【解決手段】流体制御弁10は、シリンダ室14のピストン18より摺動方向の一方側に第1パイロット室64が設けられる。第1パイロット室64の内壁には、流体を給排可能な第1パイロットポート84の開口86が設けられる。ピストン18が開弁位置にあるとき第1パイロット室64には流体が収容され、この流体は、ピストン18が閉弁位置に向かって変位する際、開口86を介して排出される。ピストン18及びバルブボディ16の少なくとも一方には、ピストン18が開弁位置から閉弁位置側に変位し始めた後、開口86の面積よりも小さい流路断面積を有する絞り流路104をピストン18とバルブボディ16との間に形成する絞り部70が設けられる。
被制御流体の流路及びシリンダ室が設けられたバルブボディと、作動圧力を受けて前記シリンダ室内を摺動方向に沿って摺動するピストンと、前記ピストンと一体に変位することで前記流路に設けられた弁座に対し離間又は着座して前記流路を開閉する弁体と、を備える流体制御弁であって、
前記シリンダ室の前記ピストンより前記摺動方向の一方側にパイロット室が設けられ、
前記パイロット室の内壁には、前記パイロット室に流体を給排可能なポートの開口が設けられ、
前記ピストンが前記弁体を前記弁座から離間させる開弁位置にあるとき、前記パイロット室には前記流体が収容され、
前記パイロット室内の前記流体は、前記ピストンが前記弁体を前記弁座に着座させる閉弁位置に向かって変位する際、前記開口を介して前記ポートに排出され、
前記ピストン及び前記バルブボディの少なくとも一方には、前記ピストンが前記開弁位置から前記閉弁位置側に変位し始めた後、前記開口の面積よりも小さい流路断面積を有する絞り流路を前記ピストンと前記バルブボディとの間に形成する絞り部が設けられる、流体制御弁。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る流体制御弁について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図において、同一又は同様の機能及び効果を奏する構成要素に対しては同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0015】
図1〜
図4に示すように、第1実施形態に係る流体制御弁10は、例えば、何れも不図示ではあるが、半導体製造装置等の流体管路に配設されるものとして好適に適用可能である。そこで、以下では、流体制御弁10が、半導体製造装置の流体管路を流れる薬液等を被制御流体とし、その流れを制御するものである場合を例に挙げて説明する。しかしながら、流体制御弁10は、半導体製造の用途に限定されず、種々の流体を被制御流体として、その流れを制御することが可能である。
【0016】
図1に示すように、流体制御弁10は、被制御流体の流路12及びシリンダ室14が設けられたバルブボディ16と、シリンダ室14内を摺動方向(矢印Y1、Y2方向)に摺動するピストン18と、ピストン18と一体に変位することで流路12に設けられた弁座20に対し離間又は着座して流路12を開閉する弁体22と、ピストン18を閉弁位置に向かって付勢する付勢部材24とを主に備える。つまり、この流体制御弁10は、付勢部材24の弾発力によって、弁体22を弁座20に常時着座させるノーマルクローズタイプである。
【0017】
バルブボディ16は、例えば、耐食性や耐薬品性の高い材料から形成され、ボディ本体26と、第1ハウジング28と、第2ハウジング30とを有する。ボディ本体26の好適な材料の一例としては、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。第1ハウジング28及び第2ハウジング30の好適な材料の一例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PPS、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
【0018】
図1に示すように、ボディ本体26は、矢印X2側の端部に一次側ポート34が設けられ、矢印X1側の端部に二次側ポート32が設けられ、これらの一次側ポート34及び二次側ポート32の間に矢印X1、X2方向に沿って延在する流路12が形成されている。なお、一次側ポート34及び二次側ポート32のそれぞれは、例えば、上記の半導体製造装置の流体管路を形成する流体管(不図示)等にナット36を介して接続可能となっている。また、流路12は、一次側ポート34側から二次側ポート32側に向かって(矢印X1方向に)被制御流体を流通可能としてもよいし、二次側ポート32側から一次側ポート34側に向かって(矢印X2方向に)被制御流体を流通可能としてもよい。
