【解決手段】センサは、アバランシェフォトダイオードと、第1のクエンチ抵抗と、第2の抵抗と、整流素子とを有する。第1のクエンチ抵抗の一端は対応するアバランシェフォトダイオードの電流出力端子に接続され、もう一端は出力端子に接続されている。第2の抵抗は、対応する第1のクエンチ抵抗に対して並列に接続されている。整流素子は、対応する第2の抵抗と特定の電位との間に接続されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る距離計測装置の概略的な全体構成を示す図である。距離計測装置1は、出射部10と、光学系20と、計測処理部30と、画像処理部40とを有している。
【0008】
出射部10は、レーザ光L1を間欠的に出射する。出射部10は、光源11と、第1の駆動回路12と、発振器13と、第2の駆動回路14と、制御部15とを有する。
【0009】
光源11は、レーザ光L1を間欠的に発光する。光源11は、レーザダイオード等のレーザ光源である。
【0010】
第1の駆動回路12は、例えば光源11を駆動するための駆動電流を光源11に供給する。第1の駆動回路12は、発振器13で生成されたパルス信号に応じて駆動電流を出力する。
【0011】
発振器13は、制御部15による制御に基づいてパルス信号を生成する。発振器13は、生成したパルス信号を第1の駆動回路12に出力する。
【0012】
第2の駆動回路14は、制御部15による制御に基づいて光学系20のミラー25を駆動するための駆動電流をミラー25に供給する。
【0013】
制御部15は、例えばCPU及びメモリを有している。メモリには、距離計測装置1の動作のためのプログラムが記憶されている。CPUは、メモリに記憶されているプログラムに従って第1の駆動回路12及び第2の駆動回路14を制御する。
【0014】
光学系20は、出射部10から射出されたレーザ光L1を対象物Oに射出するとともに、対象物Oから反射されたレーザ光L1の反射光L2を計測処理部30に入射させる。光学系20は、レンズ21と、第1光学素子22と、レンズ23と、第2光学素子24と、ミラー25とを有する。
【0015】
レンズ21は、光源11から射出された光の射出光路上に配置されている。レンズ21は、光源11から間欠的に射出されるレーザ光L1をコリメートして、第1光学素子22に導光する。
【0016】
第1光学素子22は、レンズ21によって導光されるレーザ光L1を第2光学素子24の方向と計測処理部30の光センサ31の方向とに分離する。第1光学素子22は、例えばビームスプリッタである。
【0017】
レンズ23は、第1光学素子22から射出されるレーザ光L1を集光して、光センサ31に導光する。
【0018】
第2光学素子24は、第1光学素子22から射出されるレーザ光L1をミラー25の方向に透過させるとともに、ミラー25から射出されるレーザ光L1の反射光L2を計測処理部30のセンサ33の方向に反射する。第2光学素子24は、例えばハーフミラーである。
【0019】
ミラー25は、入射した光を反射する。ミラー25は、ミラー面の角度の異なる、ポリゴンミラーである。あるいは、ミラー25は揺動するミラーでもよく、ミラー25の反射面は、例えば、互いに交差する2つの回動軸を中心として回動できるように構成されている。ミラー25の駆動は、第2の駆動回路14から供給される駆動電流に従って行われる。
【0020】
計測処理部30は、光学系20から射出された反射光L2に基づき、対象物Oまでの距離を計測する。計測処理部30は、光センサ31と、レンズ32と、センサ33と、第1増幅器34と、第2増幅器35と、時間取得部36と、距離計測処理部37とを有する。
【0021】
光センサ31は、例えばフォトダイオードであり、レンズ23を介して導光されたレーザ光L1を受光して電気信号を出力する。
【0022】
レンズ32は、第2光学素子24からの反射光L2を集光して、センサ33に導光する。
【0023】
