特開2020-15140(P2020-15140A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-15140鋸の歯の出代調整装置、鋸の歯の出代調整方法および管路の切断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-15140(P2020-15140A)
(43)【公開日】2020年1月30日
(54)【発明の名称】鋸の歯の出代調整装置、鋸の歯の出代調整方法および管路の切断方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/00 20060101AFI20191227BHJP
   B23D 49/10 20060101ALI20191227BHJP
   H02G 9/06 20060101ALI20191227BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20191227BHJP
   B26D 3/08 20060101ALI20191227BHJP
   B26D 1/06 20060101ALI20191227BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20191227BHJP
【FI】
   B26D3/00 603
   B23D49/10
   H02G9/06
   H02G1/06
   B26D3/08 Z
   B26D1/06 A
   F16L55/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-140254(P2018-140254)
(22)【出願日】2018年7月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593027716
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】高鳥 寛之
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢二
(72)【発明者】
【氏名】武田 清充
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 勝馬
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博之
【テーマコード(参考)】
3C040
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
3C040AA12
3C040GG46
3C040LL22
5G352CG05
5G352CK03
5G369BA04
5G369EA02
5G369EA04
(57)【要約】
【課題】複数の厚みの管路に対応することができ、内部のケーブルや収容物を損傷することなく管路の切断作業を行うことが可能な鋸の歯の出代調整装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる鋸の歯の出代調整装置100の構成は、鋸102の歯102aを挿入可能でありそれぞれ深さが異なる複数の溝112a−112dを有するゲージプレート110と、鋸102の歯102aをゲージプレート110の複数の溝112a−112dのうち所定の深さの溝に挿入した状態で鋸102を挟んで固定するストッパー120と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸の歯を挿入可能でありそれぞれ深さが異なる複数の溝を有するゲージプレートと、
前記鋸の歯を前記ゲージプレートの複数の溝のうち所定の深さの溝に挿入した状態で該鋸を挟んで固定するストッパーと、
を備えることを特徴とする鋸の歯の出代調整装置。
【請求項2】
前記ストッパーは、アルミニウム系金属製であることを特徴とする請求項1に記載の鋸の歯の出代調整装置。
【請求項3】
前記鋸の端部は、湾曲していて、前記ストッパーの縁よりも突出していることを特徴とする請求項1または2に記載の鋸の歯の出代調整装置。
【請求項4】
前記ストッパーは、指を引っ掛けるハンドルを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の鋸の歯の出代調整装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の鋸の歯の出代調整装置を用いた鋸の歯の出代調整方法であって、
鋸の歯を前記ゲージプレートの複数の溝のうち所定の深さの溝に挿入し、
前記鋸を挟んで固定する前記ストッパーを該鋸に取り付け、
前記ストッパーの下端を前記ゲージプレートの上面に当接させた状態で前記ストッパーを固定することを特徴とする鋸の歯の出代調整方法。
【請求項6】
ケーブルまたは収容物が収容された管路が設置された現場における管路の切断方法であって、
前記管路のうち切断する区間の両端の2箇所の外周を鋸によって薄肉を残した状態で切断し、
前記残った薄肉に鋸の端を貫通させることにより該薄肉を破断して前記切断する区間の管路を筒状に分断し、
