【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 〔展示日〕 平成30年10月10日 〔展示会名〕 「第45回国際福祉機器展H.C.R.2018」 〔開催場所〕 東京ビッグサイト東展示ホール(東京都江東区有明3−11−1)
【課題】 昇降動作の間も車椅子の姿勢が安定しており、車椅子の搭乗者に不安感を与えることがなく、比較的短い時間で段差を昇降するができ、車椅子の搭乗者が単身で段差昇降操作を行うことができる車椅子を提供する。
【解決手段】車椅子1は、上段29から下段30に下る降段動作を行うときには、後腕部11をその先端が下方に向かうように回転させ、前腕部16をその先端が下方に向かうように回転させるものであり、後腕部11及び前腕部16の先端が互いに接近する方向に回転させ、前輪2及び後輪3を上段から持ち上げ、後腕部11及び前腕部16の先端が互いに離間する方向に回転させ、前輪2及び後輪3を下段に接地させる際に、後腕駆動部12と前腕駆動部17とを協調させることにより本体5の傾きを一定に維持する。。
前記前腕部の前記基端は、前記本体の前端に形成され使用者が足を置く足置き部に揺動可能に支持され、前記先端が前記足置き部よりも前方に突出可能であることを特徴とする請求項2に記載の車椅子。
前記制御部は、前記降段時後腕輪接地ステップ、前記降段時前腕輪接地ステップ、前記昇段時後腕輪接地ステップ、及び前記昇段時前腕輪接地ステップにおいて、前記後腕輪が接地したときに生じる外乱トルクを検知することで、前記後腕輪の接地を判断することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車椅子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の装置は、前脚輪の脚部と後脚輪の脚部を同時に起伏駆動することで車椅子を昇降させており、これらの脚部を起伏駆動させる駆動装置は、前脚輪の脚部と後脚輪の脚部とを同時に機械的に駆動するものであり、それぞれの脚部の角速度が特別に協調して制御されることがないので、車椅子の昇降時に車椅子本体の傾きに変化が生じ、車椅子の搭乗者に不安感を与えるとともに、車椅子から脱落するおそれが生じる。
【0007】
また、特許文献2の装置は、キャスター付きの昇降筒を伸ばすことにより、車椅子全体の傾きを変化させることなく上昇させることができるが、段差を乗り越える際には、まず、両方の昇降筒を伸ばして車椅子全体を上昇させ、前後の昇降筒のキャスタで車椅子を支持させた後、前進させて前輪を上段の上方に配し、その後、昇降筒を僅かに短縮させることで前輪を上段面に接地させる。次いで、前昇降筒を短縮させて、車椅子を前輪と後昇降筒のキャスタとで支持しつつ前進させて、前昇降筒が段差を越えて、さらに後輪が段差を越えた位置で、後ろ昇降筒を短縮させて、後輪を上段面に接地させて、車椅子を上段面に移動させる。したがって、昇降筒の伸長及び短縮を何度も繰り返し行うことが必要であり、段差を乗り越える動作の完遂に時間がかかる。しかも、昇降筒のキャスターには駆動力が設けられていないので、介助者が居なければ、段差を乗り越える一連の動作を行うことは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、昇降動作の間も車椅子の姿勢が安定しており、車椅子の搭乗者に不安感を与えることがなく、比較的短い時間で段差を昇降するができ、車椅子の搭乗者が単身で段差昇降操作を行うことができる車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車椅子は、一対の前輪と、一対の後輪と、前記前輪及び前記後輪を走行可能に保持する本体と、基端が前記本体に揺動可能に支持され、先端が前記後輪よりも後方に突出する後腕部と、前記後腕部を揺動させる後腕駆動部と、前記後腕部の先端に形成される後腕輪と、前記後腕輪を正逆回転駆動させる補助駆動部と、基端が前記本体に揺動可能に支持され、先端が前記前輪よりも前方に突出する前腕部と、前記前腕部を揺動させる前腕駆動部と、前記前腕部の先端に形成される前腕輪と、前記本体の所定位置が段差を通過したことを検知する段差検知部と、前記後腕駆動部、前記前腕駆動部、及び前記補助駆動部の動作を制御する制御部と、を備え、上段から下段に下る降段動作を行うときには、前方に前記段差が配置された状態で、前記制御部が、前記後腕駆動部を駆動させて前記後腕部をその先端が下方に向かうように回転させ、前記後腕輪を前記上段に接地させる降段時後腕輪接地ステップと、前記前腕駆動部を駆動させて前記前腕部をその先端が下方に向かうように回転させ、前記前腕輪を前記下段に接地させる降段時前腕輪接地ステップと、前記降段時後腕輪接地ステップ及び前記降段時前腕輪接地ステップが完了した後、前記後腕駆動部及