【解決手段】空気入りタイヤは、複数の主溝30及び複数の横溝31により区画され、タイヤ周方向CDに沿って配置される複数のブロック陸部32を有する。各々のブロック陸部32は、タイヤ幅方向WDに延び且つブロック陸部32内で終端する平面視波状の複数のクローズドサイプ33と、ブロック陸部32のタイヤ周方向中央部において両端が主溝30に開口する平面視波状のオープンサイプ34と、を有する。オープンサイプ34の振幅Woは、クローズドサイプ33の振幅Wcよりも大きく、オープンサイプ34の波長Loは、クローズドサイプ33の波長Lcよりも小さい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態の空気入りタイヤについて、図面を参照して説明する。図において、「CD」はタイヤ周方向を意味し、「WD」はタイヤ幅方向を意味し、「RD」はタイヤ径方向を意味する。各図は、タイヤ新品時の形状を示す。
【0011】
図1に示すように、空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、各々のビード部1からタイヤ径方向外側RD1に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向外側RD1端同士を連ねるトレッド部3とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配置されている。ビード部1は、リム8のビードシート8bに装着され、空気圧が正常(例えばJATMAで決められた空気圧)であれば、タイヤ内圧によりリムフランジ8aに適切にフィッティングし、タイヤがリム8に嵌合される。
【0012】
また、このタイヤは、一対のビード部1の間に架け渡されるように配され、トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部1に至るトロイド状のカーカス層4を備える。カーカス層4は、少なくとも一枚のカーカスプライにより構成され、その端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカス層4の内周側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム(図示せず)が配置されている。
【0013】
トレッド部3におけるカーカス層4の外周には、たが効果によりカーカス層4を補強するベルト層5が配置されている。ベルト層5は、タイヤ周方向に対して所定角度で傾斜して延びるコードを有する2枚のベルトプライを有し、各プライはコードが互いに逆向き交差するように積層されている。ベルト層5の外周側には、ベルト補強層7が配され、更にその外周側表面には、トレッドパターンが形成されたトレッドゴムが配置されている。
【0014】
上述したゴム層等の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。また、これらのゴムはカーボンブラックやシリカ等の充填材で補強されると共に、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等が適宜配合される。
【0015】
図2は、本実施形態のタイヤのトレッドパターンを示す平面図である。
図2に示すように、本実施形態のタイヤのトレッドには、複数の主溝30及び複数の横溝31が形成されている。主溝30及び横溝31により、タイヤ周方向に沿って複数のブロック陸部32が配列されている。
図2に例示するタイヤは、第1ブロック列G1と、第2ブロック列G2と、を有する。第1ブロック列G1は、タイヤ赤道CLを通って配置される複数のブロック陸部32(センター陸部32a)を有する。第2ブロック列G2は、第1ブロック列G1に隣接し且つタイヤ周方向CDに沿って配置される複数のブロック陸部32(メディエイト陸部32b)を有する。また、トレッドは、第3ブロック列G3を有する。第3ブロック列G3は、複数のショルダーブロック陸部32cを有する。複数のショルダーブロック陸部32cは、タイヤ幅方向WDの最も外側に配置される最外主溝30aと横溝31に区画され且つタイヤ周方向CDに沿って配置される。
図2の例では、トレッドにおける全ての陸部がブロック陸部であるが、これに限定されない。例えば、横溝により区画されずタイヤ周方向CDに連続するリブが陸部の一部として設けられていてもよい。
【0016】
図2及び