センサ33は、レンズ32から入射した反射光L2を受光して電気信号を出力する。センサ33は、例えば半導体を用いた光電子増倍素子であり、特にシリコン光電子増倍素子(SiPM)である。SiPMは、SPAD(Single-Photon Avalanche Diode)と呼ばれる、ガイガーモードで使用されるアバランシェフォトダイオード(APD)をマルチピクセル化したデバイスである。それぞれのSPADは、光入射に応じてアバランシェ降伏を起こし、電気信号を出力する。複数のSPADによって領域(画素、チャネルとも言う)が形成され、この領域内の出力が共通化されてもよい。この場合、1つの領域からは、その領域に属するSPADの出力の総和に相当する電気信号が出力される。センサ33の構成については後で詳しく説明する。
【0024】
第1増幅器34は、光センサ31から出力される電気信号を増幅して時間取得部36と、距離計測処理部37に出力する。
【0025】
第2増幅器35は、例えばトランスインピーダンス増幅器であり、反射光L2に基づく電気信号を増幅する。第2増幅器35は、例えばセンサ33から出力される電流信号を計測信号としての電圧信号に増幅し、変換する。
【0026】
時間取得部36は、反射光L2に基づく計測信号をAD変換により、信号強度についての時系列信号を生成する、あるいは、計測信号の立ち上がり時間を取得する。
【0027】
距離計測処理部37は、時間取得部36によって取得された時系列信号のピーク時刻を検出し、そのピーク時刻とレーザ光L1の照射タイミングとの時間差に基づいて、あるいは、立ち上がり時間と、レーザ光L1の照射タイミングとの時間差に基づいて、対象物Oまでの距離を計測する。
【0028】
以下、センサ33の構成を説明する。
図2は、SPADの構成とその動作原理を示す図である。1つのSPADは、APD101と、クエンチ抵抗102とを有している。クエンチ抵抗102は、APD101の電流出力端子(
図2の例ではアノード)に接続されている。
【0029】
図2の例のAPD101は、厚いP型半導体層と薄いN型半導体層とを有している。具体的には、APD101は、例えば基板SUBと、P型半導体層Pと、Pプラス型半導体層P
+と、Nプラス型半導体層N
+とを有する。基板SUBは、例えばP型半導体基板である。基板SUBにはP型半導体層Pが積層されている。P型半導体層Pは、Pプラス型半導体層P
+に比べて不純物濃度の低い薄いP型半導体(エピ)層である。Pプラス型半導体層P
+は、P型半導体層Pに比べて不純物濃度が高くなるようにP型不純物が導入された半導体層である。Nプラス型半導体層N
+は、N型不純物が導入された電子濃度の大きい半導体層である。Nプラス型半導体層N
+には図示しない電極が形成されている。これらの電極を介してAPD101には、基板側が負となる方向に、高い逆バイアス電圧がかけられる。
【0030】
図2に示すように、P型半導体層とN型半導体層との接合領域付近には空乏層Dが形成される。この空乏層Dに光が入射すると、空乏層DにキャリアC
Lとして電子と正孔の対が発生する。
【0031】
ここで、APD1には高い逆バイアス電圧がかけられているために、空乏層Dに発生したキャリアC
Lは逆バイアス電圧による電界Eによってドリフトする。
図2の例では、キャリアC
Lのうち、電子は表面方向(Nプラス型半導体層N
+)に向けて加速され、正孔は基板方向に向けて加速される。Nプラス型半導体層N
+に向けて加速された電子は、PN接合付近の強い電界の下、原子と衝突する。そして、原子に衝突した電子が原子をイオン化させて新たな電子と正孔の対を発生させる。逆バイアス電圧がブレークダウン電圧を超えると、このような電子と正孔の対の発生が繰り返される。このようなアバランシェ降伏により、APD101は放電する。このような放電は、ガイガー放電と呼ばれている。このようにして、1つのSPADからは、ガイガー放電とその後のリカバリに関わる電気信号が出力される。
【0032】
APD101から出力された電流はクエンチ抵抗102に流れる。このときの電圧降下によってバイアス電圧が低下する。バイアス電圧の低下が進み、ブレークダウン電圧未満になると、ガイガー現象が停止する。さらに、APD101の接合容量などの容量を充電する、リカバリ電流が流れ終わると電流出力が停止する。ガイガー現象が止まり、電流出力が有る程度弱まると、APD101は、次の光を受光できる状態に戻る。
【0033】
ここで、APD101は、
図2の構造に限るものではない。例えば、Pプラス型半導体層P
+はなくてもよい。また、