び前記前腕駆動部を駆動させて、前記後腕部及び前記前腕部の先端が互いに接近する方向に回転させ、前記前輪及び前記後輪を前記上段から持ち上げる降段時車輪上昇ステップと、前記補助駆動部を駆動して前記後腕輪を正回転駆動させて前進させ、前記段差検知部が検知した段差通過情報に基づいて、前記後輪が前記段差を通過したことを判断する降段時段差通過検知ステップと、前記降段時段差通過検知ステップにおいて前記後輪が前記段差を通過したと判断すると、前記補助駆動部の駆動を停止する降段時停止ステップと、前記降段時停止ステップにおいて前記補助駆動部の駆動を停止すると、前記後腕駆動部及び前記前腕駆動部を駆動させて、前記後腕部及び前記前腕部の先端が互いに離間する方向に回転させ、前記前輪及び前記後輪を前記下段に接地させる降段時車輪下降ステップと、を実行するものであり、前記制御部は、前記降段時車輪上昇ステップ及び前記降段時車輪下降ステップにおいて、前記後腕駆動部と前記前腕駆動部とを協調させることにより前記本体の傾きを一定に維持することを特徴としている。
【0010】
本発明の車椅子は、下段から上段に昇る昇段動作を行うときには、後方に前記段差が配置された状態で、前記制御部は、前記後腕駆動部を駆動させて前記後腕部をその先端が下方に向かうように回転させ、前記後腕輪を前記上段に接地させる昇段時後腕輪接地ステップと、前記前腕駆動部を駆動させて前記前腕部をその先端が下方に向かうように回転させ、前記前腕輪を前記下段に接地させる昇段時前腕輪接地ステップと、前記昇段時後腕輪接地ステップ及び前記昇段時前腕輪接地ステップが完了した後、前記後腕駆動部及び前記前腕駆動部を駆動させて、前記後腕部及び前記前腕部の先端が互いに接近する方向に回転させ、前記前輪及び前記後輪を前記下段から持ち上げる昇段時車輪上昇ステップと、前記補助駆動部を駆動して前記後腕輪を逆回転駆動させて後退させて、前記前輪が前記段差を通過した後、前記後腕輪の駆動を停止させた旨の信号を受け取る昇段時後退停止信号受信ステップと、前記昇段時後退停止信号受信ステップにおいて前記後腕輪の駆動を停止させた旨の信号を受け取ると、前記後腕駆動部及び前記前腕駆動部を駆動させて、前記後腕部及び前記前腕部の先端が互いに離間する方向に回転させ、前記前輪及び前記後輪を前記上段に接地させる昇段時車輪下降ステップと、を備え、前記制御部は、前記昇段時車輪上昇ステップ及び前記昇段時車輪下降ステップにおいて、前記後腕駆動部と前記前腕駆動部とを協調させることにより前記本体の傾きを一定に維持することを特徴としている。
【0011】
本発明の車椅子は、前記前腕部の前記基端は、前記本体の前端に形成され搭乗者が足を置く足置き部に揺動可能に支持され、前記先端が前記足置き部よりも前方に突出可能であることを特徴としている。
【0012】
本発明の車椅子は、前記制御部は、前記降段時後腕輪接地ステップ、前記降段時前腕輪接地ステップ、前記昇段時後腕輪接地ステップ、及び前記昇段時前腕輪接地ステップにおいて、前記後腕輪が接地したときに生じる外乱トルクを検知することで、前記後腕輪の接地を判断することを特徴としている。
【0013】
本発明の車椅子は、前記前腕部の水平面に対する角度を検知する第一角度センサと、前記後腕部の水平面に対する角度を検知する第二角度センサと、を更に備え、前記降段動作を行うときには、前記制御部は、前記降段時前腕輪接地ステップが完了した後、前記前輪及び前記後輪が接地している状態で、前記第一角度センサの検知角度に基づいて段差高さを推定するとともに、前記昇段動作を行うときには、前記制御部は、前記昇段時後腕輪接地ステップが完了した後、前記前輪及び前記後輪が接地している状態で、前記第二角度センサの検知角度に基づいて段差高さを推定することを特徴としている。
【0014】
本発明の車椅子は、前記段差検知部は、その基端部が前記本体に固定されるとともに、前方に向かって下り勾配に傾斜して設けられており、その先端部の高さが前記前輪及び前記後輪が接地した場合の当該接地面の高さレベルよりも高い位置から低い位置まで移動可能となるように、前記基端部を軸として回転可能に形成された揺動バーと、前記揺動バーの前記先端部が所定の高さよりも低い場合にそのことを示す情報を前記制御部に送るスイッチと、を有しており、前記制御部は前記スイッチから受け取る情報に基づいて前記段差の位置を検知することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車椅子によると、上段から下段に下る降段動作を行うときには、後腕輪を上段に接地させ、前腕輪を下段に接地させた後、前輪及び後輪を上段から持ち上げて、段差を通過させ、前輪及び後輪が段差を通過した後に前輪及び後輪を下段に接地するまで下降させることで降段する。したがって、前輪及び後輪の上昇及び下降を1回ずつ実行することで段差を降りることができ、比較的簡単な動作で段差を乗り越えることができるので、降段動作を短時間で行うことができる。さらに、後腕輪を正逆回転駆動させる補助駆動部によって、前輪及び後輪を持ち上げた状態であっても、接地している後腕輪を回転駆動させて前進することができるので、車椅子の搭乗者が単身で操作して段差の降段操作を行うことができる。そして、制御部は、降段時車輪上昇ステップ及び降段時車輪下降ステップにおいて、後腕駆動部と前腕駆動部とを協調させることにより本体の傾きを一定に維持するので、昇降動作中の車椅子の姿勢が安定し、車椅子の搭乗者に不安感を与えることを抑制できる。
