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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-153376(P2020-153376A)
(43)【公開日】2020年9月24日
(54)【発明の名称】推進軸の締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/033 20060101AFI20200828BHJP
   F16D 3/20 20060101ALI20200828BHJP
   F16D 3/26 20060101ALI20200828BHJP
   F16D 3/41 20060101ALI20200828BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20200828BHJP
【FI】
   F16D1/033 100
   F16D3/20 Z
   F16D3/26 X
   F16D3/41 Z
   F16B35/04 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-49287(P2019-49287)
(22)【出願日】2019年3月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(72)【発明者】
【氏名】大澤 良平
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両への搭載作業性を向上させ、小型軽量化も可能となる推進軸を提供すること。
【解決手段】推進軸の端部に配置される自在継手に備えられる被締結部材33と、前記被締結部材に圧入嵌合されるボルト9と、前記ボルトに螺合されるナット10とを具備し、前記ボルトは、前記推進軸が取り付けられる相手側部材Fに備えられる挿通孔Gに挿通され、前記ボルト9は、軸方向視で中心に沿った少なくとも一つの平面部9eを備え、前記被締結部材33は、前記平面部9eと当接する当接部33gを有し、前記挿通孔Gから突出する前記ボルトの突出部9fに前記ナット10が螺合される、推進軸の締結構造。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進軸の端部に配置される自在継手、に備えられる被締結部材と、
前記被締結部材に圧入嵌合されるボルトと、
前記ボルトに螺合されるナットと、を具備し、
前記ボルトは、前記推進軸が取り付けられる相手側部材Fに備えられる挿通孔に挿通され、
前記ボルトは、軸方向視で中心に沿った少なくとも一つの平面部を備え、
前記被締結部材は、前記平面部と当接する当接部を有し、
前記挿通孔から突出する前記ボルトの突出部に、前記ナットが螺合される、推進軸の締結構造。
【請求項2】
前記被締付部材が十字継手のフランジヨークであり、
前記当接部が、前記ボルトの頭部が着座する前記フランジヨークの着座面から垂直に延在する、前記フランジヨークの壁面である、請求項1に記載の推進軸の締結構造。
【請求項3】
前記被締付部材が、等速自在継手の外輪部材であり、
前記当接部が、前記ボルトの頭部が着座する前記外輪部材の着座面から垂直に延在する、前記外輪部材の壁面である、請求項1に記載の推進軸の締結構造。
【請求項4】
複数のボルトを具備し、
隣接する複数の前記ボルトを連結する中間部、を有する座金をさらに備え、
前記座金は、前記中間部に対して垂直に延在する壁面を有する、請求項1に記載の推進軸の締結構造。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進軸の締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に使用される推進軸は、動力を伝達する装置であって、例えば車体の前側に搭載された原動機の動力は、変速機で減速された後、推進軸を介して車体の後側に搭載された終減速装置に伝達される。
【0003】
推進軸は特許文献1に記載のように、少なくとも二つの自在継手を備え、十字軸式の自在継手を用いるのが一般的である。
十字軸式の自在継手は、十字軸と、針状軸受を介して該十字軸を支持する一対のヨークからなり、一方のヨークはスタブヨークと呼ばれ、針状軸受を支持する腕部を一端に備え、他端に鋼管が接合される円筒部を備える。
