特開2020-152600(P2020-152600A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-152600炭酸カルシウム焼結体及びその製造方法並びに骨補填材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-152600(P2020-152600A)
(43)【公開日】2020年9月24日
(54)【発明の名称】炭酸カルシウム焼結体及びその製造方法並びに骨補填材
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/057 20060101AFI20200828BHJP
   B28B 3/02 20060101ALI20200828BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20200828BHJP
   C04B 35/64 20060101ALI20200828BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20200828BHJP
   A61L 27/02 20060101ALI20200828BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20200828BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20200828BHJP
【FI】
   C04B35/057
   B28B3/02 P
   C04B38/00 303Z
   C04B35/64
   A61F2/28
   A61L27/02
   A61L27/40
   A61L27/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-51208(P2019-51208)
(22)【出願日】2019年3月19日
(71)【出願人】
【識別番号】391009187
【氏名又は名称】株式会社白石中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜沼 英郎
(72)【発明者】
【氏名】古澤 利武
(72)【発明者】
【氏名】梅本 奨大
(72)【発明者】
【氏名】田近 正彦
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
4G019
4G054
【Fターム(参考)】
4C081AB03
4C081BA12
4C081CF111
4C081CF112
4C081DC01
4C081EA04
4C097AA01
4C097BB01
4C097DD06
4C097MM02
4C097MM03
4C097MM04
4G019FA15
4G054AA06
4G054AC00
4G054BA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】焼結助剤を用いずとも、良好な焼結体を得ることができる、炭酸カルシウム焼結体の製造方法を提供する。
【解決手段】炭酸カルシウムを圧縮成形し、成形体を作製する工程と、温度500℃以下の条件下で前記成形体を加熱することにより、前記成形体中に含まれる有機成分を除去する工程と、炭酸ガス雰囲気かつ温度450℃以上の条件下で前記成形体を焼結させることにより、炭酸カルシウム焼結体を得る工程とを備えることを特徴としている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムが99.5質量%以上含まれており、走査型電子顕微鏡により測定した粒子径分布における平均粒子径が、0.1μm〜20μmであり、ビッカース硬さが50HV1.0以上であり、かつ相対密度が90%以上である、炭酸カルシウム焼結体。
【請求項2】
炭酸カルシウムが99.7質量%以上含まれている、請求項1に記載の炭酸カルシウム焼結体。
【請求項3】
炭酸カルシウムを圧縮成形し、成形体を作製する工程と、温度500℃以下の条件下で前記成形体を加熱することにより、前記成形体中に含まれる有機成分を除去する工程と、炭酸ガス雰囲気かつ温度500℃以上の条件下で前記成形体を焼結させることにより、炭酸カルシウム焼結体を得る工程とを備える、炭酸カルシウム焼結体の製造方法。
【請求項4】
温度500℃以下の条件下での前記成形体の加熱を酸素ガス雰囲気下で行なう、請求項3に記載の炭酸カルシウム焼結体の製造方法。
【請求項5】
前記炭酸カルシウムにおいて、透過型電子顕微鏡により測定した粒子径分布における平均粒子径が、0.05μm〜0.30μmであり、BET比表面積が、5m/g〜25m/gである、請求項3又は4に記載の炭酸カルシウム焼結体の製造方法。
【請求項6】
前記炭酸カルシウムの純度が99.9質量%以上である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム焼結体の製造方法。
【請求項7】
炭酸カルシウムが95質量%以上含まれており、気孔率が10%以上であり、かつ白色度が85以上である、炭酸カルシウム多孔質焼結体。
【請求項8】
炭酸カルシウムが99質量%以上含まれている、請求項7に記載の炭酸カルシウム多孔質焼結体。
【請求項9】
焼結体の外部に至る連通孔が形成されている、請求項7又は8に記載の炭酸カルシウム多孔質焼結体。
【請求項10】
炭酸カルシウムを含む分散液を調製する工程と、前記分散液に発泡剤を添加した後撹拌して泡立て、発泡体を作製する工程と、温度500℃以下の条件下で前記発泡体を加熱することにより、前記発泡体中に含まれる有機成分を除去する工程と、炭酸ガス雰囲気かつ温度450℃以上の条件下で前記発泡体を焼結させることにより、炭酸カルシウム多孔質焼結体を得る工程とを備える、炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法。
【請求項11】
温度500℃以下の条件下での前記発泡体の加熱を酸素ガス雰囲気下で行なう、請求項10に記載の炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法。
【請求項12】
前記分散液が、前記炭酸カルシウムを20体積%以上含有する、請求項10又は11に記載の炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法。
