10
5細胞/bodyがより好ましく、5×10
5細胞/bodyがより好ましい。また、当該方法におけるSART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドの1回あたりの投与量は、適宜選択しうるが、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウス(B2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウス)を用いる場合、10〜1000μg/bodyが好ましく、100〜1000μg/bodyがより好ましく、300μg/bodyがより好ましい。
【0115】
本発明の細胞を用いたSART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドの抗腫瘍効果の評価は、以下の工程を含む方法により行うことができる。
【0116】
すなわち、当該方法は、
(I)SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に移植する工程、
を含む方法により行うことができる。
【0117】
好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0118】
より好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに2回以上投与する工程、及び
(II)上記工程(I)の後に、本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0119】
より好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに3回以上投与する工程、及び
(II)上記工程(I)の後に、本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0120】
本発明はまた、本発明の細胞を用いたエピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を評価するための方法に関する。当該方法は、本発明の細胞を移植したヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物を用いて行うことが好ましい。ここで、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物は、ヒトHLA−A24のα1及びα2領域を有する非免疫不全非ヒト動物であれば良く、国際公開第2015/056774号で開示されたヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウス(B2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウス)が好ましい。
【0121】
当該方法において、移植する本発明の細胞の数は、適宜選択しうるが、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウス(B2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウス)を用いる場合、1×10
5〜1×10
7細胞/bodyが好ましく、1×10
5〜5×10
5細胞/bodyがより好ましく、5×10
5細胞/bodyがより好ましい。また、当該方法におけるエピトープ4連結ペプチド1種あたりの1回あたりの投与量は、適宜選択しうるが、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウス(B2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウス)を用いる場合、10〜1000μg/bodyが好ましく、100〜1000μg/bodyがより好ましく、300μg/bodyがより好ましい。また、当該方法における免疫チェックポイント分子調節剤の1回あたりの投与量は、適宜選択しうるが、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウス(B2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウス)を用いる場合、10〜1000μg/bodyが好ましく、30〜500μg/bodyがより好ましく、50〜200μg/bodyがより好ましい。
【0122】
本発明の細胞を用いたエピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を評価するための方法は、以下の工程を含みうる。
【0123】
すなわち、当該方法は、
(I)エピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に移植する工程、
を含む方法により行うことができる。
【0124】
好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)エピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0125】
より好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)エピトープ4連結ペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに2回以上投与する工程、及び
