【解決手段】電子ペン2は、ユーザの指の移動量を検出する圧力センサ25と、電子ペン2の傾きを検出するモーションセンサ26と、圧力センサ25によって検出された移動量及びモーションセンサ26によって検出された傾きを示すデータを送信する通信部27と、を有する。コンピュータ3は、電子ペン2から送信された上記データを受信する通信部18と、通信部18によって受信された上記データにより示される傾き及び移動量に基づいて、表示画面に表示される表示物の移動を制御するCPU15と、を有する。
前記位置指示器は、前記位置指示器が前記情報処理装置に位置情報を入力する第1のモード、及び、前記位置指示器が前記情報処理装置を制御する第2のモードのいずれかで動作する第2のプロセッサをさらに有し、
前記送信部は、前記第2のプロセッサが前記第2のモードにエントリしている場合に、前記データの送信を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
前記第1のプロセッサによって制御される前記表示物の移動は、前記受信部によって受信された前記データにより示される前記傾きに応じて前記表示物を選択し、前記受信部によって受信された前記データにより示される前記移動量に基づく、選択した表示物の移動である、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
前記第1のプロセッサは、メモリに格納されるアプリケーションプログラムを実行することにより、前記第1のスクロールバー及び前記第2のスクロールバーを含むグラフィカルユーザインターフェースを前記表示画面に表示する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の情報処理システム。
前記第1のプロセッサは、前記位置指示器による指示位置が前記表示画面内に設けられる所定領域内に移動したことに応じて、前記位置指示器に対し、前記第2のモードへの切り替えを送信し、
前記第2のプロセッサは、前記第2のモードへの切り替えを受信した場合に、前記第2のモードにエントリする、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の情報処理システム。
前記位置指示器が前記情報処理装置に位置情報を入力する第1のモード、及び、前記位置指示器が前記情報処理装置を制御する第2のモードのいずれかで動作する第2のプロセッサをさらに有し、
前記送信部は、前記第2のプロセッサが前記第2のモードにエントリしている場合に、前記データの送信を行う、
ことを特徴とする請求項15に記載の位置指示器。
前記第2のプロセッサは、前記情報処理装置のタッチセンサに発生する静電界を通じて前記情報処理装置のセンサコントローラが送信するアップリンク信号を受信していない場合に、前記第2のモードにエントリする、
ことを特徴とする請求項16に記載の位置指示器。
前記第2のプロセッサは、前記情報処理装置のタッチセンサに発生する静電界を通じて前記情報処理装置のセンサコントローラが送信するアップリンク信号を受信している場合に、前記第1のモードにエントリする、
ことを特徴とする請求項16に記載の位置指示器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態による情報処理システム1の使用状態を示す図である。同図に示すように、情報処理システム1は、電子ペン2及びコンピュータ3を有して構成される。
【0013】
電子ペン2は、コンピュータ3に位置情報を入力する位置指示器であり、タッチパッド12のタッチ面上における位置をユーザが指示するために用いられる。電子ペン2によって指示された位置は、コンピュータ3に対する入力となる。
【0014】
コンピュータ3は、典型的には、ノートパソコンタイプの情報処理装置である。ただし、タブレットタイプやデスクトップタイプのパソコンやサーバコンピュータなど、他の種類の情報処理装置であってもよい。
【0015】
コンピュータ3は、
図1に示すように、ディスプレイ10と、キーボード11と、タッチパッド12とを有して構成される。ディスプレイ10は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示画面を有する表示装置であり、文字や図形を視覚的に出力する役割を果たす。キーボード11及びタッチパッド12は、ユーザがコンピュータ3への入力を行うための入力装置である。
【0016】
