【課題】中心に貫通孔を備える樹脂製品を射出成形にて形成する射出成形方法及び射出成形用金型において、キャビティ内に射出される溶融樹脂を樹脂製品の貫通孔に対応する部位の周りに回転しながら射出することにより、ウェルドラインを樹脂製品の外周に直交して形成せず、貫通孔周りの周方向に沿って形成する。
【解決手段】可動型10に形成されたキャビティ17a内に固定型20の二次スプルー26aを介して溶融樹脂を射出するに際し、溶融樹脂を樹脂ギヤPの貫通孔P1に対応する第2の入れ子18の周りに回転しながら射出する。射出成形装置は、二次スプルー26aを備えた回転コア26が、第2の入れ子18の中心線を回転中心として回転可能とされている。二次スプルー26aの先のゲート26dから射出される溶融樹脂は、第2の入れ子18の周りに円弧を描くように射出される。
可動型と固定型に挟まれて形成されたキャビティ内に固定型のゲートから溶融樹脂を射出して、中心に貫通孔を備える樹脂製品を射出成形にて形成する射出成形方法であって、
キャビティ内に前記溶融樹脂を射出する前記ゲートを回転させる第1工程と、
前記固定型に対して前記可動型を第1圧力で閉じる第2工程と、
前記第1工程で前記ゲートが回転されており、且つ前記第2工程で前記固定型に対して前記可動型が第1圧力で閉じられている状態で、前記樹脂製品の前記貫通孔に対応する部位の回りに前記ゲートから前記溶融樹脂を射出する第3工程と、
キャビティ内に前記溶融樹脂が最初に射出されてから、最初に射出された前記溶融樹脂に対して回転状態で射出された前記溶融樹脂が前記貫通孔に対応する部位の周りで接触するまで少なくとも行われた状態で、前記ゲートの回転を停止する第4工程と、
該第4工程で前記ゲートの回転が停止された状態で、前記固定型に対する前記可動型の型締力を前記第1圧力より高い第2圧力まで高くする第5工程と、
該第5工程で型締力が高められた状態で、キャビティ内への前記溶融樹脂の圧力を前記樹脂製品の成形に必要な圧力まで高めた後、キャビティ内で前記溶融樹脂が固まるまで前記溶融樹脂の圧力を保圧力に維持する第6工程とを備える
射出成形方法。
可動型と固定型に挟まれて形成されたキャビティ内に固定型のゲートから溶融樹脂を射出して、中心に貫通孔を備える樹脂製品を射出成形にて形成する射出成形用金型であって、
樹脂押出装置から溶融樹脂を受け入れる一次スプルーを備えるスプルーブッシュと、
前記一次スプルーから受け入れた前記溶融樹脂を、前記ゲートよりキャビティ内に射出する二次スプルーを備え、前記固定型内で前記貫通孔に対応する部位を回転中心として回転自在に支持される回転コアと、
前記回転コアを回転駆動する回転駆動機構と、
前記固定型に対して前記可動型を閉じて型締めする型締機構と、
該型締機構、前記樹脂押出装置及び前記回転駆動機構の作動を制御する制御装置とを備え、
該制御装置は、
前記回転駆動機構を作動して前記回転コアを回転駆動する回転コア回転手段と、
前記型締機構を作動して、前記固定型に対して前記可動型を第1圧力で型締めする第1型締手段と、
該第1型締手段により型締めされた状態で、且つ前記回転コア回転手段による前記回転コアの回転中に、キャビティ内への前記溶融樹脂の射出を開始するように前記樹脂押出装置から前記一次及び二次スプルーに前記溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給手段と、
キャビティ内に前記溶融樹脂が最初に射出されてから、最初に射出された前記溶融樹脂に対して回転状態で射出された前記溶融樹脂が前記貫通孔に対応する部位の周りで接触するまで少なくとも行われた状態で、前記回転コアの回転を停止する回転コア停止手段と、
前記回転コア停止手段により前記回転コアの回転が停止された状態で、前記固定型に対する前記可動型の型締力を第1圧力より高い第2圧力とする第2型締手段と、
該第2型締手段により型締力が高められた状態で、キャビティ内への前記溶融樹脂の圧力を前記樹脂製品の成形に必要な圧力まで高め、更にキャビティ内で前記溶融樹脂が固まるまで前記溶融樹脂の圧力を保圧力に維持し、前記樹脂押出装置による前記一次及び二次スプルーへの前記溶融樹脂の供給を停止する溶融樹脂供給停止手段とを備える