(II)上記工程(I)の後に、本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0126】
より好ましくは、当該方法は、以下の(I)〜(III)の工程を含む方法である。
(I)エピトープ4連結ペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに3回以上投与する工程、
(II)上記工程(I)の後に、本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程、及び
(III)上記工程(I)の後に、免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに投与する工程。
【0127】
本発明の方法において、エピトープ4連結ペプチドの抗腫瘍効果の評価は、以下の工程を含む方法により行うことができる。
【0128】
すなわち、当該方法は、
(I)エピトープ4連結ペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に移植する工程、
を含む方法により行うことができる。
【0129】
好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)エピトープ4連結ペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0130】
より好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)エピトープ4連結ペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに2回以上投与する工程、及び
(II)上記工程(I)の後に、本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0131】
より好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)エピトープ4連結ペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに3回以上投与する工程、及び
(II)上記工程(I)の後に、本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0132】
本発明において、免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の評価は、以下の工程を含む方法により行うことができる。
【0133】
すなわち、当該方法は、
(I)免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に移植する工程、
を含む方法により行うことができる。
【0134】
好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0135】
より好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに投与する工程、及び
(II)上記工程(I)と同日に、本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0136】
また、本発明において、エピトープ4連結ペプチド及び免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果の評価は、以下の工程を含む方法により行うことができる。
【0137】
すなわち、当該方法は、
(I)エピトープ4連結ペプチド及び免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインの非免疫不全非ヒト動物に移植する工程、
を含む方法により行うことができる。
【0138】
好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)エピトープ4連結ペプチド及び免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに投与する工程、及び
(II)本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0139】
より好ましくは、当該方法は、以下の(I)及び(II)の工程を含む方法である。
(I)エピトープ4連結ペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに2回以上投与する工程、及び
(II)上記工程(I)の後に、本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程。
【0140】
より好ましくは、当該方法は、以下の(I)〜(III)の工程を含む方法である。
(I)エピトープ4連結ペプチドを、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに3回以上投与する工程、
(II)上記工程(I)の後に、本発明の細胞を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに移植する工程、及び
(III)上記工程(I)の後に、免疫チェックポイント分子調節剤を、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスに投与する工程。
【0141】