【0016】
本発明の車椅子によると、下段から上段に昇る昇段動作を行うときには、段差が車椅子の後方となるように車椅子を移動させて、後腕輪を上段に接地させ、前腕輪を下段に設置させた後、前輪及び後輪を上段から持ち上げて、段差を通過させ、前輪及び後輪が段差を通過した後に前輪及び後輪を上段に接地するまで下降させることで昇段する。したがって、前輪及び後輪の上昇及び下降を1回ずつ実行することで段差を越えることができ、比較的簡単な動作で段差を上がることができるので、昇段動作を短時間で行うことができる。そして、後腕輪を正逆回転駆動させる補助駆動部によって、前輪及び後輪を持ち上げた状態であっても、接地している後腕輪を回転駆動させて車椅子を後退することができるので、車椅子の搭乗者が単身で操作して段差の昇段操作を行うことができる。段差の昇降動作中の車椅子の前進及び後退時には、常に後腕輪が接地しているので、後腕輪を駆動させる補助駆動部を設けることで、前進及び後退を行うことができる。そして、制御部は、昇段時車輪上昇ステップ及び昇段時車輪下降ステップにおいて、後腕駆動部と前腕駆動部とを協調させることにより本体の傾きを一定に維持するので、昇降動作中の車椅子の姿勢が安定し、車椅子の搭乗者に不安感を与えることを抑制できる。
【0017】
本発明の車椅子によると、前腕部の基端は、本体の前端に形成され搭乗者が足を置く足置き部に揺動可能に支持され、前腕部の先端が足置き部よりも前方に突出可能であるので、昇降動作中に足置き部が段差と干渉することが無い。また、前腕部の先端に形成された前腕輪が足置き部よりも前方に突出して配置されることで、前腕部や前腕輪が足置き部と干渉することがなく、前腕部の揺動範囲を広くすることができるので、例えば一般的な玄関の上がり框のような、高低差の比較的大きな段差にも対応することができる。
【0018】
本発明の車椅子によると、制御部は、降段時後腕輪接地ステップ、降段時前腕輪接地ステップ、昇段時後腕輪接地ステップ、及び昇段時前腕輪接地ステップにおいて、後腕輪または前腕輪が接地したときに生じる外乱トルクを検知することで、後腕輪及び前腕輪の接地を判断するので、簡単な構成で確実に後腕輪及び前腕輪の接地を判断することができ、より安全に段差を乗り越える制御を行うことができる。
【0019】
本発明の車椅子によると、前腕部の水平面に対する角度を検知する第一角度センサと、前記後腕部の水平面に対する角度を検知する第二角度センサと、によって前腕部の角度及び後腕部の角度を検知することができるので、これら検知した角度に基づいて段差の高さを算出することができ、算出した段差の高さを段差を乗り越える動作中の制御に用いることができる。
【0020】
本発明の車椅子によると、揺動バーの先端が所定の高さよりも高い場合には、揺動バーの下方にある地面に揺動バーが接地していることがわかり、揺動バーの先端が所定の高さよりも低い場合には、揺動バーの下方にある接地面の高さが低いことがわかるので、揺動バーの下方が段差の上段か下段かを判断することができ、揺動バーの高さが切り替わった位置が段差の位置であることがわかる。そして、揺動バーの先端部が所定の高さよりも低い場合に、スイッチからその旨の情報が制御部に送られて、制御部が、当該情報に基づいて段差の位置を検知するので、揺動バーの物理的な動きに基づいて段差位置を正確に検知することができ、段差を乗り越える動作を安全に実行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の車椅子1について、
図1から
図13を参照しつつ説明する。本実施形態の車椅子1は、
図1及び
図2に示すように、一対の前輪2、一対の後輪3、及び本体5を備える車椅子1である。前輪2はそれぞれ水平回転可能なキャスターである。後輪3は電動モータの主駆動部4が接続されており、一対の後輪3のそれぞれが独立して正逆回転可能に形成されている。車椅子1は、両方の後輪3を正回転させることで前進し、両方の後輪3を逆回転させることで後退する。また、一方の後輪3を正回転させつつ、他方の後輪3を停止させることで、左右方向に旋回させる。本体5には、丸筒の金属製パイプを組み合わせたフレーム6と、車椅子1の搭乗者が着席する座席7と、座席7の左右にそれぞれ設けられ搭乗者が肘を置く肘置き8と、搭乗者の足元に左右一対設けられた足置き部9と、介助者が車椅子1を操作するための後部ハンドル10とを有している。なお、一対の前輪2、一対の後輪3、及び本体5の形状は、これに限定されるものではなく、一般的な車椅子1であればどのような形状のものであっても、本発明の車椅子1の構成として用いることができる。本実施形態においては後輪3が電動モータの主駆動部4によって駆動する電動車椅子1であるが、本発明の車椅子1は、搭乗者が手動で後輪3を回転させる車椅子1であってもよい。