射出成形用金型。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の射出成形用金型では、キャビティ内に射出された直後の溶融樹脂を、その樹脂表面に接触する入れ子の回転によって回転させ、ウェルドラインをギヤの外周に直交して形成せず、貫通孔周りの周方向に沿って形成させるものである。しかし、入れ子回転時の溶融樹脂の固まり具合によっては、狙いどおりにウェルドラインを形成させることができない可能性がある。換言すると、狙いどおりにウェルドラインを形成させるための入れ子の回転タイミングの制御が難しい問題がある。
【0005】
本発明の課題は、中心に貫通孔を備える樹脂製品を射出成形にて形成する射出成形方法及び射出成形用金型において、キャビティ内に充填される溶融樹脂を樹脂製品の貫通孔に対応する部位の周りに回転しながら射出することにより、ウェルドラインを樹脂製品の外周に直交して形成せず、貫通孔周りの周方向に沿って形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、可動型と固定型に挟まれて形成されたキャビティ内に固定型のゲートから溶融樹脂を射出して、中心に貫通孔を備える樹脂製品を射出成形にて形成する射出成形方法であって、キャビティ内に前記溶融樹脂を射出する前記ゲートを回転させる第1工程と、前記固定型に対して前記可動型を第1圧力で閉じる第2工程と、前記第1工程で前記ゲートが回転されており、且つ前記第2工程で前記固定型に対して前記可動型が第1圧力で閉じられている状態で、前記樹脂製品の前記貫通孔に対応する部位の回りに前記ゲートから前記溶融樹脂を射出する第3工程と、キャビティ内に前記溶融樹脂が最初に射出されてから、最初に射出された前記溶融樹脂に対して回転状態で射出された前記溶融樹脂が前記貫通孔に対応する部位の周りで接触するまで少なくとも行われた状態で、前記ゲートの回転を停止する第4工程と、該第4工程で前記ゲートの回転が停止された状態で、前記固定型に対する前記可動型の型締力を前記第1圧力より高い第2圧力まで高くする第5工程と、該第5工程で型締力が高められた状態で、キャビティ内への前記溶融樹脂の圧力を前記樹脂製品の成形に必要な圧力まで高めた後、キャビティ内で前記溶融樹脂が固まるまで前記溶融樹脂の圧力を保圧力に維持する第6工程とを備える。
【0007】
第1発明において、ゲートの回転開始は、型締力を第1圧力とした後に行うことも、第1圧力とする前に行うこともできる。また、ゲートの回転停止は、型締力が第1圧力から第2圧力に向けて高くされる前、又は同時に行われるのが望ましいが、型締力が高くされる時点より、ゲートの回転停止が後になっても、型締力が高くされてからゲートの回転停止が行われるまでの時間が短時間であれば問題はない。
【0008】
第1発明によれば、キャビティ内に射出される溶融樹脂が樹脂製品の貫通孔に対応する部位の周りに回転しながら射出される。このとき、キャビティ内に溶融樹脂を射出するゲートの回転を可能とし、且つ樹脂製品の成形を可能とするため、固定型に対して可動型を閉じる型締力を、ゲートの回転時は比較的低圧の第1圧力とし、ゲートの回転停止後は第1圧力より高い第2圧力としている。そのため、ウェルドラインを樹脂製品の外周に直交して形成せず、貫通孔周りの周方向に沿って形成することができる。
【0009】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記第1圧力は、前記第3工程で前記ゲートからキャビティ内に射出された前記溶融樹脂がキャビティ外に漏れない程度で、且つ前記第2工程で前記ゲートの回転が可能な程度とされ、前記第2圧力は、前記第6工程で前記溶融樹脂の圧力を高めれている間、キャビティ内で成形される前記樹脂製品のバリを抑制可能な程度とされている。
【0010】