前記分断した管路を前記ケーブルにぶら下げた状態で該分断した管路の下部を軸方向に切断することにより該ケーブルから取り外すことを特徴とする管路の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設した管路を切断する際に用いられる鋸の歯の出代調整装置、かかる出代調整装置を用いた鋸の歯の出代調整方法および管路の切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市における景観への配慮や安全性という観点から地中配線の普及が進んでいる。地中配線では、地中に配管を埋設し、かかる配管内に電力ケーブルや通信ケーブル等(以下、単に電力ケーブルと称する)を敷設する。地中には点検用のマンホールが設けられていて、隣接するマンホール同士の間は、電力ケーブルが配管に収容された管路によって接続されている。
【0003】
管路部分において電力ケーブルを分岐させたり、管路部分に新たにマンホールを建設したり場合には、その箇所の管路を切断する必要がある。このとき、管路(配管)の内部に収容されている電力ケーブルを損傷しないよう、切断作業には細心の注意を払う必要がある。
【0004】
管路を切断する工具としては、特許文献1のようなストッパー付きナイフ刃物を例示することができる。特許文献1では、ナイフ刃物に治具を装着していて、かかる治具は、ナイフ刃物の鋸歯状刃から予め定められた切り込み深さ分だけ上側の位置に設けられて切り込み深さを規制する切り込みストッパー部を有する。管路の切断作業に特許文献1のストッパー付きナイフ刃物を適用すれば、内部の電力ケーブルを損傷することなく管路(配管)を切断することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−87589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、地中配線に用いられる管路の厚みには多くの種類がある。このため、特許文献1のように治具によって切り込み深さを規制する手法であると、治具の切り込み深さが管路の厚みとは異なった場合、切断作業を行うことができない。それを避けるためには、切り込み深さが異なる複数の治具を現場まで持っていく必要がある。すると、作業道具が増えるため、重量が増し、作業者の負担が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、複数の厚みの管路に対応することができ、内部のケーブルや収容物を損傷することなく管路の切断作業を行うことが可能な鋸の歯の出代調整装置、鋸の歯の出代調整方法および管路の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる鋸の歯の出代調整装置の代表的な構成は、鋸の歯を挿入可能でありそれぞれ深さが異なる複数の溝を有するゲージプレートと、鋸の歯をゲージプレートの複数の溝のうち所定の深さの溝に挿入した状態で鋸を挟んで固定するストッパーと、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ゲージプレートの複数の溝のうち、管路の厚みに対応した深さの溝を選択して鋸の歯を挿入してストッパーで鋸を固定することにより、鋸の歯の出代を管路の厚みとほぼ等しく調整することができる。したがって、鋸の歯が管路の内部に収容されている電力ケーブルに接触することなく管路を切断することが可能となり、管路切断時の電力ケーブルの損傷を好適に防止することができる。
【0010】
また上記構成では、ゲージプレートには、深さの異なる複数の溝が形成されている。これにより、1つのゲージプレートで、複数の種類の管路の厚みに合わせて鋸の歯の出代を調整することができる。したがって、1つの出代調整装置で複数の厚みの管路に対応することが可能である。
【0011】
上記ストッパーは、アルミニウム系金属製であるとよい。アルミニウム系金属は柔らかい金属である。このため、ストッパーによって鋸を挟んで(締め付けて)固定した際に、鋸の背がストッパーに食い込み、ストッパーが変形する。これにより、鋸の位置ずれを防ぎ、歯の出代を正確に維持することが可能となる。
【0012】
上記鋸の端部は、湾曲していて、ストッパーの縁よりも突出しているとよい。かかる構成によれば、鋸の歯によって管路を外側から切断していった際に残った管路の内側の薄肉を鋸の端部によって破断することができる。このとき、鋸の端部が湾曲している、すなわち鋭利ではないことにより、仮に鋸の端部が管路の内部に収容されている電力ケーブルと接触したとしても、電力ケーブルを傷つけることがない。したがって、電力ケーブルの損傷をより確実に防止することが可能となる。
【0013】