タッチパッド12は、タッチ面上における指や電子ペン2の位置を検出可能に構成される。典型的には、指の検出は静電容量方式によって実行され、電子ペン2の検出はアクティブ静電方式によって実行される。この場合の電子ペン2は、ペン先に設けられる電極(後述する
図2に示すペン先電極23)を通じて、タッチパッド12との間で信号を送受信可能に構成される。以下では、こうして送受信される信号のうち、タッチパッド12から電子ペン2に向けて送信される信号をアップリンク信号USと称し、電子ペン2からタッチパッド12に向けて送信される信号をダウンリンク信号DSと称する。アップリンク信号USの到達距離は10cm程度、ダウンリンク信号DSの到達距離は数cm程度である。
【0017】
なお、タッチパッド12による指や電子ペン2の位置の検出は、他の方式で行うこととしても構わない。例えば、指だけでなく電子ペン2の検出も静電容量方式により行うこととしてもよいし、電子ペン2の検出を電磁誘導方式によって行うこととしてもよい。また、タッチパッド12は、例えば感圧方式により指及び電子ペン2の位置の検出を行うことしてもよい。さらに、タッチパッド12に加えて、又は、タッチパッド12に代えて、ディスプレイ10など他の装置が指や電子ペン2の位置の検出を行うこととしてもよい。
【0018】
タッチパッド12は、クリック操作を検出する機能も有している。具体的には、タッチ面のタップ操作を図示しない圧力センサによって検出することでクリック操作を検出することとしてもよいし(プレッシャーパッド)、タッチ面の下側に押しボタンスイッチを配置しておき、タッチ面自体がユーザの押下に応じて下向きに変位して押しボタンスイッチを押下することで、クリック操作を検出することとしてもよい(クリックパッド)。或いは、タッチ面の近傍にクリック用のボタンを別に設け、そのボタンの押下によりクリック操作を検出することとしてもよい。
【0019】
電子ペン2とコンピュータ3とは、上記のペン先電極23を通じた通信の他にも、例えばブルートゥース(登録商標)のような近距離無線通信Bを介して互いに通信可能に構成される。近距離無線通信Bの到達距離は、上述したアップリンク信号USやダウンリンク信号DSに比べると非常に長く、10m程度である。
【0020】
図2は、電子ペン2のシステム構成を示す図である。同図に示すように、電子ペン2は、コントローラ20と、ペン先電極23と、信号発生回路24と、圧力センサ25と、モーションセンサ26と、通信部27とを有して構成される。このうちコントローラ20は、内部にプロセッサ21及びメモリ22を有して構成される。
【0021】
コントローラ20は、メモリ22内に予め記憶されるプログラムをプロセッサ21が読み出して実行することにより動作する機能部であり、電子ペン2内の各部を制御する役割を担う。この制御には、ペン先電極23を通じてアップリンク信号USを受信する処理、信号発生回路24に対してダウンリンク信号DSを供給する処理、通信部27を介してコンピュータ3との間で近距離無線通信Bを行う処理、圧力センサ25及びモーションセンサ26のそれぞれが検出している物理量を取得する処理などが含まれる。
【0022】
図3は、コントローラ20の動作モードの遷移を示す図である。同図に示すように、コントローラ20の動作モードには、位置入力モードと表示物制御モードとが含まれる。位置入力モードは、タッチパッド12との間でアップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信を行うことにより、タッチ面上における自身の位置をコンピュータ3に検出させるモード(電子ペン2がコンピュータ3に位置情報を入力する第1のモード)である。コントローラ20は、コンピュータ3からアップリンク信号USを受信している場合(すなわち、アップリンク信号USが受信できるほどタッチパッド12に接近している場合)に、位置入力モードにエントリする。一方、表示物制御モードは、電子ペン2でのユーザ操作により、
図1に示したディスプレイ10に表示される表示物(具体的には、後述する
図6に示すノブ42c,43c)を移動させるモード(電子ペン2がコンピュータ3を制御する第2のモード)である。コントローラ20は、コンピュータ3からアップリンク信号USを受信していない場合(すなわち、アップリンク信号USが受信できるほどタッチパッド12に接近していない場合)に、表示物制御モードにエントリする。
【0023】