図3に示すように、センター陸部32a及びメディエイト陸部32bは、平面視波状の複数のクローズドサイプ33と、平面視波状のオープンサイプ34と、を有する。クローズドサイプ33は、タイヤ幅方向WDに延び且つブロック陸部内で終端する。オープンサイプ34は、タイヤ幅方向WDに延び且つブロック陸部32のタイヤ周方向中央部において両端が主溝30に開口する。オープンサイプ34がタイヤ周方向中央部に配置されるとは、オープンサイプ34が、タイヤ周方向中央線L1に重なっていればよいとの意味である。このように、オープンサイプ34がブロック陸部32を略二等分にすることでオープンサイプ34を隔ててタイヤ周方向CDの両側にある陸部の偏摩耗の悪化を抑制することが可能となる。
【0017】
図4は、クローズドサイプ33及びオープンサイプ34を示す。
図4に示すように、オープンサイプ34の振幅Woは、クローズドサイプ33の振幅Wcよりも大きい。オープンサイプ34の波長Loは、クローズドサイプ33の波長Lcよりも小さい。このような振幅及び波長の関係であれば、クローズドサイプ33に比べてオープンサイプ34の壁面同士が接触しやすくなり、オープンサイプ34によるブロック陸部32の過度な動きが抑止される。サイプの壁面同士の接触によるブロック陸部32の過度な動きを抑制する効果を的確に発生させるためには、オープンサイプ34及びクローズドサイプ33の長さは、少なくとも2周期以上あることが好ましい。なお、サイプの振幅及び波長は、サイプが延びる方向を基準とする。
【0018】
図4に示す実施形態では、オープンサイプ34の振幅Woは3.0mmであるが、これに限定されない。例えば、オープンサイプ34の振幅Woは1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。オープンサイプ34の波長Lcは4.8mmであるが、これに限定されない。例えば、オープンサイプ34の波長Lcは3.0mm以上7.0mm以下であることが好ましい。
【0019】
図4に示す実施形態では、クローズドサイプ33の振幅Wcは2.0mmであり、オープンサイプ34の振幅Woはクローズドサイプ33の振幅Wcの1.5倍であるが、これに限定されない。オープンサイプ34の振幅Woは、クローズドサイプ33の振幅Wcの1.2倍以上且つ3.0倍以下であることが好ましい。Wo/Wcが1.2よりも小さければブロック陸部32の過度な動きの抑制効果が小さくなり、偏摩耗発生の要因となるからである。アイス性能を向上させるためには、ブロック陸部32を小さくし且つサイプの数を多くする(サイプ密度を上げる)ことが有効である。しかしながら、Wo/Wcが3.0より大きいとオープンサイプ34の振幅が大きすぎて、クローズドサイプ33を設ける数が少なくなり(サイプ密度が下がる)、ブロック陸部32を小さく且つサイプの数を多くすることが難しくなり、アイス性能の低下の要因となるからである。
【0020】
図4に示す実施形態では、クローズドサイプ33の波長Lcは6.0mmであり、オープンサイプ34の波長Loはクローズドサイプ33の波長Lcの0.8倍であるが、これに限定されない。オープンサイプ34の波長Loはクローズドサイプ33の波長Lcの0.5倍以上且つ0.9倍以下であることが好ましい。Lo/Lcが0.9より大きいとブロック陸部32の過度な動きの抑制効果が小さくなり、偏摩耗発生の要因となるからである。Lo/Lcが0.5より小さいと、オープンサイプ34の角が鋭角になり過ぎるため、偏摩耗の起点又はクラックの起点になりやすいからである。
【0021】
図2及び
図3に示すように、第1ブロック列G1におけるオープンサイプ34及びクローズドサイプ33の向きと、第2ブロック列G2におけるオープンサイプ34及びクローズドサイプ33の向きとが、タイヤ幅方向WDに対して互いに逆向きである。例えば、第1ブロック列G1におけるオープンサイプ34及びクローズドサイプ33の向きは、右下がりである。言い換えれば、第1ブロック列G1におけるサイプは、タイヤ幅方向第1方向WD1及びタイヤ周方向第1方向CD1に向かって延びている。第2ブロック列G2におけるオープンサイプ34及びクローズドサイプ33の向きは、右上がりである。言い換えれば、第2ブロック列G2におけるサイプは、タイヤ幅方向第1方向WD1及びタイヤ周方向第2方向CD2に向かって延びている。仮に、サイプ33、34の向きが全て同じ方向であれば、サイプ33、34で生じるトラクションによりタイヤ幅方向の一方へタイヤが流れてしまう。本実施形態では、互いに隣接する第1ブロック列G1及び第2ブロック列G2のそれぞれのサイプ33、34の向きが、タイヤ幅方向WDに対して互いに逆方向であるので、サイプ33、34により生じるトラクションでタイヤ幅方向WDの一方に流れることを防止することが可能となる。