【請求項13】
請求項1もしくは2に記載の炭酸カルシウム焼結体又は請求項7〜9のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム多孔質焼結体を炭酸カルシウム換算で全体の70重量%以上含む、骨補填材。
【請求項14】
請求項1もしくは2に記載の炭酸カルシウム焼結体又は請求項7〜9のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム多孔質焼結体によって一部又は全ての表面がコーティングされている、骨補填材。
【請求項15】
請求項1もしくは2に記載の炭酸カルシウム焼結体又は請求項7〜9のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム多孔質焼結体を炭酸カルシウム換算で全体の70重量%以上含む、養殖真珠の成長核。
【請求項16】
請求項1もしくは2に記載の炭酸カルシウム焼結体又は請求項7〜9のいずれか1項に記載の炭酸カルシウム多孔質焼結体を炭酸カルシウム換算で全体の70重量%以上含む、水質浄化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム焼結体及びその製造方法、炭酸カルシウム多孔質焼結体及びその製造方法、並びに炭酸カルシウム焼結体又は炭酸カルシウム多孔質焼結体を用いた骨補填材、養殖真珠の成長核、水質浄化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウム焼結体は、骨欠損部に補填して骨再生を促すための材料(人工骨)、養殖真珠の人工核として母貝に埋殖する核の材料、フッ素やリンなどの吸着を行う水質浄化剤などへの応用が期待されており、その製造方法について種々研究されている。従来の炭酸カルシウム焼結体の製造方法では、一般に、炭酸カルシウムと焼結助剤の混合物を静水圧プレスにより成形体とし、この成形体を炭酸ガス雰囲気中で焼結することにより製造されている(特許文献1及び非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−254240号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】都祭聡子ら“炭酸カルシウムの焼結における出発物質の影響”無機マテリアル学会学術講演会講演要旨集 Vol.105th P.46−47 (2002.11.14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、骨補填材としての人工骨などに炭酸カルシウムの利用が検討されている。
【0006】
しかしながら、従来の炭酸カルシウム焼結体の製造方法は、上記のように焼結助剤を必要とするため、不純物含有量を少なくすることが困難であった。そのため、骨補填材などの生体用途に用いることができない場合があった。
【0007】
また、従来の炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法では、得られた炭酸カルシウム多孔質焼結体が着色する場合もあった。
【0008】
また、焼結助剤を必要としない高純度炭酸カルシウム焼結体の製造方法では、密度を十分に高めることができず、良好な焼結体が得られない場合もあった。
【0009】
本発明の目的は、焼結助剤を用いずとも、良好な焼結体を得ることができる、炭酸カルシウム焼結体の製造方法及び炭酸カルシウム焼結体、炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法及び炭酸カルシウム多孔質焼結体、並びに炭酸カルシウム焼結体又は炭酸カルシウム多孔質焼結体を用いた骨補填材、養殖真珠の成長核、及び水質浄化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る炭酸カルシウム焼結体は、炭酸カルシウムが99.5質量%以上含まれており、走査型電子顕微鏡により測定した粒子径分布における平均粒子径が、0.1μm〜20μmであり、ビッカース硬さが50HV1.0以上であり、かつ相対密度が90%以上であることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る炭酸カルシウム焼結体おいては、炭酸カルシウムが99.7質量%以上含まれていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る炭酸カルシウム焼結体の製造方法は、炭酸カルシウムを圧縮成形し、成形体を作製する工程と、温度500℃以下の条件下で前記成形体を加熱することにより、前記成形体中に含まれる有機成分を除去する工程と、炭酸ガス雰囲気かつ温度500℃以上の条件下で前記成形体を焼結させることにより、炭酸カルシウム焼結体を得る工程とを備えることが好ましい。
【0013】
本発明に係る炭酸カルシウム焼結体の製造方法においては、温度500℃以下の条件下での前記成形体の加熱を酸素ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0014】
本発明に係る炭酸カルシウム焼結体の製造方法においては、前記炭酸カルシウムにおいて、透過型電子顕微鏡により測定した粒子径分布における平均粒子径が、0.05μm〜0.30μmであり、BET比表面積が、5m/g〜25m/gであることが好ましい。
【0015】
本発明に係る炭酸カルシウム焼結体の製造方法においては、前記炭酸カルシウムの純度が99.9質量%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質焼結体は、炭酸カルシウムが95質量%以上含まれており、気孔率が10%以上であり、かつ白色度が85以上であることを特徴としている。
【0017】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質焼結体は、炭酸カルシウムが99質量%以上含まれていることが好ましい。