【0019】
ボディ本体26の流路12の延在方向の略中央には、該延在方向に直交する方向(矢印Y1、Y2方向)に沿って弁室形成部38が設けられている。弁室形成部38の内部には、流路12と連通する弁室40が形成される。流路12は、一次側ポート34と弁室40とを連通する一次側流路44と、二次側ポート32と弁室40とを連通する二次側流路42とからなり、一次側流路44の弁室40に臨む側の端部に弁座20が設けられている。
【0020】
このため、弁体22が弁座20に着座することで、一次側ポート34と弁室40との連通が遮断され、これによって、一次側ポート34と二次側ポート32との連通が遮断される。一方、弁座20から弁体22が離間することで(
図2参照)、一次側ポート34と弁室40とが連通し、該弁室40を介して、一次側ポート34と二次側ポート32とが連通する。
【0021】
弁室形成部38の矢印Y1側の端部には、Oリング46を介して気密に第1ハウジング28が連結される。また、互いに連結された弁室形成部38の矢印Y1側の端部と、第1ハウジング28の矢印Y2側の端部との間には、弁体22を含んで構成されるダイヤフラム弁48の外周縁部50が挟持される。
【0022】
ダイヤフラム弁48は、例えば、PTFE、フッ化ビニリデン系フッ素ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレンプロピレン系フッ素ゴム(FEPM)、エチレンプロピレン(EPDM)等の耐食性や耐薬品性の高い材料から形成される。また、ダイヤフラム弁48は、上記の外周縁部50及び弁体22の他に、外周縁部50と弁体22との間に設けられ、弁体22の変位に合わせて変形可能な薄肉部52を有する。上記のようにしてダイヤフラム弁48が設けられることで、弁室40は、薄肉部52よりも矢印Y1側と、薄肉部52よりも矢印Y2側とに液密に仕切られる。以下では、弁室40の薄肉部52よりも矢印Y1側の空間をダイヤフラム室54ともいう。
【0023】
図2に示すように、第1ハウジング28は、矢印Y1、Y2方向に延在する筒状部56と、筒状部56の内壁から軸心側に突出するフランジ部58とを有する。筒状部56のフランジ部58よりも矢印Y2側の部分と、フランジ部58の矢印Y2側の端面とは、弁室形成部38とともに弁室40を形成する。筒状部56のフランジ部58よりも矢印Y1側の部分と、フランジ部58の矢印Y1側の端面とは、第2ハウジング30とともにシリンダ室14を形成する。
【0024】
シリンダ室14の内部には、ピストン18のピストン本体部60が配設され、該ピストン本体部60の外周面と筒状部56の内壁面とが摺動可能となっている。ピストン本体部60の外周面と筒状部56の内壁面との間にはOリング62が設けられる。これによって、シリンダ室14は、ピストン18のOリング62よりも摺動方向の一方側(矢印Y2側)に設けられた第1パイロット室64(パイロット室)と、他方側(矢印Y1側)に設けられた第2パイロット室66とに区画される。なお、ピストン18の好適な材料としては、例えば、第1ハウジング28及び第2ハウジング30と同様のものが挙げられる。
【0025】
ピストン本体部60の矢印Y2側には、第1パイロット室64に臨む第1受圧面68が設けられている。また、ピストン本体部60の外周側には、第1受圧面68の周方向の一部から矢印Y2側に延在する絞り部70が設けられている。なお、絞り部70は、第1受圧面68の周方向の全体から矢印Y2側に延在する円環状であってもよい。絞り部70の詳細については後述する。ピストン本体部60の矢印Y2側の端部であって径方向の中心側には、摺動方向(矢印Y1、Y2方向)に延在するロッド部72がピストン本体部60と一体の母材から形成されている。
【0026】
ロッド部72は、フランジ部58の径方向中心側に設けられたロッド挿通孔74に摺動可能に挿通されるとともに、該ロッド部72の先端が弁室40内に配置される。このロッド部72の先端に弁体22が固定されることで、弁体22はピストン18と一体に変位可能となっている。
【0027】
ピストン本体部60の矢印Y1側には、第2パイロット室66に臨む第2受圧面76が設けられている。また、ピストン本体部60の矢印Y1側の端部であって、径方向の中心側には、インジケータ78が連結されている。