第2発明によれば、キャビティ内に溶融樹脂を射出するゲートの回転を可能とし、且つ樹脂製品にバリが発生するのを抑制するため、固定型に対して可動型を閉じる型締力を、ゲートの回転時は比較的低圧の第1圧力とし、ゲートの回転停止後は第1圧力より高い第2圧力としている。そのため、ウェルドラインを樹脂製品の外周に直交して形成せず、貫通孔周りの周方向に沿って形成することができる。従って、ウェルドラインによる樹脂製品の強度低下、若しくは形状精度の低下を効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明の第3発明は、可動型と固定型に挟まれて形成されたキャビティ内に固定型のゲートから溶融樹脂を射出して、中心に貫通孔を備える樹脂製品を射出成形にて形成する射出成形用金型であって、樹脂押出装置から溶融樹脂を受け入れる一次スプルーを備えるスプルーブッシュと、前記一次スプルーから受け入れた前記溶融樹脂を、前記ゲートより前記キャビティ内に射出する二次スプルーを備え、前記固定型内で前記貫通孔に対応する部位を回転中心として回転自在に支持される回転コアと、前記回転コアを回転駆動する回転駆動機構と、前記固定型に対して前記可動型を閉じて型締めする型締機構と、該型締機構、前記樹脂押出装置及び前記回転駆動機構の作動を制御する制御装置とを備え、該制御装置は、前記回転駆動機構を作動して前記回転コアを回転駆動する回転コア回転手段と、前記型締機構を作動して、前記固定型に対して前記可動型を第1圧力で型締めする第1型締手段と、該第1型締手段により型締めされた状態で、且つ前記回転コア回転手段による前記回転コアの回転中に、前記キャビティ内への前記溶融樹脂の射出を開始するように前記樹脂押出装置から前記一次及び二次スプルーに前記溶融樹脂を供給する溶融樹脂供給手段と、キャビティ内に前記溶融樹脂が最初に射出されてから、最初に射出された前記溶融樹脂に対して回転状態で射出された前記溶融樹脂が前記貫通孔に対応する部位の周りで接触するまで少なくとも行われた状態で、前記回転コアの回転を停止する回転コア停止手段と、前記回転コア停止手段により前記回転コアの回転が停止された状態で、前記固定型に対する前記可動型の型締力を第1圧力より高い第2圧力とする第2型締手段と、該第2型締手段により型締力が高められた状態で、キャビティ内への前記溶融樹脂の圧力を前記樹脂製品の成形に必要な圧力まで高め、更にキャビティ内で前記溶融樹脂が固まるまで前記溶融樹脂の圧力を保圧力に維持し、前記樹脂押出装置による前記一次及び二次スプルーへの前記溶融樹脂の供給を停止する溶融樹脂供給停止手段とを備える。
【0012】
第3発明において、回転コアの回転開始は、型締力を第1圧力とした後に行うことも、第1圧力とする前に行うこともできる。また、回転コアの回転停止は、型締力が第1圧力から第2圧力に向けて高くされる前、又は同時に行われるのが望ましいが、型締力が高くされる時点より、回転コアの回転停止が後になっても、型締力が高くされてから回転コアの回転停止が行われるまでの時間が短時間であれば問題はない。
【0013】
第3発明によれば、回転コアが回転された状態でキャビティ内の樹脂製品の貫通孔に対応する部位の周りに溶融樹脂が射出される。このとき、キャビティ内に溶融樹脂を射出するゲートの回転を可能とし、且つ樹脂製品の成形を可能とするため、固定型に対して可動型を閉じる型締力を、ゲートの回転時は比較的低圧の第1圧力とし、ゲートの回転停止後は第1圧力より高い第2圧力としている。そのため、ウェルドラインは貫通孔の周りに沿って安定して形成される。従って、ウェルドラインによる樹脂製品の強度低下、若しくは形状精度の低下を抑制することができる。
【0014】
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記第1圧力は、前記第3工程で前記ゲートからキャビティ内に射出された前記溶融樹脂がキャビティ外に漏れない程度で、且つ前記第2工程で前記ゲートの回転が可能な程度とされ、前記第2圧力は、キャビティ内で成形される前記樹脂製品のバリを抑制可能な程度とされている。
【0015】