【0018】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質焼結体は、焼結体の外部に至る連通孔が形成されていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法は、炭酸カルシウムを含む分散液を調製する工程と、前記分散液に発泡剤を添加した後撹拌して泡立て、発泡体を作製する工程と、温度500℃以下の条件下で前記発泡体を加熱することにより、前記発泡体中に含まれる有機成分を除去する工程と、炭酸ガス雰囲気かつ温度450℃以上の条件下で前記発泡体を焼結させることにより、炭酸カルシウム多孔質焼結体を得る工程とを備えることを特徴としている。
【0020】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法は、温度500℃以下の条件下での前記発泡体の加熱を酸素ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0021】
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法は、前記分散液が、前記炭酸カルシウムを20体積%以上含有することが好ましい。
【0022】
本発明に係る骨補填材は、本発明に従って構成される炭酸カルシウム焼結体又は本発明に従って構成される炭酸カルシウム多孔質焼結体を炭酸カルシウム換算で全体の70重量%以上含むことを特徴としている。
【0023】
本発明に係る骨補填材は、本発明に従って構成される炭酸カルシウム焼結体又は本発明に従って構成される炭酸カルシウム多孔質焼結体によって一部又は全ての表面がコーティングされていることを特徴としている。
【0024】
本発明に係る養殖真珠の成長核は、本発明に従って構成される炭酸カルシウム焼結体又は本発明に従って構成される炭酸カルシウム多孔質焼結体を炭酸カルシウム換算で全体の70重量%以上含むことを特徴としている。
【0025】
本発明に係る水質浄化剤は、本発明に従って構成される炭酸カルシウム焼結体又は本発明に従って構成される炭酸カルシウム多孔質焼結体を炭酸カルシウム換算で全体の70重量%以上含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の炭酸カルシウム焼結体の製造方法及び炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法によれば、焼結助剤を用いずとも、良好な焼結体を得ることができる。
【0027】
本発明の炭酸カルシウム焼結体は、不純物含有量が少なく、生体用途などにも用いることができる。また、本発明の炭酸カルシウム焼結体は、密度も高められており、強度が向上している。
【0028】
本発明の炭酸カルシウム多孔質焼結体は、不純物含有量が少なく、生体用途などにも用いることができる。また、本発明の炭酸カルシウム多孔質焼結体は、白色度も高められている。
【0029】
本発明の骨補填材は、不純物含有量が少なく、生体安全性が高められている。
【0030】
本発明に係る養殖真珠の成長核は、現在主に用いられている天然貝の殻に比べ、大きさの操作が容易で大量に生産することが可能である。
【0031】
本発明に係る水質浄化剤は、焼結を行うことにより水中で崩壊する恐れがなく使用性、操作性が高められている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施例2の条件で、焼結温度のみ変化させたときの相対密度を示すグラフである。
図2図2は、焼結温度600℃で1時間本焼結を行って得られた炭酸カルシウム焼結体を示す倍率30000倍の走査型電子顕微鏡写真である。
図3図3は、焼結温度650℃で1時間本焼結を行って得られた炭酸カルシウム焼結体を示す倍率10000倍の走査型電子顕微鏡写真である。
図4図4は、焼結温度700℃で1時間本焼結を行って得られた炭酸カルシウム焼結体を示す倍率5000倍の走査型電子顕微鏡写真である。
図5図5は、焼結温度800℃で1時間本焼結を行って得られた炭酸カルシウム焼結体を示す倍率1000倍の走査型電子顕微鏡写真である。
図6】実施例4の炭酸カルシウム多孔質焼結体顆粒を雄ラットの頭蓋骨に埋入し、作製した観察試料の様子を示す写真である。
図7】比較例4のβ−TCP人工骨顆粒を雄ラットの頭蓋骨に埋入し、作製した観察試料の様子を示す写真である。
図8】実施例4及び比較例4における観察試料中の新生骨、埋入材、繊維状組織の面積率を算出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0034】
[炭酸カルシウム焼結体の製造方法]
本発明に係る炭酸カルシウム焼結体の製造方法は、炭酸カルシウムを圧縮成形し、成形体を作製する工程と、温度500℃以下の条件下で成形体を加熱することにより、成形体中に含まれる有機成分を除去する工程と、炭酸ガス雰囲気かつ温度450℃以上の条件下で成形体を焼結させることにより、炭酸カルシウム焼結体を得る工程とを備える。
【0035】
(炭酸カルシウム)
本発明に用いる炭酸カルシウムにおいて、透過型電子顕微鏡観察により測定した粒子径分布における平均粒子径(D50)は、0.05μm〜0.50μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.05μm〜0.30μmの範囲内であり、さらに好ましくは0.08μm〜0.30μmの範囲内であり、特に好ましくは0.10μm〜0.25μmの範囲内である。平均粒子径(D50)をこのような範囲内にすることにより、密度のより一層高い成形体を作製することができ、密度のより一層高い炭酸カルシウム焼結体を製造することができる。透過型電子顕微鏡観察による粒子径分布は、測定対象である炭酸カルシウムを透過型電子顕微鏡観察で1000個以上測定することにより求めることができる。
【0036】
本発明において用いる炭酸カルシウムは、例えば、一般的によく知られた石灰乳に炭酸ガスを吹き込んで反応させる炭酸ガス化合法により製造することができる。特に、平均粒子径(D50)が0.1μmを超える粒子については特許第0995926号の製造方法に従い製造することができる。
【0037】
本発明において用いる炭酸カルシウムのBET比表面積は、5m/g〜25m/gであることが好ましく、7m/g〜20m/gであることがより好ましく、8m/g〜15m/gであることがさらに好ましい。BET比表面積を上記の範囲内にすることにより、炭酸カルシウムの焼結性をより一層高めることができる。このため、密度のより一層高い炭酸カルシウム焼結体を製造することができる。
【0038】