図2に戻る。ペン先電極23は、電子ペン2のペン先に設けられる導体であり、コントローラ20及び信号発生回路24と接続される。アップリンク信号USにより後述するタッチセンサ13に発生する静電界の中にペン先電極23が入ると、アップリンク信号USに応じた電荷がペン先電極23内に誘導される。コントローラ20は、こうして誘導された電荷を復調することによってアップリンク信号USを受信する。また、信号発生回路24からペン先電極23にダウンリンク信号DSが供給されると、ペン先電極23によりダウンリンク信号DSに応じた静電界が形成される。詳しくは後述するが、コンピュータ3は、この静電界からダウンリンク信号DSを取得する。
【0024】
信号発生回路24は、コントローラ20から供給されたダウンリンク信号DSに基づいて所定の搬送波信号を変調し、ペン先電極23に供給する回路である。
【0025】
通信部27は、近距離無線通信B用のインターフェイスを担う機能部である。通信部27は、初めにコンピュータ3とのペアリングを確立し、その後、コントローラ20の制御に従い、近距離無線通信Bによる信号の送信及び受信を行う。詳しくは後述するが、通信部27は、圧力センサ25によって検出されたユーザの指の移動量、及び、モーションセンサ26によって検出された傾きを示すデータを送信する送信部としての役割を担う。
【0026】
圧力センサ25は圧力を検出可能に構成されたセンサであり、本実施の形態では、電子ペン2の表面におけるユーザの指の移動量を検出する役割を担う。なお、圧力センサ25に代えて、又は、圧力センサ25とともに、静電センサを用いることも可能である。また、モーションセンサ26は物体の加速度、傾き、方向などを検出可能に構成されたセンサであり、本実施の形態では、電子ペン2本体の傾きを検出する役割を担う。モーションセンサ26として具体的には、例えば6軸センサを用いることが好適である。
【0027】
図4(a)は、模式的な電子ペン2の側面図であり、
図4(b)は、模式的な電子ペン2の断面図である。これらの図に示すように、電子ペン2の側面には、圧力検知型のサイドスイッチ30が露出している。圧力センサ25は、サイドスイッチ30の内側表面に沿って配置される。ユーザがサイドスイッチ30に一定値以上の圧力を加えながら図示した方向Aに沿って指を移動させると、圧力センサ25によりこの移動の量が検出される。モーションセンサ26は、電子ペン2内に固定される基板31の表面に固定されており、上述したように、電子ペン2本体の傾きを検出する役割を担う。
【0028】
次に
図5(a)は、コンピュータ3のシステム構成を示す図である。同図に示すように、コンピュータ3は、
図1にも示したディスプレイ10、キーボード11、タッチパッド12の他に、センサコントローラ14、CPU(Central Processing Unit)15、メモリ16、及び通信部18を有して構成される。タッチパッド12は、内部にタッチセンサ13を有して構成される。メモリ16には、アプリケーションプログラム17(のオブジェクトコード)が格納される。
【0029】
タッチセンサ13は、図示していないが、等間隔でx方向に延在する複数の線状電極(以下、「X電極」と称する)と、等間隔でy方向に延在する複数の線状電極(以下、「Y電極」と称する)とが重畳配置されてなる構成を有している。ただし、複数の島状電極がマトリクス状に配置されてなる構成を有することとしてもよい。後述する
図5(b)に例示するように、ディスプレイ10などタッチパッド12以外の装置が指や電子ペン2の位置の検出を行う場合には、ディスプレイ10などの装置にタッチセンサ13が設けられる。
【0030】
センサコントローラ14は、タッチセンサ13を介して、指及び電子ペン2によって指示されるタッチ面上の位置を検出する機能部である。以下、静電容量方式による指の検出と、アクティブ静電方式による電子ペン2の検出とを時分割で行う場合を例に取り、センサコントローラ14の動作について詳述する。
【0031】
指の検出を行う場合、センサコントローラ14は、X電極の本数分のパルスからなる指検出用信号をタッチセンサ13内の複数のX電極のそれぞれに供給し、タッチセンサ13内の複数のY電極のそれぞれで受信する。そして、各Y電極で受信された信号と、各X電極に供給した指検出用信号との相関を算出し、その結果に基づいて指の位置を導出するように構成される。あるY電極で受信される指検出用信号の振幅にはそのY電極と各X電極との交点の静電容量が反映されており、各交点の静電容量は指の接近により減少するので、センサコントローラ14は、上記の処理により指の位置を導出することができる。
【0032】
