特開2020-153976(P2020-153976A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2020-153976サファイア時計ガラスにマーキングする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-153976(P2020-153976A)
(43)【公開日】2020年9月24日
(54)【発明の名称】サファイア時計ガラスにマーキングする方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 45/00 20060101AFI20200828BHJP
   G04B 39/00 20060101ALI20200828BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20200828BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20200828BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20200828BHJP
【FI】
   G04B45/00 V
   G04B39/00 Z
   B23K26/00 G
   B23K26/53
   B23K26/00 B
   C03C23/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-36449(P2020-36449)
(22)【出願日】2020年3月4日
(31)【優先権主張番号】19163887.3
(32)【優先日】2019年3月19日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ネトゥシル
【テーマコード(参考)】
4E168
4G059
【Fターム(参考)】
4E168AA01
4E168AE01
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA46
4E168DA47
4E168JA14
4E168KA04
4G059AA15
4G059AB05
4G059AC30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レーザ光線とサファイアとの相互作用を通して、サファイア時計ガラスにマーキングする方法を提供する。
【解決手段】光線を、ガラス内部にある点5に合焦し、相互作用を、該相互作用で、ガラスの上面2に平行な、又は表面2に垂直な直線不透明領域6を作成するようにする。不透明領域の向きは、適用する動作モードによって決まる。線影付け動作モードによって、光線4を、1つ又は複数の直線経路に沿って走査し、上面と平行な、ガラス内部の不透明な線6を作成する。穿孔動作モードでは、多数の並列点5に、光線を不連続に動作して得る、別個の不透明領域を作成する。この穿孔動作モードによって、不透明領域は、ガラスの上面に垂直な方向に延在する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア時計ガラス(1)にマーキングする方法であり、前記ガラスは、平坦な上面(2)及び下面(3)を有し、前記上面(2)と垂直に指向し、前記ガラス(1)の材料内部に存在する点(5)で合焦するレーザ光線(4)を使用する、方法であって、前記焦点(5)で前記レーザと前記サファイアとの相互作用で、前記上面(2)と平行な方向に、又は前記上面(2)に垂直な方向に延在する少なくとも1つの直線領域(6、10)を生成することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記レーザ光線(4)を、前記ガラスの前記上面(2)に対して固定距離にある点(5)で合焦したままにしながら、直線経路に沿って、前記ガラス(1)に対して走査し、前記直線不透明領域(6)は、前記ガラス(1)の前記上面(2)に実質的に平行である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光線(4)は、第1線影付けステップにおいて前記ガラスの第1部分にマーキングするために、複数の並列経路を辿る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2線影付けステップを、前記第1ステップに対する横断方向に実行し、前記第2ステップを、前記ガラスの第2部分で実行し、前記第2部分は、少なくとも部分的に前記第1部分を被覆し、前記第2線影付けステップを、前記第1線影付けステップのように、前記上面(2)に対して同じ距離で実行する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1ステップ又は2ステップを含む、幾つかの線影付け動作を、立体マーキングを得るために、前記材料における連続したレベルで実行し、隣接する2つのレベルで形成する前記直線不透明領域(6)を、互いに分離する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記走査速度は、2m/s〜3m/sである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
多数のレーザパラメータを、以下の表1:
【表1】
のように規定する、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
多数の幾何学的パラメータを、以下の表2:
【表2】
のように規定する、請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザ光線(4)を、前記上面(2)から同じ距離に位置する複数の並列点(5)で連続的に合焦し、前記直線不透明領域(10)を、前記点其々で作成し、前記領域は、前記上面(2)に垂直な方向に延在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