本発明において用いる炭酸カルシウムの純度は、99.0質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることがより好ましく、99.6質量%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明においては、純度が99.7質量%以上である高純度の炭酸カルシウムを用いてもよい。高純度の炭酸カルシウムを用いることにより、生体安全性が要求される生体用途により一層好適に用いることができる。また、焼結の際に添加する焼結助剤の量をより一層少なくすることができる。炭酸カルシウムの純度は、99.8質量%以上であることがより好ましく、99.9質量%以上であることがさらに好ましく、99.95質量%以上であることが特に好ましい。このような高純度の炭酸カルシウムは、例えば、特開2012−240872号公報に開示された方法で製造することができる。
【0040】
なお、炭酸カルシウムの純度の上限値は特に限定されるものではないが、一般には、99.9999質量%である。
【0041】
純度の高い炭酸カルシウムを用いることにより、純度が高くない炭酸カルシウムを用いた場合に比べ、焼結温度を低くすることもできる。
【0042】
(成形体)
本発明においては、炭酸カルシウム粉末を圧縮成形して成形体を作製する。圧縮成形は、一軸成形であることが好ましい。本発明によれば、一軸成形による成形体を用いて、高い密度を有する炭酸カルシウム焼結体を製造することができる。しかしながら、本発明においては、一軸成形に限定されるものではなく、静水圧プレス成形、あるいはドクターブレード成形、鋳込み成形など他に知られた成形方法により成形体を作製してもよい。
【0043】
本発明において、成形体の相対密度は、50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、58%以上であることがさらに好ましい。成形体の相対密度は、成形体のかさ密度を、炭酸カルシウムの理論密度(2.711g/cm)で割った値である。成形体のかさ密度は、後述するアルキメデス法により測定することができる。上記成形体の相対密度は、196.1Mpa(2000kgf/cm)の成形圧で、一軸プレス成形したときに得られるものであることが好ましい。上記範囲の相対密度にすることにより、より高い密度の炭酸カルシウム焼結体を得ることができる。
【0044】
(有機成分の除去)
本発明においては、上記の成形体を温度500℃以下の条件下で加熱する。上記の成形体を300℃〜500℃の条件下で加熱することが好ましい。上記加熱は空気中で行ってもよいが、酸素ガス雰囲気下で行なうことが望ましい。上記「酸素ガス雰囲気」とは、酸素濃度が大気中の酸素分圧濃度(約20%)よりも多く含まれる雰囲気を言う。高圧ガス保安法で定める酸素ガス(一般ガス)の濃度は99.7%であるが、この酸素ガスを炉内に流通させる方法(流量は特に問わない)が最も簡便である。
【0045】
上記加熱時間は、例えば2時間〜24時間とすることができる。
【0046】
上記加熱の際の昇温速度は、2℃/分〜20℃/分の範囲内とすることができる。上記加熱により、成形体中に含まれる有機成分を除去することができる。成形体中に含まれる有機成分とは、例えば、成形時に使用する潤滑剤などが挙げられる。熱劣化した有機成分や炭化した有機成分を除去することにより、得られる炭酸カルシウム焼結体の変色を抑制することができる。従って、得られる炭酸カルシウム焼結体の白色度を高めることができる。
【0047】
(炭酸カルシウム焼結体の製造)
本発明においては、上記の成形体を炭酸ガス雰囲気かつ温度500℃以上の条件下で焼結させる。好ましくは、上記の成形体を500℃〜950℃の条件下で焼結させる。上記炭酸ガス雰囲気とは、炭酸カルシウムが酸化カルシウムに分解しないような炭酸ガス分圧を持つ雰囲気をいう。具体的には、一例としては株式会社材料設計技術研究所による熱力学平衡計算・状態図作成ソフト「CaTCalc」(産業技術総合研究所製)で計算され、特許文献「特開2015−166075」の図3に示されている。これによれば、仮に焼結温度を800℃とした場合、炭酸ガス分圧が0.3気圧以上であればよい。
【0048】
純度が99.7質量%以上である高純度の炭酸カルシウムを用いる場合、焼結温度は、500℃〜800℃であることが好ましく、650℃〜800℃であることがより好ましい。上記焼結温度が低すぎると、十分に焼結を進行させることができず、密度が高められない場合がある。また、上記焼結温度が高すぎると、得られる焼結体にひび割れが生じることがある。
【0049】
一方、純度が99.7質量%未満である炭酸カルシウムを用いる場合、焼結温度は、800℃〜900℃であることが好ましい。上記焼結温度が低すぎると、十分に焼結を進行させることができず、密度が高められない場合がある。また、上記焼結温度が高すぎると、得られる焼結体が膨潤したりすることがある。
【0050】
焼結時間は、特に限定されないが、1時間〜10時間とすることが好ましく、1時間〜3時間とすることがより好ましい。上記焼結時間が短すぎると、十分に焼結を進行させることができず、密度が高められない場合がある。また、上記焼結時間が長すぎると、得られる焼結体にひび割れが生じたり焼結体が膨潤したりすることがある。
【0051】
なお、焼結の際の昇温速度は、2℃/分〜20℃/分の範囲内であることが好ましい。これにより、得られる焼結体にひび割れが生じたり焼結体が膨潤したりすることをより一層抑制することができる。
【0052】
本発明においては、上記の雰囲気下で焼結することにより、焼結に必要な焼結助剤の量を少なくすることができる。また、焼結助剤を用いることなく、良好な炭酸カルシウム焼結体を得ることができる。そのため、純度が99.7質量%未満である炭酸カルシウムを用いた場合にも、純度のより高い炭酸カルシウム焼結体を得ることができる。また、上記の雰囲気下で焼結することにより、良好な焼結体を得ることができ、得られる焼結体の密度を高めることもできる。
【0053】
(焼結助剤)
本発明に従い、上記の雰囲気下で焼結させることにより、焼結に必要な焼結助剤の量を少なくすることができる。また、焼結助剤を用いることなく、炭酸カルシウムの焼結体を製造することが可能である。従って、本発明によれば、焼結体における炭酸カルシウムの含有量を高めることができ、純度のより高い炭酸カルシウム焼結体を製造することができる。
【0054】