一方、電子ペン2の検出に関して、センサコントローラ14は、ディスカバリモード及び通信モードのいずれかで動作するように構成される。このうちディスカバリモードは、電子ペン2をまだ検出していないときにエントリするモードである。ディスカバリモードにエントリ中のセンサコントローラ14は、複数のX電極又はY電極のそれぞれから定期的にアップリンク信号USを送信し、タッチセンサ13内の各X電極及び各Y電極を順次走査することにより、アップリンク信号USを受信した電子ペン2が送信してくるダウンリンク信号DSの受信を待機する。ダウンリンク信号DSが受信された場合、センサコントローラ14は、各X電極及び各Y電極での受信強度に基づき、電子ペン2の位置を導出する(グローバルスキャン)。センサコントローラ14は、こうして位置を導出したことによって電子ペン2を検出し、該電子ペン2との通信モードにエントリする。通信モードにエントリした後のセンサコントローラ14は、直前に導出した位置の近傍に位置する線状電極のみを走査することにより、電子ペン2の位置を更新していくように構成される(ローカルスキャン)。
【0033】
電子ペン2が送信するダウンリンク信号DSは、センサコントローラ14が上記のようにして電子ペン2の位置を検出するためのバースト信号(例えば、単一周波数かつ無変調の信号)と、電子ペン2内に保持される各種データによって変調されてなるデータ信号とを含んで構成される。データ信号により送信されるデータは、コマンドを含むアップリンク信号USの送信によりセンサコントローラ14が送信を指示したものであり、例えば、電子ペン2のペン先に加わる圧力を含む筆圧を示す筆圧値、電子ペン2の表面に配置されるスイッチのオンオフ状態を示す情報、電子ペン2を識別するためのペンIDなどを含む。データ信号を受信したセンサコントローラ14は、受信したデータ信号を復号することにより、電子ペン2が送信したデータを取得する。
【0034】
センサコントローラ14は、通信モードにエントリしている間、アップリンク信号USの送信による電子ペン2への指示と、ダウンリンク信号DSの受信による電子ペン2の位置検出及び電子ペン2が送信したデータの受信とを断続的に実行する。電子ペン2がタッチセンサ13から遠ざかるなどの理由でダウンリンク信号DSが所定時間にわたって受信されなくなると、センサコントローラ14は通信モードを解除し、ディスカバリモードに戻る。
【0035】
ここで、
図5(b)は、本実施の形態の変形例によるコンピュータ3のシステム構成を示す図である。本変形例によるコンピュータ3は、
図5(b)に示すように構成してもよい。
図5(a)に示した構成との違いは、タッチパッドではなくディスプレイ10の内部にタッチセンサ13を有している点である。なお、タッチセンサ13自体の機能は
図5(a)の場合と同様であるが、指及び電子ペン2の検出に用いる電極(例えば、上述したX電極及びY電極など)の一部又は全部をディスプレイ10内の画素の駆動動作に用いる電極(例えば、液晶ディスプレイの共通電極や有機ELディスプレイの負極など)と共用してもよい。ただしこの場合、画素の駆動動作中には指及び電子ペン2の検出を行えないので、センサコントローラ14は、画素の駆動動作が行われていない時間に、指及び電子ペン2の検出を行う必要がある。
【0036】
図5(a)に戻る。CPU(Central Processing Unit)15は、メモリ16内に予め記憶されるプログラム(例えば、図示したアプリケーションプログラム17)を読み出して実行することにより動作する機能部であり、コンピュータ3内の各部を制御する役割を担う。この制御には、カーソルや各種のウインドウを含むグラフィカルユーザインターフェースである画像をディスプレイ10に表示させる処理、センサコントローラ14が検出した指及び電子ペン2の位置並びにセンサコントローラ14が電子ペン2から受信したデータを逐次取得し、取得したこれらのデータに基づき、ディスプレイ10に表示させているカーソルの移動やデジタルインクの生成及びレンダリングを行う処理、キーボード11、タッチパッド12、及びマウスなどの各種入力手段からの入力を受け付ける処理、通信部27を介して電子ペン2との間で近距離無線通信Bを行う処理、電子ペン2から受信される移動量及び傾きを示すデータに基づいて、ディスプレイ10に表示される表示物の移動制御を行う処理などが含まれる。
【0037】
メモリ16は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの主記憶装置と、ハードディスクなどの補助記憶装置とを含む記憶装置である。
【0038】