【0022】
図4に示すように、クローズドサイプ33及びオープンサイプ34は、3Dサイプであるが、これに限定されず、2Dサイプであってもよい。3Dサイプは、三次元方向(タイヤ周方向、タイヤ幅方向及びタイヤ深さ方向)に変形しながら延びているサイプである。2Dサイプは、二次元方向(タイヤ周方向、タイヤ幅方向)に変形しながら延びているサイプであり、タイヤ深さ方向には変形しない。同図に示すように、クローズドサイプ33及びオープンサイプ34は、ともにサイプ深さが8.5mmで同じであり、サイプ底に2Dサイプ部分(2D)を有する。2Dサイプ部分は深さ方向1.5mmである。オープンサイプ34は、踏面36からサイプ底部付近まで3Dサイプ部分(3D)を有する。クローズドサイプ33は、踏面36から所定深さまで2Dサイプ部分(2D)を有し、2Dサイプ部分の下に3Dサイプ部分(3D)を有し、更に3Dサイプ部分の下に2Dサイプ部分(2D)を有する。
【0023】
図4に示すように、オープンサイプ34のサイプ幅tは0.7mm、クローズドサイプ33のサイプ幅は0.3mmであるが、これに限定されない。例えば、サイプ幅は0.3mm以上且つ1.0mm以下であることが好ましい。3Dサイプ部分のサイプ幅は、2Dサイプ部分のサイプ幅tの1.5倍以上3.0倍以下であることが好ましい。サイプ幅tが太ければ、給水性能が向上するためアイス性能が向上するが、逆にブロック陸部32の剛性が低下する。しかし、オープンサイプ34はブロック陸部32の中央部に配置されているので、オープンサイプ34のサイプ幅tを太くすることによるブロック陸部32の剛性低下の影響は限定的で少なく、オープンサイプ34とクローズドサイプ33とでバランスをとっている。
【0024】
新品時から摩耗中期にかけて、サイプ深さが深くブロック陸部32の剛性が低いためブロック陸部32自体の動きが大きくなりやすい。そこで、
図4に示すように、サイプ底に2Dサイプ部分(2D)が配置され、その上に3Dサイプ部分(3D)が配置される構成であるので、3Dサイプによりブロック陸部32の過度な動きを抑制でき、アイス性能の低下及び偏摩耗の発生を抑制可能となる。一方、摩耗中期以降は、サイプ深さが浅くなり、ブロック陸部32自体の剛性が上がり、3Dサイプ形状にすれば、ブロック陸部32の動きが拘束され路面への追従性が低下する。そこで、サイプ底には2Dサイプ部分(2D)を採用することでブロック陸部32を適度に動かすことで路面への追従性を高め偏摩耗の発生を抑制可能となる。
【0025】
また、
図4に示すように、オープンサイプ34は、クローズドサイプ33よりもタイヤ深さ方向における3Dサイプが占める割合が大きい。このように、3Dサイプが占める割合をクローズドサイプ33よりもオープンサイプ34が大きくなれば、よりブロックの過度な動きを抑制でき、アイス性能の低下及び偏摩耗の発生を抑制することができる。
【0026】
図2及び
図5に示すように、ショルダーブロック陸部32cは、平面視波状の縦オープンサイプ35を有する。縦オープンサイプ35は、両端が横溝31に開口し且つショルダーブロック陸部32cをタイヤ幅方向WDの外側陸部32dと内側陸部32eに区画する。旋回時にショルダーブロック陸部32cには横方向の力が加わり、ショルダーブロック陸部32cにおける外側陸部32dが内側陸部32eに対してタイヤ周方向CDに沿ってスライドするような動きが発生する。縦オープンサイプ35が平面視波状のサイプであるので、ショルダーブロック陸部32cにおける外側陸部32dの内側陸部32eに対する過度な動きが低減され、偏摩耗を抑制可能となる。偏摩耗の抑制効果を的確に発生させるためには、縦オープンサイプ35の振幅は少なくとも2.0mm以上あることが好ましい。また、偏摩耗の抑制効果を的確に発生させるためには、縦オープンサイプ35の長さは、少なくとも2周期以上あることが好ましい。なお、ショルダーブロック陸部32cは、センター陸部32a及びメディエイト陸部32bと同様に、複数のクローズドサイプ33を有する。
【0027】
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤは、
複数の主溝30及び複数の横溝31により区画され、タイヤ周方向CDに沿って配置される複数のブロック陸部32を備え、
各々のブロック陸部32は、タイヤ幅方向WDに延び且つブロック陸部32内で終端する平面視波状の複数のクローズドサイプ33と、ブロック陸部32のタイヤ周方向中央部において両端が主溝30に開口する平面視波状のオープンサイプ34と、を有し、
