【課題】 限られた空間で2以上の母液からなる被験液の電気化学特性を一斉に測定する自動電気化学測定システム、および、その電気化学特性を一斉に自動測定する方法を提供すること。
【解決手段】 本発明のシステムは、母液プレートと評価プレートとを設置するプレートスタッカと、これらを搬送する搬送手段と、母液プレートから母液を抽液し、被験液を評価プレートに調製する分注手段と、評価プレートを載置する測定ステージと、電気化学特性を一斉に測定する電気化学測定装置と、これらの動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、分注手段が、母液プレートのウェルから固定量vの母液の抽液と、評価プレートのウェルへの注液とを基本とし、母液プレートに収容された全母液に対して繰り返し、母液プレートのそれぞれに対して、母液の容量Vを固定量vで除した解の整数部分nに相当する数の評価プレートに被験液を調製するよう、分注手段の動作を制御する。
前記制御手段は、前記電気化学測定装置が、前記第1のプローブ群および前記第2のプローブ群が前記一対の電極と電気的に接続すると、前記電気化学測定装置が前記複数の被験液の電気化学特性を測定するよう、前記電気化学測定装置の動作を制御する、請求項3に記載の自動電気化学測定システム。
前記制御手段は、前記表示手段が、前記電気化学測定装置による測定結果を表示するよう、前記表示手段の動作を制御する、請求項5に記載の自動電気化学測定システム。
前記制御手段は、前記表示手段が、ユーザに、少なくとも、前記固定量v、前記複数の母液の組成および前記複数の被験液の組成を含む分注条件を入力させる、および/または、電気化学測定条件を入力させるユーザインターフェースを表示するよう、前記表示手段の動作を制御する、請求項5または6に記載の自動電気化学測定システム。
前記制御手段は、前記分注条件に基づいて、前記1以上の評価プレートのそれぞれに対して、前記複数の被験液の組成から前記複数の母液のそれぞれが使用される総量を算出し、前記複数の母液のそれぞれの使用される総量と前記固定量vとを比較し、前記複数の母液のそれぞれの使用される総量の少なくとも1つが前記固定量vを超えている場合には、前記1以上の母液プレートのそれぞれに対して、前記容量Vを前記固定量vで除した解の整数部分nに相当する数の評価プレートに前記複数の被験液を調製できないと判断し、前記表示手段に警告を表示させ、前記ユーザに前記分注条件の再設定を促す、請求項7に記載の自動電気化学測定システム。
前記1以上の評価プレートが備える前記複数のウェルのそれぞれは、リチウム塩である共通電解液を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の自動電気化学測定システム。
前記分注手段は、前記評価プレートが備える前記複数のウェルのそれぞれに収容された被験液の前記ウェルの底部からの高さが、前記底部に位置する一方の電極に対向する側のもう一方の電極の高さよりも低くなるように、前記複数の被験液を調製する、請求項9に記載の自動電気化学測定システム。
前記プレートスタッカ、前記搬送手段、前記分注手段、および、前記測定ステージを収容するグローブボックスをさらに備える、請求項1〜10のいずれかに記載の自動電気化学測定システム。
前記第1のプローブ群および前記第2のプローブ群は、前記一対の電極を200gf以上10kgf以下の範囲の力で加圧する、請求項1〜12のいずれかに記載の自動電気化学測定システム。
前記制御手段は、前記1以上の評価プレートのそれぞれが備える前記複数のウェルの複数の被験液の情報と、前記複数の被験液に対応する測定結果とを合わせてメモリに保存する、請求項1〜14のいずれかに記載の自動電気化学測定システム。
前記プレートスタッカは、前記1以上の評価プレートの数が、前記1以上の母液プレートの数に前記整数部分nを乗じた数に相当する数となるように、前記1以上の母液プレートおよび前記1以上の評価プレートを設置する、請求項1〜15のいずれかに記載の自動電気化学測定システム。
前記複数の被験液を調製するステップは、ユーザによって入力される、少なくとも、前記固定量v、複数の母液の組成および複数の被験液の組成を含む分注条件に基づく、請求項17または18に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上より、本発明の課題は、限られた空間で複数の電解液が異なる割合で混合された複数の被験液を電気化学特性に一斉に測定する自動電気化学測定システム、および、複数の被験液の電気化学特性を一斉に自動測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による2以上の母液を混合してなる被験液の電気化学特性を一斉に測定する自動電気化学測定システムは、複数の母液のそれぞれを収容した複数のウェルを備えた1以上の母液プレートと、複数の被験液のそれぞれを収容するための複数のウェルを備えた1以上の評価プレートとを設置するプレートスタッカであって、前記1以上の評価プレートが備える前記複数のウェルのそれぞれには、一対の電極、および、前記一対の電極の間に位置するセパレータが配置され、前記一対の電極の一方の電極は前記複数のウェルのそれぞれの底部に位置する、プレートスタッカと、前記1以上の母液プレート、および、前記1以上の評価プレートを搬送する搬送手段と、前記1以上の母液プレートの前記複数のウェルのそれぞれから母液を抽液し、前記抽液した母液を前記1以上の評価プレートの前記複数のウェルに注液し、前記複数の被験液を調製する分注手段と、前記複数の被験液のそれぞれを収容した前記複数のウェルを備えた評価プレートを載置する測定ステージであって、前記測定ステージは、前記複数のウェルのそれぞれに配置された前記一対の電極の一方とそれぞれ電気的に接続する複数のプローブからなる第1のプローブ群、および、前記一対の電極の他方とそれぞれ電気的に接続する複数のプローブからなる第2のプローブ群を備える、測定ステージと、前記第1のプローブ群および第2のプローブ群と電気的に接続され、前記複数の被験液のそれぞれの電気化学特性を一斉に測定する電気化学測定装置と、前記搬送手段、前記分注手段、前記測定ステージおよび前記電気化学測定装置の動作をそれぞれ制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記分注手段が、
(A)前記1以上の母液プレートのうち1つの母液プレートの1つのウェルから固定量vの母液(ただし、前記固定量vは、前記1つの母液プレートが備える前記1つのウェルに収容された母液の容量V以下である)を抽液し、前記抽液した母液を1つの評価プレートのウェルに注液し、
(B)前記1つの母液プレートの別のウェルから前記固定量vの母液を抽液し、前記抽液した母液を前記1つの評価プレートのウェルに注液し、
(C)前記(A)および前記(B)を繰り返し、前記1つの評価プレートに前記複数の被験液を調製し、
(D)前記1以上の母液プレートのそれぞれに対して、前記容量Vを前記固定量vで除した解の整数部分nに相当する数の評価プレートに前記複数の被験液を調製するよう、前記(A)、前記(B)および前記(C)を繰り返すよう、前記分注手段の動作を制御し、これにより上記課題を解決する。
