【解決手段】縫合装置は、近位端部、遠位端部を有する細長い部材と、1つ又は複数の遠位アームと、1つ又は複数の近位延長部と、1つ又は複数の針を備えることができる。装置が使用される間、且つ処置が生物学的構造の中で実行される間、止血を維持する、又は実質的に維持するために、シースを装置と共に使用してもよい。
前記第2の複数のアームが、4本のアームを備え、各アームが、前記第1の複数のアームのうちの対応するアームと位置合わせされる、請求項2又は3に記載の縫合システム。
前記第1の複数のアームが前記第1の位置から前記第2の位置に移動するとき、前記第1の複数のアームの前記それぞれの前記自由端が、近位方向に移動する、請求項1から5までのいずれか一項に記載の縫合システム。
前記針キャリッジが、前記第2の複数のアームのうちのアームの近位表面上のデテントと嵌合するように構成される遠位端部に少なくとも1つのデテントを備える、請求項7から11までのいずれか一項に記載の縫合システム。
前記針キャリッジの遠位端部の前記少なくとも1つのデテントが、突出部であり、前記第2の複数のアームのうちのアームの近位表面上の前記デテントが、凹部である、請求項12に記載の縫合システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
止血を維持しながら、又は実質的に維持しながら、生物学的構造で、その内部で、又はその中へ縫合糸を適用する、及び/又は閉じられた開口を縫合するのに使用される縫合装置及び方法の実施例を本明細書に記載する。縫合装置及び方法を使用して、止血を維持しながら、又は実質的に維持しながら、外科的処置を実行する前に縫合糸を設置し、処置用アクセスの準備を行うことができる。次いで、設置された縫合糸を使用して、何らかの装置又は器具が引き出される間、開口をしっかり締めて、処置の過程の間、開口の内側に装置又は器具が無くても決して開かないように、最後の装置又は器具が開口から離れても開口を閉じることができる。本明細書に記載する実施例は、大動脈などの生物学的構造の外側の空間が限定的な生物学的構造へのアクセスを提供する、及び/又はその生物学的構造へのアクセス用開口を縫合するのに用いることができる。
【0015】
本明細書に記載する実施例では、開示される装置は、大動脈への開口を閉じるために縫合糸を設置するのに使用されるが、これらの装置は、一般的な大動脈又は血管系の範囲での適用に限定されるわけではない。大動脈は、胸骨切開又は限定的な開胸によってアクセスすることができる、又は代替的に、装置は、トロカール又は他の要素を通って胸腔に入り、その後、典型的にはガイド・ワイヤに追従することで、大動脈の穿刺孔に向かって誘導されることができる。
【0016】
いくつかの実施例では、縫合装置を使用して、さまざまな、他の組織開口、管腔、中空器官、又は自然の若しくは外科的に作成された体内の通路を閉じる、又は縮小することができる。いくつかの実施例では、縫合装置を使用して、補綴、合成物質、又は埋め込み可能な装置を体内で縫合することができる。例えば、装置を使用して、体の中で綿球を縫合ことができる。
【0017】
生物学的構造の開口を縫合するのに使用することができる縫合装置及び方法の更なる詳細は、2011年8月4日公開の米国特許出願公開第2011/0190793(A1)号で明らかになっており、同出願をそのまま参考文献として本明細書に組み込み、その複写を取り囲み、本明細書の一部として含む。前述の出願公開に記載される特徴及び処置は、本明細書に記載される実施例に組み込むことができる。
【0018】
図1は、外科的処置を、止血を維持しながら生物学的構造の中で又はそれを貫通させて実行することを予想して、生物学的構造の壁を貫通させて縫合糸を挿入するのに使用することができる縫合装置10の1つの実施例を示す。いくつかの実施例では、装置を使用して、縫合糸を大動脈などの血管の壁を貫通させて挿入することができる。装置は、1つ又は複数の細長い本体を備えることができ、近位端部及び遠位端部を有する。近位端部に、縫合装置は、装置の各種構成要素を制御するのに使用することができるボタン又はレバーなどのさまざまな操作要素22を備えたハンドル20を含むことができる、ハンドル及びアクチュエータ・ロッドなどの関連構成要素に関する更なる詳細は、2008年10月30日公開の米国特許出願公開第2008/0269786号で提供されており、同出願をそのまま参考文献として本明細書に組み込む。
【0019】