図2では、P型半導体層が厚く、N型半導体層が薄い構造のAPDであるが、逆にN型半導体層が厚く、P型半導体層が薄い構造のAPDであってもよい。更にまた、
図2の様に表面近くにPN接合を作るのではなく、基板SUBとエピ層の境界付近に、PN接合を形成してもよい。
【0034】
図3Aは、実施形態における1つのSPADの構成例を示す図である。
図3Aに示すように、実施形態における1つのSPADは、APDと、第1のクエンチ抵抗Rqと、第2の抵抗Rstと、整流素子としてのダイオードDとを有する。
【0035】
図3Aにおいて、APDは、電源に対して順接続されており、基板SUBに設けられる図示しない電源から逆バイアス電圧Vsubが印加される。APDのカソードには、第1のクエンチ抵抗Rqの一端が接続されている。第1のクエンチ抵抗Rqのもう一端は、センサ33の出力端子Out1に接続されている。出力端子Out1は、第2増幅器35に接続される。ここで、SPADがマルチピクセル化されているとき、複数のSPADはグループを形成していてよい。このとき、あるグループに属するSPADの第1のクエンチ抵抗Rqは、同一のグループに属する他のSPADの第1のクエンチ抵抗Rqと、
図3Aに示す接点Aにおいて接続される。これにより、出力端子Out1から第2増幅器35へは、そのグループに属するSPADの出力の総和に相当する電気信号が出力される。
【0036】
第2の抵抗Rstは、第1のクエンチ抵抗Rqに対して並列に接続されている。ここで、第2の抵抗Rstの抵抗値は、第1のクエンチ抵抗Rqの抵抗値よりも低い。例えば、第1のクエンチ抵抗Rqの抵抗値は250kΩであり、第2の抵抗Rstの抵抗値は2kΩである。
【0037】
ダイオードDは、第2の抵抗Rstに対して順接続された整流素子である。つまり、ダイオードDの電流出力端子となるカソードは、センサ33の出力端子Out2に接続されている。ここで、SPADがマルチピクセル化されているとき、SPADのダイオードDのカソードは、他のダイオードDのカソードと、
図3Aに示す接点Bにおいて接続される。これにより、出力端子Out2からグランドへは各ダイオードDの出力の総和に相当する電気信号が出力される。ここで、ダイオードDは、ツェナーダイオードであってよく、また、アバランシェフォトダイオード(上述のAPDとは別の)であってもよい。
【0038】
図3Aで示した構成において、APDに光が入射したとき、APDはアバランシェ降伏を起こして電流信号を出力する。ここで、APDからの電流信号は、第1のクエンチ抵抗Rqに流れる。第1のクエンチ抵抗に並列に第2の抵抗とダイオードDが接続されているので、APDからの電流信号が第1のクエンチ抵抗Rqに流れることによって第1のクエンチ抵抗に発生する電圧は、第2の抵抗とダイオードDにも印加される。
【0039】
そして、ダイオードDに印加される電圧がダイオードDの降伏電圧を超えたときに、ダイオードDには電流が流れる。第2の抵抗Rstの抵抗値は、第1のクエンチ抵抗Rqの抵抗値よりも小さいので、ダイオードDに流れる電流は、第1のクエンチ抵抗Rqに流れる電流に比べて大きい。
【0040】
ここで、APDに光が入射したときの単位時間に発生する電気量Iは以下の(式1)で表される。
I=Np×PDE×G×e (式1)
(式1)のNpはAPDで吸収される光子数であり、PDEはAPDの検出効率であり、GはAPDの増倍率であり、eは電気素量である。APDに入射した光の光量が大きくなると、APDで吸収される光子数Npが大きくなる。したがって、(式1)より電気量Iも大きくなる。
【0041】
ここで、クエンチ抵抗に流れる電流をIqとしたとき、I−Iqがゼロ又はゼロと見なせるほどに小さくなれば、APDで発生したキャリアが放出されたことになる。この場合、APDによる次の検出をすることができる。これに対し、I−Iqが非常に大きな値を有するときには、APDで発生したキャリアが長時間残留することになる。キャリアが残留している間、APDは出力を続けるので、その間、APDによる次の検出を行うことができなくなる。
【0042】
実施形態では、第1のクエンチ抵抗Rqに対して並列に第2の抵抗RstとダイオードDとが接続されている。これにより、APDに大光量の光が入射したとしても、APDで発生したキャリアは比較的に短時間で放出される。
【0043】
[変形例1]
実施形態の変形例1を説明する。