【0023】
また、車椅子1は、
図1及び
図2に示すように、後輪3よりも後方に突出する後腕部11と、当該後腕部11を揺動させる後腕駆動部12と、後腕部11の先端に形成される後腕輪13とをさらに備える。後腕部11は、本体5のフレーム6に基端が揺動可能に支持されている。後腕駆動部12は、伸縮可能に形成されたジャッキであり、一端が本体5のフレーム6に回転可能に固定され、他端が後腕部11の長さ方向の中間部に回転可能に固定されており、後腕駆動部12の伸縮によって後腕部11が揺動する。なお、後腕駆動部12は、伸縮可能なジャッキに限定されるものではなく、後腕部11をその基端を軸としてフレーム6に対して回転させことができる動力であればよい。後腕部11の先端に設けられる後腕輪13は、電動モータの補助駆動部14に接続されて正逆回転可能となっている。後腕輪13は後腕部11の先端を挟むように左右1対配置されている。また、後腕部11には当該後腕部11の長さ方向と水平面とが成す角度を検知する第二角度センサ15が設けられている。
【0024】
そして、車椅子1は、先端が前輪2よりも前方に突出する前腕部16と、当該前腕部16を揺動させる前腕駆動部17と、前腕部16の先端に形成される前腕輪18とをさらに備える。前腕部16は、基端が本体5の左右一対の足置き部9の間に車椅子1の左右方向を軸として揺動可能に支持されている。前腕駆動部17は前腕部16の基端の軸に接続されたモータであり、前腕部16を所定の範囲で正回転及び逆回転させることができる。前腕輪18は前腕部16の先端に設けられて空転可能な車輪である。前腕輪18は前腕部16の先端を挟んで左右一対設けられている。前腕部16には当該前腕部16の長さ方向と水平面とが成す角度を検知する第一角度センサ19が設けられている。上述のように、前腕部16の基端が足置き部9に揺動可能に支持されることで、前腕部16の先端は足置き部9よりも前方に突出可能となり、昇降動作中に足置き部9が段差と干渉することを防止することができ、前腕部16や前腕輪18が足置き部9と干渉することなく前腕部16の揺動範囲を広げることができるので、例えば一般的な玄関の上がり框のような、高低差の比較的大きな段差にも対応することができる。
【0025】
また、車椅子1には、当該車椅子1の本体5の所定の位置が段差を通過したことを検知する段差検知部20が形成される。段差検知部20は、
図1及び
図3に示すように、本体5に揺動可能に固定される揺動バー21と、揺動バー21の先端部に空転自在に形成された段差検知輪22と、揺動バー21の基端の近傍に形成されており、揺動バー21が当接離反可能なスイッチ23とを有している。揺動バー21は、基端部が本体5に揺動可能に固定されるとともに前方に向かって下り勾配に傾斜して設けられている。揺動バー21の先端部に形成された段差検知輪22は揺動バー21の揺動によって上下に移動可能であり、その高さは、車椅子1の前輪2及び後輪3が接地した場合の当該接地面の高さレベルよりも高い位置から低い位置まで移動可能となっている。前輪2及び後輪3が地面に接地しているときには、段差検知輪22が地面に当接することで、揺動バー21が上方に回転される。また、前輪2及び後輪3が持ち上げられて接地面から離間したときには、段差検知輪22は地面から離れ、揺動バー21が下方に回転する。スイッチ23は、
図4に示すように、揺動バー21が上方に回転すると当該揺動バー21の基端部が当接しスイッチ23が押圧されることで、回路が閉じて制御部24が電圧を検知する。一方、揺動バー21が下方に回転すると当該揺動バー21の基端部がスイッチ23から離れ、回路が開いて制御部24は電圧を検知しない。
【0026】
さらに車椅子1は、
図1及び
図2に示すように、搭乗者が操作することで、車椅子1の操縦を行うとともに、段差を昇降する動作を開始する操作を行う操作部25と、当該車椅子1の各部を制御する制御部24と、を備える。操作部25は、後輪3の駆動を操作し、車椅子1の進行、後退、旋回などの操作を行う一方の肘置き8に設けられた主操作ジョイスティック26と、後腕輪13の駆動を操作し、昇降動作の際の前進及び後退を操作する他方の肘置き8に設けられた補助ジョイスティック27と、昇降動作の開始や停止を入力するキーボード28とを有する。また、制御部24は、各部に有線又は無線で接続されたコンピュータである。制御部24は図示しないCPU、メモリ、ディスプレイを有し、操作部25や各部から得られた信号に基づいて、各部を制御するコマンドを送信し、段差を昇降する処理を行う。