縫合装置10の遠位端部に、縫合装置は、遠位組立体30を含むことができる。遠位組立体は、遠位端部及び近位端部を有する細長い本体40を含むことができる。遠位組立体は、1つ又は複数の遠位縫合アーム50、及び遠位縫合アームに近接して配置される1つ又は複数の近位延長部即ちアーム60を更に含むことができる。装置が組み立てられると、装置は、細長い本体の少なくとも一部を取り囲むシース32、及び細長い本体の少なくとも一部を同様に取り囲む外側スリーブ即ち針キャリッジ70を更に含むことができる。更に後述するように、いくつかの実施例では、針キャリッジは、1つ又は複数の縫合糸キャッチ機構即ち針を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施例では、シース及び/又は針キャリッジは、細長い本体に対して軸方向に移動することができる。いくつかの実施例では、装置が組み立てられると、針キャリッジ70は、シース32の少なくとも一部を取り囲むことができる。針キャリッジは、シース及び/又は細長い本体に対して回転することができれば好ましいが、いくつかの実施例では、針キャリッジは、シース及び/又は細長い本体に対する固定した方向付けを有することもできる。いくつかの実施例では、更に後述するように、縫合装置は、装置の操作者が、針キャリッジが所望の位置にいつ移動及び/又は回転したか判定することができる、割出し機能又は位置合わせ機能を提供する機械的停止部及び/又はデテントなどの要素を有することができる。
【0021】
図2A及び
図2Bは、遠位組立体30の透視図を示す。図示するように、いくつかの実施例では、遠位組立体は、複数の遠位アーム50、及び同様にアームであってもよい複数の近位延長部60を含むことができる。
図2Aは、後退位置にある遠位アーム及び近位アームを示し、この図では、アームは少なくとも部分的に、細長い本体40の中にある。
図2Bでは、延長位置にある遠位アーム及び近位アームが示され、この図では、アームが細長い本体から外へ延びている。いくつかの実施例では、図示するように、アームは、細長い本体から約90度の角度で延びることができるが、他の実施例では、アームが、90度未満の角度で延びることもある。いくつかの実施例では、延長位置にある近位アームが、細長い本体から約90度の角度で延びてもよく、その一方で、延長位置にある遠位アームが、細長い本体から90度未満の角度で延びてもよい。いくつかの実施例では、遠位アームが、延長位置にある細長い本体から約90度で延びてもよく、その一方で、近位アームが、延長位置にある細長い本体から90度未満の角度で延びる。
【0022】
さまざまな実施例では、遠位組立体30は、さまざまな数のアーム50、60を有することができる。いくつかの実施例では、遠位組立体は、互いに約90度の間隔をあけて離れて配置される4本の遠位アーム50と、互いに約90度の間隔をあけて配置される4本の近位アーム60とを有する。いくつかの実施例では、遠位組立体は、2本の遠位アームなど、4本より少ない遠位アーム50、又は4本の遠位アームより多い遠位アーム50を備えていてもよい。いくつかの実施例では、遠位アームごとに、細長い本体の周囲で第1の遠位アームから180度の位置に配置される第2の遠位アームが存在することができる。
【0023】
いくつかの実施例では、遠位組立体は、2本の近位アームなど、4本より少ない近位延長部即ちアーム60、又は4本の近位アームより多い近位アーム60を備えていてもよい。いくつかの実施例では、近位アームごとに、細長い本体の周囲に第1の近位アームから180度の位置に配置される第2の近位アームが存在することができる。いくつかの実施例では、遠位組立体は、遠位アームと同じ数の近位アームを有するが、いくつかの実施例では、それらの数は異なっている。いくつかの実施例では、各近位アームは、細長い本体40の長手軸と平行な線に沿って、対応する遠位アームと一列に並んでいることがある。
【0024】
いくつかの実施例では、近位延長部即ちアーム60は、細長い本体40の一部の周辺で円周方向に延びる1つ又は複数の延長部であることがある。いくつかの実施例では、近位延長部はそれぞれ、細長い本体の円周のおよそ4分の1、3分の1、又は半分の回りに延びることができる。いくつかの実施例では、近位延長部60は、単一の延長部であることがある。単一の延長部は、細長い本体の円周を包み込むことができる。先に述べた通りに、近位延長部は、延長部が細長い本体の中にある後退位置、及び延長部が細長い本体から出て延びている延長位置を有することができる。更に先に述べた通りに、延長位置にあるとき、延長部は、細長い本体から90度などのさまざまな角度で延びることができる。