他方のヨークはフランジヨークと呼ばれ、針状軸受を支持する腕部を一端に備え、他端に複数のボルト締結部を有するフランジ面と、相手側減速機に接続する際に回転中心を合わせるための嵌合突起部を備える。
フランジヨークのフランジ面には、腕部の基端で、腕部に干渉しないように複数のボルト孔が配置されている。
【0004】
推進軸と接続される減速機側のコンパニオンフランジにはボルト挿通孔が設けられ、フランジヨーク側からボルトが挿通され、コンパニオンフランジのフランジ裏側からナットを螺合することで推進軸と減速機が接続される。
ボルトは、その頭部にソケットレンチが係合されて締め付けられ、その後、トルクレンチで所定の締付トルクで締め付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5928945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の推進軸は、車両へ搭載する際は、事前に搭載された減速機のコンパニオンフランジに、推進軸のフランジヨークの嵌合突起部を嵌合し、次いで両者のボルト挿通孔の位相を合わせてからボルトを挿通し、ボルト先端にナットを手で仮組みする。ここで、嵌合突起部は高さが低いため、嵌合させた状態でも落下しないように作業者が保持しなければならず、他方の手でボルトとナットを組み付けるか、二人作業で行なうことが必要となる。また、ボルトの締付トルクを管理する作業において、コンパニオンフランジ側に螺合したナットに回り止めの工具を係合したうえでボルトにトルクレンチを係合することが必要となり作業性が良くない。また、推進軸側のボルトを締結するための工具がフランジヨークの腕部に干渉しないようにボルト位置を配置しなければならず、フランジヨークの大型化を招来する。さらに、推進軸が完成した後に塗装を行なうが、ボルトの着座面には塗膜が介在してはならないため、塗装する際にボルト着座面をマスキングして塗装されないようにする必要があり、作業が煩雑となる。
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みて考案されたものであり、その目的は、車両への搭載作業性を向上させ、小型軽量化も可能となる締結構造を備える推進軸を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第一の態様は、推進軸の端部に配置される自在継手に備えられる被締結部材と、前記被締結部材に圧入嵌合されるボルトと、前記ボルトに螺合されるナットとを具備し、前記ボルトは、前記推進軸が取り付けられる相手側部材(例えばコンパニオンフランジ)に備えられる挿通孔に挿通され、前記ボルトは、軸方向視で中心に沿った少なくとも一つの平面部を備え、前記被締結部材は、前記平面部と当接する当接部を有し、前記挿通孔から突出する前記ボルトの突出部に、前記ナットが螺合される、推進軸の締結構造である。
【0009】
前記する第一の態様によれば、ボルトは事前に推進軸に取り付けられているため、推進軸を車両に搭載する際には作業者がボルトを組み付ける必要が無い。また、自在継手のフランジヨークから突出するボルトの突出部をコンパニオンフランジのボルト挿通孔に挿通させることにより、推進軸とコンパニオンフランジの回転中心は確実に嵌合される。また、ボルト先端がコンパニオンフランジに挿通されることで、推進軸がコンパニオンフランジから外れて落下することも無くなり、作業者の負荷が軽減される。また、ボルト座面とフランジヨークのボルト座面間に塗膜が介在しなくなり、締結信頼性が向上する。
【0010】
また、前記第一の態様において、前記被締付部材が十字継手のフランジヨークであり、前記当接部が、前記ボルトの頭部が着座する前記フランジヨークの着座面から垂直に延在する、前記フランジヨークの壁面であっても良い。
また、この壁面は、フランジヨークのボルト孔から離間していても良い。
【0011】
前記ボルトに形成された平面部と、前記フランジヨークの壁面とが当接することで、ナットを締付ける際にボルトが共回りすることが効果的に抑制される。
なお、前記ボルトと前記フランジヨークとの圧入嵌合は、ボルト側にローレット加工を施すのが好適である。
【0012】
