特開2020-153341(P2020-153341A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-153341(P2020-153341A)
(43)【公開日】2020年9月24日
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20200828BHJP
【FI】
   F04D19/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-54680(P2019-54680)
(22)【出願日】2019年3月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
(74)【代理人】
【識別番号】100202854
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 卓行
(72)【発明者】
【氏名】西村 太貴
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131AA07
3H131BA06
3H131BA07
3H131CA11
3H131CA21
3H131CA39
(57)【要約】
【課題】グリース充填式軸受保持装置のグリース充填率をポンプ個体差にかかわらず一定にする。
【解決手段】真空ポンプは、回転体を支持する転がり軸受40と、転がり軸受40の外輪を弾性支持する弾性部材が設けられている弾性保持装置とを有し、弾性保持装置は、外輪42の外周側に設けられ、潤滑剤GRで満たされた潤滑剤充填部56と、潤滑剤充填部56に連通する空所57とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を支持する転がり軸受と、
前記転がり軸受の外輪を弾性部材で弾性支持する弾性保持装置と、を有する真空ポンプにおいて、
前記弾性保持装置は、
前記外輪の外周側に設けられ、潤滑剤で満たされた潤滑剤充填部と、
前記潤滑剤充填部に連通する空所とを有する真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記空所は、前記弾性保持装置の構成部材の径方向に延在して形成されている真空ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、
前記弾性保持装置は、
前記外輪の外周側に配設された筒状のベアリングハウジングと、
前記弾性部材を前記ベアリングハウジング内で固定するハウジング固定部材とを有し、
前記空所は、前記ベアリングハウジング内で、軸受外輪の径方向外側の潤滑剤充填部近傍において、径方向に延在する環状の溝として形成されている真空ポンプ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の真空ポンプにおいて、
前記弾性保持装置は、
前記外輪の外周側に配設された筒状のベアリングハウジングと、
前記弾性部材を前記ベアリングハウジング内で固定するハウジング固定部材とを有し、
前記空所は、ハウジング固定部材内に回転軸方向に延在する筒状の溝として形成されている真空ポンプ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の真空ポンプにおいて、
前記潤滑剤の充填量は、前記潤滑剤充填部の容積と前記空所の容積の和よりも少なく、前記潤滑剤充填部の容積以上の量である真空ポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを転がり軸受で支持する真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリース潤滑された転がり軸受でロータの回転軸を支持する方式の真空ポンプが知られている。このような真空ポンプでは、ロータのアンバランスに起因する振れ回りにより振動が発生し、その振動がポンプ外部に伝達されるという問題がある。例えば、特許文献1に記載のターボ分子ポンプでは、転がり軸受を弾性部材で弾性支持して振動を減衰させるようにしている。
【0003】
特許文献1に記載のターボ分子ポンプは、ロータを支持する転がり軸受と、転がり軸受の外輪を弾性的に保持する保持部と、外輪と保持部との間のグリース充填部に充填されグリースとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−56750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のターボ分子ポンプは、グリースが適切に充填されない場合、回転体の温度制御が不十分となり、また、発生する振動が適切に抑制できない。充填するグリースの量を調節することは製造工程が煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態による真空ポンプは、回転体を支持する転がり軸受と、前記転がり軸受の外輪を弾性部材で弾性支持する弾性保持装置とを有する。前記弾性保持装置は、前記外輪の外周側に設けられ、潤滑剤で満たされた潤滑剤充填部と、前記潤滑剤充填部に連通する空所とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、煩雑な製造工程を経ることなく、所望の冷却機能と振動抑制機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明をターボ分子ポンプに適用した実施形態の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、弾性保持装置の実施形態の構成を詳細に示す拡大図である。