【0025】
図2A及び
図2Bで更に示すように、いくつかの実施例では、細長い本体40は、先細の遠位先端42を含むことができる。先細の先端は、細長い本体を生体組織の中へ、又はそれを貫通させて挿入するとき役立つことができる。更に以下に述べるように、細長い本体は、ガイド・ワイヤを受けるのに使用することができる中央管腔44を更に有することができる。
【0026】
図2Bに示すように、遠位アーム50は、縫合アームの遠位端部に1つ又は複数の縫合糸マウント即ちクラスプ52を含む遠位縫合アーム50であってもよい。縫合クラスプ52は、更に後述するように、縫合糸部を取り外し可能に保持するように構成することができる。いくつかの実施例では、縫合糸部は、細長い本体の内部からアーム50の長さに沿って縫合クラスプへと通っていることができる。図示するように、遠位縫合アーム50及び近位延長部即ちアーム60が、後退位置から延長位置まで、又は延長位置から後退位置まで回転するとき、アームの自由端は、細長い本体の遠位端部に向かって移動する。いくつかの実施例では、縫合アーム50及び/又は延長部即ちアーム60は、アームが延長位置から後退位置まで回転する際、アームの自由端が縫合装置の近位端部に向かって移動するように、後退位置から延長位置まで、又は延長位置から後退位置まで回転するように構成することができる。いくつかの実施例では、アームは、後退位置から延長位置まで、又は延長位置から後退位置まで摺動する、又は他の方法で移動することができる。
【0027】
いくつかの実施例では、遠位縫合アーム50は、後退位置から延長位置まで、又は延長位置から後退位置まで同時に移動することができる。いくつかの実施例では、アーム50は、独立して移動することができる。同様に、いくつかの実施例では、近位延長部即ちアーム60は、独立して又は同時に移動することができる。
【0028】
いくつかの実施例では、近位延長部即ちアーム60は、遠位縫合アーム50より短いことがある。いくつかの実施例では、近位延長部即ちアーム60が延長位置にあるとき、それらの遠位端部は、遠位縫合アームが延長位置にあるときの遠位縫合アーム50の遠位端部より、細長い本体に近いことがある。このことは、装置が生物学的構造の外側に必要とする空間を最小化するのに役立つことができる。
【0029】
図3Aから
図3Dは、針キャリッジ70のさまざまな実施例を示す。こうした実施例のいずれかに関して検討されるさまざまな特徴、構成要素、又は他の要素は、それが出現する特定の実施例に限られるものではなく、いずれかの他に記載される実施例に関して図示又は検討される特徴、構成要素、又は要素と組み合わせて含むことができると理解されたい。一般的には、外側スリーブ即ち針キャリッジ70は、中央管腔72及び1つ又は複数の外側管腔74を含む。外側管腔の1つ又は複数は、以下で更に詳細に例示及び記載されるように、縫合糸キャッチ機構即ち針90を収容するのに使用することができる。いくつかの実施例では、針キャリッジ70は、針キャリッジの中心軸を中心に対称的に間隔をあけて配置される4つの外側管腔を有することができる。いくつかの実施例では、針キャリッジは、4つより多い、又は4つより少ない外側管腔を有することができる。いくつかの実施例では、針キャリッジは、存在する遠位縫合アーム50と同じ数の外側管腔を有することができる。
【0030】
いくつかの実施例では、
図3Aに示すように、針キャリッジ70は、第1の区間76A及び第2の区間76Bなどの1つ又は複数の区間を有することができる。第1の区間及び第2の区間は、後述するように、キャリッジを縫合装置の細長い本体の周囲から取り除くことができるように、第1の区間及び第2の区間をばらばらに壊して互いに分離させることを可能にする1つ又は複数の脆弱区域77によって分離することができる。
【0031】
いくつかの実施例では、脆弱区域77は、第1の区間及び第2の区間が一体ではないように、完全な断層状であることがある。いくつかの実施例では、操作者がそれらを分離することを決めるまで、第1の区間及び第2の区間を一緒に維持するのにクラスプ即ちリング78を使用することができる。いくつかの実施例では、針キャリッジは、脆弱区域即ち完全な断層によって分離される複数の区間を有することができる。
