特開2020-152117(P2020-152117A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-152117ガス排出構造体及びガス排出構造体の製造方法
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  • 特開2020152117-ガス排出構造体及びガス排出構造体の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-152117(P2020-152117A)
(43)【公開日】2020年9月24日
(54)【発明の名称】ガス排出構造体及びガス排出構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/34 20060101AFI20200828BHJP
【FI】
   B29C45/34
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2020-107434(P2020-107434)
(22)【出願日】2020年6月23日
(62)【分割の表示】特願2016-68752(P2016-68752)の分割
【原出願日】2016年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】391006083
【氏名又は名称】三光合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(72)【発明者】
【氏名】満嶋 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 久
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ02
4F202AJ10
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CD18
4F202CP02
4F202CP03
(57)【要約】
【課題】キャビティー内のガスを容易に排出できる効率の良い高い開口率を有し、3D形状の広範囲の部位からガス排出構造体を提供する。
【解決手段】
ガス排出構造体1は、本体2とこの本体2と一体な多孔質部3、を有し、本体2には複数のガス排出供給路4が形成され、複数のガス排出供給路4はその一端が多孔質部3に連通し、他端は少なくとも2以上のガス排出供給路4が集約されて単一の経路5を形成して本体2外側に開放される。本体2は多孔質部3よりも密な多孔質金属によって形成されており、またガス排出供給路4内側面4aは図示しないNC加工で仕上げられた平滑面とされている。これによって精密にガス流路断面Xの変化をなくし、ガス残滓堆積を防止することができる。多孔質部3の複数のガス排出供給路4との連通側面3aと、その反対側面3bとの間隔は4mm程度とされている。また、ガス排出供給路4と多孔質部3との連通部には溝部6が形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体とこの本体と一体な多孔質部、を有し、前記本体には成形金型への樹脂の射出に伴い成形金型内の空気を外部へ排出する複数のガス排出路が形成され、前記複数のガス排出路はその一端が前記多孔質部に連通し、他端は少なくとも2以上のガス排出路が集約されて単一の経路を形成して前記本体外側に開放されるガス排出構造体において、前記本体は前記多孔質部よりも密な多孔質金属によって形成され、前記ガス排出路内側面がNC加工仕上げ面とされると共に前記多孔質部の前記複数のガス排出路との連通側面と、その反対側面との間隔を1mm以上5mm以下にしてなることを特徴とするガス排出構造体。
【請求項2】
本体とこの本体と一体な多孔質部、を有し、前記本体には成形金型への樹脂の射出に伴い成形金型内の空気を外部へ排出する複数のガス排出路が形成され、前記複数のガス排出路はその一端が前記多孔質部に連通し、他端は少なくとも2以上のガス排出路が集約されて単一の経路を形成して前記本体外側に開放されるガス排出構造体の製造方法において、スキージングとレーザー焼結による造形と切削仕上げの繰り返しによって、下層から上層に向かって造型し、前記本体を前記多孔質部よりも密な多孔質金属によって形成すると共に、前記ガス排出路内側面をNC加工で仕上げた平滑面とし、前記多孔質部の前記複数のガス排出路との連通側面と、その反対側面との間隔を1mm以上5mm以下にすることを特徴とするガス排出構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス排出構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品の射出成形にあたっては、成形金型への樹脂の射出に伴い成形金型内の空気を外部へ排出する必要があることから、成形金型に微細間隙のガス排出構造体を配置している。このガス排出構造体は、ガス流路を形成するスリットを有してなり、このスリットとなるガス排出路は製品面ではガス排出構造体に樹脂が流入しないような溝幅と長さとし、製品面から離れた奥で断面が広く取られたガス排出路を複数設けた板を、ボルトを利用して締結した構造やピンを利用して位置決めした構造としていた。その様に、締結部ボルトや位置決めピンを設けるため、隣接するガス排出路の間隔を長く取った積層構造体としている結果、ガス排出路長さ/板長さの比を小さくしていた(特許文献1)。