上記の本発明の方法は、上記の工程の後に、エピトープ4連結ペプチド及び/又は免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果を評価する工程を含みうる。抗腫瘍効果は、例えば移植した細胞によって動物において増殖した腫瘍の増殖抑制、腫瘍の退縮及び消失、生存率の増大等を指標として評価することができる。
【0142】
「SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチドの抗腫瘍効果」及び「エピトープ4連結ペプチドの抗腫瘍効果」の評価は、例えば、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスを用いて、SART2由来のヒト腫瘍抗原エピトープペプチド又はエピトープ4連結ペプチドをマウス皮下に3回投与後、本発明の細胞をマウス皮下に移植し、腫瘍径を測定することにより、抗腫瘍効果を示すかどうか確認することができる。
【0143】
「免疫チェックポイント分子調節剤の抗腫瘍効果」の評価は、例えば、ヒトHLA−A24遺伝子ノックインマウスを用いて、本発明の細胞の移植と同日に免疫チェックポイント分子調節剤をマウス静脈内又は腹腔内に投与し、腫瘍径を測定することにより、抗腫瘍効果を示すかどうか確認することができる。
【実施例】
【0144】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0145】
尚、本発明の理解をより容易にするために、本明細書中で言及する配列番号29〜43についての説明を下記の表3に示す。
【0146】
【表3】
【0147】
[実施例1 ペプチドの合成・精製]
エピトープ4連結ペプチドTPV07及びTPV08を、自動ペプチド合成機Prelude(Protein Technologies, Inc.)を用いて、9−フルオレニルメチル−オキシカルボニル(Fmoc)法による固相ペプチド合成法にて合成した。すなわち、Wang−ChemMatrix樹脂にα−アミノ基がFmoc基で、側鎖官能基が一般的な保護基で保護されたアミノ酸を1−(メシチレン−2−スルホニル)−3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール/N−メチルイミダゾール/ジクロロメタン条件により縮合し、樹脂へのC末端アミノ酸の担持を完了した。これにデブロッキング液(20% ピペリジン/N,N−ジメチルホルムアミド(DMF))を注入してFmoc基を除去した後に、α−アミノ基がFmoc基で、側鎖官能基が一般的な保護基で保護されたアミノ酸を1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−1H−ベンゾ−トリアゾリウム 3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)/N−メチルモルホリン(NMM)/DMF条件によって縮合し、ジペプチドを合成した。デブロッキング液によるFmoc基の脱保護とHCTU/NMM/DMF条件によるアミノ酸の縮合操作を繰り返すことにより、目的とする配列を有するペプチドを合成した。保護ペプチド樹脂の合成完了後、脱保護溶液(2.5% トリイソプロピルシラン、2.5% 水、2.5%1,2−エタンジチオール、92.5% トリフルオロ酢酸)を保護ペプチド樹脂に加えて、4時間反応することによってペプチド側鎖保護基の除去と共に、樹脂から遊離ペプチドを切り出した。樹脂をろ去し、得られたろ液を冷エーテルに添加することにより、ペプチドを沈澱として回収した。得られた各種合成ペプチドはProteonaviカラム(SHISEIDO)にて溶媒系に0.1% TFA水溶液及びアセトニトリルを用いて精製した。最終精製ペプチドはCAPCELL PAK UG120カラム(SHISEIDO)及びHPLCシステム(HITACHI)により純度を確認した。また、ESI−MSシステム(Synapt HDMS、WATERS)により分子量を確認し、凍結乾燥後冷温暗所にて保存し、以降に示す実施例に供した。
【0148】
TPV07及びTPV08のマススペクトル(MS)分析により測定した分子量を表4に示す。さらにTPV07及びTPV08のHPLCのクロマトグラム及びMSを
図1〜
図4に示した。
【0149】
【表4】
【0150】
TPV01〜TPV06、TPV09及びTPV10は、例えば、国際公開第2015/060235号パンフレットに記載の方法に準じて合成することもできるし、上記に示したTPV07及びTPV08と同様の方法に準じて合成することもできる。いずれのペプチドも、純度90%以上のものが得られた。
【0151】
[実施例2 B16F10.A24/SART2
93−101細胞株及びEL4.A24/SART2
93−101細胞株の樹立]
国際公開第2015/056774号の実施例8に記載された方法でB2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウスを作製した。このマウスは、ヒトβ2ミクログロブリン、HLA−A24のα1及びα2領域、及びマウスMHCクラスIのα3領域を連結して含む人工キメラタンパク質を発現することができる。
得られたマウスから脾臓を摘出し、スライドガラスにて脾臓をすり潰した後、BD Pharm Lyse(BD Bioscience)を用いて溶血を行うことで、単細胞懸濁液を調製した。得られた単細胞懸濁液よりRNAeasy kit(Qiagen)を用いて、RNAを抽出した。すなわち、1×10