【0032】
いくつかの実施例では、
図3Bに示すように、針キャリッジ70は、遠位接面に沿って1つ又は複数のキー即ちデテント75を含むことができる。以下でより詳述するように、デテントを使用して、針キャリッジを近位延長部即ちアーム60と位置合わせするのを助けることができる。いくつかの実施例では、
図3Cに示すように、針キャリッジは、遠位端部にスプレッダ区間80を含むことができる。スプレッダ区間を使用して、針が針キャリッジの中心軸に対して所望の角度で出るように、外側管腔74から出る針を反らせるのを助けることができる。いくつかの実施例では、スプレッダ区間は、針キャリッジの本体71に接続するリング又は他の取付物であることができる。いくつかの実施例では、スプレッダ区間は、針キャリッジの本体71と一体化して形成することができ、且つ針キャリッジの本体71の一部であることができる。
【0033】
いくつかの実施例では、
図3Dに示すように、針キャリッジ70は、中央管腔72の中へ突き出る1つ又は複数のキー即ちデテントを含むことができる。いくつかの実施例では、キー即ち内部へ突き出るデテントは、更に後述するように、細長い本体上の凹部と相互作用して、割出し点として機能することができる。
【0034】
図4Aから
図4Dは、
図3Aから
図3Dに例示する実施例の断面図をそれぞれ示す。
図4Aから
図4Dは、外側管腔74の中に配置される縫合糸キャッチ機構即ち針90を示す。対応する外側管腔の中で後退位置にある針が示される。いくつかの実施例では、針は、以下で更に詳述するように、針の遠位先端が管腔から出て延びている展開位置に移動することができる。
図4Cは、スプレッダ区間80を示す。スプレッダ区間は、針が展開位置に移動するとき、針を針キャリッジ70から離れる方向に反らすのに使用されるスプレッダ傾斜部即ち角度付き面82を含むことができる。
図4Dに示すように、いくつかの実施例では、キー即ちデテント75は、針キャリッジ70の中央管腔72の中に延びている。いくつかの実施例では、キー75は、角度の付いた、又は斜めの面73を有することができる。角度付き面は、更に後述するように、キー75が、細長い本体上の対応する凹部から移動して出るのを助けることができる。
【0035】
図5は、遠位縫合アーム50の1つの実施例を示す。先に述べた通りに、縫合アームは、縫合糸部(図示せず)を取り外し可能に保持することができる縫合糸マウント即ちクラスプ52を含むことができる。縫合クラスプは、アームの中に延在する開口を含むことができ、それによって、縫合糸キャッチ機構即ち針が、延長時に開口を通過し、次いで、後退時に縫合糸を捕捉して、針で縫合糸を引き出すことが可能になる。図示のように、いくつかの実施例では、遠位縫合アームは、尖ったエッジ54、又は縫合アームが延長位置にあるとき、細長い本体の近位端部に面する表面上の、何らかの鈎先の針先端刻み付き部又は他の粗面部を含むことができる。尖ったエッジ又は他の粗面部は、後述するように、縫合アームを体組織に当たる位置に保持するのに役に立つことができる。
【0036】
図6A及び
図6Bは、近位延長部即ちアーム60の1つの実施例を示す。
図6Aは、アームの上面図を示し、
図6Bは、
図6Aの線6B−6Bに沿うアームの断面を示す。いくつかの実施例では、近位アームは、針受け区間即ち針誘導区間64を有する針受け端部62を含むことができる。針受け端部は、針誘導区間を少なくとも部分的に取り囲み、針誘導区間を通過する針の横方向運動を制限する1つ又は複数の延長部68を含むことができる。
【0037】
いくつかの実施例では、近位延長部即ちアーム60は、スプレッダ傾斜部即ち角度付き面66を含むことができる。これを使用して、針誘導区間64を通る針を反らして、縫合糸マウント又は遠位アームのクラスプの方へ向けるのを助けることができる。更に
図6Bに示すように、いくつかの実施例では、近位アーム60は、針キャリッジ70のデテント75と嵌合して、外側管腔74と針誘導区間64の間の位置合わせを確実にするのに使用することができるデテント嵌合凹部65を含むことができる。いくつかの実施例では、アームは、突出デテントを含むことができ、針キャリッジは、1つ又は複数の対応するデテント嵌合凹部を有することができる。いくつかの実施例では、突出デテントと凹部デテントの係合は、針キャリッジが細長い本体40に対して所望の位置にあることを装置の操作者に知らせることができる。
【0038】