上記ストッパーは、指を引っ掛けるハンドルを有するとよい。これにより、鋸を引くときに力をかけやすい。したがって出代調整装置を用いた管路の切断作業時の作業性を高めることが可能となる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかる鋸の歯の出代調整方法の代表的な構成は、上記の鋸の歯の出代調整装置を用いた鋸の歯の出代調整方法であって、鋸の歯を前記ゲージプレートの複数の溝のうち所定の深さの溝に挿入し、鋸を挟んで固定するストッパーを鋸に取り付け、ストッパーの下端をゲージプレートの上面に当接させた状態でストッパーを固定することを特徴とする上述した鋸の歯の出代調整装置における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該鋸の歯の出代調整方法にも適用可能である。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明にかかる管路の切断方法の代表的な構成は、ケーブルまたは収容物が収容された管路が設置された現場における管路の切断方法であって、管路のうち切断する区間の両端の2箇所の外周を鋸によって薄肉を残した状態で切断し、残った薄肉に鋸の端を貫通させることにより薄肉を破断して切断する区間の管路を筒状に分断し、分断した管路をケーブルにぶら下げた状態で分断した管路の下部を軸方向に切断することによりケーブルから取り外すことを特徴とする。
【0016】
複数の管路が設置されている現場では、切断対象とする管路の上下方向や左右方向に他の管路が配置されているため、作業空間が極めて狭く、切断作業を効率的に行うことが難しい。そこで上記構成では、上記の出代調整装置を用いた鋸で薄肉を残した状態で管路を切断し、薄肉を破断して管路を分断する。そして分断した管路をケーブルにぶら下げた状態で分断した管路の下部を軸方向に切断する。このとき、分断した管路をケーブルにぶら下げた状態とすると、ケーブルと管路の下部と間に空間が生じる。これにより、管路の下部を切断する際の鋸とケーブルとの接触を防ぐことができる。したがって、狭い空間であっても、ケーブルを損傷することなく、良好に切断作業を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の厚みの管路に対応することができ、内部のケーブルや収容物を損傷することなく管路の切断作業を行うことが可能な鋸の歯の出代調整装置、鋸の歯の出代調整方法および管路の切断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態にかかる鋸の歯の出代調整装置を説明する図である。
図2図1に示す出代調整装置を用いた鋸の歯の出代調整方法を説明する図である。
図3】管路の切断が必要となる現場について説明する図である。
図4】管路部に埋設されている管路が1本の場合の切断方法を説明する図である。
図5】本実施形態にかかる管路の切断方法を説明する図である。
図6】薄肉の破断作業を説明する図である。
図7】ハンドルについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
(鋸の歯の出代調整装置)
図1は、本実施形態にかかる鋸の歯の出代調整装置(以下、出代調整装置100と称する)を説明する図である。図1に示すように、本実施形態の出代調整装置100は、ゲージプレート110およびストッパー120を含んで構成される。ゲージプレート110には複数の溝112a・112b・112c・112dが形成されている。複数の溝112a−112dは、それぞれ深さが異なり、鋸102の歯102aを挿入可能である。溝の深さ(鋸歯の出代)は、例えば、3mm、3.5mm、4mm、4.5mmなどである。
【0021】
ストッパー120は、鋸102の歯102aをゲージプレート110の複数の溝112a−112dのうち所定の深さの溝に挿入した状態で鋸102を挟んで(締め付けて)固定する。ストッパー120は、2つの挟持片122を含んで構成され、2つの挟持片122はボルト104によって接続される。
【0022】
(鋸の歯の出代調整装置)
図2は、図1に示す出代調整装置100を用いた鋸の歯の出代調整方法(以下、単に出代調整方法と称する)を説明する図である。本実施形態の出代調整方法では、まず図2(a)に示すようにゲージプレート110の複数の溝112a−112dのうち所定の深さの溝(図2では112cを例示)に鋸102の歯102aを挿入する。そして、ストッパー120を鋸102に取り付ける。
【0023】
次に、図2(b)に示すようにストッパー120の下端をゲージプレート110の上面110aに当接させた状態でボルト104をナット106に締結し、ストッパー120を鋸102に固定する。これにより、図2(c)に示すように、鋸102がストッパー120の挟持片122に挟まれた状態で固定され、鋸102の歯102aの出代が溝112cの深さと等しく調整される。
【0024】
上記構成によれば、ゲージプレート110の複数の溝112a−112dのうち、切断対象となる管路の厚みに対応した深さの溝を選択して鋸102の歯102aを挿入してストッパー120で鋸102を固定することにより、鋸102の歯102aの出代を管路の厚みとほぼ等しく調整することができる。したがって、鋸102の歯が管路の内部に収容されている電力ケーブルに接触することなく管路を切断することが可能となり、管路切断時の電力ケーブルの損傷を好適に防止することができる。
【0025】
また上述したゲージプレート110では、深さの異なる複数の溝112a−112dが形成されている。これにより、1つのゲージプレート110で、複数の種類の管路の厚みに合わせて鋸102の歯102aの出代を調整することができる。したがって、1つの出代調整装置100で複数の厚みの管路に対応することが可能である。