第4発明によれば、キャビティ内に溶融樹脂を射出するゲートの回転を可能とし、且つ樹脂製品にバリが発生するのを抑制するため、固定型に対して可動型を閉じる型締力を、ゲートの回転時は比較的低圧の第1圧力とし、ゲートの回転停止後は第1圧力より高い第2圧力としている。そのため、ウェルドラインを樹脂製品の外周に直交して形成せず、貫通孔周りの周方向に沿って形成することができる。
【0016】
本発明の第5発明は、上記第3又は第4発明において、前記回転コアは、該回転コアの前記スプルーブッシュ側端部に設けられ、前記一次スプルーからの前記溶融樹脂を前記二次スプルーに供給するランナを備え、該ランナは、前記回転コアの回転中心と中心線を一致するようにされた円盤形状であり、前記一次スプルーからの前記溶融樹脂を、前記円盤形状の円の中心に受け入れ、前記円盤形状の外周部から前記二次スプルーに供給する。
【0017】
第5発明によれば、円盤形状のランナは、その中心線を回転コアの回転中心に一致させて設けられ、その回転中心に対応する位置で一次スプルーから溶融樹脂を受け、円盤形状の外周部で二次スプルーに溶融樹脂を供給する。そのため、回転コアの回転の影響を受けることなく、ランナは一次スプルーからの樹脂を二次スプルーに供給することができる。そして、二次スプルーの先にあるゲートからキャビティの樹脂製品の貫通孔に対応する部位の周りに溶融樹脂を射出させることができる。
【0018】
本発明の第6発明は、上記第3〜第5発明のいずれかにおいて、前記キャビティの中心に前記貫通孔を形成する貫通入れ子を備え、前記回転コアが前記貫通入れ子に当接した状態で、前記回転コアが前記キャビティの固定型側の一部を画定する固定型側の入れ子とされ、前記回転コアの外周側の固定型が前記キャビティの固定型側の残部を画定する。
【0019】
第6発明によれば、回転コアは、キャビティの中心に位置する貫通入れ子に当接した状態で、キャビティの固定型側の一部を画定し、キャビティの固定型側の残部は、回転コアの外周側の固定型により画定される。そのため、回転コアのキャビティ側端部は、貫通入れ子のみと当接し、他の部材とは当接しない。従って、回転コアの回転時の摩擦抵抗を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態の全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態である射出成形用金型を示す。第1実施形態の射出成形用金型は、射出成形により樹脂製品として樹脂ギヤPを成形するものである。射出成形用金型は、可動型10と固定型20を備える。ここで、可動型10、固定型20以外の型駆動機構等の構成は、従来と同一であるため図示及び詳細な説明を省略する。
図1において、矢印にて各方向を示し、以下の説明では、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。なお、ここでは、射出成形用金型を、可動型10、固定型20が上下方向に配置される形式のものとしたが、可動型10、固定型20が水平方向に配置される形式のものとしてもよい。
【0022】
<可動型10の構成>
可動型10は、従来と同様、主に可動側型板11、可動側受板12、スペーサブロック13、可動取付板14により構成されている。可動側型板11には、第1及び第2の入れ子17、18が左右、前後の各方向の中心部に保持されて、固定型20との境界であるパーティングラインPLに臨むキャビティ17aを形成している。ここでは、樹脂ギヤPを成形するため、第1の入れ子17により樹脂ギヤPの外形形状を形成し、第2の入れ子(本発明の貫通入れ子に相当)18により樹脂ギヤPの回転中心の貫通孔P1を形成している。
図3に射出成形により形成される樹脂ギヤPの一例を拡大して示す。
【0023】
キャビティ17aの下方には、第1の入れ子17及び可動側受板12を上下方向に貫通して、エジェクタピン15が設けられている。エジェクタピン15は、上端がキャビティ17aに臨む位置とされ、下端が上側エジェクタプレート16a及び下側エジェクタプレート16bに固定されている。上側及び下側エジェクタプレート16a、16bは、その下方に設けられているエジェクタ機構(図示略)により