通信部18は、近距離無線通信B用のインターフェイスを担う機能部である。通信部18は、初めに電子ペン2とのペアリングを確立し、その後、CPU15の制御に従い、近距離無線通信Bによる信号の送信及び受信を行う。詳しくは後述するが、通信部18は、上述した移動量及び傾きを示すデータを電子ペン2から受信する受信部としての役割を担う。
【0039】
アプリケーションプログラム17は、図示しないオペレーションシステムソフトウェア上で動作するプログラムである。CPU15は、例えばタッチパッド12上でのユーザの操作に応じてアプリケーションプログラム17を起動するよう構成される。こうして起動したアプリケーションプログラム17は、内部のコードに従い、後述するウインドウの表示処理を含む様々な処理を実行する。
【0040】
図6は、アプリケーションプログラム17によって表示されるウインドウ40の例を示す図である。ウインドウ40は、図示するように、長方形の表示領域41と、その右辺に沿って配置された縦スクロールバー42と、その下辺に沿って配置された横スクロールバー43とを含んで構成される。縦スクロールバー42は、上側アロー42a、下側アロー42b、及びノブ42cを有して構成される。同様に、横スクロールバー43は、左側アロー43a、右側アロー43b、及びノブ43cを有して構成される。
【0041】
縦スクロールバー42及び横スクロールバー43は、表示領域41に表示すべき表示ータの面積が表示領域41の面積よりも大きい場合に、各ノブのサイズ及び位置によって表示データの全体中における現在表示中の部分の位置を示すとともに、各ノブ又は各アローの操作によって表示中部分を変更するための操作を受け付ける役割を果たす。縦スクロールバー42は表示中部分を縦方向に変更するために用いられるものであり、以下では、このような縦方向の変更を「縦スクロール」と称する。横スクロールバー43は表示中部分を横方向に変更するために用いられるものであり、以下では、このような横方向の変更を「横スクロール」と称する。
【0042】
縦スクロール又は横スクロールを例えばキーボード11によって実施する場合、ユーザは、キーボード11に含まれるカーソルキー(図示せず)を使って容易に縦スクロール又は横スクロールを行うことができる。この場合、ユーザが縦スクロールバー42及び横スクロールバー43を直接操作する必要はなく、アプリケーションプログラム17は、カーソルキーの操作量に応じて縦スクロール及び横スクロールを行うとともにノブ42c,43cの表示を更新する。
【0043】
また、縦スクロール又は横スクロールを図示しないマウスによって実施する場合、ユーザは、ディスプレイ10に表示されているカーソルをいずれかのノブ又はアローの位置に移動し、適宜マウスボタンのクリック操作を行うことによって、容易に縦スクロール又は横スクロールを行うことができる。
【0044】
これらに対し、タッチパッド12上での電子ペン2の操作により縦スクロール又は横スクロールをすることは、可能ではあるが困難である。この場合も、マウスの場合と同様、ディスプレイ10に表示されているカーソルをいずれかのノブ又はアローの位置に移動し、タッチパッド12のクリック操作を行うことによって縦スクロール又は横スクロールを行うことができるが、電子ペン2での操作は、カーソルをいずれかのノブ又はアローの位置に移動するという細かい操作には不向きであるし、そのような細かい操作をしながらのタッチパッド12のクリック操作はなお困難である。上述した特許文献1に記載の技術は、画面の右側と下側に設けた溝状の入力部によりこの困難さを克服するものであるが、溝という特殊なハードウェア機構を設ける必要があるため、すべてのコンピュータ3に適用することは難しい。本発明は、
図2に示した圧力センサ25及びモーションセンサ26によって検出される物理量によってディスプレイ10に表示される表示物を移動させられるように電子ペン2及びコンピュータ3を構成することで、特許文献1に記載される溝状の入力部のような特別なハードウェア機構を設けることなく、電子ペン2によるディスプレイ10上の表示物(具体的には、ノブ42c,43c)の移動制御を簡単に行うことができるようにしたものである。以下、この点について、電子ペン2及びコンピュータ3のフローチャートを参照しながら、詳しく説明する。
【0045】
図7及び
図8は、電子ペン2のコントローラ20が行う処理を示すフローチャートである。初めに
図7は、
図3に示した位置入力モード及び表示物制御モードの切り替えにかかる処理を示している。同図に示すように、電子ペン2はまず、アップリンク信号USの受信を試行する(ステップS1)。この試行は、電子ペン2がコンピュータ3を検出する前には、コンピュータ3によるアップリンク信号USの送信周期よりも十分短い周期で繰り返し実行される。一方、電子ペン2がコンピュータ3を検出した後には、電子ペン2は、例えばアップリンク信号USを介してコンピュータ3から指示されたタイミングで、アップリンク信号USの受信を試行する。
