【解決手段】薬剤吸入器、エアゾール器具10の吐出バルブから吐出される薬剤の吐出方向を変化させるアクチュエータ120を保持する保持部211と、エアゾール器具に押圧を与えて吐出バルブを駆動するレバー部220と、エアゾール器具から吐出された薬剤が流入する第1開口部212と、第1開口部から流入した薬剤が滞留するチャンバー部230と、第1開口部への薬剤の流入方向と対向する方向成分を有する流出方向に開口し、チャンバー部に滞留する薬剤が流出する第2開口部241とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るエアゾール器具及び吸入器具の構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態の薬剤ボンベの外観の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態のアクチュエータの構成の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態のマウスピースの外観側面の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態のマウスピースの外観天面の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態の吸入器具の内部の薬剤の流れの一例を示す図である。
【
図7】本実施形態の薬剤の流れのシミュレーション結果の一例(斜視)を示す図である。
【
図8】本実施形態の薬剤の流れのシミュレーション結果の一例(前面視)を示す図である。
【
図9】本実施形態の薬剤の流れのシミュレーション結果の一例(側面視)を示す図である。
【
図10】本実施形態の吸入器具の利用中の状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係るエアゾール器具10及び吸入器具20の構成の一例を示す図である。本実施形態の吸入器具20は、エアゾール器具10から吐出される粉末状の薬剤の吸入治療を補助する。
【0011】
[エアゾール器具10の構成]
吸入器具20には、エアゾール器具10が取り付けられる。エアゾール器具10は、薬剤ボンベ110と、アクチュエータ120とを備える。
図2は、本実施形態の薬剤ボンベ110の外観の一例を示す図である。薬剤ボンベ110は、封入されたガスの圧力によって粉末状の薬剤を吐出する。薬剤の一例としては、気管支喘息治療薬やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患の治療薬が挙げられる。本実施形態の薬剤ボンベ110は、その頭部に吐出バルブ111を備える。吐出バルブ111は、いわゆる定量バルブであり、薬剤ボンベ110の頭部112と底部113との間にバルブ軸線AX1方向の押圧が加えられると、1回の操作あたり、所定量の薬剤を吐出する。この操作は、吸入器具20の利用者(例えば、患者)によって行われる。
【0012】
図3は、本実施形態のアクチュエータ120の構成の一例を示す図である。アクチュエータ120は、薬剤ボンベ110の頭部112に取り付けられる。アクチュエータ120は、薬剤ボンベ110に取り付けられた状態で利用者の操作による押圧F1が加えられると、加えられた押圧を吐出バルブ111に伝達する。吐出バルブ111は、アクチュエータ120を介して伝達された押圧により駆動され、所定量の薬剤をバルブ軸線AX1方向に吐出する。
アクチュエータ120は、エアゾール器具10の吐出バルブ111から吐出される薬剤の吐出方向D1を変化させる。一例として、アクチュエータ120は、バルブ軸線AX1方向に吐出された薬剤の移動方向をバルブ軸線AX1とは異なる方向(例えば、吐出軸線AX2の方向)に変化させる。この一例において、バルブ軸線AX1と、吐出軸線AX2とのなす角θは90°〜120°であることが好ましく、105°であることがより好ましい。
【0013】
[吸入器具20の構成]
図1に戻り、吸入器具20は、本体210と、レバー220と、チャンバー230と、吸い口240とを備える。
レバー220は、エアゾール器具10に押圧F1を与えて吐出バルブ111を駆動する。
【0014】
より具体的には、レバー220は、支点軸221と、押し当て部222と、操作部223とを備える。
操作部223は、端部に配置され、利用者の操作力が加えられる。
押し当て部222は、保持部211に保持されたエアゾール器具10の底面のうち吐出バルブ111の軸線(バルブ軸線AX1)を含む位置に接して、エアゾール器具10に押圧F1を与える。
支点軸221は、押し当て部222の回転軌跡の回転中心として、吐出バルブ111のバルブ軸線AX1を挟んで操作部223とは反対側の端部に配置される。