前記制御手段は、前記分注手段の動作と連動し、前記搬送手段が、前記1以上の母液プレートのそれぞれ、および、前記1以上の評価プレートのそれぞれを前記プレートスタッカから前記分注手段の分注位置へと搬送し、前記分注手段によって調製された前記複数の被験液のそれぞれを収容した前記複数のウェルを備えた前記評価プレートを前記分注位置から前記測定ステージへと搬送するよう、前記搬送手段の動作を制御してもよい。
前記制御手段は、前記搬送手段の動作に連動し、前記測定ステージが、前記複数の被験液のそれぞれを収容した前記複数のウェルを備えた前記評価プレートが前記測定ステージに載置されると、前記第1のプローブ群および前記第2のプローブ群の少なくともいずれか一方が可動し、前記第1のプローブ群が前記複数のウェルのそれぞれに配置された前記一対の電極の一方と電気的に接続し、かつ、前記第2のプローブ群が前記一対の電極の他方と電気的に接続し、前記第1のプローブ群および前記第2のプローブ群を電気的に前記電気化学測定装置と接続し、前記電気化学測定装置による測定が終了すると、前記第1のプローブ群および前記第2のプローブ群の少なくともいずれか一方が可動し、前記第1のプローブ群および前記第2のプローブ群が前記一対の電極から離間するよう、前記測定ステージの動作を制御してもよい。
前記制御手段は、前記電気化学測定装置が、前記第1のプローブ群および前記第2のプローブ群が前記一対の電極と電気的に接続すると、前記電気化学測定装置が前記複数の被験液の電気化学特性を測定するよう、前記電気化学測定装置の動作を制御してもよい。
表示手段をさらに備えてもよい。
前記制御手段は、前記表示手段が、前記電気化学測定装置による測定結果を表示するよう、前記表示手段の動作を制御してもよい。
前記制御手段は、前記表示手段が、ユーザに、少なくとも、前記固定量v、前記複数の母液の組成および前記複数の被験液の組成を含む分注条件を入力させる、および/または、電気化学測定条件を入力させるユーザインターフェースを表示するよう、前記表示手段の動作を制御してもよい。
前記制御手段は、前記分注条件に基づいて、前記1以上の評価プレートのそれぞれに対して、前記複数の被験液の組成から前記複数の母液のそれぞれが使用される総量を算出し、前記複数の母液のそれぞれの使用される総量と前記固定量vとを比較し、前記複数の母液のそれぞれの使用される総量の少なくとも1つが前記固定量vを超えている場合には、前記1以上の母液プレートのそれぞれに対して、前記容量Vを前記固定量vで除した解の整数部分nに相当する数の評価プレートに前記複数の被験液を調製できないと判断し、前記表示手段に警告を表示させ、前記ユーザに前記分注条件の再設定を促してもよい。
前記1以上の評価プレートが備える前記複数のウェルのそれぞれは、リチウム塩である共通電解液を有してもよい。
前記分注手段は、前記評価プレートが備える前記複数のウェルのそれぞれに収容された被験液の前記ウェルの底部からの高さが、前記底部に位置する一方の電極に対向する側のもう一方の電極の高さよりも低くなるように、前記複数の被験液を調製してもよい。
前記プレートスタッカ、前記搬送手段、前記分注手段、および、前記測定ステージを収容するグローブボックスをさらに備えてもよい。
前記グローブボックス内の雰囲気は、不活性ガス雰囲気であってもよい。
前記第1のプローブ群および前記第2のプローブ群は、前記一対の電極を200gf以上10kgf以下の範囲の力で加圧してもよい。
廃液を廃棄する廃液部と、廃棄物を廃棄する廃棄部とをさらに備え、前記制御手段は、前記分注手段が、前記1以上の母液プレートのうちの1つの母液プレートが備える前記複数のウェルのうち1つのウェルから前記固定量vの母液を抽液し、前記1つの評価プレートが備える前記複数のウェルに注液が終わるたびに、前記固定量vのうち残留する母液を前記廃液部に廃棄するよう、前記分注手段の動作を制御し、前記分注手段が、前記1以上の母液プレートのうちの前記1つの母液プレートが備える前記複数のウェルのすべてから前記固定量vの母液を前記整数部分nの数だけ抽液するたびに、および/または、前記電気化学測定装置が、前記1つの評価プレートの前記複数の被験液の電気化学特性の測定を終了するたびに、前記搬送手段が、前記1つの母液プレート、および/または、前記1つの評価プレートを前記廃棄部に廃棄するよう、前記搬送手段の動作を制御してもよい。
前記制御手段は、前記1以上の評価プレートのそれぞれが備える前記複数のウェルの複数の被験液の情報と、前記複数の被験液に対応する測定結果とを合わせてメモリに保存してもよい。
前記プレートスタッカは、前記1以上の評価プレートの数が、前記1以上の母液プレートの数に前記整数部分nを乗じた数に相当する数となるように、前記1以上の母液プレートおよび前記1以上の評価プレートを設置してもよい。
本発明による2以上の母液を混合してなる被験液の電気化学特性を一斉に自動測定する方法は、複数の母液のそれぞれを収容した複数のウェルを備えた1以上の母液プレートのうち1つの母液プレートを分注位置に移動するステップと、複数の被験液のそれぞれを収容するための複数のウェルを備えた1以上の評価プレートのうち1つの評価プレートを分注位置に移動するステップであって、前記1以上の評価プレートが備える前記複数のウェルのそれぞれには、一対の電極、および、前記一対の電極の間に位置するセパレータが配置され、前記一対の電極の一方の電極は前記複数のウェルのそれぞれの底部に位置する、ステップと、前記1つの評価プレートに複数の被験液を調製するステップであって、前記1つ母液プレートの1つのウェルから固定量vの母液(ただし、前記固定量vは、前記1つの母液プレートが備える前記1つのウェルに収容された母液の容量V以下である)を抽液し、前記抽液した母液を前記1つの評価プレートのウェルに注液するステップ(a)と、前記1つの母液プレートの別のウェルから固定量vの母液を抽液し、前記抽液した母液を前記1つの評価プレートのウェルに注液するステップ(b)と、前記ステップ(a)および前記ステップ(b)を繰り返し、前記1つの評価プレートに前記複数の被験液を調製するステップ(c)とを包含する、ステップと、前記1つの評価プレートが備える前記複数のウェルのそれぞれが有する前記一対の電極と電気化学測定装置とを電気的に接続するステップと、前記電気化学測定装置に前記1つの評価プレートの前記複数の被験液のそれぞれの電気化学特性を一斉に測定させるステップと、前記測定された前記1つの評価プレートを廃棄するステップと、前記1以上の評価プレートの数が2以上であり、かつ、前記容量Vを前記固定量vで除した解の前記整数部分nが2以上である場合、前記1つの母液プレートに対して前記整数部分nに相当する数の評価プレートについて、複数の被験液の電気化学特性を測定するよう、前記1つの評価プレートを取り出すステップ、前記複数の被験液を調製するステップ、前記電気的に接続するステップ、前記測定させるステップおよび前記廃棄するステップを、n−1回繰り返すステップとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記n−1回繰り返すステップに続いて、前記1つの母液プレートを移動するステップ以降をさらに繰り返すステップをさらに包含してもよい。