幾つかのマーキングステップを、立体マーキングを得るために、前記材料における連続したレベルで実行し、隣接する2つのレベルで形成する直線不透明領域(10)を、互いに分離する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
多数の前記レーザパラメータの前記値を、以下の表3:
【表3】
のように規定する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
多数の前記幾何学的パラメータの前記値を、以下の表4:
【表4】
のように規定する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ガラスの前記上面(2)には、反射防止層を備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ガラス内にマーキングを備え、前記ガラスが平坦な上面(2)及び下面(3)を有するサファイア時計ガラス(1)であって、前記マーキングは、前記上面(2)と平行な方向に、又は前記上面(2)に垂直な方向に延在する少なくとも1つの直線不透明領域(6、10)を含む、サファイア時計ガラス(1)。
【請求項15】
前記マーキングは、前記上面(2)と平行な方向に指向し、前記上面(2)から固定距離にある1つ又は複数の並列な直線不透明領域(6)を含む、請求項14に記載の時計ガラス(1)。
【請求項16】
前記マーキングは、前記上面(2)から同じ距離に、二組の並列な直線不透明領域(6a、6b)を含み、前記両領域は、互いに交差するように指向し、前記第2組は、少なくとも部分的に、前記第1組を被覆する、請求項15に記載の時計ガラス(1)。
【請求項17】
前記マーキングは、点線で、前記ガラス(1)の前記上面(2)に垂直な方向に延在する、複数の並列な直線不透明領域(10)を含む、請求項14に記載の時計ガラス(1)。
【請求項18】
数層を有する立体マーキングを含み、各層は、請求項15に記載の、又は請求項16若しくは17に記載のマーキングから形成される、時計ガラス(1)。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか一項に記載のサファイアガラス(1)を含む時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計学、特に、ガラスにシリアル番号、絵、ロゴ、又は他の種類の情報及び/又は審美的なマークを加えるために、時計ガラスにマーキングすることに関する。本発明は、より詳細には、サファイア時計ガラスにマーキングすることに焦点を当てている。
【背景技術】
【0002】
マーキングを得るための既知の一技法として、レーザを使用してガラスをエッチングする技法がある。サファイアガラス上で、材料を除去し、それにより結晶格子に割れ目を作り、材料を不透明にするために、ガラスの上面で合焦するレーザを使用すること、及び表面の一部に亘りレーザを走査することが知られている。除去した材料を、粉塵の形で排除しなければならず、粉塵がマーキングを汚す可能性があるため、それがこの手法の欠点になっている。
【0003】
サファイア又は他の材料製の時計ガラスにマーキングするための別の技法として、レーザをガラス内部で合焦させるが、点線で、材料をエッチングする技法がある。国際公開第1999/021061号(特許文献1)では、パターンを形成するために、材料内で並列した一組のレーザ衝撃点を作ることから成る、そうした技法について開示している。エッチング状態は、衝撃により星形の内部きずを付け、該きずの断面は、制御できない。このため、2つの連続した衝撃領域間の最短距離に関して限界があり、従って、特定のマーキングや絵の視認性が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第1999/021061号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、以上で特定された欠点のない、サファイア時計ガラス中にマーキングを作成する方法を提供することである。この目的を、付記したクレームに記載された方法によって、及びガラスと時計によって達成する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、レーザ光線とサファイアとの相互作用を通して、サファイア時計ガラスにマーキングする方法に関する。光線を、ガラス内部にある点に合焦し、相互作用を、該相互作用で、ガラスの上面に平行な、又は該表面に垂直な直線不透明領域を作成する。不透明領域の向きは、適用する動作モードによって決まる。線影付け動作モードによって、光線を、1つ又は複数の直線経路に沿って走査し、上面と平行な、ガラス内部の不透明線を作成する。穿孔動作モードでは、多数の並列点に、光線を不連続に動作して得る、別個の不透明領域を作成する。この穿孔動作モードによって、不透明領域は、ガラスの上面に垂直な方向で延在する。
【0007】
本発明の他の特徴及び効果については、添付図を参照して、非限定的な実施例として挙げた、好適な実施形態に関する以下の説明で明らかになるであろう。多数のパラメータ値範囲を、詳細な説明及びクレームで特定する。これらの範囲は、端値を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】線影付けモードと呼ぶ、第1動作モードでガラスにマーキング中の、本発明によるサファイアガラスにおける2つの断面図、加えて特定の詳細図を表す。
図2】第1動作モードによるマーキングを表しており、2つの線影付けステップを交差させて実行している。
図3】穿孔モードと呼ぶ、第2動作モードでガラスにマーキング中の、本発明によるサファイアガラスにおける2つの切断図を表す。