【0027】
次に、以上のように構成される車椅子1が段差を降段する際に主に制御部24が行う降段動作の処理について
図5を参照しつつ説明する。降段動作の処理を行う場合には、まず、主操作ジョイスティック26を操作して、車椅子1の進行方向前方に上段29から下段30に下る段差が車椅子1の進行方向前方であり、且つ、段差が進行方向に対して垂直となるように、車椅子1を配置する。このとき、
図6(A)に示すように、前腕部16及び後腕部11はそれぞれ基端よりも先端が高くなるように持ち上げられた位置に配置されており、前腕輪18及び後腕輪13は接地されていない。次に、搭乗者が操作部25のキーボード28を操作して降段動作を開始する操作を行う(S100)。
【0028】
制御部24は降段処理の開始操作が成されたか否かを判断し(S100)、降段処理の開始操作が成されたと判断すると(S100:YES)、ステップS101に処理を進める。一方、降段処理の開始操作が成されていないと判断すると(S100:NO)そのまま処理を待機する。ステップS101に進むと、
図6(B)に示すように、後腕駆動部12を駆動させて後腕部11をその先端が下方に向かうように回転させて、後腕輪13を上段29に接地させる(S101)。
【0029】
具体的には制御部24は、後腕駆動部12に対して後腕部11の角速度が一定となるように、伸長方向に駆動する旨のコマンドを送信し、後腕駆動部12が伸長することで後腕部11の先端を徐々に下方に下げる。そして、
図11に模擬的に示すように、後腕輪13が接地したときの制御信号uによる電圧と、角速度に基づいてモーターの逆モデル式から推定した推定電圧u~との差を検知外乱トルクd*として算出する。そして、
図12(A)に示すように、検知外乱トルクd*が所定の閾値以下の場合には後腕輪13が上段29に接地しておらず、
図12(B)に示すように、この検知外乱トルクd*が所定の閾値を超えた場合に後腕輪13が上段29に接地したと判断する。
【0030】
後腕輪13を上段29に接地させると(S101)、次に、
図6(C)に示すように、前腕駆動部17を駆動させて前腕部16をその先端が下方に向かうように回転させて、前腕輪18を下段30に接地させる(S102)。具体的には、後腕輪接地ステップ(S101)と同様に、制御部24は、前腕駆動部17に対して前腕部16の角速度が一定となるように駆動する旨のコマンドを送信し前腕部16の先端を徐々に下方に下げる。そして、
図11に示すように、前腕輪18が接地したときの制御信号uによる電圧と、角速度に基づいてモーターの逆モデル式から推定した推定電圧u~との差を検知外乱トルクd*として算出する。そして、
図12(A)に示すように、検知外乱トルクd*が所定の閾値以下の場合には前腕輪18が上段29に接地しておらず、
図12(B)に示すように、この検知外乱トルクd*が所定の閾値を超えた場合に前腕輪18が下段30に接地したと判断する。
【0031】
後腕輪13が上段29に接地し、前腕輪18が下段30に接地すると、次に、制御部24は、降段時段差高さの推定を行う(S103)。具体的な降段時の段差高さは後述の数式1に基づいて算出される。
【0032】
図13(A)に示すように、上段29の地面から前腕部16の基端の軸までの高さh
1、前腕輪18の半径r
1、前腕部16の長さ(前腕部16の基端の軸から前腕輪18の中心軸までの長さ)L
1は固定された数値であるので、予め制御部24がこれらの数値を記憶しており、水平面に対する前腕部16の長さ方向の角度θ
1を第一角度センサ19に検知させる。そして、制御部24は、これらの数値h1、r1、L1、及びθ1を下記の数式1に代入して、段差高さHを算出する。なお、本実施形態において数式1から数式4に含まれる「サーカムフレックス(^)が付されたθ
1及びHの文字」は、サーカムフレックス(^)を省略した「θ
1」及び「H」であらわす。
【0034】
段差高さの推定(A103)の処理を完了すると、次に、後腕駆動部12及び前腕駆動部17を駆動させて、後腕部11及び前腕部16の先端同士が互いに接近する方向に後腕部11及び前腕部16を回転させ、
図6(D)に示すように、前輪2及び後輪3を上段29から持ち上げる降段時車輪上昇ステップを実行する(S104)。この降段時車輪上昇ステップでは、後腕駆動部12と前腕駆動部17とを協調させることにより車椅子1の本体5の傾きを一定に維持する。すなわち、後腕駆動部12及び前腕駆動部17が駆動して車椅子1の本体5を持ち上げる際に、後腕駆動部12及び前腕駆動部17の角速度を調整し、後腕駆動部12の基端及び前腕駆動部17の基端がそれぞれ同じ速度で鉛直方向へ持ち上がるように制御することで、車椅子1の前輪2及び後輪3が水平は地面に接地している時の本体5の姿勢と同じ姿勢でそのまま上方に持ち上がる。