図3Aでは、APDは、電源に対して順接続されており、電源から逆バイアス電圧Vsubが印加される。これに対し、APDは、
図3Bに示すように、電源に対して逆接続、すなわち電流出力端子がアノードとなるように接続されてもよい。この場合、ダイオードDは、第2の抵抗Rstに対して逆接続されればよい。つまり、実施形態においては、APDとダイオードDの接続向きは同方向であればよい。したがって、APDが電源に対して逆接続されているとき、ダイオードDは第2の抵抗Rstに対して逆接続される。また、APDが電源に対して順接続されているとき、ダイオードDは第2の抵抗Rstに対して順接続される。
【0044】
また、
図3Aでは、第1のクエンチ抵抗Rqに並列接続される整流素子としてダイオードDが例示されている。しかしながら、整流素子は、ダイオードに限るものではない。
図3Cに示すように、ダイオードDは、ツェナーダイオードZDであってもよい。例えば、電源電圧Vsubが−30V、ブレークダウン電圧が25V(通常、正の数で表現される)、出力端子Out1の電圧が0V程度であり、SPADを動作させるオーバー電圧が0〜−5V(マイナスを省いて0〜5Vとも記される)である場合は、5V以上の降伏電圧を持つツェナーダイオードZDを使用する。この場合、光による電圧降下が降伏電圧を超えると、ツェナーダイオードZDに電流が流れ、蓄積されたキャリアが放出される。あるいは、ダイオードDは、アバランシェフォトダイオードに置き換えられてよい。第2の抵抗Rstは、ツェナーダイオードZDに流れる電流(および、その両端に掛かる電圧)を制限して、ツェナーダイオードZDが破壊されることを阻止する。また、第2の抵抗Rstは、通常動作時における、ツェナーダイオードZDの寄生容量によるSPADの特性への影響を低減している。
【0045】
[変形例2]
図3Dは、ダイオードDが逆向きの場合である。例えば、電源電圧VSubが−30V、ブレークダウン電圧が25V(通常、正の数で表現される)、出力端子Out1の電圧が0V程度であり、SPADを動作させるオーバー電圧が0〜−5V(マイナスを省いて0〜5Vとも記される)である場合、出力端子Out2には−(5V+ダイオードDの閾値電圧)以下の特定の電圧を印加する。この場合、光による電圧降下が印加した電圧を超えると、ダイオードDに電流が流れ、蓄積されたキャリアが放出される。
【0046】
図3Eは、
図3Dのダイオードを、P型MOSトランジスタTrに置き換えたものである。例えば、電源電圧Vsubが−30V、ブレークダウン電圧が25V(通常、正の数で表現される)、出力端子Out1の電圧が0V程度であり、SPADを動作させるオーバー電圧が0〜−5V(マイナスを省いて0〜5Vとも記される)である場合、出力端子Out2には−(5V+トランジスタの閾値電圧)以下の特定の電圧を印加する。この場合、光による電圧降下が印加した電圧を超えると、トランジスタTrに電流が流れ、蓄積されたキャリアが放出される。高速、かつ、電流容量の大きいトランジスタTrを用いることにより、短時間にキャリアを放出することが可能になる。
【0047】
ダイオードDをトランジスタTrに置き換えるときには、トランジスタTrの寄生ダイオードの向きがダイオードDの逆向きになればよい。つまり、トランジスタTrがPチャネルMOSトランジスタの場合は、トランジスタTrのドレインが第2の抵抗Rstに接続され、トランジスタTrのソースが出力端子Out2に接続される。
【0048】
図3C〜
図3Eは、APDが
図2の構造の場合で有り、また、
図3EはPチャネルMOSトランジスタの場合であるが、前記の通り、APDの構造はそれに限るものではなく、また、PチャネルMOSトランジスタの代わりにNチャネルMOSトランジスタを用いることも出来る。
【0049】
[変形例3]
実施形態の変形例3を説明する。前述の実施形態及び変形例1で示した例では、APDからのキャリアの放出の促進に整流素子の降伏現象が利用されている。これに対し、例えば
図4に示すように、第2の抵抗Rstに対して複数のダイオードD1、D2、…、D3を順接続することでも同様の効果が得られる。つまり、複数のダイオードを順接続することで順方向閾値を大きくすることができる。順方向閾値が大きくなることで、ダイオードを逆接続した場合と同様に低電圧では電流が流れず、高電圧が印加されたときに大電流が流れるようになる。したがって、変形例2においても、前述の実施形態及び変形例1と同様の効果が得られる。なお、