前記複数の被験液を調製するステップは、ユーザによって入力される、少なくとも、前記固定量v、複数の母液の組成および複数の被験液の組成を含む分注条件に基づいてもよい。
前記測定させるステップは、ユーザによって入力される電気化学測定条件に基づいてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明による複数の被験液の電気化学特性を一斉に測定する自動電気化学測定システムは、上述したように、母液プレートと評価プレートとを設置するプレートスタッカと、母液プレートおよび評価プレートを搬送する搬送手段と、母液プレートから母液を抽液し、それを評価プレートに注液し、複数の被験液を調製する分注手段と、評価プレートを載置する測定ステージと、複数の被験液の電気化学特性を一斉に測定する電気化学測定装置と、これらの動作をそれぞれ制御する制御手段とを備える。制御手段は、分注手段が、母液プレートから固定量vの母液(ただし、固定量vは、母液プレートの各ウェルに収容された母液の容量V以下である)を抽液し、抽液した固定量v以下の母液を評価プレートに注液するよう、分注手段の動作を制御するため、分注手段が母液を調製する際の液面センサを不要とできる。その結果、限られた空間であっても本発明のシステムを実現できる。
【0010】
さらに、制御手段は、容量Vを固定量vで除した解の整数部分nに母液プレートの数を乗じた数に相当する数の評価プレートに、複数の被験液を注液するよう、分注手段の動作を制御するため、プレートスタッカに設置したすべての母液プレートからの抽液の終了と、すべての評価プレートへの注液の終了とが常に一定となり、プレートスタッカごとの交換を行うだけで、効率的な長期運転を可能する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の自動電気化学測定システムを示す模式図である。
【0014】
本発明の自動電気化学測定システム100は、2以上の母液を混合してなる被験液の電気化学特性を一斉に測定するシステムである。本発明の自動電気化学測定システム100は、2以上の母液を収容した1以上の母液プレート110と、被験液が収容される1以上の評価プレート120とを設置するプレートスタッカ130と、1以上の母液プレート110および1以上の評価プレート120を搬送する搬送手段140と、母液プレートから抽液した母液を評価プレートに分注することによって被験液を調製する分注手段150と、被験液が調製された評価プレートを載置する測定ステージ160と、被験液の電気化学特性を測定する電気化学測定装置170と、搬送手段140、分注手段150、測定ステージ160および電気化学測定装置170の動作を制御する制御手段180とを備える。
【0015】
本発明の自動電気化学測定システム100は、好ましくは、プレートスタッカ130、搬送手段140、分注手段150および測定ステージ160を収容するグローブボックス190をさらに備える。これにより、内部の雰囲気を制御できるので、調製された被験液の化学変化を抑制し、被験液の測定条件を一定にできるため、測定精度を向上できる。
【0016】
グローブボックス190内の雰囲気は、好ましくは、不活性ガス雰囲気である。不活性ガスは、例示的には、乾燥窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスであり得る。
【0017】
各構成要素について詳細に説明する。
図2は、本発明の母液プレートを示す模式図である。
【0018】
図2には、1以上の母液プレート110のうちの1つの母液プレート200を模式的に示す。母液プレート200は、複数のウェル210を備えており、複数のウェル210のそれぞれに母液220が収容されている。収容された母液220の量を容量Vと表す。
図2では、母液プレート200は、8行×12列のマトリクス状に96個のウェル210が示されるが、ウェル210の数や配列はこれに限らない。
【0019】
母液は、電池の電解液を構成し得る溶液を意図しており、電解質、溶媒などに相当する。すべてのウェル210に母液220が収容されてもよいし、一部のウェル210に母液が収容されていてもよいが、2以上の異なる母液が収容される。また、母液プレート200は、母液との反応性が低い材料(例えば、ポリプロピレン)により構成することが好ましい。
【0020】
図3は、本発明の評価プレートを示す模式図である。
【0021】
図3には、1以上の評価プレート110のうちの1つの評価プレート300を模式的に示す。評価プレート300は、複数のウェル310を備えており、複数のウェル310のそれぞれに被験液360(すなわち、電解液)が調製され、収容される。
図3(A)では、評価プレート300は、8行×12列のマトリクス状に96個のウェル310が示されるが、ウェル310の数や配列はこれに限らない。
【0022】
図3(B)に示されるように、ウェル310のそれぞれには、一対の電極330、340、および、一対の電極330、340の間に位置するセパレータ350が予め配置されている。一対の電極330、340のうち一方の電極340が、ウェル310の底部に位置するように配置される。
図3(B)には、ウェル310に調製された被験液360が収容されている様子も併せて示す。
【0023】
例えば、電極330が正極であり、電極340が負極として機能する。リチウム電池に使用する電解液の評価の場合、電極330には、ニッケル箔、ステンレス鋼、銅、これらの合金等が使用でき、電極340には、金属リチウム、あるいは、マグネシウム、チタン、スズ、鉛、アルミニウム、インジウム、ケイ素、亜鉛、アンチモン、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム等とリチウムとのリチウム合金を使用できる。
【0024】
なお、本発明の自動電気化学測定システム100を用いてナトリウム電池に使用する電解液を評価する場合には、電極340には、金属ナトリウム、あるいは、マグネシウム、チタン、スズ、鉛、アルミニウム、インジウム、ケイ素、亜鉛、アンチモン、ビスマス、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム等とナトリウムとのナトリウム合金を使用できる。このように、電極340は、電池の種類に応じて適宜変更され得る。
【0025】
また、
図3では、電極330が正極であり、電極340が負極であるものとして示したが、逆であってもよい。
【0026】
セパレータ350は、アルカリ金属イオン、および/または、アルカリ土類金属イオンが通過可能であり、多孔質構造を有する絶縁性材料で形成されたものであれば特に制限はなく、既存の金属電池に使用されるセパレータを適用できる。例示的には、セパレータ350は、ポリエチレンやポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン製の多孔質膜、ガラス繊維製の不織布等が挙げられる。
【0027】
すべてのウェル310に被験液360が収容されてもよいし、一部のウェル310に被験液360が収容されていてもよいが、長期間効率的な自動電気化学測定の観点から、ウェル310のすべてに被験液360が調製され、収容されることが望ましい。ここでも、評価プレート300は、電解液との反応性が低い材料(例えば、ポリプロピレン)により構成することが好ましい。