図3図3は、弾性保持装置の変形例1の構成を詳細に示す拡大図である。
図4図4は、弾性保持装置の変形例2の構成を詳細に示す拡大図である。
図5図5は、弾性保持装置の変形例3の構成を詳細に示す拡大図である。
図6図6は、弾性保持装置の変形例4の構成を詳細に示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
(ターボ分子ポンプの全体構成)
図1は本発明に係る真空ポンプの一実施形態を示す図であり、ターボ分子ポンプ100の断面図である。ターボ分子ポンプ100は、ベース2とケーシング10とで構成される筐体内に、ロータ3などの回転体を収容している。ケーシング10の上端部に吸気口10aが設けられ、ベース2に排気口2aが設けられている。
ロータ3はシャフト1に締結されており、そのシャフト1はモータ4により回転駆動される。ロータ3が締結されたシャフト1の上部は永久磁石軸受装置PBで、下部は転がり軸受装置BBで回転自在に支持されている。ロータ3には排気機能部として回転翼30と円筒部31とが形成されている。回転翼30に対応して、固定側排気機能部としての固定翼20が設けられている。回転翼30と固定翼20とによりターボポンプ部が構成される。円筒部31に対応して、固定筒21が固定側排気機能部として設けられている。この円筒部31と固定筒21とによりHolweckポンプ部(ねじ溝ポンプ部)が構成される。
このようなターボ分子ポンプ100は、回転体の回転により、吸気口10aから吸い込んだ不図示の真空チャンバ内の気体を排気口2aに排気することで、真空チャンバ内が真空排気される。
【0010】
(永久磁石軸受装置PB)
永久磁石軸受装置PBは、永久磁石6,7を用いた磁気軸受であり、円筒状の永久磁石6はロータ3に固定されている。一方、固定側の永久磁石7は磁石ホルダ11に保持され、永久磁石6の内周側に対向配置されている。磁石ホルダ11の中央には、転がり軸受9を保持する軸受ホルダ13が固定されている。転がり軸受9はシャフト1の上側のラジアル方向の振れを制限するために設けられているものであり、転がり軸受9の内輪とシャフト1との間には隙間が形成されている。この隙間の寸法は、永久磁石6,7間の隙間寸法より小さく設定されている。これにより、ロータ3の振れ回りが大きくなった場合に、永久磁石6,7同士が接触するのを防止している。
【0011】
(転がり軸受装置BB)
図2は、転がり軸受装置BBの構成を詳細に示す拡大図である。
転がり軸受装置BBは、転がり軸受40と、転がり軸受40の外輪42を弾性的に保持する弾性保持装置50とを備えている。
転がり軸受40は、内輪41と、内輪41の外周部にボールを介して設けられた外輪42とを有する。内輪41は、ナット61によってシャフト1に固定されている。外輪42は、図1に示すように、弾性保持装置50でベース2に弾性的に支持されている。
【0012】
(弾性保持装置50)
弾性保持装置50は、ベース2に固定されたベアリングハウジング51と、ベアリングハウジング51で転がり軸受40の外輪42を弾性保持する複数の弾性部材52a、52b、52c(以下、代表符号52で表すこともある)と、外輪42の下部外周縁を収容するカップ状のカラー53と、グリース充填部56およびグリース逃げ部57と、少なくともグリース充填部56に満たされたグリースGRとを備えている。
【0013】
ベアリングハウジング51は、下部円筒部51Lと上部円筒部51Uとを有する。下部円筒部51Lは、図1に示すように、ベース2の底面に設けられた蓋2bに固定されている。上部円筒部51Uと下部円筒部51Lの内部では、外輪42を弾性保持する弾性部材52およびグリースGRなどを保持している。
【0014】
外輪42の上面42aとベアリングハウジング51の内周面51inaとの間には、リング状の弾性部材52aが設けられている。外輪42の下方周縁部を収容するカップ状のカラー53の下面53aと、後述するハウジングナット54の上面54aとの間には、リング状の弾性部材52bが設けられている。外輪42の外周面42outとベアリングハウジング51の内周面51incとの間には、リング状の弾性部材52cが設けられている。これら3つの弾性部材52により、外輪42は、ベアリングハウジング51にラジアル方向とスラスト方向に弾性支持される。すなわち、弾性保持装置50により、シャフト1は、ラジアル方向、スラスト方向の両方向に弾性的に支持されている。
【0015】