つまりレバー220は、支点である支点軸221、作用点である押し当て部222、及び力点である操作部223がこの記載順に配置された梃装置である。吸入器具20は、レバー220を備えることにより、エアゾール器具10単体の場合に比べてより小さな操作力によって薬剤ボンベ110に押圧F1を与えることができる。
【0015】
本体210は、保持部211と、第1開口部212と、第2開口部241とを備える。
保持部211は、アクチュエータ120を保持する。第1開口部212は、保持部211に保持されたアクチュエータ120が薬剤を吐出する方向(吐出方向D1、例えば、吐出軸線AX2の方向)に開口している。第1開口部212には、エアゾール器具10から吐出された薬剤が流入する。
【0016】
チャンバー230は、第1開口部212から流入した薬剤が滞留する。チャンバー230の内容積は、50cc〜100cc程度であることが好ましい。
吸い口240は、利用者の口に咥えられる。第2開口部241は、吸い口240の端部において、第1開口部212への薬剤の流入方向(つまり、吐出方向D1)と対向する方向成分を有する流出方向(つまり、吸い出し方向D2)に開口し、チャンバー230に滞留する薬剤が流出する。
【0017】
なお、吸入器具20は、チャンバー230から吸い口240方向に流出する薬剤が再びチャンバー230内に戻らないようにする逆止弁242を備えていてもよい。
【0018】
本実施形態の一例では、吸い口240は本体210の一部として構成され、本体210と一体成型(又は本体210と吸い口240とが着脱不可能に接合)されている。
なお、吸い口240は、本体210とは別体のマウスピース250として構成されていてもよい。この場合、マウスピース250は、本体210への取り付け及び本体210からの取り外しが可能であり、洗浄を容易にする。
以下、このマウスピース250の形状の一例について説明する。なお、本体210と一体化されている吸い口240の形状も、以下説明するマウスピース250の形状と同様の形状であってよい。
【0019】
図4は、本実施形態のマウスピース250の外観側面の一例を示す図である。
図5は、本実施形態のマウスピース250の外観天面の一例を示す図である。
マウスピース250は、利用者の口に咥えられる。マウスピース250は、勘合部251と、吐出部252と、上歯受け面253と、下歯受け面254と、舌当て面255とを備える。
【0020】
勘合部251は、チャンバー230の薬剤流出口に勘合する。勘合部251からは、チャンバー230から薬剤がマウスピース250内に流入する。
吐出部252は、チャンバー230から勘合部251を介して流入する薬剤が、利用者の口腔内に流出する開口部である。この一例の構成の場合、上述した第2開口部241が吸い口240に相当する。吐出部252は、マウスピース250の天面側と底面側との長さの差が長さLeとなるテーパー形状とされていてもよい。吐出部252がテーパー形状にされることにより、テーパー形状でない場合に比べて薬剤がより効率的に利用者の呼吸器官に到達する。
【0021】
上歯受け面253は、勘合部251と吸い口240とのうち、吸い口240の方向に向けられて、マウスピース250の天面に配置される。利用者がマウスピース250を咥えた状態において、上歯受け面253には、利用者の上顎の前歯(以下の説明において上歯ともいう。)の表面(口腔外側の面)が接する。上歯受け面253は、z方向の長さLcが1〜4mm程度、より好ましくは2mm程度とされる。
なお、マウスピース250は、上歯受け溝2531を備えていてもよい。この場合、上歯受け溝2531の吸い口240方向に向けられた面が、上歯受け面253として構成されていてもよい。
上歯受け面253は、
図5に示す天面視においてマウスピース250のy方向(幅方向)の長さよりも、狭い幅であってよい。つまり、上歯受け面253の幅(長さLh)<マウスピース250の幅(長さLf)と構成されていてもよい。これらの幅の比を、長さLh:長さLfとして表した場合、長さLh:長さLfが1:1〜1:3程度であってよい。換言すれば、長さLhは、長さLfの3分の1以上であってよい。
【0022】
下歯受け面254は、勘合部251と吸い口240とのうち、勘合部251の方向に向けられて、マウスピース250の底面に配置される。利用者がマウスピース250を咥えた状態において、下歯受け面254には、利用者の下顎の前歯(以下の説明において下歯ともいう。)の裏面(口腔内側の面)が接する。下歯受け面254は、z方向の長さLdが1〜4mm程度、より好ましくは2mmとされる。下歯受け面254は、上歯受け面253よりもx軸の負の方向に長さLbずれた位置に配置される。長さLbは、1〜10mm程度、より好ましくは5mm程度とされる。