図4】穿孔マーキングモードによりマーキングした、サファイアガラスの細部を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び図3に其々図説した本発明の両動作モードでは、透明なサファイア時計ガラス1に、上面2へ垂直に指向させ、ガラス内部にある点5で合焦させたレーザ光線4によってマーキングしている。
【0010】
提示した非限定的な実施例では、ガラス1は、上面2及び下面3を有し、該両面は、実質的に平坦で、互いに平行である。第1動作モード(図1)によると、光線4は、ガラス1の表面の一部上で走査され、多数の並列な直線経路を辿り、その結果、線影を付けたマーキングを生成する。レーザ焦点5と上面2間の距離「a」は、走査段階中、実質的に固定されたままである。線影を付けるために適用するパラメータは、直線経路に沿った各走査が、サファイア内部で不透明領域6を生成し、該領域は、実質的に直線であり、光線の方向に垂直になる(又は、ガラスの上面に平行になる)。図1の詳細図は、不透明領域6が、該領域の幅Dと高さHによって特徴付けられることを示している。
【0011】
好適な実施形態によると、これらの寸法は、レーザ出力光とエッチングするデザインに応じて制御できる。高さHの大きさは、1ミクロンから数百ミクロン、例えば、最大200ミクロンまでの範囲である。理論にとらわれず、各不透明領域は、走査経路の方向に延在する複数のミクロ割れから形成されると推定される。
【0012】
ガラスの上面2に平行な直線領域6を得られる主なパラメータは、走査速度である。この速度は、サファイアガラスの材料除去エッチングに使用する速度よりかなり高速である。
【0013】
好適には、本発明による走査速度は、2m/s〜3m/s、例えば、2.5m/sである。更に、レーザが、時計ガラスをエッチングするのに適当な速度で動作することが、必要である。表1aは、第1動作モードで使用するレーザ動作パラメータの好適な値を提示している。
【0014】
【表1】
【0015】
表1bは、第1動作モードで使用する多数の幾何学的パラメータの好適な値を提示している。
【0016】
【表2】
【0017】
第1動作モードの特定の実施形態によると、第2線影付けステップを、第1ステップの方向に対して横断方向に実行する。図2は、2つの交差する線影付けステップの部分的な結果を表しており、各ステップによって形成した二組の不透明な線6a及び6bが、互いに直交している。第2線影付けステップを、第1ステップにおけるのと同じ深さ「a」に位置するレーザ焦点5で実行する。好適には、2本の隣接する線6a又は6b間の距離を、両ステップにおいて等しくする。線6aと線6bの方向間の角度は、好適には、30°〜90°である。
【0018】
線影付け動作モードを、材料におけるいくつかのレベルで線影付けを実行することによって、立体形状を作るのに使用できる。この方法は、第1線影付けステップ(単一の又は交差した)から始まり、レーザを上面2から距離a1で合焦した後、1ステップ又は複数の連続するステップで、次第に最初の距離a1より短くなる距離a2、a3、…で合焦する。この様にして、数層を有する立体形状を得る。2層間の距離を、隣接する2層が部分的に重ならないように選択する。
【0019】
図3で図説する、第2動作モードによると、レーザ光線4を、連続的に、毎回所定のON時間ずつ、ガラスの上面2から固定距離「a」でサファイア時計ガラス1内部に位置する一組の並列点5上で、合焦する。この方法は、「穿孔動作モード」と呼ばれ、従って、特許文献1に開示された方法と類似する。しかしながら、本方法のパラメータは、レーザの衝撃によって生成するきずが、従来の方法に関して異なるように構成される。
【0020】
本発明の方法によると、レーザとサファイアとの相互作用により、直線の不透明領域10を作成し、該領域は、光線の方向に、即ち、ガラス1の上面2と垂直に延在する。図4の詳細図で表すように、各領域10を、該領域の直径Dと高さHによって画成する。これらの寸法は、各点に対して使用するレーザ出力光とレーザON時間に応じて、制御できる。直径Dを、好適にはミクロンの大きさ、例えば、1〜30ミクロンとする。高さHを、例えば、1〜数百ミクロンとし得る。第1動作モードでのように、理論にとらわれずに、各領域10は、レーザ光線4の方向に延在する複数のミクロ割れから形成されると推定される。特許文献1に記載された星形のきずとは異なり、領域10は、寸法D及びHで明確に画成された形となり、その上、これらの寸法を、レーザパラメータによって制御できる。これは、2つの衝撃点間の距離及びマーキングの厚さをより効率的に制御可能にする。
【0021】
表2aでは、この第2動作モードによるマーキングを達成するのに好適に使用できるレーザパラメータについて示している。
【0022】
【表3】
【0023】
表2bでは、第2動作モードで使用する多数の幾何学的パラメータの好適な値を提示している。
【0024】
【表4】
【0025】
第1動作モードと同様な方法で、立体マーキングを、ガラス1の厚さにおけるいくつかのレベルで穿孔マーキングすることによって得られる。この方法は、第1穿孔ステップから始まり、レーザを上面2から距離a1で合焦した後、1ステップ又は複数の連続するステップで、次第に最初の距離a1より短くなる距離a2、a3、…で合焦する。この様にして、数層から形成される立体形状を得る。2層間の距離を、隣接する2層が部分的に重ならないように選択する。
【0026】
また、本発明による方法は、反射防止層、例えば、MgF2又はSiO2の層が、ガラスの上面2上に存在する場合でも機能する。
【0027】
また、本発明は、どの上述した方法でマーキングしたサファイア時計ガラス、及び上記ガラスを備える時計にも、関する。
【符号の説明】
【0028】
1 ガラス
2 上面
3 下面
4 レーザ光線
6、10 不透明領域
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】
2020153976000001.pdf