【0028】
第1ハウジング28の筒状部56には、ダイヤフラム室54に連通する呼吸ポート80が設けられている。呼吸ポート80を通じて、ダイヤフラム室54は、大気開放状態となっている。ダイヤフラム室54は、ロッド部72とロッド挿通孔74の内壁との間に設けられたOリング82を介してシリンダ室14との連通が遮断されている。
【0029】
また、筒状部56には、第1パイロット室64に連通する第1パイロットポート84(ポート)が設けられている。つまり、第1パイロット室64の内壁には、第1パイロットポート84の開口86が設けられている。第1実施形態では、フランジ部58の矢印Y1側に収容凹部88が設けられている。この収容凹部88には、ピストン18が弁体22を弁座20に着座させる閉弁位置にあるときに、絞り部70が進入する。第1パイロットポート84の開口86は、収容凹部88の内側に臨むように設けられている。
【0030】
筒状部56の矢印Y1側の端部には、Oリング90を介して気密に第2ハウジング30が連結される。具体的には、第2ハウジング30の矢印Y2側端部には、筒状部56の内径よりも小さい外径の挿入筒部92が設けられ、該挿入筒部92が筒状部56に内嵌されることで第1ハウジング28と第2ハウジング30とが連結される。また、Oリング90は、筒状部56の内壁と挿入筒部92の外壁との間に設けられる。ピストン18が矢印Y1方向に変位する際、挿入筒部92の端面92aとピストン本体部60とが当接することで、矢印Y1方向に対するピストン18のそれ以上の変位が規制される。
【0031】
第2ハウジング30には、インジケータ78が摺動可能に挿通されるインジケータ挿通孔96と、SUS等からなるスプリングである付勢部材24が収容される収容溝98と、第2パイロット室66に連通する第2パイロットポート100とが設けられている。
【0032】
インジケータ78は、例えば、PVDFや、PP等の材料からロッド状に形成され、インジケータ挿通孔96の内部を矢印Y1、Y2方向に沿ってピストン18と一体に変位する。
図3に示すように、ピストン18が弁体22を弁座20に着座させる閉弁位置にあるとき、例えば、インジケータ78の矢印Y1側の端面78aと、第2ハウジング30の矢印Y1側の端面30aとが面一に配置される。
【0033】
一方、
図2に示すように、ピストン18のピストン本体部60と挿入筒部92の端面92aとが当接する位置、換言すると、ピストン18が弁体22を弁座20から離間させる開弁位置にあるとき、インジケータ78の端面78aは、第2ハウジング30の端面30aよりも矢印Y1側に突出する。
【0034】
このため、インジケータ78の端面78aの位置を確認することで、バルブボディ16内で弁体22が弁座20に着座しているか否かを知ることが可能となっている。インジケータ78とインジケータ挿通孔96の内壁との間にはOリング101が設けられ、これによって、インジケータ挿通孔96を介したシリンダ室14と外部との連通が遮断されている。なお、上記したOリング46、62、82、90、101のそれぞれの好適な材料の一例としては、FEPM、FKM、EPDM等が挙げられる。
【0035】
収容溝98の内部は第2パイロット室66に連通する。収容溝98とピストン18の第2受圧面76との間には、付勢部材24が蓄勢された状態で配設される。これによって、ピストン18は、弁体22を弁座20に着座させる方向(矢印Y2側)に向かって常時弾発付勢される。つまり、付勢部材24の弾発力が、ピストン18を閉弁位置側に向かわせる閉弁側作動圧力となる。
【0036】
このようにノーマルクローズタイプである流体制御弁10では、第1パイロットポート84に、操作用流体の供給源(不図示)が接続される。なお、操作用流体の一例としては圧縮エアや、窒素ガス等が挙げられる。操作用流体の供給源から操作用流体が供給されていない状態では、
図3に示すように、付勢部材24による開弁側作動圧力によって、ピストン18は閉弁位置にある。このため、弁体22は弁座20に着座した状態であり、一次側ポート34(
図1)と二次側ポート32(
図1)の連通が遮断されている。
【0037】
操作用流体の供給源から、第1パイロットポート84及び開口86を介して第1パイロット室64に操作用流体が供給されると、第1パイロット室64の内圧が上昇する。これによって、第1受圧面68には、第1パイロット室64内の操作用流体の圧力に応じた大きさの、ピストン18を開弁位置側に向かわせる開弁側作動圧力が付与される。開弁側作動圧力が、付勢部材24の弾発力(閉弁側作動圧力)を超えて大きくなると、ピストン18が開弁位置に向かって(矢印Y1側に)変位する。その結果、
