(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-151946(P2020-151946A)
(43)【公開日】2020年9月24日
(54)【発明の名称】柱状構造物切断装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/22 20060101AFI20200828BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20200828BHJP
B28D 1/08 20060101ALN20200828BHJP
【FI】
B28D1/22
E04G23/08 D
B28D1/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-52267(P2019-52267)
(22)【出願日】2019年3月20日
(11)【特許番号】特許第6588180号(P6588180)
(45)【特許公報発行日】2019年10月9日
(71)【出願人】
【識別番号】519098718
【氏名又は名称】株式会社グランテック
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 賢治
【テーマコード(参考)】
2E176
3C069
【Fターム(参考)】
2E176AA11
2E176DD22
3C069AA01
3C069BA06
3C069BC05
3C069CA08
3C069CA10
3C069EA00
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、様々な環境にある柱状構造物に対して、安全にして、簡単かつ確実に切断することができる柱状構造物切断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本装置は、所定の設置面に設置される基台部1と、基台部1上を平面方向に移動可能に設けられたスライド部2と、スライド部2上を平面方向に回転可能に設けられた回転台部3と、回転台部3に設けられた切断部4とを備える。スライド部2が基台部1上を平面方向に移動することにより、切断部4が平面方向に往復移動するとともに、回転台部2が1スライド部1上で平面方向に回転することにより切断部4が平面方向に揺動することにより、電柱P等の柱状柱状構造物を平面方向に切断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内外に既設の柱状構造物を切断する柱状構造物切断装置であって、
所定の設置面に設置される基台部と、
前記基台部上を平面方向に移動可能に設けられたスライド部と、
前記スライド部上を平面方向に回転可能に設けられた回転台部と、
前記回転台部に設けられた切断部とを備え、
前記スライド部が前記基台部上を平面方向に移動することにより、前記切断部が平面方向に往復移動するとともに、前記回転台部が前記スライド部上で平面方向に回転することにより前記切断部が平面方向に揺動することを特徴とする柱状構造物切断装置。
【請求項2】
前記スライド部は、スライド部用ハンドルと、前記スライド部用ハンドルに連結され、設置面に直交する方向に延びる第1のスライド部用回転軸と、設置面に平行な方向に延びる第2のスライド部用回転軸と、前記第1のスライド部用回転軸と前記第2のスライド部用回転軸を回転伝達可能な状態で連結するスライド部用ギアと、前記第2のスライド部用回転軸に螺合されたナット部材とからなる送りネジ機構に接続され、前記スライド部用ハンドルが回転することにより前記第1のスライド部用回転軸と前記第2のスライド部用回転軸が前記スライド部用ギアを介して軸回転するのに伴って、前記ナット部材が姿勢を維持しながら移動することによって、前記基台部上を平面方向に移動するものとなされている請求項1に記載の柱状構造物切断装置。
【請求項3】
前記回転台部は、回転台部用ハンドルと、前記回転台部用ハンドルに連結された回転台部用回転軸と、前記回転台部用回転軸と前記回転台部の中心軸を回転伝達可能な状態で連結する回転台部用ギアとからなり、前記回転台部用ハンドルが回転することにより前記回転台部用回転軸が軸回転するのに伴って、前記回転台部用ギアを介して前記回転台部の中心軸が軸回転することによって、前記スライド部上で平面方向に回転する請求項1または請求項2に記載の柱状構造物切断装置。
【請求項4】
前記基台部は、一端部が基台部に軸支された支承板と、該支承板の他端部に設けられたアジャスターボルトとからなるアジャスター機構が設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の柱状構造物切断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の柱状構造物切断装置に用いられる治具であって、
所定の設置面に設置される基台部と、
前記基台部上を平面方向に移動可能に設けられたスライド部と、