【0035】
具体的には、降段時車輪上昇ステップは、後述する数式2及び数式3に基づいて、車椅子1の姿勢を維持しつつ車椅子1の本体5を持ち上げる際の前腕部16の角度の変化量Δθ
1及び後腕部11の角度の変化量Δθ
2を算出する。段差高さHは、前述の降段時段差高さの推定(S103)において算出されており、上段29の地面から前腕部16の基端の軸までの高さh
1、前腕輪18の半径r
1、前腕部16の長さ(前腕部16の基端の軸から前腕輪18の中心軸までの長さ)L
1は固定された数値である。そして、上段29の地面から後腕部11の基端の軸までの高さh
2、後腕輪13の半径r
2、前腕部16の長さ(前腕部16の基端の軸から前腕輪18の中心軸までの長さ)L
2もまた固定された数値である。また、水平面に対する前腕部16の長さ方向の角度θ
1は、第一角度センサ19が検知し、水平面に対する後腕部11の長さ方向の角度θ
2は、第二角度センサ15が検知する。したがって、制御部24は、数式2及び数式3に、本体5を持ち上げる変化量ΔHを入力することで、本体5をその姿勢を変化させずに上方に持ち上げる為に必要な前腕部16の角度の変化量Δθ
1及び後腕部11の角度の変化量Δθ
2を算出することができる。
【0038】
以上のようにして、算出した前腕部16の角度の変化量Δθ
1に基づいて前腕駆動部17の駆動を制御するとともに、後腕部11の角度の変化量Δθ
2に基づいて、前腕駆動部17の駆動を制御し、車椅子1の本体5の姿勢を維持しつつΔHの高さまで車椅子1の本体5を持ち上げる。
【0039】
そして、次に、車椅子1の搭乗者が操作部25の補助ジョイスティック27の操作した場合には(S105:YES)、補助駆動部14を駆動し、後腕輪13を正回転方向に駆動させることによって、車椅子1を前進させる。一方、操作部25の補助ジョイスティック27が操作されていない場合は処理を待機する(S105:NO)。なお、本発明の車椅子1は搭乗者の操作により補助駆動部14が駆動するものに限られず、降段時車輪上昇ステップを完了すると、自動的に補助駆動部14が駆動する構成であってもよい。
【0040】
そして、車椅子1が前進して、本体5の所定の位置が段差を通過すると、当該段差を通過したことを段差検知部20が検知する(S106)。具体的には段差検知部20の段差検知輪22が上段29から離れることで、揺動バー21が下方に回転してスイッチ23を押圧し、回路が閉じて制御部24が電圧を検知する。段差検知部20が、このように揺動バー21の物理的な動きによってスイッチ23が押圧される構成であるので、段差検知の確実性を高めることができる。制御部24は段差検知部20が段差を検知した後、更に補助駆動部14を駆動して、
図7(A)に示すように、後輪3が段差の上を通過するまで車椅子1を前進させて、停止させる(S107)。具体的には、制御部24は、本体5における段差検知部20が段差を検知する位置、後輪3の位置の間の所定距離をそれぞれ予め記憶しておき、段差検知部20が段差を検知してから車椅子1が所定距離進んだときに補助駆動部14を停止させる。
【0041】
車椅子1を停止させると、次に、
図7(B)に示すように、後腕駆動部12及び前腕駆動部17を駆動させて、後腕部11及び前腕部16の先端同士が互いに離れる方向に後腕部11及び前腕部16を回転させ、前輪2及び後輪3を徐々に下げて下段30に接地させる降段時車輪下降ステップを実行する(S108)。この降段時車輪下降ステップでは、後腕駆動部12と前腕駆動部17とを協調させることにより車椅子1の本体5の傾きを一定に維持する。すなわち、後腕駆動部12及び前腕駆動部17が駆動して車椅子1の本体5を下げる際に、後腕駆動部12及び前腕駆動部17の角速度を調整し、後腕駆動部12の基端及び前腕駆動部17の基端がそれぞれ同じ速度で鉛直方向へ下がるように制御することで、車椅子1の前輪2及び後輪3が水平は地面に接地している時の本体5の姿勢と同じ姿勢でそのまま下方に下がる。具体的には、降段時車輪下降ステップは、前述の数式2及び数式3に基づいて、車椅子1の姿勢を維持しつつ車椅子1の本体5を下げる際の前腕部16の角度の変化量Δθ1及び後腕部11の角度の変化量Δθ2を算出する。具体的な数式2及び数式3の説明は前述の通りであるので説明を省略する。したがって、制御部24は、数式2及び数式3に、本体5を下げる変化量ΔHを入力することで、本体5をその姿勢を変化させずにに持ち上げる為に必要な前腕部16の角度の変化量Δθ1及び後腕部11の角度の変化量Δθ2を算出することができる。そして、算出した前腕部16の角度の変化量Δθ1に基づいて前腕駆動部17の駆動を制御するとともに、後腕部11の角度の変化量Δθ2に基づいて、前腕駆動部17の駆動を制御し、車椅子1の本体5の姿勢を維持しつつ車椅子1の本体5を下げて、前輪2及び後輪3を接地させる。