図1に示す位置から上方に移動可能とされている。エジェクタ機構により上側及び下側エジェクタプレート16a、16bが上方に移動されると、エジェクタピン15が上方に移動されてキャビティ17aで成形された樹脂ギヤPをキャビティ17aから押し出すことができる。
【0024】
<固定型20の構成>
固定型20は、全体が固定側型板21、固定側受板22、ランナスリッパプレート23、固定取付板24により構成されている。固定側型板21及び固定側受板22には、キャビティ17aの上面の一部を画定する入れ子となる概ね円柱形の回転コア26が回転自在に支持されている。キャビティ17aの上面の残部であり、回転コア26から食み出す回転コア26の外周側領域は、固定側型板21の下面によって画定されている。回転コア26の下面は、その回転中心となる円柱形の中心部が第2の入れ子18に相対回転可能に当接している。従って、回転コア26の外周側下面はどこにも当接しないで、回転コア26の下面はキャビティ17aに臨む入れ子として機能している。また、回転コア26の上部には、固定側受板22の左右、前後の中心部にベアリング28が設けられ、回転コア26のスラスト軸受が構成されている。
【0025】
回転コア26の上部の左右、前後の中心部にはスプルーブッシュ25が回転コア26に当接する状態で設けられている。スプルーブッシュ25には、第2の入れ子18と中心線を一致させた一次スプルー25aが上下方向に貫通して形成されている。回転コア26の上端部には、一次スプルー25aに対向して円盤形状の空洞であるランナ26cが形成されている。また、回転コア26の上下方向に貫通して二次スプルー26aが形成されている。円盤形状のランナ26cは、円盤の円の中心が一次スプルー25aの孔の中心と一致するようにされている。一方、二次スプルー26aは、その上端ではランナ26cの外周部に対応し、下端ではキャビティ17aにおける第2の入れ子18の外周側に対応するように配置されている。
【0026】
スプルーブッシュ25は、その上部に形成された凹部に樹脂押出装置40から溶融樹脂を受けると、その樹脂を一次スプルー25aからランナ26c、二次スプルー26aを介してキャビティ17aに供給する。二次スプルー26aの下端で、溶融樹脂をキャビティ17a内に射出する端部にはゲート26dが形成されている。
図1では、一次スプルー25a、ランナ26c及び二次スプルー26aに樹脂が供給された状態が示され、キャビティ17a内には樹脂ギヤPとなる樹脂が射出された状態が示されている。
【0027】
<回転駆動機構30の構成>
回転コア26の胴部には、その外周側にギヤ35が一体に設けられ、ギヤ35は、ギヤ34、33を介してギヤードモータ31の出力軸32により回転駆動されるように連結されている。ギヤ34の回転軸27は、固定側型板21及び固定側受板22に対して回転自在に結合されている。また、ギヤ33は、出力軸32に一体に結合されている。このようにギヤードモータ31の出力軸32により回転コア26は回転駆動されるように構成され、回転駆動機構30が構成されている。ここでは、回転駆動機構30の動力源としてギヤードモータ31を用いたが、その他の駆動源を用いてもよい。
【0028】
<制御装置60の構成>
図2のように、可動型・固定型作動装置50、樹脂押出装置40及び回転駆動機構30は、制御装置60により作動制御されるように構成されている。制御装置60は、デジタルコンピュータを含んで構成されている。可動型・固定型作動装置50は、制御装置60の指示に基づいて可動型10及び固定型20の型閉じ、型開き作動を制御する。可動型・固定型作動装置50には、可動型10及び固定型20の型締力を調整する型締機構を含んでいる。
【0029】
<第1実施形態の作用、効果>
以下、制御装置60の制御に基づく第1実施形態の作用を、
図4のフローチャート及び
図5のタイムチャートを参照しながら説明する。まず、