【0028】
なお、すべてのウェル310に予め共通電解液を収容しておいてもよい。これにより、被験液360がその中に調製されると、容易に混合し、一対の電極330、340およびセパレータ350と被験液360とが良好になじみ、測定精度を向上させることができる。このような共通電解液には、リチウムイオン電池の場合にはリチウム塩を含有する任意の電解液を使用でき、代表的には、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)およびジメチルカーボネート(DMC)からなる群から少なくとも1種選択される溶媒中にLiPF
6、LiBF
4等のリチウム塩を溶解させたもの(濃度は、例えば、1M)がある。その他の電池の場合にも同様に共通電解液を採用できる。
【0029】
共通電解液は、好ましくは、調製される被験液360と共通電解液との体積比が、被験液:共通電解液=2:1〜1:1となるように収容される。これにより、測定精度を向上させることができる。
【0030】
図3(C)に示すように、ウェル310は、後述する、一対の電極330、340の一方の電極330とプローブ370とが電気的に接続し、もう一方の電極340とプローブ380とが電気的に接続し、電気化学測定装置と接続し、測定を可能にする。
【0031】
このような母液プレート200からなる1以上の母液プレート110と、評価プレート300からなる1以上の評価プレート120とが、測定に先立って、プレートスタッカ130に設置される。
【0032】
再度
図1に戻る。
搬送手段140は、1以上の母液プレート110および1以上の評価プレート120をプレートスタッカ130から取り出し、搬送する。このような観点から、搬送手段140は、ロボットアームを備えていることが好ましい。
【0033】
分注手段150は、1以上の母液プレート110のうちの1つの母液プレート110’の複数のウェル210のそれぞれから抽液した母液を、1以上の評価プレート120のうちの1つの評価プレート120’の複数のウェル310に注液し、これにより評価プレートに複数の被験液を調製する。なお、抽液した母液は、必ずしも評価プレート120’の複数のウェル310のすべてに分注される必要はなく、後述する被験液の組成に応じて分注されればよい。このような分注手段には、所定量の抽液・注液が可能な分注システムを採用できる。
【0034】
測定ステージ160は、分注手段150によって調製された複数の被験液のそれぞれを収容した複数のウェル310を備えた評価プレート120”を載置する。測定ステージ160は、複数のウェル310のそれぞれに配置された一対の電極330、340の一方の電極330とそれぞれ電気的に接続する複数のプローブ(例えば
図3(C)のプローブ370)からなる第1のプローブ群161、および、もう一方の電極340とそれぞれ電気的に接続する複数のプローブ(例えば
図3(C)のプローブ380)からなる第2のプローブ群162を備える。第1のプローブ群161および第2のプローブ群162の少なくともいずれか一方が可動式であれば、ウェル310の一対の電極330、340との電気的に接続を可能にするため好ましい。
【0035】
図4は、第1のプローブ群を模式的に示す図である。
図5は、第2のプローブ群を模式的に示す図である。
【0036】
図4(A)は、第1のプローブ群161の平面図であり、
図4(B)は、第1のプローブ群161の側面図である。第1のプローブ群161は、穴420を有する板410と、穴420に圧入される複数のプローブ430からなる。板410に形成される穴420は、評価プレート300の複数のウェル310の数に一致する。第1のプローブ群161の複数のプローブ370のそれぞれは、複数のウェル310のそれぞの電極330と電気的に接続するよう構成されている。
【0037】
図5(A)は、第2のプローブ群162の平面図であり、
図5(B)は、第2のプローブ群162の側面図である。第2のプローブ群162は、穴520を有する板510と、穴520に圧入される複数のプローブ530からなる。ここでも、板510に形成される穴520は、評価プレート300の複数のウェル310の数に一致する。
図4と同様であるが、第2のプローブ群162の複数のプローブ380のそれぞれは、複数のウェル310のそれぞの電極340と電気的に接続するよう構成されている。
【0038】
再度
図1に戻る。
電気化学測定装置170は、第1のプローブ群161および第2のプローブ群162と電気的に接続され、評価プレート120”の複数のウェル310に収容された複数の被験液のそれぞれの電気化学特性を一斉に測定する。このような電気化学測定装置170は、充放電試験機やインピーダンス測定機を備えているとよい。
【0039】
制御手段180は、上述した搬送手段140、分注手段150、測定ステージ160および電気化学測定装置170の動作をそれぞれ制御する。このような制御手段180は、例えば、中央演算処理装置(CPU)、データを格納するメモリ、必要に応じて通信手段を備えていることが好ましい。このような制御手段180は、パーソナルコンピュータ等であり得る。
【0040】
制御手段180についてさらに詳述する。
本発明によれば、制御手段180は、分注手段150が、以下のステップ(A)〜(D)を行うように分注手段150の動作を制御する。
【0041】
ステップ(A):1以上の母液プレート110のうち1つの母液プレート110’の1つのウェルから固定量vの母液(ただし、固定量vは、1つの母液プレート110’が備えるウェル210に収容された母液の容量V以下である)を抽液し、抽液した母液を1つの評価プレート120’のウェル310に注液する。ここでも、抽液した母液は、必ずしも評価プレート120’の複数のウェル310のすべてに分注される必要はない。なお、母液の容量Vは、母液が収容されたすべてのウェルについて同じ容量であるものとする。
【0042】
ステップ(B):1つの母液プレート110’の別のウェルから固定量vの母液を抽液し、抽液した母液を1つの評価プレート120’のウェル310に注液する。
【0043】
ステップ(C):ステップ(A)およびステップ(B)を繰り返し、1つの評価プレート120’に複数の被験液を調製する。繰り返しの合計回数は、1つの母液プレート110’に収容された母液の数だけ行えばよい。すなわち、母液が入っているすべてのウェル210に対して繰り返し行えばよい。これにより、1つの評価プレート120’に複数の被験液を調製される。このように、ステップ(A)〜(C)において、固定量vを常に抽液するため、分注手段150が母液を抽液する際の液面センサを不要にできる。この結果、本発明のシステムの省スペース化を可能にする。
【0044】
また、このようにして得られた評価プレート120’は、搬送手段140によって測定ステージ160に搬送され、電気化学測定装置170により複数の被験液それぞれの電気化学特性が一斉に測定されることになる。
【0045】