6個の細胞に対し、Buffer RLTを350μL加えた後、QIAshredderスピンカラム(Qiagen)に加えて遠心し(15000rpm 2分)、フロースルーを回収した。回収したRNA溶液に70%エタノール水溶液350μLを添加後、RNeasy Miniカラムに添加し、遠心した(10000rpm 15秒)。さらにカラムをBuffer RW1 350μLにて洗浄後、RNase−Free DNase set(Qiagen)にてDNase処理を行った。 カラムをBuffer RW1 350μLにて洗浄後、RNeasy Mini Kitのプロトコールに従ってRNAの精製を行った。精製後、RNase Free H
2O 30μLを添加し、Total RNAを回収した。
【0152】
得られたTotal RNAから、Superscript III First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Thermo Ficher Scientific)を用いて、cDNAを合成した。すなわち、Total RNA 2μgを8μLの精製水に懸濁し、オリゴ(dT)
20を1μL、10mM dNTPを1μL加えてから、65℃で5分間インキュベートした。氷上で2分間冷却した後、10× RT bufferを2μL、25mM MgCl
2を1μL、0.1M DTTを2μL、RNaseOUT(40U/μL)を1μL、SuperScript III RTを1μL加えて混和した。50℃で50分間インキュベートした後、85℃で5分間処理して反応を停止した。
【0153】
合成したcDNAをテンプレートとして、センスプライマーとしてPrimer 1(TCAAGCTTAACTAGCATGGCCGTCATGGC:配列番号38)、アンチセンスプライマーとしてPrimer 2(TTAAACCTCGAGTGCTCACGCTTTACAATCTCGGAGAGA:配列番号39)を用いて、KOD−Plus−ver.2(東洋紡)によりPCR(94℃で2分→94℃で30秒、55℃で30秒、68℃で2分を30サイクル→68℃で2分→4℃)を行い、配列番号35で表される配列を有する、上記の人工キメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドを得た。増幅したポリヌクレオチドをInFusion HD Cloning Kit(Clontech Laboratories)を用いて、PiggyBac Transposon Vector(System Biosciences)に挿入することで、配列番号35を有するプラスミドベクターAを得た。
【0154】
次いで、PEP5をコードするポリヌクレオチドを得るために、上記で得られた配列番号35を有するプラスミドベクターAをテンプレートとして、アンチセンスプライマーとしてPrimer 3(CTCAAATTTCATTCCAGCGGGCACTGTAGTCTGCCCAGGTCTGGGT:配列番号40)、センスプライマーとしてPrimer 4(GCAGACTACAGTGCCCGCTGGAATGAAATTTGAGCACTCGAGGTTTAA:配列番号41)を用いて、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ)によりPCR(98℃で10秒、55℃で15秒、68℃で6分を25サイクル→68℃で3分→4℃)を行った。その結果、PiggyBac Transposon Vector内にシグナル配列及びPEP5をコードする塩基配列を含む配列番号33で示される塩基配列を有するプラスミドベクターBを得た。
【0155】
上記で作製したプラスミドベクターA及びBを、Lipofectamine LTX Reagent with PLUS Reagent(Thermo Fisher Scientific)を用いて、Super PiggyBac Transposase Expression Vector(System Biosciences)と共に、マウスメラノーマ細胞株であるB16F10(American Type Culture Collection,ATCC)に遺伝子導入を行った。遺伝子導入後、限界希釈法を用いて単一クローンの細胞を取得した。
【0156】
また、マウスリンパ腫細胞株であるEL4(ATCC)に、Cell line Nucleofector Kit L(Lonza)およびNucleofector Device(Lonza)を用いて、上記で作製したプラスミドベクターA、B、及びSuper PiggyBac Transposase Expression Vector(System Biosciences)の遺伝子導入を行った。遺伝子導入後、限界希釈法を用いて単一クローンの細胞を取得した。
【0157】
取得した単一クローンの細胞を回収し、RNAeasy kit(Qiagen)を用いて、RNAを抽出した。すなわち、5×10
5個の細胞に対し、Buffer RLTを350μL加えた後、QIAshredderスピンカラム(Qiagen)に加えて遠心し(15000rpm 2分)、フロースルーを回収した。回収したRNA溶液に70%エタノール水溶液350μLを添加後、RNeasy Miniカラムに添加し、遠心した(10000rpm 15秒)。さらにカラムをBuffer RW1 350μLにて洗浄後、RNase−Free DNase set(Qiagen)にてDNase処理を行った。 カラムをBuffer RW1 350μLにて洗浄後、RNeasy Mini Kitのプロトコールに従ってRNAの精製を行った。精製後、RNase Free H
2O 30μLを添加し、Total RNAを回収した。