いくつかの実施例では、縫合装置の細長い本体40は、近位延長部即ちアームの代わりに、又はそれに加えて1つ又は複数のキー即ちデテント凹部45を有することができる。いくつかの実施例では、キー凹部のそれぞれが、針キャリッジ上の対応するキー突起と嵌合するように構成することができる。
【0039】
図7は、針キャリッジが細長い本体40に対していつ所望の位置にあるか識別するのを助けるため、近位延長部の代わりに複数のキー凹部を有する遠位組立体30の一部の概略断面図を示す。図示するように、デテント75は、凹部45に適合することができる。いくつかの実施例では、針キャリッジ70は、図示する位置に付勢することができるが、外向きに撓むことがある。このような実施例では、針キャリッジを図示する位置から近位方向に移動するとき、デテント75上の角度付き面73は、凹部45の隅部に接触することができ、この隅部が、デテントを外向きに押して、キャリッジが後退することが可能になる。更に、シース32が、キャリッジ70に対して遠位方向に移動されるとき、シースは、角度付き面73に接触して針キャリッジを外向きに撓ませることができ、シースがデテント75を通り越すことが可能になる。
【0040】
いくつかの実施例では、
図7で更に示されるように、針90は、縫合クラスプ52と長手方向に位置合わせすることができる。いくつかの実施例では、針は、縫合クラスプ52の内側の位置と長手方向に位置合わせさせことができ、先に述べた通りに、針キャリッジは、スプレッダ区間を含むことができる。更に、
図7は、縫合糸部14が、細長い本体40から外向きに延びて、それらの遠位端部が縫合クラスプ52内にあって適所でループ化している実施例を示す。
【0041】
図8から
図17は、縫合装置10を使用して、縫合糸を大動脈2などの生物学的構造の開口3の近くの組織を貫通させて設置する1つの方法を示す。更に、装置を使用して、止血を維持しながら又は止血をほぼ維持しながら、他の装置が入ることができるように、シースを開口に通して配置することができる。図示する方法では、縫合装置10は、大動脈にアクセスするため、胸壁のトロカールを通って胸部空洞に挿入されるが、先に論じたように、縫合装置は、さまざまな他の生物学的構造と共に使用することもできる。装置10は、大動脈壁2の穿刺を通るガイド・ワイヤ12に追従することができ、装置が更に大動脈に入る際に、先細の遠位端部42が開口3を広げる。装置は、遠位縫合アーム50が壁2の穴3を完全に通過して完全に大動脈の中に入るまで、挿入されれば好ましい。
【0042】
図9に示すように、遠位アーム50が大動脈の中に完全に入った後で、アームは、延長位置に移動させることができる。次いで、装置の操作者は、
図10に示すように、アームが大動脈壁2と接触するまで、装置を引き出すことができる。いくつかの実施例では、縫合アーム50の尖ったエッジ又は粗面部は、先に述べた通り、遠位組立体30を適位置に維持するのを助けることができる。
図11では、近位アーム60は、胸部空洞の中で延長位置に移動されており、その時、装置は、遠位アームが大動脈壁2に接触して固定されながら、両方とも延長位置にあるアームのセットを有している。上述のように、遠位アーム及び近位アームは、位置合わせされることが好ましい。
【0043】
近位アーム60が延ばされた後で、針キャリッジ70は、
図12に示すように、近位アーム60に接触する、又はそれに隣接するまで前進することができる。いくつかの実施例では、近位アーム60は、割出し点の役割を果たすことができ、装置の操作者は、近位アームと接触することに依拠し、針キャリッジが細長い本体40の長さに沿って所望の位置へ前進したと示すことができる。先に述べた通り、いくつかの実施例では、針キャリッジ及び近位アームは、針キャリッジが近位アームに対して円周方向に適切に整列されていることを確実にするのを助けることができる、対応するデテントを有することができる。近位アーム及び遠位アーム50が位置合わせされている場合には、針キャリッジを近位アームと位置合わせすることにより、針キャリッジが遠位アームとも位置合わせされる。いくつかの実施例では、適正な位置合わせを確実にするのに、他の位置合わせ機構を使用することもできる。いくつかの実施例では、針キャリッジの外側管腔は、対応する近位アーム及び対応する遠位アームとそれぞれ位置合わせすることができる。
【0044】