ステップ(D):分注手段150は、ステップ(A)〜(C)を基本動作とし、1以上の母液プレート110のそれぞれに対して、容量Vを固定量vで除した解の整数部分nに相当する数の評価プレートに複数の被験液を調製するよう、ステップ(A)〜(C)を繰り返す。なお、nが1の場合には、ステップ(D)は、ステップ(A)〜(C)を0回繰り返す(ステップ(D)は行わない)ことになる。
【0046】
制御手段180が、分注手段150による分注を上述のステップ(A)〜(D)を行うように分注手段150の動作を制御するので、容量Vを固定量vで除した解の整数部分nに母液プレートの数を乗じた数に相当する数の評価プレートに、複数の被験液を調製することができる。例えば、容量Vが1mL(=1000μL)であり、固定量vが150μLである場合、nは6となり、母液プレートの数が2枚であれば、評価プレートの数は12枚となる。
【0047】
このように、プレートスタッカ130に、1以上の母液プレート110と、1以上の母液プレート110の数にnを乗じた数の1以上の評価プレート120とを設置するだけで、1以上の母液プレート110からの抽液の終了と、1以上の評価プレート120のすべての評価プレートへの注液の終了とが同時となる。これにより、プレートスタッカ130ごとの交換を行うだけで、効率的な長期運転を可能する。
【0048】
制御手段180は、好ましくは、分注手段150が、
図3(B)に示すように、評価プレート300が備える複数のウェル310のそれぞれに収容された被験液360のウェル310の底部からの高さが、底部に位置する一方の電極340に対向する側のもう一方の電極330の高さよりも低くなるように、被験液360を調製するよう制御する。これにより、上述のプローブ370が被験液360と接触することがないので、被験液360が互いに混ざらず、測定精度を向上することができる。なお、ウェル310に共通電解液が予め収容されている場合も同様である。制御手段180は、好ましくは、後述するユーザによって入力される被験液360の量の設定を含む分注条件に基づいて行う。
【0049】
制御手段180は、好ましくは、搬送手段140が、1以上の母液プレート110のそれぞれ、および、1以上の評価プレート120のそれぞれをプレートスタッカ130から取り出し、分注手段150の分注位置へと搬送し、分注手段150によって調製された複数の被験液360のそれぞれを収容した複数のウェル310を備えた評価プレートを分注位置から測定ステージ160へと搬送するよう、搬送手段140の動作を制御する。
【0050】
例示的には、制御手段180によって、搬送手段140は、プレートスタッカ130の1以上の母液プレート110から1つの母液プレート110’を取り出し、分注手段150の分注位置に搬送し、次いで、1以上の評価プレート120から1つの評価プレート120’を取り出し、分注手段150の分注位置に搬送する。さらに、制御手段180によって、搬送手段140は、分注手段150によって調製された複数の被験液360を収容した評価プレート120”を分注位置から測定ステージ160へと搬送する。このように、制御手段180が、分注手段150の動作と連動して、搬送手段140の動作を制御することにより、長期運転を可能にする。
【0051】
制御手段180は、好ましくは、測定ステージ160が、評価プレート120”が測定ステージに載置されると、第1のプローブ群161および第2のプローブ群162の少なくともいずれか一方が可動し、第1のプローブ群161が複数のウェル310のそれぞれに配置された一対の電極330、340の一方の電極330と電気的に接続し、かつ、第2のプローブ群162が他方の電極340と電気的に接続し、第1のプローブ群161および第2のプローブ群162を電気的に電気化学測定装置170と接続し、次いで、電気化学測定装置170による測定が終了すると、第1のプローブ群161および第2のプローブ群162の少なくともいずれか一方が可動し、第1のプローブ群161および第2のプローブ群162が一対の電極330、340から離間するよう、測定ステージ160の動作を制御する。このように、制御手段180が、搬送手段140の動作と連動して、測定ステージ160の動作を制御することにより、長期運転を可能にする。第1のプローブ群161および/または第2のプローブ群162は、例えば、上昇や下降するよう可動する。
【0052】
測定ステージ160の第1のプローブ群161と第2のプローブ162とが、複数のウェル310内の一対の電極330、340を上下から抑え込むことにより、電気化学測定装置170との電気的な接続を可能にするが、さらに好ましくは、第1のプローブ群161および第2のプローブ群162は、複数のウェル310のそれぞれの一対の電極330、340を、200gf以上の値で加圧する。これにより、電気的な接続が維持され、測定精度が向上し得る。さらに好ましくは、加圧する力は、400gf以上10kgf以下の範囲である。これにより、測定精度が向上し、再現性に優れる。
【0053】
制御手段180は、好ましくは、電気化学測定装置170が、第1のプローブ群161および第2のプローブ群162が一対の電極330、340と電気的に接続すると、電気化学測定装置170が複数の被験液360の電気化学特性を一斉に測定するよう、電気化学測定装置170の動作を制御する。電気的な接続は、例えば、第1のプローブ群161および第2のプローブ群162が、測定ステージ160の所定の位置に到達したことにより、すなわち、複数のウェル310のそれぞれの所定の位置にプローブ370、380が到達したことにより、電気的に接続したとみなすことができる。このように、制御手段180が、測定ステージ160の動作と連動して、電気化学測定装置170の動作を制御することにより、長期運転を可能にする。
【0054】
ここで、自動電気化学測定システム100の動作を説明する。
【0055】
自動電気化学測定システム100は次のように動作する。搬送手段140が、プレートスタッカ130から1つの母液プレート110’と1つの評価プレート120’とをそれぞれ取り出し、分注手段150の分注位置に移動する。次いで、分注手段150が、母液プレート110’から評価プレート120’への抽液・注液を繰り返し、評価プレート120’に複数の被験液を調製する。搬送手段140は、複数の被験液が調製された評価プレート120”を測定ステージ160に移動する。
【0056】
測定ステージ160は、評価プレート120”の一対の電極330、340と第1のプローブ群161と第2のプローブ群162とを電気的に接続し、第1のプローブ群161および第2のプローブ群162と電気化学測定装置170とが電気的に接続すると、電気化学測定装置170が、評価プレート120”の複数の被験液のそれぞれの電気化学特性を一斉に測定する。制御手段180が、以上の搬送手段140、分注手段150、測定ステージ160および電気化学測定装置170の動作を制御する。このようにして、複数の被験液の電気化学特性をハイスループットで測定できる。
【0057】
また、本発明の自動電気化学測定システム100は、プレートスタッカ130に設置された1以上の母液プレート110からの抽液の終了と、1以上の評価プレート120のすべての評価プレートへの注液の終了とが同時となるように、繰り返し測定を行うことができる。
【0058】