【0042】
降段時車輪下降ステップを完了すると、
図7(C)に示すように、前腕駆動部17及び後腕駆動部12を駆動させて、前腕部16及び後腕部11を先端が持ち上げて、降段処理を完了する。
【0043】
次に、車椅子1が段差を昇段する際に主に制御部24が行う昇段処理について
図8を参照しつつ説明する。昇段処理を行う場合には、まず、主操作ジョイスティック26を操作して、車椅子1の進行方向後方に下段30から上段29に上がる段差が車椅子1の後退方向に対して垂直となるように、当該車椅子1を配置する。このとき、
図9(A)に示すように、前腕部16及び後腕部11はそれぞれ基端よりも先端が高くなるように持ち上げられた位置に配置されており、前腕輪18及び後腕輪13は接地されていない。次に、搭乗者が操作部25のキーボード28を操作して昇段処理を開始する操作を行う。
【0044】
制御部24は昇段処理の開始操作が成されたか否かを判断し(S200)、昇段処理の開始操作が成されたと判断すると(S200:YES)、ステップS201に処理を進める。一方、昇段処理の開始操作が成されていないと判断すると(S200:NO)そのまま処理を待機する。ステップS201に進むと、
図9(B)に示すように、後腕駆動部12を駆動させて後腕部11をその先端が下方に向かうように回転させて、後腕輪13を上段29に接地させる(S201)。
【0045】
具体的には制御部24は、後腕駆動部12に対して後腕部11の角速度が一定となるように、伸長方向に駆動する旨のコマンドを送信し、後腕駆動部12が伸長することで後腕部11の先端を徐々に下方に下げる。そして、
図11に示すように、後腕輪13が接地したときの制御信号uによる電圧と、角速度に基づいてモーターの逆モデル式から推定した推定電圧u~との差を検知外乱トルクd*として算出する。そして、
図12(A)に示すように、検知外乱トルクd*が所定の閾値以下の場合には後腕輪13が上段29に接地しておらず、
図12(B)に示すように、この検知外乱トルクd*が所定の閾値を超えた場合に後腕輪13が上段29に接地したと判断する。
【0046】
後腕輪13を上段29に接地させると(S201)、次に、
図9(C)に示すように、前腕駆動部17を駆動させて前腕部16をその先端が下方に向かうように回転させて、前腕輪18を下段30に接地させる(S202)。具体的には、後腕輪接地ステップ(S201)と同様に、制御部24は、前腕駆動部17に対して前腕部16の角速度が一定となるように駆動する旨のコマンドを送信し前腕部16の先端を徐々に下方に下げる。そして、
図11に示すように、前腕輪18が接地したときの制御信号uによる電圧と、角速度に基づいてモーターの逆モデル式から推定した推定電圧u~との差を検知外乱トルクd*として算出する。そして、
図12(A)に示すように、検知外乱トルクd*が所定の閾値以下の場合には前腕輪18が上段29に接地しておらず、
図12(B)に示すように、この検知外乱トルクd*が所定の閾値を超えた場合に後腕輪13が下段30に接地したと判断する。
【0047】
後腕輪13が上段29に接地し、前腕輪18が下段30に接地すると、次に、制御部24は、昇段時段差高さの推定を行う(S203)。具体的な昇段時の段差高さは後述の数式4に基づいて算出される。
【0048】
図13(B)に示すように、下段30の地面から後腕部11の基端の軸までの高さh
2、後腕輪13の半径r
2、後腕部11の長さ(後腕部11の基端の軸から後腕輪13の中心軸までの長さ)L
2は固定された数値であるので、予め制御部24がこれらの数値を記憶しており、水平面に対する後腕部11の長さ方向の角度θ
2を第二角度センサ15に検知させる。そして、制御部24は、これらの数値h
2、r
2、L
2、及びθ
2を下記の数式1に代入して、段差高さHを算出する。なお、本実施形態において数式1から数式4に含まれる「サーカムフレックス(^)が付されたθ
2及びHの文字」は、サーカムフレックス(^)を省略した「θ
2」及び「H」であらわす。
【0050】
段差高さの推定(S203)の処理を完了すると、次に、後腕駆動部12及び前腕駆動部17を駆動させて、後腕部11及び前腕部16の先端同士が互いに接近する方向に後腕部11及び前腕部16を回転させ、
図9(D)に示すように、前輪2及び後輪3を上段29から持ち上げる昇段時車輪上昇ステップを実行する(S204)。この昇段時車輪上昇ステップでは、後腕駆動部12と前腕駆動部17とを協調させることにより車椅子1の本体5の傾きを一定に維持する。すなわち、後腕駆動部12及び前腕駆動部17が駆動して車椅子1の本体5を持ち上げる際に、後腕駆動部12及び前腕駆動部17の角速度を調整し、後腕駆動部12の基端及び前腕駆動部17の基端がそれぞれ同じ速度で鉛直方向へ持ち上がるように制御することで、車椅子1の前輪2及び後輪3が水平は地面に接地している時と変わらない姿勢で本体5がそのまま上方に持ち上がる。