ベアリングハウジング51の下部円筒部51Lの内周面には雌ねじ51Sが設けられ、外周面に雄ねじ54Sが設けられたリング状のハウジングナット54がベアリングハウジング51の雌ねじ51Sに螺合されている。弾性部材52とカラー53はハウジングナット54により、ベアリングハウジング51内に固定されている。ハウジングナット54の上面周縁部とベアリングハウジング51の内周面との間には、グリースGRの漏出を防止するOリング55が設けられている。
弾性部材52aと52b、およびOリング55は、ハウジングナット54の締め込み力により押圧されて圧縮変形している。
【0016】
弾性部材52a,52bは、外輪42の軸方向支持(スラスト支持)を主に行うものであり、外輪42の径方向に変位に対しては剛性が非常に小さい。また、弾性部材52cは外輪42の径方向支持(ラジアル支持)のために設けられた弾性部材である。
【0017】
弾性部材52cは、シャフト1の径方向変位により圧縮変形される。そのため、例えば、シャフト1が中心位置(径方向の変位がゼロの理想位置)にある場合に、弾性部材52cの外周面とベアリングハウジング51の内周面51incとの隙間がほぼゼロまたは若干の隙間(<G1、G2)となるように設定することで、弾性部材52cによる径方向支持剛性を非常に小さくすることができる。
【0018】
このように 弾性部材52a,52b,52cの配置構造を設定することで、弾性部材52a,52b,52cに起因する径方向の支持剛性を非常に小さくすることができ、ラジアル方向のロータ振れ回りに起因するポンプ振動を抑制することができる。
【0019】
(グリース充填部56)
弾性保持装置50には、ベアリングハウジング51の内周面51indと、カラー53の外周面53outと、ハウジングナット54の上面54aと、弾性部材52b、52CおよびOリング55とに囲まれた空間56にグリース(潤滑剤)GRが充填されている。この空間をグリース充填部56と呼ぶ。グリースGRは、転がり軸受40を冷却する機能(冷却機能)を持つ反面、外輪42の振動をベアリングハウジング51に伝える性質(振動伝達性)を有する。振動伝達性は振動伝達率で表し、振動伝達率が高いとわずかな回転体のアンバランスでポンプの振動が大きくなる。
【0020】
ベアリングハウジング51の上部円筒部51Uの内周面51inbと、外輪42の外周面42outとの間の径方向隙間寸法G1は、シャフト1が振れ回った際でも、外輪42の外周面42outとベアリングハウジング51の内周面51inbとが接触しない寸法、すなわち、外輪42が弾性部材52cにより弾性支持されるような寸法に設定されている。同様に、カラー53の外周面53outとベアリングハウジング51の内周面51incとの間の径方向隙間寸法G2は、シャフト1が振れ回った際でも、カラー53の外周面53outとベアリングハウジング51の内周面51incとが接触しない寸法、すなわち、外輪42が弾性部材52cにより弾性支持されるような寸法に設定されている。径方向隙間寸法G1,G2は、例えば、0.1mm〜0.3mm程度に設定される。カラー53の外周面53outとベアリングハウジング51の内周面51indとの間の隙間にはグリースGRが充填されるため、実施の形態ではG2>G1としている。
なお、隙間寸法G1は弾性部材52cの上方の隙間寸法、隙間寸法G2は弾性部材52cの下方の隙間寸法である。
【0021】
(グリース逃げ部57)
グリース充填部56には一定量のグリースGRが充填されるが、冷却機能が低い,または振動伝達率が高い場合がある。これは、ポンプ構成部品の寸法公差、組み立て時のねじ締め付け力などの組立公差が原因で、グリース充填部56の容積にバラツキが生じると、グリース充填部56に一定量のグリースを充填してもグリース充填率がばらつくからと推定できる。グリース充填率とは、グリース充填部56に充填したグリースの容積をグリース充填部56の容積で除した値である。
そこで、実施の形態では、グリース充填部56に連通するグリース逃げ部57がベアリングハウジング51に設けられている。具体的には、グリース逃げ部57は、ベアリングハウジング51の内周面51inb,51incから径方向外方向に向かって延在する平面視が輪帯形状で所定の厚みのある溝である。グリース逃げ部57の機能については後述する。
【0022】
グリース充填部56の容積は、部品の寸法公差、組立公差などにより、±の公差を有している。グリース充填量を、設計値として計算されたグリース充填部56の理想的な容積(中間値)と等価の量と設定した場合、グリース充填部56の実容積が中間値よりも大きい場合、グリース充填部56内には、グリースが満たされない空間が生じる。また、グリース充填部56の実容積が理想値よりも小さい場合、グリース逃げ部57がない従来構造では、グリース充填部56に圧縮された状態でグリースが充填されてしまい、振動しやすくなる。グリース充填部56にグリースが充填されない空間が生じる場合、グリースが過剰に充填される場合のいずれの場合でも、冷却機能と振動伝達性を満足させることができない。
これは以下の影響係数により説明することができる。
【0023】
(影響係数)