【0158】
得られたRNAより、SuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Thermo Ficher Scientific)を用いて、cDNAを合成した。すなわち、Total RNA 2μgを14μLのDPEC−treated waterに懸濁し、5X VILO Reaction Mixを4μL、10× SuperScript Enzyme Mixを2μL混合した。25℃で10分間、42℃で60分間インキュベートを行い、85℃で5分間処理して反応を停止した。
【0159】
取得した単一クローンの細胞におけるPEP5をコードするポリヌクレオチドの発現を確認するために、合成したcDNAをテンプレートとして、センスプライマーとしてPrimer 5(ATGGCCGTCATGGC:配列番号42)、アンチセンスプライマーとしてPrimer 6(TCAAATTTCATTCCAGCG:配列番号43)を用いて、KOD−Plus−ver.2(東洋紡)によりPCR(94℃で2分→98℃で10秒、55℃で30秒、68℃で30秒を30サイクル→68℃で1分→4℃)を行い、配列番号33で示すポリヌクレオチド配列の増幅をアガロースゲル電気泳動にて確認した。遺伝子導入していないB16F10及びEL4細胞では、配列番号33で示す配列を有するポリヌクレオチドの増幅が確認できなかったのに対し、取得した単一クローンにおいては、配列番号33で示す配列を有するポリヌクレオチドの増幅が確認でき、従ってプラスミドベクターBの導入によるPEP5発現細胞の取得が確認された。
【0160】
また、取得した単一クローンの細胞におけるHLA分子の発現を解析するために、細胞をPE Anti−human HLA−A,B,C Antibody(Clone:W6/32、Biolegend)にて染色を行った。染色後、BD FACSVerse(BD Biosciences)にて解析を行った。その結果、遺伝子導入していないB16F10及びEL4細胞では、抗体の染色による蛍光強度の上昇が確認出来なかったのに対し、取得した単一クローンにおいては、抗体染色による蛍光強度の上昇が確認でき、プラスミドベクターAの導入によるHLA−A24発現細胞の取得が確認された。
すなわち、取得された細胞は、HLA−A24を発現すると共に、PEP5も発現する細胞(B16F10.A24/SART2
93−101細胞及びEL4.A24/SART2
93−101細胞)であることが確認された。
【0161】
[実施例3 B16F10.A24/SART2
93−101細胞株及びEL4.A24/SART2
93−101細胞株の生着確認]
実施例2で得られたB16F10.A24/SART2
93−101細胞株及びEL4.A24/SART2
93−101細胞株を、10% FBSを含むDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(Sigma−Aldrich)培地を用いて、培養した。継代の際は、37℃、5%CO
2インキュベータ中において、週2回、1:25〜1:40比率で継代した。
【0162】
9〜11週齢のB2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウス右側腹部の皮下にB16F10.A24/SART2
93−101細胞株及びEL4.A24/SART2
93−101細胞株を1×10
5細胞/0.1mLずつ移植した。
移植後7日目より、デジマチックキャリパを用いて、腫瘍の長径及び短径を測定し、以下の式より腫瘍体積(TV)を算出した。
TV(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
【0163】
結果を
図5に示す。
図5aに示すように、EL4.A24/SART2
93−101細胞株を移植した場合、一旦生着(増殖)が確認できたマウスもいたが、13日目までにすべてのマウス(5匹)において自然退縮していることが確認された。一方、
図5bに示すように、B16F10.A24/SART2
93−101細胞株を移植した場合、移植したすべてのマウス(10匹)において移植後20日を経過しても自然退縮せず、腫瘍として生着していることが確認された。すなわち、B16F10.A24/SART2
93−101細胞株のみがin vivo試験に使用可能であることが確認できた。
【0164】
[実施例4 B16F10.A24/SART2
93−101細胞株皮下移植モデルにおけるTPV06と抗マウスPD−1抗体との併用効果]
8週齢のB2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウスを、ランダムに各群15匹ずつ割り付けた。群分けを実施した日をDay0とした。
エピトープ4連結ペプチドTPV06を蒸留水(大塚製薬工場)に溶解して6mg/mLのペプチド溶液を調製し、B Braun Injektシリンジ(ビー・ブラウンエースクラップ)に充填した。別のシリンジに等量のMontanide ISA 51 VG(SEPPIC)を充填後、両シリンジをコネクタにて接続し、ペプチド溶液とMontanide ISA 51 VGをよく混合することで、エマルジョンを調製した。また、媒体対照として、蒸留水と等量のMontanide ISA 51 VGを混合したエマルジョンを調製した。これらをB2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウスの尾根部周辺の皮下に100μLずつ週1回、計3回投与した(Day0,7,14)。