図13Aに示すように、針キャリッジ70が近位アーム60に接触して、又はそれの近くに配置され、所望の通りに整列された後で、針90は、針が針キャリッジの中にあり、針の遠位先が近位アームに近接している後退位置から、針の遠位先が、針キャリッジから出て、対応する縫合糸マウントの中へ延びている展開位置に延びることができる。図示するように、展開位置にある針は、大動脈壁2を通過して、対応する縫合糸マウント即ちクラスプ52に到達しなければならない。
【0045】
先に述べた通り、針キャリッジは、針キャリッジ及び細長い本体の長手軸から外向きの角度に針を反らすことができるスプレッダ即ちデフレクタ区間を含むことができる。いくつかの実施例では、針キャリッジの中にスプレッダ区間を有するのではなく、近位アーム60は、上記のように、針を外向きに反らすのに使用することができるスプレッダ傾斜部即ち角度付き面66を含むことができる。いくつかの実施例では、針キャリッジ70及び近位アーム60は共に、針が後退位置から展開位置に移動するとき、針を反らすのを助けるスプレッダ傾斜部即ち角度付き面を有することができる。
【0046】
例示する実施例において、遠位組立体30の各種構成要素間の関係をより明確にするため、
図13Bは、
図13Aにおいて13Bと特定される区間の断面図を示す。図示するように、縫合糸キャッチ機構即ち針90は、展開位置にあり、針キャリッジ70の外側管腔74から外へ延びている。近位アーム60上のスプレッダ傾斜部即ち角度付き面66は、細長い本体から、且つ針キャリッジから離れる方向に針を反らしている。針キャリッジ70の中央管腔72の中には、シース32及び細長い本体の壁46がある。
【0047】
針が後退して針キャリッジの中に戻るとき、
図14に示すように、針は、針と一緒に縫合糸端を引き出すように、展開位置にある針は、縫合クラスプ52の中に取り外し可能に配置される縫合糸14と係合することができる。いくつかの実施例では、針は、後退位置から展開位置に(及び展開位置から後退位置に)同時に移動することができる。いくつかの実施例では、針は、位置の間を順次移動することができる。いくつかの実施例では、針キャリッジは、第1の縫合糸クラスプから縫合糸端を捕捉し、針キャリッジと共に回転して第2の縫合糸クラスプと位置合わせされ、次いで第2の縫合糸クラスプから縫合糸端を捕捉する単一の針だけを有してもよい。
【0048】
針が始動した後で、縫合糸を、大動脈壁2を貫通させて引き出せば、針キャリッジを胸部空洞内から引き出し、それと一緒に縫合糸端を引き出すことができる。
図14に示すように、針に捕捉された縫合糸の端部は、細長い本体40の内部から大動脈壁2を貫通して、次いで、胸壁4を通るトロカール6を通るなどして本体空洞から出る。針が引き出された後で、針キャリッジは、じゃまにならない位置に移動させることができる。いくつかの実施例では、これは、針キャリッジを本体空洞から出して近位方向に移動させることを含むことができる。いくつかの実施例では、針キャリッジは、先に述べた通り、異なる区間に分離させて、細長い本体の周辺から完全に取り除くことができる。
【0049】
図15に示すように、近位アーム60は、移動して後退位置に戻ることができ、そして、シース32は、大動脈壁2の穴を通って遠位方向に前進することができる。シースは、遠位縫合糸アーム50に接触するまで前進され、したがって、シースが大動脈壁の穴の中にあることの確認を操作者に提供することが好ましい。シースが穴の中にあれば、シースが止血を維持すると信頼することができ、遠位アーム50を後退位置に戻すことができ、
図16に示すように、縫合装置を、シースの中から取り外すことができる。したがって、縫合装置の中にあった縫合糸部14は、シースを通過して本体空洞の外に出て、残存する縫合糸が、説明に従って先に図示したように通過する。
【0050】
いくつかの実施例では、約180度互いに間隔をあけて配置される縫合糸アーム60は、単片の縫合糸を予め組み込むことができる。このような実施例では、装置がシース32から取り外されるとき、シースを通って延びる縫合糸部は、まとめて結合され、縫合糸の端部だけが、シースの外側に延びる。シースの外側に延びる端部は、引っ張ることができ、結合された縫合糸部は、
図17に示すようにシースを通して血管の中に引き入れることができる。
【0051】