オープンサイプ34の振幅Woは、クローズドサイプ33の振幅Wcよりも大きく、オープンサイプ34の波長Loは、クローズドサイプ33の波長Lcよりも小さい。
【0028】
このように、オープンサイプ34及びクローズドサイプ33を設けることで、サイプ33、34のエッジ効果によりアイス性能を向上させることが可能となる。しかし、オープンサイプ34は、クローズドサイプ33に比べてブロック陸部32の動きを大きくするので、オープンサイプ34の両側にある陸部の偏摩耗を招来しやすい。
そこで、両端が主溝30に開口するオープンサイプ34が、ブロック陸部32のタイヤ周方向中央部に配置されているので、オープンサイプ34を隔ててタイヤ周方向CDの両側にある陸部の偏摩耗の悪化を抑制可能となる。それでいて、オープンサイプ34の振幅Woがクローズドサイプ33の振幅Wcよりも大きく、オープンサイプ34の波長Loがクローズドサイプ33の波長Lcよりも小さくすることで、オープンサイプ34の壁面同士が接触しやすくなりオープンサイプ34によるブロック陸部32の過度な動きが抑制され、アイス性能を確保しながら、偏摩耗を抑制可能となる。
【0029】
本実施形態のように、オープンサイプ34の振幅Woは、クローズドサイプ33の振幅Wcの1.2倍以上且つ3.0倍以下であることが好ましい。
【0030】
このように、Wo/Wcが1.2よりも小さければブロック陸部32の過度な動きの抑制効果が小さくなり、偏摩耗発生の要因となるからである。アイス性能を向上させるためには、ブロック陸部32を小さくし且つサイプの数を多くする(サイプ密度を上げる)ことが有効である。しかしながら、Wo/Wcが3.0より大きいとオープンサイプ34の振幅が大きすぎて、クローズドサイプ33を設ける数が少なくなり(サイプ密度が下がる)、ブロック陸部32を小さく且つサイプの数を多くすることが難しくなり、アイス性能の低下の要因となるからである。
【0031】
本実施形態のように、オープンサイプ34の波長Loは、クローズドサイプ33の波長Lcの0.5倍以上0.9倍以下であることが好ましい。
【0032】
このように、Lo/Lcが0.9より大きいとブロック陸部32の過度な動きの抑制効果が小さくなり、偏摩耗発生の要因となるからである。Lo/Lcが0.5より小さいと、オープンサイプ34の角が鋭角になり過ぎるため、偏摩耗の起点又はクラックの起点になりやすくいからである。
【0033】
本実施形態のように、オープンサイプ34の振幅Woは、1.0mm以上且つ5.0mm以下であり、オープンサイプ34の波長Loは、3.0mm以上且つ7.0mm以下であることが好ましい。これは、好適な実施形態である。
【0034】
本実施形態のように、タイヤ赤道CLを通って配置される複数のブロック陸部32を有する第1ブロック列G1と、第1ブロック列G1に隣接する第2ブロック列G2と、を有し、第1ブロック列G1におけるオープンサイプ34及びクローズドサイプ33の向きと、第2ブロック列G2におけるオープンサイプ34及びクローズドサイプ33の向きとが、タイヤ幅方向WDに対して互いに逆向きであることが好ましい。
【0035】
この構成によれば、サイプ33、34により生じるトラクションでタイヤ幅方向WDの一方に流れることを防止することが可能となる。
【0036】
本実施形態のように、タイヤ幅方向WDの最も外側に配置される最外主溝30aと、最外主溝30a及び横溝31に区画され且つタイヤ周方向CDに沿って配置される複数のショルダーブロック陸部32cと、を有し、各々のショルダーブロック陸部32cは、両端が横溝31に開口し且つショルダーブロック陸部32cをタイヤ幅方向WDの外側と内側に区画する平面視波状の縦オープンサイプ35を有することが好ましい。
【0037】
旋回時にショルダーブロック陸部32cには横方向の力が加わり、ショルダーブロック陸部32cの外側陸部32dが内側陸部32eに対してタイヤ周方向CDに沿ってスライドするような動きが発生する。しかし、縦オープンサイプ35が平面視波状のサイプであるので、ショルダーブロック陸部32cにおける外側陸部32dの内側陸部32eに対する過度な動きが低減され、偏摩耗を抑制可能となる
【0038】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0039】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。