図1のように可動型10及び固定型20を型閉じした状態で、樹脂押出装置40からスプルーブッシュ25に溶融樹脂を供給する。その結果、溶融樹脂は、一次スプルー25a、ランナ26c、二次スプルー26aを介してゲート26dからキャビティ17a内に射出され充填される。このとき、予め回転駆動機構30のギヤードモータ31により回転コア26は回転駆動されており、二次スプルー26aの先端のゲート26dからキャビティ17a内に射出される溶融樹脂は、
図6のように、第2の入れ子18を中心とした円弧を描くようにキャビティ17a内に充填される。
【0030】
この間、制御装置60では、
図4のステップS1において、固定型20に対して可動型10の型閉じが行われる。この様子は、
図5の(A)に示す。
図5のT1の時点で、型閉じが完了して、固定型20に対して可動型10が接触したことが検出されると、
図4のステップS2が肯定判断され、ステップS3において、回転駆動機構30が作動される。従って、
図5の(C)のように回転コア26が所定の回転速度で回転される。また、
図4のステップS4において、
図5の(B)のように固定型20に対する可動型10の型締力が第1圧力とされる。固定型20に対して可動型10が第1圧力で型締めされることにより、キャビティ17a内に射出される樹脂が、スプルーブッシュ25からキャビティ17aまでの樹脂の供給経路中で漏れないようにする一方、回転コア26の回転は可能となるようにされている。この場合、回転コア26の回転開始時には型締力はゼロとされている。そのため、回転コア26の回転開始時の回転摩擦は少なく、回転コア26の始動がスムーズに行われる。
【0031】
その後、
図4のステップS5にて回転コア26の回転開始から第1時間T10が経過したか否かが判定される。
図5のT2の時点で、第1時間T10が経過して
図4のステップS5が肯定判断されると、ステップS6において樹脂押出装置40が作動されて、
図5の(D)のようにキャビティ17a内の樹脂圧力が上昇される。ステップS5では、第1時間T10が経過したか否かを判定する代わりに、回転コア26が回転中か否かを判定してもよい。その場合、回転コア26が回転していれば、ステップS5が肯定判断されてステップS6に進む。
【0032】
図6は、ゲート26dからキャビティ17a内に射出され充填される溶融樹脂の様子を示している。回転コア26の回転は、少なくともゲート26dからキャビティ17a内に最初に射出された溶融樹脂M(
図5の実線で示す)に対して、回転コア26の回転中に射出された溶融樹脂Mが第2の入れ子18の周りを矢印で示すように1周して接触する(
図5の仮想線で示す)まで継続される。勿論、回転コア26の回転は、ゲート26dからキャビティ17a内に射出される溶融樹脂によりキャビティ17a内が完全に充填されるまでを最大として、この間の適宜時期まで継続されてもよい。
【0033】
図4のステップS7では、
図5のT1の時点から第2時間T11が経過したか否かにより、回転コア26の回転が予め決められた量だけ回転したか否かを判定している。
図5のT3の時点で、第2時間T11が経過して
図4のステップS7が肯定判断されると、ステップS8において回転駆動機構30の作動が停止される。ステップS7では、第2時間T11が経過したか否かを判定する代わりに、回転コア26が1回転以上の回転を完了したか否かを判定してもよい。
【0034】
次のステップS9では、樹脂押出装置40による樹脂圧力が、
図5の(D)のように設定圧力に到達したか否か判定される。
図5のT3の時点で、樹脂圧力が設定圧力に達してステップS9が肯定判断されると、ステップS10において、
図5の(B)のように固定型20に対する可動型10の型締力が第1圧力から第2圧力に高められる。このように型締力が高められることによりバリの発生を抑えながら樹脂ギヤPの成形を行うことができる。
【0035】
以上の説明では、