図4は、APDが電源に対して順接続されているときには、第2の抵抗Rstに対して複数のダイオードD1、D2、…、D3は逆接続されればよい。
【0050】
[変形例4]
実施形態の変形例4を説明する。
図5Aは、変形例4のSiPMの構造を示す図である。
図5Bは、
図5AのC領域の拡大図を示している。なお、
図5Bは、領域Cの拡大図であるが、他のSPADも
図5Bと同様の接続構造の第2の抵抗Rstを有している。前述したように、SiPMは、SPADをマルチピクセル化したものである。例えば、SiPMは、
図5Aに示すように、APDと第1のクエンチ抵抗Rqとを含むSPADが例えば2次元に配列されたセンサ領域を有する。配線の引き回しのため、
図5Aの例ではセンサ領域は、例えば紙面の左右方向で2つの領域に分けられている。左右方向は、例えばセンサ33を距離計測装置1に搭載したときの水平方向となる方向である。
【0051】
センサ領域の右半分の領域において、SPADへの配線は、センサ領域の右端に向けて引き回されている。より詳しくは、APDに接続される第1のクエンチ抵抗Rqは、SPADの左右方向の境界である分離領域に配置されている。分離領域は、隣り合うSPADの一方に存在するキャリアが他方に伝搬しないようにSPAD間に設けられている領域である。分離領域は、遮光されていてもよい。そして、センサ領域の右半分の各行のSPADに含まれる第1のクエンチ抵抗Rqは、SPADの上下方向の境界である分離領域を通して引き回された1本の水平配線に接続されている。そして、各行の水平配線は、センサ領域の右端において1本の垂直配線に接続されている。この垂直配線は出力端子Out1に接続されている。
【0052】
同様に、センサ領域の左半分の領域において、SPADの配線は、センサ領域の左端に向けて引き回されている。より詳しくは、APDに接続される第1のクエンチ抵抗Rqは、SPADの左右方向の境界である分離領域に配置されている。そして、センサ領域の左半分の各行のSPADに含まれる第1のクエンチ抵抗Rqは、SPADを上下方向の境界である分離領域を通して引きまわされた1本の水平配線に接続されている。そして、各行の水平配線は、センサ領域の左端において1本の垂直配線に接続されている。この垂直配線は別の出力端子Out1に接続されている。
【0053】
ここで、実施形態では、
図5Bに示すように、第1のクエンチ抵抗Rqに対して第2の抵抗Rstと整流素子(例えばダイオードD)とが接続される。第2の抵抗Rstと整流素子とをセンサ領域の中に配置してしまうと、SPADの開口率、すなわちAPDの受光面積の低下につながる。
【0054】
変形例4では、整流素子(例えばダイオードD)は、センサ領域の端に配置される。
図5Aの例では、センサ領域の右半分の領域のSPADについてのダイオードDは、センサ領域の右端に集めて配置され、センサ領域の左半分の領域のSPADについてのダイオードDは、センサ領域の左端に集めて配置されている。センサ領域の右端に配置された各ダイオードDは、分離領域を通して引き回された配線によって出力端子Out2に共通に接続されている。同様に、センサ領域の左端に配置された各ダイオードDは、分離領域を通して引き回された配線によって別の出力端子Out2に共通に接続されている。
【0055】
変形例4では、整流素子がセンサ領域の端に集めて配置されることにより、各SPADの開口率の低下が抑制される。APDには、通常の回路の電源電圧と比べて、高い逆バイアス電圧が印加されるため、その間を絶縁するために、深いウェル等を用いる必要が有り、APDと回路は通常遠く離さなければならない。したがって、変形例4と異なってセンサ領域に、回路の一つである整流素子を置く場合は、大きな分離領域が必要となり、開口率が低下する。また、配線は、分離領域を通して引き回されており、これによっても各SPADの開口率の低下が抑制される。
【0056】
ここで、
図5Aでは、センサ領域は左右方向で2つに分けられているがこれに限るものではない。センサ領域は上下方向で2つに分けられていてもよい。この場合において、ダイオードDは、センサ領域の上端及び下端に分けられて配置されてもよい。