【0026】
上述したストッパー120は、アルミニウム系金属製であるとよい。アルミニウム系金属は柔らかい金属であるため、ストッパー120によって鋸102を挟んで固定した際に、鋸102の背がストッパー120に食い込み、ストッパー120が変形する。これにより、鋸102の位置ずれを防ぎ、調整後の鋸102の歯102aの出代を正確に維持することが可能となる。
【0027】
またストッパー120は、指を引っ掛けるハンドルを有するとよい。これにより鋸を引くときに力をかけやすい。したがって、出代調整装置100を用いた管路の切断作業時の作業性を高めることが可能となる。更に、図1に示すように、鋸102の端部は、湾曲していて、ストッパー120の縁よりも突出しているとよい。これにより、管路の内側の薄肉を鋸の端部によって破断することができる。なお、これらの詳細については後述する。
【0028】
(管路の切断方法)
次に、本実施形態にかかる管路の切断方法を説明する。図3は、管路の切断が必要となる現場について説明する図である。図3(a)に示すように、地中配線では、内部に電力ケーブル202を収容した配管(以下、管路204と称する)によって管路部210が形成されている。地中では、この管路部210によって隣接するマンホール200a・200b同士が接続されていて、かかるマンホール200a・200b内のケーブル接続部212において電力ケーブル202同士が接続されている。
【0029】
図3(a)に示す地中配線において、管路部210において電力ケーブル202を分岐させる場合、かかる管路部210の管路204を切断し、内部に収容されている電力ケーブル202に新たな電力ケーブル202aを接続する必要がある。そこで図3(b)に示すように新たなマンホール200cを建設し、管路204を切断し、新たなマンホール200c内において分岐用接続部214において電力ケーブル202に新たな電力ケーブル202bを接続する。このとき、管路204の内部に収容されている電力ケーブル202を損傷しないよう、管路204の切断作業には細心の注意を払う必要がある。
【0030】
図4は、管路部210に埋設されている管路204が1本の場合の切断方法を説明する図である。管路部210に埋設されている管路204が1本(単条)の場合、かかる管路204の上方には他の管路は存在しない。このため、管路204の上方において十分な作業スペースを確保することができる。
【0031】
そこで、管路204が1本の場合には、まず図4(a)に示すように、切断工具232によって管路204の上部204aを半径方向に切断し、その後、サンダー234によって上部204aを軸方向に切断する。これにより、図4(b)に示すように管路204の上部に開口204bが形成される。このとき、図4(a)に示すように電力ケーブル202は管路204の下部に位置するため、上部204aに開口204bを設ける作業は電力ケーブル202との接触が生じにくい。
【0032】
管路204の上部に開口204bを形成したら、図4(b)に示すように、開口204bから管路204と電力ケーブル202の間に防護材206(通常は鋼板)を差し込む。そして、切断工具232によって管路204の下部を切断することにより、管路204が切断される。このとき、管路204の下部は防護材206によって保護される。したがって、切断工具232との接触による電力ケーブル202の損傷を好適に防ぐことができる。
【0033】
上述したように、管路204が1本の場合には、電力ケーブル202の損傷を防ぎつつ、比較的容易に管路の切断作業を行うことができる。これに対し、管路204が複数(多条)の場合、管路204の上方に他の管路が存在することがある。すると、管路204の上部204aに開口204bを形成する作業がしづらいため、防護材206による電力ケーブル202の保護ができない。そこで本実施形態では、管路204が複数(多条)の場合であっても、内部の電力ケーブル202を損傷することなく管路204の切断作業を行うことが可能な管路の切断方法を提供する。
【0034】
(管路の切断方法)
図5は、本実施形態にかかる管路204の切断方法(以下、切断方法と称する)を説明する図である。本実施形態では、図5(a)に示すように3列2行の6つの管路204のうち、下段の中央の管路204を切断する場合を例示して説明する。ただし、これに限定するものではなく、本実施形態の切断方法は、管路の数に関係なく適用することが可能である。また、以下の説明では、管路204のうち、切断する区間(図5(a)においてハッチングにて図示)を区間205と称する。
【0035】
本実施形態の切断方法では、まず先に説明した出代調整装置100を用いた出代調整方法によって、鋸102の歯102aの出代を調整する(図2参照)。このとき、ゲージプレート110の複数の溝112a−112dのうち、管路204の厚みよりも若干深さが浅い溝を選択し、その溝の深さに合わせて鋸102の歯102aの出代を調整する。
【0036】
