特開2020-153587(P2020-153587A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020153587-氷 図000003
  • 特開2020153587-氷 図000004
  • 特開2020153587-氷 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-153587(P2020-153587A)
(43)【公開日】2020年9月24日
(54)【発明の名称】氷
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/00 20060101AFI20200828BHJP
   A23L 3/36 20060101ALN20200828BHJP
【FI】
   F25C1/00 B
   F25C1/00 A
   A23L3/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-52460(P2019-52460)
(22)【出願日】2019年3月20日
(71)【出願人】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】角田 睦
【テーマコード(参考)】
4B022
【Fターム(参考)】
4B022LB09
4B022LF16
4B022LP08
(57)【要約】
【課題】人体への安全性と高い殺菌効果との両立が可能な氷を提供すること。
【解決手段】氷1は、ウルトラファインバブル2を含む水3を凍結させたものである。また、ウルトラファインバブル2の原料は、窒素、酸素、空気の少なくとも1つである。また、ウルトラファインバブル2の密度は、1億個/ml〜5億個/mlである。また、ウルトラファインバブル2以外の気泡の体積含有率が1%以下である。また、氷1は、薄片状またはシャーベット状である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウルトラファインバブルを含むことを特徴とする氷。
【請求項2】
前記ウルトラファインバブルを含む水を凍結させた請求項1に記載の氷。
【請求項3】
前記水は、塩水である請求項2に記載の氷。
【請求項4】
前記ウルトラファインバブルの原料は、窒素、酸素、空気の少なくとも1つである請求項1から3のいずれか一項に記載の氷。
【請求項5】
前記ウルトラファインバブルの密度は、1億個/ml〜5億個/mlである請求項1から4のいずれか一項に記載の氷。
【請求項6】
前記ウルトラファインバブル以外の気泡の体積含有率が1%以下である請求項1から5のいずれか一項に記載の氷。
【請求項7】
薄片状である請求項1から6のいずれか一項に記載の氷。
【請求項8】
シャーベット状である請求項1から6のいずれか一項に記載の氷。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、次亜塩素酸を含む溶液で調製された殺菌作用を有する氷が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−233560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の氷では、高い殺菌効果を発揮するためには次亜塩素酸の濃度を高くする必要がある。しかしながら、次亜塩素酸の濃度を高くするほど人体への影響が大きくなってしまう。つまり、特許文献1の氷では、人体への安全性と高い殺菌効果との両立が困難である。
【0005】
本発明の目的は、人体への安全性と高い殺菌効果との両立が可能な氷を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) ウルトラファインバブルを含むことを特徴とする氷。
【0008】
(2) 前記ウルトラファインバブルを含む水を凍結させた上記(1)に記載の氷。
【0009】
(3) 前記水は、塩水である上記(2)に記載の氷。
【0010】
(4) 前記ウルトラファインバブルの原料は、窒素、酸素、空気の少なくとも1つである上記(1)から(3)のいずれかに記載の氷。
【0011】
(5) 前記ウルトラファインバブルの密度は、1億個/ml〜5億個/mlである上記(1)から(4)のいずれかに記載の氷。
【0012】
(6) 前記ウルトラファインバブル以外の気泡の体積含有率が1%以下である上記(1)から(5)のいずれかに記載の氷。
【0013】
(7) 薄片状である上記(1)から(6)のいずれかに記載の氷。
【0014】
(8) シャーベット状である上記(1)から(6)のいずれかに記載の氷。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、殺菌効果を有し、人体に無害なウルトラファインバブルを含んでいるため、人体への安全性と高い殺菌効果との両立が可能な氷を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】好適な実施形態の氷を示す斜視図である。
図2図1に示す氷の変形例を示す斜視図である。
図3図1に示す氷の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の氷の好適な実施形態について説明する。
【0018】
図1に示す氷1は、超微細気泡として知られるウルトラファインバブル2を含有した水3を凍らせて形成された氷である。このような氷1の用途そしては、特に限定されないが、例えば、あじ、さば、ぶり、マグロ等の魚類、あわび、さざえ、ハマグリ等の貝類、カニ、エビ等の甲殻類等の魚介類(被保冷物)を冷却保存するのに好適に用いることができる。ウルトラファインバブル2は、マイナスの電荷を有し、被保冷物が有する菌細胞に選択して吸着し、被保冷物から菌細胞を脱離洗浄する効果を有する。そのため、このような氷1を用いて被保冷物を冷却保存することにより、被保冷物の鮮度を保ったままより長期間の保存が可能となる。