また、前記第一の態様において、前記被締付部材が、等速自在継手の外輪部材であり、前記当接部が、前記ボルトの頭部が着座する前記外輪部材の着座面から垂直に延在する、前記外輪部材の壁面であっても良い。
また、この壁面は、等速自在継手の外輪部材のボルト孔から離間していても良い。
【0013】
前記ボルトに形成された平面部と、前記等速継手の外輪部材の壁面とが当接することで、ナットを締付ける際にボルトが共回りすることが効果的に抑制される。
【0014】
また、前記第一の態様において、前記等速自在継手は、複数のボルトを具備し、隣接する複数のボルトを連結する中間部を有する座金をさらに備え、前記当接部は、前記中間部に対して垂直に延在する壁面であることが好ましい。
また、この壁面は、座金のボルト孔から離間していても良い。
特にクロスグルーブ型等速自在継手においては、隣接するボルト孔と共用する座金が用いられるが、この座金においてボルト孔の近傍をボルト座面から垂直に折り曲げて、挿通されるボルトの頭部に形成される平面部と当接させることで、座金の共回りを抑制しながらボルトの共回りが抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、推進軸を車両に搭載する作業において作業性が向上する。
また、スタブヨーク側に締付工具を係合しないためボルト位置をフランジヨークの腕部側に移設することが可能となり、ボルトのピッチサークルダイヤの小径化、及びフランジヨークの軽量化と回転半径の小径化が可能となる。
さらに、フランジヨークのボルト孔にボルトを嵌合させてから推進軸を塗装するため、フランジヨークのボルト着座面のマスキング作業が省略することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】推進軸全体を上方より視た半断面図である。
図2】第一実施形態の締結構造の要部拡大図である。
図3図2のIII−III断面を示す図である。
図4図3のIV−IV断面を示す図である。
図5】第二実施形態の締結構造の要部拡大図である。
図6図5のVI−VI断面を示す図である。
図7】第三実施形態の締結構造の要部拡大図である。
図8図7のVIII−VIII断面を示す図である。
図9図8のIX−IX断面を示す図である。
図10】第三実施形態のボルト及び座金を示した立体図である。
図11】第四実施形態の締結構造の要部拡大図である。
図12図11の断面XII−XIIである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて各実施形態の締結構造2,102,202について図面を参照しながら説明する。各実施形態で共通する技術的要素には、共通の符号を付するとともに説明を省略する。
【0018】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を推進軸に適用した例を図1乃至図4を用いて説明する。
推進軸1は、車両の前方に搭載された原動機(不図示)及び変速機(不図示)から出力された動力を、車両の後方に搭載された終減速装置(不図示)に伝達する。
図1に示すように、推進軸1は、その軸方向(以下において、「前後方向」とも称する。)両端に自在継手3、4を備えるほか、前後方向の中央部付近にも自在継手5と中間軸受6を備えている。
自在継手3と自在継手4とは、前後逆であるものの、同様の構成であるので、以下、自在継手3及び自在継手3を含む締結構造について具体的に説明する。
【0019】
図2に示すように、自在継手3は、十字軸31と、十字軸31の先端に配置される針状ころ軸受32と、十字軸31の一方の軸の両端に配置される軸受を内嵌するフランジヨーク33と、十字軸31の他方の軸の両端に配置される軸受を内嵌するスタブヨーク34を有する。
フランジヨーク33は、径方向に離間するとともに前後方向に指向する一対の腕部33aを有し、スタブヨーク34は、径方向に離間するとともに前後方向に指向する一対の腕部34aを有する。フランジヨーク33の腕部33aと、スタブヨーク34の腕部34aが、前後方向から見て90°の位相で配置され、腕部33aの先端及び腕部34aの先端を対向させて針状ころ軸受32を保持している。
【0020】