図2に示すように、弁体22が弁座20から離間し、一次側ポート34(
図1)と二次側ポート32(
図1)とが連通する。
【0038】
つまり、ピストン18が開弁位置にある場合、第1パイロット室64には、所定の圧力で操作用流体(流体)が収容された状態である。操作用流体の供給源からの操作用エアの供給を停止すると、第1パイロット室64内の操作用流体は、開口86を介して第1パイロットポート84の外部へと排出され始める。
【0039】
これによって、第1パイロット室64の内圧が低下すると、第1受圧面68に付与される開弁側作動圧力が低下する。そして、付勢部材24を介して第2受圧面76に付与されている閉弁側作動圧力よりも開弁側作動圧力が小さくなると、ピストン18は閉弁位置に向かって(矢印Y2側に)変位する。この際も、パイロット室内の操作用流体は、開口86を介して第1パイロットポート84に排出される。
【0040】
第2パイロットポート100は、第2パイロット室66を大気開放する呼吸ポートとして機能する。このため、ピストン18が閉弁位置にあるとき、第2パイロット室66には、第2パイロットポート100を介して吸気された大気が収容されている。なお、流体制御弁10の周辺が大気以外の流体で満たされている場合には、当該流体が第2パイロット室66に収容されてもよい。第2パイロットポート100には、操作用流体の供給源等を接続する必要がないため、該供給源との接続用の配管等に代えて、ポートプラグ102を取り付けてもよい。第2パイロットポート100の開口は、収容溝98の内壁に設けられている。
【0041】
ここで、第1実施形態に係る流体制御弁10における絞り部70について、第1パイロットポート84の開口86との関係で具体的に説明する。絞り部70は、ピストン18が開弁位置から閉弁位置側に所定距離変位すると、
図3に示すように、開口86の全体と、第1パイロット室64の内壁の開口86の周辺部103とを覆う。この際、周辺部103と絞り部70との間には、開口86と第1パイロット室64とを連通するとともに、開口86の面積より小さい流路断面積の絞り流路104が形成される。
【0042】
このようにして絞り流路104が形成されると、第1パイロット室64内の操作用流体は、絞り流路104を介して開口86の外側に排出されるようになる。また、ピストン18が閉弁位置に到達した後も、絞り流路104を介して、第1パイロット室64と第1パイロットポート84とが連通した状態で維持される。さらに、第1パイロットポート84に供給される操作用流体も、絞り流路104を介して第1パイロット室64内に流入するようになる。
【0043】
なお、
図1〜
図3に示すように、絞り部70は、ピストン18と一体の母材から形成されてもよいし、
図4に示すように、ピストン18とは別体から形成された後に、ピストン本体部60に一体化されることでピストン18を構成することとしてもよい。絞り部70とピストン18とが別体からなる場合、絞り部70の好適な材料の一例としては、ピストン18と同じ樹脂材料や、FEPM、FKM、EPDM、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム等のゴム材料や、ポリウレタンエラストマ、熱可塑性ポリエステルエラストマ(TEEE)等のエラストマ材料等が挙げられる。
【0044】
第1実施形態に係る流体制御弁10は、基本的には以上のように構成される。この流体制御弁10を動作させる場合、不図示ではあるが、一次側ポート34及び二次側ポート32のそれぞれを、ナット36を介して、上記の半導体製造装置の流体管に接続することで、流体管路に流体制御弁10の流路12を介装する。また、第1パイロットポート84に操作用流体の供給源を接続する。
【0045】
なお、流体管路の上流側に一次側ポート34を接続し、且つ流体管路の下流側に二次側ポート32を接続した場合、流路12に対して一次側ポート34側から二次側ポート32側に(矢印X1方向に)向かって被制御流体が流通可能となる。一方、流体管路の下流側に一次側ポート34を接続し、流体管路の上流側に二次側ポート32を接続した場合、流路12に対して二次側ポート32側から一次側ポート34側に(矢印X2方向に)向かって被制御流体が流通可能となる。
【0046】
流体制御弁10により、流路12を閉状態(