【0165】
抗マウスPD−1抗体(anti−mPD−1 Ab)はGoInVivo Purified anti−mouse CD279(PD−1)(Clone:RMP−1−14、Biolegend)を投与直前に1mg/mLとなるようにD−PBS(富士フイルム和光純薬)を用いて調製した。エマルジョンの最終投与より1週間後(Day21)に、抗マウスPD−1抗体を100μg/bodyで、腹腔内投与した。
【0166】
B16F10.A24/SART2
93−101細胞株は10% FBSを含むDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(Sigma−Aldrich)培地を用いて、培養した。B16F10.A24/SART2
93−101は、37℃、5%CO
2インキュベータ中において、週2回、1:25〜1:40比率で継代した。
抗マウスPD−1抗体の投与後の同日に(Day21)、D−PBS(富士フイルム和光純薬)を用いて調製した細胞懸濁液を、マウス右側腹部の皮下に5×10
5細胞/0.1mLずつ移植した。
【0167】
B16F10.A24/SART2
93−101細胞株移植後7日目より、デジマチックキャリパを用いて、腫瘍の長径及び短径を測定し、以下の式より腫瘍体積(TV)を算出した。
TV(mm
3)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2
【0168】
細胞移植後の腫瘍体積変化を
図6に示すように、コントロール群と比較すると、TPV06及び抗マウスPD−1抗体はいずれも、単独で腫瘍増殖抑制効果を有していたが、これらを併用すると、腫瘍増殖がより顕著に抑制された。
【0169】
細胞移植後18日目の結果を下記表5に示す。表中のTVの値は各群の平均値を示す。 尚、相対腫瘍体積変化率(T/C)はTVから以下の式により算出した。
T/C(%)=(各薬剤投与群の平均TV)/(コントロール群の平均TV)×100
【0170】
また、動物用電子天秤を用いて体重を測定し、群分けを実施したDay0に測定した体重(BW0)及び細胞移植後18日目の体重(BW)から体重変化率(BWC)を以下の式により算出した。
体重変化率BWC(%)=(BW−BW0)/BW0×100
【0171】
また、細胞移植後57日目の腫瘍の無い(Tumor Freeの)マウスの割合を以下の式により算出した。
Tumor Free(%)=(各群のTumor Freeのマウスの数)/(各群の試験に用いたマウスの数)×100
【0172】
【表5】
【0173】
細胞移植後18日目において、TPV06群又は抗マウスPD−1抗体の単独投与群及びTPV06+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、コントロール群に比して、TVが低値であり、抗腫瘍効果が示された。さらにTPV06+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、TPV06群又は抗マウスPD−1抗体群の単独薬剤群に比して、TV値が低値であり、より強い抗腫瘍効果が示された。さらに、細胞移植後57日目において、TPV06+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、53.3%のマウスがTumor Freeであった。さらに、TPV06+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、単独薬剤投与群に比して、細胞移植後57日目において、生存率が向上していることが確認できた。
また、併用投与群の平均体重変化率は、TPV06又は抗マウスPD−1抗体の単独薬剤群と比較して、毒性の増強を伴わないことを示すものであった。
【0174】
[実施例5 B16F10.A24/SART2
93−101細胞株皮下移植モデルにおけるTPV06と抗マウスPD−L1抗体との併用効果]
9週齢のB2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウスを、ランダムに各群15匹ずつ割り付けた。群分けを実施した日をDay0とした。
【0175】
抗マウスPD−1抗体の代わりに、抗マウスPD−L1抗体を用いた以外は、実施例4と同様に行った。抗マウスPD−L1抗体(anti−mPD−L1 Ab)はGoInVivo Purified anti−mouse CD274(B7−H1、PD−L1)(Clone:10F.9G2、Biolegend)を投与直前に1mg/mLとなるようにD−PBS(富士フイルム和光純薬)を用いて調製した。エマルジョンの最終投与より1週間後(Day21)に、抗マウスPD−L1抗体を200μg/bodyで、腹腔内投与した。
【0176】
細胞移植後の腫瘍体積変化を
図7に示すように、コントロール群と比較すると、TPV06は単独で腫瘍増殖抑制効果を有していたが、抗マウスPD−L1抗体では効果が認められなかった。しかしながら、TPV06と抗マウスPD−L1抗体とを併用すると、腫瘍増殖がより顕著に抑制された。
細胞移植後18日目の腫瘍体積、相対腫瘍体積変化率及び体重変化率(BWC)、細胞移植後57日目のTumor Freeのマウスの割合を下記表6に示す。
【0177】
【表6】
【0178】