【0046】
アップリンク信号USの受信を試行した後、電子ペン2は、アップリンク信号USが受信されたか否かを判定する(ステップS2)。その結果、受信されたと判定した場合には、位置入力モードにエントリし(ステップS3)、受信したアップリンク信号USにより示される送信スケジュールに従ってダウンリンク信号DSの送信を行う(ステップS4)。
【0047】
一方、ステップS2において受信されていないと判定した電子ペン2は、表示物制御モードにエントリし(ステップS5)、ダウンリンク信号DSを送信することなく処理を終了する。
【0048】
次に
図8は、圧力センサ25及びモーションセンサ26によって検出される物理量の送信にかかる処理を示している。同図に示すように、電子ペン2はまず、圧力センサ25によって圧力の印加が検知されるまで待機する(ステップS10)。この待機は要するに、
図4(b)等に示したサイドスイッチ30にユーザが触れるまで待機することを意味する。圧力センサ25によって圧力の印加が検知されると、電子ペン2は、近距離無線通信Bによってコンピュータ3とペアリング中であるか否かを判定する(ステップS11)。ここでペアリング中であると判定した電子ペン2は、モーションセンサ26の出力を参照することによって電子ペン2の傾きを検出する(ステップS12)とともに、圧力センサ25の出力を参照することによって指の移動量(
図4に示した方向Aの移動量)を検出する(ステップS13)。そして、電子ペン2の現在のモードが位置入力モード及び表示物制御モードのいずれであるかを判定し(ステップS14)、表示物制御モードであれば、ステップS12,S13で検出した傾き及び移動量を示すデータを、近距離無線通信Bによってコンピュータ3に送信する(ステップS15)。
【0049】
一方、ステップS11でペアリング中でないと判定した場合、及び、ステップS14で位置入力モードと判定した場合、電子ペン2は、それ以上の処理を行わずに処理を終了する。したがって、近距離無線通信Bによるペアリングが確立されていない場合、及び、電子ペン2がペン先電極23を通じた通信を行っている場合には、電子ペン2からコンピュータ3に対し、傾き及び移動量を示すデータが送信されないことになる。
【0050】
図9は、コンピュータ3のCPU15が行う処理を示すフローチャートである。この処理は、CPU15によって周期的に実行される。同図に示すように、コンピュータ3はまず、近距離無線通信Bによって電子ペン2とペアリング中であるか否かを判定する(ステップS20)。ここでペアリング中でないと判定したコンピュータ3は、以降の処理を行わずに処理を終了する。上述したように、ペアリング中でない場合、電子ペン2から傾き及び移動量を示すデータが送信されてくることはないからである。
【0051】
一方、ステップS20でペアリング中であると判定したコンピュータ3は、電子ペン2から傾き及び移動量を示すデータを受信すると(ステップS21)、まず初めに、受信した傾きに基づいて、制御対象の表示物(具体的には、ノブ42c,43cのいずれか一方)を選択する(ステップS22)。
【0052】
図10及び
図11は、ステップS21の選択を説明する図である。
図10は電子ペン2の傾きが水平でない場合を示し、
図11は電子ペン2の傾きが水平である場合を示している。一般に、ウインドウを見ているユーザが縦スクロールを行う頻度は、横スクロールを行う頻度に比べて格段に大きい。したがって、横スクロールを行うのは、ユーザが
図11のように電子ペン2を水平に持った場合に限定し、その他の場合では縦スクロールを行うことが好ましい。そこでコンピュータ3は、ステップS22の選択を行うに際し、電子ペン2の傾きが水平から所定の角度範囲(例えば5°)内に収まる値(第1の値)である場合には横スクロール用のノブ43cを選択し、その他の値(水平から所定の角度範囲内に収まらない値。第2の値)である場合には縦スクロール用のノブ42cを選択することが好ましい。
【0053】
図9に戻り、ステップS22でスクロールの方向を選択したコンピュータ3は次に、受信した移動量に基づき、選択した表示物の移動を実施する(ステップS23)。具体的には、現在アクティブな(つまり、最前面に表示されている)ウインドウ内のノブ42c又はノブ43c(