図3)から開状態(
図2)として、流体管路に被制御流体を流通させる制御を行う場合、第1パイロットポート84及び開口86を介して第1パイロット室64に操作用流体を供給する。このようにして第1パイロット室64の内圧を上昇させ、開弁側作動圧力を閉弁側作動圧力よりも大きくすることで、ピストン18を開弁位置側に変位させることができる。これに伴い、弁体22が弁座20から離間するため、互いに連通した一次側ポート34と二次側ポート32、すなわち、開状態となった流路12を介して、流体管路に被制御流体を流通させることが可能となる。
【0047】
流体制御弁10により、流路12を開状態(
図2)から閉状態(
図3)として、流体管路内の被制御流体の流通を停止する制御を行う場合、第1パイロットポート84に対する操作用流体の供給を停止する。これによって、第1パイロット室64内の操作用流体が開口86を介して第1パイロットポート84へ排出されるようになり、第1パイロット室64の内圧が低下する。
【0048】
このため、開弁側作動圧力が閉弁側作動圧力よりも小さくなり、ピストン18を閉弁位置側に変位させることができる。これに伴い、弁体22が弁座20に着座することで、一次側ポート34と二次側ポート32との連通が遮断され、流路12が閉状態となるため、流体管路における被制御流体の流通を停止することが可能となる。
【0049】
流体制御弁10では、上記のようにして流路12を開状態から閉状態とする際、ピストン18が開弁位置から所定距離変位して閉弁位置に近づくと、
図3に示すように、絞り部70が収容凹部88に進入する。これによって、絞り部70は、収容凹部88の内側に臨むように設けられた開口86と周辺部103とを覆うことで、絞り流路104を形成する。
【0050】
この場合、絞り流路104を介して開口86の外側に操作用流体が排出されるようになるため、第1パイロット室64から第1パイロットポート84に排出される操作用流体の排出流量が低減する。このようにして第1パイロット室64の内圧を上昇させることで、閉弁側作動圧力の大きさに対するピストン18の変位速度を小さくすることができる。
【0051】
つまり、流体制御弁10では、弁座20に近接した弁体22が着座する前の段階で、第1パイロット室64から排出される操作用流体の排出流量を低減させて、ピストン18の変位速度を小さくする。これによって、低速で弁体22を弁座20に着座させることができ、弁体22が弁座20に着座する際の衝撃を低減することができる。
【0052】
また、絞り部70により絞り流路104を形成しても、該絞り流路104の流路断面積に応じた流量で開口86の外側に操作用流体を排出することができる。すなわち、絞り流路104を形成することで上昇した第1パイロット室64の内圧はやがて低下する。このため、閉弁側作動圧力を大きくすることなく、換言すると、ピストン18やシリンダ室14の径等を大きくすることなく、ピストン18を閉弁位置まで変位させることができる。
【0053】
以上から、流体制御弁10が大型化することを抑制しつつ、小さい速度で弁体22を弁座20に着座させて着座時の衝撃を低減させることができる。
【0054】
上記のようにして着座時の衝撃を低減できることにより、弁体22や弁座20等から剥離片(不図示)が生じることを抑制できる。その結果、剥離片が流路12に混入することを抑制して被制御流体を清浄に維持することや、弁体22及び弁座20の耐久性を向上させることが可能となる。
【0055】
また、絞り部70は、ピストン18が開弁位置から閉弁位置側に変位し始めた後に、操作用流体の排出流量を低減させる。換言すると、ピストン18が開弁位置から閉弁位置側に所定距離変位するまでは、操作用流体の排出流量を低減させない。このため、ピストン18が開弁位置から閉弁位置にある程度近づくまではピストン18の変位速度が低下することを回避して、通常の変位速度でピストン18を変位させることができる。
【0056】
従って、例えば、弁体22の着座時の衝撃を低減可能なピストン18の変位速度となるように、予め面積を小さく設定した開口86を第1パイロット室64の内壁に設ける場合とは異なり、閉弁位置側へのピストン18の変位を開始してから、弁体22が着座するまでの時間差を低減することができる。
【0057】