前記スライド部上で平面方向に回転可能に設けられ、切断部が設けられるための回転台部とを備えることを特徴とする柱状構造物切断装置用治具
【請求項6】
所定の設置面に設置される基台部と、前記基台部上を平面方向に移動可能に設けられたスライド部と、前記スライド部上を平面方向に回転可能に設けられた回転台部と、前記回転台部に設けられた切断部とを備えた柱状構造物切断装置を用いた柱状構造物の切断方法であって、
前記柱状構造物切断装置を設置面に設置する工程と、
前記スライド部を前記基台部上で柱状構造物に向かって移動させることにより、前記切断部を電柱に切り込んでいく工程と、
前記切断部を電柱に切り込んだ状態において、前記スライド部を前記基台部上で移動させることにより前記切断部を往復移動させたり、前記回転台部を前記スライド部上で平面方向に回転させることにより前記切断部を揺動させたりすることによって、電柱を切断する工程とを備えることを特徴とする柱状構造物の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内外に既設の電柱等の柱状構造物を切断するための柱状構造物切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地面に立設されている既設の電柱について、老朽化や災害などによる破損に伴って交換する際、電柱を地面に平行な平面方向に切断することが行われる。そして、最近では、電柱を地面近くの基礎部分で切断したあと、電柱の中空内部に鋼管ポールなどの新たな電柱を挿入することにより、電柱を簡易に交換する工法が注目されている。
【0003】
このように電柱を切断する際、例えば円盤状の刃部が設けられたブレードカッターや、チェーンソーなどが用いられるが、電柱を切断するには大きさ負荷がかかるため、刃部が破損したり、電柱の欠片や粉塵が飛散するなどして、安全上、些か問題があった。
【0004】
そこで、電柱を安全に切断する装置として、特許文献1〜特許文献10が知られている。これらによれば、電柱の側面を抱きかかえるように装置を設置したあと、装置に設けられた刃部やワイヤーにより電柱を安全に切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019−7160号公報
【特許文献2】特開2016−43532号公報
【特許文献3】特開2015−96299号公報
【特許文献4】特開2014−213418号公報
【特許文献5】特開2014−37676号公報
【特許文献6】特開2006−316610号公報
【特許文献7】実用新案登録第3198285号公報
【特許文献8】実用新案登録第3181319号公報
【特許文献9】実用新案登録第3165564号公報
【特許文献10】実開昭62−138742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、最近では、電柱の周囲に光ファイバーなどの他の配管が複数設けられている場合が多いため、従来のように電柱の側面を抱きかかえるように設置する装置の場合、それらの複数の配管が邪魔になって、電柱を切断することが困難であるという問題があった。もとより、作業者が上述の各種カッターを手に持って切断する場合、少しでも切断箇所がずれたりすると、電柱の周りの配管を誤って切断したり、傷付けたりしてしまって、最悪の場合には周囲の住居、病院、工場での設備に支障をきたし、多大な損害が生じるという問題があった。
【0007】
このような問題は、地面に立設される電柱のみならず、地面や壁面などに既設されている他の柱状構造物にも同様に生じるものと考えられる。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、様々な環境にある柱状構造物に対して、安全にして、簡単かつ確実に切断することができる柱状構造物切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、屋内外に既設の柱状構造物を切断する柱状構造物切断装置であって、所定の設置面に設置される基台部と、前記基台部上を平面方向に移動可能に設けられたスライド部と、前記スライド部上を平面方向に回転可能に設けられた回転台部と、前記回転台部に設けられた切断部とを備え、前記スライド部が前記基台部上を平面方向に移動することにより、前記切断部が平面方向に往復移動するとともに、前記回転台部が前記スライド部上で平面方向に回転することにより前記切断部が平面方向に揺動することを特徴とする。
【0010】
これによれば、切断部が柱状構造物に対して前後方向に往復移動したり、左右方向に揺動し得るため、周囲に他の配管が存在するなどの様々な環境にある柱状構造物に対して、安全にして、簡単かつ確実に切断することができる。
【0011】