またこのガス排出構造体を形成する板の厚みは、機械加工や成形圧力によるガス排出路構成板の変形を考慮して厚く設定していた。その結果、ガス排出路幅/板厚の比を小さくして一定厚みにおける板の積層枚数が少ない積層構造体としている市販品が存在した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−167714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の特許文献1に示されるガス排出構造体や市販品では構造体長さに対しスリット溝の合計長さが短いこと、構造体厚みに対し、板の積層枚数が少ないことなどから、開口率が低くガス排出効率が悪かった。このため金型キャビティー内への樹脂充填に伴い、単位時間あたりに排出が必要なガス排出量に比べ、スリット溝を通じて金型キャビティー外へ排出する能力が低いことから、ガスがキャビティー内に残留し、得られる樹脂製品の品質悪化の原因となっていた。
【0005】
積層方向のスリット溝の分布が粗であるために、樹脂合流の位置とガス排出路の位置が一致しないことが発生し、これを調整するために積層厚みを変える必要が生じていた。
さらにボルト締結や位置決めピンを有する構造のため、金型へ構造体を組み込む際に、構造体自身の組み立て作業や位置決め作業などを必要とした。
加えてガス排出路が製品面より奥で広がっているために、ガス残滓が集積しやすく、洗浄を行った際もガス残滓を除去しにくく、分解洗浄・組み立てが必要であった。
【0006】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、キャビティー内のガスを容易に排出できる効率の良い高い開口率を有し、3D形状の広範囲の部位から効率よくガスを排出することができるガス排出構造体及びガス排出構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガス排出構造体は、本体とこの本体と一体な多孔質部、を有し、前記本体には成形金型への樹脂の射出に伴い成形金型内の空気を外部へ排出する複数のガス排出路が形成され、前記複数のガス排出路はその一端が前記多孔質部に連通し、他端は少なくとも2以上のガス排出路が集約されて単一の経路を形成して前記本体外側に開放されるガス排出構造体において、前記本体は前記多孔質部よりも密な多孔質金属によって形成され、前記ガス排出路内側面がNC加工仕上げ面とされると共に前記多孔質部の前記複数のガス排出路との連通側面と、その反対側面との間隔を1mm以上5mm以下にしてなることを特徴とする。
【0008】
これによって単一の経路を介してエアを供給することが可能となり、ガス排出路とエア供給源との接続が簡易となる。すなわちエア供給源を単一の経路に接続することによって単一の経路を介して複数のガス排出路から製品全面にガスを供給することが可能となる。ガス排出構造体自体のシンナー等を用いた洗浄も単一の経路を介して複数のガス排出路にシンナー等を供給して簡便に行うことができる。
【0009】
前記本体が前記多孔質部よりも密な多孔質金属によって形成され、また前記ガス排出路内側面はNC加工で仕上げられた平滑面であるようにすることによって精密にガス流路断面の変化をなくし、ガス残滓堆積を防止することができる。またガス流路内側面の清掃作業も容易となる。
【0010】
前記多孔質部の前記複数のガス排出路との連通側面と、その反対側面との間隔が1mm以上5mm以下にされてなるようにしてもよい。
1mm未満である場合には金型に充填される樹脂溶湯の圧力に耐える剛性が不足する。一方、5mmを越える場合には、ガス排出効率が低下する。
【0011】
前記ガス排出路と前記多孔質部との連通部には溝部が形成されるようにすることによって、成形樹脂が通過する際に各所から順次ガスを抜くことができ広範囲のガスを効率よく排出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス排出構造体によれば、射出成形金型に組み込まれるガス排出構造体には、樹脂圧に耐える強度と、量産全期間にわたって、樹脂の1方向流れの末端付近や対向流の合流位置付近において、キャビティー内のガスを容易に排出するため入り口から出口まで高い開口率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るガス排出構造体の一実施の形態の模式断面図である。