しかしながら、必要に応じて、焼結助剤を用いてもよい。焼結助剤としては、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウムの内の少なくとも2種の炭酸塩を含み、かつ融点が600℃以下である焼結助剤が挙げられる。焼結助剤の融点は、550℃以下であることが好ましく、530℃以下であることがより好ましく、450℃〜520℃の範囲であることがさらに好ましい。焼結助剤の融点を上記範囲にすることにより、より低温で焼成して炭酸カルシウム焼結体を製造することができる。焼結の際には、炭酸カルシウムに添加して使用することから、実際の融点は上記の温度よりさらに低くなるため焼結助剤として十分に機能する。焼結助剤は、炭酸カリウム及び炭酸リチウムの混合物であることが好ましい。焼結助剤の融点は、例えば、相図から求めることができるし、示差熱分析(DTA)により測定することも可能である。
【0055】
また、焼結助剤として、フッ化カリウム、フッ化リチウム及びフッ化ナトリウムの混合物を用いてもよい。このような混合物も、上記の融点の範囲を有するものであることが好ましい。このような焼結助剤として、例えば、フッ化カリウム10モル%〜60モル%、フッ化リチウム30モル%〜60モル%、及びフッ化ナトリウム0モル%〜30モル%の組成範囲を有する混合物が挙げられる。このような範囲とすることにより、より低い温度で焼成し、より高い密度の炭酸カルシウム焼結体を製造することができる。
【0056】
焼結助剤を用いる場合、炭酸カルシウムと焼結助剤の混合物において、焼結助剤の含有割合が1.5質量%以下となるように、炭酸カルシウムに焼結助剤を混合して混合物を調製することが好ましく、より好ましくは1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以下である。焼結助剤の含有割合が多すぎると、炭酸カルシウム焼結体の純度及び密度を高めることができない場合がある。
【0057】
[炭酸カルシウム焼結体]
本発明において、炭酸カルシウム焼結体の純度は、99.5質量%以上であることが好ましく、99.7質量%以上であることがより好ましく、99.8質量%以上であることがより好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.95質量%以上であることがさらに好ましく、99.99質量%以上であることが特に好ましい。これにより、炭酸カルシウム焼結体を、生体用途などにも用いることができる。なお、炭酸カルシウム焼結体の純度の上限値は特に限定されるものではないが、一般には、99.9999質量%である。
【0058】
炭酸カルシウム焼結体の相対密度は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。なお、炭酸カルシウム焼結体の相対密度の上限値は特に限定されるものではないが、一般には、99.9%である。
【0059】
本発明の炭酸カルシウム焼結体において、走査型電子顕微鏡観察により測定した粒子径分布における平均粒子径(D50)は、0.1μm〜20μmの範囲内である。走査型電子顕微鏡観察により測定した粒子径分布における平均粒子径(D50)は、0.2μm〜15μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.3μm〜10μmの範囲内であり、さらに好ましくは0.5μm〜5μmの範囲内である。走査型電子顕微鏡観察による粒子径分布は、測定対象である炭酸カルシウム焼結体の走査型電子顕微鏡観察像から焼結体を構成している粒子の大きさを100個以上測定することにより求めることが望ましい。このとき、焼結体破断面の粒子を測定するほうが望ましいが、焼結体表面の粒子サイズを測定し、その1.5倍を粒子径として換算することもできる。
【0060】
本発明において、炭酸カルシウム焼結体のビッカース硬さは、50HV1.0以上である。炭酸カルシウム焼結体のビッカース硬さは、好ましくは90HV1.0以上、より好ましくは100HV1.0以上である。
【0061】
また、ビッカース硬さは、JIS R 1610 ファインセラミックスの硬さ試験方法に記載されている方法により測定することができる。
【0062】
本発明の炭酸カルシウム焼結体は、純度が高められているので、骨補填材としての人工骨などの生体用途に好適に用いることができる。また、炭酸カルシウム焼結体は、養殖真珠の成長核、又は水質浄化剤に好適に用いることができる。
【0063】
[炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法]
本発明に係る炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造方法は、炭酸カルシウムを含む分散液を調製する工程と、前記分散液に発泡剤を添加した後撹拌して泡立て、発泡体を作製する工程と、温度500℃以下の条件下で前記発泡体を加熱することにより、前記発泡体中に含まれる有機成分を除去する工程と、炭酸ガス雰囲気かつ温度450℃以上の条件下で前記発泡体を焼結させることにより、炭酸カルシウム多孔質焼結体を得る工程とを備える。
【0064】
(炭酸カルシウム)
炭酸カルシウムとしては、上記の炭酸カルシウム焼結体の製造において説明した炭酸カルシウムを用いることができる。炭酸カルシウム多孔質焼結体の製造においても、純度の高い炭酸カルシウムを用いることにより、生体安全性が要求される生体用途により一層好適に用いることができる。なお、焼結助剤を用いる場合、上記と同様の焼結助剤の種類及び含有量にすることができる。
【0065】
(発泡剤)
本発明において用いる発泡剤としては、ラウリル硫酸トリエタノールアミンなどのアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルポリグルコシドなどが挙げられる。
【0066】
(賦形剤)
本発明においては、分散液に賦形剤を添加してもよい。賦形剤を添加することにより発泡後の分散発泡体中の気泡の強度が上がり、発泡体の形状を安定化することができる。賦形剤としては、デンプン、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、ペクチン、アルギン酸類、カルボキシセルロースのナトリウム塩などが挙げられる。
【0067】
(ゲル化剤)