鋸102の歯102aの出代を調整したら、図5(b)に示すように、管路204のうち切断する区間205の両端の2箇所の外周を鋸102によって切断する。このとき、鋸102の歯102aの出代は管路204の厚みよりも若干薄く調整されているため、区間205は、薄肉205a(図6参照)を残した状態で切断される。したがって、外周の切断時に鋸102が電力ケーブル202に接触することがなく、電力ケーブル202の損傷を防ぐことができる。
【0037】
次に、区間205の内側に残った薄肉205aに鋸102の端部102b(図1参照)を貫通させる。これにより、薄肉205aが破断され、図5(c)に示すように、切断する区間205(管路204)を筒状に分断され、区間205が電力ケーブル202にぶら下がった状態となる。
【0038】
図6は、薄肉205aの破断作業を説明する図である。本実施形態の出代調整装置100では、図1および図6に示すように、鋸102の端部102bは、湾曲していて、ストッパー120の縁よりも突出している。これにより、図6に示すように、鋸102の端部102bを区間205に差し込むことにより、鋸102の歯102aによって外周を切断していった際に残った内側の薄肉205aを好適に破断することができる。
【0039】
このとき、鋸102の端部102bは、湾曲している、すなわち鋭利ではない。これにより、仮に鋸102の端部102bが電力ケーブル202と接触したとしても、電力ケーブル202を傷つけることがない。したがって、電力ケーブル202の損傷をより確実に防止することが可能となる。
【0040】
図7は、ハンドルについて説明する図である。上述したように本実施形態の出代調整装置100では、ストッパーにハンドルを設けている。詳細には、図2および図7に示すように、ボルト104のネジ部104aの長さをストッパー120およびナットの厚みよりも長く設定することにより、ネジ部104aをハンドルとして機能させる。これにより、図7に示すように、作業者は、区間の切断作業を行う際にハンドルであるネジ部に指(破線にて図示)を引っかけることができる。これにより、出代調整装置100を用いた管路204の切断作業時の作業性を高めることが可能となる。
【0041】
再度、図5を参照する。上述したように区間205の薄肉205aを破断したら、図5(c)に示すように分断した区間205(管路204)を電力ケーブル202にぶら下げた状態で、分断した区間205の下部をサンダー234によって軸方向に切断する。これにより、切断対象の区間205を電力ケーブル202から取り外すことができる。
【0042】
このとき、図5(c)に示すように、分断した区間205を電力ケーブル202にぶら下げた状態とすることで、電力ケーブル202と区間205の下部と間に空間が生じる。これにより、区間205の下部を切断する際の鋸102と電力ケーブル202との接触を防ぐことができる。したがって、狭い空間であっても、電力ケーブル202を損傷することなく、良好に切断作業を行うことが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では、鋸102の歯102aの出代を管路204の厚みよりも若干薄く調整すると説明したが、仮に薄肉205aを鋸102の端部102bで破断できない場合には、ゲージプレート110の複数の溝112a−112dのうち、先に調整した深さの次に深い溝を用いて鋸102の歯102aの出代を調整するとよい。また管路204の厚みが不明である場合には、ゲージプレート110の複数の溝112a−112dのうち、最も浅い溝を用いて調整し、鋸102の端部102bで薄肉を破断できなかったら、次に深い溝を用いて調整するという作業を繰り返すことが好ましい。
【0044】
更に、本実施形態では、電力ケーブル202を収容する管路204を切断する場合を例示して説明したが、これに限定するものではない。例えば、電力ケーブル202以外のケーブルを収容する管路を切断する場合や、ケーブル以外の収容物を収容する管路を切断する場合においても本発明の管路の切断方法を適用することができる。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
おまじない入れる
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、地中に埋設した管路を切断する際に用いられる鋸の歯の出代調整装置、かかる出代調整装置を用いた鋸の歯の出代調整方法および管路の切断方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
100…出代調整装置、102…鋸、102a…歯、102b…端部、104…ボルト、104a…ネジ部、110…ゲージプレート、110a…上面、112a…溝、112b…溝、112c…溝、112d…溝、120…ストッパー、122…挟持片、200a…マンホール、200b…マンホール、200c…マンホール、202…電力ケーブル、202a…電力ケーブル、202b…電力ケーブル、204…管路、204a…上部、204b…開口、205…区間、205a…薄肉、206…防護材、210…管路部、212…ケーブル接続部、214…分岐用接続部、232…切断工具、234…サンダー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7