さらに、この流体制御弁10では、ピストン18を閉弁位置から開弁位置側に変位させる場合も、ピストン18が閉弁位置から開弁位置側に向かって所定距離変位するまでは、絞り流路104が形成されたままである。つまり、絞り流路104を介して第1パイロット室64に操作用流体が流入する。これによって、弁体22を弁座20から小さい速度で離間させることができる。そして、弁体22を弁座20から離間させた後に、通常の変位速度でピストン18を開弁位置へと変位させることができる。
【0058】
従って、この流体制御弁10では、小さい速度で弁体22を弁座20に着座させること、及び小さい速度で弁座20から弁体22を離間させることの両方が可能である。このため、弁体22の開閉時に被制御流体に急激な圧力変動が生じることを抑制でき、ウォーターハンマーやキャビテーション等が生じることを効果的に抑制できる。
【0059】
なお、弁座20から弁体22が離間する速度の低下を回避する場合には、流体制御弁10は、上記の絞り部70に代えて、
図5〜
図7に示す絞り部106を備えることとしてもよい。
図5に示すように、絞り部106は、ピストン18が閉弁位置にあるときに、開口86の全体及び周辺部103を覆う弾性片である。絞り部106は、ピストン18が閉弁位置から開弁位置側に変位する際、
図6に示すように、開口86を介して第1パイロット室64に流入する操作用流体の圧力を受けて開口86から離間する方向に弾性変形することが可能となっている。
【0060】
また、絞り部106が周辺部103を覆う際、第1パイロット室64の内圧に関わらず絞り流路104が形成された状態を維持することが可能となるように、絞り部106の外周には、矢印Y1、Y2方向に沿う溝状の凹部108(
図7)が形成されている。
【0061】
なお、絞り部106の外周には、凹部108に代えて、又は凹部108とともに、突条や突起からなる凸部(不図示)が設けられてもよい。突条や突起の突出端面は、平面、球面、湾曲面等から構成されていてもよい。また、絞り部106の外周に設けられる凹部108や凸部の個数は特に限定されるものではなく、1個であっても複数個であってもよい。さらに、凹部108や凸部は、絞り部106に代えて、周辺部103に設けられてもよい。
【0062】
絞り部106を備える流体制御弁10では、ピストン18を閉弁位置から開弁位置側に変位させる際、
図6に示すように、絞り部106を開口86から離間させることができる分、絞り流路104の流路断面積を大きくすることができる。これによって、第1パイロット室64に流入する操作用流体の流量を増大させることができるため、弁体22が弁座20から離間する速度を大きくすることができる。つまり、この流体制御弁10では、開弁位置に向かうピストン18の変位を開始してから、開弁するまでに生じる時間差を低減することができる。
【0063】
図5に示すように、ピストン18が閉弁位置にあるときに第1パイロット室64の内圧が大きくなると、弾性片からなる絞り部106は、開口86及び周辺部103に向かって押圧される方向に変形し易くなる。このように、絞り部106が開口86及び周辺部103に押しつけられた場合であっても、絞り部106と周辺部103との間に凹部108及び凸部の少なくとも一方が介在することで、絞り部106と周辺部103との間に絞り流路104が形成された状態を維持することができる。これによって、絞り流路104を介して、第1パイロット室64の内部に操作用流体を良好に流入させることができるため、ピストン18を開弁位置側へと速やかに変位させることが可能になる。
【0064】
図1〜
図6に示すように、流体制御弁10は、ノーマルクローズタイプであることとした。しかしながら、特にこれには限定されず、流体制御弁10は、
図8に示すようにノーマルオープンタイプであってもよいし、
図9に示すように複動タイプであってもよい。ノーマルオープンタイプ及び複動タイプの何れにした場合であっても、ノーマルクローズタイプとした場合と同様に上記の作用効果を得ることができる。
【0065】
図8に示すように、流体制御弁10がノーマルオープンタイプであった場合、第1ハウジング28のフランジ部58に設けられた収容溝110に付勢部材24が収容される。収容溝110は、第1パイロット室64に連通する。収容溝110とピストン18の第1受圧面68との間に付勢部材24が蓄勢された状態で配設される。これによって、ピストン18は、弁体22を弁座20から離間させる方向(矢印Y1側)に向かって常時弾発付勢する。つまり、付勢部材24の弾発力が、ピストン18を開弁位置側に向かわせる開弁側作動圧力となる。
【0066】