また、前記スライド部は、スライド部用ハンドルと、前記スライド部用ハンドルに連結され、設置面に直交する方向に延びる第1のスライド部用回転軸と、設置面に平行な方向に延びる第2のスライド部用回転軸と、前記第1のスライド部用回転軸と前記第2のスライド部用回転軸を回転伝達可能な状態で連結するスライド部用ギアと、前記第2のスライド部用回転軸に螺合されたナット部材とからなる送りネジ機構に接続され、前記スライド部用ハンドルが回転することにより前記第1のスライド部用回転軸と前記第2のスライド部用回転軸が前記スライド部用ギアを介して軸回転するのに伴って、前記ナット部材が姿勢を維持しながら移動することによって、前記基台部上を平面方向に移動するものとなされてもよい。これによれば、スライド部用ハンドルを回転することにより切断部を精度良く往復移動させることができる。また、スライド部用ハンドルの回転を止めると、切断部を所定の箇所に確実に固定することができる。
【0012】
また、前記回転台部は、回転台部用ハンドルと、前記回転台部用ハンドルに連結された回転台部用回転軸と、前記回転台部用回転軸と前記回転台部の中心軸を回転伝達可能な状態で連結する回転台部用ギアとからなり、前記回転台部用ハンドルが回転することにより前記回転台部用回転軸が軸回転するのに伴って、前記回転台部用ギアを介して前記回転台部の中心軸が軸回転することによって、前記スライド部上で平面方向に回転してもよい。これによれば、回転台部用ハンドルを回転することにより回転台部を精度良く揺動させることができる。また、回転台部用ハンドルの回転を止めると、切断部を所定角度で確実に固定することができる。
【0013】
また、前記基台部は、一端部が基台部に軸支された支承板と、該支承板の他端部に設けられたアジャスターボルトとからなるアジャスター機構が設けられてもよい。これによれば、支承板を基台部に対して所定角度で回転させたあと、アジャスターボルトの支承板に対する突出度合いを調整することにより、起伏、段部、傾斜がある設置面においても、装置を設置面に平行な状態で設置することができる。
【0014】
また、本発明に係る柱状構造物切断装置用治具は、所定の設置面に設置される基台部と、前記基台部上を平面方向に移動可能に設けられたスライド部と、前記スライド部上で平面方向に回転可能に設けられ、切断部が設けられるための回転台部とを備えることを特徴とする。これによれば、各種カッターの切断部を回転台部に固定することにより、周囲に他の配管が存在するなどの様々な環境にある柱状構造物に対して、安全にして、簡単かつ確実に切断することができる。
【0015】
また、本発明に係る柱状構造物切断方法は、所定の設置面に設置される基台部と、前記基台部上を平面方向に移動可能に設けられたスライド部と、前記スライド部上を平面方向に回転可能に設けられた回転台部と、前記回転台部に設けられた切断部とを備えた柱状構造物切断装置を用いた柱状構造物の切断方法であって、前記柱状構造物切断装置を設置面に設置する工程と、前記スライド部を前記基台部上で柱状構造物に向かって移動させることにより、前記切断部を電柱に切り込んでいく工程と、前記切断部を電柱に切り込んだ状態において、前記スライド部を前記基台部上で移動させることにより前記切断部を往復移動させたり、前記回転台部を前記スライド部上で平面方向に回転させることにより前記切断部を揺動させたりすることによって、電柱を切断する工程とを備えることを特徴とする。これによれば、切断部を柱状構造物に対して前後方向に往復移動させり、左右方向に揺動させ得るため、周囲に他の配管が存在するなどの様々な環境にある柱状構造物に対して、安全にして、簡単かつ確実に切断することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、切断部が柱状構造物に対して前後方向に往復移動したり、左右方向に揺動するため、周囲に他の配管が存在するなどの様々な環境にある柱状構造物に対して、安全にして、簡単かつ確実に切断することができる。このため、電柱等の交換作業を短期かつ低コストで実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る柱状構造物切断装置の斜視図である。
【
図2】
図1の装置(切断部を除く治具)の平面図である。
【
図3】
図1の装置(切断部を除く治具)の側面図である。
【
図4】
図1の装置(切断部を除く治具)のI−I線断面図である。
【
図5】
図1の装置(切断部を除く治具)のII−II線断面図である。
【
図6】
図1の装置を用いて電柱を切断する工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係る柱状構造物切断装置(以下、本装置という)の実施形態について
図1〜
図6を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、柱状構造物として、地面から上方に立設されている電柱Pを切断する場合について説明する。また、
図2の右側を装置の前方、
図2の左側を装置の後方、
図2の上側を装置の左方、
図2の下側を装置の右方とし、地面等の設置面に対して平行な方向を平面方向という。
【0019】
本装置は、