図6を参照)を移動させる処理を行う。こうして、電子ペン2上での操作によるスクロールが実現される。なお、コンピュータ3は、受信した移動量の符号に応じて(すなわち、プラスの場合とマイナスの場合とで)、表示物の移動の向きを変えることが好ましい。こうすることで、ユーザは、
図2に示したサイドスイッチ30上での指の移動方向を変えることにより、スクロールの向きを変えることができるようになる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態による情報処理システム1によれば、圧力センサ25及びモーションセンサ26によって検出される物理量(電子ペン2の傾き及びサイドスイッチ30上での指の移動量)によって、ディスプレイ10に表示される表示物(具体的には、ノブ42c,43c)を移動させることができる。したがって、特許文献1に記載される溝状の入力部のような特別なハードウェア機構を設けることなく、電子ペン2によるディスプレイ10上の表示物の移動制御を簡単に行うことが可能になる。
【0055】
次に、本発明の第2の実施の形態による情報処理システム1について説明する。本実施の形態による情報処理システム1は、アップリンク信号USの受信の有無ではなく電子ペン2に設けたスイッチのオンオフによって位置入力モードと表示物制御モードの切り替えを行う点で第1の実施の形態による情報処理システム1と異なり、その他の点では第1の実施の形態による情報処理システム1と同様である。そこで以下では、第1の実施の形態による情報処理システム1と同様の構成については同一の符号を付し、第1の実施の形態による情報処理システム1との相違点に着目して説明する。
【0056】
図12は、本実施の形態による電子ペン2のシステム構成を示す図である。また、
図13は、本実施の形態による電子ペン2の模式的な側面図である。
図12と
図2、
図13と
図4(a)をそれぞれ比較すると理解されるように、本実施の形態による電子ペン2は、電子ペン2の側面に設けられたスイッチ32をさらに有する点で、第1の実施の形態による電子ペン2と相違する。
【0057】
スイッチ32は、ユーザによりオンオフ可能に構成される。具体的には、押し下げられているときにオンとなり、押し下げられていないときにオフとなる押しボタンタイプのスイッチによりスイッチ32を構成することが好ましい。コントローラ20は、スイッチ32のオンオフを検出し、その結果に応じて位置入力モードと表示物制御モードの切り替えを行うよう構成される。
【0058】
図14は、本実施の形態によるコントローラ20の動作モードの遷移を示す図である。同図に示すように、本実施の形態によるコントローラ20は、スイッチ32がオンになっている場合に表示物制御モードにエントリし、スイッチ32がオフになっている場合に位置入力モードにエントリする。
【0059】
図15は、本実施の形態による位置入力モード及び表示物制御モードの切り替えにかかるコントローラ20の処理を示すフローチャートである。同図に示すように、電子ペン2は、スイッチ32の操作を検出すると(ステップS30)、スイッチ32がオンオフいずれの状態であるかを判定する(ステップS31)。そして、スイッチ32がオンであれば、、表示物制御モードにエントリする(ステップS32)。一方、スイッチ32がオフであれば、位置入力モードにエントリする(ステップS33)。これによりユーザは、スイッチ32のオンオフに応じて、電子ペン2によるスクロール操作のオンオフを切り替えることが可能になる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態による情報処理システム1によれば、スイッチ32のオンオフにより、ユーザが意識的に、電子ペン2によるスクロール操作のオンオフを切り替えることができる。したがって、例えば飛行機の座席のように電子ペン2とコンピュータ3の間の距離を十分に取れない(したがって、アップリンク信号USを受信しない位置に電子ペン2を持って行くことが難しい)ような場合においても、特許文献1に記載される溝状の入力部のような特別なハードウェア機構を設けることなく、電子ペン2によるディスプレイ10上の表示物の移動制御を簡単に行うことが可能になる。
【0061】
次に、本発明の第3の実施の形態による情報処理システム1について説明する。本実施の形態による情報処理システム1は、コンピュータ3が
図5(b)に示した構成を有する点、コントローラ20の動作モードの切り替えをコンピュータ3から指示する点で第1の実施の形態による情報処理システム1と異なり、その他の点では第1の実施の形態による情報処理システム1と同様である。そこで以下では、第1の実施の形態による情報処理システム1と同様の構成については同一の符号を付し、第1の実施の形態による情報処理システム1との相違点に着目して説明する。