また、ノーマルオープンタイプの流体制御弁10では、第2パイロットポート100に、操作用流体の供給源が接続される。呼吸ポートとして機能する第1パイロットポート84にはポートプラグ102が設けられてもよい。つまり、ノーマルオープンタイプの流体制御弁10では、付勢部材24から付与される開弁側作動圧力によりピストン18が開弁位置にあるとき、第1パイロット室64には、第1パイロットポート84を介して吸気された大気(流体)が収容されている。なお、流体制御弁10の周辺が大気以外の流体で満たされている場合には、当該流体が第1パイロット室64に収容されてもよい。
【0067】
第2パイロットポート100を介して第2パイロット室66に操作用流体が供給されることで、第2パイロット室66内の操作用流体の圧力に応じた閉弁側作動圧力がピストン18の第2受圧面76に付与される。
【0068】
このため、ピストン18が開弁位置にある状態で、第2パイロット室66に操作用流体が供給されることで、開弁側作動圧力が閉弁側作動圧力よりも大きくなると、ピストン18が閉弁位置側に変位する。この際、第1パイロット室64の大気は、開口86を介して第1パイロットポート84に排出される。そして、ピストン18が開弁位置から所定距離変位して閉弁位置に近づくと、絞り部70によって絞り流路104が形成されるため、第1パイロット室64から、絞り流路104を介して開口86の外側に大気が排出されるようになる。
【0069】
その結果、ノーマルオープンタイプの流体制御弁10においても、弁座20に近接した弁体22が着座する前の段階で、第1パイロット室64から排出される大気の排出流量を低減させて、ピストン18の変位速度を小さくすることができる。これによって、低速で弁体22を弁座20に着座させることができ、弁体22が弁座20に着座する際の衝撃を低減することができる。
【0070】
また、絞り部70により絞り流路104を形成しても、該絞り流路104の流路断面積に応じた流量で開口86の外側に大気を排出することができる。このため、閉弁側作動圧力を大きくすることなく、換言すると、ピストン18やシリンダ室14の径等を大きくすることなく、ピストン18を閉弁位置まで変位させることができる。
【0071】
つまり、第1パイロット室64から絞り流路104及び開口86を介して排出される流体が、
図1〜
図6に示すノーマルクローズタイプの流体制御弁10のように操作用流体であっても、
図8に示すノーマルオープンタイプの流体制御弁10のように大気等であっても同様に上記の作用効果を得ることができる。
【0072】
図9に示すように、複動タイプの流体制御弁10は、付勢部材24を備えず、第1パイロットポート84及び第2パイロットポート100のそれぞれに、操作用流体の供給源が接続される。第1パイロットポート84を介して第1パイロット室64に操作用流体が供給された場合に、第1パイロット室64内の操作用流体の圧力に応じた開弁側作動圧力がピストン18の第1受圧面68に付与される。第2パイロットポート100を介して第2パイロット室66に操作用流体が供給された場合に、第2パイロット室66内の操作用流体の圧力に応じた閉弁側作動圧力がピストン18の第2受圧面76に付与される。
【0073】
つまり、
図9に示す複動タイプの流体制御弁10では、
図1〜
図6に示すノーマルクローズタイプの流体制御弁10と同様に、第1パイロット室64の操作用流体を絞り流路104及び開口86を介して排出することができ、上記の作用効果を同様に得ることが可能である。
【0074】
次に、
図10〜
図14を参照しつつ、第2実施形態に係る流体制御弁120について説明する。流体制御弁120は、上記のようにピストン18の外周側に設けられた絞り部70に代えて、ピストン18及びバルブボディ16の両方に設けられた絞り部122を備える。具体的には、
図11〜
図13に示す第2実施形態に係る流体制御弁120と、
図2及び
図3に示す第1実施形態に係る流体制御弁10とは、ピストン本体部60の第1受圧面68側の形状と、フランジ部58の矢印Y1側の形状とがそれぞれ異なることを除いて、同様に構成されている。
【0075】
図11〜
図13に示すように、ピストン18の第1受圧面68(受圧面)は、その外周側に設けられた外周側受圧面124と、内周側に設けられた内周側受圧面126とを有する。外周側受圧面124と内周側受圧面126との間には、面方向が摺動方向(矢印Y1、Y2方向)に沿うピストン段差面128が形成されている。
【0076】