図1に示すように、地面等の設置面に設置される金属製の基台部1と、基台部1上を長さ方向に摺動可能に設けられた金属製のスライド部2と、スライド部2上を平面方向に回転可能に設けられた金属製の回転台部3と、回転台部3上に設けられた切断部4とを備える。
【0020】
前記基台部1は、
図2および
図3に示すように、平面視矩形条に形成された設置板11を有しており、上部に設けられた2本のレール部材12と、後端部に設けられた支柱枠部材13と、スライド部2を摺動させるための送りネジ機構14と、回転台部3を回転させるための回転機構15とを備える。
【0021】
前記レール部材12は、設置面(設置板11)から所定の高さ位置において、基台部1の幅方向(
図2の上下方向)に互いに所定距離を隔てながら、基台部1の長さ方向(
図2の左右方向)に沿って平行に延びるように設けられている。これにより、後述するようにスライド部2をレール部材12に沿ってスムーズに摺動させることができる。
【0022】
前記支柱枠部材13は、基台部1の後端部の両側から立設された2本の支柱板131と、両支柱板131の上部に架設された上側横桟132と、両支柱板131の下部に架設された下側横桟133とからなる。これにより、作業者が支柱枠部材13の支柱板131、上側横桟132、あるいは下側横桟133を把持して移動させることにより本装置を設置面に設置することができる。
【0023】
前記送りネジ機構14は、
図4に示すように、支柱枠部材13の上部付近に設けられた第1のハンドル140と、第1のハンドル140に連結された第1の回転軸141と、第1の回転軸141に連結された第2の回転軸142と、第1の回転軸141と第2の回転軸142を回転伝達可能に連結するギア144、145と、第2の回転軸142に螺着されたナット部材146とからなる。
【0024】
具体的には、第1の回転軸141は、設置面に垂直な方向(基台部1の長さ方向と幅方向に直交する方向)に延びる円柱状の回転軸であって、上部と下部が基台部1の支柱枠部材13の上側横桟132と下側横桟133に軸支され、上端部に第1のハンドル140が設けられるとともに、下端部に円錐台状の第1のギア144が設けられている。
【0025】
また、第2の回転軸142は、レール部材12の間において設置面に平行な方向(基台部1の長さ方向)に延びる円柱状の回転軸であって、前端部と後部が基台部1に軸支され、後端部に円錐台状の第2のギア145が設けられている。
【0026】
また、第1のギア144と第2のギア145は、いわゆるかさ歯車と呼ばれるものであり、互いに回転伝達可能な状態で直交に噛合している。
【0027】
また、ナット部材146は、第2の回転軸142上を移動可能に螺着するとともに、上面にスライド部2が固定されている。
【0028】
而して、第1のハンドル140を平面方向に右回りまたは左回りに回転すると、第1の回転軸141が軸回転して、ギア144、145を介して第2の回転軸142が軸回転するのに伴って、ナット部材146が姿勢を維持しながら前方または後方に移動するため、ナット部材146に固定されたスライド部2も基台部1上をレール部材12に沿って前方または後方に摺動することができる。また、第1のハンドル140が所定の高さ位置に設けられることにより、作業者が第1のハンドル140を所定の高さをもって回転し得るため、切断部4を往復移動させ易くなる。
【0029】
前記回転機構15は、
図2に示すように、第2のハンドル150と、第2のハンドル150に連結された第3の回転軸151と、前記第3の回転軸151に外挿された第1のギア152と、第1のギア152に噛合するとともに、回転台部3の回転軸に接続された第2のギア153とを備える。
【0030】
具体的には、第3の回転軸151は、第2の回転軸142と右側のレール部材12の間において、設置面に平行な方向(基台部1の長さ方向)に延びる円柱状の回転軸であって、前端部と後端部がスライド部2の裏面で軸支され、後端部に第2のハンドル150が設けられている。
【0031】
また、第1のギア152と第2のギア153は、いわゆるウォームギアと呼ばれる歯車であり、第1のギア152がウォーム、第2のギア153がウォームホイールとして互いに回転伝達可能な状態で噛合している。
【0032】
而して、第2のハンドル150を鉛直方向に右回りまたは左回りに回転すると、回転軸が軸回転して、ギア152、153を介して回転台部3の中心軸31が軸回転して、回転台部3がスライド部2上で所定角度(左右各90度以内)で平面方向に回転することができる。
【0033】
なお、前記基台部1は、
図2および
図3に示すように、四隅部にアジャスター機構16が設けられている。このアジャスター機構16は、一端部が第1の固定ボルト163により基台部1に軸支された支承板161と、該支承板161の他端部に垂直に貫通状態で螺合したアジャスターボルト162とを備えている。
【0034】