いくつかの実施例では、単片の縫合糸が使用されずに、シースの中を通る縫合糸部を、まとめて固定する必要がある場合、シースの外側を通る縫合糸の端部を引っ張る前に、縫合糸部を、結び目、又は他の装置でまとめて固定することができる。縫合糸を結合するための装置に関する詳細は、2011年8月4日公開の米国特許出願公開第2011/0190793号で明らかになっており、同出願をそのまま参考文献として本明細書に組み込み、その複写を取り囲み、本明細書の一部として含む。
【0052】
いくつかの実施例では、シースを通過する縫合糸端は、一対ずつ、まとめて固定することができ、各対は、細長い本体40の円周の回りに約180度の間隔をあけて離して配置されるアーム50に取り外し可能に取り付けられた縫合糸端を有する。残留する自由な縫合糸端の1つ又は複数を引っ張ることにより、
図17に示すように、結合された縫合糸14を、シースを通して血管の中に引き入れることができる。
図17は、1つの縫合糸だけを示しているが、図示する平面以外の平面では、他の縫合糸を通すこともできる。いくつかの実施例では、第2の縫合糸は、図示する横断面に対して実質的に垂直な平面において大動脈を貫通することができる。
【0053】
縫合糸を結ぶための手順及び開口を閉じるための方法に関する詳細は、2013年5月9日出願の、PCT/US2013/040418で明らかになっており、同出願をそのまま参考文献として本明細書に組み込み、その複写を取り囲み、本明細書の一部として含む。
【0054】
縫合糸14が
図17に示すように大動脈の中に引き入れられた後で、縫合装置又は他の外科用装置を、シース32を通して大動脈の中に挿入することができる。いくつかの実施例では、装置を大動脈の中に挿入する前に、シースを別のシースに取り替えることが望ましいことがある。これは、当技術では公知の標準的手順で行うことができ、更に、シースを開口の中に維持し、それによって止血を維持しながら行うこともできる。例えば、栓塞子を、シース32の上に摺動させてもよい。次いで、シース32は、取り除くことができ、より大型のシースを栓塞子の上に送給してもよい。
【0055】
1つ又は複数の所望の処置が実行されれば、シースが引き出される際にシース周辺の開口を閉じるために縫合糸をしっかりと締めながら、シースを引き出すことができる。いくつかの実施例では、先細のシースを、開口を閉じる前に挿入することができ、この先細のシースは、シースが大動脈から引き出される際に、シース周辺の開口をしっかりと閉じることを容易にすることができる。いくつかの実施例では、前述し、米国特許出願公開第2011/0190793号に記載され、本明細書に参考文献として組み込まれる装置などの、結び目送給装置は、縫合糸14の端部分の2つ以上を予め組み込んで、シースと一緒に本体空洞に送給することができ、シースが引き出される際に、締付圧を維持するのを容易にする。次いで、大動脈壁の開口は、縫合糸端に結び目を実施すること、若しくは結び目を作ることにより、又は他の周知の方法により閉じることができる。
【0056】
好適な実施例についての前述の説明は、本発明の基本的な新規の特徴を示し、説明し、且つ指摘したが、当業者であれば、本発明の精神を逸脱しない範囲で、示される機器、並びにその使用の細部の形にさまざまな省略、置換、及び変更を行うことができると理解されよう。
【0057】
本明細書の全体に亘る「1つの実施例」又は「実施例」という言及は、実施例に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体のさまざまな場所で「1つの実施例では」又は「実施例では」という語句が出てきても、必ずしも全てが同じ実施例を指しているわけではない。更に、前述のいずれかの実施例の特有の特徴、構造、又は特性を、本開示から当業者には明白であるように、任意の適切な方法で1つ又は複数の実施例に組み合わせてもよい。
【0058】
同様に、実施例の先述の説明において、開示を合理化し、且つさまざまな発明の態様の1つ又は複数の理解に役立てる目的で、本発明のさまざまな特徴が、単一の実施例、図、又はその説明の中にひとまとめにされることもあると理解されたい。しかしながら、開示のこの方法は、いずれかの特許請求の範囲が、その特許請求の範囲の中で明白に詳述されるものより多くの特徴を求めるという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、何れか1つの前述で開示した実施例の全ての特徴より少ない特徴の組み合わせにある。したがって、これにより詳細な説明に続く特許請求の範囲は、各特許請求の範囲が別個の実施例としてそれ自体を主張しながら、この詳細な説明に明白に組み込まれている。