【0057】
[変形例5]
実施形態の変形例5を説明する。
図6は、変形例5のSiPMの構造を示す図である。SiPMを製造する際の制約等により、整流素子をセンサ領域の端に集めて配置することができない場合があり得る。この場合には、
図6に示すように、センサ領域の一部のSPADの配置されるべき領域に、ダイオードDが集められて配置されてもよい。言い換えれば、SPADは、ダイオードDが集めて配置される領域を除くセンサ領域に配置されてもよい。なお、
図6では、ダイオードDが1箇所に集められているが、2箇所以上に分けて集められてもよい。
【0058】
ここで、APDとダイオードDとは例えばウェルWeやトレンチ構造等によって素子分離されていることが望ましい。これは、高い逆バイアス電圧が印加されているAPDとダイオードDとを電気的に分離するためである。
【0059】
[変形例6]
実施形態の変形例6を説明する。APDからのキャリア放出を促進するための整流素子は、APDの上層に形成されてもよい。
図7は、APDの上層に薄膜トランジスタによって、第2の抵抗Rstと、整流素子としてのトランジスタTrとを形成する例を示す図である。例えば、基板201には、P型半導体層202が形成されている。このP型半導体層202には、Pプラス型半導体層203と、Nプラス型半導体層204が積層されている。また、Nプラス型半導体層204には、2枚の電極205a、205bが形成されている。電極205aは、図示しない電源に接続される。電極205bは、第2の抵抗Rstを構成するトランジスタTrの電極210bに接続される。P型半導体層202と、Pプラス型半導体層203と、Nプラス型半導体層204と、電極205a、205bとにより、APDが形成されている。
【0060】
電極205a、電極205bの周囲は絶縁層206によって平坦にされている。絶縁層206には、絶縁層207が積層されている。絶縁層207には、例えばInGaZnOからなる半導体層208が形成されている。半導体層208は、絶縁層209を介して形成されたトランジスタの電極210a、210bに接続されている。電極210aは例えばトランジスタのソース電極であり、電極210bは例えばドレイン電極である。半導体層208、電極210a、210bにより、第2の抵抗が形成されている。
【0061】
また、絶縁層207には、例えばInGaZnOからなるもう1つの半導体層211が形成されている。半導体層211は、絶縁層209を介して形成されたトランジスタの電極212a、212bに接続されている。電極212aは例えばトランジスタのソース電極であり、電極212bは例えばドレイン電極である。また、図では示していないが、電極210aと電極212aは接続されている。半導体層210、電極212a、212bにより、整流素子としてのトランジスタTrが形成されている。
【0062】
電極210a、210b、212a、212bの上には、保護層としての絶縁層213が形成されている。
【0063】
図7に示すように、第2の抵抗RstとトランジスタTrとを同一の層に形成することで、第2の抵抗RstとトランジスタTrとは、同工程で形成され得る。
【0064】
また、APDからのキャリア放出を促進するための整流素子は、APDとは別に形成されてもよい。
図8A及び
図8Bは、APDの隣のポリシリコンによって、整流素子としてのダイオードDを形成する例を示す図である。
図8Aに示すように、ダイオードDは、配線Wを介してAPDに接続されている。ダイオードDは、例えば、P型不純物が導入されたポリシリコン層PpとN型不純物が導入されたポリシリコン層Pnとの接合によって構成されている。そして、
図8Bに示すようにAPDと、ダイオードDとはLOCOS(local Oxidation of Silicon)層によって素子分離されている。なお、
図8BのPDNはAPDを構成するNプラス型半導体層であり、PDPはAPDを構成するPプラス型半導体層であり、1P
−は拡散層である。
【0065】
変形例6の手法でもセンサ領域に整流素子等を形成する必要がないので、各SPADの開口率の低下が抑制される。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。