而して、設置面の状況に応じて、支承板161を基台部1に対して平面方向に所定角度回転させ、第1の固定ボルト163により支承板161の回転を固定したあと、アジャスターボルト162を軸回転させることにより支承板161に対する突出度合いを調整する。これにより、起伏、段部、傾斜がある設置面においても、本装置を設置面に平行な状態で設置することができる。なお、本実施形態では、支承板161の第1の固定ボルト163よりも他端部側に第2の固定ボルト164が設けられており、第2の固定ボルト164を固定することにより、支承板161の不用意な回転を確実に防止することができるようになっている。
【0035】
前記スライド部2は、
図2および
図3に示すように、平面視正方形の金属板であり、基台部1のレール部材12の上方において設置面(設置板11)に平行に設けられている。また、スライド部2は、
図5に示すように、裏面の幅方向の両側にはレール部材12に摺動可能な状態で噛合する噛合部材21が設けられている。このため、スライド部2は、設置面(設置板11)から所定の高さ位置において、基台部1上をレール部材12に沿って摺動することにより、平面方向(設置面(設置板11)に平行な平面に沿う方向)を前方または後方にスムーズに移動することができる。
【0036】
前記回転台部3は、
図2および
図3に示すように、平面視円形の金属板であり、スライド部2と所定の隙間を空けながら平行に設けられる。また、回転台部3は、裏面の中心部に中心軸31を有しており、上述の回転機構15の第2のギア153に同軸上に接続されている。このため、回転台部3は、スライド部2上で平面方向(設置面(設置板11)に平行な平面またはスライド部2の移動平面に平行な平面に沿う方向)に所定角度で回転することができる。
【0037】
前記切断部4は、いわゆるチェーンソーと呼ばれるものであり、図示略の駆動モータが内蔵された本体41と、該本体41から突出する態様で設けられたカッター42とからなる。この切断部4は、カッター42が本装置の前方に突出する態様で本体41が回転台部3に固定される。切断部4を回転台部3を固定するに際しては、図示略のボルトやナット等を用いて回転台部3に固定する。なお、本実施形態のチェーンソーは、コンクリートを切断する際に用いられる汎用のものが用いられており、チェーンソーに初めから付属しているハンドルなどがそのまま付属していてもよい。
【0038】
次に、本装置により柱状構造物として電柱Pを切断する方法について、
図6を参照しつつ説明する。なお、電柱Pの切断に際しては、切断部4に対する負荷を軽減するため、一般にクレーン等で電柱Pの上端部を上方に吊り上げた状態とする。
【0039】
まず、
図6(a)に示すように、本装置を電柱Pの近傍箇所の設置面に設置する。このとき、本装置の基台部1の前端部を電柱P側に向けながら地面に設置したあと、アジャスター機構16により基台部1が設置面に対して平行な状態となるように高さを調節する。
【0040】
次に、
図6(b)に示すように、切断部4を駆動したあと、送りネジ機構14によりスライド部2を基台部1上で前方に次第に摺動させると、切断部4のカッター42部が電柱Pに対して垂直に次第に切り込んでいく。このとき、上述のように第1のハンドル140を回転させて、送りネジ機構14によりスライド部2を基台部1上で摺動させるため、切断部4を精度良く前方に移動させることができる。また、第1のハンドル140の回転を止めると、切断部4を所定の箇所に確実に固定することができる。
【0041】
次に、
図6(c)に示すように、回転機構15により回転台部3をスライド部2上で平面方向の左回りに回転させると、切断部4のカッター42が平面方向の左方に揺動しながら電柱Pの左側に次第に切り込んでいく。このとき、上述のように第2のハンドル150を回転させて、回転機構15により回転台部3をスライド部2上で回転させるため、切断部4を精度良く左方に揺動させることができる。また、第2のハンドル150の回転を止めると、切断部4を所定の角度で確実に固定することができる。
【0042】
次に、
図6(d)に示すように、回転機構15により回転台部3をスライド部2上で平面方向の右回りに回転させると、切断部4のカッター42が平面方向右方に揺動しながら電柱Pの右側に次第に切り込んでいく。このとき、上述のように第2のハンドル150を回転させて、回転機構15により回転台部3をスライド部2上で回転させるため、切断部4を精度良く右方に揺動させることができる。また、第2のハンドル150の回転を止めると、切断部4を所定の角度で確実に固定することができる。
【0043】
而して、電柱Pを完全に切断したあと、
図6(a)に示すように、スライド部2を基台部1上で後方に摺動させると、切断部4のカッター42が電柱Pから次第に抜かれていく。なお、電柱Pの切断方法は上述の手順に限定されるものではなく、その他の手順であってもよい。
【0044】
なお、本実施形態では、スライド部2は基台部1上をレール部材12に沿って摺動するものとしたが、基台部1上で平面方向に移動するものであれば、必ずしも摺動しなくてもよい。
【0045】