図6は、本発明の別の自動電気化学測定システムを示す模式図である。
【0059】
図1と同様の構成要素には同様の参照符号を付し、説明を省略する。別の自動電気化学測定システム600は、
図1の自動電気化学測定システム100に加えて、廃液を廃棄する廃液部610と、廃棄物を廃棄する廃棄部620と、表示手段630とをさらに備える以外は同様である。
【0060】
以降では、
図6の自動電気化学測定システム600は、廃液部610、廃棄部620および表示手段630のすべてを備えるものとして説明するが、
図1の自動電気化学測定システム100が、廃液部610、廃棄部620、表示手段630のいずれか1以上を任意に備えてよいことは言うまでもない。
【0061】
制御手段640は、好ましくは、分注手段150が、1以上の母液プレート110のうちの1つの母液プレート110’が備える複数のウェル210のうち1つのウェルから固定量vの母液を抽液し、1つの評価プレート120’が備える複数のウェル310に注液が終わるたびに、固定量vのうち残留する母液を廃液部610に廃棄するよう、分注手段150の動作を制御する。これにより、分注手段150において、母液の混合が抑制されるので、測定精度が向上し、再現性に優れる。このような廃液部610を設けることにより、抽液した母液を、必ずしも評価プレート120’の複数のウェル310のすべてに分注する必要がなくなるので、被験液の設計の自由度が増す。
【0062】
制御手段640は、好ましくは、分注手段150が、1つの母液プレート110’が備える複数のウェル210のうち母液が収容されたすべてのウェル210から固定量vの母液を整数部分nの数だけ抽液するたびに、および/または、電気化学測定装置170が、1つの評価プレート120”の複数の被験液360の電気化学特性の測定を終了するたびに、搬送手段140が、1つの母液プレート110’、および/または、1つの評価プレート”を廃棄部620に廃棄するよう、搬送手段140の動作を制御する。このように、制御手段640が、母液の廃棄、および、母液プレートおよび評価プレートの廃棄をするため、長期運転を可能にする。
【0063】
表示手段630は、好ましくは、ディスプレイ等の画像表示モニタである。これにより、ユーザの操作性が向上する。なお、制御手段640が表示手段630と一体であってもよい。
【0064】
制御手段640は、好ましくは、表示手段630が、電気化学測定装置170による測定結果を表示するよう、表示手段630の動作を制御する。これにより、ユーザは、測定結果を目視にて確認できる。
【0065】
制御手段640は、好ましくは、表示手段630が、ユーザに、少なくとも、固定量v、複数の母液の組成および複数の被験液の組成を含む分注条件を入力させる、および/または、電気化学測定条件を入力させるユーザインターフェースを表示するよう、表示手段630の動作を制御する。ユーザによって入力された分注条件および電気化学測定条件に基づいて、制御手段640は、上述した搬送手段140、分注手段150、測定ステージ160および電気化学測定装置170の動作を制御することができる。
【0066】
制御手段640は、好ましくは、分注条件に基づいて、複数の被験液の組成から複数の母液のそれぞれが使用される総量を算出し、各総量と固定量vとを比較し、各総量のうち少なくとも1つが固定量vを超えている場合には、1以上の母液プレート110のそれぞれに対して、n個の評価プレート120(nは、母液プレート200のウェル210の容量Vを固定量vで除した解の整数部分に相当する)に複数の被験液を調製できないと判断し、表示手段630に警告を表示させ、ユーザに分注条件の再設定を促すことができる。このように測定前にエラーをチェックできるため、測定開始後にエラーによって自動測定が停止することがない。
【0067】
制御手段640は、好ましくは、1以上の評価プレート120のそれぞれが備える複数のウェル310の複数の被験液の情報と、複数の被験液に対応する測定結果とを合わせてメモリに保存することができる。これにより、情報の管理が容易になる。
【0068】
図7は、例示的なユーザインターフェースを示す図である。
図8は、例示的な分注条件設定画面を示す図である。
【0069】
ユーザインターフェース700は、少なくとも、分注条件設定ボタン710、電気化学測定条件設定ボタン720、実行ボタン730、結果ボタン740および終了ボタン750を備える。
【0070】
ユーザが分注条件設定ボタン710を押すと、少なくとも、固定量v、複数の母液の組成および複数の被験液の組成を含む分注条件設定画面800へと移動する。
【0071】
ここで、ユーザは、母液タブにて、固定量vに相当する母液抽液量の選択、母液プレート200の複数のウェル210の使用数の選択、複数の母液の組成のアップロード、および、プレートスタッカ130に設置する母液プレートの数の入力を行う。また、ユーザは、母液プレート200のウェル210に収容される母液の容量(母液の容量Vに相当)を入力できる。常に同じ母液プレート200を使用する場合には、容量Vは固定にしておくことも可能である。
【0072】
図9は、アップロードされる複数の母液の組成である例示的な母液プレートレシピを示す図である。
【0073】
図9に示すように、母液プレートレシピは、ウェルの番号と、それに対応する母液の種類および濃度とが各母液プレートごとのシートによって管理されている。予め母液プレートレシピを制御手段180のメモリ等に保存しておけば、読み出すだけでよい。
【0074】
再度、
図8に戻る。続いて、ユーザは、被験液タブにて、評価プレート300の複数のウェル310のそれぞれに調製される被験液量の選択、複数の被験液の組成のアップロード、および、プレートスタッカ130に設置する評価プレートの数の入力を行う。評価プレートの数は、上述したように母液プレートの数にn(nは、母液プレートの母液の容量Vを固定量vで除した解の整数部分)を乗じた数であるため、自動的に入力されてもよい。
【0075】
図10は、アップロードされる複数の被験液の組成である例示的な評価プレートレシピを示す図である。
【0076】
図10に示すように、評価プレートレシピは、評価プレート300の複数のウェル310のそれぞれの位置をカラム(縦)とロウ(横)とで対応づけており、混合する母液の番号(
図9のNo.に対応)と母液の量と、それらの組み合わせが各評価プレートごとのシートによって管理されている。
【0077】
図10では、評価プレート300の複数のウェル310は、いずれも、5種類の母液(溶液1〜溶液5)をそれぞれ5μLずつ混合し、被験液を調製する評価プレートレシピとなっている。例えば、縦A横1のウェル310(
図3)に調製される被験液は、溶液1として
図9のNo.1、溶液2として
図9のNo.18、溶液3として
図9のNo.20、溶液4として
図9のNo.21および溶液5として
図9のNo.32の母液をそれぞれ5μLずつ混合されたものであることを意味する。
【0078】
図11は、例示的な警告メッセージを示す図である。
【0079】
再度
図8に戻り、ユーザが所定の情報を入力後、確認ボタンを押すと、制御手段180は、分注条件に基づいて、例えば、