スタブヨーク34は、腕部34aの後方に腕部34aを支持する胴体部34bと、さらにその後方に円筒部34cを有する。円筒部34cには鋼管7が溶接により接合される。
【0021】
フランジヨーク33は、腕部33aの前方に腕部33aを支持するフランジ部33bと、さらにその前方に取り付け面33cと、嵌合突起部33dを有する。フランジ部33bには、前後方向から見て回転中心と同軸の円周上に、ボルト9が圧入嵌合される。4箇所のボルト圧入嵌合孔33eが矩形状に配置されている。フランジ部33bの後方にはボルト座面33fが形成されている。ボルト座面33fから回転軸中心方向には、ボルト座面33fから直角に後方へ指向する壁面33gが形成されている。ボルト座面33fは機械加工で形成され、隣接するボルト孔に向けて面加工をする際に、カッター外周により切削されることで壁面33gも形成される。なお、ボルト座面33fは、ボルト9の頭部が着座するフランジヨーク33の着座面である。
【0022】
図3及び図4に示すように、ボルト9は、六角形状の頭部9aを備え、さらに、この頭部9aに隣接して順に圧入嵌合部9b、軸部9c、ねじ部9dを備える。前後方向から見るボルト頭部9aの外周には6箇所の平面部9eが形成され、六角形状の二面間の幅Bは、その1/2であるB/2が、フランジヨーク33のボルト孔33e中心から、フランジヨーク33のボルト座面33fから垂直に延在している壁面33gまでの距離Cとほぼ同等となるように形成されている。
【0023】
圧入嵌合部9bは、ボルト孔33eに圧入嵌合されるように形成されている。圧入嵌合部9bには、軸方向に延在する複数の小突起が円周上に形成されるローレット加工が施されていることが好適である。ボルト9は、フランジ部33bの後方から挿入され、ボルト嵌合部9bとボルト孔33eとが嵌合することで抜け落ちることが生じないように取り付けられる。また、ボルト頭部9aの平面部9eの一箇所が、ボルト座面33fに形成された壁面33gに近接して、対向するように配置される。
【0024】
推進軸1を車両に搭載する作業においては、推進軸1の前方に配置される変速機の出力部材であるコンパニオンフランジFの後端面と、フランジヨーク33の取り付け面33cとが対向するように取り付けられる。フランジヨーク33に嵌合されたボルト9の軸部9cがコンパニオンフランジFのボルト孔に挿通され、コンパニオンフランジFのフランジ面から突出したボルト9の突出部9dにナット10を仮締めし、次いでエア式工具でナット10を締結し、トルクレンチで所定の締め付けトルクで締結することで、推進軸1と変速機の連結作業が完了する。
【0025】
以上、第一実施形態によれば、フランジヨーク33とコンパニオンフランジFとを接続する際に、突出部9dがガイドとなって、フランジヨーク33とコンパニオンフランジFとを嵌合する作業が簡単に行なえる。また、圧入嵌合されたボルト9が事前にフランジヨーク33側に装着されているため、作業者はボルト9の装着を気にすることなく、ナット10を螺合するだけの締結作業をすることができるので、従来よりも締結作業が簡略化される。さらに、ボルト9がコンパニオンフランジFの挿通孔Gに挿通されることで、ナット10を螺合する前に推進軸1が落下することも防止されるので、作業者が推進軸1を保持する負荷も軽減される。ボルト9の平面9eが、フランジヨーク33の壁面33gと近接して対向しているため、ナット10を締結する際にボルト9が共回りをすることがなくなり、フランジヨーク33側に工具を係合する必要もなくなるので、締結作業が簡略化される。
【0026】
また、推進軸1を製造する作業においては、推進軸1の組立作業完了後に全体を塗装する。この際、ボルト座面には塗装が付着してはならないため、ボルト座面に塗膜付着防止のマスキングを施す必要がある。本発明によれば、ボルト9がフランジヨーク33に事前に圧入嵌合された状態で組み立てられるため、塗装の作業を行なう際にはボルト座面33fはボルト9により塞がれている。そのため、ボルト座面33fに塗膜が付着することがなく、マスキングの作業が簡略化される。
【0027】
また、本発明によれば、フランジヨーク33側から工具を用いてボルト9を締結する必要がないため、ボルト孔33eの位置を、隣接する腕部33aに対して、さらに近接させることが可能となる。その結果、図3に示したボルト9のピッチサークルダイヤ33hを小径にすることが可能となり、フランジヨーク33及びコンパニオンフランジFの軽量化が可能となる。