また、上述の送りネジ機構14や回転機構15を設けるものとしたが、その他の送りネジ機構14や回転機構15であってもよいし、送りネジ機構14や回転機構15を設けずに手動でスライド部2を移動させたり、回転台部3を回転させてもよい。
【0046】
また、切断部4としてチェーンソーを用いたが、その他のカッターやワイヤーなどによる切断工具であってもよい。
【0047】
また、本装置の切断方法を説明する際、設置面を地面として説明したが、壁面や足場など、その他の設置面であってもよい。
【0048】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…基台部
11…設置板
12…レール部材
13…支柱枠部材
131…支柱
132…上側横桟
133…下側横桟
14…送りネジ機構
140…第1のハンドル
141…第1の回転軸
142…第2の回転軸
144…第1のギア
145…第2のギア
146…ナット部材
15…回転機構
150…第2のハンドル
151…第3の回転軸
152…第1のギア
153…第2のギア
16…アジャスター機構
161…支承板
162…アジャスターボルト
2…スライド部
21…噛合部材
3…回転台部
31…中心軸
4…切断部
41…本体
42…カッター
P…電柱
【手続補正書】
【提出日】2019年7月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内外に既設の柱状構造物を切断する柱状構造物切断装置であって、
所定の設置面に設置される基台部と、
前記基台部上を長さ方向に移動可能に設けられたスライド部と、
前記スライド部上を平面方向に回転可能に設けられた回転台部と、
前記回転台部に設けられ、カッターを有する切断部とを備え、
前記スライド部が柱状構造物に向かって基台部の長さ方向に移動することにより、前記切断部のカッターがスライド部の移動方向の前方に突出する態様で移動して柱状構造物に切り込んでいくとともに、前記回転台部が前記スライド部上で平面方向に回転することにより、前記切断部のカッターがスライド部の移動方向の左右に揺動して柱状構造物を切断する特徴とする柱状構造物切断装置。
【請求項2】
前記スライド部は、スライド部用ハンドルと、前記スライド部用ハンドルに連結され、設置面に直交する方向に延びる第1のスライド部用回転軸と、設置面に平行な方向に延びる第2のスライド部用回転軸と、前記第1のスライド部用回転軸と前記第2のスライド部用回転軸を回転伝達可能な状態で連結するスライド部用ギアと、前記第2のスライド部用回転軸に螺合されたナット部材とからなる送りネジ機構に接続され、前記スライド部用ハンドルが回転することにより前記第1のスライド部用回転軸と前記第2のスライド部用回転軸が前記スライド部用ギアを介して軸回転するのに伴って、前記ナット部材が姿勢を維持しながら移動することによって、前記基台部上を平面方向に移動するものとなされている請求項1に記載の柱状構造物切断装置。
【請求項3】
前記回転台部は、回転台部用ハンドルと、前記回転台部用ハンドルに連結された回転台部用回転軸と、前記回転台部用回転軸と前記回転台部の中心軸を回転伝達可能な状態で連結する回転台部用ギアとからなり、前記回転台部用ハンドルが回転することにより前記回転台部用回転軸が軸回転するのに伴って、前記回転台部用ギアを介して前記回転台部の中心軸が軸回転することによって、前記スライド部上で平面方向に回転する請求項1または請求項2に記載の柱状構造物切断装置。
【請求項4】
前記基台部は、一端部が基台部に軸支された支承板と、該支承板の他端部に設けられたアジャスターボルトとからなるアジャスター機構が設けられている請求項1から請求項3のいずれかに記載の柱状構造物切断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の柱状構造物切断装置に用いられる治具であって、
所定の設置面に設置される基台部と、
前記基台部上を平面方向に移動可能に設けられたスライド部と、
前記スライド部上で平面方向に回転可能に設けられ、切断部が設けられるための回転台部とを備えることを特徴とする柱状構造物切断装置用治具
【請求項6】
所定の設置面に設置される基台部と、前記基台部上を平面方向に移動可能に設けられたスライド部と、前記スライド部上を平面方向に回転可能に設けられた回転台部と、前記回転台部に設けられ、カッターを有する切断部とを備えた柱状構造物切断装置を用いた柱状構造物の切断方法であって、
前記柱状構造物切断装置を設置面に設置する工程と、
前記スライド部を前記基台部上で柱状構造物に向かって移動させることにより、前記切断部のカッターをスライド部の移動方向の前方に突出する態様で移動させ、柱状構造物に切り込んでいく工程と、
前記切断部のカッターを柱状構造物に切り込んだ状態において、前記回転台部を前記スライド部上で平面方向に回転させることにより前記切断部のカッターをスライド部の移動方向の左右に揺動させることによって、柱状構造物を切断する工程とを備えることを特徴とする柱状構造物の切断方法。