影響係数は、ポンプの振動加速度avを回転体のアンバランスbvで割った値cv=av/bvとして示すことができる。ここで、av,bv,cvはベクトル量である。
グリース充填部56のグリース充填率は、影響係数cvに影響を与える。グリース充填率が大きくなるとグリースの密度が大きくなり、転がり軸受40からベアリングハウジング51への温度伝達率が上がり、ロータ3などの回転体の温度が下がりやすくなる。一方,回転体からベアリングハウジング51、すなわちベース2への振動伝達率も上がり、ロータ3などで構成される回転体のアンバランス量に対してポンプが振動しやすくなる。そのため,ベアリングハウジング51内に充填(注入)するグリース量は、シリンジなどで定量に管理する必要がある。
【0024】
ベアリングハウジング51、弾性部材52あるいはOリングなど各部品の寸法公差,組立誤差,弾性部材52やOリング55の潰し具合から、グリース充填部56の空間容積は変化する。これらの寸法を管理し、グリースの充填量を調整して、ターボ分子ポンプごとのグリース充填率を一定に保つことは困難である。また、グリース充填率がターボ分子ポンプごとに変動することにより、ターボ分子ポンプごとに影響係数が変化する。影響係数がターボ分子ポンプごとに異なると、バランス修正の際にターボ分子ポンプごとに校正を行う必要がある。しかし、異なるターボ分子ポンプそれぞれの影響係数が同じであれば、ターボ分子ポンプごとに、毎回校正を行う必要がない。校正とは,回転体の修正面に試し錘を乗せて振動の変化から影響係数を算出することを指す。校正で求めた影響係数と修正前の振動ベクトルから修正量を求めて、バランス修正を行う。
【0025】
図2に示すようにグリース充填部56に連通する逃げ部57を設け、たとえば、グリース充填部56の設計上の最大容積Qmaxと等価の量のグリースをグリース充填部56に充填する。グリース充填部56の実容積Qactが設計上の最大容積Qminより小さいとき、Qmax−Qactに相当する余剰のグリースがグリース充填部56から逃げ部57に流入するが、グリース充填部56はグリースで満たされる。また、グリース充填部56の実容積Qactが設計上の最大容積Qmaxであるときも、グリース充填部56はグリースで満たされる。これにより、グリース充填部56の実容積が設計上の最小容積であっても、最大容積であっても、影響係数に影響を与えるグリース充填率を一定にすることができる。
【0026】
なお、グリースは、稠度が十分に硬いものを使用する。これは、ポンプ運転時の振動、姿勢による影響、ポンプ仕様範囲内の温度上昇による影響では流動せず、組立時にハウジングナットで弾性保持装置50の弾性部材52を締め付けるとき、グリースが圧縮される前に余剰分が逃げ部57に押出されるようにするためである。
【0027】
以上説明した実施の形態のターボ分子ポンプ100は次のような作用効果を奏する。
(1)ポンプ構成部品の製作公差、組立公差に拘わらず(ポンプ個体差に拘わらず)、グリース充填率を一定にすることができる。これにより、影響係数に影響を与えることがなく、グリースによる振動抑制機能、冷却機能がいずれのターボ分子ポンプ100でも保証することができる。
また、真空ポンプごとの校正作業が不要となり、工数が削減できる。
(2)グリース逃げ部57を、弾性保持装置50の構成部品の中で最も大きなベアリングハウジング51内に設けたので、グリース逃げ部57の加工が容易である。
【0028】
(3)グリース逃げ部57をベアリングハウジング51内で径方向に延在させるように設けた。ポンプは数万回転で高速回転しており、ポンプ振動は軸受外輪42からグリースに径方向に生じるものが大きな割合を占める。したがって、軸受外輪42の径方向外側のグリースは振動伝達の影響度が大きく、近くにグリース逃げ部57を設けることにより、振動伝達率を安定させ影響係数を一定に保つことができる。
【0029】
(4)グリース充填量を、(グリース充填部56の設計上の最大容積Qmax+逃げ部57の設計上の容積Qabs)より小さく、(グリース充填部56の設計上の最大容積Qmax)以上と定めることにより、各種の公差に拘わらず、グリース充填率を一定に維持することができる。したがって、製造時、またはメンテナンス時にグリース充填量を管理するだけでよく、製造上の管理が容易である。
【0030】
グリース逃げ部57を次の変形例1〜4のように設けることができる。
(変形例1,2)
図3および図4に示すように、グリース逃げ部57a、57bをハウジングナット54内で回転軸方向に延在させるように設けてもよい。図3の例では、グリース逃げ部57aは、グリース充填部56の最外周部、つまり、Oリング55と接する箇所に設けられた円筒状の溝である。図4では、ハウジングナット54の上面に形成されるグリース充填部56のうち、カラー53とベアリングハウジング51との間のグリース充填部56と等しい半径の位置にグリース逃げ部57bを設けている。この逃げ部57bも円筒状の溝である。
変形例1,2は、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