本発明においては、分散液にゲル化剤が含まれていてもよい。ゲル化剤を含むことにより、発泡後の分散発泡体中の気泡の強度がより一層上がり、発泡体の形状を安定化することができる。ゲル化剤としては、メチルセルロースなどの多糖類や、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ水溶性ポリマーなどが挙げられる。
【0068】
分散液中のゲル化剤の含有量は、炭酸カルシウム100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲が好ましく、0.5質量部〜3質量部の範囲がより好ましい。ゲル化剤の含有量が少なすぎると、発泡体中の気泡の強度が上がらず、発泡体の形状を安定化することができない場合がある。ゲル化剤の含有量が多くなりすぎると、含有量に比例した上記効果を得ることができない場合がある。
【0069】
(分散液)
本発明においては、水などの分散媒に炭酸カルシウムを徐々に添加しながら、ディスパー、ミキサー、ボールミル等の攪拌力の強い装置を用いて、炭酸カルシウムを分散媒に分散することが好ましい。炭酸カルシウムの含有量は、一般に、分散液中において30質量%〜70質量%であることが好ましい。このとき、必要であれば炭酸カルシウム100質量部に対して0質量部〜3質量部程度のポリアクリル酸塩などの高分子界面活性剤を分散剤として添加してもよい。
【0070】
(発泡体の作製)
本発明では、上記分散液に発泡剤を添加した後撹拌し泡立てることにより発泡体を作製する。発泡剤は、分散液中の発泡剤の濃度が0.01質量%〜5質量%程度となるように添加することが好ましい。攪拌は、ハンドミキサーやディスパーなどで行うことが好ましい。撹拌を行うことで分散液の温度が上昇することがあるため、必要であれば、分散液を冷却しながら撹拌を行ってもよい。
【0071】
(発泡体中の有機成分の除去)
本発明においては、上記の発泡体を温度500℃以下の条件下で加熱する。好ましくは、上記の発泡体を温度300℃〜500℃の条件下で加熱する。上記加熱は空気中で行ってもよいが、酸素ガス雰囲気下で行なうことが望ましい。上記「酸素ガス雰囲気」とは、酸素濃度が大気中の酸素分圧濃度(約20%)よりも多く含まれる雰囲気を言う。高圧ガス保安法で定める酸素ガス(一般ガス)の濃度は99.7%であるが、この酸素ガスを炉内に流通させる方法(流量は特に問わない)が最も簡便である。
【0072】
上記加熱時間は、例えば2時間〜24時間とすることができる。
【0073】
加熱の際の昇温速度は、2℃/分〜20℃/分の範囲内とすることができる。上記加熱により、発泡体中に含まれる有機成分を除去することができる。発泡体中に含まれる有機成分とは、例えば、発泡剤、賦形剤、ゲル化剤、分散剤などが挙げられる。熱劣化した有機成分や炭化した有機成分を除去することにより、得られる炭酸カルシウム多孔質焼結体の変色を抑制することができる。従って、得られる炭酸カルシウム多孔質焼結体の白色度を高めることができる。また、得られる炭酸カルシウム多孔質焼結体の機械的強度を高めることもできる。
【0074】
(発泡体の焼結)
本発明においては、上記の発泡体を炭酸ガス雰囲気かつ温度450℃以上の条件下で焼結させる。好ましくは、上記の発泡体を炭酸ガス雰囲気かつ温度450℃〜950℃の条件下で焼結させる。上記炭酸ガス雰囲気とは、炭酸カルシウムが酸化カルシウムに分解しないような炭酸ガス分圧を持つ雰囲気をいう。具体的には、一例としては株式会社材料設計技術研究所による熱力学平衡計算・状態図作成ソフト「CaTCalc」(産業技術総合研究所製)で計算され、特許文献「特開2015−166075」の図3に示されている。これによれば、仮に焼結温度を800℃とした場合、炭酸ガス分圧が0.3気圧以上であれば良い。
【0075】
純度が99.7質量%以上である高純度の炭酸カルシウムを用いる場合、焼結温度は、500℃〜800℃であることが好ましく、650℃〜800℃であることがより好ましい。上記焼結温度が低すぎると、十分に焼結を進行させることができず、密度が高められない場合がある。また、上記焼結温度が高すぎると、得られる多孔質焼結体にひび割れが生じることがある。
【0076】
一方、純度が99.7質量%未満である炭酸カルシウムを用いる場合、焼結温度は、800℃〜900℃であることが好ましい。上記焼結温度が低すぎると、十分に焼結を進行させることができない場合がある。また、上記焼結温度が高すぎると、得られる多孔質焼結体が膨潤したりすることがある。
【0077】
焼結時間は、特に限定されないが、1時間〜12時間とすることが好ましく、1時間〜3時間とすることがより好ましい。上記焼結時間が短すぎると、十分に焼結を進行させることができない場合がある。また、上記焼結時間が長すぎると、得られる焼結体にひび割れが生じたり多孔質焼結体が膨潤したりすることがある。
【0078】
なお、焼結の際の昇温速度は、2℃/分〜20℃/分の範囲内であることが好ましい。これにより、得られる多孔質焼結体にひび割れが生じたり多孔質焼結体が膨潤したりすることをより一層抑制することができる。
【0079】
本発明においては、上記の雰囲気下で焼結することにより、焼結に必要な焼結助剤の量を少なくすることができる。また、焼結助剤を用いることなく、良好な炭酸カルシウム多孔質焼結体を得ることができる。そのため、純度が99.7質量%未満である炭酸カルシウムを用いた場合にも、純度のより高い炭酸カルシウム多孔質焼結体を得ることができる。また、上記の雰囲気下で焼結することにより、良好な多孔質焼結体を得ることができる。
【0080】
[炭酸カルシウム多孔質焼結体]
本発明の炭酸カルシウム多孔質焼結体の純度は、95質量%以上である。炭酸カルシウム多孔質焼結体の純度は、99質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることがより好ましく、99.7質量%以上であることがより好ましく、99.8質量%以上であることがより好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましく、99.95質量%以上であることがさらに好ましく、99.99質量%以上であることが特に好ましい。これにより、炭酸カルシウム多孔質焼結体を、生体用途などにも用いることができる。なお、炭酸カルシウム多孔質焼結体の純度の上限値は特に限定されるものではないが、一般には、99.9999質量%である。