図5のT3の時点で、第2時間T11が経過し、同時に樹脂圧力が設定圧力に達するとして説明した。しかし、第2時間T11の経過する時点と、樹脂圧力が設定圧力に達する時点とが異なることはあり得る。但し、上記説明のように、両方の時点が同じ、若しくは近似した時点となることが望ましく、ステップS9の処理をなくすこともできる。また、ステップS7をステップS9によって置換してもよい。両方の時点が同じ、若しくは近似した時点となることが望ましい理由は、型締力を第1圧力から第2圧力に高めると、回転コア26の回転は困難となるため、型締力が高くなるときは回転コア26の回転は停まっている、若しくは同時に停まることが望ましい。型締力が高くなるときに回転コア26の回転が停まっていない場合でも、型締力が高くなって後、短時間のうちに回転コア26の回転が停止されるのが望ましい。なぜなら、型締力が高くなることにより物理的に回転コア26が回転できなくなって、ギヤードモーター31には過負荷電流が流れるが、短時間なら大きな問題にならない。
【0036】
図4のステップS11では、
図5のT3の時点で樹脂押出装置40による樹脂圧力が
図5の(D)のように設定圧力に到達してから第3時間T12が経過したか否かが判定される。
図5のT4の時点で第3時間T12が経過してステップS11が肯定判断されると、ステップS12において、樹脂押出装置40の樹脂の押出作動が停止され、予め決められた保圧力で樹脂圧力が保持される。そのため、
図5の(D)のように樹脂圧力はT4の時点でピークとなり、その後、保圧力より低下しないように保持される。そのため、キャビティ17a内の樹脂には、保圧力が維持され、樹脂の冷却に伴って樹脂ギヤP内にボイドが発生しないようにしている。ステップS11では、第3時間T12が経過したか否かを判定する代わりに、キャビティ17a内への樹脂の充填が完了したか否かを判定してもよい。
【0037】
キャビティ17a内に充填された溶融樹脂が固化すると、
図4のステップS13が肯定判断され、ステップS14において固定型20に対し可動型10が型開きされる。即ち、
図9のように可動型10及び固定型20が型開きされる。そして、エジェクタピン15が仮想線で示すように樹脂ギヤPを押し出し、製品として取り出される。固定取付板24及びランナスリッパプレート23が固定側受板22から離れ、更にランナスリッパプレート23が固定取付板24から離れると、一次スプルー25a、ランナ26c及び二次スプルー26a内で固化したランナ樹脂Lが、一次スプルー25a、ランナ26c及び二次スプルー26a内から抜けて除去される。
【0038】
図4のフローチャートにおいて、ステップS3は、本発明の第1工程に相当し、ステップS1及びS4は、本発明の第2工程に相当し、ステップS5及びS6は、本発明の第3工程に相当し、ステップS7及びS8は、本発明の第4工程に相当し、ステップS9及びS10は、本発明の第5工程に相当し、ステップS11及びS12は、本発明の第6工程に相当する。
【0039】
また、
図4のフローチャートにおいて、ステップS3は、本発明の回転コア回転手段に相当し、ステップS1及びS4は、本発明の第1型締手段に相当し、ステップS5及びS6は、本発明の溶融樹脂供給手段に相当し、ステップS7及びS8は、本発明の回転コア停止手段に相当し、ステップS9及びS10は、本発明の第2型締手段に相当し、ステップS11及びS12は、本発明の溶融樹脂供給停止手段に相当する。
【0040】
このようにして形成された樹脂ギヤPは、
図7、8のように、ウェルドラインWが第2の入れ子18によって形成される貫通孔P1の周りに円弧を描くように形成される。これに対し、キャビティ内に溶融樹脂を回転しながら射出せず、固定したまま射出した従来技術のウェルドラインWは、
図7、8に仮想線で示すように樹脂ギヤPの外周に直交するように形成される。そのため、上記実施形態によれば樹脂ギヤPの強度を高めることができる。また、実施形態によれば、ウェルドラインが樹脂ギヤPの外形形状の外側に沿って形成されるため、樹脂ギヤPの形状の寸法精度を高めることもできる。樹脂ギヤPの強度を高めるため添加剤としてカーボン繊維等の繊維を樹脂に配合した場合、繊維がウェルドラインに沿って形成されることになり、上記効果は、より顕著となる。
【0041】