【0051】
具体的には、昇段時車輪上昇ステップは、前述した数式2及び数式3に基づいて、車椅子1の姿勢を維持しつつ車椅子1の本体5を持ち上げる際の前腕部16の角度の変化量Δθ
1及び後腕部11の角度の変化量Δθ
2を算出し、算出した前腕部16の角度の変化量Δθ
1に基づいて前腕駆動部17の駆動を制御するとともに、後腕部11の角度の変化量Δθ
2に基づいて、前腕駆動部17の駆動を制御し、車椅子1の本体5の姿勢を維持しつつΔHの高さまで車椅子1の本体5を持ち上げる。
【0052】
そして、次に、車椅子1の搭乗者が操作部25の補助ジョイスティック27の操作した場合には(S205:YES)、補助駆動部14を駆動し、後腕輪13を逆回転方向に駆動させることによって、車椅子1を後退させる。一方、操作部25の補助ジョイスティック27が操作されていない場合は処理を待機する(S205:NO)。なお、本発明の車椅子1は搭乗者の操作により補助駆動部14が駆動するものに限られず、昇段時車輪上昇ステップを完了すると、自動的に補助駆動部14が駆動する構成であってもよい。
【0053】
そして、車椅子1が後退して、
図10(A)に示すように、前輪2が段差の上を通過するまで車椅子1を後退させて、搭乗者が補助ジョイスティック27を操作して後退を停止させると、補助駆動部14を停止させて車椅子1の後退を停止させる(S206:YES)。なお、制御部24は、本体5における段差検知部20が検知した段差位置に基づいて前輪2が段差の上を通過した後自動的に補助駆動部14を停止させるものであってもよい。
【0054】
車椅子1を停止させると、制御部3は後腕輪13の駆動を停止させた旨の信号を補助駆動部14から受け取る昇段時後退停止信号受信ステップを行い(S207)、次に、
図10(B)に示すように、後腕駆動部12及び前腕駆動部17を駆動させて、後腕部11及び前腕部16の先端同士が互いに離れる方向に後腕部11及び前腕部16を回転させ、前輪2及び後輪3を徐々に下げて上段29に接地させる昇段時車輪下降ステップを実行する(S208)。この昇段時車輪下降ステップでは、後腕駆動部12と前腕駆動部17とを協調させることにより車椅子1の本体5の傾きを一定に維持する。すなわち、後腕駆動部12及び前腕駆動部17が駆動して車椅子1の本体5を下げる際に、後腕駆動部12及び前腕駆動部17の角速度を調整し、後腕駆動部12の基端及び前腕駆動部17の基端がそれぞれ同じ速度で鉛直方向へ下がるように制御することで、車椅子1の前輪2及び後輪3が水平は地面に接地している時の本体5の姿勢と同じ姿勢でそのまま下方に下がる。具体的には、昇段時車輪下降ステップは、前述の数式2及び数式3に基づいて、車椅子1の姿勢を維持しつつ車椅子1の本体5を下げる際の前腕部16の角度の変化量Δθ1及び後腕部11の角度の変化量Δθ2を算出する。具体的な数式2及び数式3の説明は前述の通りであるので説明を省略する。したがって、制御部24は、数式2及び数式3に、本体5を下げる変化量ΔHを入力することで、本体5をその姿勢を変化させずにに持ち上げる為に必要な前腕部16の角度の変化量Δθ1及び後腕部11の角度の変化量Δθ2を算出することができる。そして、算出した前腕部16の角度の変化量Δθ1に基づいて前腕駆動部17の駆動を制御するとともに、後腕部11の角度の変化量Δθ2に基づいて、前腕駆動部17の駆動を制御し、車椅子1の本体5の姿勢を維持しつつ車椅子1の本体5を下げて、前輪2及び後輪3を接地させる。
【0055】
昇段時車輪下降ステップを完了すると、
図10(C)に示すように、前腕駆動部17及び後腕駆動部12を駆動させて、前腕部16及び後腕部11を先端が持ち上げて、降段処理を完了する。
【0056】
以上のように、本実施形態の車椅子1は、前輪2及び後輪3の上昇及び下降を1回ずつ実行することで段差を昇降することができ、比較的短時間で簡単に昇降することができる。そして、後腕輪13を正逆回転駆動させる補助駆動部14によって、前輪2及び後輪3を持ち上げた状態であっても、接地している後腕輪13を回転駆動させて前進及び後退することができるので、車椅子1の搭乗者が単身で操作して段差の昇降操作を行うことができる。そして、制御部24は、後腕駆動部12と前腕駆動部17とを協調させることにより本体5の傾きを一定に維持するので、昇降動作中の車椅子1の姿勢が安定し、車椅子1の搭乗者に不安感を与えることを抑制できる。
【0057】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。