【0081】
炭酸カルシウム多孔質焼結体の気孔率は、10体積%以上である。炭酸カルシウム多孔質焼結体の気孔率の上限値は特に限定されるものではないが、一般には、95体積%である。気孔率を上げることで骨補填材としての人工骨用途に用いたときの生体吸収性を高めることができるが、一方で強度が低下するので、用途・症例に応じて適切な気孔率に調整して使用することが望ましい。
【0082】
本発明において、炭酸カルシウム多孔質焼結体の白色度は、85以上である。炭酸カルシウム多孔質焼結体の白色度は、好ましくは90以上である。炭酸カルシウム多孔質焼結体の白色度の上限値は、特に限定されないが、例えば、100とすることができる。
【0083】
また、白色度は白色度計、分光光度計などにより測定することができる。測定の基本的な原理は、特定のフィルターを通してある波長の範囲に限定した光を、セルに均一に充填した試料表面に照射し、そのときの45度方向への反射量を標準白色板での反射量と比較することで測定するものである。
【0084】
本発明の高純度炭酸カルシウム多孔質焼結体は、焼結体の外部に至る連通孔が形成されていることが好ましい。これにより、多孔質焼結体内部の炭酸カルシウムを外部の雰囲気と容易に接触させることができる。従って、例えば、生体用途などにさらに好適に用いることができる。
【0085】
本発明の炭酸カルシウム多孔質焼結体は、純度が高められているので、骨補填材としての人工骨などの生体用途に好適に用いることができる。また、炭酸カルシウム多孔質焼結体は、養殖真珠の成長核、又は水質浄化剤に好適に用いることができる。
【0086】
[骨補填材等]
本発明の骨補填材は、上記本発明の炭酸カルシウム焼結体又は上記本発明の炭酸カルシウム多孔質焼結体を炭酸カルシウム換算で全体の70重量%以上含んでいる。また、本発明の骨補填材は、上記本発明の炭酸カルシウム焼結体又は上記本発明の炭酸カルシウム多孔質焼結体によって、一部又は全ての表面がコーティングされている。そのため、不純物含有量が少なく、生体安全性が高められている。また、機械的強度や骨形成能にも優れている。
【0087】
また、本発明の養殖真珠の成長核は、上記本発明の炭酸カルシウム焼結体又は上記本発明の炭酸カルシウム多孔質焼結体を炭酸カルシウム換算で全体の70重量%以上含んでいる。
【0088】
また、本発明の水質浄化剤は、上記本発明の炭酸カルシウム焼結体又は上記本発明の炭酸カルシウム多孔質焼結体を炭酸カルシウム換算で全体の70重量%以上含んでいる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明に従う具体的な実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0090】
<炭酸カルシウム焼結体の製造>
<実施例1>
(炭酸カルシウム)
純度99質量%、平均粒子径(D50)0.15μm、BET比表面積15m/gである炭酸カルシウムを用いた。純度は、差分法により導出した。具体的には、誘導結合プラズマ発光分析装置を用いて、質量既知の試料を溶解した測定検液中の不純物量を測定し、得られた結果の和を不純物含量として、全体から不純物含量を引いた値を純度とした。
【0091】
平均粒子径(D50)は、測定対象である炭酸カルシウム粒子について、透過型電子顕微鏡観察により1500個の粒子径を測定し、粒子径分布から求めた。
【0092】
BET比表面積は、島津製作所社製のフローソーブ2200を用いて、1点法により測定した。
【0093】
上記の炭酸カルシウムを用いて、以下のようにして、炭酸カルシウム焼結体を製造した。
【0094】
(成形体の作製)
炭酸カルシウムに少量のエタノールを添加して湿式混合を行い、原料粉末とした。この原料粉末を円筒状の金型内に入れ、プレス機を用いて一軸プレス成形した。98Mpa(1000kgf/cm)の成形圧で1分間予備プレス成形した後、196.1Mpa(2000kgf/cm)の成形圧で1分間プレス成形した。
【0095】
(成形体の加熱及び焼成)
得られた成形体を、空気雰囲気下(酸素濃度21%)にて温度500℃まで毎分5℃で昇温させ、昇温後12時間維持し、有機成分を除去した。冷却した後、炭酸ガス雰囲気下(二酸化炭素濃度100%)にて同様の昇温速度で焼結温度(800℃)まで昇温させ、昇温後1時間本焼結を行い、炭酸カルシウム焼結体を得た。
【0096】
(炭酸カルシウム焼結体の相対密度の測定)
アルキメデス法より炭酸カルシウム焼結体のかさ密度ρ[g/cm]を求め、得られたかさ密度を炭酸カルシウムの理論密度(2.711g/cm)で割り、その相対密度を求めた。炭酸カルシウム焼結体のかさ密度は、次のように求めた。先ず、炭酸カルシウム焼結体の試料の乾燥重量Wを測定し、湯煎したパラフィン中にその試料を10分程度静置した後、取り出して常温になるまで冷やした。冷めた後にパラフィンを含有した試料の重量Wを測定した。その後、その試料の水中重量Wを測定し、下記の式より試料のかさ密度ρを求めた。炭酸カルシウム焼結体の相対密度を表1に示す。
【0097】
かさ密度ρ[g/cm]=Wρ/(W−W
ρ:水の密度[g/cm
:試料の乾燥重量[g]
:パラフィンを含有した試料の重量[g]
:試料の水中重量[g]
【0098】
(炭酸カルシウム焼結体の平均粒子径の測定)
炭酸カルシウム焼結体の平均粒子径は、測定対象である炭酸カルシウム粒子について、走査型電子顕微鏡観察により150個の粒子径を測定し、粒子径分布から求めた。
【0099】
(炭酸カルシウム焼結体の純度の測定)
炭酸カルシウム焼結体の純度は、上記の差分法により導出した。
【0100】
炭酸カルシウム焼結体の純度を表1に示す。
【0101】
<実施例2>
純度99.9質量%、平均粒子径(D50)0.1μm、BET比表面積18m/gである炭酸カルシウムを用いた。また、実施例1と同様の方法で得られた成形体を、空気雰囲気下(酸素濃度21%)にて温度500℃まで毎分5℃で昇温させ、昇温後12時間維持し、有機成分を除去した。冷却した後、炭酸ガス雰囲気下(二酸化炭素濃度100%)にて同様の昇温速度で焼結温度(700℃)まで昇温させ、昇温後1時間本焼結を行い、炭酸カルシウム焼結体を得た。炭酸カルシウム焼結体の相対密度、平均粒子径及び純度を表1に示す。
【0102】