【0028】
(第二実施形態)
次に、図5及び図6を用いて、本発明の第二実施形態の締結構造を推進軸101に適用した例で説明する。
図5及び図6において、本発明の第一実施形態と同様の構成については図1乃至図4と同様の番号を付し、その説明を適宜省略する。推進軸101は、推進軸1における十字軸式の自在継手3に代えて、等速自在継手103を備えている。
等速自在継手103は、外輪部材110と、この外輪部材110と同軸に配置された内輪部材120と、外輪部材110の内周に形成された溝と、内輪部材120の外周に形成された溝の間を転動する複数のボール130を備える。内輪部材120には孔スプラインが形成され、一端に軸スプラインを備える軸部材140が嵌合される。軸部材140の他端には鋼管107が溶接により接合される。外輪部材110は略円筒状の胴体部110aと、その前方にフランジ部110bと、さらにその前方には嵌合突起部110cが形成されている。嵌合突起部110cの内周にはカバー150が嵌合され、外輪部材110の他端と軸部材140にはブーツ160が嵌合される。フランジ部110bの前面110dは変速機の出力部材であるコンパニオンフランジFとの結合に用いられ、フランジ部110bの後面110eはボルト9の座面として用いられる。前後方向から見て、フランジ部110bには回転中心と同軸のピッチサークルダイヤ110h上に等間隔で複数のボルト圧入嵌合孔110fが形成され、それぞれのボルト圧入嵌合孔110fにはボルト9が圧入嵌合されている。後面110eには、ピッチサークルダイヤ110hより小径の円筒部110gが形成されている。円筒部110gの外周面から、ピッチサークルダイヤ110hまでの長さEは、ボルト9の頭部9aの二面幅Bの1/2と略同等になるように形成されている。
ボルト座面としても用いられる後面110eは機械加工で形成され、この後面110eを回転中心に向けてカッターを追い込むことで円筒状の壁面110gが形成される。
【0029】
以上第二実施形態によれば、外輪部材110とコンパニオンフランジFとを接続する際に、ボルト9の突出部9dがガイドとなって、外輪部材110とコンパニオンフランジFの嵌合する作業が簡単に行なえる。また、ボルト9が事前に外輪部材110側に装着されているため、作業者はボルト9の装着を気にすることなく、ナット10を螺合するだけの締結作業をすることができるので、従来よりも締結作業が簡略化される。さらに、ボルト9がコンパニオンフランジFの挿通孔Gに挿通されることで、ナット10を螺合する前に推進軸101が落下することも防止されるので、作業者が推進軸101を保持する負荷も軽減される。また、ボルト9の平面9eが、外輪部材110の壁面110gと近接して対向しているため、ナット10を締結する際にボルト9が共回りをすることがなくなり、外輪部材110側に工具を係合する必要もなくなるので、締結作業が簡略化される。
【0030】
また、推進軸1を製造する作業においては、推進軸1の組立作業完了後に全体を塗装する。この際、ボルトの座面には塗装が付着してはならないため、ボルト座面に塗膜付着防止のマスキングを施す必要がある。本発明によれば、ボルト9が外輪部材110に事前に圧入嵌合された状態で組み立てられるため、塗装の作業を行なう際にはボルト座面(後面110e)はボルト9により塞がれている。そのため、後面110eに塗膜が付着することがなく、マスキングの作業が簡略化される。
【0031】
(第三実施形態)
次に、図7乃至図10を用いて、本発明の第三実施形態の締結構造を推進軸201に適用した例で説明する。
図7乃至図10において、本発明の第一実施形態と同様の構成については図1乃至図4と同様の番号を付し、その説明を適宜省略する。推進軸201は、推進軸1における十字軸式の自在継手3に代えて、等速自在継手203を備え、中でもフランジ部と胴体部が一体になったことが異なる。