図2】本発明に係るガス排出構造体の一実施の形態の模式外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の一実施の形態のガス排出構造体につき図面を参照して説明する。
図1に示す様に本実施の形態のガス排出構造体1は、本体2とこの本体2と一体な多孔質部3、を有し、本体2には成形金型への樹脂の射出に伴い成形金型内の空気を外部へ排出する複数のガス排出路4が形成され、複数のガス排出路4はその一端が多孔質部3に連通し、他端は少なくとも2以上のガス排出路4が集約されて単一の経路5を形成して本体2外側に開放される。
図2に示す様にガス排出構造体1はその外面、特には多孔質部3の外面が製品形状に沿う曲面を有するものであっても、複数のガス排出路4を介して広範囲の部位からガスを排出し、また供給することができる。
【0015】
本体2は多孔質部3よりも密な多孔質金属によって形成されており、またガス排出路4内側面4aは図示しないNC加工で仕上げられた平滑面とされている。これによって精密にガス流路断面Xの変化をなくし、ガス残滓堆積を防止することができる。
【0016】
多孔質部3の複数のガス排出路4との連通側面3aと、その反対側面3bとの間隔は4mm程度とされている。
また、ガス排出路4と多孔質部3との連通部には溝部6が形成されている。
【0017】
以上の本実施の形態のガス排出構造体1は以下のプロセスで製造することができる。
1.スキージング
造形・加工テーブル上に、ガス排出構造体1の材料となる金属粉末を0.05ミリメートル厚に積層する。
2.レーザー焼結
次に造形・加工テーブル上に積層されたガス排出構造体1の材料となる金属粉末にレーザーを照射し、金属粉末を製品形状に焼結させ造形・加工テーブルに接合する。焼結が終わるとスキージングにより次層となる0.05ミリメートル厚の金属粉末材料を供給する。再度その金属粉末をレーザで焼結させ積層していく。以上の1.スキージングと2,レーザー焼結を10回繰り返し、0.5ミリメートル厚まで積層した時点で、切削加工を行う。
3.切削加工
エンドミルによって以上の1.スキージングと2,レーザー焼結によって得られた造形物の輪郭を高速で精密に切削し、仕上げを行う。
4.スキージング→レーザー焼結→切削加工の反復
以上の1.スキージングと2,レーザー焼結による造形と3.切削仕上げの繰り返しにより、ガス排出構造体1を下層から上層に向かって構築し造型する。
【0018】
以上の工程で製造される結果、ガス排出構造体1は本体2と多孔質部3とが一体構造のものとして得られる。しかもその製造過程においてどのような複雑な内部形状であっても成形できることから、ガス排出路4を本体2の内部形状としてNC加工で仕上げられた平滑面4aを備えるものとして成形できる。
【0019】
上記金型を用いて射出成形を行なう樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレレン−エチレンテレフタレート(PBT−PET共重合樹脂)、ポリエーテル・エーテルケトン(PEEK樹脂)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、6ナイロン(PA6)、6−6ナイロン(PA66)、6Tナイロン(PA6T)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアセタール(POM)、液晶ポリマー(LCP)、ポリサルホン(PSU)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、等の熱可塑性樹脂である。これらを単独又は混合して用いることができる。また、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、シリコーン樹脂(SI)、ポリイミド樹脂(PI)、メラミン樹脂(MF)、ユリア樹脂(UF)等の熱硬化性樹脂である。これらの熱可塑性樹脂ならびに熱硬化性樹脂に、耐熱性や寸法安定性を向上させる目的で、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルク等の無機充填材を適宜配合してもよい。またセルロースナノファイバー等の有機充填剤を適宜配合しても良い。
【符号の説明】
【0020】
1・・・ガス排出構造体、2・・・本体、4・・・ガス排出路、5・・・経路、6・・・溝部。
図1
図2