図10に示す複数の被験液の組成から複数の母液のそれぞれが使用される総量を算出し、各総量と固定量vとを比較する。その結果、制御手段180が、各総量のうち少なくとも1つの総量が固定量vを超えていると判断した(エラーがある)場合には、例えば、
図11に示すように、表示手段630に警告を表示し、ユーザに分注条件の再設定を促すことができる。なお、表示手段630に詳細なエラー情報を表示させてもよい。これにより、ユーザによる分注条件の再設定が容易になる。
【0080】
図12は、例示的な電気化学測定条件設定画面を示す図である。
【0081】
再度
図7に戻り、分注条件にエラーがない場合、ユーザが、電気化学測定条件設定ボタン720を押すと、電気化学測定条件設定画面1200へと移動する。
【0082】
ここで、ユーザは、クーロン効率(充放電効率とも呼ぶ)を測定する電気化学測定条件を入力する。詳細には、電気化学測定条件設定画面1200では、ユーザは、充放電の繰り返し測定回数(サイクル数)に関するシーケンスの選択と、充電時の充電電気量および放電時の放電容量を設定するパターンの選択とを行う。
【0083】
例えば、
図12では、ユーザは、シーケンスタブにて、シーケンスNo.1を選択しており、シーケンスNo.1は、パターンNo.2を用い、サイクル数が20回のシーケンスからなることが分かる。さらに、ユーザは、シーケンスタブにて、シーケンスNo.1で引用されるパターンNo.2の詳細(電流密度、制御時間、データ保存時間間隔、必要に応じてカットオフ(目標)電圧)を設定する。
図12では、パターンNo.2は、10時間放電(ステップNo.1)、30分リセット(ステップNo.2)、10時間充電(ステップNo.3)および30分リセット(ステップNo.4)の組み合わせであり、カットオフ電圧が2V〜4Vであることが分かる。
【0084】
予め種々のシーケンス、および、種々のパターンを制御手段180のメモリ等に保存しておけば、読み出すだけでよい。
【0085】
再度
図7に戻り、電気化学設定条件が設定され、ユーザが実行ボタン730を押すと、制御手段180が、分注条件および電気化学設定条件に基づいて、上述した搬送手段140、分注手段150、測定ステージ160および電気化学測定装置170の動作をそれぞれ制御し、自動電気化学測定を実行する。
【0086】
図13は、例示的な測定結果を示す図である。
【0087】
測定が終了すると、
図7の結果ボタン740がアクティブとなり、ユーザが結果ボタン740を押すと、
図13に示すような測定結果が表示される。
図13では、評価プレートが備える複数のウェルおよび複数の被験液の情報(カラム(縦)とロウ(横)、被験液番号)と、それぞれに対応する各サイクル(1回目〜20回目)のクーロン効率の結果とが、評価プレートのシートごとに表示される。ユーザは、クーロン効率を上位から並べ直すことも可能である。また、ユーザは、測定結果をグラフ(容量−電圧)で示すことも可能である。このようにして、ユーザは、2以上の母液を混合してなる被験液の電気化学特性を一斉に測定し、複数の被験液のハイスループット探索を可能とする。すべての測定終了後、終了ボタン750を押すと、
図7のインターフェース700が終了する。
【0088】
ここで、自動電気化学測定システム600の動作を説明する。
【0089】
自動電気化学測定システム600は、以下の点を除いて、自動電気化学測定システム100の動作と同様である。分注手段150が母液プレート110’の1つのウェル210から抽液し、評価プレート120’の複数のウェル310に注液が終わるたびに、シリンジ等に残留する母液を廃液する点、母液プレート110’のすべてのウェル210からの抽液が終わるたび、ならびに、評価プレート120”の電気化学特性の評価が終わるたびに、母液プレート/評価プレートを廃棄する点、分注条件および電気化学設定条件を設定し、測定結果を表示する点が異なる。
【0090】
次に、本発明の2以上の母液を混合してなる被験液の電気化学特性を一斉に自動測定する方法について説明する。
図14は、本発明の被験液の電気化学特性を一斉に自動測定するフローを示す図である。
図15は、
図14に続く本発明の被験液の電気化学特性を一斉に自動測定するフローを示す図である。
【0091】
ステップS1410:複数の母液のそれぞれを収容した複数のウェル210を備えた1以上の母液プレート110のうち1つの母液プレート110’を分注位置に移動する。
【0092】
ステップS1420:複数の被験液のそれぞれを収容するための複数のウェル310を備えた1以上の評価プレート120のうちの1つの評価プレート120’を分注位置に移動する。ここで、評価プレート120’は、
図3を参照して説明した評価プレート130と同様であり、複数のウェル310のそれぞれには、一対の電極330、340、および、その間に位置するセパレータ350が配置されており、一方の電極340が複数のウェル310のそれぞれの底部に位置する。
【0093】
ステップS1430:1つの評価プレート120’に複数の被験液を調製する。ここで複数の被験液の調製は以下の3つのステップからなる。
ステップ(a):1つの母液プレート110’の1つのウェル210から固定量vの母液(ただし、固定量vは、1つの評価プレート110’が備える1つのウェル210に収容された母液の容量V以下である)を抽液し、これを1つの評価プレート120’のウェルに注液する。なお、母液の容量Vは、母液が収容されたすべてのウェルについて同じ容量であるものとする。
ステップ(b):1つの母液プレート110’の別のウェル210から固定量vの母液を抽液し、これを1つの評価プレート120’のウェルに注液する。
ステップ(c):ステップ(a)および(b)を繰り返し、1つの評価プレート120’に複数の被験液を調製する。繰り返しの合計回数は、1つの母液プレート110’に収容された母液の数だけ行えばよい。すなわち、1つの母液プレート110’に収容されたすべての母液に対して繰り返される。例えば、1つの母液プレート110’の複数のウェル210が96個あり、そのうちの36個に母液が収容されている場合には、合計36回となるよう繰り返せばよい。このようにして複数の被験液を備える1つの評価プレート120”が得られる。
【0094】
ステップS1430は、好ましくは、ユーザによって入力される、少なくとも、固定量v、複数の母液の組成および複数の被験液の組成を含む分注条件に基づいて行われる。このような分注条件は、
図7〜
図11を参照して説明したとおりであるため、省略する。なお、予めメモリ等に保存された分注条件を呼び出し、それに基づいてステップS1430を実施してもよい。
【0095】
ステップS1440:ステップS1430で得られた1つの評価プレート120”が備える複数のウェル310のそれぞれが有する一対の電極330、340と電気化学測定装置(
図1の電気化学測定装置170)とを電気的に接続する。
【0096】
ステップS1450:電気化学測定装置に1つの評価プレート120”の複数の被験液のそれぞれの電気化学特性を一斉に測定させる。このようにして、複数の被験液の電気化学特性をハイスループットで測定できる。
【0097】
ステップS1450は、好ましくは、ユーザによって入力される電気化学測定条件に基づいて行われる。このような電気化学測定条件は、
図7および