また、図1は、実施例2の条件で、焼結温度のみ変化させたときの相対密度を示すグラフである。また、図1では、比較のため、焼結前の相対密度を併せて示している。図1より、焼結温度650℃〜800℃のとき相対密度が約95%以上であることがわかる。
【0103】
また、図2は、焼結温度600℃で1時間本焼結を行って得られた炭酸カルシウム焼結体を示す倍率30000倍の走査型電子顕微鏡写真である。図3は、焼結温度650℃で1時間本焼結を行って得られた炭酸カルシウム焼結体を示す倍率10000倍の走査型電子顕微鏡写真である。図4は、焼結温度700℃で1時間本焼結を行って得られた炭酸カルシウム焼結体を示す倍率5000倍の走査型電子顕微鏡写真である。また、図5は、焼結温度800℃で1時間本焼結を行って得られた炭酸カルシウム焼結体を示す倍率1000倍の走査型電子顕微鏡写真である。
【0104】
図2図4では、良好な炭酸カルシウム焼結体が得られているのに対し、図5では、粒子成長しすぎてややひび割れが生じていることがわかる。
【0105】
<比較例1>
実施例1の炭酸カルシウムと焼結助剤とを、焼結助剤の含有量が0.6質量%となるように混合し、この混合粉末を適量な量のジルコニアビーズとともにポリエチレン瓶に入れ、一晩乾式混合を行い、原料粉末とした。なお、焼結助剤として、フッ化カリウムとフッ化リチウムとフッ化ナトリウムの混合物を用いた。混合割合は、モル比で、フッ化カリウム:フッ化リチウム:フッ化ナトリウム=40:49:11である。混合物の融点(共融温度)は、463℃である。この原料粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で得られた成形体を、空気雰囲気下(酸素濃度21%)で温度400℃まで毎分5℃で昇温させ、昇温後12時間維持した。冷却した後、空気雰囲気下(二酸化炭素濃度0.03%)にて同様の昇温速度で焼結温度(480℃)まで昇温させ、昇温後3時間本焼結を行い、炭酸カルシウム焼結体を得た。炭酸カルシウム焼結体の相対密度及び純度を表1に示す。
【0106】
<比較例2>
実施例2と同様の方法で得られた成形体を、空気雰囲気下(酸素濃度21%)で温度500℃まで毎分10℃で昇温させ、昇温後12時間維持し本焼結を行い、炭酸カルシウム焼結体を得た。炭酸カルシウム焼結体の相対密度、平均粒子径及び純度を表1に示す。
【0107】
<実施例3>
実施例1の炭酸カルシウム434質量部を、イオン交換水238質量部にメチルセルロース2.4質量部と、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤11.0質量部(固形分4.4質量部)をあらかじめホモディスパーを用いて混合して得た分散媒中に分散し、分散液を得た。メチルセルロースはゲル化剤であり、特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤は分散剤である。得られた分散液を、ハンドミキサーで、1000rpm、10分間撹拌して泡立て、発泡体を作製した。発泡体を紙で作製した成形型に入れ、成形型を熱風乾燥機に移し、熱風乾燥機内で発泡体を80℃、0.5時間加熱することにより、発泡体をゲル化させた。ゲル化した発泡体を、80℃、12時間加熱することにより、乾燥発泡体を得た。得られた乾燥発泡体を、酸素雰囲気下(酸素濃度100%)で温度500℃まで5℃/分の昇温速度で昇温させ、昇温後12時間脱脂および焼結を行った。得られた炭酸カルシウム多孔質焼結体の白色度を表1に示す。なお、白色度は、分光光度計により評価した。
【0108】
<比較例3>
実施例3の方法で作製した乾燥発泡体を空気雰囲気下(酸素濃度21%)で温度(400℃)まで5℃/分の昇温速度で昇温させ、昇温後10時間脱脂を行った。次に、400℃から、同様の昇温速度で焼成温度(510℃)まで昇温させ、昇温後3時間本焼成を行い、その後、10℃/分の速度で室温まで冷却し、炭酸カルシウム多孔質焼結体を得た。得られた炭酸カルシウム多孔質焼結体の白色度を表1に示す。
【0109】
<実施例4>
実施例3の方法で作製した乾燥発泡体を、直径1mm〜2mm程度の顆粒体に粉砕し、酸素雰囲気下(酸素濃度100%)で温度500℃まで5℃/分の昇温速度で昇温させ、昇温後12時間脱脂を行い得られた脱脂体を冷却した後、炭酸ガス雰囲気下(二酸化炭素濃度100%)にて同様の昇温速度で焼結温度(800℃)まで昇温させ、昇温後1時間本焼結を行い、炭酸カルシウム多孔質焼結体顆粒を得た。得られた炭酸カルシウム多孔質焼結体顆粒を11週齢の雄ラットの頭蓋骨の前頭骨のほぼ中央部に1箇所、直径5mmのトレパンで孔をあけて、埋植した。埋植翌日を1日目とし、3週間(21日)の時点で頭蓋骨を採取した。周囲の余分な軟部組織を除去して、10%中性緩衝ホルマリン中で、固定・保存処理をした後、ギ酸脱灰を行い、パラフィン中に包理したものを、剥片にスライスし、ヘマトキシン・エオジン染色を行い、観察試料とした。観察試料の様子を図6に示す。観察試料には、埋入材、繊維状組織、及び新生骨が確認できた。なお、ヘマトキシン・エオジン染色においては、繊維状組織が薄赤色、埋入材が白色、新生骨が濃赤色で示され、観察試料の各箇所を区別することができた。
【0110】
また、この時同条件で埋殖を行った6検体について、観察試料中の新生骨、埋入材、繊維状組織の面積率を算出した結果を図8に示す。なお、面積率(%)は、図6に示す写真を拡大して、新生骨、埋入材、繊維状組織、それぞれの面積を求め、新生骨、埋入材、及び繊維状組織の面積の総和に対する新生骨、埋入材、繊維状組織、それぞれの面積の割合から算出した。なお、各箇所の面積は、ペイントツールで各箇所をそれぞれマーキングし、ImageJで2値化することにより求めた。
【0111】
<比較例4>
市販されているβ−TCP人工骨顆粒を実施例4と同様の方法で雄ラットの頭蓋骨に埋入し、観察試料の作製を行った。観察試料の様子を図7に示す。観察試料中の新生骨、埋入材、繊維状組織の面積率を算出した結果を図8に示す。ウィルコクソンの順位和検定を用いて実施例4の結果と比較したところ、新生骨については有意水準0.01で実施例4の方が高く、埋入材については有意水準0.05で比較例4の方が高く、繊維状組織については有意差が見られなかった。以上の比較から、実施例4にて埋入した顆粒は生体内での骨再生が既存人工骨製品よりも高く、生体内への吸収が早い材料であると考えられる。
【0112】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8