等速自在継手203は、外輪部材210、外輪部材210と同軸に配置された内輪部材220、及び、外輪部材210の内周に形成された溝と、内輪部材220の外周に形成された溝の間を転動する複数のボール(不図示)を備える。内輪部材220には孔スプラインが形成され、一端に軸スプラインを備える軸部材240が嵌合される。軸部材240の他端には鋼管7が溶接により接合される。外輪部材210は略円筒状をなし、前後方向から見て、その内周に形成された溝(不図示)と、隣接する溝との間に複数のボルト孔210aが設けられている。外輪部材210の一端には、変速機のコンパニオンフランジFに内嵌される嵌合部210bを備える。外輪部材210の嵌合部に隣接してカバー250が嵌合され、外輪部材210の他端と軸部材240にはブーツ260が嵌合される。本実施形態においては、ボルト孔210aは6個設けられており、ボルト12の座面と、外輪部材210に外嵌されるブーツアダプター260aとの間には、隣接するボルト12と共用する座金230が配置されている。座金230は、図8及び図10に示すように、前方から見て、円弧状に延在する中間部230aを有し、その両端にボルト挿通孔230b(図7及び図9参照)が形成されている。そして、ボルト挿通孔230bから離間した位置で、ボルト着座面に対して垂直に指向する壁面230cが、座金部材230を折り曲げて形成されている。図10に示すように、ボルト12は、頭部12aを備え、さらに、この頭部12aに隣接して順に嵌合部12b、軸部12c、ねじ部12dを備える。前後方向から見る頭部12aの外周は馬蹄形状をなし、少なくとも1箇所の平面部12eが形成され、ボルト中心から平面部12eの幅は、前記座金230の、ボルト挿通孔230bの中心から壁面230cまでの距離とほぼ同等となるように形成されている。ボルト12は、座金230とブーツアダプター260aのボルト挿通孔に挿通され、外輪部材210のボルト孔210aに嵌合され、ねじ部12dが、接続される変速機のコンパニオンフランジFの挿通孔Gのフランジ面から突出し、ここにナット10を螺合する。頭部12aの平面部12eは、座金の壁面230cに対向して挿通されている。
【0032】
以上第三実施形態によれば、外輪部材210とコンパニオンフランジFとを接続する際に、ボルト12の軸部12c及びねじ部12dがガイドとなって、外輪部材210とコンパニオンフランジFとを嵌合する作業が簡単に行なえる。また、ボルト12が事前に外輪部材210側に装着されているため、作業者はボルト12の装着を気にすることなく、ナット10を螺合するだけの締結作業をすることができるので、従来よりも締結作業が簡略化される。さらに、ボルト12がコンパニオンフランジFの挿通孔Gに挿通されることで、ナット10を螺合する前に推進軸201が落下することも防止されるので、作業者が推進軸201を保持する負荷も軽減される。また、ボルト12の平面12eが、座金の壁面230cと近接して対向しているため、ナット10を締結する際にボルト12が共回りをすることがなくなり、外輪部材210側に工具を係合する必要もなくなるので、締結作業が簡略化される。
【0033】
(第四実施形態)
次に、図11及び図12を用いて、本発明の第四実施形態の締結構造を推進軸1に適用した例で説明する。
図11及び図12において、本発明の第一実施形態と同様の構成については図1乃至図4と同様の番号を付し、その説明を適宜省略する。第一実施形態においてはボルト六角頭部の平面部9eをフランジヨークの壁面33gに対向させたが、図11及び図12に示すように、ボルト11の頭部11aを馬蹄形としても良い。前後方向から見るボルト頭部11aの外周には1箇所の平面部11eが形成され、ボルト11の中心から平面部11eまでの距離Dは、フランジヨーク33のボルト孔33e中心から壁面33gまでの距離Cとほぼ同等となるように形成されている。
【0034】
以上第四実施形態によれば、ボルト11の頭部11aが小径化され、フランジヨーク33のフランジ部に形成されたボルト座面33fを小径化することができる。そして、フランジヨーク33及びコンパニオンフランジFの小型軽量化も可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 推進軸
9、11、12 ボルト
9e、11e、12e 平面部
9f、11f、12f 突出部
10 ナット
33 フランジヨーク
33g、110g、230c 当接部(壁面)
110、210 外輪部材
230 座金
230a 中間部
230b ボルト挿通孔
F 相手側締結部材(コンパニオンフランジ)
G 挿通孔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12