第1実施形態によれば、キャビティ17a内に射出される溶融樹脂が貫通孔P1の周りに円弧を描くように供給されるため、キャビティ17a内に射出された後の溶融樹脂を外力により回転させる従来技術に比べて、安定して貫通孔P1の周りに円弧を描くようにウェルドラインを形成することができる。しかも、従来技術の場合は、固化しつつある溶融樹脂を回転させるため、樹脂の固化の進み具合によっては回転負荷が不安定に大きくなることがあるのに対し、本実施形態では、溶融樹脂をキャビティ17a内に射出する過程で貫通孔P1の周りに円弧を描くように供給するため、回転コア26の回転負荷が不安定に大きくなるのを防止することができる。
【0042】
第1実施形態によれば、円盤形状のランナ26cは、回転コア26の回転中心に対応して設けられ、その回転中心に対応する位置で一次スプルー25aから溶融樹脂を受け、円盤形状の外周部で二次スプルー26aに溶融樹脂を供給する。そのため、回転コア26の回転の影響を受けることなく、ランナ26cは一次スプルー25aからの樹脂を二次スプルー26aに供給することができる。そして、二次スプルー26aの先にあるゲート26dからキャビティ17aの樹脂ギヤPの貫通孔P1に対応する部位の周りに溶融樹脂を射出させることができる。
【0043】
第1実施形態によれば、回転コア26の上端は、回転コア26の外周部がランナスリッパプレート23に当接しているが、回転コア26の下端は、回転コア26の回転中心部のみが第2の入れ子18に当接している。そのため、回転コア26の下端における他部材との当接面積が抑制され、回転コア26の回転時の摩擦抵抗を抑制することができる。
【0044】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、回転コア26における二次スプルー(26a、26b)の数を1本から2本に増やした点である。その他の構成は、両者同一であり、同一部分については同一符号を付し、再度の説明は省略する。
【0045】
図10において、二次スプルー26aは、
図1(第1実施形態)の二次スプルー26aと同一構成とされている。一方、二次スプルー26bは、回転コア26の回転中心を挟んで二次スプルー26aと対称を成す位置に設けられている。
【0046】
そのため、一次スプルー25aからの溶融樹脂は、ランナ26cで二次スプルー26a、26bに分岐され、各二次スプルー26a、26bの下端の各ゲート26d、26eからキャビティ17a内に射出される。
図11は、ゲート26d、26eからキャビティ17a内に射出され、充填される溶融樹脂の様子を示している。回転コア26は、少なくともゲート26d、26eからキャビティ17a内に最初に射出され、充填された溶融樹脂M1、M2に対して、回転コア26の回転中に射出された溶融樹脂M1、M2が第2の入れ子18の周りを半周して接触するまで回転される。勿論、回転コア26は、ゲート26d、26eからキャビティ17a内に射出され、充填される溶融樹脂M1、M2によりキャビティ17a内が完全に充填されるまでを最大として、この間の適宜時期まで継続して回転してもよい。
【0047】
第2実施形態は、キャビティ17a内への溶融樹脂の射出が2本の二次スプルー26a、26bから行われるが、樹脂ギヤPにおけるウェルドラインが貫通孔P1の周りに円弧を描くように形成される点では、第1実施形態と基本的に変わりはない。従って、第2実施形態においても第1実施形態と同様の作用、効果を達成することができる。
図12、13は、第2実施形態において樹脂ギヤPに形成されるウェルドラインWを示す。
【0048】
<他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、射出成形される樹脂製品として樹脂ギヤPの例を示したが、中心に貫通孔を備える樹脂製品であれば、樹脂ギヤP以外にも各種製品を造ることができる。また、上記実施形態では、二次スプルーが1本の例と2本の例を示したが、3本以上としてもよい。更に、上記実施形態では、キャビティ17aが可動側型板11内に形成される例を示したが、キャビティは固定型側に形成されてもよい。