なお、マウスピース250は、下歯受け溝2541を備えていてもよい。この場合、下歯受け溝2541の勘合部251方向に向けられた面が、下歯受け面254として構成されていてもよい。
【0023】
舌当て面255は、マウスピース250の底面に、x方向(奥行方向)の長さLaにして配置される。長さLaは、30mm〜50mm程度、より好ましくは40mm程度とされる。この舌当て面255は、マウスピース250が利用者の口に咥えられた場合に、利用者の舌をz軸の負方向に押圧する。舌当て面255が、利用者の舌を押圧することにより、利用者の舌が薬剤の吸引の妨げになることを抑止できる。このように構成されたマウスピース250によれば、薬剤がより効率的に利用者の呼吸器官に到達させることができる。
【0024】
[吸入時の薬剤の流れ]
図6から
図9を参照して、吸入時の吸入器具20の内部の薬剤の流れについて説明する。
図6は、本実施形態の吸入器具20の内部の薬剤の流れの一例を示す図である。
図7〜
図9は、本実施形態の薬剤の流れのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0025】
アクチュエータ120から吐出軸線AX2方向に吐出された薬剤は、チャンバー230の内部でz軸の負方向(チャンバー230の底部の方向)に流れる。さらに、薬剤は、チャンバー230の内壁に沿ってz軸の正の方向(同図中の方向D3)、x軸の正の方向(同図中の吸い出し方向D2)と方向を変化させつつ、第2開口部241に到達する。
図7〜
図9には、薬剤の流れのシミュレーション結果の一例を示す。
【0026】
これらの図に示したように、本実施形態の吸入器具20は、チャンバー230内において薬剤が攪拌される。このため、利用者が、吸入器具20を利用せずにアクチュエータ120から吐出される薬剤を直接吸入する場合に比べて、薬剤の濃度が均一化され、より効率的に利用者の呼吸器官に到達する。
【0027】
また、従来において、利用者が吸入器具20を利用せずにアクチュエータ120から吐出される薬剤を直接吸入する場合には、エアゾール器具10の操作タイミングと、吸入動作(例えば、深呼吸)のタイミングとを一致させる必要があり、吸入治療の難度が高くなってしまうという場合があった。例えば、エアゾール器具10の操作タイミングに比べて、吸入動作のタイミングが遅れたような場合には、吐出された薬剤が吸入される前に空気中に拡散してしまい、治療に必要な量の薬剤を吸入することができないというような場合があった。
【0028】
本実施形態の吸入器具20は、チャンバー230の内容積によって、薬剤がチャンバー230内に滞留する。このため、エアゾール器具10の操作タイミングに比べて、吸入動作のタイミングが遅れたような場合であっても、チャンバー230内に滞留している薬剤を吸引することができる。したがって、本実施形態の吸入器具20によれば、吸入治療の難度を低減することができる。
【0029】
図10は、本実施形態の吸入器具20の利用中の状態の一例を示す図である。本実施形態の吸入器具20は、容積の大きなチャンバー230が利用者の掌中に収まる形状を有している。このように構成された吸入器具20によれば、比較的小さな握力で操作することを可能にし、利用者にとって取扱いやすくするとともに、利用者が吸入器具20を掌で隠せるため、吸入動作を第三者の目につきにくくさせることができる。吸入治療は利用者自らが所定のタイミングで行うことが求められる場合がある。例えば、外出先や交通機関による移動中などにおいて吸入治療を行う必要がある場合において、吸入動作が第三者の目につきやすいと、利用者によっては吸入治療をためらってしまう場合が生じる。本実施形態の吸入器具20によれば、吸入動作を第三者の目につきにくくさせることができるため、利用者は、より適切なタイミングでためらいなく吸入動作を行うことができ、効果的な吸入治療を可能にすることができる。
【0030】
また、本実施形態の吸入器具20は、エアゾール器具10の薬剤ボンベ110とアクチュエータ120とを結合したままの状態で、エアゾール器具10を保持することができる。ここで、エアゾール器具10は、吐出バルブ111の形状等に基づいてアクチュエータ120の形状が設計されている場合があり、薬剤ボンベ110とアクチュエータ120とを分離して、薬剤ボンベ110から直接的に薬剤を吐出させるとすると、薬剤の吐出方向が安定しない場合がある。本実施形態の吸入器具20は、エアゾール器具10の薬剤ボンベ110とアクチュエータ120とを結合したままの状態でエアゾール器具10を保持するため、薬剤ボンベ110薬剤の吐出方向が安定し、薬剤をより効率的に利用者の呼吸器に到達させることができる。
【0031】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。