細胞移植後18日目において、TPV06群の単独投与群及びTPV06+抗マウスPD−L1抗体の併用投与群はコントロール群に比して、TVが低値であり、抗腫瘍効果が示された。さらにTPV06+抗マウスPD−L1抗体の併用投与群は、TPV06群及び抗マウスPD−L1抗体群の単独薬剤群に比して、TV値が低値であり、より強い抗腫瘍効果が示された。さらに、細胞移植後57日目において、TPV06+抗マウスPD−L1抗体の併用投与群は、66.7%のマウスがTumor Freeであった。さらに、TPV06+抗マウスPD−L1抗体の併用投与群は、単独薬剤投与群に比して、細胞移植後57日目において、生存率が向上していることが確認できた。
また、併用投与群の平均体重変化率は、TPV06又は抗マウスPD−L1抗体の単独薬剤群と比較して、毒性の増強を伴わないことを示すものであった。
【0179】
[実施例6 B16F10.A24/SART2
93−101細胞株皮下移植モデルにおけるTPV07又はTPV08と抗マウスPD−1抗体との併用効果]
9週齢のB2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウスを、ランダムに各群15匹ずつ割り付けた。群分けを実施した日をDay0とした。
【0180】
エピトープ4連結ペプチドとして、TPV06の代わりにTPV07又はTPV08を用いた以外は、実施例4と同様に行った。なお、TPV07及びTPV08は、TPV06同様、蒸留水(大塚製薬工場)を用いて、6mg/mLに調製後、等量のMontanide ISA 51 VG(SEPPIC)と混合して調製したエマルジョンを投与し、本実施例では抗マウスPD−1抗体単独投与群は含めなかった。
【0181】
細胞移植後の腫瘍体積変化を
図8、
図9に、細胞移植後18日目の腫瘍体積、相対腫瘍体積変化率及び体重変化率(BWC)、細胞移植後56日目のTumor Freeのマウスの割合を表7に示す。
【0182】
【表7】
【0183】
図8及び
図9に示すように、コントロール群と比較すると、TPV07及びTPV08はいずれも、単独で高い腫瘍増殖抑制効果を有していたが、これらを抗マウスPD−1抗体と併用すると、腫瘍増殖がより顕著に抑制された。
また、表7に示すように、細胞移植後18日目において、TPV07投与群又はTPV08投与群の単独投与及びTPV07+抗マウスPD−1抗体又はTPV08+抗マウスPD−1抗体の併用投与群はコントロール群に比して、TVが低値であり、抗腫瘍効果が示された。さらにTPV07+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、TPV07の単独薬剤群に比して、TV値が低値であり、より強い抗腫瘍効果が示された。同様に、TPV08+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、TPV08の単独薬剤群に比して、TV値が低値であり、より強い抗腫瘍効果が示された。さらに、細胞移植後56日目において、TPV07+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、80.0%のマウスがTumor Freeであり、TPV08+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、40.0%のマウスがTumor Freeであった。さらに、TPV07+抗マウスPD−1抗体及びTPV08+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、単独薬剤投与群に比して、細胞移植後56日目において、生存率が向上していることが確認できた。
また、併用投与群の平均体重変化率は、TPV07及びTPV08の単独薬剤群と比較して、毒性の増強を伴わないことを示すものであった。
【0184】
[実施例7 B16F10.A24/SART293−101細胞株皮下移植モデルにおける3種混合エピトープ4連結ペプチド(TPV06、TPV011及びTPV012)と抗マウスPD−1抗体との併用効果]
9週齢のB2m
tm2(HLA−A24/H−2Db/B2M)Taiマウスを、ランダムに各群15匹ずつ割り付けた。群分けを実施した日をDay0とした。
【0185】
TPV06の代わりに、TPV06と他の2種のエピトープ4連結ペプチド(TPV011及びTPV012)の計3種を混合したエピトープ4連結ペプチドを用いた以外は、実施例4と同様の試験を実施した。
すなわち、コントロール群、3種混合エピトープ4連結ペプチド(TPV06、TPV011及びTPV012)群、抗マウスPD−1抗体群及び3種混合エピトープ4連結ペプチド(TPV06、TPV011及びTPV012)+抗マウスPD−1抗体の併用投与群の試験を実施した。
なお、3種混合エピトープ4連結ペプチド(TPV06、TPV011及びTPV012)は、TPV06、TPV011及びTPV012がそれぞれ6mg/mL(すなわちペプチド総量として18mg/mL)となるように、蒸留水(大塚製薬工場)を用いて調製し、等量のMontanide ISA 51 VG(SEPPIC)と混合して調製したエマルジョンを投与した。
【0186】
その結果、3種混合エピトープ4連結ペプチド(TPV06、TPV011及びTPV012)+抗マウスPD−1抗体の併用投与群は、3種混合エピトープ4連結ペプチド(TPV06、TPV011及びTPV012)群又は抗マウスPD−1抗体の単独投与群に比して、細胞移植後56日目において、生存率が向上していることが確認できた。
また、併用投与群の平均体重変化率は、単独薬剤群と比較して、毒性の増強を伴わないことを示すものであった。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。