図12を参照して説明したとおりであるため、省略する。なお、予めメモリ等に保存された電気化学測定条件を呼び出し、それに基づいてステップS1430を実施してもよい。
【0098】
ステップS1460:ステップS1450で測定が終了すると、測定された1つの評価プレート120”を廃棄する。
【0099】
ステップS1510:未使用の1以上の評価プレート120があり、かつ、容量Vを固定量vで除した解の整数部分nが2以上である場合、ステップS1520に進む。未使用の1以上の評価プレート120がない、または、容量Vを固定量vで除した解の整数部分nが1である場合、測定はここで終了する。
【0100】
ステップS1520:ステップS1420〜ステップS1460をn−1回繰り返す。ここでnは、容量Vを固定量vで除した解の整数部分である。このようにして、1つの母液プレート110’に対して、n個の評価プレートのそれぞれに複数の被験液を調製し、それらの電気化学特性をハイスループットで評価できる。
【0101】
ステップS1530:ステップS1520に続いて、未使用の1以上の母液プレート110があり、かつ、未使用の1以上の評価プレート120がある場合、さらにステップS1540に進んでもよい。未使用の1以上の母液プレート110がない、または、未使用の1以上の評価プレート120がない場合、測定はここで終了する。
【0102】
ステップS1540:ステップS1410〜ステップS1520を繰り返す。繰り返しの回数は、未使用の1以上の母液プレート110がなくなる、または、未使用の1以上の評価プレート120がなくなるまで行えばよい。これにより、少なくとも、母液プレートの数にnを乗じた数に相当する数の評価プレートのそれぞれに複数の被験液を調製し、それらの電気化学特性をハイスループットで評価できる。母液プレートからの抽液の終了と、すべての評価プレートへの注液の終了とを常に一定とすることができるため、効率的な長期運転を可能する。
【0103】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例】
【0104】
[実施例1]
実施例1では、
図16に示す自動電気化学測定システムを用いて種々の電解液の電気特性を一斉に測定した。
【0105】
図16は、実施例で使用した自動電気化学測定システムを示す模式図である。
【0106】
図16の自動電気化学測定システム1600は、6枚の母液プレート1610と、36枚の評価プレート1620とを設置したプレートスタッカ1630と、これらを搬送するロボットアーム1640と、非接触式分注システム1650と、第1のプローブ群および第2のプローブ群を備えた測定ステージ1660と、充放電試験機1670と、ロボットアーム1640、非接触式分注システム1650、測定ステージ1660および充放電試験機1670の動作を制御するディスプレイを備えたコンピュータ180とを備えた。さらに自動電気化学測定システム1600は、廃液を廃棄する廃液容器1601およびプレートを廃棄する廃棄容器1602をさらに備えた。
【0107】
充放電試験機1670とコンピュータ1680とを除く要素がグローブボックス1690内に収容されており、グローブボックス内はアルゴン雰囲気に制御された。
【0108】
図17は、評価プレートの外観を示す図である。
【0109】
評価プレートは、8行(A〜H)×12列(1〜12)のマトリクス状の96個のウェルを有しており、ウェルにはそれぞれ一対の電極(ニッケル箔とリチウム金属箔)とその電極間にガラス繊維ペーパ(Whatman(登録商標)、GF/A)とからなる電極部材を配置させた。なお、予め共通電解液としてLiNO
3が1M溶解したDMA(ジメチルアセトアミド)を25μLずつ各ウェルに収容した。
【0110】
母液プレートも、評価プレートと同様に、8行×12行のマトリクス状の96個のウェルを有し、各ウェルに収容される母液の容量は1mLであった。
【0111】
図7に示すインターフェースから分注条件設定ボタンを選択し、分注条件設定画面の母液タブにおいて、母液プレートのウェルの容量(容量Vに相当)に1mLを、母液プレート数に6を入力した。次いで、母液抽液量(固定量vに相当)として150μLを、母液プレートのウェルの使用数として32を選択し、母液プレートレシピとして表1および表2をアップロードした。なお、表1および表2は、実際には連続した一つの表であることを理解されたい。
【0112】
続いて、被験液タブにおいて、評価プレートの各ウェルに調製される被験液量として25μLを選択し、評価プレートレシピとして表3〜表6をアップロードし、評価プレート数に36を入力した。分注条件設定画面において確認ボタンを押し、分注条件に問題がないことを確認した。表3〜表6には、36枚の評価プレートのうち1枚目の評価プレートに相当する評価プレートレシピのみ示す。なお、表3〜表6は、実際には連続した一つの表であり、1枚目の評価プレートに96個のレシピが記載されていることを理解されたい。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
【表6】
【0119】
図7に示すインターフェースから電気化学測定条件設定ボタンを選択し、電気化学測定条件設定画面のシーケンスタブにおいて、シーケンスNo.3(パターンNo.1、サイクル数3)を選択し、パターンタブにおいて、パターンNo.1の充放電条件を設定した。パターンNo.1を表7に示す。
【0120】
【表7】
【0121】
再度、
図7に示すインターフェースに戻り、実行ボタンを押した。エラーでシステム1600が止まることなく、全36枚の評価プレートに被験液を調製し、電気化学特性の測定が行われた。測定時間は144時間(約6日)であった。測定終了後、プレートスタッカ1630には、母液プレートも評価プレートもなく、空であることを確認した。
【0122】
母液プレートのウェルの容量Vが1mLであり、固定量vが150μLであることから、容量V(1mL=1000μL)を固定量v(150μL)で除した解の整数部分nは6となり、母液プレートの数(6)に、6(=n)を乗じた数に相当する36枚の評価プレートのそれぞれに複数の被験液が調製され、電気化学特性の測定が行われたことが確認された。プレートスタッカに設置したすべての母液プレートからの抽液の終了と、すべての評価プレートへの注液の終了とが常に一定となり、プレートスタッカごとの交換を行うだけで、効率的な長期運転が可能であることが示された。
【0123】
測定後、
図7に示すインターフェースの結果ボタンを押すと、表8〜表11に示す結果が表示された。表3〜表6では、36枚の評価プレートのうち1枚目の評価プレートに相当する評価プレートレシピのみ示すが、表8〜表11では、評価プレートが備える複数のウェルおよび複数の被験液の情報(カラム(縦)とロウ(横)、被験液番号)と、それぞれに対応する各サイクル(1回目〜3回目)のクーロン効率の結果とが、評価プレートのシートごとに表示された。なお、表8〜表11は、実際には連続した一つの表であり、1枚目の評価プレートに96個の結果が記載されていることを理解されたい。
【0124】
【表8】
【0125】
【表9】
【0126】
【表10】
【0127】
【表11】