【0062】
図16は、本実施の形態によるコンピュータ3のCPU15が行う処理を示すフローチャートである。同図に示すように、コンピュータ3はまず、近距離無線通信Bによって電子ペン2とペアリング中であるか否かを判定する(ステップS40)。ここでペアリング中でないと判定したコンピュータ3は、以降の処理を行わずに処理を終了する。
【0063】
一方、ステップS40でペアリング中であると判定したコンピュータ3は、センサコントローラ14によって検出されている電子ペン2の指示位置が、所定領域(例えば、
図6に例示した縦スクロールバー42又は横スクロールバー43が表示されている領域)内に移動すること、若しくは、該所定領域の外に移動することを監視する(ステップS41)。そして、電子ペン2の指示位置が所定領域内に移動した場合、
図5(b)に示した通信部18を用いて、表示物制御モードへの切り替え指示を電子ペン2に対して送信する(ステップS42)。一方、電子ペン2の指示位置が所定領域外に移動した場合、
図5(b)に示した通信部18を用いて、位置入力モードへの切り替え指示を電子ペン2に対して送信する(ステップS43)。ステップS42又はステップS42で送信を実施したコンピュータ3は、ステップS40に戻って処理を繰り返す。
【0064】
図17(a)及び
図17(b)は、本実施の形態による電子ペン2のコントローラ20が行う処理を示すフローチャートである。
図17(a)は、コンピュータ3が表示物制御モードへの切り替え指示を送信した場合を示し、
図17(b)は、コンピュータ3が位置入力モードへの切り替え指示を送信した場合を示している。
【0065】
初めに
図17(a)を参照すると、電子ペン2は、表示物制御モードへの切り替え指示を受信する(ステップS50)と、圧力センサ25によって圧力の印加が検知されているか否かを判定する(ステップS51)。なお、この判定処理は、一度だけでなく、所定時間にわたって繰り返し実行されることとしてもよい。ステップS51で圧力の印加が検知されていると判定した場合、電子ペン2は、表示物制御モードにエントリする(ステップS52)。これ以降、
図8に示したように、圧力センサ25によって圧力の印加が検知される都度、電子ペン2からコンピュータ3に対して傾き及び移動量を示すデータの送信が行われることになり、その結果として表示物の移動制御が実行されることになる。一方、ステップS51で圧力の印加が検知されていないと判定した場合、電子ペン2は、位置入力モードにエントリする(若しくは、位置入力モードを継続する)(ステップS53)。この場合、コンピュータ3が送信した表示物制御モードへの切り替え指示は無視され、引き続き位置情報の入力が行われる。
【0066】
次に
図17(b)を参照すると、電子ペン2は、位置入力モードへの切り替示を受信する(ステップS60)と、直ちに、位置入力モードにエントリする(ステップS61)。これにより、ユーザは、所定領域外に電子ペン2を移動させた後、直ちに、電子ペン2による位置情報の入力を行うことが可能になる。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態による情報処理システム1によれば、電子ペン2の指示位置が所定領域内に移動したことに応じて電子ペン2を表示物制御モードにエントリさせ、電子ペン2の指示位置が所定領域外に移動したことに応じて電子ペン2を位置入力モードにエントリさせることができる。したがってユーザは、電子ペン2の指示位置を例えば縦スクロールバー42又は横スクロールバー43の上に移動させる必要はあるものの、その後、
図6に示した各アローや各ノブを直接操作することなく、スクロールを行うことが可能になる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0069】
例えば、電子ペン2の断面を略三角形などの略多角形とし、電子ペン2のコントローラ20又はコンピュータ3のCPU15は、モーションセンサ26の検出結果に基づき、上になっている側面を判定することとしてもよい。こうすることで、所定の側面が上になっているときのみ、表示画面上の表示物の移動制御を行うように情報処理システム1を構成することが可能になる。
【0070】
また、上記各実施の形態では、移動制御の対象となる表示物がノブ42c,43cである場合を説明したが、ノブ42c,43cの表示物を移動制御の対象としてもよいのは勿論である。