第1パイロット室64の内壁を構成するフランジ部58の矢印Y1側の端面には、外周側受圧面124に対向する外周側対向面130と、内周側受圧面126に対向する内周側対向面132とが設けられている。また、外周側対向面130と内周側対向面132との間には、矢印Y1、Y2方向に沿う内壁段差面134が形成されている。この内壁段差面134には、第1パイロットポート84の開口86が設けられている。すなわち、第1パイロットポート84と開口86との間には、フランジ部58を矢印X1、X2方向に沿って貫通する貫通路136が設けられている。
【0077】
なお、フランジ部58の貫通路136が設けられた部位は、
図14に示すように、バルブボディ16の第1ハウジング28とは別体として形成された後に、第1ハウジング28と一体化されることでバルブボディ16を構成してもよい。
【0078】
絞り部122は、ピストン段差面128及び内壁段差面134に設けられる。ピストン段差面128は、ピストン18が開弁位置(
図11)から閉弁位置側に変位することで、内壁段差面134に近づく。そして、
図12に示すように、ピストン18が開弁位置から閉弁位置側に向かって所定距離変位すると、ピストン段差面128と内壁段差面134とが対向し始める。このようにして互いに対向したピストン段差面128及び内壁段差面134の間に、開口86と第1パイロット室64とを連通するとともに、開口86の面積よりも小さい流路断面積を有する第1絞り流路138(絞り流路)が形成される。これによって、第1パイロット室64から排出される操作用流体の排出流量を低減させることができる。
【0079】
図13に示すように、さらにピストン18が閉弁位置に近づくと、ピストン段差面128は、開口86の全体及び内壁段差面134の開口86の周辺部140を覆う。この周辺部140とピストン段差面128との間には、開口86と第1パイロット室64とを連通するとともに、開口86の面積よりも小さい流路断面積を有する第2絞り流路142(絞り流路)が形成される。これによって、第1パイロット室64から排出される操作用流体の排出流量をさらに低減させることができる。
【0080】
上記のように構成される第2実施形態に係る流体制御弁120では、ピストン18を閉弁位置側に変位させる際、第1絞り流路138(
図12)と、第2絞り流路142(
図13)とが段階的に形成される。これによって、弁体22が弁座20に着座する前に、ピストン18の変位速度を効果的に低減させることができるため、より確実に小さい速度で弁体22を弁座20に着座させて、着座時の衝撃を低減することが可能になる。
【0081】
また、第1絞り流路138及び第2絞り流路142の両方を介して第1パイロット室64から操作用流体を排出することができるため、上記のようにして上昇させた第1パイロット室64の内圧を速やかに低下させることができる。従って、閉弁側作動圧力を大きくすることなく、換言すると、ピストン18やシリンダ室14の径等を大きくすることなく、ピストン18を閉弁位置まで変位させることができる。
【0082】
以上から、第2実施形態に係る流体制御弁120によっても、第1実施形態に係る流体制御弁10と同様に、流体制御弁120が大型化することを抑制しつつ、小さい速度で弁体22を弁座20に着座させて着座時の衝撃を低減させることが可能になる。
【0083】
また、
図11〜
図14に示すように、流体制御弁120は、ノーマルクローズタイプであることとしたが、第2実施形態においても第1実施形態と同様に、流体制御弁120を
図15に示すようにノーマルオープンタイプとしてもよく、
図16に示すように複動タイプとしてもよい。
【0084】
本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0085】
例えば、上記の第1実施形態及び第2実施形態に係る流体制御弁10、120は、インジケータ78を備えることとしたが、インジケータ78を備えていなくてもよい。この場合、第2ハウジング30には、インジケータ挿通孔96に代えて、端面30aに開口しない有底孔(不図示)が形成されていてもよい。また、流体制御弁10、120は、インジケータ78に代えて、例えば、ピストン18のストローク量を調整すること等によって、流路12を流通する被制御流体の流量を調整可能とする流量調整機構等(不図示)を備えていてもよい。さらに、流体制御弁10、120が、インジケータ78及び流量調整機構を選択的に備えることが可能となるように、インジケータ挿通孔96を、インジケータ78と流量調整機構とを共通して取り付け可能な構成としてもよい。