【0019】
ウルトラファインバブル2を含む氷1は、従来から一般的に使用されている次亜塩素酸を含む水を凍らせて形成された次亜塩素酸氷と比べて、安全性が高く、低コストで、さらには、殺菌効果が長期的に持続するといった利点を有する。次亜塩素酸を使用すると高い殺菌効果を発揮することができるが、人体への影響を考慮して、被保冷物を食する前(調理する前)に十分に水で洗浄し、次亜塩素酸の濃度を水道水と同等(例えば、残留塩素濃度が0.1mg/L以下)まで下げる必要がある。そのため、人体への安全性を確保することが面倒であるし難しい。逆に、氷中の次亜塩素酸の濃度を低くすると、十分な殺菌効果を発揮することができない。これに対して、ウルトラファインバブル2は、人体に無害であるため、安全性を容易に確保することができる。また、上述のように、次亜塩素酸氷を用いると被保冷物を食する前に洗浄、濃度確認の作業を行う必要があるが、ウルトラファインバブル2を含む氷1によれば、そのような必要がなく、流通全体として見たときに低コスト化を図ることができる。さらには、ウルトラファインバブル2を含む氷1によれば、氷1からウルトラファインバブル2が徐々に溶け出すため、安定した高い殺菌効果が長期的に持続する。
【0020】
なお、氷1としては、図1に示すようなブロック状であってもよいが、例えば、図2に示すようなブロック状の氷1を薄く削ってできる薄片状(フレーク状)や、図3にしめすようなブロック状の氷1を細かく削ってできるシャーベット状(雪状)であることが好ましい。これにより、ブロック状のものと比べて氷1の角がなくなり、被保冷物を傷付け難い氷1となる。また、薄片状やシャーベット状とすると、ブロック状のものと比べて、比表面積が大きくなり、被保冷物を素早く冷却することができる。そのため、被保冷物の鮮度を保ちつつ、長時間にわたって被保冷物を保冷することができる。
【0021】
水3としては、水道水、純水、ミネラルウォーター等、どのようなものを用いてもよいが、特に、塩分を含んでいることが好ましい。つまり、水3は、食塩水、海水等の塩水であることが好ましい。これにより、特に、前述したような魚介類を保冷するのに適した氷となる。なお、水3の塩分濃度としては、特に限定されないが、例えば、1.0wt%〜5.0wt%程度とすることが好ましい。これにより、海水と同程度の塩分濃度の氷1となり、魚介類の保冷に特に適した氷1となる。
【0022】
ウルトラファインバブル2は、直径が1μm以下の超微細気泡のことを言う。前述したように、ウルトラファインバブル2は、マイナスの電荷を有し、被保冷物が有する菌細胞に選択して吸着し、被保冷物から菌細胞を脱離洗浄する効果を有する。そのため、このような氷1を用いて被保冷物を冷却保存することにより、被保冷物の鮮度を保ったままより長期間の保存が可能となる。なお、図1ないし図3では、便宜上、ウルトラファインバブル2を図示しているが、実際にはウルトラファインバブル2は、目視できないほど小さく、水3が白濁したように見える。
【0023】
ウルトラファインバブル2の原料ガスとしては、特に限定されず、例えば、酸素(O)、オゾン(O)、窒素(N)、水素(H)、二酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、アンモニア(NH)、空気等が挙げられる。これら材料によって、それぞれ異なる効能を発揮することができる。これらの中でも、ウルトラファインバブル2の原料ガスとしては、酸素(O)、窒素(N)、空気の少なくとも1つであることが好ましい。ウルトラファインバブル2の原料ガスとして酸素(O)を用いた場合には、特に、魚介類のメト化を抑制して変色を抑えることができる。また、ウルトラファインバブル2の原料ガスとして窒素(N)を用いた場合には、特に、鮮度をより長く保つことができる。また、ウルトラファインバブル2の原料ガスとして空気を用いた場合には、特に、被保冷物の食味を改善することができる。
【0024】
なお、ウルトラファインバブル2の製造方法としては、特に限定されず、例えば、旋回液流式、エゼクター式、ベンチュリー式、加圧溶解式、超音波振動式、混合蒸気直接接触凝集式、超微細孔式等の公知の方法を用いることができる。
【0025】
また、氷1に含まれるウルトラファインバブル2の密度としては、1億個/ml〜10億個/mlであることが好ましく、2億個/ml〜6億個/mlであることがより好ましい。これにより、上述した殺菌、滅菌効果を十分に発揮することのできる氷1となる。また、ウルトラファインバブル2の密度が過度に高くなって氷1が脆くなり過ぎるのを抑制することもできる。
【0026】
また、氷1は、ウルトラファインバブル2よりも大きい粒径の気泡をなるべく含有しないことが好ましい。具体的には、氷1中のウルトラファインバブル2よりも大きい粒径の気泡の体積含有率は、1%以下であることが好ましい。このような気泡は、直径が1μm超の気泡であり、例えば、マイクロバブル、サブミリバブル、ミリバブル等と呼ばれる気泡が挙げられる。このように、ウルトラファインバブル2よりも大きい粒径の気泡をなるべく含まないことで、これら粒径の大きな気泡にウルトラファインバブル2が吸着して凝集を起こしてしまうのを抑制することができる。そのため、ウルトラファインバブル2が均一に分散した氷1が得られ、上述した殺菌、滅菌効果をより顕著に発揮することができる。
【0027】
以上、本発明の氷について図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、製氷装置の各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、前述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…氷
2…ウルトラファインバブル
3…水
図1
図2
図3