この変形例では、充填されたグリースが円筒状の溝57a,57bに逃げやすくなり、グリース充填率を小さい値に保つことにより、放熱効果は低減するが、振動低減効果を狙うことができる。
【0031】
(変形例3,4)
図5および図6に示すように、グリース逃げ部57c、57dをカラー53内に設けてもよい。図5では、ハウジングナット54の上面に形成されるグリース充填部56に連通させて回転軸方向にグリース逃げ部57cを延在させている。図5のグリース逃げ部57cは、回転軸方向に延在する円筒状の溝である。図6では、カラー53とベアリングハウジング51との間に形成されているグリース充填部56に連通させて径方向にグリース逃げ部57dを延在させている。図6のグリース逃げ部57dは、平面視円環状の、所定の厚みを有する環状リング溝である。図6の例では、実施の形態と同様にグリース振動伝達率を安定させ影響係数を一定に保つことができる。
【0032】
(変形例5)
実施の形態と変形例1〜4のターボ分子ポンプでは、グリース充填部56は、少なくとも、外輪42を収容するカラー53の外周面53outとベアリングハウジング51の内周面51indとの間に設けられている。グリース充填部56を、外輪42の外周面42outとベアリングハウジング51の内周面51inbとの間に設けてもよい。たとえば、図2で説明した寸法G1の隙間をグリース充填部としてもよい。
【0033】
(変形例6)
実施の形態と変形例1〜4のターボ分子ポンプでは、一つのグリース逃げ部57を設けたが、2つ以上のグリース充填部57を同じ部材、あるいは異なる部材にそれぞれ設けても良い。
【0034】
(変形例7)
実施の形態と変形例1〜4のターボ分子ポンプでは、外輪42の上端面および下端面に弾性部材52a、52bを設けたが、いずれか一方だけ設けても良い。
【0035】
(他の実施の形態)
実施の形態と変形例1〜4はターボ分子ポンプに本発明を適用したが、本発明は、排気機能部にターボポンプ部およびHolweckポンプ部を備えたターボ分子ポンプに限らず、タービン翼のみを備えた真空ポンプ、ジーグバーンポンプやHolweckポンプなどのドラッグポンプのみを備えた真空ポンプ、あるいはそれらを組み合わせた真空ポンプにも適用することができる。
【0036】
なお、上述した各実施の形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施の形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0037】
第1の態様の真空ポンプは、回転体を支持する転がり軸受と、転がり軸受の外輪を弾性部材で弾性支持する弾性保持装置とを有する真空ポンプにおいて、弾性保持装置は、外輪の外周側に設けられ、潤滑剤で満たされた潤滑剤充填部と、潤滑剤充填部に連通する空所とを有する。
部品の公差、組立公差などによりグリース充填部の容積が異なってもグリース充填率を一定の値とすることができる。
第2の態様の真空ポンプは、第1の態様の真空ポンプにおいて、空所は、弾性保持装置の構成部材の径方向に延在して形成されている。
弾性保持装置の比較的大型の部材に空所を設けるようにしたので、空所を空けやすくなり、容積も比較的大きく設定することができる。
第3の態様の真空ポンプは、第1の態様または第2の態様の真空ポンプにおいて、弾性保持装置は、外輪の外周側に配設された筒状のベアリングハウジングと、弾性部材をベアリングハウジング内で固定するハウジング固定部材とを有し、空所は、前記ベアリングハウジング内で、軸受外輪の径方向外側の潤滑剤充填部近傍において、径方向に延在する環状の溝として形成されている。
弾性保持装置の比較的大型の部材に空所を設けるようにしたので、空所を空けやすくなり、容積も比較的大きく設定することができる。また、ベアリングハウジング内で潤滑剤充填部近傍に逃げ部を設けたので、潤滑剤の密度が安定し、振動伝達率を安定させ、影響係数を一定に保つことができる。
第4の態様の真空ポンプは、第1の態様または第2の態様の真空ポンプにおいて、弾性保持装置は、外輪の外周側に配設された筒状のベアリングハウジングと、弾性部材をベアリングハウジング内で固定するハウジング固定部材とを有し、空所は、ハウジング固定部材内に回転軸方向に延在する筒状の溝として形成されている。
第5の態様の真空ポンプは、第1の態様から第4の態様のいずれかの真空ポンプにおいて、潤滑剤の充填量は、潤滑剤充填部の容積と空所の容積の和よりも少なく、潤滑剤充填部の容積以上の量である。このように充填量を設定すると、グリース充填部はグリースで確実に満たすことができる。
【符号の説明】
【0038】
1…シャフト、2…ベース、3…ロータ、6,7…永久磁石、8,9…転がり軸受、40…転がり軸受、41…内輪、42…外輪、43…カラー、50…弾性保持装置、51…ベアリングハウジング、52a,52b、52c…弾性部材、53…カラー、54…
ハウジングナット、55…Oリング、56…グリース充填部、57…グリース逃げ部(空所)、100…ターボ分子ポンプ、PB…永久磁石軸受装置、BB…転がり軸受装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6